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ズラノロン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ズルズバエから転送)
ズラノロン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
発音 [zʊˈrænəln]
zuu-RAN-ə-lohn
販売名 ズルズバエ
ライセンス US Daily Med:リンク
胎児危険度分類
  • 禁忌
法的規制
薬物動態データ
血漿タンパク結合99.5%
代謝CYP3A4
半減期16–23 時間[2][3]
データベースID
CAS番号
1632051-40-1
ATCコード None
PubChem CID: 86294073
DrugBank DB15490
ChemSpider 71117610
UNII 7ZW49N180B
KEGG D11793
ChEBI CHEBI:228302
ChEMBL CHEMBL4105630
別名 SAGE-217; S-812217; SGE-797; BIIB-125
化学的データ
化学式C25H35N3O2
分子量409.57 g·mol−1
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ズラノロン: Zuranolonel)は、アメリカで産後うつ病の適応で認可されている抗うつ薬のこと[4][5]

GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレータとして作用する[6][7][8]。セージ・セラピューティクスとバイオジェンによって開発され[9]、2023年8月にアメリカで産後うつ病の治療薬として承認された[5]。アメリカでの商品名は「ズルズバエ」[10]。投与経路は経口[4]

医療用途

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FDAにより産後うつ病の適応で承認されている[4][5]

うつ病の治療薬としても開発中であったが、この適応の申請は有効性の証拠が不十分であるとしてFDAからCLA(完全回答書:FDAが未解決の疑問点を抱えていることを意味し、現時点でこの適応を承認できないことを意味する書類)が提出された。

副作用

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一般的な副作用としては、眠気、めまい、下痢、疲労、尿路感染症などがある[5]

特徴

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ズラノロンは静脈内投与される神経ステロイドであるブレキサノロンの改良薬として開発され、経口バイオアベイラビリティが高く、生物学的半減期は1日1回の投与に適している[7][11] 。半減期は約16~23時間で、ブレキサノロンの 約9時間と比較して長い[6][7]

成人の産後うつ病に対するズラノロンの有効性は、2つのランダム化ダブルブラインド比較試験で実証されている[5]。被験者は、精神障害の診断と統計マニュアルの大うつ病エピソードの基準を満たし、症状が妊娠第3期または出産後4週間以内に始まった産後うつ病の女性であった[5]。研究1では、参加者は14日間、1日1回夕方にズラノロン50 mgまたはプラセボを投与された[5]。研究2では、参加者は14日間、ズラノロン40 mgまたはプラセボを投与された[5]。両方の研究の参加者は、14日間の治療後少なくとも4週間観察された[5]。両研究の主要評価項目は、15日目に測定した17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)の合計スコアを用いたうつ病症状の変化であった[5]。ズラノロン群の参加者は、プラセボ群の参加者と比較して症状の統計的に有意な改善を示した[5]。治療効果は、ズラノロンの最後の投与から4週間後の42日目にも維持された[5]

歴史

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  • 2018年
    • 6月14日 - 塩野義製薬がセージ・セラピューティクスと「ズラノロン」の日本、台湾および韓国における開発、販売に関する契約を締結[12]
  • 2020年
    • 6月 - 塩野義製薬が日本国内において大うつ病性障害に対して「ズラノロン」の第2相臨床試験を開始[13]
  • 2021年
    • 9月 - 塩野義製薬が日本国内において大うつ病性障害に対して行っていた「ズラノロン」の第2相臨床試験終了[13]
  • 2023年
    • 8月4日 - FDAが「ズラノロン」を産後うつ病の適応で承認[12]
  • 2024年
    • 9月27日 - 塩野義製薬が「ズラノロン」をうつ病の適応で厚生労働省に製造販売承認申請[14]

研究

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大うつ病性障害の治療における有効性と安全性を評価するためのランダム化比較試験第3相試験では、ズラノロン群(1日1回50mgのズラノロンを経口投与、14日間)の被験者は、治療期間と追跡期間を通じて、うつ病症状( HAMD-17スコアで評価)について統計的有意かつ持続的な改善を示した[15]

その他の研究対象疾患としては、不眠症、双極性うつ病、本態性振戦、パーキンソン病などがある[16][17]

論文

[編集]

脚注

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  1. ^ Schedules of Controlled Substances: Placement of Zuranolone in Schedule IV”. Federal Register (2023年10月31日). 2024年3月5日閲覧。
  2. ^ “GABAkines - Advances in the discovery, development, and commercialization of positive allosteric modulators of GABAA receptors”. Pharmacology & Therapeutics 234: 108035. (2022). doi:10.1016/j.pharmthera.2021.108035. PMC 9787737. PMID 34793859. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9787737/. 
  3. ^ “Intravenous brexanolone for postpartum depression: what it is, how well does it work, and will it be used?”. Therapeutic Advances in Psychopharmacology 10: 2045125320968658. (2020). doi:10.1177/2045125320968658. PMC 7656877. PMID 33224470. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7656877/. 
  4. ^ a b c Zurzuvae (zuranolone) capsules, for oral use, [controlled substance schedule pending]”. 5 August 2023時点のオリジナルよりアーカイブ5 August 2023閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l "FDA Approves First Oral Treatment for Postpartum Depression". U.S. Food and Drug Administration (FDA) (Press release). 4 August 2023. 2023年8月4日閲覧  この記述には、アメリカ合衆国内でパブリックドメインとなっている記述を含む。
  6. ^ a b SAGE 217”. AdisInsight. 29 March 2019時点のオリジナルよりアーカイブ10 February 2018閲覧。
  7. ^ a b c “Breakthroughs in neuroactive steroid drug discovery”. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 28 (2): 61–70. (2018). doi:10.1016/j.bmcl.2017.11.043. PMID 29223589. 
  8. ^ “Neuroactive Steroids. 2. 3α-Hydroxy-3β-methyl-21-(4-cyano-1H-pyrazol-1'-yl)-19-nor-5β-pregnan-20-one (SAGE-217): A Clinical Next Generation Neuroactive Steroid Positive Allosteric Modulator of the (γ-Aminobutyric Acid)A Receptor”. Journal of Medicinal Chemistry 60 (18): 7810–7819. (2017). doi:10.1021/acs.jmedchem.7b00846. PMID 28753313. 
  9. ^ Saltzman, Jonathan (4 August 2023). “FDA approves postpartum depression pill from two Cambridge drug firms”. The Boston Globe. オリジナルの6 August 2023時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230806030238/https://www.bostonglobe.com/2023/08/04/business/fda-postpartum-depression-pill/ 5 August 2023閲覧。 
  10. ^ 経口の「産後うつ薬」が米で初承認”. 臨床ニュース | m3.com. m3 (2023年8月24日). 2024年8月9日閲覧。
  11. ^ “Preclinical characterization of zuranolone (SAGE-217), a selective neuroactive steroid GABAA receptor positive allosteric modulator”. Neuropharmacology 181: 108333. (2020). doi:10.1016/j.neuropharm.2020.108333. PMC 8265595. PMID 32976892. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8265595/. 
  12. ^ a b 米FDA 産後うつ病治療薬Zurzuvaeを承認 | ニュース | ミクスOnline”. www.mixonline.jp. 株式会社ミクス (2023年8月18日). 2024年8月9日閲覧。
  13. ^ a b 一般の方に向けた臨床試験結果の要約”. www.shionogi.com. 塩野義製薬. 2024年8月14日閲覧。
  14. ^ うつ病治療薬候補ズラノロンを申請 塩野義製薬”. 日刊薬業 - 医薬品産業の総合情報サイト. 株式会社じほう (2024年9月27日). 2024年10月10日閲覧。
  15. ^ “Zuranolone for the Treatment of Adults With Major Depressive Disorder: A Randomized, Placebo-Controlled Phase 3 Trial”. The American Journal of Psychiatry 180 (9): 676–684. (May 2023). doi:10.1176/appi.ajp.20220459. PMID 37132201. 
  16. ^ “Effect of Zuranolone vs Placebo in Postpartum Depression: A Randomized Clinical Trial”. JAMA Psychiatry 78 (9): 951–959. (2021). doi:10.1001/jamapsychiatry.2021.1559. PMC 8246337. PMID 34190962. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8246337/. 
  17. ^ “Zuranolone as an oral adjunct to treatment of Parkinsonian tremor: A phase 2, open-label study”. Journal of the Neurological Sciences 421: 117277. (2021). doi:10.1016/j.jns.2020.117277. PMID 33387701.