プレイマウント
プレイマウントは、愛知県名古屋市を中心として東海3県の公園に設置されているコンクリート製築山遊具(すべり台)。富士山すべり台などとも呼ばれる。
歴史
[編集]高度経済成長期の名古屋市では人口が急増し、土地区画整理事業によって多数の公園を建設する必要があった[1]。このため、1960年代後半には公園の整備計画の中で同形の山型の遊具が考案され[2]、1966年(昭和41年)には吹上公園に初めて「プレイマウント」が設置された[3][4]。
プレイマウントのほかに、「石の山」と「クライミングスライダー」と呼ばれるコンクリート製築山遊具も設置されたが、子どもには特にプレイマウントの人気が高かった[1]。当初は富士山を意識して設計されたものではなかったが、市民からは「富士山すべり台」などと呼ばれるようになった[3]。問い合わせがあった周辺自治体にも図面が提供されたことで[3]、1968年度(昭和43年度)には東海市の富田公園にもプレイマウントに類似した遊具が建設された[1]。春日井市には独自図面の富士山すべり台が複数設置され、2018年度(平成30年度)には半田市に史上最大の富士山すべり台が設置された[1]。
プレイマウントは名古屋市内の公園に100基以上が設置されたが[1]、安全性の問題からコンクリート製の遊具は避けられるようになったため、1999年(平成11年)を最後に同様の遊具は造られていない[2]。近年ではウレタンなどの柔らかい素材で造ることも検討されている[2]。2018年(平成30年)時点で中部地方に129個が確認されており、愛知県内にはその約96%にあたる124個(うち名古屋市内が93個)、三重県に3個、岐阜県と石川県にそれぞれ1個という内訳であった[3][4]。
特色
[編集]円錐のような形状に成型されたコンクリート製の築山遊具で、頂点は平らになっており、斜面の傾斜は末端ほど緩やかになっている[2]。斜面の一部には登りやすいように石が埋められている[2]。
名古屋市が設置したプレイマウントには大小2種類があり、プレイマウントAは直径12メートルで高さ2.5メートル、プレイマウントBは直径8メートルで高さ1.7メートルである[5]。カラーリング、玉石の埋め込み方などには個体差がある。
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プレイマウントの山頂(杓子公園)
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山頂から見た斜面(下山畑公園)
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二連のプレイマウント(大瀬子公園)
類似の遊具
[編集]石の山
[編集]名古屋市が初めて量産を開始したコンクリート製遊具は「石の山」である[6]。1964年度(昭和39年度)時点では木ケ崎公園、牧野公園、細米公園、本宮公園、元柴田公園に設置されており、その後も1969年(昭和44年)頃まで年間10基以上が設置された[6]。昭和40年代末までに計83基が設置され、2021年(令和3年)時点で一つ山第一公園など37基が現存している[6]。
1959年(昭和34年)に東京都台東区の入谷南公園に設置された池原謙一郎設計の石の山がオリジナルである[6]。名古屋市によって図面が描かれた石の山は周辺自治体にも広まり、豊川市の曙公園、蒲郡市の若宮公園と大坪公園、西尾市の桜町公園、刈谷市の若松公園、春日井市の春見公園、小牧市の桃花台第2公園などに設置された[6]。
クライミングスライダー
[編集]石の山の約2年後に生まれたコンクリート製遊具が「クライミングスライダー」である[7]。1966年度(昭和41年度)時点では栄公園、桜田公園、二女子公園に設置されており、その後も1971年(昭和46年)頃まで年間10基以上が設置された[7]。計109基が設置され、2021年(令和3年)時点で65基が現存している[6]。市営住宅の小公園に設置されていることが多い[7]。
東京都中央区の鉄砲洲児童公園に設置されたクライミングスライダーがオリジナルである[7]。名古屋市を含めた全国各地に波及し、大阪市には約50基のクライミングスライダーが現存している[7]。
プレイマウントの一覧
[編集]名古屋市
[編集]名古屋市以外
[編集]画像 | 設置場所 | 所在地 | 設置年度 | 規模 |
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北出公園 | 愛知県稲沢市松下2丁目17-17 | 1974年度 | 大 | |
黒田第2児童遊園 | 愛知県一宮市木曽川町黒田城西 | 1979年度 | 直径10m | |
市営大輪住宅 | 愛知県小牧市小牧1丁目 | 1994年度 | 直径11m | |
桃花台第1公園 | 愛知県小牧市城山4丁目 | 1990年度 | 大 | |
城山第1公園 | 愛知県小牧市城山5丁目 | 1995年度 | 直径9m | |
桃花台中央公園 | 愛知県小牧市城山2丁目 | 1991年度 | 大 | |
桃花台第4公園 | 愛知県小牧市光ケ丘3丁目 | 1987年度 | 大 | |
はなのき公園 | 愛知県春日井市小野町2丁目 | 1973年度 | 16m×14m | |
丸山公園 | 愛知県春日井市如意申町4丁目 | 1980年度 | 直径7m | |
上ノ場公園 | 愛知県春日井市如意申町8丁目 | 1981年度 | 直径7m | |
山ノ脇公園 | 愛知県春日井市柏井町7丁目 | 1980年度 | 直径7m | |
杁ヶ島公園 | 愛知県春日井市杁ヶ島町 | 1980年度 | 直径7m | |
上八田住宅児童遊園 | 愛知県春日井市八田町2丁目 | 1996年度 | 直径11m | |
小針公園 | 愛知県春日井市白山町4丁目 | 1979年度 | 直径7m | |
後山公園 | 愛知県長久手市桜作 | 1983年度 | 小 | |
にしうしろ公園 | 愛知県日進市梅森台5丁目 | 1981年度 | 小 | |
和合ケ丘中央公園 | 愛知県愛知郡東郷町和合ケ丘3丁目 | 1972年度 | 直径9.5m | |
富田公園 | 愛知県東海市富木島町伏見1丁目 | 1968年度 | 大 | |
あいち健康の森公園 | 愛知県大府市森岡町9丁目 | 1997年度 | 直径10m | |
県営東浦住宅 | 愛知県知多郡東浦町石浜三本松 | 2007年度 | 直径11m | |
高根中央公園 | 愛知県知多郡東浦町緒川東仙台 | 1981年度 | 小 | |
高根南公園 | 愛知県知多郡東浦町緒川東仙台 | 1983年度 | 小 | |
高根台中央公園 | 愛知県知多郡阿久比町福住高根台 | 1981年度 | 小 | |
岡田美里町公園 | 愛知県知多市岡田美里町 | 2002年度 | 直径11m | |
多屋公園 | 愛知県常滑市大鳥町4丁目 | 2009年度 | 大 | |
雁宿公園 | 愛知県半田市雁宿町3丁目 | 2017年度 | 直径14m | |
熊野公園 | 愛知県岡崎市六名1丁目 | 1979年度 | 直径9m | |
夕陽が浜東公園 | 愛知県田原市夕陽が浜 | 1998年度 | 直径5m | |
馬場公園 | 岐阜県瑞穂市上光町2丁目107 | 1980年度 | 小 | |
東谷第1公園 | 三重県桑名市大山田5丁目7-7 | 1982年度 | 直径7m | |
三本松公民館 | 三重県四日市市水沢町1843 | 1990年度 | 直径11m | |
泉ヶ丘団地児童公園 | 三重県津市野田21-841 | 1975年度 | 小 | |
小菅波公園 | 石川県加賀市小菅波町1丁目50 | 1974年度 | 9m×7.5m |
撤去済み
[編集]- 新開公園 - 名古屋市瑞穂区。1969年度設置。1978年度撤去。
- 大杉公園 - 名古屋市北区。1968年度設置。1990年度撤去。
- 六反公園 - 名古屋市中村区。1971年度設置。1990年度撤去。
- 瓶ノ井公園 - 名古屋市名東区。1974年度設置。1990年度撤去。
- 幅下公園 - 名古屋市西区。1972年度設置。1991年度撤去。
- 森の里荘 - 名古屋市緑区。1979年度設置。1991年度撤去。
- 山下公園 - 名古屋市守山区。1972年度設置。1992年度撤去。
- 新山田北荘 - 名古屋市北区。1976年度設置。1992年度撤去。
- 二子山公園 - 春日井市。1980年度設置。1992年度撤去。
- 長町公園 - 名古屋市中川区。1971年度設置。1993年度撤去。
- 花ノ木公園 - 名古屋市西区。1984年度設置。1993年度撤去。
- 山吹谷公園 - 名古屋市東区。1971年度設置。1995年度撤去。
- 善北公園 - 名古屋市港区。1971年度設置。1995年度撤去。
- 新栄公園 - 名古屋市中区。1977年度設置。1995年度撤去。
- 野並公園 - 名古屋市天白区。1977年度設置。1995年度撤去。
- 池田公園 - 名古屋市中区。1968年度設置。1996年度撤去。
- 星宮公園 - 名古屋市南区。1974年度設置。1996年度撤去。
- 榎木荘 - 名古屋市千種区。1978年度設置。1996年度撤去。
- 港南荘 - 名古屋市港区。1979年度設置。1996年度撤去。
- 玉の井公園 - 名古屋市熱田区。1981年度設置。1997年度撤去。
- 浦里荘 - 名古屋市緑区。1976年度設置。2004年度撤去。
- 県営長久手住宅 - 長久手市。1977年度設置。2008年度撤去。
- 柳町どんぐりひろば - 名古屋市西区。1970年度設置。2010年度撤去。
- 興正寺公園 - 名古屋市昭和区。1971年度設置。2010年度撤去。
- 西茶屋荘(北) - 名古屋市港区。1980年度設置。2010年度撤去。
- 西茶屋荘(南) - 名古屋市港区。1981年度設置。2010年度撤去。
- 玄馬公園 - 名古屋市北区。1978年度設置。2012年度撤去。
- 元塩荘 - 名古屋市南区。1981年度設置。2012年度撤去。
- ふじさん児童遊園 - 小牧市。1981年度設置。2015年度撤去。
- 氷室荘 - 名古屋市南区。1971年度設置。2017年度撤去。
- 県営東浦住宅 - 知多郡東浦町。1975年度設置。2019年度撤去。
- 黒田第3児童遊園 - 一宮市。1977年度設置。2019年度撤去。
- 南山公園 - 豊田市。1979年度設置。2019年度撤去。
- 宝生公園 - 名古屋市南区宝生町3丁目。1969年度設置。2020年度撤去。
- 玉塚公園 - 名古屋市西区清里町。1972年度設置。2020年度撤去。
脚注
[編集]- ^ a b c d e 牛田吉幸 著、大竹敏之 編『名古屋の富士山すべり台』風媒社、2021年、pp.14-15
- ^ a b c d e 産経WEST (2016年11月4日). “名古屋の滑り台は「富士山」形?180キロも離れた地で多数設置されているのはなぜ?”. 2021年3月3日閲覧。
- ^ a b c d 中京テレビ (2018年11月7日). “歴史は50年以上、公園の“富士山滑り台”の謎 発祥地とされる名古屋ではおなじみ”. 2021年3月3日閲覧。
- ^ a b 朝日新聞デジタル (2018年10月19日). “「富士山滑り台」なぜ名古屋に集中?研究して18年”. 2021年3月3日閲覧。
- ^ 牛田吉幸 著、大竹敏之 編『名古屋の富士山すべり台』風媒社、2021年、p.17
- ^ a b c d e f 牛田吉幸 著、大竹敏之 編『名古屋の富士山すべり台』風媒社、2021年、pp.88-89
- ^ a b c d e 牛田吉幸 著、大竹敏之 編『名古屋の富士山すべり台』風媒社、2021年、pp.90-91
参考文献
[編集]- 牛田吉幸 著、大竹敏之 編『名古屋の富士山すべり台』風媒社、2021年。ISBN 978-4-8331-1562-9。
関連項目
[編集]- タコの山 - 東京発祥のコンクリート製すべり台