ワクチン接種記録システム
開発元 |
内閣官房 情報通信技術総合戦略室 |
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対応OS |
Android Windows Mac OS X iOS |
プラットフォーム |
推奨端末: dtab d-41A dtab Compact d-42A [1][注釈 1] |
ワクチン接種記録システム(ワクチンせっしゅきろくシステム、英語: Vaccination Record System)とは、日本国内での新型コロナウイルスの感染拡大に対し、その封じ込めを目指して2021年(令和3年)に開始されたCOVID-19ワクチン接種において、接種日や接種回数といった個々人の接種状況を記録および一元的に管理することを目指して開発されたシステムである[2][3][4]。略称、VRS(ブイアールエス)[注釈 2]。開発はミラボが担当[5]。
概要
[編集]従来、予防接種に関する情報を「予防接種台帳」にて管理しており、管理方法も自治体ごとで異なっていた。また、ワクチン接種から予防接種台帳に接種記録が反映されるまでに2、3か月程かかっていたとされる[6]。しかし、コロナ禍での新型コロナウイルスワクチンの接種においては、集団免疫の獲得によるウイルス拡大の封じ込めを目指して、広く国民に対し、同時期に複数回の接種を迅速に展開することが求められるという特殊な状況となった[6][7]。そこで、政府から自治体への対応や、災害時での接種継続能力にも考慮し、より迅速かつ一元的に集計できるように開発されたのがVRSである[6][7]。
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が中心となって2021年1月から開発が進められ、開発人員も当初は約20人だったが[6]、厚生労働省や経済産業省、また地方自治体や民間企業など他部署からの出向者を含め約50人に増員された[8]。2021年2月17日付でミラボと契約を締結した。なお競争入札ではなく随意契約であり、随意契約にした理由についてIT室は「4月の高齢者の接種開始に間に合わせるため」と説明した。[5]初期の発注額は約3億8500万円。[5]その約2か月後の4月12日にリリースされ、本格稼働を開始した[6]。
その後新型コロナワクチン接種証明書アプリの開発で改修が行われている。
VRSでは氏名、生年月日を「接種者情報」、接種日や接種回数、接種する、もしくは接種したワクチンのメーカーを「接種記録情報」、その他接種状況を「統計情報」として管理する[2]。市区町村にて「接種者情報」を登録、接種を行う自治体や医療機関、企業が「接種記録情報」を登録し、「統計情報」は「統計情報ダッシュボード」として自治体等のホームページで公開される仕組みとなっている[2][9][10]。
各市区町村に設置される接種会場でのシステムの接種券の読み取りといった機能の利用を可能とするために、政府より各自治体へNTTドコモの「dtab d-41A」(シャープ株式会社製[11][12])と「dtab Compact d-42A」(レノボ・ジャパン合同会社製[13])、計5万1000台が調達、配布されているとみられる[14][15][16]。接種券読み取りに関しては、自治体で独自システムを利用しており、配布されたタブレットを使用しない場合、CSVファイルを通してVRSに登録する方法もある[1]。
問題
[編集]内閣官房から各自治体に配布されたタブレットのカメラを用いて接種券に記載された18桁の数字を光学文字認識(OCR)によって読み取る方式が採用されたが[17][18][19]、読み取りがうまくいかず、やむなく手動で入力しなければいけなくなるケースも報告された[20][21][14][22]。また、大阪府大阪市などで導入が進まない事例も散見された[23][24][25]。なお、厚生労働省健康局健康課令和2年10月23日付事務連絡において、接種券の仕様として、接種情報登録用バーコードを市区町村システム入力支援用の任意記載事項とし、OCR ライン(券種〈1桁〉+回数〈1桁〉+市町村コード〈6桁〉+ 券番号〈10 桁・固定値〉)を代行機関システム入力支援用としたため、バーコードの規格・印刷は全国で統一されていなかった。
これは、コロナ禍で業務が増加したことによる自治体での人手不足や2か月という短期で開発されたことに起因する利便性の低さや新型コロナ関係のシステムの「乱立」によるものとも指摘されている[26][3][23][6][27]。配布タブレットを用いた接種券の読み取り方に関しては、デジタル庁のYouTubeチャンネルより使用方法の解説動画や文書も公開されている[17][18][19]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b 『ワクチン接種記録システム(VRS)の機能と利用の流れについて』(PDF)(プレスリリース)内閣官房 IT総合戦略室、2021年3月26日 。2021年7月26日閲覧。
- ^ a b c 『いま知ってほしいワクチン接種記録システム』(PDF)(プレスリリース)内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室、2021年6月24日 。2021年7月26日閲覧。
- ^ a b 鬼丸明士 (2021年5月15日). “ワクチン新システムに不具合頻発 データ入力、自治体に負担”. 産經ニュース (株式会社産経新聞社): pp. 1-3 2021年7月26日閲覧。
- ^ “市区町村のワクチン接種率、政府が県と共有へ…配分の適正化急ぐ”. 讀賣新聞オンライン (株式会社読売新聞東京本社). (2021年7月12日) 2021年7月26日閲覧。
- ^ a b c “政府の「ワクチン接種記録システム」、ITベンチャーのミラボが3.85億円で受注 4月本格稼働へ マイナンバーとひもづけ”. ITmedia NEWS. 2022年2月7日閲覧。
- ^ a b c d e f 長倉 克枝 日経クロステック/日経コンピュータ、大豆生田 崇志 日経クロステック/日経コンピュータ (2021年4月12日). “小林大臣補佐官が語るデジタル庁の前哨戦、ワクチン接種記録システムを2カ月で開発”. 日経クロステック(xTECH) (株式会社日経ビーピー): p. 1 2021年7月26日閲覧。
- ^ a b 首相官邸 (2021年3月19日). “新型コロナワクチン接種推進担当 河野大臣からのワクチン接種記録システムについてのメッセージ”. YouTube. Google LLC / グーグル合同会社. 2021年7月26日閲覧。
- ^ 論説主幹 原田亮介 (2021年7月19日). “デジタル庁を「行革の星」に”. 日本經濟新聞 (株式会社日本経済新聞社) 2021年7月26日閲覧。
- ^ 『ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)及びワクチン接種記録システム(VRS)への高齢者等の接種記録の入力について』(PDF)(プレスリリース)厚生労働省健康局健康課予防接種室、内閣官房IT総合戦略室、2021年5月31日 。2021年7月26日閲覧。
- ^ “宮崎市新型コロナワクチン特設サイト”. 宮崎市. 宮崎市 (2021年7月19日). 2021年7月26日閲覧。
- ^ “スペックとサービス・機能”. NTTドコモ. 株式会社NTTドコモ (2020年8月28日). 2021年7月26日閲覧。
- ^ “dtab d-41A docomoの特長”. AQUOS:シャープ. シャープ株式会社 (2020年8月28日). 2021年7月26日閲覧。
- ^ “スペックとサービス・機能”. NTTドコモ. 株式会社NTTドコモ (2020年12月18日). 2021年7月26日閲覧。
- ^ a b 大豆生田 崇志 日経クロステック/日経コンピュータ (2021年4月23日). “ワクチン接種記録システム、わずか2カ月間で開発するも情報入力に不具合”. 日経クロステック(xTECH) (株式会社日経ビーピー): p. 1 2021年7月26日閲覧。
- ^ 『タブレットスタートアップガイド <d-41A> 第 2 版(掲載用)』(PDF)(プレスリリース)内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室、2021年5月14日 。2021年7月26日閲覧。
- ^ 『タブレットスタートアップガイド <d-42A> 第 2 版(掲載用)』(PDF)(プレスリリース)内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室、2021年5月14日 。2021年7月26日閲覧。
- ^ a b デジタル庁_準備中 (2021年4月6日). “ワクチン接種記録システム(VRS)における、タブレット端末の使い方”. YouTube. Google LLC / グーグル合同会社. 2021年7月26日閲覧。
- ^ a b デジタル庁_準備中 (2021年4月9日). “ワクチン接種記録システム(VRS)OCRラインの読み取り方”. YouTube. Google LLC / グーグル合同会社. 2021年7月26日閲覧。
- ^ a b 『接種会場でのタブレット使用方法(詳細)』(PDF)(プレスリリース)内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室、2021年4月27日 。2021年7月26日閲覧。
- ^ 日経クロステック/日経コンピュータ 大豆生田崇志、長倉克枝 (2021年7月14日). “ワクチン接種証明、なぜ「紙」頼み? 遠いデジタル化”. 日本經濟新聞 (株式会社日本経済新聞社) 2021年7月26日閲覧。
- ^ “ワクチン再配分 政府方針に自治体不満も”. 日本經濟新聞 (株式会社日本経済新聞社). (2021年7月12日) 2021年7月26日閲覧。
- ^ 大豆生田 崇志 日経クロステック/日経コンピュータ (2021年7月15日). “政府の「アジャイル開発」コロナ対策システムでトラブル続出、IT契約との関係は”. 日経クロステック(xTECH) (株式会社日経ビーピー): p. 1 2021年7月26日閲覧。
- ^ a b “ワクチン接種記録システム“VRS” 大阪市などで利用進まず”. NHK NEWS WEB (日本放送協会). (2021年6月4日) 2021年7月26日閲覧。
- ^ 大阪市健康局保健所感染症対策課(ワクチン接種等調整チーム) (2021年6月11日). “ワクチン接種記録システム(VRS)のご協力のお願い(取扱医療機関向け)”. 大阪市. 大阪市. 2021年7月26日閲覧。
- ^ 『新型コロナワクチン確保のための接種実績の VRS 全件入力の徹底等について』(PDF)(プレスリリース)神戸市健康局ワクチン接種対策室、2021年6月25日 。2021年7月26日閲覧。
- ^ 長倉 克枝 日経クロステック/日経コンピュータ、大豆生田 崇志 日経クロステック/日経コンピュータ (2021年4月5日). “デジタル庁の成否占う試金石、新型コロナワクチン接種関連システムに課題山積”. 日経クロステック(xTECH) (株式会社日経ビーピー): p. 1 2021年7月26日閲覧。
- ^ 本多由佳、坂本純也 (2021年7月6日). “「どんどん打て」急かされた結果…接種記録遅れ現場混乱”. 朝日新聞デジタル (株式会社朝日新聞社) 2021年7月26日閲覧。
関連項目
[編集]- 新型コロナウイルス接触確認アプリ (COCOA)
- 新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム (HER-SYS)
- 新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム (G-MIS)
- ワクチン接種円滑化システム (V-SYS)
外部リンク
[編集]- ワクチン接種記録システム(VRS)について - 政府CIOポータル
- VRS 自治体担当者向け情報 - 政府CIOポータル
- VRS 医療機関・職域接種等 会場担当者向け情報 - 政府CIOポータル
- ワクチン接種記録システム(VRS)- 認証バッジ申請中さん (@VRS_JAPAN) - Twitter