日本のパワーハラスメント事例
日本のパワーハラスメント事例では、日本におけるパワーハラスメントの事例を記載する。
事例
※電通関連は電通#不祥事や諸問題も参照。
1991年
- 1991年8月27日、電通に入社して2年目の男性社員(当時24歳)が、自宅で自殺した。男性社員の1か月あたりの残業時間は147時間にも及んだとされる[1]。遺族は、会社に強いられた長時間労働によりうつ病を発生したことが原因であるとして、会社に損害賠償請求を起こした。これは、過労に対する安全配慮義務を求めた最初の事例とされ[2]、この訴訟をきっかけとして過労死を理由にした企業への損害賠償請求が繰り返されるようになったといわれる[2][3][1]。2000年、この裁判は同社が遺族に1億6800万円の賠償金を支払うことで結審した[4]。判決では、酒席で上司から靴の中に注がれたビールを飲むよう強要されたり、靴の踵で叩かれるなどのパワーハラスメントの事実も認定された[5]。
1999年
アカス紙器事件
2002年
トナミ運輸事件
- 串岡弘昭がトナミ運輸勤務中に内部告発を行ったため、研修所に異動後は雑用を強いられた上に昇給すらなく、暴力団からも脅迫され冷遇されたとして、2002年(平成14年)に訴訟を起こした[7][8]。この訴訟は公益通報者保護法が出来る契機となった。
2004年
東急ハンズ心斎橋店事件
- 台所用品売り場で勤務していたA(死亡時30歳)は「残業予算」の範囲内で残業するよう毎日のように指導される一方、過剰な仕事量を課せられ、予算内では終わらず、サービス残業を強いられた[9][10]。0時頃に帰宅する日々が続き、マネージャーから怒鳴り散らされ続け、心身に不調をきたし、2004年3月の就寝中に妻と子を残して心臓性突然死で死亡[9][10]。遺族は労災を申請し、2007年11月に大阪中央労基署は労災認定した[9][10]。2010年2月には会社を相手取り、計9100万円の損害賠償を求めて神戸地裁に提訴し、2013年3月に東急ハンズに計7837万円の支払いを求める判決が下った[9][10]。
前田道路事件
- 社員の男性(当時43歳)は、愛媛県内の同社営業所に勤務していた2004年7月頃から、四国支店(高松市)の上司に何度も呼び出され「この成績は何だ」「会社を辞めれば済むと思っているんじゃないか」などと叱責され、同年9月に自殺した。新居浜労働基準監督署は労災認定し遺族側に通知した。自殺した男性はパワーハラスメントを受けていただけでなく、下請け会社への未払いの工事代金まで家計から穴埋めしていたという[11]。
2005年
秋田県警察事件
- 当時本荘署(現・由利本荘署)に勤務していた当時48歳の男性警部が、上司の副署長から大声で叱責を繰り返されるなどパワハラ行為を受け、2005年(平成17年)2月に自殺した。県警は、その後交通部長となっていたこの元副署長について、本部長訓戒処分としていたが、「関係者へのプライバシーの配慮」を理由に、2014年(平成26年)3月に報道されるまで公表していなかった[12]。
2007年
日研化学(現・興和創薬)事件
- パワーハラスメントが原因とされる男性会社員の自殺事件について、自殺の原因は上司の暴言にあったとして、2007年に東京地裁が初の労働災害認定を行なった。労働基準監督署が労災として認めなかったため争われていた裁判だが、この事件がパワーハラスメントに起因する自殺を労災と認めた初の司法判断となった[13]。
大東建託事件
- 社員の男性(当時42歳)は、静岡県藤枝市の支店に勤務していた際、2005年に担当したマンションの建築工事における損失の一部約360万円を自己負担するよう会社側から強要され、精神的に追い詰められて2007年(平成19年)10月に自殺した。遺族が損害賠償を求めて同社を静岡地裁に提訴し[14]、自殺の原因は上司からのパワーハラスメントであるとして、島田労働基準監督署(静岡県島田市)が労災認定した[15]。
2009年
松戸市消防局事件
- 暴言や暴力などのパワーハラスメントを受けたとして新人訓練生から損害賠償を求める訴訟を起こされ、2009年に訓練指導員と上司の計11人が処分された[16]。
2010年
ステーキのくいしんぼ(サン・チャレンジ運営)事件
- 2010年(平成22年)11月に、店長として勤務していた当時24歳の男性が自殺。男性の遺族は、サン・チャレンジや当時の上司らに対し、約7,300万円の支払いを求め東京地方裁判所に提訴した。この男性は、東京都渋谷区の2店舗での勤務時、1日当たりの勤務時間が12時間を超えており、休暇もほとんど取れない状況だった。また上司から暴言や暴行を何度も受けており、これらが元で強度の心理的負荷が生じていたとされた。2014年(平成26年)11月4日に同地裁は遺族の主張を認め、パワハラ等以外の原因は認められないとした上で、サン・チャレンジに対し約5,800万円の支払いを命じた[17]。
2011年
- 2011年からパート従業員として勤務していた女性が、上司から「何でいつもへろへろになるまで仕事するの?」など、真面目な勤務態度を繰り返し揶揄されたり、同僚との間で起こったトラブルについて「仕事放棄は人としてどうか」「謝罪がなければ帰って結構だ」などと叱責されたことから、同年10月に退職。女性はパワーハラスメントによって退職を余儀なくされたとして大阪地方裁判所に訴訟を提起した。同地裁で2019年7月11日付で、同社と上司が合わせて100万円の和解金を支払う条件で和解が成立した。この女性はその後も同社のCMが流れると苦痛を感じると話した[18]。
熊本県農水商工局事件
- 男性係長と男性技術参事の2人が、2009年(平成21年)6月から2011年(平成23年)7月頃にかけ、部下の職員が公用車の運転中に道を間違えたことをきっかけに、寿司やウナギなどの昼食を次々に奢らせたり(最終的には100万円以上に達した)、正座を強要するなどのパワハラを執拗に繰り返し、2011年(平成23年)12月26日に停職6ヵ月の処分となった[19]。
2012年
いわしんビジネスサービス(磐田信用金庫関連会社、静岡県)事件
- 男性職員が、同社社長と社長代理の2名から、2009年10月頃から2010年(平成22年)4月にかけてパワーハラスメントを受け、うつ病を発症。2012年4月に審査請求を経て労災認定された[20]。
- 2010年に入社した当時24歳の男性社員は、2012年から上司となった46歳の男性から仕事内容について注意を受けた際に「殺すぞ」などの暴言を受けるなどし、同年5月に自殺した。男性の遺族は神戸労働基準監督署に労災申請したものの棄却されたため、大阪地方裁判所に訴訟を提起。一審では訴えが退けられたが、2017年9月29日の大阪高等裁判所の二審判決では労災認定し遺族への補償を命じた[21]。
2013年
日本電産事件
- 長時間労働や無理難題な業務を押し付けられたり、意味なく詰られるなどパワーハラスメントを受け、うつ病で精神神経科に通院したとされる元社員 Aによる訴訟が発生[22]。日本電産は2012年10月末を以てAとの雇用契約を打ち切り、雇止めとしたとされている[22]。Aは職場の改善を求め、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)京滋地方本部に相談し、労働組合に加入して団体交渉をし、京都職対連の支援を受け、うつ病について労災申請も行ったが、会社は団体交渉でも態度を変えず、パワハラについても認めず、雇止めを強行したという[22]。2013年2月にAのうつ病について業務上の物であるとの労災認定が下されている[22]。
- 元総務課長の男性は、同学の4年制大学への移行に向けて文部科学省との折衝担当となったが、認可直前の2009年(平成21年)9月から、上司らによるパワハラ・退職強要等の嫌がらせを受けうつ病を発症した。2011年(平成23年)に横浜北労働基準監督署は男性への上司らのよるパワハラ・退職強要とうつ病発症の因果関係を認め労災認定した。男性は労災とは別に上司3人と、同学を運営する学校法人トキワ松学園に対し損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こしていたが、2013年(平成25年)5月東京高裁で学園側が和解金を支払い、再発防止義務を負うことで最終的に和解が成立した[23]。
ゼリア新薬工業事件
- 2013年4月に入社した当時22歳の男性が同年5月18日に自殺した。この男性は同年4月から8月にかけて研修会社が行った「意識行動変革研修」と称する入社研修中に、男性講師から吃音症と決め付けられ、いじめに遭った経験を同期入社の新入社員42人の前で言わされるなどした。これにより男性は精神障害(統合失調症)を発症し、東京都内に一時帰宅する途中で自殺。2015年5月に東京労働局中央労働基準監督署は労災認定した。男性の遺族は2017年8月8日、同社に対して約1億510万円の損害賠償を求め東京地方裁判所に提訴した[24]
- 2013年(平成25年)4月に当時28歳の男性巡査長が新人刑事として配属されたが、上司に当たる49歳の男性警部補らはこの巡査長に対し、連日大声で怒鳴り付けたり回し蹴りするなどのいじめやパワハラを行い、この巡査長は同年9月に首吊り自殺した。府警は2014年(平成26年)3月に、関わった警部補ら刑事課員4人を減給などの処分とした[25]。
2014年
警視庁蒲田警察署地域課事件
- 2014年(平成26年)2月、男性巡査長が署内のトイレで拳銃自殺した。警視庁の調べで、上司に当たる男性警部補がこの巡査長を含む数名の部下の警察官に対し「身の振り方を考えろ」等の暴言を浴びせるなどして辞職を強要していたことが明らかとなり、警視庁は同年4月にこの警部補を減給処分としたほか、当時の地域課長や署長についても訓戒や口頭注意の処分とした[26]。
- 2014年(平成26年)4月下旬、課長補佐の51歳の男性警部と、その上司である指導官の52歳の男性警視が相次ぎ自殺した。県警が調査したところ、当時の捜査2課長である45歳の男性警視が自殺した警部を含む3人の警部に対し、2013年(平成25年)5月頃から2014年(平成26年)4月頃に掛けて「小学生みたいな文章を作るな」「あんたは係長以下だ」等の暴言を浴びせるなどのパワハラ行為を行っていたことが明らかとなった。また指導官の自殺については、警部の自殺に責任を感じてのものと結論付けられた。県警は2014年(平成26年)6月26日付で、当該の捜査2課長を戒告処分とした上、27日付で県警警務部付に更迭した[27]。
群馬大学大学院事件
- 2014年(平成26年)11月20日、医学系研究科の男性教授が、2011年(平成23年)から2013年(平成25年)にかけて、同じ研究室に勤務する部下の助教や講師ら計5人に対し継続的にパワハラ行為を行っていたとして懲戒解雇処分となった。この中には女性に対し「結婚は三角、出産はバツ」という旨の発言をした例もあった[28]。
2015年
サントリー事件
- 社員 Aは(当時34歳)は2006年4月に配属されたグループで指示通りの成果を残せず、上司から「新入社員以下だ。もう任せられない」「何で分からない。おまえはばか」と言われ、重度の鬱病に罹り、2007年7月に休職、翌年に復帰[29][30][31]。その後コンプライアンス室に訴えたがパワハラとは認められず、2012年6月に加害者のN部長・コンプライアンス室長・会社を相手取り、東京地裁に提訴[29][30][31]。Aは裁判の心労もあり2014年2月に二度目の長期休養に入った[29][30][31]。2014年7月の一審判決、2015年1月の東京高裁判決ともにN部長と会社の不法行為を認定し、165万円の損害賠償支払いで確定した[29][30][31]。しかしサントリーは「主張が認められず残念。控訴も検討する」と発表し、判決確定後も会社の謝罪は無く、復職できずにいた[29][30][31]。Aは東京管理職ユニオンに加入して交渉し、復職プログラムを開始することが決定した[29][30][31]。
ヤマト運輸事件
- 従業員のAは2012年秋頃より上司から暴行や暴言を約2年間受け続け、2015年1月に自殺[32]。Aが残した録音やメモには暴行を受けている音や「小学生以下だお前は。半身不随にしてやろうか」などという暴言が記録されていた[32]。2017年に遺族が同社と当時の上司に計約9500万円の損害賠償を求める訴訟を長野地裁に起こした[32]。
大阪府教育委員会事件
- 2015年(平成27年)2月20日、教育長が自らと意見を異にする職員数人に対し配置転換や解職などを仄めかしたり、教育委員の一人に罷免要求をちらつかせるなどのパワハラ行為をしていたと、第三者委員会が報告。教育長は当初続投を希望していたが、同年3月11日に辞任を表明[33]。これを受け、当時の教育委員長も辞任を表明した[34]。
東京大学大学院生事件
- 関西地区の私立大学に所属する30歳代の女性研究者が、2009年(平成21年)に東京大学大学院医学系研究科の48歳の男性医師と知り合い、共同研究を行うようになったが、この医師は社会的地位を背景に、女性研究者に暴力を伴ったセクハラやパワハラを行うようになり、これが元で女性研究者は心的外傷後ストレス障害 (PTSD) を発症した。女性研究者はこの講師を相手取り神戸地方裁判所に提訴。男性医師は「セクハラではない」と主張したが、2015年(平成27年)7月30日に同地裁は女性研究者の訴えを認め、当該の男性講師に計1,126万円の支払いを命じる判決を言い渡した[35]。
2016年
- 勤務していた当時30歳の女性が2016年に自殺したのは、職場の上司や社長らからパワハラを受けたことが原因として、遺族が2019年4月に薬局の運営会社を相手取り、大阪地方裁判所に訴訟を提起した。女性は社員旅行の幹事を担当した際、旅行中に上司から大声で罵倒されるなどしてうつ病を発症し、会社はこれを把握した後も仕事量を減らさず、健康への配慮を怠ったと主張している[36]。
- 当時52歳の男性警部が、2016年3月から7月にかけて、当時の署長から決済書類を巡り大声での叱責を受けたり、幹部会議で発言した際に強い非難を受けるなどしたことが原因で、精神状態が悪化し同年7月に自殺。地方公務員災害補償基金埼玉県支部は2017年3月に、警部の自殺は署長によるパワーハラスメントが原因であるとして公務災害と認定した[37]。
2017年
トヨタ自動車事件
- 男性社員(当時28歳)が2017年に自殺したのは、上司からパワハラを受け適応障害を発症したのが原因だったとして、豊田労働基準監督署が労災認定していたことが2019年11月に明らかになった[38]。男性の遺族の代理人弁護士によると、男性は東京大学大学院を卒業後にトヨタ自動車に入社[39]。入社2年目の2016年3月から本社の車両設計部門に配属されたが、上司から「死んだ方がいい」「なめてんのか」「学歴ロンダリングだ」と言われるなどのパワハラを日常的に受けるようになり[39][40]、個室に呼ばれ「発言を録音してないだろうな。携帯電話を出せ」と言われたとも相談していたが[41]、同年6月頃には精神疾患を発症した[42]。翌月から3ヶ月間休職し、別のグループに異動して職場に復帰したが、席は同じ上司のすぐ近くだった[40]。2017年10月30日、男性は社員寮の自室で自殺した[40]。トヨタ自動車は当初、社内調査を踏まえパワハラと自殺との因果関係は否定したが、2019年9月に豊田労働基準監督署は遺族の主張に沿う形で労災を認定した[43]。豊田社長は男性社員の自殺が報道された後の2019年11月、「ニュースで初めて知った。取り返しのつかないことになってしまい、心からお詫びします」と、遺族を訪ねて頭を下げたほか、和解成立時の2021年4月にも大阪市内で遺族と面会し、謝罪した[43]。和解したのは4月7日付だが、和解金の金額は非公表である[43]。
2018年
劇団四季事件
- 所属の27歳の男性俳優が、横浜市内のマンションの同僚俳優の部屋から飛び降りていたことが、2018年9月に明らかになった。飛び降りた俳優は一命は取り留めたものの重傷を負った。56歳の男性俳優からパワーハラスメントを受けていたためとされ、劇団四季は調査委員会を設置し調査を行ったが、プライバシー保護を理由に当事者の俳優らの氏名は公表していない[44]。
- 2018年9月10日、所属補給艦「ときわ」で、30歳代の男性三尉が自殺しているのが見付かった。これを受け海自は、同年11月末に乗員らに対しアンケートを実施したところ、艦長の男性二佐から「休むな」と指示されたほか、他の上官からも「死ね」「消えろ」などの暴言を受けるなど、パワハラを指摘する記述が多数寄せられた。また艦長は他の乗員にもパワハラをしていた疑いも指摘された[45]。海自はパワハラに関わったとされる艦長について、護衛艦隊司令部付に更迭した[46]。
広島大学事件
- 2018年12月28日、在職中に学生らに暴言を吐くパワーハラスメント行為を繰り返したとして、元教授(60歳代、男性)を諭旨解雇相当に認定したと発表した。認定は同月18日付。元教授は大学の調査に応じないまま、12月上旬に退職した[47]。
2019年
- 2019年5月から6月にかけて教育実習に参加した20歳代の男性が、指導教諭から「こんなこともできないのか」などと他の教諭らが見ている前で繰り返し叱責を受け、また無視するような態度を取られるなどして抑うつ状態となり、2週間ほど休んだ。同市教育委員会は「通常の指導の範囲内だった」としつつ、パワーハラスメントに当たらないか調査を開始した[49]。
兵庫県神戸市立東須磨小学校事件
- 2019年9月、男性教諭が複数の先輩教諭からパワーハラスメントを受け、精神的に不安定になり自宅療養していたことが明らかになった。この事件はマスメディアでも大きく報じられた。→詳細は「神戸市立東須磨小学校 § 不祥事」を参照
2020年
大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)事件
- 経理担当として勤務していた当時40歳代の男性社員が、2020年3月に同社本社内で自殺しているのが発見された。同社で調べたところ、この男性の上司に当たる50歳代の男性課長が、2019年夏頃から、当該の男性社員に対し、人格否定などに当たりかねない言葉を執拗に浴びせるなどしていた模様である。また、この男性社員は、2019年1月頃より病気休職から復帰し、産業医の指示で超過勤務を制限されていたにもかかわらず、この男性課長は制限を超えた残業を命じたりしていた。同社はこの課長について、パワハラ行為があったと認めた上で、停職1カ月の懲戒処分とした上で係長に降格した[51]。また、当該の自殺した社員について、大阪西労働基準監督署が、長時間労働によって精神疾患を発症したことが自殺の原因であるとして、労働災害と認定していたことが2021年6月に明らかになるが、パワハラとの因果関係については判断していない[52]。
2021年
全日本柔道連盟事件
- 複数の職員が先輩職員の一人から、激しい叱責を受けたり、業務時間外に仕事を求められるなど、パワハラを窺わせる言動を受けていた事実が、2021年2月に明るみに出た。当該の幹部職員は、同年2月に自己都合退職。同連盟の山下泰裕会長は「今回は事務局内の案件であり、外部に公表する案件ではないと判断した」としつつ、責任を取る形で会長を退く可能性を示唆した[53]。
兵庫県警察事件
- 50歳代の男性警部補(勤務先は非公表)が、2019年5月から2020年12月にかけ、部下5人に対し立たせたまま説教するなどのパワーハラスメント行為をしていたことが明らかになった。うち、子供がいる部下の一人に対しては、行方不明になっていた警察犬「クレバ号」と同じ名前を付けたらどうか、との発言もあった。県警は2021年3月5日付でこの警部補を本部長訓戒の処分とした[54]。
兵庫県西消防署南部出張所事件
- 宝塚市消防本部は男性消防司令補2名が、同僚に対しオンラインゲームへの参加を強要するなどのパワハラ行為をしていたとして、2021年3月16日に2人をそれぞれ停職10ヵ月と減給10分の1の処分とした[55]。
- 2007年から勤務していた男性が、陳列のミスや遅刻をしたことを切っ掛けに、店主から日常的に叱責されたり、殴る蹴るの暴行を受けたりするようになり、また、店の釣り銭の残高が合わないなどとして350万円の賠償を求められ、退職する2014年6月までの約2年間は無給で働かされたほか、377日連続で無休で働かされたりもした。男性は2015年9月に店主とローソン本部を相手取って大阪地方裁判所に提訴。ローソンの本部は「店主に労務管理を指導する義務はない」などと反論していたが、2021年6月10日に、本部側が男性に解決金を支払うことで同地裁で和解が成立した[56]。
2022年
中部方面警務隊本部事件
- 50歳代の男性幹部自衛官が、伊丹駐屯地で数人の部下に対し「返事をしない奴は殺したくなる」などパワハラに当たる発言をしたとして、同駐屯地はこの幹部自衛官を2022年7月19日付で停職3日の処分とした[57]。
- すかいらーくグループが運営する「ジョナサン」の東京都港区 芝公園店において、2020年9月から2022年4月まで、従業員 A(男性・30代)が当時の店長 Bから暴力・暴言・土下座のパワーハラスメントが繰り返され、2021年8月には店長 Bの暴力によってAが肋骨を骨折した[58][59][60][61][62]。三田労働基準監督署がいずれも労働災害であると認定し、2022年7月26日に療養補償給付(治療費)の支給を決定した[58][63]。また、Aは勤怠記録を付けずに働くよう事実上指示されており、多い時には店長 Bから月190時間ほどの残業を強いられ、過重労働も発生していたという[62]。店長 Bは2022年4月に解雇されたが[60]、AとNPO法人は2022年7月22日に会見を行い[62]、店長 Bに対し、傷害容疑での刑事告訴を検討した[60][62]。
ウクライナ人人種差別事件
奈良県奈良市のヘリコプター運営会社「アカギヘリコプター」(本社は東京都)勤務員のウクライナ人 A(女・27歳)が、上司から「野良犬」と暴言を吐かれ、人種差別的なパワハラを受けたとして、9月9日に慰謝料など約550万円を求めて奈良地裁に提訴した[64][65][66]。Aはヘリコプター運営会社の基地で契約社員として4年間勤務しており、2022年ロシアのウクライナ侵攻が原因で、ロシアとの商取引に関わった場合にウクライナで反逆罪に問われる恐れがあるため、ロシア関係の仕事から除外してもらうように要望していたが、上司から「挨拶できひん奴は野良犬と一緒や、俺からしたら。気持ち悪い。人間的に気持ち悪い」「お前は何もしていないのに何で給料をもらっているのか」と度重なるパワハラを受けていたという[64][65][66]。また2022年ロシアのウクライナ侵攻について、Aに聞こえるように「ウクライナも悪い」などと発言していたという[64][65][66]。
脚注
- ^ a b 岩波明 (2006). ポケット図解 臨床心理学がよ~くわかる本. 秀和システム p.46
- ^ a b 濱本真男「「電通事件」判決の黙示」『Core ethics : コア・エシックス』第8巻、立命館大学、2012年、341-350頁。
- ^ 外井浩志 (2012). 労災裁判例に学ぶ企業の安全衛生責任. 労働新聞社 p.46
- ^ 川口友万 (2015). みんなのための「ストレスチェック制度」 明解ハンドブック. 双葉社 p.19
- ^ “2008 予防時報 過労自殺の現状と課題” (PDF). 2011年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月20日閲覧。
- ^ “水戸パッケージ知的障害者虐待事件 publisher = www.arsvi.com”. 2019年5月9日閲覧。
- ^ 「トナミ運輸賠償訴訟」 富山地判平成17年2月23日 平成14年(ワ)第17号
- ^ トナミ運輸事件判決後のコメント
- ^ a b c d “東急ハンズ新卒社員、パワハラマネージャーから罵倒&サビ残の日々で30歳過労死 遺族が一審全面勝訴:MyNewsJapan”. web.archive.org (2021年12月23日). 2022年8月20日閲覧。
- ^ a b c d “過労死認定、東急ハンズに7800万円賠償命令 神戸地裁: 日本経済新聞”. web.archive.org (2022年1月27日). 2022年8月20日閲覧。
- ^ 『読売新聞』2005年(平成17年)10月28日[要ページ番号]
- ^ パワハラ受けた男性警部が自殺 秋田県警、公表せず 日本経済新聞 2014年(平成26年)3月2日
- ^ 「静岡労基署長遺族補償不支給処分取消事件」 東京地裁平成19年10月15日判決 平成18(行ウ)143
- ^ “大東建託の社員遺族が提訴 「超過工事費強要で自殺」”. 共同通信. (2009年11月24日)
- ^ 毎日新聞 2010年(平成22年)6月5日
- ^ “パワハラで消防局上司ら11人処分”. 毎日jp (毎日新聞社). (2009年7月2日)[リンク切れ]
- ^ 店長自殺:会社に全責任 過労とパワハラ 過失減額認めず−−東京地裁判決 毎日新聞 2014年(平成26年)11月5日
- ^ 真面目に勤務、バカにされ退職「サカイCM流れると苦痛」 読売新聞 2019年7月26日
- ^ “部下に昼食100万円たかる…熊本市係長ら停職”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2011年12月26日). オリジナルの2011年12月26日時点におけるアーカイブ。
- ^ 『朝日新聞』静岡版2012年(平成24年)4月25日[要ページ番号]、『読売新聞』静岡版2012年(平成24年)4月26日[要ページ番号]
- ^ パワハラ自殺 遺族側、逆転勝訴 大阪高裁が労災認定 毎日新聞 2017年9月29日
- ^ a b c d “JMIU日本電産事件解決のご報告 | 京都第一法律事務所/創立60年の確かな実績|京都弁護士会所属”. web.archive.org (2021年4月20日). 2022年7月16日閲覧。
- ^ “パワハラ:「うつ病」労災認定 大学の元総務課長に”. 毎日jp (毎日新聞社). (2012年7月5日)[リンク切れ]
- ^ ゼリア新薬 自殺新入社員、労災認定 遺族が会社を提訴 毎日新聞 2017年8月9日
- ^ 大阪府警がいじめ、パワハラで4人懲戒…被害部下は自殺 読売新聞 2014年(平成26年)3月6日
- ^ 警視庁蒲田署の警官自殺:原因はパワハラ 上司の警部補を減給 毎日新聞 2014年(平成26年)4月22日
- ^ 福島県警:上司パワハラ 警部自殺、一因と認め戒告 毎日新聞 2014年(平成26年)6月27日
- ^ パワハラ:群馬大、40代男性教授を解雇 毎日新聞 2014年(平成26年)11月21日
- ^ a b c d e f “サントリー「パワハラうつ病」事件 東京高裁が上司と会社の不法行為を認定し損害賠償165万円支払命令、復職プログラム開始:MyNewsJapan”. web.archive.org (2021年12月2日). 2022年8月20日閲覧。
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