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{{Otheruses|薄嚢シダ類と真嚢シダ類を合わせた側系統群|近年では単にシダ類とも呼ばれるトクサ類とマツバラン類を含む単系統群|大葉シダ植物}} |
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{{出典の明記|date=2018-06}} |
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{{混同|シダー}} |
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{{Redirect|シダ|ミジンコの一種|シダ (ミジンコ)}} |
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{{生物分類表 |
{{生物分類表 |
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|名称 = シダ |
|名称 = シダ類(廃止) |
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|色 = |
|色 = 植物界 |
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|画像= [[画像:PolypodFronds2.jpg|250px]] |
|画像= [[画像:PolypodFronds2.jpg|250px]] |
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|画像キャプション = |
|画像キャプション = |
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|界 = [[植物界]] |
|界 = [[植物界]] {{sname||Plantae}} |
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|門 = [[シダ植物門]] |
|門 = [[シダ植物|シダ植物門]] "{{sname||Pteridophyta}}" |
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|門階級なし = [[大葉シダ植物]] {{sname||Moniliformopses}} |
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|綱 = '''シダ綱''' [[:w:Pteridopsida|Pteridopsida]] |
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|綱 = '''シダ綱''' "{{sname||Pteridopsida}}" |
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|下位分類名 = 下位分類 |
|下位分類名 = 下位分類 |
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|下位分類 = |
|下位分類 = |
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* [[薄嚢シダ類]] |
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* [[真嚢シダ類]](側系統) |
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** [[ハナヤスリ目]] {{Sname||Ophioglossales}} |
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** [[リュウビンタイ目]] {{Sname||Marattiales}} |
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}} |
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'''シダ類'''(シダるい、羊歯類、{{lang-en-short|Ferns}})は、一般に「'''シダ'''」('''羊歯'''、歯朶)と総称される[[維管束植物]]の一群である{{Sfn|山田ほか|1983|p=524}}{{Sfn|新村|2008|p=1237}}{{Sfn|伊藤|1972|pp=8–10}}。伝統的分類および一般的な文脈では、[[薄嚢シダ類]]に加え、合わせて[[真嚢シダ類]]とも呼ばれる[[リュウビンタイ目]]と[[ハナヤスリ目]]を含む分類群を指す{{Sfn|山田ほか|1983|p=524}}{{Sfn|伊藤|1972|pp=8-10}}。 |
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かつては[[シダ植物#伝統的分類|シダ植物の伝統的分類]]において、[[マツバラン目|マツバラン類(無葉類)]]、[[小葉植物|ヒカゲノカズラ類(小葉類)]]および[[トクサ目|トクサ類(楔葉類)]]とともに'''シダ類(大葉類)'''として[[シダ植物]]に含められ{{Sfn|海老原|2016|pp=16–17}}{{Sfn|伊藤|1972|pp=8-10}}{{Sfn|村上|2012|pp=67–73}}{{Sfn|伊藤|2012|pp=116–129}}、多く'''シダ綱'''(シダこう、{{sname||Pteridopsida}}, {{sname||Filicopsida}})として[[綱 (分類学)|綱]]の階級に置かれた{{Sfn|山田ほか|1983|p=524}}{{Sfn|村上|2012|pp=67–73}}。1920年代以降、系統的に4群が遠縁と考えられるようになり、'''シダ門''' {{sname||Pterophyta}} や'''シダ類亜門''' {{sname||Pterophytina}} としてより上位の分類階級に置くこともあった{{Sfn|田川|1959|pp=1–5}}{{Sfn|岩槻|1975|pp=157–193}}。しかし分子系統解析により、シダ植物だけでなくシダ類自身も側系統群であることが判明し、本項の示す「シダ類」は分類群としては現在ではもはや用いられない{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1642}}{{Sfn|PPG I|2016|pp=563–603}}。なお、[[#CITEREFSmith_et_al.2006|スミスら (2006)]] の分類体系では「シダ綱 {{sname||Filicopsida}}」は[[薄嚢シダ類]]を指す分類群として用いられていた{{Sfn|Smith ''et al.''|2006|pp=705–731}}。 |
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近年では分子系統解析により、伝統的なシダ類にマツバラン類およびトクサ類を含めたグループが単系統群をなすことが明らかになっており、それをまとめて「シダ類 ferns」と呼ぶことも多くなっている{{Sfn|海老原|2016|pp=16–17}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1642}}。このグループは {{Harvtxt|Kenrick|Crane|1997}} において "{{sname||Moniliformopses}}" と呼ばれた群に相当し{{Sfn|Kenrick|Crane|1997|pp=226–259}}、「モニロファイツ」や「大葉シダ類」と呼ばれる{{Sfn|長谷部|2020|pp=143–150}}ことも多く、この単系統群については「[[大葉シダ植物]]」にて解説する。 |
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== 「シダ」 == |
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[[File:W urajiro5041.jpg|thumb|250px|単に'''シダ'''とも呼ばれる[[ウラジロ]] {{snamei||Diplopterygium japonica}}。]] |
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'''シダ'''('''羊歯'''、歯朶)という言葉は、本項で示すシダ類を指す場合に加え{{Sfn|新村|2008|p=1237}}、[[シダ植物]]を指すこと{{Sfn|新村|2008|p=1237}}{{Sfn|加納|2007|p=146}}、および特に[[ウラジロ]]を指すことがある{{Sfn|伊藤|1972|p=1}}{{Sfn|新村|2008|p=1237}}{{Sfn|西田|1997|pp=73–76}}。和名の「シダ」の語源は「しだれる」と同源であるとされる{{Sfn|加納|2007|p=146}}{{Sfn|加納|2008|p=407}}。シダは[[方言]]または古名で'''デンダ'''や'''カグマ'''と呼ばれる{{Sfn|岩槻|1992|p=156}}{{Sfn|岩槻|1992|p=226}}{{Sfn|鈴木|1997|pp=9–15}}{{Sfn|加藤|1997a|pp=19–24}}{{Sfn|今市|1997|pp=60–61}}。このうち、「デンダ」は「連朶」が訛ったものだとされ{{Sfn|岩槻|1992|p=226}}、そう漢字表記される{{Sfn|桶川・大作|2020|p=66}}。また、標準和名[[シノブ]] {{snamei||Davalia mariesii}} として扱われる「'''シノブ'''」もシダの古名の一つである{{Sfn|岩槻|1992|p=115}}。 |
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漢名の「羊歯」は葉が連なり生じて毛のある姿を[[羊]]の[[歯]]に喩えたとされる{{Sfn|加納|2007|p=146}}。特に[[オシダ科]]の[[オシダ]] {{Snamei||Dryopteris crassirhizoma}} を指すこともある{{Sfn|加納|2007|p=407}}。中国では羊歯の名は[[爾雅]]のみに見られたが、日本では[[平安時代]]にシダに当てている{{Sfn|加納|2008|p=407}}。 |
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== 系統関係 == |
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以下に {{Harvtxt|Wickett ''et al.''|2014}} や {{Harvtxt|Puttick ''et al.''|2018}} による大規模な遺伝子を用いた分子系統解析に基づく、陸上植物の系統樹を示す{{Sfn|長谷部|2020|pp=1–4, 68–70}}。本項の示すシダ類である旧シダ綱は[[薄嚢シダ類]]と[[真嚢シダ類]]からなるが、このうち真嚢シダ類は[[クレード]]から[[マツバラン類]]を除いた[[側系統群]]であり、シダ綱も側系統となる。 |
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{{clade |
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|style=width:45em;font-size:100%;line-height:100% |
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|label1=[[陸上植物]] |
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|1={{clade |
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|1=[[コケ植物]] |
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|label2=[[維管束植物]] |
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|2={{clade |
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|barbegin1=green |
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|grouplabel1=<span style="color:green">シダ植物</span><br />"{{sname||Pteridophyta}}" |
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|label1=[[小葉植物]] |
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|sublabel1={{Sname||Lycophyta}} |
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|1={{clade |
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|1=[[ヒカゲノカズラ目]] {{Sname||Lycopodiales}} |
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|2={{clade |
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|1=[[イワヒバ目]] {{Sname||Selaginellales}} |
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|2=[[ミズニラ目]] {{Sname||Isoetales}} |
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}}}} |
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|label2=[[大葉植物]] |
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|sublabel2={{Sname||Euphyllophyta}} |
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|2={{clade |
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|barend1=green |
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|label1=[[大葉シダ植物]] |
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|sublabel1={{Sname||Monilophyta}} |
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|1={{clade |
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|1=[[トクサ目]] {{Sname||Equisetales}} |
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|2={{clade |
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|1={{clade |
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|1={{clade |
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|1=[[マツバラン目]] {{Sname||Psilotales}} |
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|style2=background-color:#ffdddd |
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|2=[[ハナヤスリ目]] {{Sname||Ophioglossales}} |
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}} |
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|style2=background-color:#ffdddd |
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|2=[[リュウビンタイ目]] {{Sname||Marattiales}} |
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}} |
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|style2=background-color:#ffdddd |
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|2=[[薄嚢シダ類]] {{sname||Polypodiidae}} |
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|grouplabel2='''<span style="color:red">旧シダ綱</span>'''<br />"{{sname||Pteropsida}}" |
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}} |
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}} |
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|2=[[種子植物]] |
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}} |
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}} |
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}} |
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なお、Pryer ら ([[#CITEREFPryer_et_al.2001|2001]]; [[#CITEREFPryer_et_al.2004|2004]])による、[[プラスチド]]の''[[リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ|rbcL]]''、''[[ATP合成酵素|atpB]]''、''[[リボソーム|rps4]]''、および核の18S [[rDNA]]の4遺伝子を用いた古い分子系統解析では、次のような系統樹が描かれ、真嚢シダ類が[[多系統]]となっていた{{Sfn|Pryer ''et al.''|2001}}{{Sfn|Pryer ''et al.''|2004}}。 |
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{{clade |
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|style=width:45em;font-size:100%;line-height:100% |
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|label1=[[維管束植物]] |
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|1={{clade |
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|barbegin1=green |
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|grouplabel1=<span style="color:green">シダ植物</span><br />"{{sname||Pteridophyta}}" |
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|sublabel1={{Sname||Lycophyta}} |
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|1={{clade |
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|1=[[ヒカゲノカズラ目]] {{Sname||Lycopodiales}} |
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|2={{clade |
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|1=[[イワヒバ目]] {{Sname||Selaginellales}} |
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|2=[[ミズニラ目]] {{Sname||Isoetales}} |
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}}}} |
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|label2=[[大葉植物]] |
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|sublabel2={{Sname||Euphyllophyta}} |
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|2={{clade |
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|barend1=green |
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|label1=[[大葉シダ植物]] |
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|sublabel1={{Sname||Monilophyta}} |
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|1={{clade |
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|1={{clade |
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|1=[[マツバラン目]] "Whisk ferns" |
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|style2=background-color:#ffdddd |
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|2=[[ハナヤスリ目]] "Ophioglossoid ferns" |
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}} |
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|2={{clade |
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|grouplabel2='''<span style="color:red">シダ類</span>'''<br />"True ferns" |
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|1={{clade |
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|1=[[トクサ目]] "Horsetails" |
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|style2=background-color:#ffdddd |
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|2=[[リュウビンタイ目]] "Marattioid ferns" |
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}} |
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|style2=background-color:#ffdddd |
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|2=[[薄嚢シダ類]] "Leptosporangiate ferns" |
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}} |
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}} |
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|2=[[種子植物]] |
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}} |
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}} |
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}} |
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'''シダ綱'''(シダこう、[[学名]]:''Pteridopsida'')は、'''シダ'''('''羊歯'''、歯朶)を含む[[植物]]の[[綱 (分類学)|綱]]である。上位分類等に関しては[[シダ植物門]]を参照のこと。 |
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__TOC__{{-}} |
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== 特徴 == |
== 特徴 == |
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:{{Small|→ 生活環に関しては「[[シダ植物#特徴|シダ植物]]」も参照}} |
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シダの植物体は、多くのものは立ち上がらない[[茎]]から羽状複葉の[[葉]]を出すものである。 |
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シダ類の[[生活環]]は[[胞子体]]と[[配偶体]]が独立して生活する単複[[世代交代]]型である{{Sfn|岩槻|1997|pp=2–5}}。胞子体には[[根]]・[[茎]]・[[葉]]が分化する{{Sfn|岩槻|1975|pp=157–193}}。[[胞子]]は胞子体の[[胞子嚢]]の中に[[減数分裂]]の結果形成される{{Sfn|岩槻|1997|pp=2–5}}。ほとんどのシダ類では胞子は雌雄の差がない[[同形胞子性]]であるが、[[水生シダ類]]では[[大胞子]]と[[小胞子]]をつくる[[異形胞子性]]である{{Sfn|岩槻|1997|pp=2–5}}。胞子嚢は普通、[[背軸|裏面]]または[[葉縁]]に集まって'''[[胞子嚢群]]'''(ほうしのうぐん、ソーラス {{lang|la|sorus}}, ''[[複数|pl.]]'': {{lang|la|sori}})を作る{{Sfn|岩槻|1997|pp=2–5}}{{Sfn|山田ほか|1983|p=524}}。胞子嚢が1つの細胞に由来し、1層の細胞層からなるシダ類を[[薄嚢シダ類]](はくのうシダるい、{{lang|en|leptosporangiate ferns}})、胞子嚢が複数の細胞に由来し、複数の細胞層に包まれるシダ類を[[真嚢シダ類]](しんのうシダるい、{{lang|en|eusporangiate ferns}})という{{Sfn|伊藤|2012|pp=116–129}}{{Sfn|山田ほか|1983|p=524}}。薄嚢性は派生形質であり、薄嚢シダ類は単系統群である{{Sfn|伊藤|2012|pp=116–129}}。 |
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茎は短いか地面を這い、そこから葉を空中に伸ばす。葉は巻いた状態で作られ、巻きがほぐれるようにして葉を伸ばす。[[木生シダ]]類は直立した太い幹を作り、高さが10mに達するものがある。葉は羽状複葉のものが多いが、単葉のもの、特殊な分かれ方のものもある。鳥の羽のような形になるものが多いので、一般には複葉を構成する個々の葉身を小葉(しょうよう)というが、シダ類に限っては羽片(うへん)という。 |
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{{multiple image |
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|align=center |
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|footer=[[ホシダ]]の胞子嚢群 |
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|image1=Thelypteris acuminata hosida sorus01.jpg |
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|caption1=胞子嚢群の列 |
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|image2=Thelypteris acuminata hosida sorus02.jpg |
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|caption2=単一の胞子嚢群・腎臓型の包膜 |
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|image3=Thelypteris acuminata hosida sorus04.jpg |
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|caption3=胞子嚢 |
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|image4=Thelypteris acuminata hosida sorus05.jpg |
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|caption4=裂開した胞子嚢 |
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}} |
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茎は短く、[[木生シダ]]以外では地中生、着生、地表生であり'''根茎''' {{lang|en|rhizome}}と呼ばれる{{Sfn|山田ほか|1983|p=524}}。根茎には匍匐({{lang|en|creeping}})するもの、斜上({{lang|en|ascending}})するもの、直立({{lang|en|erect}})するものがある{{Sfn|海老原|2016|pp=9–15}}。[[木生シダ類]]の[[ヘゴ科]]では高く成長し、24 m に達するものもあるが、[[ハナワラビ類]]以外のシダ類の茎は[[肥大成長]]せず、[[木本]]ではない{{Sfn|岩槻|1997|pp=2–5}}{{Sfn|西田・橋本|1997|pp=66–70}}。木生シダ類の「幹 {{lang|en|trunk-like stem}}」は直立茎の周囲を不定根が覆ったものである{{Sfn|海老原|2016|pp=9–15}}。 |
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シダの栄養体は胞子体であり、普通、葉の裏面に[[胞子]]を作る。胞子は胞子のうの中に形成され、この時に[[減数分裂]]が行われる。胞子のうは普通は集まって小さな固まりになり、これを'''[[胞子嚢|胞子のう群]]'''(ほうしのうぐん、ソーラス)と呼ぶ。胞子のう群は葉の裏面に一定の形で配列し、分類上の重要な特徴とされる。 |
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多くのものでは、十分成長すれば、どの葉にも胞子のうがつくが、種類によっては胞子をつける葉が限られ、葉の形が違っていることがある。その場合、胞子をつけるのを'''胞子葉'''、つけないものを'''栄養葉'''とよぶ。普通、[[胞子葉]]は栄養葉より背が高く、細い。また、一枚の葉で、その一部に胞子をつける部分が分かれるものもある。 |
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=== 葉 === |
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胞子は発芽すると[[前葉体]]と呼ばれる薄膜状の植物体となり、その裏面に造精器と造卵器が作られる。造精器内に作られた[[精子]]は、雨水など自由な水がある状態で泳ぎだし、造卵器の中の[[卵]]まで泳ぎ着くと、そこで[[受精]]が行われる。受精卵はその場で発芽し、前葉体から栄養をもらう形で成長し、植物体が姿を見せる。その後、前葉体は枯れて、植物体は独り立ちする。 |
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[[File:Davalia frond parts ja.png|thumb|250px|[[トキワシノブ]] {{snamei||Davallia tyermannii}} の葉の各部の名称。3-4回羽状複葉。]] |
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{{See|羽葉}} |
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葉は'''[[大葉植物#大葉|大葉]]'''で、単葉からシダ型4-5回[[羽状複葉]]となるが{{Sfn|山田ほか|1983|p=524}}、羽状複生することが多く、特に'''[[羽葉]]'''({{lang|en|frond}})と呼ばれる{{Sfn|西田|2017|p=155}}。複葉の[[小葉]]({{lang|en|leaflet}})は特に'''羽片'''(うへん、{{lang|en|pinna}}, ''[[複数|pl.]]'': {{lang|en|pinnae}} )と呼ぶ{{Sfn|清水|2001|p=132}}。葉端の羽片を'''頂羽片'''({{lang|en|terminal pinna}})、それ以外を'''側羽片'''({{lang|en|lateral pinna}})、繰り返し構造となる羽片の更に1枚を'''小羽片'''({{lang|en|pinnule}})と呼ぶ{{Sfn|海老原|2016|pp=9–15}}。他の複葉と同様に羽片の付く軸を'''葉軸'''(中軸、{{lang|en|rachis}})、小羽片の付く軸を'''羽軸'''({{lang|en|pinna rachis}})と呼ぶ{{Sfn|海老原|2016|pp=9–15}}。 |
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葉の二形性は種によって異なり、'''二形'''(にけい、{{lang|en|dimorphic}})のものでは胞子嚢を付ける'''胞子葉'''(実葉、{{lang|en|fertile frond}})と胞子を付けない'''栄養葉'''(裸葉、{{lang|en|sterile frond}})に分かれる{{Sfn|海老原|2016|pp=9–15}}。また、区別のないものは'''同形''' {{lang|en|monomorphic}}、1枚の葉で胞子を付ける羽片と胞子を付けない羽片があるものは'''部分二形'''(ぶぶんにけい、{{lang|en|hemidimorphic}})と呼ばれる{{Sfn|海老原|2016|pp=9–15}}。[[ハナヤスリ類]]では'''担栄養体'''(栄養葉、{{lang|en|trophophore}})と'''担胞子体'''(胞子葉、{{lang|en|sporophore}})の基部が合わさって'''[[担葉体]]'''(共通柄、{{lang|en|common stalk, phyllomophore}})となる{{Sfn|山田ほか|1983|p=524}}{{Sfn|海老原|2016|pp=9–15}}。[[サンショウモ属]]では根を持たず、水上に浮かぶ'''浮葉'''({{lang|en|floating leaf}})と根のように変形した'''沈水葉'''(水中葉、{{lang|en|submerged leaf}})の2種類の葉を持つ{{Sfn|海老原|2016|pp=9–15}}。 |
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== 生息環境 == |
== 生息環境 == |
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[[File:Lindasea japonica saigokuhngusd03.jpg|thumb|left|200px|岩に生える[[サイゴクホングウシダ]] {{snamei||Lindsaea japonica}}。]] |
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前葉体での受精に水を必要とする以上、十分な水のある条件で生活するものであるが、植物体そのものはそれなりに乾燥に耐えるものもある。乾燥した岩の上に生息するものもある。しかし、やはり熱帯雨林のような条件で種類が多い。水中生活に対応したものもある。特に、水生シダ類は、一見シダとは思えない形をしており、興味深い水草である。 |
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シダ類が最も多様に分化しているのは[[熱帯]]であり、[[雲霧林]]中の[[着生植物]]が多く、地上生種も多様である{{Sfn|岩槻|1997|pp=2–5}}。[[木生シダ類]]では森林伐採後の[[二次植生]]として群生し、広大なヘゴ林を形成することも多い{{Sfn|西田・橋本|1997|pp=66–70}}。一方、[[ヒトツバ]]のように乾燥に強いものや[[サンショウモ]]のような[[水生シダ類]]も存在し、様々な環境に生育している{{Sfn|岩槻|1997|pp=2–5}}。 |
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[[渓流]]は水流の圧力や濁流中の砂粒子、微生物による腐蝕といった陸上植物が様々なダメージを受け、水位の変化が激しい過酷な環境であるが、渓流帯にのみ適応した[[渓流沿い植物]]が存在する{{Sfn|加藤|1997b|pp=30–32}}。シダ類にも渓流沿い植物が存在し、日本では[[ゼンマイ科]]の[[ヤシャゼンマイ]]、[[ホングウシダ科]]の[[サイゴクホングウシダ]]、[[オシダ科]]の[[ヤエヤマトラノオ]]、[[ウラボシ科]]の[[ヒメタカノハウラボシ]]、[[ミツデヘラシダ]]などが挙げられる{{Sfn|加藤|1997b|pp=30–32}}。これらは根茎が発達し、岩にしっかり固着できること、茎が強靭で折れにくいこと、葉は細長く[[流線型]]で[[全縁]]、平滑で無毛などの形質を持つ{{Sfn|加藤|1997b|pp=30–32}}。このようなシダ植物では世界で約100種知られている{{Sfn|加藤|1997b|pp=30–32}}。 |
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{{-}} |
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== 下位分類 == |
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{{see also|PPG I}} |
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{{PPG I相関図}} |
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現在では、[[小葉植物]]を含む[[シダ植物]]の分類体系として、[[PPG I分類体系]]が用いられている。右図における、[[ハナヤスリ科]]以下が本項における、これまで普通「シダ類」として扱われてきた[[科 (分類学)|科]]である。 |
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この項では本項に示す側系統群が「シダ綱」として扱われていた過去の分類体系を以下に示す。 |
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=== コープランドの分類体系 === |
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[[エドウィン・ビンガム・コープランド]]は「有効な」分類階級というものは「自然分類であること」と「有用であること」の両方を反映したものであると提案した最初の分類学者の一人である{{Sfn|Christenhusz|Chase|2014|pp=571–594}}。 |
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[[#CITEREFCopeland1947|コープランド (1947)]] ではシダ綱 {{sname||Filicinae}} にその多くが単一種のみからなる305属を認めた{{Sfn|Christenhusz|Chase|2014|pp=571–594}}。コープランドはシダ綱をハナヤスリ目、リュウビンタイ目、シダ目の3目に分け、うちシダ目に19科を置いた{{Sfn|Copeland|1947|pp=1–232}}。デンジソウ科とサンショウモ科を含む[[水生シダ類]] {{sname||Hydropterides}} は、その特異的な形質からそれぞれ[[デンジソウ目]] {{sname||Marsileales}} と[[サンショウモ目]] {{sname||Salviniales}} に置くことがあるとしながらも、その他のシダ目の系統の下にあるため独立した目に入れるのを嫌い、シダ目に入れるとした{{Sfn|Copeland|1947|pp=1–232}}。 |
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* '''シダ綱''' {{sname||Filicinae}} |
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** [[ハナヤスリ目]] {{sname||Ophioglossales}} |
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*** [[ハナヤスリ科]] {{sname||Ophioglossaceae}} |
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** [[リュウビンタイ目]] {{sname||Marattiales}} |
|||
*** [[リュウビンタイ科]] {{sname||Marattiaceae}} |
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** [[薄嚢シダ類|シダ目]] {{sname||Filicales}} |
|||
*** [[ゼンマイ科]] {{sname||Osmundaceae}} |
|||
*** [[フサシダ科]] {{sname||Schizaeaceae}} |
|||
*** [[ウラジロ科]] {{sname||Gleicheniaceae}} |
|||
*** [[ロクソマ科]] {{sname||Loxomaceae}} |
|||
*** [[コケシノブ科]] {{sname||Hymenophyllaceae}} |
|||
*** [[ワラビ科]] {{sname||Pteridaceae}} |
|||
*** [[ミズワラビ科]] {{sname||Parkeriaceae}} |
|||
*** [[ヒメノフィロプシス科]] {{sname||Hymenophyllopsidaceae}} |
|||
*** [[シノブ科]] {{sname||Davalliaceae}} |
|||
*** [[キジノオシダ科]] {{sname||Plagiogyriaceae}} |
|||
*** [[ヘゴ科]] {{Sname||Cyatheaceae}} |
|||
*** [[オシダ科]] {{Sname||Aspidiaceae}} |
|||
*** [[シシガシラ科]] {{sname||Blechnaceae}} |
|||
*** [[チャセンシダ科]] {{sname||Aspleniaceae}} |
|||
*** [[マトニア科]] {{sname||Matoniaceae}} |
|||
*** [[ウラボシ科]] {{sname||Polypodiaceae}} |
|||
*** [[シシラン科]] {{sname||Vittariaceae}} |
|||
*** [[デンジソウ科]] {{sname||Marsileaceae}} |
|||
*** [[サンショウモ科]] {{sname||Salviniaceae}} |
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== 人とのかかわり == |
== 人とのかかわり == |
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[[ワラビ]]、[[ゼンマイ]]など、[[山菜]]として利用されるものがいくつかある。その一部は、商品として流通するほど、広く利用される。また、[[ヘゴ]]などの幹が、[[洋ラン]]栽培など[[園芸]]用資材として利用される。 |
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=== 短歌 === |
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シダ類は、葉が美しく、押し葉標本もきれいに仕上がる。しかも種類が多く、変異に富み、さらに雑種が多い。また、[[オオタニワタリ]]など、鑑賞価値の高いものは、[[観葉植物]]として古くから栽培されてきた。 |
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[[File:Lepisorus thunbergianus (Kaulf.) Ching,ノキシノブ、himeji,姫路城P7047462.jpg|thumb|200px|木に着生する[[ノキシノブ]] {{snamei||Lepisorus thunbergianus}}。]] |
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[[万葉集]]の中に読まれたシダ類は次の2首のみである{{Sfn|吉野|1988|p=114}}。 |
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[[ノキシノブ]] {{snamei||Lepisorus thunbergianus}} は'''しだくさ(子太草)'''と呼ばれた{{Sfn|吉野|1988|p=114}}{{Sfn|鈴木|1997|pp=9–15}}。 |
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{{要出典範囲|さまざまな理由から愛好者、[[収集家|コレクター]]、[[マニア]]がおおく、それによって研究が進んだ面もあるが、過度の採集によっていくつもの種が危険な状態になっている例がある|date=2018-06}}。{{要出典範囲|例えば、[[ビカクシダ属|ビカクシダ]]類(コウモリラン)は採取により個体数が減少し、[[絶滅]]に瀕している地域もある|date=2018-06}}。 |
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{{Quote|わが屋戸の 軒のしだ草 生ひたれど 戀忘草 見れど生ひなく|[[柿本人麿]]歌集|万葉集 11 (2475)}} |
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もう一首は[[志貴皇子]]により[[ワラビ]](和良妣){{snamei||Pteridium aquilinum}} が読まれた{{Sfn|吉野|1988|p=270}}。 |
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== 分類 == |
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{{Quote|石走る 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に なりにけるかも|[[志貴皇子]]|万葉集 8 (1418)}} |
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従来より[[薄曩シダ]]はまとまった分類群として扱われ、ひとつの目等とすることが多かった。{{要出典範囲|最近の分子系統学においても、狭義[[水生シダ類]]を含めてこの群が単系統群であるという結果が出ている|date=2018-06}}。これがすなわちシダ網にあたる。 |
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また、[[シノブ]] {{snamei||Davallia mariesii}} には次のような俳句がある{{Sfn|加藤|1997c|pp=56–59}}。 |
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以下、Smith et al. 2006から[[科 (分類学)|科]]と[[目 (分類学)|目]]の分類体系を引用する。なお、和名がなく学名由来の科名のつづりは「南太平洋のシダ植物図鑑」<ref>国立科学博物館編『南太平洋のシダ植物図鑑』、東海大学出版会、ISBN 978-4-486-01792-9</ref>を参考にした。 |
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{{Quote|大岩に生えて一本忍かな|[[村上鬼城]]}} |
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=== 観賞用 === |
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'''シダ綱''' ({{sname||Filicopsida}}) |
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シダ類は耐陰性が高いため、[[日本庭園]]などで栽培されてきた<ref name="Kawamura">{{Cite thesis|和書|url=https://www.comm.tcu.ac.jp/tanaka-semi/pdf/thesises/2017_n_kawamura.pdf|author=川村尚弥|title=人々が生物多様性配慮型壁面緑化に抱く印象に関する研究-在来シダ植物を用いて-|date=2017|accessdate=2024-12-09}}</ref>。近年では、様々なシダ類が都市の[[壁面緑化]]に利用される<ref name="Kawamura"/>。特に、遺伝的多様性を考慮し、[[在来種]]を積極的に用いる試みがなされている<ref name="Kawamura"/>。例えば、[[新山口駅]]では植物学者である{{仮リンク|パトリック・ブラン|en|Patrick Blanc}}が手掛けた、シダ類を中心とした壁面緑化「垂直の庭」が知られる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.city.yamaguchi.lg.jp/soshiki/78/50277.html|title=新山口駅「垂直の庭」が国土交通大臣賞を受賞しました。|publisher=都市整備課|website=[[山口市]]|date=2018-11-21|accessdate=2024-12-09}}</ref>。 |
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(ウラボシ綱 ({{sname||Polypodiopsida}})とする場合もある。) |
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* ゼンマイ目 ({{sname||Osmundales}}) |
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** [[ゼンマイ科]] ({{sname||Osmundaceae}}):[[ゼンマイ]] |
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* コケシノブ目 ({{sname||Hymenophyllales}}) |
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** [[コケシノブ科]] ({{sname||Hymenophyllaceae}}):[[コケシノブ]]・アオホラゴケ・[[ゼニゴケシダ]] |
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* ウラジロ目 ({{sname||Gleicheniales}}) |
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** [[ウラジロ科]] ({{sname||Gleicheniaceae}}):[[ウラジロ]]・コシダ |
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** [[ヤブレガサウラボシ科]] ({{sname||Dipteridaceae}}):[[ヤブレガサウラボシ]]・[[スジヒトツバ]] |
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** [[マトニア科]] ({{sname||Matoniaceae}}) |
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* フサシダ目 ({{sname||Schizaeales}}) |
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** [[カニクサ科]] ({{sname||Lygodiaceae}}):[[カニクサ]] |
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** [[アネミア科]] ({{sname||Anemiaceae}}) |
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** [[フサシダ科]] ({{sname||Schizaeaceae}}):フサシダ |
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* サンショウモ目 ({{sname||Salviniales}}) |
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** [[デンジソウ科]] ({{sname||Marsileaceae}}):[[デンジソウ]] |
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** [[サンショウモ科]] ({{sname||Salviniaceae}}):[[サンショウモ]]・[[アカウキクサ]] |
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* ヘゴ目 ({{sname||Cyatheales}}) |
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** [[ティルソプテリス科]] (チルソプテリス科) ({{sname||Thyrsopteridaceae}}) |
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** [[ロクソマ科]] ({{sname||Loxomataceae}}) |
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** [[クルキタ科]] (クルシタ科) ({{sname||Culcitaceae}}) |
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** [[キジノオシダ科]] ({{sname||Plagiogyriaceae}}):キジノオシダ |
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** [[タカワラビ科]] ({{sname||Cibotiaceae}}):タカワラビ |
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** [[ヘゴ科]] ({{sname||Cyatheaceae}}):[[ヘゴ]]・[[ヒカゲヘゴ]]・クサマルハチ・[[マルハチ (植物)|マルハチ]] |
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** [[ディクソニア科]] ({{sname||Dicksoniaceae}}) |
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** [[メタキシア科]] ({{sname||Metaxyaceae}}) |
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* ウラボシ目 ({{sname||Polypodiales}}) |
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** [[ホングウシダ科]] {{sname||(Lindsaeaceae}}):[[ホラシノブ]]・[[ホングウシダ]] |
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** [[サッコロマ科]] ({{sname||Saccolomataceae}}) |
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** [[コバノイシカグマ科]] ({{sname||Dennstaedtiaceae}}):[[フモトシダ]]・[[ワラビ]]・ユノミネシダ・フジシダ |
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** [[イノモトソウ科]] ({{sname||Pteridaceae}}):[[ミミモチシダ]]・[[イノモトソウ]]・ハチジョウシダ・[[ミズワラビ]]・[[タチシノブ]]・ホウライシダ・[[アジアンタム]]・[[クジャクシダ]]・タキミシダ・[[シシラン]] |
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** [[チャセンシダ科]] {{sname||(Aspleniaceae}}):[[オオタニワタリ]]・コタニワタリ・[[クモノスシダ]]・[[ヒノキシダ]]・[[トラノオシダ]]・[[チャセンシダ]] |
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** [[イワデンダ科]] ({{sname||Woodsiaceae}}):イヌワラビ・シケシダ・[[ヘラシダ]]・[[クサソテツ]] |
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** [[ヒメシダ科]] ({{sname||Thelypteridaceae}}):ミゾシダ・[[ホシダ]]・ハシゴシダ |
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** [[シシガシラ科]] ({{sname||Blechnaceae}}):[[シシガシラ]]・[[ヒリュウシダ]]・[[コモチシダ]] |
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** [[コウヤワラビ科]] ({{sname||Onocleaceae}}):[[クサソテツ]]・[[コウヤワラビ]] |
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** [[オシダ科]] ({{sname||Dryopteridaceae}}):[[ヤブソテツ]]・[[イノデ]]・[[ジュウモンジシダ]]・カナワラビ・イワヘゴ・イタチシダ・[[ベニシダ]]・[[リョウメンシダ]] |
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** [[ツルキジノオ科]] ({{sname||Lomariopsidaceae}}):ヘツカシダ・アツイタ |
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** [[ナナバケシダ科]] (テクタリア科) ({{sname||Tectariaceae}}) |
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** [[ツルシダ科]] ({{sname||Oleandraceae}}):[[タマシダ]] |
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** [[シノブ科]] ({{sname||Davalliaceae}}):[[シノブ]]・[[キクシノブ]] |
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** [[ウラボシ科]] ({{sname||Polypodiaceae}}):[[ヒトツバ]]・[[ノキシノブ]]・[[マメヅタ]]・[[アオネカズラ]]・ヒメウラボシ・[[オオクボシダ]] |
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[[着生植物]]である[[シノブ]]は[[ミズゴケ]]などを芯にして詰め、[[盆栽]]風にして「[[忍ぶ玉]]」と呼ばれ古くから観賞される{{Sfn|加藤|1997c|pp=56–59}}。特に玉や舟などの形に加工しぶら下げたものは「つりしのぶ」と呼ばれ、夏の夜店で売られる{{Sfn|伊藤|1972|p=1}}。[[ウラボシ科]]の[[アオネカズラ]] {{snamei||Goniophlebium nipponicum}} も同様に鉢植えや「忍ぶ玉」のようにして栽培される{{Sfn|鈴木|1997|pp=9–15}}。同じく着生するウラボシ科である[[ビカクシダ属]] {{Snamei||Platycerium}} は「コウモリラン」とも呼ばれ、栽培される<ref>{{Cite web|和書|author=尾崎章|url=https://www.shuminoengei.jp/m-pc/a-page_p_detail/target_plant_code-454|title=ビカクシダとは{{!}}育て方がわかる植物図鑑|website=みんなの趣味の園芸|publisher=NHK出版|accessdate=2024-12-09}}</ref>。 |
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上記にない科 |
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* [[シシラン科]]({{sname||Vittariaceae}})(イノモトソウ科へ) |
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* [[ホウライシダ科]]({{sname||Parkeriaceae}})(イノモトソウ科等へ) |
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* [[スジヒトツバ科]]({{sname||Cheiropleuriaceae}})(ヤブレガサウラボシ科へ) |
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* アカウキクサ科({{sname||Azollaceae}})(サンショウモ科へ) |
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* タマシダ科({{sname||Nephrolepidaceae}})(ツルシダ科へ) |
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* [[メシダ科]]({{sname||Athyriaceae}})(イワデンダ科へ) |
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[[タマシダ科]]のシダ類は[[観葉植物]]となり、[[セイヨウタマシダ]] {{snamei||Nephrolepis exaltata}} は変異個体が「[[ボストン・ファーン]]」として栽培される{{Sfn|宮本|1997|pp=55–56}}。[[タマシダ]] {{snamei||Nephrolepis cordifolia}} や[[ホウビカンジュ]] {{snamei||Nephrolepis biserrata}}、[[ヤンバルタマシダ]] {{snamei||Nephrolepis hirstula}} 由来の[[園芸品種]]も存在する{{Sfn|宮本|1997|pp=55–56}}。 |
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== 分類と同定 == |
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シダの同定には独特の用語が用いられ、出現頻度の多い言葉はソーラス(胞子嚢群)、葉軸、羽軸、羽片、小羽片、鱗片、苞膜などである。同定は「'''ソーラスは小羽片の周縁寄りに'''」、「'''苞膜の縁はギザギザで'''」、「''葉軸基部の鱗片は膜質で'''」などと進めていく。 |
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また、[[ホウライシダ科]]の[[ホウライシダ]] {{snamei||Adiantum capillis-veneris}} の園芸品種は「[[アジアンタム]]」として、また[[クジャクシダ]] {{Snamei||Adiantum pedatum}} も園芸用に栽培される{{Sfn|益山|1997|pp=51–54}}。 |
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シダ類には同定の難しいものも数多い。これは、かなりの群において[[無配生殖]]が行われていること、逆に種間雑種が様々に存在することなどにもその原因がある。 |
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[[チャセンシダ科]]の[[オオタニワタリ]] {{snamei||Asplenium antiquum}} は『[[古事記]]』では「御綱柏」と呼ばれていたが、美しい姿から栽培用に[[乱獲]]され[[危急種]]となっている{{Sfn|村上|1997|pp=38–43}}。またオオタニワタリと[[ヒノキシダ]]の雑種である[[オニヒノキシダ]] {{sname|''Asplenium'' ×''kenzoi''}} は葉の形の面白さからよく栽培され、[[屋久島]]では土産物として売られる{{Sfn|村上|1997|pp=38–43}}。 |
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{{要出典範囲|例えば、[[フモトシダ]]はその名のとおりフモト環境で見られるが、他種との雑種か形態変異かフモトカグマ、クジャクフモトシダ、オドリコカグマなどが知られ、それらの特徴は暖地に多い[[イシカグマ]]へと連続する。それらがまたコバノイシカグマ科の別種と雑種を作り、混迷を極める。|date=2018-06}} |
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[[イノモトソウ科]]のシダも欧米では観葉植物として栽培され、[[斑入り]]や[[獅子葉]]の園芸品種もある{{Sfn|鈴木|1997|pp=43–47}}。例えば、白斑のある[[ホコシダ]] {{snamei||Pteris ensiformis}} や、獅子葉など様々な園芸品種が知られる[[オオバイノモトソウ]] {{snamei||Pteris cretica}}、若葉が赤紫色、成長すると白緑色になる[[ハチジョウシダ類]]の[[プテリス・アスペリカウリス]] {{snamei||Pteris aspericaulis}} などは園芸植物となる{{Sfn|鈴木|1997|pp=43–47}}。日本でも[[マツカサシダ]] {{snamei||Pteris nipponica}} は『[[本草図譜]]』では「おきなしだ」の名で呼ばれ、古くから観賞されてきた{{Sfn|鈴木|1997|pp=43–47}}。イノモトソウ科の[[イヌアミシダ]] {{snamei|Mickelopteris cordata}} は「ハートファーン」と俗称され、栽培される{{Sfn|大場|2009|p=7}}。 |
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また、[[花]]が咲かないことから種子植物に比べて大きな特徴が少ない点も大きい。{{要出典範囲|いわば葉の形だけで分類するようなものであり、全く異なる系統のものが似た姿を取る例は多数ある|date=2018-06}}。それに、成熟した大きさが掴みにくいという点もある。{{要出典範囲|例えば、イワガネソウなどの若い個体は、コタニワタリなどによく似る|date=2018-06}}。 |
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ほかにも、[[オシダ科]]の[[オニヤブソテツ]] {{snamei||Cyrtomium falcatum}} は[[観葉植物]]として庭に植えたり室内[[インテリア]]として[[鉢植え]]にしたりして用いられる{{Sfn|林・中池|1997|pp=26–29}}。[[カニクサ科]]の[[カニクサ]] {{snamei||Lygodium japonicum}} は庭植えにされることがある{{Sfn|西田|1997|pp=73–76}}。 |
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<gallery> |
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File:Thelypteris acuminata hosida sorus01.jpg|胞子嚢群の列(以下、すべて[[ホシダ]]) |
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[[ホウライシダ科]]の[[ミズワラビ]] {{snamei||Ceratopteris thalictroides}} は水槽用の[[水草]]として用いられる{{Sfn|益山|1997|pp=51–54}}。ウラボシ科の[[ミツデヘラシダ]] {{snamei||Microsorum pteropus}} は「ミクロソリウム」として[[熱帯魚]]の水槽で栽培される{{Sfn|鈴木|1997|pp=9–15}}。 |
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File:Thelypteris acuminata hosida sorus02.jpg|単一の胞子嚢群・腎臓型の包膜 |
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{{Gallery |
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File:Thelypteris acuminata hosida sorus04.jpg|胞子嚢 |
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|title=観葉植物となるシダ類 |
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File:Thelypteris acuminata hosida sorus05.jpg|裂開した胞子嚢 |
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|height=120 |
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</gallery> |
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|width=180 |
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|File:Boston Fern (Nephrolepis exaltata).jpg|「ボストン・ファーン」と呼ばれる {{snamei||Nephrolepis exaltata}} |
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|File:Adiantum capillus-veneris (9).JPG|「[[アジアンタム]]」と呼ばれる[[ホウライシダ]] {{snamei||Adiantum capillis-veneris}} |
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|File:辛志平校長故居院內種植的山蘇花 2.jpg|[[台湾]]、[[新竹市]]に植栽される[[オオタニワタリ]] {{snamei||Asplenium antiquum}} |
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|File:Pteris cretica 'Albo-lineata' a1.jpg|[[オオバイノモトソウ]] {{snamei||Pteris cretica}} の斑入りの園芸品種 'Albo-lineata' |
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|File:Cyrtomium falcatum 'Rochfordianum' habit.jpg|植栽される[[オニヤブソテツ]] {{snamei||Cyrtomium falcatum}} |
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|File:Microsorium pteropus2.JPG|水槽で栽培される「ミクロソリウム」([[ミツデヘラシダ]] {{snamei||Microsorum pteropus}}) |
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}} |
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=== 薬用 === |
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[[オシダ]] {{Snamei||Dryopteris crassirhizoma}} は別名を「[[綿馬]]」という{{Sfn|加納|2008|p=407}}。[[中国医学]]([[本草]])では[[貫衆]]と呼び[[塊根]]を薬用とする{{Sfn|加納|2008|p=407}}。日本ではこれは「綿馬根」と呼ばれ{{Sfn|加納|2008|p=407}}、[[駆虫剤]]としても用いられた{{Sfn|林・中池|1997|pp=26–29}}。[[カザリシダ]] {{snamei||Aglaomorpha coronans}} の根茎は「[[骨砕補]]」となる{{Sfn|岩槻|1997|pp=2–5}}。また中国では[[タカワラビ科]]の[[タカワラビ]] {{snamei||Cibotium barometz}} は「{{lang|zh|金狗毛蕨}}」と呼ばれ、茎を[[肝臓]]、[[腎臓]]の薬として用いるほか{{Sfn|西田・橋本|1997|pp=66–70}}、[[チャセンシダ科]]の[[ホコガタシダ]] {{snamei||Asplenium ensiforme}} は[[下痢止め]]、[[利尿作用]]をもつとして薬用にされ、栽培もされる{{Sfn|村上|1997|pp=38–43}}。[[ホングウシダ科]]の[[ホラシノブ]] {{snamei||Sphenomeris chinensis}} は[[民間薬]]として用いられ、[[雲南省]]南部では「起死回生」の効果があるとされる{{Sfn|林|1997|pp=59–60}}。[[ホウライシダ科]]のシダは[[漢方]]として[[イワガネゼンマイ]] {{Snamei||Coniogramme intermedia}} や[[イワガネソウ]] {{Snamei||Coniogramme japonica}} では腫物の毒消しに、[[タチシノブ]] {{snamei||Onychium japonicum}} では[[解熱]]・利尿に、[[ホウライシダ]] {{snamei||Adiantum capillis-veneris}} では全草が解熱・解毒に用いられる{{Sfn|益山|1997|pp=51–54}}。[[カニクサ科]]の[[カニクサ]]の葉は利尿剤とされる{{Sfn|西田|1997|pp=73–76}}。 |
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[[ヒリュウシダ属]]も薬用に供され、{{snamei||Blechnum fluviatile}} はニュージーランドで[[口内炎]]の薬として、[[ヒリュウシダ]] {{Snamei||Blechnum orientale}} は東南アジアで[[虫下し]]や[[膀胱炎]]の薬として、また{{snamei||Blechnum hastatum}} の根茎は[[チリ]]の[[アラウコ人]]に[[嘔吐剤]]または[[妊娠中絶]]薬として用いられた{{Sfn|栗田|1997|pp=35–38}}。 |
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[[真嚢シダ類]]である[[ミヤコジマハナワラビ]] {{Snamei||Helminthostachys zeylanica}} は[[マレーシア]]や中国で根茎を鎮痛[[解毒剤]]として用いられる{{Sfn|佐橋|1997|pp=82–84}}。 |
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=== 食用 === |
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{{See also|フィドルヘッド}} |
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食用となる一方毒性を有するものも多く、食用となる[[ワラビ]] {{snamei||Pteridium aquilinum}} は葉にビタミン破壊酵素([[チアミン]]分解酵素)を含むため、[[草木灰]]や[[重曹]]のようなアルカリで煮て灰汁抜きをし、毒成分を除去して食される{{Sfn|星川|1979|pp=297–298}}{{Sfn|松本|2009|pp=55–65}}。この毒性により[[家畜]]や[[シカ]]は食べないため放牧食性が形成され、日本などでは[[火入れ]]により良質のワラビが収穫され、山菜として利用されてきた{{Sfn|松本|2009|pp=55–65}}。[[サイレージ]]など飼料に混入することで家畜が[[膀胱がん]]などになる[[ワラビ中毒]]が発生する{{Sfn|松本|2009|pp=55–65}}{{Sfn|今市|1997|pp=60–61}}。ワラビは葉柄の柔らかい部分が灰汁抜きの後、煮物や和え物などに用いられ、塩や味噌に漬けて保存される{{Sfn|星川|1979|pp=297–298}}。ワラビの根からとれる[[澱粉]]はワラビ粉として[[わらび餅]]や[[団子]]に利用される{{Sfn|星川|1979|pp=297–298}}{{Sfn|今市|1997|pp=60–61}}。 |
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日本ではワラビのほかに、[[ゼンマイ]] {{snamei||Osmunda japonica}}、[[ヤマドリゼンマイ]] {{snamei||Osmundastrum cinnamomeum ''var.'' fokeiense}} などが[[山菜]]として食用にされる{{Sfn|伊藤|1972|pp=1-11}}{{Sfn|星川|1979|pp=297–298}}。ゼンマイやヤマドリゼンマイは巻いた若芽の葉柄部を食用にする{{Sfn|星川|1979|pp=297–298}}。ゼンマイは灰汁抜きの後、煮つけ、[[天麩羅]]、汁の実に用いられる{{Sfn|星川|1979|pp=297–298}}。ヤマドリゼンマイも灰汁や[[重曹]]で灰汁抜きの後、煮物や和え物、汁の実として用いられる{{Sfn|星川|1979|pp=297–298}}。どちらも乾燥したり塩漬けにしたり、卯の花漬けにして保存される{{Sfn|星川|1979|pp=297–298}}。ヤマドリゼンマイは瓶詰にして市販される{{Sfn|星川|1979|pp=297–298}}。日本の[[東北地方]]では[[クサソテツ]]が「[[コゴミ]]」と呼ばれ[[お浸し]]や[[揚げ物]]にして食される{{Sfn|伊藤|1972|p=1}}。この仲間は[[北アメリカ]]東北部でも若芽の時期を珍重して食べられる{{Sfn|伊藤|1972|p=1}}。 |
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[[アジア]]では広く[[イワデンダ科]]の [[クワレシダ]] {{snamei||Diplazium esculentum}} が食用にされる{{Sfn|加藤|1997a|pp=19–24}}。中国南部や[[東南アジア]]では、[[ホウライシダ科]]の[[ミズワラビ]] {{snamei||Ceratopteris thalictroides}} が食用にされる{{Sfn|益山|1997|pp=51–54}}。[[ブータン]]ではワラビと同じコバノイシカグマ科の[[ランダイワラビ]] {{snamei||Pteridium revolutum}} や[[オオイシカグマ]] {{snamei||Microlepia speluncae}}、イワデンダ科の {{snamei||Diplazium maximum}} やクワレシダ、イノモトソウ科の[[ナチシダ]] {{snamei||Pteris wallichiana}} などを食用とする{{Sfn|松本|2009|pp=55–65}}。これらはいずれも毒性があって[[家畜]]や[[シカ]]は食べないため、その[[排泄物]]を栄養として肥沃な放牧場にはこれらがよく繁茂し、放牧植生ができている{{Sfn|松本|2009|pp=55–65}}。 |
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[[シシガシラ科]]の[[ヒリュウシダ属]]も食用になり、[[ニュージーランド]]の[[マオリ]]は {{snamei||Blechnum capense}} の芽を蒸し焼きにして食す{{Sfn|栗田|1997|pp=35–38}}。[[オーストラリア]]の[[クイーンズランド州]]では[[アボリジニ]]が {{snamei||Blechnum indicum}} の太った根茎を食べる{{Sfn|栗田|1997|pp=35–38}}。[[ヘゴ科]]の[[ヘゴ]]も髄に多量の澱粉を含む茎や若い葉は食用とされ、オーストラリアではほろ苦い甘みがあり、まずい[[カブ]]のような味だと表現される{{Sfn|西田・橋本|1997|pp=66–70}}。 |
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{{Gallery |
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|title=薬用・食用となるシダ類 |
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|height=200 |
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|lines=2 |
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|File:Helminthostachys zeylanica 01.JPG|[[ミヤコジマハナワラビ]] {{Snamei||Helminthostachys zeylanica}} |
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|File:Osmunda japonica 002.jpg|山菜として食べられる[[ゼンマイ]] {{snamei||Osmunda japonica}} の[[フィドルヘッド]] |
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|File:Pan Roasted Chicken Breasts, Garlic Mashed Potatoes, Fiddlehead Ferns and Sauce Supreme.jpg|シダ類の[[フィドルヘッド]]を使った鶏肉料理 |
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|File:涼拌過貓, 躼腳, 躼腳日式料理, 台北 (23852808540).jpg|[[台北]]の飲食店で供される[[クワレシダ]] {{snamei||Diphasium esculentum}} |
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|File:Ceratopteris thalictroides 59722694.jpg|水辺に生える[[ミズワラビ]] {{snamei||Ceratopteris thalictroides}} |
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|File:Cyathea lepifera cooked.jpg|食用に調理された[[ヒカゲヘゴ]] {{snamei||Cyathea lepifera}} |
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}} |
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=== 加工 === |
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{{multiple image |
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|header=加工されるシダ類 |
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|align=right |
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|total_width=300 |
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|image1=Cyathea mertensiana (Kunze) Copel 2.jpg |
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|caption1=ヘゴ材として用いられる[[マルハチ (植物)|マルハチ]]の「幹」 |
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|image2=J20161101-0092—Basket and fern fibers—RPBG (30213078723).jpg |
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|caption2=籠(左)とシダの繊維(右) |
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}} |
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シダ類を用いた籠は、[[西日本]]を中心に各地で生産されていたが、現在では[[広島県]]と[[沖縄県]]のみで技術の継承が行われている<ref name="tobunken">{{Cite web|和書|url=https://www.tobunken.go.jp/ich/research/monozukuri/shidakago/|title=シダ籠の製作技術 Technique of Making Fern Basket |publisher=[[東京文化財研究所]] 無形文化遺産部|accessdate=2024-12-09}}</ref>。[[カニクサ]]の[[蔓]]は[[編み籠]]の材料とされた{{Sfn|西田|1997|pp=73–76}}。葉軸がしなやかであるため[[ウラジロ科]]も編んで壁材や籠などの工芸品に利用される{{Sfn|西田|1997|pp=73–76}}。特に、[[コシダ]] {{Snamei||Dicranopteris linearis}} は葉軸を用いたシダ籠が作られており、[[広島県]][[廿日市市]]大野では明治30年代に新たな副業としてその技術が伝わり、現在でも伝承されている<ref name="tobunken"/>。 |
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[[タカワラビ属]]の植物は、[[ハワイ]]では[[ハープウ]]と呼ばれ、かつては若い茎を用いて帽子を作ったり、[[毛状突起#シダ類の毛|毛]]である「プル」を[[包帯]]、[[枕]]や[[マットレス]]の詰め物などに用いた<ref name="Anuhea">{{Cite web|url=https://www.anuhea.info/plants-flowers-hawaii/hapuu-fern.html|title=ハープウ|author=崎津 鮠太郎|website=Anuhea ハワイの花・植物・野鳥図鑑|accessdate=2024-07-27}}</ref>。 |
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[[木生シダ類]]の[[ヘゴ]] {{snamei||Cyathea spinulosa}} や[[オニヘゴ]] {{snamei||Cyathea podophylla}}、[[ヒカゲヘゴ]] {{snamei||Cyathea lepifera}} や[[マルハチ (植物)|マルハチ]] {{snamei||Cyathea mertensiana}} は「幹」と俗称される根に覆われた直立する根茎を「[[ヘゴ材]](ヘゴ板)」として用いる{{Sfn|西田・橋本|1997|pp=66–70}}。ヘゴ材は家の柱や[[垣根]]に用いられ、細いものは[[生花]]の器に用いられるが、近年では専ら[[園芸]]材料として利用される{{Sfn|西田・橋本|1997|pp=66–70}}。[[洋ラン]]は自生地では樹木や岩石に付着し生活するため、洋ランの栽培に円盤状や板状、棒状や[[植木鉢]]状に加工して利用される{{Sfn|西田・橋本|1997|pp=66–70}}。[[タカワラビ]] {{Snamei||Cibotium barometz}} もヘゴ材と同様に[[ラン科|蘭]]や[[アンスリウム属|アンスリウム]]の培地として用いることがある<ref name="Anuhea"/>。 |
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また、ヘゴの根や[[ゼンマイ]]のひげ根(オスマンダ)は[[コンポスト]]として用いられる{{Sfn|西田・橋本|1997|pp=66–70}}。ヘゴ板の建材や園芸資材の需要は多くの種を脅かし、[[ワシントン条約]]により輸入規制されるものもある{{Sfn|西田・橋本|1997|pp=66–70}}。 |
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=== 象徴と装飾 === |
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[[File:Simenawa kazari01.jpg|thumb|200px|left|正月の[[注連飾り]]。ウラジロの葉が用いられる。]] |
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『[[シルバー・ファーン]](シダの葉)』は、[[ニュージーランド]]のシンボルになっている<ref>{{Cite book|和書 |title=366日 誕生花の本 |date=1990-11-30 |publisher=日本ヴォーグ社 |page=331 |author=瀧井康勝}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://plus.chunichi.co.jp/blog/odachuu/article/496/3580/ |title=『シルバーファーン(シダの葉)』は、ニュージーランドのシンボル |access-date=2024-11-23 |publisher=[[中日新聞]]web |date=2015-06-23}}</ref>。ニュージーランドのラグビー代表チーム、[[ラグビーニュージーランド代表|オールブラックス]]のエンブレムは、シルバー・ファーン。また、[[ニュージーランド航空]]は、1970年代よりシルバー・ファーンの[[ワラビ巻き|若い葉]]「[[コル]]」をロゴに採用している。シルバーファーンの若い葉「コル」は、先住民マオリの言葉で「新生」や「成長」「平和」を象徴している<ref>{{Cite web |url=https://asm.asahi.com/article/15091168 |title=多彩な座席クラスで誰もが快適な空の旅! ニュージーランド航空 |access-date=2024-11-23 |publisher=[[朝日新聞デジタル]] |date=2024-01-09 |website=AERA STYLE MAGAZINE}}</ref>。 |
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日本では、[[ウラジロ]]は単にシダと呼ばれる普通種で、[[常緑]]であるため、および「齢垂れる(しだれる)」とかけて[[長寿]]の象徴として[[正月]]の飾り物([[注連飾り]])などに用いられる{{Sfn|加納|2007|p=146}}{{Sfn|伊藤|1972|p=1}}{{Sfn|西田|1997|pp=73–76}}。ウラジロの葉を図案化したものは'''歯朶紋'''(しだもん)と呼ばれ、[[家紋]]や着物の図柄に用いられる<ref>{{Cite journal|author=中野正男|title=我が国家紋の擬態性について|journal=デザイン理論 |date=1967|volume=6|pages=78–88|doi=10.18910/52542}}</ref>。[[徳川家康]]は老年期、兜の前立てにシダの歯を象った通称「[[歯朶具足]]」を愛用した<ref name="milt">{{Cite web|和書|url=https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/R3-00061.html|title=久能山東照宮 重要文化財 歯朶具足|website=地域観光資源の多言語解説文データベース|publisher=[[国土交通省]][[観光庁]]|accessdate=2024-12-09}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://shizubi.jp/blog/1475/|title=【国宝・久能山東照宮展】 家康吉祥の具足、歯朶具足(しだぐそく)|date=2014-11-11|website=[[静岡市美術館]]|accessdate=2024-12-09}}</ref>。[[甲冑]]一式は[[久能山東照宮]]に奉納され、現在まで伝わっている<ref name="milt"/>。 |
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また、[[ワラビ巻き]](早蕨)のような形状の文様は'''蕨手文'''(わらびでもん)と呼ばれ、[[土器]]や[[壁画]]に用いられたが、これが植物に由来する文様であるという確証はないとされる<ref name="kotobank">{{Cite kotobank|word=蕨手文|publisher=株式会社平凡社|encyclopedia=改訂新版 世界大百科事典|author=小林行雄|accessdate=2024-12-09}}</ref>。[[蕨手刀]]のように刀剣の一部にも用いられた<ref name="kotobank"/>。 |
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[[ニューギニア島]]では[[キジノオシダ科]]のシダの葉を乾燥させ、[[祭]]の際に体を飾る材料として利用される{{Sfn|中池|1997|p=77}}。 |
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=== 肥料・飼料 === |
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[[File:Starr 070906-8354 Azolla filiculoides.jpg|thumb|200px|水面に浮かぶ[[ニシノオオアカウキクサ]] {{snamei||zolla filiculoides}}。]] |
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[[アカウキクサ科]]の[[水生シダ類]]には[[藍藻]] {{snamei||Anabaena azollae}} が[[共生]]し[[窒素]]を供給するので貧栄養下でも生育できるため、[[東南アジア]]では[[緑肥]]として用いられ、[[熱帯]]の[[稲作]]地帯における[[肥料]]となっている{{Sfn|長谷部|1997|pp=5–7}}。[[フィリピン]]の[[国際稲研究所]]にはアカウキクサの系統保存施設がある{{Sfn|長谷部|1997|pp=5–7}}。逆に[[サンショウモ]] {{snamei||Salvinia natans}} は切断された植物体から栄養繁殖するため[[水田]]を覆い尽くす害草となる{{Sfn|長谷部|1997|pp=5–7}}。 |
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また、ハワイでは[[タカワラビ属]]の[[澱粉]]を含む茎が[[ブタ]]の飼料に使われたこともある<ref name="Anuhea"/>。 |
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{{-}} |
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== シダ園 == |
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{{出典の明記|date=2024年12月|section=1}} |
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{{Multiple images |
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|align=right |
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|total_width=350 |
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|image1=Rippon LEa fernery.jpg |
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|caption1=[[リッポン・リー]]のシダ園 |
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|image2=GeelongBotanicGarden old.jpg |
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|caption2=[[ジーロング植物園]](1892年–1902年)のシダ園 |
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シダ園({{lang-en-short|fernery}})は、[[シダ]]の栽培と展示のための専門の[[庭園]]である。 |
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多くの国ではシダ園は少なくとも[[日陰]]で湿った環境や光、霜などの極限からの保護や、乾燥地域に自生するシダの中にも雨や湿度からの保護を必要とするために屋内施設であるが、完全日照で最もよく育つものも存在するため、温暖な地域では屋外にあることが多く、同じような条件で育つさまざまな種が並んでいる。 |
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1855年、イングランドの一部ではシダのブームが起きてプテリドマニア(シダ狂い)という現象を生む<ref>{{Cite book|和書|author=遠山茂樹|title=歴史の中の植物 花と樹木のヨーロッパ史|isbn=978-4-89694-265-1}}</ref>。この言葉は[[聖職者]]であり[[自然主義者]]であった[[チャールズ・キングズリー]](後に『[[水の子どもたち]] 陸の孤児のための童話』の著者)によって作られたものであるが、当時英国と外来の品種が収集、紹介されていくとコレクションを維持するために多くの道具が開発され、関連する園が次々と構築されていったことが知られる<ref name="Gibby">{{cite web|first=Mary| last=Gibby |url=http://www.buildingconservation.com/articles/benmore-fernery/benmore-fernery.htm |title=The Benmore Fernery |year=2013 |website=www.buildingconservation.com |publisher=Cathedral Communications Limited|access-date=2024-11-23}}</ref>。 |
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== 出典 == |
== 出典 == |
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{{Reflist}} |
{{Reflist|3}} |
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== 参考文献 == |
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* {{cite book|last=Copeland|first=Edwin Bingham|author-link=エドウィン・ビンガム・コープランド|date=1947|title=Genera Filicum, the genera of ferns|publisher=Chronica Botanica|place=[[ウォルサム (マサチューセッツ州)|Waltham]]|ref=harv}} |
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* {{Cite book|和書|author=伊藤洋 ほか共著|authorlink=伊藤洋|title=シダ学入門|publisher=[[ニュー・サイエンス社]]|date=1972-08-20|pages=8–10, 165–169|ref={{SfnRef|伊藤|1972}} }} |
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* {{Cite book|和書 |author=村上哲明|author-link=村上哲明|chapter=シダ植物(広義)|pages=67–73|title=新しい植物分類学Ⅱ|others=日本植物分類学会 監修|editor= 戸部博|editor-link=戸部博|editor2=田村実|editor2-link=田村実 |publisher=[[講談社]]|date=2012-08-10|isbn=978-4061534490|ref={{SfnRef|村上|2012}} }} |
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* {{Cite book|和書|author1=山田常雄|authorlink1=山田常雄|author2=前川文夫|authorlink2=前川文夫|author3=江上不二夫|authorlink3=江上不二夫|author4=八杉竜一|authorlink4=八杉竜一|coauthors=[[小関治男]]、[[古谷雅樹]]、[[日高敏隆]]|title=岩波生物学辞典 第3版|publisher=[[岩波書店]]|date=1983-03-10|page=524|isbn=4-00-080018-3|ref={{SfnRef|山田ほか|1983}} }} |
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* {{Cite book|和書|author=吉野正美|authorlink=吉野正美|title=万葉集の植物|date=1988-09|publisher=[[偕成社]]|isbn=4-03-529070-X|pages=114, 270|ref={{SfnRef|吉野|1988}} }} |
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== 関連項目 == |
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* [[維管束植物]] |
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* [http://www.nature.com/nature/journal/v409/n6820/abs/409618a0.html Kathleen M et al. Nature409, 618-622(2001)] |
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** 「[[シダ植物]]」(広義)(= 「[[シダ植物門]]」(広義); [大葉シダ植物 + [[小葉植物]]]; 側系統)/ [[大葉植物]](= 真葉植物; [大葉シダ植物 + [[種子植物]]]; 単系統) |
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* [http://www.pnas.org/cgi/content/full/99/7/4430 Soltis P S et al. PNAS 99, 4430-4435(2002)] |
|||
*** [[大葉シダ植物]](= シダ植物門(狭義) = シダ類(広義) = [[シダ植物綱]]; [シダ綱 + [[トクサ類]] + [[マツバラン類]]]; 単系統) |
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* [http://fieldmuseum.org/sites/default/files/smith-et-al-taxon-2006.original.pdf "A classification for extant ferns" TAXON 55 (3) 2006 703-73 Smith et al.] |
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2024年12月9日 (月) 06:07時点における最新版
シダ類(廃止) | ||||||||||||
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分類 | ||||||||||||
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下位分類 | ||||||||||||
シダ類(シダるい、羊歯類、英: Ferns)は、一般に「シダ」(羊歯、歯朶)と総称される維管束植物の一群である[1][2][3]。伝統的分類および一般的な文脈では、薄嚢シダ類に加え、合わせて真嚢シダ類とも呼ばれるリュウビンタイ目とハナヤスリ目を含む分類群を指す[1][3]。
かつてはシダ植物の伝統的分類において、マツバラン類(無葉類)、ヒカゲノカズラ類(小葉類)およびトクサ類(楔葉類)とともにシダ類(大葉類)としてシダ植物に含められ[4][3][5][6]、多くシダ綱(シダこう、Pteridopsida, Filicopsida)として綱の階級に置かれた[1][5]。1920年代以降、系統的に4群が遠縁と考えられるようになり、シダ門 Pterophyta やシダ類亜門 Pterophytina としてより上位の分類階級に置くこともあった[7][8]。しかし分子系統解析により、シダ植物だけでなくシダ類自身も側系統群であることが判明し、本項の示す「シダ類」は分類群としては現在ではもはや用いられない[9][10]。なお、スミスら (2006) の分類体系では「シダ綱 Filicopsida」は薄嚢シダ類を指す分類群として用いられていた[11]。
近年では分子系統解析により、伝統的なシダ類にマツバラン類およびトクサ類を含めたグループが単系統群をなすことが明らかになっており、それをまとめて「シダ類 ferns」と呼ぶことも多くなっている[4][9]。このグループは Kenrick & Crane (1997) において "Moniliformopses" と呼ばれた群に相当し[12]、「モニロファイツ」や「大葉シダ類」と呼ばれる[13]ことも多く、この単系統群については「大葉シダ植物」にて解説する。
「シダ」
[編集]シダ(羊歯、歯朶)という言葉は、本項で示すシダ類を指す場合に加え[2]、シダ植物を指すこと[2][14]、および特にウラジロを指すことがある[15][2][16]。和名の「シダ」の語源は「しだれる」と同源であるとされる[14][17]。シダは方言または古名でデンダやカグマと呼ばれる[18][19][20][21][22]。このうち、「デンダ」は「連朶」が訛ったものだとされ[19]、そう漢字表記される[23]。また、標準和名シノブ Davalia mariesii として扱われる「シノブ」もシダの古名の一つである[24]。
漢名の「羊歯」は葉が連なり生じて毛のある姿を羊の歯に喩えたとされる[14]。特にオシダ科のオシダ Dryopteris crassirhizoma を指すこともある[25]。中国では羊歯の名は爾雅のみに見られたが、日本では平安時代にシダに当てている[17]。
系統関係
[編集]以下に Wickett et al. (2014) や Puttick et al. (2018) による大規模な遺伝子を用いた分子系統解析に基づく、陸上植物の系統樹を示す[26]。本項の示すシダ類である旧シダ綱は薄嚢シダ類と真嚢シダ類からなるが、このうち真嚢シダ類はクレードからマツバラン類を除いた側系統群であり、シダ綱も側系統となる。
陸上植物 |
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なお、Pryer ら (2001; 2004)による、プラスチドのrbcL、atpB、rps4、および核の18S rDNAの4遺伝子を用いた古い分子系統解析では、次のような系統樹が描かれ、真嚢シダ類が多系統となっていた[27][28]。
維管束植物 |
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特徴
[編集]- → 生活環に関しては「シダ植物」も参照
シダ類の生活環は胞子体と配偶体が独立して生活する単複世代交代型である[29]。胞子体には根・茎・葉が分化する[8]。胞子は胞子体の胞子嚢の中に減数分裂の結果形成される[29]。ほとんどのシダ類では胞子は雌雄の差がない同形胞子性であるが、水生シダ類では大胞子と小胞子をつくる異形胞子性である[29]。胞子嚢は普通、裏面または葉縁に集まって胞子嚢群(ほうしのうぐん、ソーラス sorus, pl.: sori)を作る[29][1]。胞子嚢が1つの細胞に由来し、1層の細胞層からなるシダ類を薄嚢シダ類(はくのうシダるい、leptosporangiate ferns)、胞子嚢が複数の細胞に由来し、複数の細胞層に包まれるシダ類を真嚢シダ類(しんのうシダるい、eusporangiate ferns)という[6][1]。薄嚢性は派生形質であり、薄嚢シダ類は単系統群である[6]。
茎は短く、木生シダ以外では地中生、着生、地表生であり根茎 rhizomeと呼ばれる[1]。根茎には匍匐(creeping)するもの、斜上(ascending)するもの、直立(erect)するものがある[30]。木生シダ類のヘゴ科では高く成長し、24 m に達するものもあるが、ハナワラビ類以外のシダ類の茎は肥大成長せず、木本ではない[29][31]。木生シダ類の「幹 trunk-like stem」は直立茎の周囲を不定根が覆ったものである[30]。
葉
[編集]葉は大葉で、単葉からシダ型4-5回羽状複葉となるが[1]、羽状複生することが多く、特に羽葉(frond)と呼ばれる[32]。複葉の小葉(leaflet)は特に羽片(うへん、pinna, pl.: pinnae )と呼ぶ[33]。葉端の羽片を頂羽片(terminal pinna)、それ以外を側羽片(lateral pinna)、繰り返し構造となる羽片の更に1枚を小羽片(pinnule)と呼ぶ[30]。他の複葉と同様に羽片の付く軸を葉軸(中軸、rachis)、小羽片の付く軸を羽軸(pinna rachis)と呼ぶ[30]。
葉の二形性は種によって異なり、二形(にけい、dimorphic)のものでは胞子嚢を付ける胞子葉(実葉、fertile frond)と胞子を付けない栄養葉(裸葉、sterile frond)に分かれる[30]。また、区別のないものは同形 monomorphic、1枚の葉で胞子を付ける羽片と胞子を付けない羽片があるものは部分二形(ぶぶんにけい、hemidimorphic)と呼ばれる[30]。ハナヤスリ類では担栄養体(栄養葉、trophophore)と担胞子体(胞子葉、sporophore)の基部が合わさって担葉体(共通柄、common stalk, phyllomophore)となる[1][30]。サンショウモ属では根を持たず、水上に浮かぶ浮葉(floating leaf)と根のように変形した沈水葉(水中葉、submerged leaf)の2種類の葉を持つ[30]。
生息環境
[編集]シダ類が最も多様に分化しているのは熱帯であり、雲霧林中の着生植物が多く、地上生種も多様である[29]。木生シダ類では森林伐採後の二次植生として群生し、広大なヘゴ林を形成することも多い[31]。一方、ヒトツバのように乾燥に強いものやサンショウモのような水生シダ類も存在し、様々な環境に生育している[29]。
渓流は水流の圧力や濁流中の砂粒子、微生物による腐蝕といった陸上植物が様々なダメージを受け、水位の変化が激しい過酷な環境であるが、渓流帯にのみ適応した渓流沿い植物が存在する[34]。シダ類にも渓流沿い植物が存在し、日本ではゼンマイ科のヤシャゼンマイ、ホングウシダ科のサイゴクホングウシダ、オシダ科のヤエヤマトラノオ、ウラボシ科のヒメタカノハウラボシ、ミツデヘラシダなどが挙げられる[34]。これらは根茎が発達し、岩にしっかり固着できること、茎が強靭で折れにくいこと、葉は細長く流線型で全縁、平滑で無毛などの形質を持つ[34]。このようなシダ植物では世界で約100種知られている[34]。
下位分類
[編集]現在では、小葉植物を含むシダ植物の分類体系として、PPG I分類体系が用いられている。右図における、ハナヤスリ科以下が本項における、これまで普通「シダ類」として扱われてきた科である。
この項では本項に示す側系統群が「シダ綱」として扱われていた過去の分類体系を以下に示す。
コープランドの分類体系
[編集]エドウィン・ビンガム・コープランドは「有効な」分類階級というものは「自然分類であること」と「有用であること」の両方を反映したものであると提案した最初の分類学者の一人である[35]。
コープランド (1947) ではシダ綱 Filicinae にその多くが単一種のみからなる305属を認めた[35]。コープランドはシダ綱をハナヤスリ目、リュウビンタイ目、シダ目の3目に分け、うちシダ目に19科を置いた[36]。デンジソウ科とサンショウモ科を含む水生シダ類 Hydropterides は、その特異的な形質からそれぞれデンジソウ目 Marsileales とサンショウモ目 Salviniales に置くことがあるとしながらも、その他のシダ目の系統の下にあるため独立した目に入れるのを嫌い、シダ目に入れるとした[36]。
- シダ綱 Filicinae
- ハナヤスリ目 Ophioglossales
- リュウビンタイ目 Marattiales
- シダ目 Filicales
- ゼンマイ科 Osmundaceae
- フサシダ科 Schizaeaceae
- ウラジロ科 Gleicheniaceae
- ロクソマ科 Loxomaceae
- コケシノブ科 Hymenophyllaceae
- ワラビ科 Pteridaceae
- ミズワラビ科 Parkeriaceae
- ヒメノフィロプシス科 Hymenophyllopsidaceae
- シノブ科 Davalliaceae
- キジノオシダ科 Plagiogyriaceae
- ヘゴ科 Cyatheaceae
- オシダ科 Aspidiaceae
- シシガシラ科 Blechnaceae
- チャセンシダ科 Aspleniaceae
- マトニア科 Matoniaceae
- ウラボシ科 Polypodiaceae
- シシラン科 Vittariaceae
- デンジソウ科 Marsileaceae
- サンショウモ科 Salviniaceae
人とのかかわり
[編集]短歌
[編集]ノキシノブ Lepisorus thunbergianus はしだくさ(子太草)と呼ばれた[37][20]。
わが屋戸の 軒のしだ草 生ひたれど 戀忘草 見れど生ひなく—柿本人麿歌集、万葉集 11 (2475)
もう一首は志貴皇子によりワラビ(和良妣)Pteridium aquilinum が読まれた[38]。
石走る 垂水の上の さ蕨の 萌え出づる春に なりにけるかも—志貴皇子、万葉集 8 (1418)
また、シノブ Davallia mariesii には次のような俳句がある[39]。
大岩に生えて一本忍かな—村上鬼城
観賞用
[編集]シダ類は耐陰性が高いため、日本庭園などで栽培されてきた[40]。近年では、様々なシダ類が都市の壁面緑化に利用される[40]。特に、遺伝的多様性を考慮し、在来種を積極的に用いる試みがなされている[40]。例えば、新山口駅では植物学者であるパトリック・ブランが手掛けた、シダ類を中心とした壁面緑化「垂直の庭」が知られる[41]。
着生植物であるシノブはミズゴケなどを芯にして詰め、盆栽風にして「忍ぶ玉」と呼ばれ古くから観賞される[39]。特に玉や舟などの形に加工しぶら下げたものは「つりしのぶ」と呼ばれ、夏の夜店で売られる[15]。ウラボシ科のアオネカズラ Goniophlebium nipponicum も同様に鉢植えや「忍ぶ玉」のようにして栽培される[20]。同じく着生するウラボシ科であるビカクシダ属 Platycerium は「コウモリラン」とも呼ばれ、栽培される[42]。
タマシダ科のシダ類は観葉植物となり、セイヨウタマシダ Nephrolepis exaltata は変異個体が「ボストン・ファーン」として栽培される[43]。タマシダ Nephrolepis cordifolia やホウビカンジュ Nephrolepis biserrata、ヤンバルタマシダ Nephrolepis hirstula 由来の園芸品種も存在する[43]。
また、ホウライシダ科のホウライシダ Adiantum capillis-veneris の園芸品種は「アジアンタム」として、またクジャクシダ Adiantum pedatum も園芸用に栽培される[44]。
チャセンシダ科のオオタニワタリ Asplenium antiquum は『古事記』では「御綱柏」と呼ばれていたが、美しい姿から栽培用に乱獲され危急種となっている[45]。またオオタニワタリとヒノキシダの雑種であるオニヒノキシダ Asplenium ×kenzoi は葉の形の面白さからよく栽培され、屋久島では土産物として売られる[45]。
イノモトソウ科のシダも欧米では観葉植物として栽培され、斑入りや獅子葉の園芸品種もある[46]。例えば、白斑のあるホコシダ Pteris ensiformis や、獅子葉など様々な園芸品種が知られるオオバイノモトソウ Pteris cretica、若葉が赤紫色、成長すると白緑色になるハチジョウシダ類のプテリス・アスペリカウリス Pteris aspericaulis などは園芸植物となる[46]。日本でもマツカサシダ Pteris nipponica は『本草図譜』では「おきなしだ」の名で呼ばれ、古くから観賞されてきた[46]。イノモトソウ科のイヌアミシダ Mickelopteris cordata は「ハートファーン」と俗称され、栽培される[47]。
ほかにも、オシダ科のオニヤブソテツ Cyrtomium falcatum は観葉植物として庭に植えたり室内インテリアとして鉢植えにしたりして用いられる[48]。カニクサ科のカニクサ Lygodium japonicum は庭植えにされることがある[16]。
ホウライシダ科のミズワラビ Ceratopteris thalictroides は水槽用の水草として用いられる[44]。ウラボシ科のミツデヘラシダ Microsorum pteropus は「ミクロソリウム」として熱帯魚の水槽で栽培される[20]。
- 観葉植物となるシダ類
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「ボストン・ファーン」と呼ばれる Nephrolepis exaltata
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オオバイノモトソウ Pteris cretica の斑入りの園芸品種 'Albo-lineata'
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水槽で栽培される「ミクロソリウム」(ミツデヘラシダ Microsorum pteropus)
薬用
[編集]オシダ Dryopteris crassirhizoma は別名を「綿馬」という[17]。中国医学(本草)では貫衆と呼び塊根を薬用とする[17]。日本ではこれは「綿馬根」と呼ばれ[17]、駆虫剤としても用いられた[48]。カザリシダ Aglaomorpha coronans の根茎は「骨砕補」となる[29]。また中国ではタカワラビ科のタカワラビ Cibotium barometz は「金狗毛蕨」と呼ばれ、茎を肝臓、腎臓の薬として用いるほか[31]、チャセンシダ科のホコガタシダ Asplenium ensiforme は下痢止め、利尿作用をもつとして薬用にされ、栽培もされる[45]。ホングウシダ科のホラシノブ Sphenomeris chinensis は民間薬として用いられ、雲南省南部では「起死回生」の効果があるとされる[49]。ホウライシダ科のシダは漢方としてイワガネゼンマイ Coniogramme intermedia やイワガネソウ Coniogramme japonica では腫物の毒消しに、タチシノブ Onychium japonicum では解熱・利尿に、ホウライシダ Adiantum capillis-veneris では全草が解熱・解毒に用いられる[44]。カニクサ科のカニクサの葉は利尿剤とされる[16]。
ヒリュウシダ属も薬用に供され、Blechnum fluviatile はニュージーランドで口内炎の薬として、ヒリュウシダ Blechnum orientale は東南アジアで虫下しや膀胱炎の薬として、またBlechnum hastatum の根茎はチリのアラウコ人に嘔吐剤または妊娠中絶薬として用いられた[50]。
真嚢シダ類であるミヤコジマハナワラビ Helminthostachys zeylanica はマレーシアや中国で根茎を鎮痛解毒剤として用いられる[51]。
食用
[編集]食用となる一方毒性を有するものも多く、食用となるワラビ Pteridium aquilinum は葉にビタミン破壊酵素(チアミン分解酵素)を含むため、草木灰や重曹のようなアルカリで煮て灰汁抜きをし、毒成分を除去して食される[52][53]。この毒性により家畜やシカは食べないため放牧食性が形成され、日本などでは火入れにより良質のワラビが収穫され、山菜として利用されてきた[53]。サイレージなど飼料に混入することで家畜が膀胱がんなどになるワラビ中毒が発生する[53][22]。ワラビは葉柄の柔らかい部分が灰汁抜きの後、煮物や和え物などに用いられ、塩や味噌に漬けて保存される[52]。ワラビの根からとれる澱粉はワラビ粉としてわらび餅や団子に利用される[52][22]。
日本ではワラビのほかに、ゼンマイ Osmunda japonica、ヤマドリゼンマイ Osmundastrum cinnamomeum var. fokeiense などが山菜として食用にされる[54][52]。ゼンマイやヤマドリゼンマイは巻いた若芽の葉柄部を食用にする[52]。ゼンマイは灰汁抜きの後、煮つけ、天麩羅、汁の実に用いられる[52]。ヤマドリゼンマイも灰汁や重曹で灰汁抜きの後、煮物や和え物、汁の実として用いられる[52]。どちらも乾燥したり塩漬けにしたり、卯の花漬けにして保存される[52]。ヤマドリゼンマイは瓶詰にして市販される[52]。日本の東北地方ではクサソテツが「コゴミ」と呼ばれお浸しや揚げ物にして食される[15]。この仲間は北アメリカ東北部でも若芽の時期を珍重して食べられる[15]。
アジアでは広くイワデンダ科の クワレシダ Diplazium esculentum が食用にされる[21]。中国南部や東南アジアでは、ホウライシダ科のミズワラビ Ceratopteris thalictroides が食用にされる[44]。ブータンではワラビと同じコバノイシカグマ科のランダイワラビ Pteridium revolutum やオオイシカグマ Microlepia speluncae、イワデンダ科の Diplazium maximum やクワレシダ、イノモトソウ科のナチシダ Pteris wallichiana などを食用とする[53]。これらはいずれも毒性があって家畜やシカは食べないため、その排泄物を栄養として肥沃な放牧場にはこれらがよく繁茂し、放牧植生ができている[53]。
シシガシラ科のヒリュウシダ属も食用になり、ニュージーランドのマオリは Blechnum capense の芽を蒸し焼きにして食す[50]。オーストラリアのクイーンズランド州ではアボリジニが Blechnum indicum の太った根茎を食べる[50]。ヘゴ科のヘゴも髄に多量の澱粉を含む茎や若い葉は食用とされ、オーストラリアではほろ苦い甘みがあり、まずいカブのような味だと表現される[31]。
- 薬用・食用となるシダ類
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シダ類のフィドルヘッドを使った鶏肉料理
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食用に調理されたヒカゲヘゴ Cyathea lepifera
加工
[編集]シダ類を用いた籠は、西日本を中心に各地で生産されていたが、現在では広島県と沖縄県のみで技術の継承が行われている[55]。カニクサの蔓は編み籠の材料とされた[16]。葉軸がしなやかであるためウラジロ科も編んで壁材や籠などの工芸品に利用される[16]。特に、コシダ Dicranopteris linearis は葉軸を用いたシダ籠が作られており、広島県廿日市市大野では明治30年代に新たな副業としてその技術が伝わり、現在でも伝承されている[55]。
タカワラビ属の植物は、ハワイではハープウと呼ばれ、かつては若い茎を用いて帽子を作ったり、毛である「プル」を包帯、枕やマットレスの詰め物などに用いた[56]。
木生シダ類のヘゴ Cyathea spinulosa やオニヘゴ Cyathea podophylla、ヒカゲヘゴ Cyathea lepifera やマルハチ Cyathea mertensiana は「幹」と俗称される根に覆われた直立する根茎を「ヘゴ材(ヘゴ板)」として用いる[31]。ヘゴ材は家の柱や垣根に用いられ、細いものは生花の器に用いられるが、近年では専ら園芸材料として利用される[31]。洋ランは自生地では樹木や岩石に付着し生活するため、洋ランの栽培に円盤状や板状、棒状や植木鉢状に加工して利用される[31]。タカワラビ Cibotium barometz もヘゴ材と同様に蘭やアンスリウムの培地として用いることがある[56]。
また、ヘゴの根やゼンマイのひげ根(オスマンダ)はコンポストとして用いられる[31]。ヘゴ板の建材や園芸資材の需要は多くの種を脅かし、ワシントン条約により輸入規制されるものもある[31]。
象徴と装飾
[編集]『シルバー・ファーン(シダの葉)』は、ニュージーランドのシンボルになっている[57][58]。ニュージーランドのラグビー代表チーム、オールブラックスのエンブレムは、シルバー・ファーン。また、ニュージーランド航空は、1970年代よりシルバー・ファーンの若い葉「コル」をロゴに採用している。シルバーファーンの若い葉「コル」は、先住民マオリの言葉で「新生」や「成長」「平和」を象徴している[59]。
日本では、ウラジロは単にシダと呼ばれる普通種で、常緑であるため、および「齢垂れる(しだれる)」とかけて長寿の象徴として正月の飾り物(注連飾り)などに用いられる[14][15][16]。ウラジロの葉を図案化したものは歯朶紋(しだもん)と呼ばれ、家紋や着物の図柄に用いられる[60]。徳川家康は老年期、兜の前立てにシダの歯を象った通称「歯朶具足」を愛用した[61][62]。甲冑一式は久能山東照宮に奉納され、現在まで伝わっている[61]。
また、ワラビ巻き(早蕨)のような形状の文様は蕨手文(わらびでもん)と呼ばれ、土器や壁画に用いられたが、これが植物に由来する文様であるという確証はないとされる[63]。蕨手刀のように刀剣の一部にも用いられた[63]。
ニューギニア島ではキジノオシダ科のシダの葉を乾燥させ、祭の際に体を飾る材料として利用される[64]。
肥料・飼料
[編集]アカウキクサ科の水生シダ類には藍藻 Anabaena azollae が共生し窒素を供給するので貧栄養下でも生育できるため、東南アジアでは緑肥として用いられ、熱帯の稲作地帯における肥料となっている[65]。フィリピンの国際稲研究所にはアカウキクサの系統保存施設がある[65]。逆にサンショウモ Salvinia natans は切断された植物体から栄養繁殖するため水田を覆い尽くす害草となる[65]。
また、ハワイではタカワラビ属の澱粉を含む茎がブタの飼料に使われたこともある[56]。
シダ園
[編集]シダ園(英: fernery)は、シダの栽培と展示のための専門の庭園である。
多くの国ではシダ園は少なくとも日陰で湿った環境や光、霜などの極限からの保護や、乾燥地域に自生するシダの中にも雨や湿度からの保護を必要とするために屋内施設であるが、完全日照で最もよく育つものも存在するため、温暖な地域では屋外にあることが多く、同じような条件で育つさまざまな種が並んでいる。
1855年、イングランドの一部ではシダのブームが起きてプテリドマニア(シダ狂い)という現象を生む[66]。この言葉は聖職者であり自然主義者であったチャールズ・キングズリー(後に『水の子どもたち 陸の孤児のための童話』の著者)によって作られたものであるが、当時英国と外来の品種が収集、紹介されていくとコレクションを維持するために多くの道具が開発され、関連する園が次々と構築されていったことが知られる[67]。
出典
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