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[[ヘロドトス]]はエーリス地方ではなぜか[[ラバ]](馬と[[ロバ]]の混血)が生まれず、エーリス人によればある呪いが原因であり、そのためエーリス人は牝馬を国外に連れ出してロバと交配させた後に、エーリスに連れ帰ると述べており<ref>ヘロドトス、4巻30。</ref>、[[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]も同様の話を語っている<ref>パウサニアス、5巻5・2。</ref><ref>パウサニアス、5巻9・2。</ref>。[[プルタルコス]]によれば呪いの原因はオイノマオスで、オイノマオスはたいへんな愛馬家だったので、牝馬がロバの子を産むのを好まず、ラバを生ませようとする者を呪った。このためエーリス人は呪いを避けるために牝馬を国外に連れ出してロバと番わせるという<ref name=Plu_52 />。なお、一説によるとオイノマオスは死後、[[タラクシッポス]]になったといわれる<ref>パウサニアス、6巻20・17。</ref>。 |
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* [[シケリアのディオドロス|ディオドロス]]『神代地誌』飯尾都人訳、龍渓書舎(1999年) |
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* [[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年) |
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* [[ヘロドトス]]『[[歴史 (ヘロドトス)|歴史]](中)』[[松平千秋]]訳、岩波文庫(1972年) |
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* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年) |
* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年) |
2021年11月15日 (月) 10:47時点における版
オイノマオス(古希: Οἰνόμαος, Oinomaos)は、ギリシア神話の人物である。エーリス地方のピーサの王で、アレースと河神アーソーポスの娘ハルピンナ[1][2]、あるいはアトラースの娘アステロペー[3]、あるいはアトラースの娘アステリエーとの子[4]。あるいはアルクシオンの子[5]。オイノマオスはアトラースの娘ステロペー[6][7]、あるいはアクリシオスの娘エウアレーテーとの間にヒッポダメイアをもうけた[3]。またデュスポンテウス[8]、レウキッポスという子供もいた[9]。
オイノマオスはたいへんな愛馬家で[10]、父アレースから授かった馬を持っていた[11]。ハルピンナ市の創建者で、母の名にちなんで名づけた[12]。また娘ヒッポダメイアの求婚者を戦車競走で負かして殺害したことで有名で、ソポクレスとエウリピデスが悲劇作品を書いたが散逸した。
神話
求婚者の殺害
オイノマオスが求婚者を殺害したのは、ヒッポダメイアと結婚した者に殺されるという神託があったためとも、娘に恋していたためともいわれ[13]、一説にはヒッポダメイアを穢したともいわれる[14]。このためオイノマオスは求婚者たちにヒッポダメイアを戦車に乗せてコリントス地峡まで逃げることができれば結婚を許すが、もし途中で追いつかれたら殺すという条件を出した。しかしオイノマオスはアレースから授かった馬と武具を持っていたので[11]、求婚者を先に走らせ、自分はゼウスに犠牲を捧げた後に出発しても追いつくことができ、槍で求婚者を殺し[15][16][17]、首を切り落として館に打ちつけた[11][3]。あるいは屋根に葺いた[18]。
オイノマオスの死
後にペロプスが求婚したとき、ヒッポダメイアはペロプスに恋し、御者のミュルティロスにペロプスの味方をするよう頼んだ。そこでミュルティロスは戦車の車輪から楔を外した。このためオイノマオスがペロプスを追跡すると車輪が壊れ、手綱が絡まって引きずられて死んだ。あるいはペロプスに殺された。そのときオイノマオスはミュルティロスの裏切りに気づきペロプスに殺されるように呪った。そのためミュルティロスはペロプスに殺され、ペロプスの子孫を呪った。[19]。一説にペロプスはオイノマオスに勝つためにミュルティロスを殺したので、オイノマオスは敗北し、自殺したともいう[20]。オイノマオスに殺された者は12人とも、13人とも、あるいは15人ともいわれる[11][21][22]。
オイノマオスの呪い
ヘロドトスはエーリス地方ではなぜかラバ(馬とロバの混血)が生まれず、エーリス人によればある呪いが原因であり、そのためエーリス人は牝馬を国外に連れ出してロバと交配させた後に、エーリスに連れ帰ると述べており[23]、パウサニアスも同様の話を語っている[24][25]。プルタルコスによれば呪いの原因はオイノマオスで、オイノマオスはたいへんな愛馬家だったので、牝馬がロバの子を産むのを好まず、ラバを生ませようとする者を呪った。このためエーリス人は呪いを避けるために牝馬を国外に連れ出してロバと番わせるという[10]。なお、一説によるとオイノマオスは死後、タラクシッポスになったといわれる[26]。
系図
脚注
- ^ パウサニアス、5巻22・6。
- ^ シケリアのディオドロス、4巻73・1。
- ^ a b c ヒュギーヌス、84話。
- ^ ヒュギーヌス、250話。
- ^ パウサニアス、5巻1・6。
- ^ アポロドーロス、3巻10・1。
- ^ パウサニアス、5巻10・6。
- ^ パウサニアス、6巻22・4。
- ^ パウサニアス、8巻20・2。
- ^ a b プルタルコス『ギリシアの諸問題』52。
- ^ a b c d アポロドーロス、摘要(E)2・5。
- ^ パウサニアス、6巻21・8。
- ^ アポロドーロス、摘要(E)2・4。
- ^ ヒュギーヌス、253話。
- ^ シケリアのディオドロス、4巻73・4。
- ^ パウサニアス、5巻14・6。
- ^ パウサニアス、8巻14・10。
- ^ ピンダロス『イストミア祝勝歌』第4歌92行への古註a。
- ^ アポロドーロス、摘要(E)2・6-2・9。
- ^ シケリアのディオドロス、4巻73・5-73・6。
- ^ ピンダロス『オリュンピア祝勝歌』第1歌79行。
- ^ 『大エホイアイ』(パウサニアスによる引用、6巻21・10-21・11)。
- ^ ヘロドトス、4巻30。
- ^ パウサニアス、5巻5・2。
- ^ パウサニアス、5巻9・2。
- ^ パウサニアス、6巻20・17。
参考文献
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- ディオドロス『神代地誌』飯尾都人訳、龍渓書舎(1999年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
- ヘロドトス『歴史(中)』松平千秋訳、岩波文庫(1972年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店(1960年)