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[[アポロドーロス]]によるとイーカリオスとテュンダレオースはヒッポコオーンとその子供たちによって[[ラコーニア]]から追放され、[[アイトーリア]]のプレウローンの王[[テスティオス]]のところに亡命して、テスティオスの戦争を助け、[[ヘーラクレース]]がヒッポコオーンを滅ぼした後にラコーニアに帰還した<ref>アポロドーロス、3巻10・5。</ref>。[[ストラボン]]によればテスティオスが戦っていたのは[[アケローオス河]]を挟んだ隣の地方[[アカルナーニア]]で、亡命したイーカリオスとテュンダレオースはテスティオスを助けて戦ったので、戦争に勝利した後にアカルナーニアに領地を得た。その後ヘーラクレースがヒッポコオーンを滅ぼしたときにテュンダレオースのみラコーニアに帰還し、イーカリオスはアカルナーニアに残ってリュガイオスの娘ポリュカステーと結婚したと述べている<ref name=St_10_2_24 />。しかし[[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]によれば、イーカリオスはヒッポコオーンの味方をしてテュンダレオースを追放したとされる<ref>パウサニアス、3巻1・4。</ref>。 |
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===ペーネロペーの結婚=== |
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*[[アポロドーロス]]『ギリシア神話』[[高津春繁]]訳、[[岩波文庫]](1953年) |
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*[[ストラボン]]『[[地理誌|ギリシア・ローマ世界地誌]]』飯尾都人訳、龍渓書舎(1994年) |
*[[ストラボン]]『[[地理誌|ギリシア・ローマ世界地誌]]』飯尾都人訳、龍渓書舎(1994年) |
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*[[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年) |
*[[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年) |
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*[[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年) |
*[[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年) |
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*[[ホメロス]]『[[オデュッセイア]](上・下)』[[松平千秋]]訳、岩波文庫(1994年) |
*[[ホメロス]]『[[オデュッセイア]](上・下)』[[松平千秋]]訳、岩波文庫(1994年) |
2021年11月15日 (月) 10:56時点における版
イーカリオス(古希: Ἰκάριος, Īkarios)は、ギリシア神話の人物である。長母音を省略してイカリオスとも表記される。主に、
の2人が知られている。以下に説明する。
アッティカの人物
このイーカリオスは、アッティカの神話的人物である。ケクロプスの子パンディーオーンがアテーナイの王だったころの人で、ディオニューソスが初めてアッティカにやって来たときに歓迎したといわれる。エーリゴネーという娘がおり、またマイラという愛犬を飼っていた。
アポロドーロスによると、イーカリオスに歓迎されたディオニューソスは返礼として、ブドウの苗木と、ブドウ酒の醸造法を授けたといわれる。そこでイーカリオスはブドウ酒を広めようと考え、羊飼いのところにやって来てブドウ酒をふるまった。ところが羊飼いたちは初めて体験した酔いに驚き、毒を飲まされたと勘違いをしてイーカリオスを殺してしまった。エーリゴネーはマイラとともにイーカリオスを探し歩き、イーカリオスの墓を見つけたときに首をつって自殺した[1]。
ヒュギーヌスによると、イーカリオスとエーリゴネーの死に怒ったディオニューソスはアテーナイの女たちを狂気させた。アテーナイ人は神託によって2人の死が原因であることを知り、イーカリオスを殺した羊飼いたちを罰し、エーリゴネーの死を悼んで振り子人形の祭礼を定め、イーカリオスとエーリゴネーにブドウの初穂を供えた。また神々はイーカリオス、エーリゴネー、マイラを天に上げ、それぞれうしかい座、おとめ座、シリウスに変えた[2][3]。
ペーネロペーの父
このイーカリオスは、アイオロスの子のペリエーレースとペルセウスの娘ゴルゴポネーの子[4]、あるいはキュノルテースの子ペリエーレースとゴルゴポネーの子で、アパレウス、レウキッポス、テュンダレオースと兄弟[5]。あるいはキュノルテースの子ペリエーレースの子のオイバロスと水のニュムペーのバテイアの子で、テュンダレオース、ヒッポコオーンと兄弟[6]。
水のニュムペーのペリボイアとの間にトアース、ダマシッポス、イメウシモス、アレーテース、ペリレオースと、ペーネロペー[7]、イプティーメーをもうけた[8]。しかし一説にはイーカリオスの妻はリュガイオスの娘ポリュカステーであり[9]、ペーネロペーのほかにアリュゼウス、レウカディオスの2子がいたとも言われる[10]。
亡命
アポロドーロスによるとイーカリオスとテュンダレオースはヒッポコオーンとその子供たちによってラコーニアから追放され、アイトーリアのプレウローンの王テスティオスのところに亡命して、テスティオスの戦争を助け、ヘーラクレースがヒッポコオーンを滅ぼした後にラコーニアに帰還した[11]。ストラボンによればテスティオスが戦っていたのはアケローオス河を挟んだ隣の地方アカルナーニアで、亡命したイーカリオスとテュンダレオースはテスティオスを助けて戦ったので、戦争に勝利した後にアカルナーニアに領地を得た。その後ヘーラクレースがヒッポコオーンを滅ぼしたときにテュンダレオースのみラコーニアに帰還し、イーカリオスはアカルナーニアに残ってリュガイオスの娘ポリュカステーと結婚したと述べている[9]。しかしパウサニアスによれば、イーカリオスはヒッポコオーンの味方をしてテュンダレオースを追放したとされる[12]。
ペーネロペーの結婚
娘のペーネロペーはイタケー島の王オデュッセウスと結婚したが、これはテュンダレオースが娘のヘレネーに多くの求婚者が殺到して困っていたときに、オデュッセウスがペーネロペーとの結婚をイーカリオスに取りなしてくれるのと引き換えに、テュンダレオースが求婚者たちの中から誰をヘレネーの夫に選んでも怒らない妙案を授けたためであり、このためイーカリオスはテュンダレオースに頼まれて、ペーネロペーをオデュッセウスに与えたといわれる[13]。イーカリオスは2人が結婚すると、オデュッセウスをラコーニアに住まわせようとしたが、オデュッセウスにその意思はなかったので、イーカリオスは2人がイタケー島に向かう馬車を追いかけて、ペーネロペーにラコーニアに残ってくれと懇願し続けた。オデュッセウスはたまりかねて、ペーネロペーにイタケー島に来るかラコーニアに残るかを自分で決めろと言うと、ペーネロペーは何も言わずに恥らって顔を隠したので、イーカリオスはペーネロペーの気持ちを悟って2人を送り出したという[14]。
一方、イプティーメーはペライの王エウメーロスの妻となったといわれている[8]。
『オデュッセイア』
その後、トロイア戦争が終結しても、10年間もオデュッセウスが帰国しなかったとき、ペーネロペーに新たな求婚者たちが現れたが、求婚者の1人エウリュマコスは他の求婚者よりも結納金を釣り上げ、またペーネロペーへの贈物も熱心であったため、イーカリオスはペーネロペーにエウリュマコスとの結婚を強く勧めたとホメーロスは語っている[15]。
系図
ケパロス | プロクリス | ペルセウス | アンドロメダ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アルケイシオス | アウトリュコス | オイバロス | ゴルゴポネー | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ラーエルテース | アンティクレイア | テュンダレオース | イーカリオス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
クティメネー | カリディケー | オデュッセウス | ペーネロペー | イプティーメー | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
カリュプソー | キルケー | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ナウシトオス | ナウシノオス | ポリュポイテース | テーレマコス | ラティーノス | テーレゴノス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
脚注
- ^ アポロドーロス、3巻14・7。
- ^ ヒュギーヌス、130話。
- ^ シリウスではなくこいぬ座とする説もある。Ridpath, Ian. “Star Tales - Canis Minor”. 2013年6月12日閲覧。
- ^ アポロドーロス、1巻9・5。
- ^ ステーシコロス(アポロドーロス、3巻10・3 の引用)。
- ^ アポロドーロス、3巻10・4。
- ^ アポロドーロス、3巻10・6。
- ^ a b 『オデュッセイア』4巻796行-799行。
- ^ a b ストラボン、10巻2・24。
- ^ 『アルクメオーニス』断片(ストラボン、10巻2・9による引用)。
- ^ アポロドーロス、3巻10・5。
- ^ パウサニアス、3巻1・4。
- ^ アポロドーロス、3巻10・9。
- ^ パウサニアス、3巻20・10-20・11。
- ^ 『オデュッセイア』15巻。