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西村賢太

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西村 賢太
(にしむら けんた)
誕生 (1967-07-12) 1967年7月12日(57歳)
日本の旗 日本東京都江戸川区
職業 小説家
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
最終学歴 公立中学
活動期間 2004年 -
ジャンル 私小説
代表作 『暗渠の宿』(2006年)
『苦役列車』(2010年)
主な受賞歴 野間文芸新人賞(2007年)
芥川龍之介賞(2011年)
デビュー作 『けがれなき酒のへど』(2004年)
ウィキポータル 文学
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西村 賢太(にしむら けんた、1967年7月12日 - )は、日本小説家東京都江戸川区春江町出身[1]。町田市内の市立中学校卒。

略歴

祖父の代から続く運送業者の家庭に生まれる。実家は下請け仕事が中心で、トラック3台、従業員は最盛期でも4人の零細企業だった[1]。父は外車マニアで、数年ごとにジャガーカマロクーガーなどを買い換えていたが[1][2]1978年秋に強盗強姦事件を起こして逮捕され、刑務所に収監される。このため両親が離婚し、3歳上の姉と共に母子家庭で育つ。読書好きな姉の影響で、幼児期から『赤毛のアン』『キュリー夫人』などを読み、活字に親しんでいた[3]江戸川区立二之江第二小学校5年の2学期に千葉県船橋市原木中山へ転居し、さらに小学校6年に進級する春休み中に東京都町田市のコーポに転居[1]

それまでは父が単なる強盗事件を起こしたと聞かされていたが、町田市立中学校3年の時、父が起こした事件が性犯罪だったことを知り、その衝撃で2学期頃から不登校となる[1]。国語を除くと成績は「1」ばかりでローマ字も書けず、高校は全寮制の東京都立秋川高等学校しか行くところがないと教師に宣告されたが、寮に入るのを嫌って進学せず[4]、家を出て東京鶯谷の家賃8000円のアパートに下宿。やがて、家賃を4か月滞納したまま1年半で鶯谷のアパートから強制退去処分を受け、飯田橋横浜市戸部町豊島区要町板橋などでトイレや風呂のない一間のアパートに住み、家賃滞納と強制退去を繰り返す[1]。この間、港湾荷役や酒屋の小僧、警備員などの肉体労働で生計を立てていた。1990年頃には品川の屠場で働いたこともあるが、「あまりのきつさに音を上げて一日でやめてしまった」という[5]。私生活では、25歳頃にアルバイト先の同僚と揉め、止めに入った警官を誤って殴り逮捕され、罰金刑を受ける[6]。また、29歳の時には飲食店で酔って他の客に絡んで暴力をふるい、再び逮捕され、東京地裁罰金刑を受けた[6]

傍ら、16歳頃から神田神保町の古本屋に通い、戦後の探偵小説初版本などを集めていたが[1]土屋隆夫の『泥の文学碑』を通じ田中英光の生涯を知ってから私小説に傾倒。1994年より1996年まで私家版『田中英光私研究』全8冊を刊行、この研究書の第7輯に私小説「室戸岬へ」を発表。第8輯にも私小説「野狐忌」を発表している。田中英光研究から離れた理由については「田中英光は、結局、一種のエリートなんですよ。そこでもう、なんか、そこでこう、もの足りないものを感じた」[7]と語っている。

23歳で初めて藤澤清造の作品と出会った時は「ピンと来なかった」というが、29歳の時、酒に酔って人を殴り、留置場に入った経験から清造に共鳴するようになり[1]、以来、清造の没後弟子を自称し、自費で朝日書林より刊行予定の藤澤清造全集(全5巻、別巻2)の個人編集を手掛けている。朝日書林の主人からは相当額の金銭的援助を受け、神田神保町のビルの一室を契約したとき費用を借りた他、「これまでにトータルで5、600万は借りてる」[1]という。

清造の墓標を貰い受けて自宅に保存している他、1997年頃から[1]清造の月命日の毎月29日には清造の菩提寺浄土宗西光寺(石川県七尾市)に墓参を欠かさない。2001年からは自ら西光寺に申し入れて「清造忌」を復活させた他、清造の墓の隣に自身の生前墓を建ててもいる。このエピソードがいくつかの作品において主人公の行動に擬して描かれているように、西村の作風は強烈な私小説である。また「瘡瘢旅行」で、敬愛する藤澤清造は「小説家」ではなく「私小説家」だと呼んでいる。

2003年夏、同人雑誌『煉瓦』に参加して小説を書き始める。2004年、『煉瓦』第30号(同年7月)に発表した「けがれなき酒のへど」が『文學界』12月号に転載され、同誌の下半期同人雑誌優秀作に選出される。同年に『煉瓦』を退会。2006年、「どうで死ぬ身の一踊り」で第134回芥川賞候補、「一夜」で第32回川端康成文学賞候補、『どうで死ぬ身の一踊り』で第19回三島由紀夫賞候補となる。2007年、『暗渠の宿』で第29回野間文芸新人賞受賞。2008年、「小銭をかぞえる」で第138回芥川賞候補。2009年、「廃疾かかえて」で第35回川端康成文学賞候補。2010年、「苦役列車」で第144回芥川賞受賞。芥川賞受賞後の2011年7月には、「この受賞の流れを逃したら次はない」[8]という自身の提案で新潮社から清造の代表作『根津権現裏』を新潮文庫より復刊させた。2012年には同文庫より、自ら編集した「藤澤清造短篇集」を刊行。

芥川賞受賞会見における「そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」との発言が話題を呼び[9]、同賞受賞以後はワタナベエンターテインメントに所属している[10]

逸話

  • 作品に度々登場する同棲相手の「秋恵」には実在のモデルがいるが、モデルとなった女性の性格・出身地・年齢・外見などはことごとく変えてあるという[4]。モデル問題で提訴されることを恐れているため、とのこと[4]

作品一覧

小説

単行本

  • どうで死ぬ身の一踊り(2006年2月 講談社2009年 講談社文庫 ISBN 9784062762533
    • 墓前生活
    • どうで死ぬ身の一踊り(『群像2005年9月号)
    • 一夜(『群像』2005年5月号)
  • 暗渠の宿(2006年12月 新潮社2010年 新潮文庫 ISBN 9784101312811
  • 二度はゆけぬ町の地図(2007年10月 角川書店、2010年 角川文庫 ISBN 9784043943869
    • 貧窶の沼(『野性時代』2007年7月号)
    • 春は青いバスに乗って(『煉瓦』29号、2004年1月)
    • 潰走(『野性時代』2006年2月号)
    • 腋臭風呂(『野性時代』2006年12月号)
  • 小銭をかぞえる(2008年9月 文藝春秋 2011年 文春文庫 ISBN 9784167815011)
    • 小銭をかぞえる(『文學界』2007年11月号)
    • 焼却炉行き赤ん坊(『文學界』2008年6月号)
  • 瘡瘢旅行(2009年8月 講談社 2011年「廃疾かかえて」新潮文庫 ISBN 9784101312828)
    • 廃疾かかえて(『群像』2008年11月号)
    • 瘡瘢旅行(『群像』2009年4月号)
    • 膿汁の流れ(『群像』2009年6月号)
  • 人もいない春(2010年6月 角川書店 ISBN 9784048740623 2012年角川文庫 ISBN 978404100126-4
    • 人もいない春(『野性時代』2008年7月号)
    • 二十三夜(『野性時代』2007年10月号)
    • 悪夢 ― 或いは「閉鎖されたレストランの話」(『野性時代』2006年6月号)
    • 乞食の糧途(『野性時代』2008年12月号)
    • 赤い脳漿(『野性時代』2010年2月号)
    • 昼寝る(『野性時代』2010年4月号)
  • 苦役列車2011年1月 新潮社 ISBN 9784103032328 2012年新潮文庫 ISBN 9784101312842
    • 苦役列車(『新潮』2010年12月号)
    • 落ちぶれて袖に涙のふりかかる(『新潮』2010年11月号)
  • 寒灯(2011年6月 新潮社 ISBN 9784103032335
    • 陰雲晴れぬ(『新潮』2010年8月)
    • 腐泥の果実(『新潮』2011年2月)
    • 寒灯(『新潮』2011年5月 )
    • 肩先に花の香りを残す人(『東と西 2』(2010年7月 小学館))

共著

  • 文学2006「一夜」収録(2006年4月 講談社 ISBN 4062134071
  • 極上掌篇小説「悪夢或いは閉鎖されたレストランの話」収録(2006年10月 角川書店 ISBN 9784048737326
  • ひと粒の宇宙「悪夢或いは閉鎖されたレストランの話」収録(2009年11月 角川文庫 ISBN 9784043854042) - 「極上掌篇小説」の文庫化
  • 文学2009「廃墟かかえて」収録(2009年4月 講談社 ISBN 9784062154284
  • 東と西2「肩先に花の香りを残す人」収録(2010年7月 小学館 ISBN 9784093862769
  • ベスト・エッセイ2012「醜文の弊害」収録(2012年6月 光村図書出版)

翻訳

  • 苦役列車(韓国語訳)(2011年10月 dasan books)

随筆

  • 随筆集 一私小説書きの弁(講談社、2010年1月)2011年新潮文庫 ISBN9784101312835)
  • 随筆集 一日(文藝春秋、2012年5月 ISBN 9784163752907)

対談集

単行本未収録作品

  • 「室戸岬へ」(田中英光私研究第7輯、1995年)
  • 「野狐忌」(田中英光私研究第8輯、1996年)
  • 「一隅の夜」二之江第二小学校六年一組創作集(NHK「ようこそ先輩」で作成した非売品文庫、2011年8月)
  • 「膣の復讐」(『週刊ポスト』2011年12月2日号)
  • 「青痣」(『新潮』2012年1月号)
  • 「棺に跨がる」(『文學界』2012年5月号)
  • 「脳中の冥路」(『文學界』2012年7月号)
  • 「豚の鮮血」(『文學界』2012年11月号)
  • 「形影相弔」(『en-taxi』vol.37 WINTER 2012)

解説

  • 稚児殺し 倉田啓明譎作集(龜鳴屋、2003年
  • 藤澤清造「根津権現裏」 (新潮文庫、2011年
  • 藤澤清造「藤澤清造短篇集」 (新潮文庫、2012年
  • 上原善広「日本の路地を旅する」 (文春文庫、2012年

談話収録

  • 友川カズキ歌詞集1974-2010 ユメは日々元気に死んでゆく(ミリオン出版、2010年12月)
  • 3・11後 ニッポンの論点(朝日新聞出版社、2011年9月)

論文

映画化作品

  • 苦役列車(東映配給、2012年7月公開)

テレビ出演

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j 『週刊文春』2011年2月24日「新・家の履歴書」
  2. ^ 当時の実家は裕福であり、小説における「お寿司」「お蕎麦」「ぼく」などの丁寧な物の言い方は、言葉遣いに厳しい両親に育てられた影響によると当人は2011年10月14日の『スタジオパークからこんにちは』(NHK総合)で語っている。
  3. ^ 2011年10月14日スタジオパークからこんにちは』(NHK総合)における西村の発言。
  4. ^ a b c 『新潮45』2011年12月号 上原善広との対談「このロクでもない二人」
  5. ^ 『波』2011年6月号、上原善広との対談「言葉を殺すのは誰か」での発言。
  6. ^ a b 『北國文華』2011年春号「芥川賞で浮かんだ“郷土の文士”藤澤清造 〈特別インタビュー〉 ◆西村賢太 わが師を語る  悲惨だが滑稽(こっけい)、野暮(やぼ)だけどダンディー」p.19。
  7. ^ NHK「かぶん」ブログ:NHK|取材エピソード|芥川賞・西村賢太さん
  8. ^ 日本経済新聞夕刊2011年7月12日付
  9. ^ NEWSポストセブン 「風俗」発言の芥川賞作家「私の体からは負のオーラ出てる」2011.02.24 10:00
  10. ^ ワタナベエンターテインメントのウェブサイトの当該ページ

外部リンク


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