利用者:実芭蕉/sandbox9
新型コロナウイルス感染症の流行における活用
[編集]日本
[編集]アベノマスク
[編集]2019年新型コロナウイルス感染症の流行による2020年2月以降の日本国内での深刻なマスク不足のために発生した国民の高い需要に応じて[1]、2020年に日本国政府が全世帯にガーゼ製の布マスクを2枚ずつ配布した[2]。その2枚の布マスクは、安倍晋三首相の経済政策アベノミクスになぞらえてアベノマスクと呼ばれるようになり、海外メディアでも取り上げられAbenomaskなどとして報道された[3][4][5]。この布マスクの配布には送り先の住所や名前がなくても対象地域にある郵便受けに配達される「タウンプラス」という日本郵政の配達システムが利用され[6]、4月17日より投函が始まった[7][8]。経済産業省の浅野大介サービス政策課長によると、郵送の形にすることでクラスター感染を避けるためである[9][10]。また、布マスクを大量生産している会社は今時ないため政府が買い上げる形で発注した[9][10]。マスクの購入費用として政府は1枚当たり260円程度かけており、全世帯2枚ずつの配布を行うには466億円がかかる見通しである[11]。厚生労働省によるとマスクの受注先は興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーションの3社であり、契約額はそれぞれ約54.8億円、約28.5億円、約7.6億円であった[12]。また、マスク配布については、全国の医療機関にサージカルマスクを、高齢者施設や障害者施設や全国の小学校・中学校向けに布マスクをそれぞれ優先的に配布することも決めている[13]。なお、布マスクが2枚である理由は、日本の世帯平均人数が約2人であり、また2枚を配るのが精いっぱいであるためである[9][10]。
批判・問題点
[編集]わずかマスク2枚の配布のために数百億円もの予算を割くことに対しての批判が寄せられた[14]。また、配布されたマスクに関しても「小さくて話すとずれ、使いにくい」「耳がこすれて痛い」など不満の声もあがった[14]。配布された布マスクは縦9.5 cm、横13.5 cmの平型ガーゼマスクであり、文庫本より一回り小さく[15]、立体型のタイプは耳かけの紐が伸縮しない[16]。そのため使用者によっては口や鼻が出ることになる[17]。縫い目をほどいて、立体型にリメイクする使用法もある[18]。布マスクのサイズについて厚生労働省は「布マスクの全戸配布に関するQ&A」というページで「布マスクのサイズが小さいと思うのですが、大人用ですか」という質問に対して「今回配布する布マスクは縦9.5センチ、横13.5センチの市販の大人用のものであり、口と鼻を覆うために十分な大きさであると考えております」と回答している[19]。
また、厚生労働省によると、4月14日から妊婦あてに先行配布したマスクにおいてカビが生えるなどの変色や髪の毛、異物混入の報告が相次いでおり、4月21日時点で7,870件に上っているという。問題を受けて、厚生労動省はマスクを妊婦に配布するのを中断した。また、小中学校や特別支援学校に配布されたマスクの中に虫が混入していた例もあり[20][21]、これまた配布が中断された[22][23][24]。この不良品に関し、菅官房長官は「実際の配布を行う前段階で適切に除外されている」とコメントしている[25]。
石破茂はラジオ出演した際に「だいたい(普段のマスクの)7割かな」と大きさに言及し、配ることはいいこととしながらも優先順位が間違っていると指摘。税金が460億円投入されていることも含めマスク一斉配布について疑問を呈した[26]。神戸大学感染症内科教授の岩田健太郎は「効果がない、あるいはコスト効果が極めて悪い策だと思います」、「エビデンスに乏しく、実質的効果は期待できません」、「無駄であるばかりか、『マスクさえすれば大丈夫』という間違ったメッセージを送りかねない」と指摘した[27]。また、今回の布マスクの配布には、高齢者が朝からドラッグストアに並んでいるため、働く世代がマスクを買えない状況が続いており、布マスクの配布によりこうした人が並ばなくなれば、働く人がマスクを買えるようになる、これは一種の需要調整である、という側面があるが[28]、このことについて高齢者を馬鹿にしている、言い訳が苦しいなど、賛否両論が飛び交っていた[29]。
自治体における配布
[編集]- 日本におけるコロナウイルス感染症の流行におけるマスク配布の先例として、2020年3月上旬に国民生活安定緊急措置法に基いて感染者数が全国最多だった北海道の北見市と中富良野町がメーカーや輸入業者から買い取った使い捨てマスクを全世帯に2回に分けて配布された例がある[30]。これにも前述の「タウンプラス」という日本郵政の配達システムが利用された[6]。このとき配布されたのは布マスクではなく、ユニ・チャームやアイリスオーヤマの使い捨てマスクである[31]。
- 新潟県の燕市では、同市出身の学生に対し帰省の自粛を要請する一方で、応援としてマスクやコメ、キュウリなどの支援品や市長からの手紙を梱包して送付している。市内の実業家が市へ提案して取り組みが始められた。コメなどは有志による寄付でまかない、マスクや送料などは市負担する。当初は首都圏在住の東京つばめいとに登録する者のなかで希望する人のみだったが、緊急事態宣言の発令地域が全国に及んだことで新潟県外のすべての地域の学生が対象となった[32][33][34]。
- 福井県でも、マスク購入券を4月23日から全戸に配布する。配布されたマスク購入券を地元のドラッグストア「ゲンキー」に持っていくと50枚入りの使い捨てマスク2箱を購入することができる[35]。
海外
[編集]布マスクの配布は海外の国々や地域でも行われている。
- シンガポールでは2020年4月に地域のコミュニティーセンターなどを通じて1人1枚の布マスクを配布している[36]。
- イタリアでは地方自治体による配布が進められている。トスカーナ州では4月半ばから外出時には着用が義務づけられているが、同時に1日一人当たり1枚、無料で支給を受けることができるようになった。他にも、1人につき使い捨てマスク2枚が配布された[37]。
- タイでは工業省が3000万枚のマスクか一人当たり3枚のマスクを無料で配布する計画があり、スリヤ工業相によると2020年4月1日には布マスクの配布を8日に開始すると明らかにした[38][39]。
- 2020年4月6日以降、韓国のソウル市では、健康保険に加入しておらずマスクの購入が困難な外国人に対し、オンライン受付を通して10万枚を無料配布する。留学生には在籍する学校にて配布する。フィルター交換型の布マスク(交換フィルター5枚付き)か、使い捨てマスク5枚を選択し、41箇所の外国人支援施設で受け取れる[40][41]。
- 2020年4月7日にフランスのパリではアンヌ・イダルゴ=パリ市長が布マスク200万枚を発注し、市民に無料配布することを発表した[42]。イダルゴ市長によると「どんなタイプのスカーフでもマスクでも無いよりよい」という[42]。
- 2020年4月13日には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、テレビ演説において全国民にマスクを配布することを発表した[43]。
- 2020年4月20日にアメリカのニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、公共住宅の住民向けに布マスク50万枚と消毒液を配布することを発表した[44]。
脚注
[編集]- ^ “令和2年4月17日 新型コロナウイルス感染症に関する安倍内閣総理大臣記者会見”. 首相官邸. 2020年4月22日閲覧。
- ^ 新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策-第2弾-
- ^ From Abenomics to Abenomask: Japan Mask Plan Meets With Derision『Bloomberg』2020年4月2日
- ^ “Japan's Coronavirus Mask Handout Tainted by Gripes Over Mould, Stains, Insects” (英語). The New York Times. (2020年4月22日) 2020年4月23日閲覧。
- ^ “Abe faces calls for decisive action after 'Abenomask' blunder” (英語). nikkei asia reviews. (2020年4月3日) 2020年4月23日閲覧。
- ^ a b 布マスクの全世帯配布、北海道の「経験」では配達漏れも 『朝日新聞』2020/04/02
- ^ 「アベノマスク」都内で4月17日から投函開始『読売新聞』2020/04/16
- ^ 「“アベノマスク”都内郵便局に到着、17日から配達へ」TBSニュース
- ^ a b c Company, The Asahi Shimbun. “「マスク2枚の真相」炎上と「官僚神話」の崩壊 - 井戸まさえ|論座 - 朝日新聞社の言論サイト”. 論座(RONZA). 2020年4月23日閲覧。
- ^ a b c 一郎, 山本. “「アベノマスク」に見る、不人気だけど必要な緊急対策についての是非”. 文春オンライン. 2020年4月23日閲覧。
- ^ “マスク2枚配布に466億円の費用 蓮舫氏がSNSで内訳を公表”. livedoor NEWS 2020年4月10日閲覧。
- ^ “「アベノマスク」受注先 興和、伊藤忠など3社 契約額計90億円 厚労省マスク班公表”. 毎日新聞. 2020年4月22日閲覧。
- ^ なぜ政府は「布マスク2枚」を配るのか『ITmedia』2020/04/02
- ^ a b 介護・福祉施設に先行配布の「アベノマスク」早くも評判散々な訳『毎日新聞』
- ^ 布マスクの全戸配布に関するQ&A
- ^ 「ありがたい」「効果に疑問」 アベノマスク評価さまざま 一足先、施設に届く 佐賀県内『佐賀新聞』4/16 7:10
- ^ “アベノマスク”着け心地は? 思わぬ反応も…テレ朝ニュース、2020年4月17日
- ^ “アベノマスク”配布開始でリメイク広がる 有効活用でコロナ感染防止へモデルプレス(Exiteニュース)2020/04/19
- ^ “布マスク「サイズが小さい」…15の質問に厚労省がHP上で回答”. 日本放送協会. オリジナルの2020年4月23日時点におけるアーカイブ。 2020年4月22日閲覧。
- ^ [妊婦用布マスクに不良品 汚れ付着など1900件―厚労省 - 時事通信 2020年04月19日14時49分
- ^ 政府の妊婦向け布マスクに「変色」「髪の毛混入」など不良品の報告相次ぐ - 読売新聞 2020/04/19 15:33
- ^ 妊婦向け布マスク、不良品7800枚に 配布は中断も朝日新聞、2020年4月21日
- ^ 異物混入…アベノマスクに批判続く 製造社名は来月公表朝日新聞、2020年4月21日
- ^ 虫混入、カビ付着…全戸配布用の布マスクでも不良品 政府、公表せず『毎日新聞』2020年4月21日 18時57分
- ^ 菅官房長官、不良品マスク「適切に除外」 新型コロナ『時事通信』2020年04月22日12時08分
- ^ 石破氏アベノマスク手に皮肉「ちっちゃいんだねぇ」 - 日刊スポーツ 2020年4月22日16時3分
- ^ 「効果がない」「間違ったメッセージ送る」布マスク2枚配布、専門家はどう評価したのか - buzzfeed 2020/04/21 11:03
- ^ “マスク2枚配布の狙いは【解説】|テレ東NEWS:テレビ東京”. テレビ東京. 2020年4月23日閲覧。
- ^ 編集部. “テレ東官邸キャップの「マスク2枚配布の狙い」に「高齢者バカにしすぎ」「苦しい言い訳」”. ビジネスジャーナル/Business Journal | ビジネスの本音に迫る. 2020年4月23日閲覧。
- ^ 政府配布マスク配達開始 北見と中富良野 美幌は独自に郵送『北海道新聞』2020/03/06
- ^ “ユニ・チャーム、北海道にマスク提供開始”. 産経新聞. (2020年3月4日) 2020年4月23日閲覧。
- ^ “帰省自粛の燕市出身学生の支援を全国に拡大”. ケンオードットコム. 2020年4月20日閲覧。
- ^ “燕市が帰省自粛の学生にコメとマスク”. 新潟日報. 2020年4月20日閲覧。
- ^ “「ほんとに泣きそうになった」 新潟県燕市が帰省自粛学生に「コシヒカリ」と「布マスク」等送る応援施策、申し込んだ学生が感謝語る”. ねとらぼ. 2020年4月20日閲覧。
- ^ “マスクは十分用意してます ドラッグストア「ゲンキー」がマスク購入券の対応を発表”. ITmediaビジネス. (2020年4月20日) 2020年4月23日閲覧。
- ^ 行動制限へ転換のシンガポール、洗えるマスク配布始まる『朝日新聞』2020/04/07
- ^ イタリア、コロナ対策“ムラだらけ” マスク2枚ずつ配布のはずが…ミラノ在住ジャーナリストがリポート夕刊フジ(zakzak)2020.4.17
- ^ “布マスクの配布開始へ、工業省が1000万枚 | タイの経済・ビジネスニュース: 日刊タイビジネス”. 2020年4月22日閲覧。
- ^ インドシナ, アパレル・リソース in. “タイ:繊維企業、マスク生産を強化”. アパレル・リソース・インドシナ. 2020年4月22日閲覧。
- ^ “《安全》ソウル市、外国人向けマスク配布の受付開始”. NNA ASIA. 2020年4月22日閲覧。
- ^ “健保未加入の外国人にマスク配布 支援施設で受け取り可能=ソウル市”. 聯合ニュース. 2020年4月22日閲覧。
- ^ a b “コロナ:パリ市、市民にマスク配布を準備。 – OVNI| オヴニー・パリの新聞” (英語). ovninavi.com. 2020年4月22日閲覧。
- ^ “仏、全国民にマスク配布へ…外出制限は5月11日まで再延長 : 国際 : ニュース”. 読売新聞オンライン (2020年4月14日). 2020年4月22日閲覧。
- ^ “NY州 低所得者向け公共住宅で検査実施へ、布マスク配布も” (jp). TBS NEWS. 2020年4月22日閲覧。