塩塚博
塩塚 博(しおづか ひろし、1956年9月3日 - )は、日本の作曲家、編曲家、ギタリスト。
1980年代後半から郷ひろみや稲垣潤一等のアーティストへの楽曲提供や、CM音楽等の作曲・編曲、およびギタリストとしての活動を行っている。近年では、主に首都圏の鉄道事業者の駅で使用されている発車メロディや接近メロディの作曲・編曲も数多く手がけている。
経歴
[編集]神奈川県横浜市鶴見区で生まれ[1]、兵庫県尼崎市で育つ[2]。
クラシック音楽好きな父親の影響で、幼少期より音楽に親しんでいた。4歳の時にピアノを習い始め、小学校時代は田辺昭知とザ・スパイダースに憧れる。栄光学園中学校・高等学校[3]在学中は、ロックバンドのメンバーとしてギターを担当し、作曲も始める。卒業後は音楽家を志すも、親や教師からの反対を受けて上智大学経済学部経済学科に進学する。在学中は軽音楽部に入部し、河合マイケルらと知り合う[4]。同時に専門学校で澤田駿吾からジャズギターの指導を受け、セミプロでジャズギタリストとして活動する[4]。
大学卒業後は百貨店に就職したが、1984年に研修のため赴いたニューヨークで鑑賞したライブやミュージカルに刺激を受け、再び音楽家の道を志す。
1985年、リットーミュージック主催の「オリジナル・テープ・コンテスト」B部門で優勝。これを機にスカウトされ、1986年にCM音楽制作会社のジングに転職し、ディレクターを務める[5]。
1987年に作曲家・演奏家として独立。
ニッポン放送の制作部に知人がいた縁で、1989年頃から同局のCM音楽や番組のテーマ曲、およびジングルの作曲を手掛けるようになる。
1993年に五感工房から依頼され、東日本旅客鉄道(JR東日本)向けの発車メロディ9曲と接近メロディ9曲を作曲。発車メロディは1994年より高崎線や中央線快速を中心に順次導入され、現在もJR東日本管内の多数の駅やしなの鉄道の一部駅において使用されているほか、接近メロディも内房線の九重駅 - 太海駅間の各駅において使用されている[注釈 1]。また、一部の曲は日本貨物鉄道(JR貨物)の金沢貨物ターミナル駅、大阪貨物ターミナル駅、百済貨物ターミナル駅、安治川口駅、神戸貨物ターミナル駅、高松貨物ターミナル駅、神奈川臨海鉄道の末広町駅において、貨物列車の入線・発車時、および入れ換え作業の際の注意喚起用のメロディとしても使用されている。
この頃に作曲したメロディには元々曲名が無かったが、後に携帯電話の着信メロディとして配信する際に日本音楽著作権協会 (JASRAC) に登録することとなり、このとき「JR-SH○-○」(SHは"Shiozuka Hiroshi"の頭文字。○の中には数字が入る)という便宜的な曲名がつけられた。
2000年代中期以降はスイッチに活動の場を移し、JR東日本、東京地下鉄(東京メトロ)[6]向けの発車メロディの作曲・編曲や、2008年11月から導入開始した京浜急行電鉄各線向けの接近メロディの編曲等を行う。
2009年にはJR-SHシリーズのメロディがDizzi Mystica,MK,Icon,Cubby-Sの手によりトランスにアレンジされ、クエイク(現・エグジットチューンズ)より「EXIT TRANCE PRESENTS 駅トラ」として発売されたほか、2011年には塩塚自身がアレンジを行った「テツノポップ」がユニバーサルミュージックより発売された。
2012年5月9日からは、山陽電気鉄道本線の主要駅に塩塚の作曲した接近・発車メロディが導入された。関西地区の鉄道事業者に塩塚の曲が提供されるのはこれが初めてである[7]。
2013年4月には、自身初の著書である「駅メロ!THE BEST」を扶桑社から発売。以降、テレビ・ラジオ等のメディアや鉄道関連イベントへの出演、駅メロディに関するセミナー・講演活動なども積極的に行っている。
2014年3月には、初のフルオーケストラ作品となる『鉄道交響詩・駅メロディ』を日本フィルハーモニー交響楽団へ提供。同年4月からは、自身初のレギュラー出演番組となる『原めぐみ&塩塚博のミラクルショット』(ラジオ日本)の放送が開始される。
2023年にはJR東日本千葉支社の社員から依頼を受け、「令和のJR-SH (JR-SHR[注釈 2]) シリーズ」9曲を作曲。同年10月25日にそのうちの2作が成田線布佐駅に先行導入されたほか、同年11月20日に開催された自身のトークショーにおいて全曲の音源が公開された[8][9]。
制作スタイル
[編集]塩塚は、2021年の読売新聞とのインタビューの中で、作曲の際に意識してきたこととして「毎日のように耳にするから飽きられてはいけない。気持ちよくてさわやかな音色とし、くどくならないように音数を少なくしている」と説明しており、現代によみがえったモーツァルトになったつもりで作曲し、それを10秒に要約するという手法をとっていると語っている[10]。また、平易で親しみやすいメロディを作るのには効果的という理由から、大半のメロディは鼻歌で作ったと述べている[10]。
主な楽曲
[編集]アルバム
[編集]- JR東日本 駅発車メロディー・特急車内メロディー 音源集(2005年、テイチクエンタテインメント)
- 鉄のバラード~駅発車メロディ界の3大巨匠による発車メロアレンジ~(2008年、テイチクエンタテインメント)
- 京急 駅メロディ~オリジナル~(2009年、ユニバーサルミュージック)
- EXIT TRANCE PRESENTS 駅トラ(2009年、エグジットチューンズ)
- テツノポップ~史上最強 駅メロ伝説「SH」スペシャル・コレクション~(2011年、ユニバーサルミュージック)
- CLUB TRAIN(2011年、スイッチ)
- 今、よみがえる 三陸鉄道 車内放送アナウンス ~南リアス線~(2011年、スイッチ)
- 今、よみがえる 三陸鉄道II 車内放送アナウンス ~北リアス線~/映像でよみがえる三陸鉄道(2011年、スイッチ)
- 福島交通 飯坂電車~「いい電」に乗って~車内放送アナウンス+α (2012年、スイッチ)
- 東京メトロ丸ノ内線 駅発車メロディー&駅ホーム自動放送 (2012年、テイチクエンタテインメント)
- 東京メトロ副都心線 駅発車メロディー&駅ホーム自動放送 (2012年、テイチクエンタテインメント)
BGM・ジングル
[編集]テレビ
[編集]ラジオ
[編集]全てニッポン放送の番組である。
- コミュニケーションカーニバル 夢工場'87 - 告知ジングル
- 巨匠・高田文夫のラジオで行こう!
- 高杢禎彦のスーパー電リク→高杢禎彦のサンデーヒットパラダイス
- 高田文夫のラジオビバリー昼ズ - テーマ曲・ジングル
- 目覚ましかぼちゃモーニング
- 古舘伊知郎のパワフルタッチのまるごと遊ビジョン
- サブロー・シローの土曜は特ダネーター
- 邦子のYAMYAMももテレビ
- 腹よじれAGOHAZUSHI連盟
- 内海ゆたおの夜はドッカーン!
- 和久井映見 もうひとつのおもちゃ箱
- 安部譲二の堂々天下御免 - 番組内で企画された楽曲「伝説の赤い玉」(歌:さやま友香、台詞:安部譲二)の作曲も手掛ける
- 山田邦子涙の電話リクエスト→うえちゃん・山瀬の涙の電話リクエスト
- 浅草キッドの土曜メキ突撃!ちんちん電車!
- 裕司と雅子のガバッといただき!!ベスト30
- 早起き一番!山本元気がんばります
- つかちゃんの今日も快調!ほがらか大放送
- サンキュープラスワン
- 羽川英樹のトップスターベスト100
- 上柳昌彦の花の係長・ヨッ!お疲れさん
- TOYOTA 飛び出せ街かど天気予報
- トキちゃん真美の目覚ましかぼちゃモーニング
- 秋葉原ヤング電気館 -テーマ音楽はCD化(歌:加藤賢崇)
- ゲルゲットショッキングセンター
- サンサンサンデーはた金です
- あとちゃん・山瀬の歌のギャップ10
- 三菱自動車サタデーインフォメーション
- のってけテリー!渚の青春花吹雪
- オールナイトニッポンDX
- 「ジングルベルベル花吹雪」 - ジングル
- 土曜だ!いい朝KOASAクン
- 上柳昌彦の電リク
- 赤坂泰彦のサタデーリクエストバトル
- テリーとうえちゃんのってけラジオ
- Super Music Stadium
- 鶴光の噂のゴールデンアワー
- 高嶋ひでたけのお早よう!中年探偵団
- 三宅裕司のザ・ベスト30"スゲェ!"
- 笑顔満開!ひでたけ・のりこの大吉ラジオ
- ブリタモリ大百科事典
- 徳光和夫 とくモリ!歌謡サタデー
※その他、ニュースや交通情報のBGM、ステーションジングルなど多数。
その他・提供した楽曲など
[編集]- GOLD-ゴールド- - 岡本夏生
- 最終便にまにあえば - 郷ひろみ :初シングル作品 テレビ朝日『郷ひろみの宴ターテイメント』主題歌
- JOY〜よろこびの国〜 - 早見優
- チャンスのシッポ - 岡本南 :初レコード作品
- ぼんじゅーる・アキヤン・ワールド - どうぶつバンド Meets チバレイ:ニッポン放送『秋葉原ヤング電気館』テーマ曲
- ゆっくりロマンティック - 石田ひかり
- 「LAST CHANCE」「ミレナリオ A-Go-Go」 - 稲垣潤一
主な駅メロディ
[編集]※用途の記載が無いものは全て発車メロディ。
五感工房時代
[編集]東日本旅客鉄道・しなの鉄道等
[編集]- JR-SHシリーズ 計54作(発車メロディ・接近メロディ共に9曲で、各曲とも音色違いの3パターンが存在)
スイッチ時代
[編集]東日本旅客鉄道
[編集]- オリジナル[11]
- 「蝶々のように」:佐倉駅1番線[注釈 3]
- 「ムーンストーン」:佐倉駅3番線、市川駅3番線、川口駅2番線、蕨駅2番線、武蔵小金井駅3番線[注釈 4]
- 「森の妖精」:市川駅1番線、南船橋駅2番線
- 「朝つゆ」:市川駅2番線
- 「木もれ陽の散歩道」:東神奈川駅3番線、武蔵小金井駅4番線[注釈 5]
- JR-SHRシリーズ 計18作(発車メロディのみの9曲で、各曲とも音色違いの2パターンが存在)[8]
- 「JR-SHR1-1」:東我孫子駅2番線[12]
- 「JR-SHR1-3」:安食駅1番線[13]
- 「JR-SHR2-1」:小林駅2番線[13]
- 「JR-SHR2-3」:東我孫子駅1番線[12]
- 「JR-SHR3-1」:木下駅2番線[13]
- 「JR-SHR3-3」:湖北駅1番線[12]
- 「JR-SHR4-1」:稲毛駅3番線[14]
- 「JR-SHR4-3」:布佐駅1番線[15]
- 「JR-SHR5-1」:誉田駅3番線[14]
- 「JR-SHR5-3」:木下駅1番線[13]
- 「JR-SHR6-1」:新木駅上り[12]
- 「JR-SHR6-3」:小林駅1番線[13]
- 「JR-SHR7-1」:湖北駅2番線[12]
- 「JR-SHR7-3」:誉田駅1・2番線[14]
- 「JR-SHR8-1」:布佐駅2番線[15]
- 「JR-SHR8-3」:稲毛駅4番線[14]
- 「JR-SHR9-1」:安食駅2番線[13]
- 「JR-SHR9-3」:新木駅下り[12]
- ご当地メロディ(編曲)
- 「Vamos Ardija」:大宮駅2番線[16]
- 「Keep On Rising」:浦和駅1番線[16]
- 「めだかの学校」:三鷹駅[17]
- 「熱き星たちよ」:関内駅[18]
- 「八木節」:桐生駅[19]
- 「夢伝説」:行田駅[20]
- 「チューリップ」:前橋駅[21]
- 「夏は来ぬ」:上越妙高駅[22]
- 「線路は続くよどこまでも」:桜木町駅[23]
- 「朧月夜」:二宮駅[24]
- 「ぼくドラえもん」:登戸駅1番線[25]
- 「きてよパーマン」:登戸駅2番線[25]
- 「ドラえもんのうた」:登戸駅3番線[25]
- 「すいみん不足」:宿河原駅1番線[25]
- 「夢をかなえてドラえもん」:宿河原駅2番線[25]
- 「浜辺の歌」:辻堂駅[26]
- 「藤沢市歌」:藤沢駅3・4番線[27]
東京地下鉄
[編集]- 銀座線[28][29]
- 丸ノ内線[30]
- 日比谷線[31][32]
- 東西線[33]
- 「アゲハ蝶のワルツ」:B線(中野方面)車載メロディ
- 千代田線[34][35]
- 有楽町線
- 半蔵門線[36][37]
- 南北線[38]
- 副都心線(地下鉄成増駅 - 小竹向原駅間は有楽町線と同じメロディを使用)
京浜急行電鉄
[編集]- 列車接近メロディ(編曲)
※曲目は発車メロディ#京浜急行電鉄を参照。
山陽電気鉄道
[編集]- 「大切なもの」:停車列車接近メロディ
- 「花氷」:停車列車入線メロディ
- 「Good News」:通過列車接近メロディ
- 「舞い上がれ」:列車通過警告メロディ
- 「しあわせ列車」:主要駅発車メロディ
- 「プリンセスサンバ」[注釈 8]:山陽姫路駅発車メロディ
横浜市営地下鉄
[編集]横浜高速鉄道
[編集]脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ かつては御茶ノ水駅や高崎線の一部の駅、上越線の塩沢駅と大沢駅でも使用されていたほか、多摩都市モノレール線の発車メロディとしても使用されていた。
- ^ 「R」は、「令和 (Reiwa)」と「原点回帰 (Regression)」の頭文字。
- ^ かつては戸塚駅4番線でも使用されていた。
- ^ かつては矢板駅2・3番線、氏家駅1番線、宝積寺駅2番線でも使用されていた。
- ^ かつては戸塚駅1番線でも使用されていた。
- ^ かつては茗荷谷駅1番線で使用されていた。
- ^ 05系のみ使用。
- ^ 自身の著書「駅メロ!THE BEST」の記載では「プリンセス・サンバ」と曲名に中黒が付いており、山陽電気鉄道公式ホームページの記載(中黒無し)と差異がある。
- ^ a b JR関内駅と同一の音源。
出典
[編集]- ^ “どっから見てもフランス、パリ出身の僕!? - ☆♪☆ 鉄のみゅーじしゃん ☆♪☆”. goo blog. 2023年12月18日閲覧。
- ^ “ネイティブ関西 - ☆♪☆ 鉄のみゅーじしゃん ☆♪☆”. goo blog. 2023年12月18日閲覧。
- ^ “塩塚博 作曲・編曲家・ギタリスト”. 横浜人図鑑 (2019年4月29日). 2019年10月19日閲覧。
- ^ a b “10秒の駅メロに音楽家としての個性と技術を光らせる(塩塚 博 作・編曲家、ギタリスト) : 上智人が語る 「日本、そして世界」 : ソフィアオンライン : YOMIURI ONLINE(読売新聞)”. yab.yomiuri.co.jp. 2023年12月18日閲覧。
- ^ “SHシリーズ 塩塚博|特殊ページ|鉄道モバイル”. www.te2do.jp. 2019年10月19日閲覧。
- ^ “メトロ有楽町線で - ☆♪☆ 鉄のみゅーじしゃん ☆♪☆”. goo blog. 2023年12月18日閲覧。
- ^ “祝・関西初進出!!山陽電車、駅メロスタート - ☆♪☆ 鉄のみゅーじしゃん ☆♪☆”. goo blog. 2023年12月18日閲覧。
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- ^ “大盛況御礼!「塩塚博トークショー」レポート!”. スイッチオフィシャルサイト. スイッチ (2023年11月20日). 2023年11月22日閲覧。
- ^ a b “JRの定番「駅メロ」はモーツァルトがお手本だった…クラシックと駅との深い関係 : 音楽 : エンタメ・文化 : ニュース”. 読売新聞オンライン (2021年12月23日). 2021年12月23日閲覧。
- ^ スイッチ「駅メロ ベストセレクション2 ~発車メロディ編~オリジナル音源(山手線・中央線・京浜東北線等)」(SWIT-1009)
- ^ a b c d e f “JR成田線(我孫子線)新木駅・湖北駅・東我孫子駅の駅メロディを制作しました。”. スイッチオフィシャルサイト. スイッチ (2023年12月12日). 2023年12月12日閲覧。
- ^ a b c d e f “JR成田線(我孫子線)安食駅・小林駅・木下駅の駅メロディを制作しました。”. スイッチオフィシャルサイト. スイッチ (2023年12月26日). 2023年12月27日閲覧。
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- ^ “JR藤沢駅 「藤沢市歌」を制作しました。”. スイッチオフィシャルサイト. スイッチ (2024年10月7日). 2024年10月7日閲覧。
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- ^ “東京メトロ丸ノ内線分岐線発車サイン音を制作”. 株式会社スイッチオフィシャルサイト. 株式会社スイッチ. 2020年5月26日閲覧。
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- ^ 塩塚博. “CD「東京メトロ千代田線駅発車メロディ」が発売♪”. ☆♪☆ 鉄のみゅーじしゃん ☆♪☆. 2019年6月29日閲覧。
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- ^ “東京メトロ「南北線」が新駅メロディ採用 制作:株式会社スイッチ ”. 株式会社スイッチオフィシャルサイト. 株式会社スイッチ. 2020年5月26日閲覧。