「リュシテアー」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Cewbot (会話 | 投稿記録)
2行目: 2行目:
'''リュシテアー'''({{翻字併記|grc|'''Λυσιθέα'''|''Lysithea''|n}})または'''リュシトエー'''({{翻字併記|grc|'''Λυσιθόη'''|''Lysithoe''|n}})は、[[ギリシア神話]]に登場する[[オーケアノス]]の娘([[オーケアニス]])で[[ゼウス]]の愛人のひとり<ref>''Encyclopedia Mythica'' 中の記事 Micha F. Lindemans: [https://pantheon.org/articles/l/lysithea.html ''Lysithea'']</ref><ref>{{Webarchive |url=https://web.archive.org/web/20090930134736/http://www.hellenica.de/Griechenland/Mythos/Tethys.html |archiv-bot=2019-04-28 19:36:23 InternetArchiveBot }}</ref><ref name="encarta">"Lysithea (astronomy)," Microsoft® Encarta® Online Encyclopedia 2009 ({{Webarchive | url=https://web.archive.org/web/20090419220350/http://encarta.msn.com/encyclopedia_761587729/Lysithea_(astronomy).html}})</ref>。また[[エウエーノス]]の娘ともされる<ref>[[アレクサンドリアのクレメンス|偽クレメンス]]、''Recognitions'', 10.21. そこでは[[ユーピテル]](ゼウス)によって辱められ、ヘレノスを産んだとされる。</ref>。
'''リュシテアー'''({{翻字併記|grc|'''Λυσιθέα'''|''Lysithea''|n}})または'''リュシトエー'''({{翻字併記|grc|'''Λυσιθόη'''|''Lysithoe''|n}})は、[[ギリシア神話]]に登場する[[オーケアノス]]の娘([[オーケアニス]])で[[ゼウス]]の愛人のひとり<ref>''Encyclopedia Mythica'' 中の記事 Micha F. Lindemans: [https://pantheon.org/articles/l/lysithea.html ''Lysithea'']</ref><ref>{{Webarchive |url=https://web.archive.org/web/20090930134736/http://www.hellenica.de/Griechenland/Mythos/Tethys.html |archiv-bot=2019-04-28 19:36:23 InternetArchiveBot }}</ref><ref name="encarta">"Lysithea (astronomy)," Microsoft® Encarta® Online Encyclopedia 2009 ({{Webarchive | url=https://web.archive.org/web/20090419220350/http://encarta.msn.com/encyclopedia_761587729/Lysithea_(astronomy).html}})</ref>。また[[エウエーノス]]の娘ともされる<ref>[[アレクサンドリアのクレメンス|偽クレメンス]]、''Recognitions'', 10.21. そこでは[[ユーピテル]](ゼウス)によって辱められ、ヘレノスを産んだとされる。</ref>。


リュシテアーがゼウスによって身ごもったとき、彼女は妊娠をゼウスから隠しておこうと望んだ。そこで彼女は植物・動物・石に助けを頼んだ。植物と動物は助けることを拒否したが、石は彼女が出産するまで閉じこめて匿った。この間リュシテアーは彼女の運命のことで涙を流し、この涙が石に与えられて[[水晶]]が誕生することになった<ref>{{Internetquelle |url=http://www.neunplaneten.de/nineplanets/greek2.html#lysithea |titel=Anhang E1: Details zum mythologischen Hintergrund |autor=Bill Arnett, Gudrun Egert, Michael Wapp |werk=Die Neun Planeten |zugriff=2010-01-04}}</ref><ref>{{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20091005211959/http://www.griechische-botschaft.de/ueber-griechenland/die-griechischen-regionen/ |archiv-bot=2019-04-28 19:36:23 InternetArchiveBot }}</ref>。
リュシテアーがゼウスによって身ごもったとき、彼女は妊娠をゼウスから隠しておこうと望んだ。そこで彼女は植物・動物・石に助けを頼んだ。植物と動物は助けることを拒否したが、石は彼女が出産するまで閉じこめて匿った。この間リュシテアーは彼女の運命のことで涙を流し、この涙が石に与えられて[[水晶]]が誕生することになった<ref>{{cite web2|title=Anhang E1: Details zum mythologischen Hintergrund|periodical=Die Neun Planeten|publisher=|url=http://www.neunplaneten.de/nineplanets/greek2.html#lysithea|url-status=|format=|access-date=2010-01-04|archive-url=|archive-date=|last=Bill Arnett, Gudrun Egert, Michael Wapp|date=|year=|language=|pages=|quote=}}</ref><ref>{{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20091005211959/http://www.griechische-botschaft.de/ueber-griechenland/die-griechischen-regionen/ |archiv-bot=2019-04-28 19:36:23 InternetArchiveBot }}</ref>。


リュシテアーは[[ディオニューソス]]の母とも呼ばれる[[セメレー]]の別名であると主張する著者たちもいる。セメレーはのちにディオニューソスから神性を分け与えられて[[オリンポス山|オリュンポス]]に上げられ、そこで[[テュオーネー]]という名で神々のもとで暮らした<ref name="Blunck">[http://books.google.de/books?id=6YGqFZ_RPdQC&pg=PA29&dq=%2Blysithea+%2Bmythology&lr=&as_brr=3#v=onepage&q=%2Blysithea%20%2Bmythology&f=false Jürgen Blunck: Solar System Moons: Discovery and Mythology]</ref>。
リュシテアーは[[ディオニューソス]]の母とも呼ばれる[[セメレー]]の別名であると主張する著者たちもいる。セメレーはのちにディオニューソスから神性を分け与えられて[[オリンポス山|オリュンポス]]に上げられ、そこで[[テュオーネー]]という名で神々のもとで暮らした<ref name="Blunck">[http://books.google.de/books?id=6YGqFZ_RPdQC&pg=PA29&dq=%2Blysithea+%2Bmythology&lr=&as_brr=3#v=onepage&q=%2Blysithea%20%2Bmythology&f=false Jürgen Blunck: Solar System Moons: Discovery and Mythology]</ref>。

2021年4月17日 (土) 00:20時点における版

リュシテアー古代ギリシャ語: Λυσιθέα, Lysithea)またはリュシトエー古代ギリシャ語: Λυσιθόη, Lysithoe)は、ギリシア神話に登場するオーケアノスの娘(オーケアニス)でゼウスの愛人のひとり[1][2][3]。またエウエーノスの娘ともされる[4]

リュシテアーがゼウスによって身ごもったとき、彼女は妊娠をゼウスから隠しておこうと望んだ。そこで彼女は植物・動物・石に助けを頼んだ。植物と動物は助けることを拒否したが、石は彼女が出産するまで閉じこめて匿った。この間リュシテアーは彼女の運命のことで涙を流し、この涙が石に与えられて水晶が誕生することになった[5][6]

リュシテアーはディオニューソスの母とも呼ばれるセメレーの別名であると主張する著者たちもいる。セメレーはのちにディオニューソスから神性を分け与えられてオリュンポスに上げられ、そこでテュオーネーという名で神々のもとで暮らした[7]

文献証拠

リュシテアーに関する歴史的典拠には、ローマの政治家・文筆家であったマールクス・トゥッリウス・キケロー(紀元前106年 – 紀元前43年)およびビザンツの官吏・文筆家であったヨハンネス・リュドス(リュディア人ヨハネス、490年頃 – 565年)によるものがある。

キケローはその著作『神々の本性について』(De natura deorum) においてリュシトエー (Lysithoe) をヘーラクレースの母として述べており[8]、それによってまた彼女をゼウスの愛人であるとしている。しかしながら名前全体の正確なつづりは保存されておらず、後代の写本において語幹 Lysith- はフリードリヒ・クロイツァー(Friedrich Creuzer, ドイツの文献学者・神話学者)によって Lysithoe と補完された[9]

ヨハンネス・リュドスには、彼の著作『暦月について』(Περὶ τῶν μηνών) 中にギリシア神話の登場人物の系譜的注解も見いだされる。その第4巻ではヘーラクレースの7通りの異なる系図が与えられており、このうちのひとつが両親としてゼウスと、オーケアノスの娘リュシトエー (Lysithoe) とを名指している[10]。また別の箇所ではディオニューソスが、ゼウスとリュシテアー (Lysithea) との息子と呼ばれている[7][11][12]。リュシトエーとリュシテアーは事によっては同一視できるのか、それとも根本的に別々の登場人物とみなすべきかは、議論が定まっていない[9]

天文学

1938年セス・バーンズ・ニコルソンによって発見された木星衛星リシテア(当初は Jupiter X と呼ばれた)はリュシテアーの名にちなんで命名された[3]

脚注

  1. ^ Encyclopedia Mythica 中の記事 Micha F. Lindemans: Lysithea
  2. ^ Archived 2009-09-30 at the Wayback Machine.
  3. ^ a b "Lysithea (astronomy)," Microsoft® Encarta® Online Encyclopedia 2009 (Archived 2009-04-19 at the Wayback Machine.)
  4. ^ 偽クレメンスRecognitions, 10.21. そこではユーピテル(ゼウス)によって辱められ、ヘレノスを産んだとされる。
  5. ^ Bill Arnett, Gudrun Egert, Michael Wapp. "Anhang E1: Details zum mythologischen Hintergrund". Die Neun Planeten. 2010年1月4日閲覧
  6. ^ Archived 2009-10-05 at the Wayback Machine.
  7. ^ a b Jürgen Blunck: Solar System Moons: Discovery and Mythology
  8. ^ Marcus Tullius Cicero: De natura deorum. 第3巻第42章 (オンライン版)。当該箇所は複数のヘルクレース(ヘーラクレース)を識別する文脈で、«ex eo igitur et Lysithoe est is Hercules, quem concertavisse cum Apolline de tripode accepimus.»「そして彼〔=最古のユーピテル(ゼウス)〕とリュシトエーとからこの〔第一の〕ヘルクレースが生まれ、この〔ヘルクレース〕がアポッローと鼎をめぐって争ったのだとわれわれに伝わっている」。ここにいう鼎とはデルポイの聖三脚台のこと。
  9. ^ a b Pauly-Wissowa(パウリ゠ヴィソワ古典古代学大百科事典)
  10. ^ «ἀπὸ δὲ τῶν ἱστοριῶν εὑρίσκομεν ἑπτὰ Ἡρακλεῖς γενέσθαι, πρῶτον Διὸς τοῦ Αἰθέρος καὶ Λυσιθόης τῆς Ὠκεανοῦ, [...]»「だが歴史家たちからわれわれは知っている、七人のヘーラクレースが生まれたことを;第一の者はアイテールの〔息子〕ゼウスとオーケアノスの〔娘〕リュシトエーとの〔子〕、……」(『暦月について』IV, 46. テクストは Google Books で閲覧できる)
  11. ^ «κατὰ δὲ τοὺς ποιητὰς Διόνυσοι πέντε· πρῶτος Διὸς καὶ Λυσιθέας· [...]»「だが詩人たちによればディオニューソスは五人;第一の者はゼウスとリュシテアーとの〔子〕;……」(『暦月について』IV, 38)
  12. ^ Ivan M. Linforth: The arts of Orpheus. University of California Press 1941, S. 224.