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2021年5月13日 (木) 21:16時点における版
三方五湖(みかたごこ)とは、福井県三方郡美浜町と同県三方上中郡若狭町にまたがって位置する5つの湖の総称で、周囲には梅畑が広がる。国指定の名勝[1]で、若狭湾国定公園に属する。2005年11月8日付でラムサール条約指定湿地に登録されている。2015年(平成27年)4月24日、「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群 - 御食国(みけつくに)若狭と鯖街道 - 」の構成文化財として日本遺産に認定される[2]。
概要
三方五湖は五つの湖で構成されており、五つの湖はすべてつながっている状態である。湖の構成を以下に示す[3]。
名称 | 読み | 湖沼型 | 水質 | 面積 | 深度 | 周囲 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 三方湖 | みかたこ | 富栄養湖 | 淡水 | 3.58 km2 [4] | 5.8 m | 9.60 km | 南北約1.5km、東西約3km、湖面の海抜0m |
2 | 水月湖 (en) | すいげつこ | 富栄養湖 | 汽水 | 4.18 km2 [4] | 34 m | 10.80 km | 五湖中最大の面積 |
3 | 菅湖 | すがこ | 富栄養湖 | 汽水 | 0.91 km2 | 13.0 m | 4.20 km | |
4 | 久々子湖 | くぐしこ | 富栄養湖 | 汽水 | 1.40 km2 [4] | 2.5 m | 7.10 km | |
5 | 日向湖 | ひるがこ | 貧栄養湖 | 海水 | 0.92 km2 | 38.5 m | 4.00 km | 出典では淡水と表記されている |
人工構造物
三方五湖には水月湖と久々子湖をつなぐ浦見川(浦見運河)と、水月湖と日向湖を結んでいる嵯峨隧道、菅湖と三方湖をつなぐ堀切の3つの人工水路がある。
浦見川
浦見川(うらみがわ)は、1662年から行方久兵衛の指揮のもと開削された。そのため「浦見運河」と表記されることもある。
1662年5月1日に発生した寛文大地震で、菅湖から久々子湖に流れていた気山川(現在も気山保育所付近に川の跡が残っている)の地盤が隆起して、川の機能を失ってしまった。その代替水路として浦見川が掘削された。約2年後に運河は完成し、上流に溜まっていた水がすべて引いた上に、三方湖周辺の土地改良につながった。
嵯峨隧道
嵯峨隧道(さがずいどう)は、三方湖辺や水月湖辺の集落や農地を湖の氾濫から守るために計画され、1709年に鍬入れが行われ、1934年3月に完成した、トンネルの水路である。
嵯峨隧道に関しては、水月湖側への海水の逆流を防ぐため、1939年に水月湖側に木製の暫定水門を設置(1980年に現在の水門へ改修)し、基本的に閉ざされた状態であり、開かれることは少ない。これは、水門を開けることによって、水月湖側にとっては、逆流による水質の変化によって生態系に影響を与えるからであり、日向湖側では水門を開放することで、海水化したことによって飛躍的に増加したいかだや釣堀の魚に深刻な影響を及ぼすからである。
1999年8月14日には嶺南地方を豪雨災害が襲い、三方湖を中心にして三方五湖周辺で浸水被害が発生した(この時は全水門を開けているが、日向湖内の漁業に大きな被害が出た)。この結果、豪雨時に漁業被害をもたらすことなく排水できるのが浦見川だけでは問題であるとのことで、水月湖から若狭湾に直接排水できるトンネルを設ける案が示され、現在実現に向け検討中である。
三方湖
日本列島の気候や植生を何万年前より記録しており、また、日本海の海洋環境の変化を湖底に記録しているとして、湖底の堆積物を採取するためのボーリングが1980年11月に三方湖東南部(水深1.5メートル)の北緯35度33分32秒、東経135度53分40秒の地点で行われた。採取した堆積物から花粉、珪藻などの微化石、あるいは植物遺体を検出した。過去5万年間の記録を保管していることが分かった。ボーリング地点から南に1キロほどのところに鳥浜貝塚がある。
その他
菅湖と三方湖の間には堀切がある(掘削時期は1657年(明暦3年)以前と考えられるが、詳細は不明)。
五色の湖
五つの湖は淡水・海水・汽水とそれぞれに違った性質を持ち、また同じ汽水湖でも日本海に直接つながっている久々子湖と一番奥にある菅湖、中間の水月湖ではそれぞれ海水と淡水の比率が違っている。そのため水の色も微妙に変化し[5]、梅丈岳(三方五湖レインボーライン展望台)から見える景色は、五つの湖がそれぞれに違った青色をして見えるのである。
流出入する河川
日向湖を除く4湖は、久々子湖と若狭湾を結ぶ早瀬川を本川とする二級水系に属している。比較的大きな川は三方湖に流入する鰣川(はすかわ)のみである。そのほかは小さい川が多数流入している。若狭湾へ流れ出る川は早瀬川、並びに日向湖に繋がった運河のみである。
水月湖の湖水
水月湖は二重底の湖としても知られている。湖水上部(水深0-6m)は淡水、下部(水深7-40m)は硫化水素を含む無酸素の汽水となっている。
水路工事の結果、三方湖からは淡水、久々子湖からは汽水が流れ込むようになり、淡水に比べ重い汽水は湖底に滞留するようになった。この状態で湖の表面に強風が吹いても表層の淡水が攪拌されるのみで、湖底の汽水は滞留したままである。
この結果、下部の汽水は空気に触れることが無く、表層の酸素を含んだ淡水と混じり合うことも無いために、有機物分解によって酸素が消費し尽くされてしまい、酸素の代わりに汽水中の硫酸イオンを還元して硫化水素にすることで呼吸を行う硫酸塩還元細菌の活動により、2006年時点では硫化水素を多量に含んだ無酸素状態となっている。
なお、嫌気性の下層水で最も光の強度が強い上限付近では、硫化水素を光エネルギーで単体硫黄にまで酸化させ、その時に発生するエネルギーを利用して炭酸同化を行う緑色硫黄細菌を主体とする酸素非発生型の光合成細菌が濃密に生息している。
水月湖の年縞堆積物に関しては年縞#水月湖の年縞を参照のこと。
生物相
湖には、コイ、フナ、ボラ、ウナギ、エビ、ワカサギなどが生息し、釣りもできる。また、野鳥の観測地としても全国的に知られ、なかでもカモ目は、マガモ、カルガモ、キンクロハジロ、ホシハジロなど10数種類・数千羽が確認されている[5]。湖周辺には、オオワシやオジロワシなどの猛禽類も姿を見せる[5]。
周辺の主な施設
湖の沿岸には、弘法大師が一夜で観音像を彫ったという伝説があり、手足の不自由な人に御利益があるといわれる三方観音、日本最古の丸太船が出土し縄文時代の遺跡として知られる鳥浜貝塚や、古代の出土品などが展示される若狭三方縄文博物館、遊覧船の若狭町観光船レイククルーズがある[5]。またその周辺の丘陵地には、三方五湖や日本海を展望できる三方五湖有料道路(愛称:三方五湖レインボーライン)が走る[5]。
- 若狭三方縄文博物館
- 鳥浜貝塚をはじめ「縄文時代」をさまざまな視点からとらえる博物館。竪穴式住居の原寸大復元模型(入室可)、古代人の生活の展示、考古学的研究の展示などがある(入場有料、駐車場無料、レストラン有)。併設されている公園にはアスレチック施設などがあり、また道の駅三方五湖が隣接している。
- 若狭三方縄文博物館 〒919-1331福井県三方上中郡若狭町鳥浜122-12-1
- 福井県年縞博物館
- 地誌学および考古学博物館。三方五湖の一つである水月湖の湖底で発見された7万年に及ぶ年縞に関する展示・研究を行っている。若狭三方縄文博物館と併設されている。
- 福井県年縞博物館 〒919-1331福井県三方上中郡若狭町鳥浜122-12-1
- 若狭町観光船レイククルーズ
- 水月湖と菅湖を巡る双胴船による遊覧[6]。所要時間は約40分で、船幅と喫水の制限のため浦見川以遠と三方湖は遊覧しない。三方五湖ジェットクルーズの運行会社が休業したため、三方五湖の遊覧はレイククルーズによる2湖のみとなった[7]。
- 若狭町観光船レイククルーズ 〒919-1461福井県三方上中郡若狭町海山68-20
- 美浜町レークセンター(営業終了)[8]
- 若狭美浜物産振興協会が指定管理業者となって運営していた施設で、売店や食堂、三方五湖めぐり(ジェットクルーズ)の遊覧船発着場があった。
- 美浜町レークセンター 〒919-1124福井県三方郡美浜町早瀬24-4(若狭美浜物産振興協会)
- 2017年6月30日に営業終了[9]
-
美浜町レークセンター
(2017年6月30日 営業終了) -
営業終了の案内
-
陸揚げされた遊覧船
- 三方五湖ジェットクルーズ(運休中)
- 浦見川と三方五湖めぐりのジェット船による遊覧[10]。美浜町レークセンターから出航し久々子湖、浦見川、菅湖、水月湖、三方湖を巡る約40分の航路となる。公共交通機関のアクセスはJR小浜線美浜駅から美浜町コミュニティバス日向線「ゆうなぎ(赤い車体)」に乗車し、レークセンター停留所下車となるが、便数は1日数往復のみであるため注意を要する。
- 株式会社三方五湖レークセンター 〒919-1124福井県三方郡美浜町早瀬1-5
その他
- 日向湖の日向橋で毎年1月に行われる「水中綱引き」が有名である。また、この橋では架け替え工事が行われる以前に『釣りバカ日誌7』のロケが行われた。
- 1985年公開降旗康男監督、高倉健主演の映画『夜叉』のロケが行われた。
- 久々子湖には、福井県で開催された国体をきっかけに漕艇場が設置されている。美浜中学校や福井県立美方高等学校、福井県立敦賀工業高等学校が練習を行っている。
- 三方五湖周遊道路は、日本の道100選のひとつに選出されている[5]。菅・三方・水月の3湖の湖岸を巡る全長23kmのうち、湖の西側10kmは国道162号と県道常神三方線の2車線道路、湖の東側13kmは若狭町道として整備された自然遊歩道である[5]。
- 水月湖の年縞堆積物は、過去7万年の年代測定の標準時計として期待されている。
- 冬期の三方湖でたたき網漁が行われる。
脚注
- ^ 三方五湖 - 文化遺産オンライン(文化庁)
- ^ “海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群”. 文化庁. 2020年9月19日閲覧。
- ^ 環境庁自然保護局編『日本の湖沼環境II』、(財)自然環境研究センター、1995年 ISBN 4915959104
- ^ a b c 国土地理院 (2015年3月6日). “平成26年全国都道府県市区町村別面積調 湖沼面積” (PDF). 2015年3月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g 「日本の道100選」研究会 2002, pp. 122–123.
- ^ “若狭町観光船レイククルーズ”. 若桜町. 2017年5月14日閲覧。
- ^ a b “三方五湖レークセンターが休業へ”. 福井新聞. 2017年5月14日閲覧。
- ^ “美浜町レークセンター”. 美浜町商工観光課. 2017年7月14日閲覧。
- ^ 遊覧船の運行再開のメドが立たないため営業を終了。2017年9月9日 現地の張り紙で確認。
- ^ “広報みはま 2017.4月号「三方五湖遊覧船について」”. 美浜町. 2017年7月14日閲覧。
- ^ “㈱三方五湖レークセンター”. コンパスクラブ. 2017年5月14日閲覧。
参考文献
- 「日本の道100選」研究会 著、国土交通省道路局(監修) 編『日本の道100選〈新版〉』ぎょうせい、2002年6月20日。ISBN 4-324-06810-0。
関連項目
外部リンク
座標: 北緯35度34分19.9秒 東経135度53分04.0秒 / 北緯35.572194度 東経135.884444度