コンテンツにスキップ

「アレトゥーサ」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
m編集の要約なし
Cewbot (会話 | 投稿記録)
m Bot作業依頼: パウサニアスの改名に伴うリンク修正依頼 (パウサニアス (地理学者)) - log
17行目: 17行目:


===泉の伝説===
===泉の伝説===
古くからアレトゥーサの泉はエーリスのアルペイオス河と通じていて、アルペイオス河の水が海水と混ざらず、海底を通ってアレトゥーサの泉から湧き出ていると信じられていた。[[ピンダロス]]は『ネメアー祝勝歌』でこの伝説をうたったし<ref>ピンダロス『ネメアー祝勝歌』第1歌1。</ref>、また[[ウェルギリウス]]も『牧歌』<ref>ウェルギリウス『牧歌』第10歌4行-5行。</ref>や『[[アエネーイス]]』でこの伝説をうたっている<ref>ウェルギリウス『アエネーイス』3巻692~696。</ref>。[[ストラボン]]はこの伝説について批判的だが<ref>ストラボン、6巻2・4。</ref>、[[パウサニアス]]はこの伝説が、アレトゥーサとアルペイオスの物語が生まれた要因だとしている<ref>パウサニアス、5巻7・3。</ref>。
古くからアレトゥーサの泉はエーリスのアルペイオス河と通じていて、アルペイオス河の水が海水と混ざらず、海底を通ってアレトゥーサの泉から湧き出ていると信じられていた。[[ピンダロス]]は『ネメアー祝勝歌』でこの伝説をうたったし<ref>ピンダロス『ネメアー祝勝歌』第1歌1。</ref>、また[[ウェルギリウス]]も『牧歌』<ref>ウェルギリウス『牧歌』第10歌4行-5行。</ref>や『[[アエネーイス]]』でこの伝説をうたっている<ref>ウェルギリウス『アエネーイス』3巻692~696。</ref>。[[ストラボン]]はこの伝説について批判的だが<ref>ストラボン、6巻2・4。</ref>、[[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]はこの伝説が、アレトゥーサとアルペイオスの物語が生まれた要因だとしている<ref>パウサニアス、5巻7・3。</ref>。


[[オウィディウス]]の『[[変身物語]]』では、アレトゥーサは[[ハーデース]]に連れ去られた[[ペルセポネー]]の行方を[[デーメーテール]]に告げている<ref>オウィディウス『変身物語』5巻487行-508行。</ref>。
[[オウィディウス]]の『[[変身物語]]』では、アレトゥーサは[[ハーデース]]に連れ去られた[[ペルセポネー]]の行方を[[デーメーテール]]に告げている<ref>オウィディウス『変身物語』5巻487行-508行。</ref>。
36行目: 36行目:
* [[ストラボン]]『[[地理誌|ギリシア・ローマ世界地誌]]』飯尾都人訳、龍溪書舎(1994年)
* [[ストラボン]]『[[地理誌|ギリシア・ローマ世界地誌]]』飯尾都人訳、龍溪書舎(1994年)
* [[シケリアのディオドロス|ディオドロス]]『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
* [[シケリアのディオドロス|ディオドロス]]『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
* [[パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
* [[パウサニアス (地理学者)|パウサニアス]]『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年)
* [[ヒュギーヌス]]『ギリシャ神話集』[[松田治]]・青山照男訳、[[講談社学術文庫]](2005年)
* [[ピンダロス]]『祝勝歌集/断片選』[[内田次信]]訳、京都大学学術出版会(2001年)
* [[ピンダロス]]『祝勝歌集/断片選』[[内田次信]]訳、京都大学学術出版会(2001年)

2021年11月15日 (月) 10:55時点における版

オーギュスト・ルグラ(Auguste Legras)の1874年の絵画『アレトゥーサ』。トマ=アンリ美術館所蔵。
雲に覆われるアレトゥーサと、追いかけるアルペイオス。
シラクサのアレトゥーサの泉。
アレトゥーサの肖像がデザインされている500リラ紙幣。

アレトゥーサ古希: Ἀρέθουσα, Arethūsa)は、ギリシア神話に登場するニュンペーである。シチリア島シュラクーサイ近くのオルテュギア島にあるアレトゥーサの泉に変じたことで知られる。

長母音を省略してアレトゥサとも表記される。

神話

泉への変身

アレトゥーサはもともとはエーリスのニュムペーで、アルテミスに仕えていた。誰もが褒め称える美しい容姿を持っているのに、恋や結婚には関心がなかった。

あるときアレトゥーサは、狩りから帰るとき、疲れを癒そうとアルペイオス河で水浴びをしていた。すると突然、水の中からアレトゥーサを呼ぶ声がした。声の主は河の神アルペイオスで、アレトゥーサの魅力的な肢体に見惚れ、彼女に恋してしまったのだった。アレトゥーサは驚いて向こう岸に上がったが、服は対岸に置いたままだったので、何も着ずにそのまま逃げだした。するとアルペイオスも人の姿になり、アレトゥーサを追いかけた。走り疲れてとうとう追いつかれそうになったアレトゥーサは、捕まる寸前、アルテミスに助けを求めた。途端に、アレトゥーサの美しい肉体はみるみるうちに溶け流れ、地面に薄く広がって、水たまりのようになってしまった。願いを聞き届けたアルテミスが、アレトゥーサの体を水に変えたのだった。アルペイオスは驚き一瞬立ち止まったが、すぐさま水にもどって、アレトゥーサと混ざり合おうとした。するとアルテミスは大地を割って穴を作り、アレトゥーサはその穴に流れ込んで逃げた。地中に流れたアレトゥーサは地下水として海底の下をくぐり、やがてシュラクーサイのオルテュギア島から泉となって湧き出した。こうして純潔を守り通したアレトゥーサは、元の姿には戻らずにその場に溜まり、アレトゥーサの泉になったといわれる[1]

一説によれば、アレトゥーサとアルペイオスは狩人で、アレトゥーサがアルペイオスを拒んでオルテュギア島で泉になった後、アルペイオスも河になった[2]。あるいはアルテミスがオルテュギア島を得たときにニュンペーたちがアルテミスのためにアレトゥーサの泉を湧き出させたともいわれる[3]

泉の伝説

古くからアレトゥーサの泉はエーリスのアルペイオス河と通じていて、アルペイオス河の水が海水と混ざらず、海底を通ってアレトゥーサの泉から湧き出ていると信じられていた。ピンダロスは『ネメアー祝勝歌』でこの伝説をうたったし[4]、またウェルギリウスも『牧歌』[5]や『アエネーイス』でこの伝説をうたっている[6]ストラボンはこの伝説について批判的だが[7]パウサニアスはこの伝説が、アレトゥーサとアルペイオスの物語が生まれた要因だとしている[8]

オウィディウスの『変身物語』では、アレトゥーサはハーデースに連れ去られたペルセポネーの行方をデーメーテールに告げている[9]

その他のアレトゥーサ

脚注

  1. ^ オウィディウス『変身物語』5巻572行-641行。
  2. ^ パウサニアス、5巻7・2。
  3. ^ ディオドロス、5巻3・5。
  4. ^ ピンダロス『ネメアー祝勝歌』第1歌1。
  5. ^ ウェルギリウス『牧歌』第10歌4行-5行。
  6. ^ ウェルギリウス『アエネーイス』3巻692~696。
  7. ^ ストラボン、6巻2・4。
  8. ^ パウサニアス、5巻7・3。
  9. ^ オウィディウス『変身物語』5巻487行-508行。
  10. ^ アポロドーロス、2巻5・11。
  11. ^ ヒュギーヌス、序文。
  12. ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.24a。
  13. ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p40a。

参考文献