昆虫相撲
昆虫相撲(こんちゅうずもう)とは、昆虫または身近な陸生節足動物(主にクモ[1])を互いに闘わせる遊びの総称である。虫相撲などとも言う。縄張りを守ろうとしたり、繁殖期のメスへの求愛を競ったりする本能を利用することが多い[1]。闘わせるのは同種同性が場合が多いが、異種間の場合もある。
主な昆虫相撲
[編集]昆虫相撲と見なされ、様式化、体系化されている伝統文化は世界各地に存在し、以下のようなものがある。
- 闘蟋:中国。1200年の歴史を持ち、コオロギのオス同士を闘わせる。「こおろぎ合戦」「コオロギ相撲」と和訳されるが、日本国内でははっきりとした風習としてはほとんど体系化されていない。
- 蜘蛛合戦:コガネグモ同士を闘わせる日本の伝統文化。以下が知られる。
- ホンチ:ネコハエトリのオスを争わせる[1]。神奈川県横浜市・川崎市一帯のものは、横浜市登録地域無形民俗文化財に2019年(令和元年)11月5日に登録された[4][5]。ネコハエトリを闘わせる。江戸時代に房総半島や対岸の三浦半島の漁師が、時化で休む時の手慰みとして始めたと伝えられ[1]、房総半島側の千葉県富津市ではフンチと呼ぶ。
- 座敷鷹:延宝-享保の江戸。ホンチと同じくハエトリグモを使用する競技だが、クモ同士を闘わせるのではなく、クモがハエを狩る能力を競わせた。
- メンクワン:タイ王国。ヒメカブトムシを闘わせる。
- カブトムシ相撲:日本各地の夏の風物詩。カブトムシのオス同士、ないしカブトムシと大型のクワガタムシを闘わせる。子供たちがめいめい採ってきた個体を闘わせるもので、藁くず等で土俵を作って行なわれることも多かった。どちらかの昆虫がひっくり返したり、場外に落としたり、対戦相手の昆虫が逃げ出したりしたら勝ちである。地域によっては神社境内の祭り、縁日などで大会をすることもある。
現代日本のホビーとしての昆虫相撲
[編集]熱帯産の外国種を含むカブトムシやクワガタムシなどを戦わせる娯楽である。試合様式は概ね上記のカブトムシ相撲に準ずるが、体系化された文化としての歴史、伝統はほとんど無い。ムシキング等のデジタルビデオゲームから規範を得た異種格闘の意味合いが強い。実虫を闘わせるのではなく、バーチャルに闘いをシミュレートするゲームをプレイしたり、闘いの様子を収録したDVDを鑑賞したりする場合もある。
両者ともにもとはメスないしは餌場を奪い合うための手段として発達させた角や大アゴを、闘争心が旺盛であるため顔を合わせただけで戦う性質を利用する。カブトムシは皮膚が発達した角を相手の腹下にいれ、持ち上げるようにして投げ飛ばす。頭角と胸角で挟んで投げ飛ばすこともある。前肢で振り払ったりもする。クワガタムシはもともと採食のためのものが発達した大アゴで相手を挟み、投げ飛ばす。体を持ち上げることで大きく見せ、威嚇する。カブトムシと違い殺傷能力があるため注意が必要。多頭飼育(多数を同じ容器で飼うこと)がいけないとされる所以である。
ただし場合によっては体に傷ができることもあり、衰弱したり、ラベルがついたりしている場合はきれいな状態で標本化できないため、昆虫相撲をさせることを嫌う愛好家も多い。
昆虫相撲を主題とした作品
[編集]脚注
[編集]- ^ a b c d 末崎正(横浜ホンチ保存会会長)クモ相撲、横浜で残った!◇縄張り争いの修正利用し毎年5月に大会、市の無形民俗文化財に◇『日本経済新聞』朝刊2023年5月18日(文化面)2023年6月3日閲覧
- ^ 加治木のくも合戦の習俗 文化遺産オンライン(文化庁)2023年6月3日閲覧
- ^ 女郎ぐも相撲大会[リンク切れ]四万十市ホームページ
- ^ 【記者発表】令和元年度 新たな横浜市指定・登録文化財について 横浜市教育委員会(2019年10月21日)2023年6月3日閲覧
- ^ 横浜市報・令和元年(2019年)11月5日定期第18号[リンク切れ]p.57(横浜市ホームページ)2019年11月6日閲覧