SARSコロナウイルス2-ガンマ株
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SARSコロナウイルス2-ガンマ株(サーズコロナウイルスツー ガンマかぶ、英語: SARS-CoV-2 Gamma variant、別名: 系統 P.1、系統 B.1.1.28.1、20J/501Y.V3、VOC-21JAN-02〈旧表記: VOC-202101/02〉)は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の原因ウイルスとして知られるSARSコロナウイルス2 (SARS-CoV-2) の変異株である。ブラジルで最初に流行したものであることから、日本では通称ブラジル型変異株として知られている。また、後述の通り日本で最初に検出されたため、日本国外では、"Brazilian/Japanese variant"と呼称されることもある[1][2]。
世界保健機関 (WHO) は懸念される変異株 (VOC) に指定し、WHOラベルではガンマ株 (Gamma variant) に分類していたが、2022年4月時点でVOCから除外されている[3]。
特徴
[編集]系統 P.1は、イングランド公衆衛生庁(PHE)によりVOC-21JAN-02(旧表記: VOC-202101/02)[4]、Nextstrainにより20J/501Y.V3と呼称される[5][6]。
2021年1月2日にブラジルのアマゾナス州から東京に到着した4人から最初に特定されたもので[7]、国立感染症研究所(NIID)によって1月6日に検出された。その後、ブラジルでの流行が宣言された。1月12日、ブラジル-英国CADDEセンターは、アマゾンの熱帯雨林におけるこの新しい変異株系統の13の局所的症例を確定した[8]。この変異株は、系統 P.1と名付けられ(B.1.1.28の子孫ではあるが、この時点でB.1.1.28.1という命名は許可されていない故にP.1と命名)、17の固有なアミノ酸変化を持ち、その変化のうち10のスパイクタンパク質は、N501Y、E484K、K417Tの3つの懸念する変異を含む[8][9][10]。
新しい系統は、ブラジルアマゾナス州マナウスで2020年3月から11月にかけて採取されたサンプルには存在しなかったが、同年12月15日から23日までの採取時には42%、12月15日から31日までの期間では 52.2%、2021年1月1日から9日までの期間では 85.4%が同じ都市で検出された[8]。別のブラジルの研究では、リオデジャネイロ州で流行している系統 B.1.1.28の別の亜系統が特定され、現在は系統 P.2(ゼータ株〈Zeta variant〉)と呼ばれる[11]。この株はE484K変異を持つがN501Yは変異していない[12][13]。系統 P.2は、マナウスの系統 P.1とは直接関係せず、リオデジャネイロで独立して進化したとされる[8]。
ある研究によれば、P.1の感染は、他のブラジルの変異株(B.1.1.28またはB.1.195)のいずれかに感染した人と比較して、ほぼ10倍のウイルス量を生み出す可能性がある。またP.1は、成人と高齢者に感染する能力で2.2倍高い伝染性を示し、性別に無関係の若年層より感染しやすいことが示唆されている[14]。
2020年11月から2021年1月の間にマナウスで収集されたサンプルの研究では、系統 P.1は1.4倍から2.2倍高い伝染性を持ち、以前のコロナウイルス罹患時による免疫の25%から61%を回避し、前回のCOVID-19感染から回復しても再感染の可能性があることを意味する。死亡率に関しても、P.1の感染は10%から80%も更に致死的である[15][16][17]。
分類
[編集]命名
[編集]2020年11月、この系統がブラジルで初めて記録され、後に系統 P.1 (lineage P.1) と命名された[3][18]。2021年5月末、WHOは懸念される変異株 (VOC) や注目すべき変異株 (VOI) にギリシャ文字を使用する新しい方針を導入した後、系統 P.1に対しガンマ (γ:Gamma) のラベルを割り当てた[3][18]。
変異
[編集]-
スパイクタンパク質に焦点を当てたSARS-CoV-2のゲノムマップ上にプロットされたガンマ株のアミノ酸変異。
ワクチンの有効性
[編集]ワクチンの研究から、ファイザーまたはモデルナの完全ワクチン接種を受けた人は、P.1に対する中和効果が大幅に低下した。つまりワクチン接種を受けた人は、入院や死亡の可能性からはほぼ完全に保護されながらも、P.1感染のリスクについては高くなることを意味する[19]。
2つの研究の予備データは、オックスフォード-アストラゼネカワクチンがP.1変異株に対して有効であることを示すものの、正確な有効レベルは未発表である[20][21]。ブラジルのブタンタン研究所が実施した研究の予備データは、シノバックのCoronaVacがP.1変異株に対しても有効であることを示唆しており、この研究は最終的なデータを得るために継続される予定である[22]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ “New Variants of COVID-19 Fact Sheet”. Department of Health,Commonwealth of Pennsylvania(ペンシルベニア州政府). (2021年4月1日). 2021年9月10日閲覧。
- ^ “COVID-19 Coronavirus”. The Center for Disaster Philanthropy (CDP) (2021年9月8日). 2021年9月10日閲覧。
- ^ a b c “Tracking SARS-CoV-2 variants” (英語). who.int. World Health Organization. 2022年4月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月3日閲覧。
- ^ Public Health England (18 February 2021). “Variants: distribution of cases data” (英語). GOV.UK. 2021年2月18日閲覧。
- ^ “Cases, Data, and Surveillance”. Centers for Disease Control and Prevention (11 February 2020). 19 February 2021閲覧。
- ^ “SARS-CoV-2 Variants”. Centers for Disease Control and Prevention (31 January 2020). 20 February 2021閲覧。
- ^ “Japan finds new coronavirus variant in travelers from Brazil”. Japan Today (Japan). (11 January 2021) 2021年1月14日閲覧。
- ^ a b c d “Genomic characterisation of an emergent SARS-CoV-2 lineage in Manaus: preliminary findings” (英語). Virological (2021年1月12日). 2021年1月23日閲覧。
- ^ Covid-19 Genomics UK Consortium (15 January 2021). “COG-UK Report on SARS-CoV-2 Spike mutations of interest in the UK”. www.cogconsortium.uk. 25 January 2021閲覧。
- ^ “P.1 report”. cov-lineages.org. 2021年2月8日閲覧。
- ^ “PANGO lineages Lineage P.2”. COV lineages. 28 January 2021閲覧。 “P.2… Alias of B.1.1.28.2, Brazilian lineage”
- ^ Voloch, Carolina M.; F, Ronaldo da Silva; Almeida, Luiz G. P. de; Cardoso, Cynthia C.; Brustolini, Otavio J.; Gerber, Alexandra L.; Guimarães, Ana Paula de C.; Mariani, Diana et al. (2020-12-26). “Genomic characterization of a novel SARS-CoV-2 lineage from Rio de Janeiro, Brazil” (英語). Le Phare de l'Esperanto. doi:10.1101/2020.12.23.20248598. ISSN 2024-8598 .
- ^ Voloch, Carolina M. (1 March 2021). “Genomic characterization of a novel SARS-CoV-2 lineage from Rio de Janeiro, Brazil”. Journal of Virology (ASM). doi:10.1128/JVI.00119-21 7 March 2021閲覧。
- ^ Nascimento, Valdinete (25 February 2021). “COVID-19 epidemic in the Brazilian state of Amazonas was driven by long-term persistence of endemic SARS-CoV-2 lineages and the recent emergence of the new Variant of Concern P.1”. Research Square. doi:10.21203/rs.3.rs-275494/v1. 2 March 2021閲覧。
- ^ Andreoni, Manuela; Londoño, Ernesto; Casado, Leticia (3 March 2021). “Brazil’s Covid Crisis Is a Warning to the Whole World, Scientists Say – Brazil is seeing a record number of deaths, and the spread of a more contagious coronavirus variant that may cause reinfection.”. The New York Times 3 March 2021閲覧。
- ^ Zimmer, Carl (1 March 2021). “Virus Variant in Brazil Infected Many Who Had Already Recovered From Covid-19 – The first detailed studies of the so-called P.1 variant show how it devastated a Brazilian city. Now scientists want to know what it will do elsewhere.”. The New York Times 3 March 2021閲覧。
- ^ Faria, Nuno (27 February 2021). “Genomics and epidemiology of a novel SARS-CoV-2 lineage in Manaus, Brazil”. Github. 2 March 2021閲覧。
- ^ a b “新型コロナウイルス感染症の世界の状況報告”. 厚生労働省. (2021年6月8日) 2021年10月2日閲覧。
- ^ Garcia-Beltran, Wilfredo; Lam, Evan; Denis, Kerri (18 February 2021). “Circulating SARS-CoV-2 variants escape neutralization by vaccine-induced humoral immunity”. medrxiv. doi:10.1101/2021.02.14.21251704 3 March 2021閲覧。
- ^ Gaier, Rodrigo (5 March 2021). “Exclusive: Oxford study indicates AstraZeneca effective against Brazil variant, source says”. Reuters (Rio de Janeiro) 9 March 2021閲覧。
- ^ “Exclusive: Oxford study indicates AstraZeneca effective against Brazil variant, source says”. Reuters (Rio de Janeiro). (8 March 2021) 9 March 2021閲覧。
- ^ Simões, Eduardo; Gaier, Rodrigo (8 March 2021). “CoronaVac e Oxford são eficazes contra variante de Manaus, dizem laboratórios [CoronaVac and Oxford are effective against Manaus variant, say laboratories]” (ポルトガル語). UOL Notícias. Reuters Brazil 9 March 2021閲覧。
関連項目
[編集]- 懸念される変異株
- SARSコロナウイルス2の変異株
- SARSコロナウイルス2-アルファ株
- SARSコロナウイルス2-ベータ株
- SARSコロナウイルス2-デルタ株
- SARSコロナウイルス2-ゼータ株 - 同じく最初にブラジルで流行した株。
- SARSコロナウイルス2-シータ株
- SARSコロナウイルス2-ラムダ株 - 最初にペルーで確認され、特に南米で流行している株。
- SARSコロナウイルス2-ミュー株 - 最初にコロンビアで確認された株。
- SARSコロナウイルス2-オミクロン株
- 南北アメリカにおける2019年コロナウイルス感染症の流行状況
外部リンク
[編集]- Tracking SARS-CoV-2 variants - 世界保健機関 (WHO)
- Variants of the Virus - アメリカ疾病予防管理センター (CDC)
- Lineage P.1/Global Lineage Reports P.1 - Cov-Lineages
- Gamma Variant Report - outbreak.info
- 新型コロナウイルス感染症について - 厚生労働省
- 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料 変異株 - 厚生労働省
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報 - 国立感染症研究所