ガニュメーデース
ガニュメーデース(古希: Γανυμήδης, Ganymēdēs)は、ギリシア神話の登場人物である。イーリオス(トロイア)の王子で美少年だったといわれる。オリュンポス十二神に不死の酒ネクタルを給仕するとも、ゼウスの杯を奉げ持つともいわれる。元来は大地に天の雨をもたらす神だったと考えられており、ヴェーダ神話のソーマとの関連も指摘されている[1]。日本語では長母音を省略してガニュメデス、ラテン語形でガニメデとも呼称される。
系譜
[編集]ホメーロスによれば、トロイア初代の王トロースの子、イーロスとアッサラコスの兄弟とされる[2]。アポロドーロスによれば母は河神スカマンドロスの娘カリロエーである[3]。後代の伝承には、父をラーオメドーン、イーロス、アッサラコス、エリクトニオスなどとするものもある。
ガニュメーデースの誘拐
[編集]一般には、ガニュメーデースが神々の給仕となったのは以下の事情によるとされる。オリュンポスの神々に給仕するのは、もとは大神ゼウスとその正妻ヘーラーの娘、青春の女神であるヘーベーの役割であった。ゼウスの子、英雄ヘーラクレースが死後、神々の列に加えられたとき、ヘーラクレースを憎んだヘーラーはようやくヘーラクレースと和解し、その娘ヘーベーが妻としてヘーラクレースに与えられた。このため神々の宴席に給仕するものがなくなった。ゼウスはガニュメーデースの美しさを愛し、ガニュメーデースをさらい、オリュンポスの給仕とした。この仕事のためにガニュメーデースには永遠の若さと不死が与えられた。また代償としてその父に速い神馬[4](別伝ではヘーパイストスの作った黄金のブドウの木)が与えられた。
ガニュメーデースの誘拐には諸説がある。まずガニュメーデースをさらったのは誰かについて異伝があり、神々たち、ゼウス自身、ゼウスの使いの鷲、ゼウスが鷲の姿に変じてさらったなどの説がある。一方で、タンタロス、またはミーノース、エーオースがさらったという伝承もある。
また、ガニュメーデースがさらわれた場所は、一般にトローアスのイーデー山であるとホメーロス他ではいわれる。他方で、同名のクレーテー島の山、またはエウボイアの山、ミューシアのハルパゲー(誘拐の意)という場所であるとの説もある。
また、ヘーラクレースに与えられる前のヘーベーが給仕中に転んであられもない姿になったので、ゼウスは彼女に免職を言い渡し、その代わりとしてガニュメーデースをさらったともいわれる。
天体との関連
[編集]わし座はガニュメーデースを誘拐するときのゼウスの姿、みずがめ座はネクタールを給仕するガニュメーデースと酒壷にそれぞれ見立てられたものである。この他、木星の第7衛星ガニメデはガニュメーデースにちなんで名付けられた。
系図
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ギャラリー
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ピーテル・パウル・ルーベンス『ガニュメデスの誘拐』(1611-1612年頃) シュヴァルツェンベルク宮殿所蔵
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レンブラント・ファン・レイン『ガニュメデスの誘拐』(1635年) アルテ・マイスター絵画館所蔵
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ウスタシュ・ル・シュウール『ガニュメデスの誘拐』(1644年) ルーヴル美術館所蔵
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ダミアーノ・マッツァ『ガニュメデスの略奪』(1575年頃) ナショナル・ギャラリー所蔵
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アントン・ラファエル・メングス『ゼウスはガニュメデスにキスした』(1760年) パラッツォ・バルベリーニ所蔵
脚注
[編集]参考文献
[編集]関連項目
[編集]- イリオス
- ガニュメート (シューベルト):ゲーテの書いたガニュメーデースを主題とした詩に、フランツ・シューベルトが作曲した歌曲。
- ガニメド (小惑星)