キュアニッポス
キュアニッポス(古希: Κυάνιππος, Kyanippos, 英: Cyanippus)は、ギリシア神話の人物である。主に、
の3人が知られている。以下に説明する。
アルゴス王
[編集]このキュアニッポスは、アルゴス王アドラーストスとアムピテアーの子で、アイギアレウス、アルゲイアー、デーイピュレー、アイギアレイアと兄弟[1]。あるいはアイギアレウスの子で、アドラーストスの孫にあたるとも言われる[2]。パウサニアスによると彼はビアース系の最後の王であり[2]、キュアニッポスが子を残さないまま世を去ったので、国土はプロイトス系のキュララベースが領することになった[3]。トリピオドーロスは、キュアニッポスはテューデウスの娘コマイトーとアイギアレウスの子で、トロイア戦争に参加し、木馬作戦にも加わったと歌っている[4]。
系図
[編集]
|
|
|
シュラクサイ人
[編集]このキュアニッポスは、不信心なシュラクサイ人。あるとき、シュラクサイの中でキュアニッポスだけがディオニューソス神に犠牲を捧げるのを忘れた。神は怒り、キュアニッポスを酩酊させた。するとキュアニッポスは娘キュアネーを穢した。キュアネーは後で証拠として使うために父の指から指輪を抜き取って、知人の女性に預けた。その後まもなくして、都市は疫病に襲われ、アポローンの神託は災難をもたらした不信心な男がいるのでその男を犠牲にささげよと告げた。予言を理解したのはキュアネーだけだった。彼女は父親の髪の毛をつかんで喉を切り、同じように自殺した[5]。
テッサリアー人
[編集]このキュアニッポスは、テッサリアー人パラックスの息子。彼は美人のレウコーネーと恋をして結婚した。しかしキュアニッポスは狩りが好きだったので、若い妻と過ごす時間を持とうとしなかった。やがて妻は夫の浮気を疑うようになり、あるとき密かに夫を追って森に行った。キュアニッポスはそのことに気づかなかった。そして彼の猟犬は茂みの中に何者かが隠れているのを嗅ぎとり、彼女を野生動物だと思って引き裂いて殺した。キュアニッポスはレウコーネーを埋葬したのちに、妻の墓の上で猟犬を殺し、自殺した[6]。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- コルートス・トリピオドーロス『ヘレネー誘拐・トロイア落城』松田治訳、講談社学術文庫(2003年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎(1991年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店(1960年)