メルメロス
メルメロス(古希: Μέρμερος, Mermeros)は、ギリシア神話の人物である。イアーソーンとコルキスの魔女メーデイアとの間に生まれた子供で、ペレースと兄弟[1][2][3][4]。コリントス人[2][5]あるいは母メーデイアによって殺された[1][6][3][4]。
神話
[編集]アポロドーロス
[編集]ペリアースの死によってイオールコスから追放されたイアーソーンとメーデイアは10年間コリントスで幸福に暮らしたが、イアーソーンはコリントス王クレオーンから娘グラウケーを与えられたため、メーデイアと離婚してグラウケーと結婚した。しかしこれに激怒したメーデイアは結婚の誓約を立てた神々にイアーソーンをなじり、毒を浸したペプロスをグラウケーに贈り、それを着たグラウケーは助けようとしたクレオーン王とともに炎に焼かれて死んだ。さらにメーデイアはメルメロスとペレースを殺し、太陽神ヘーリオスから授かった有翼の竜の車に乗ってアテーナイに逃れ、アイゲウス王と結婚した[1]。
ヒュギーヌス
[編集]イアーソーンはコリントス人に異国の魔女を妻にしていることを非難され、クレオーン王の娘グラウケーと結婚した。メーデイアは魔法の薬で黄金の冠を作り、グラウケーに与えるため2人の息子に持って行かせた。これを受け取ったグラウケーは、イアーソーン、クレオーンとともに王宮ごと炎で焼かれて死んだ。それを見たメーデイアは最後にメルメロスとペレースを殺してコリントスから去った[3]。
パウサニアス
[編集]パウサニアスはペレースとメルメロスの死後の出来事を伝えている。幼い2人はメーデイアの言いつけに従って毒の贈物をグラウケーに持って行った。そしてその贈物が原因でグラウケーが死んだとき、2人はコリントスの人々に石打ちの刑で殺された[2]。そのため2人は死後亡霊となってコリントスの子供たちを殺し、人々は神託に従って毎年2人に犠牲を捧げた。またコリントスの子供たちは自分の髪を切り、黒衣に身を包んだ。供儀は前146年のコリントスの戦いでローマ人が市を破壊するまで続いたという[7]。なお、コリントスには2人の合葬墓があった[2]。
別の話によると、メーデイアは子供を不死にしようと考えてヘーラーの神殿に隠したが、イアーソーンに露見したとき、イアーソーンはコリントスを去り、メーデイアもコリントスをシーシュポスに譲って去った[8]。あるいはメルメロスは狩の最中に牝のライオンに殺された[9]。
系図
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その他のメルメロス
[編集]脚注
[編集]参考文献
[編集]- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁(訳)、岩波書店〈岩波文庫〉、1953年。全国書誌番号:53005125。
- オウィディウス『変身物語』 下、中村善也(訳)、岩波書店〈岩波文庫〉、1984年2月。全国書誌番号:84029261。
- 『オデュッセイア/アルゴナウティカ』松平千秋(訳)、岡道男(訳)、講談社〈世界文学全集〉、1982年6月。ISBN 4061410016。
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人(訳)、龍渓書舎、1991年1月。ISBN 4844783335。
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治(訳)、青山照男(訳)、講談社〈講談社学術文庫〉、2005年2月。ISBN 978-4-06-159695-5。
- ホメロス『イリアス』 下、松平千秋(訳)、岩波書店〈岩波文庫〉、1992年9月。ISBN 4003210220。
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年2月。ISBN 4000800132。