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「JR東日本HB-E210系気動車」の版間の差分

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{{鉄道車両
{{鉄道車両
| 車両名 = JR東日本HB-E210系気動車
|unit=self
|色= #008000
| 背景 = #0c8c11
| 文字色 = #ffffff
|形式=JR東日本HB-E210系気動車
|画像=HB-E210 C-3 5531D Rikuzen-sanno 20150614.jpg
| 画像 = HB-E210-C1.jpg
|画像説明=HB-E210系気動車C-3編成<br />(2015614日、陸前山王駅)
| 画像説明 = [[仙石線]]で運用されるHB-E210系気動車<br>(20219 [[陸前小野駅]] - [[野蒜]]
| 運用者 = [[東日本旅客鉄道]]
|編成=2両編成
| 製造所 = [[総合車両製作所]]横浜事業所
|起動加速度=2.3Km/h/sと1.8Km/h/sの両方を切替え可能
| 製造年 = [[2015年]]
|営業最高速度=100 km/h
| 製造数 = 8編成16両
|設計最高速度=
| 運用開始 = 2015年5月30日
|減速度(通常)=3.5Km/h/s
| 投入先 = [[仙石東北ライン]]<br>[[東北本線]]([[仙台駅|仙台]] - [[塩釜駅|塩釜]] (- [[小牛田駅|小牛田]])間)<br>[[仙石線]]([[高城町駅|高城町]] - [[石巻駅|石巻]]間)<br>[[石巻線]](石巻 - [[女川駅|女川]]間)
|減速度(非常)=
| 編成 = 2両編成
|編成定員=262名(座席定員90名)
| 軌間 = 1,067 mm
|最大寸法= 19,500×2,950×3,620(mm)<br />連結面中心間20,000mm
| 最高運転速度 = 100 km/h
|車体材質=[[ステンレス鋼|ステンレス]]
| 設計最高速度 =
|車両質量=38.4t(HB-E211)<br />39.6t(HB-E212)
| 起動加速度 = 2.3 km/h/s と 1.8 Km/h/s を切替え可能
|編成質量=78t
| 常用減速度 = 3.5 km/h/s
|軌間=1,067 mm
| 非常減速度 =
|編成出力=662kW (900ps)
| 編成定員 = 262名(座席定員90名)
|機関=DMF15HZB-G直噴式直列6気筒[[ディーゼルエンジン]]
| 車両定員 =
|機関出力=331kW (450ps)
| 自重 = 38.4 t(HB-E211形)<br />39.6 t(HB-E212形)
|歯車比= 14:99 (7.07)
| 編成重量 = 78 t
|制御装置= C124形[[主変換装置]]<br />コンバータ+[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]
| 全長 = 20,000 mm
|主電動機= [[かご形三相誘導電動機]]<br />MT78 (95kW)×2
| 全幅 =
|台車形式=軸梁式ボルスタレス台車<br />DT75B(動力)/TR260B(付随)
| 全高 =
|制動方式=回生・発電ブレーキ併用[[電気指令式ブレーキ|電気指令式空気ブレーキ]](応荷重・滑走・再粘着機能付き)[[保安ブレーキ|直通予備ブレーキ]] [[抑速ブレーキ]]
| 車体長 = 19,500 mm
|保安装置=[[自動列車停止装置#ATS-Ps|ATS-Ps]] <br />[[列車防護無線装置|防護無線]]・[[緊急列車停止装置|EB装置]]・[[緊急列車防護装置|TE装置]]
| 車体幅 = 2,950 mm
|製造メーカー=[[総合車両製作所]]横浜事業所
| 車体高 = 3,620 mm
|備考 =
| 床面高さ =
|備考全幅 =<!--すぐ隣の冒頭部分に出典が明記されているので、ここではなくても大丈夫-->{{ローレル賞|56|2016|link=no|align=right}}
| 車体材質 = [[ステンレス鋼|ステンレス]]
| 台車 = 軸梁式ボルスタレス台車<br />DT75B(動力)/TR260B(付随)
| 動力伝達方式 =
| 機関 = [[DMF15HZ]]B-G直噴式直列6気筒[[ディーゼルエンジン]]
| 機関出力 = 331 kW (450 PS)
| 主電動機 = [[かご形三相誘導電動機]] MT78形
| 主電動機出力 = 95 kW × 2
| 歯車比 = 14:99 (7.07)
| 編成出力 = 380 kW
| 制御方式 = IGBT素子コンバータ+[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]
| 制御装置 = 日立製作所製<br/>CI24形 [[主変換装置]]
| 制動装置 = 回生・発電ブレーキ併用[[電気指令式ブレーキ|電気指令式空気ブレーキ]](応荷重・滑走・再粘着機能付き)[[保安ブレーキ|直通予備ブレーキ]] [[抑速ブレーキ]]
| 保安装置 = [[自動列車停止装置#ATS-Ps|ATS-Ps]] <br />[[列車防護無線装置|防護無線]]・[[緊急列車停止装置|EB装置]]・[[緊急列車防護装置|TE装置]]
| 備考 =
| 備考全幅 = {{ローレル賞|56|2016|link=no|align=right}}
}}
}}
'''HB-E210系気動車'''(HB-E210けいきどうしゃ)は、[[東日本旅客鉄道]](JR東日本)が[[2015年]](平成27年)に導入した[[一般形車両 (鉄道)|一般形気動車]]。


[[東日本大震災]]により全線で被害を受けた[[仙石線]]は、その後の一部区間の高台移設を含んだ復旧工事を進め、[[2015年]][[5月30日]]より全線の運転を再開するとともに、[[仙台駅]]より[[東北本線]]を走行し、[[松島町]]の東北本線と仙石線の並走区間に新たに設けられた接続線を経由して仙石線に入線の上、[[石巻駅|石巻]]までを結ぶ「[[仙石東北ライン]]」の運転を開始することになった。
'''HB-E210系気動車'''(HB-E210けいきどうしゃ)は[[東日本旅客鉄道]](JR東日本)が2015年5月から「[[仙石東北ライン]]」で主に使用している[[一般形車両 (鉄道)|一般形気動車]]である。


東北本線は[[交流電化|交流電化方式]]、仙石線は[[直流電化|直流電化方式]]とそれぞれ電気方式が異なることと仙石線・東北本線接続線が非電化区間となるため[[気動車]]による[[直通運転]]となり、ディーゼル[[鉄道車両におけるハイブリッド|ハイブリッドシステム]]を搭載した当車両が開発された。
== 概要 ==

[[東日本大震災]]により全線で被害を受けた[[仙石線]]は、その後の一部区間の高台移設を含んだ復旧工事を進め、2015年5月30日より仙石線の全線運転を再開するとともに、仙台駅より[[東北本線]]を走行し、利府町から松島町にかけての東北本線と仙石線の並走区間に新たに設けられた[[仙石東北ライン|仙石線・東北本線接続線]]を経由して仙石線に入線の上、石巻までを結ぶ「[[仙石東北ライン]]」の運転を開始することになった。東北本線は[[交流電化|交流饋電方式]]、仙石線は[[直流電化|直流饋電方式]]とそれぞれ電気方式が異なる事と仙石線・東北本線接続線が非電化区間となるため[[気動車]]による[[直通運転]]となり、[[ディーゼルエンジン|ディーゼル]][[日本の電気式気動車#電気式の将来(ハイブリッド気動車)|ハイブリッド]]システムを搭載した当車両が開発された。[[2016年]][[5月24日]]付で「[[鉄道友の会]]」の[[ローレル賞]]を受賞した<ref>{{Cite press release|url=http://www.jrc.gr.jp/award/bl/bl2016|title=2016年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両|publisher=鉄道友の会|date=2016-05-24|accessdate=2016-05-24}}</ref>。
[[2016年]](平成28年)「[[鉄道友の会]]」の[[ローレル賞]]を受賞<ref name="jrc/bl2016" />。


== 構造 ==
== 構造 ==
=== 車体 ===
=== 車体 ===
[[構体 (鉄道両)|車体]]構造は新列[[電車]]と同く[[オールステンレス車両|車体底部台枠の一部を除きステンレス材で構成される]]軽量ステンレス製のワイドボディなっており、客室扉のレールヒータなどを装備した耐寒耐雪構造としている。側面からの衝撃に対する安全策として、車体の側構体の[[柱]]の位置に幕板補強と車体の屋根構体の[[枕木]]方向に配置されている骨組みの[[垂木]]を合わせることで車体構体に数多くのリンク構造を設け、衝撃荷重を受けた時の車体構体の変形量の抑制を図っている。またハイブリッドシステムの搭載に伴う車体質量増加に対応するため、側窓などの側開口周囲や車体中央部出入口の側[[梁 (建築)|梁]]を補強することで[[強度]]や[[剛性]]の強化を図っている。また、車幅が[[JR東日本キハE200形気動車|キハE200]]よりも30 mm広い2,950 mm改良された。
[[JR東日本E129系電車|E129系]]に準た軽量ステンレス車体の[[sustina|sustinaS23シリーズ]]と、客室扉のレールヒータなどを装備した耐寒耐雪構造とっている。ハイブリッドシステムの搭載に伴う車体質量増加に対応するため、側窓などの側開口周囲や車体中央部出入口の側[[梁 (建築)|梁]]を補強することで[[強度]]や[[剛性]]の強化を図っている。車幅30 mm広い2950mm拡大された。


[[操縦席|運転席]]前面はステンレス構体に[[繊維強化プラスチック|FRP]]製の成形品を被せた構造となっている。仙台地区の[[通勤]]需要に配慮して側扉を押しボタン開閉式の[[自動ドア#半自動|半自動扉]]機構付き片側3扉としており、客室の床面高さは仙石線ホームの高さ1,100 mmと東北本線ホームの920 mmに対応するため1,130 mmして、客室扉の出入口付近はノンステップとなっている<ref>このため、車両全体の見付けは後述の機器室配置で窓がない部分を除けば[[JR東日本E129系電車|E129系]]とほとんど同じになっている。</ref>
[[操縦席|運転席]]前面はステンレス構体に[[繊維強化プラスチック|FRP]]製の成形品を被せた構造となっている。仙台地区の通勤需要に配慮して[[自動ドア#ボタン式半自動|半自動扉]]機構付き片側3扉としており、客室の床面高さは仙石線ホームの高さ1100mmと東北本線ホームの920mmに対応するため1130mmとなっている。


搭載量が最大550リットルの燃料タンクは車両両側からの[[給油]]が可能で、タンク体は[[]]製であるが部分的に板厚を変えることで軽量化している。なお、燃料タンクの中段より下部には、社内で研究開発された、線路内で使用される[[バラスト軌道|バラスト]]などが衝突しても損傷が発生しないように防爆塗料を4 mm厚で塗布しており<ref>[http://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_49/tech-49-21-24.pdf 落石衝撃時の車両の安全性向上に関する研究]JR EAST Technical Review No.49 p21 - 24</ref><ref name="R&t2105"/>、タンクの気抜き管(ブリーザーパイプ)部に燃料漏れ検知[[センサ]]を装備して燃料漏れを検知することが可能となっている<ref>燃料タンクから燃料が漏れるとそれに見合う量の空気量が気抜き管を介して燃料タンクに流入することを利用しており、ある一定の値の空気流入量を超えた場合、それを検知して燃料漏れと判断することで早期の燃料漏れに対応することができる。</ref>。
搭載量が最大550リットルの燃料タンクは車両両側からの給油が可能で、タンク体は鋼製であるが部分的に板厚を変えることで軽量化している。なお線路内で使用される[[バラスト軌道|バラスト]]などが衝突しても損傷が発生しないように、燃料タンクの中段より下部には社内で研究開発された防爆塗料を4mm厚で塗布している<ref name="jreast/tech-49_21-24" /><ref name="R&t2105" />。また、タンクの気抜き管(ブリーザーパイプ)部に燃料漏れ検知[[センサ]]を装備して燃料漏れを検知することが可能となっている<ref group="注">燃料タンクから燃料が漏れるとそれに見合う量の空気量が気抜き管を介して燃料タンクに流入することを利用しており、ある一定の値の空気流入量を超えた場合、それを検知して燃料漏れと判断することで早期の燃料漏れに対応することができる。</ref>。


車両のデザインは、仙石線の[[日本の鉄道ラインカラー一覧|ラインカラー]]である仙台エリアのラインカラーであるを基調とし、東北本線沿線の[[シオガマザクラ]]・仙石線沿線の矢本海浜緑地公園・石巻の[[日和山_(石巻市)|日和山公園]]のサクラの名所をイメージした桜色を用いた<ref name="R&M2305_30">[[#R&M2305|『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.30]]</ref>。二つの四角形が重なるデザインを用いることで、仙台エリアと石巻エリアをつなぐことを表現している<ref name="R&M2305_30" />。また、車体の前面の向かって右下と4位側の側面には「'''HYBRID TRAIN'''」の文字が描かれている<ref name="R&M2305_30" />。
車両のデザインは、仙石線のラインカラーである青と東北本線のラインカラーである緑を基調とし、東北本線沿線の[[シオガマザクラ]]・仙石線沿線の矢本海浜緑地公園・石巻の[[日和山_(石巻市)|日和山公園]]のサクラの名所をイメージした桜色を用いた<ref name="R&M2305_30" />。二つの四角形が重なるデザインを用いることで、仙台エリアと石巻エリアをつなぐことを表現している<ref name="R&M2305_30" />。また、車体の前面の向かって右下と4位側の側面には「'''HYBRID TRAIN'''」の文字が描かれている<ref name="R&M2305_30" />。

<gallery widths="150" style="font-size:90%">
=== 内装 ===
File:仙石東北ライン.JPG|「青」「緑」「桜」を用いたカラーリングと「HYBRID TRAIN」のロゴ
客室の色合い、つり革等は[[JR東日本E231系電車|E231系]]と同様としているが、[[優先席]]付近などは[[JR東日本E233系電車|E233系]]に準ずる。客室の座席はE721系と同じく[[セミクロスシート]]の配置で、座席はE129系と同一のものを採用した<ref name="R&t2105" />。ハイブリッドシステムなどの機器を内蔵した機器室が車内の山側に設置されているため、本来はボックスシートが配置されている場所が機器室や[[ロングシート]]となっている。貫通引戸は、自然閉機能とブレーキ機能を持たせた水平式戸閉装置としている。客室扉に半自動機能が付いているため、車外と車内に設置された押しボタンを設けて乗客がドアを開閉できるようになっている。
</gallery>

室内[[照明]]には[[発光ダイオード|LED]]照明を採用しており、機器室の壁には本車のハイブリッドシステムの動作状況を表示する液晶式のハイブリッドモニタが設置されている。また仙台方のHB-E211形後位側の端部には[[車椅子スペース]]およびベビーカースペースと車椅子対応の洋式便所が設置されており、トイレ内には、炎検知装置と非常通話装置を設置している。また、トイレ内の排気はE233系と同じ床下からとなっている。

乗務員室は[[JR東日本E721系電車|E721系]]と同じく半室構造となっており、非貫通時においては引戸により[[操縦席|運転台]]と客室との間を完全に仕切ることができる。運転台はJR東日本の標準である左手操作式の[[マスター・コントローラー#ワンハンドルマスコン|ワンハンドルマスコン]]を採用しており、周囲にはリセットスイッチ・システム停止・定速スイッチが取付けられており、右手手掛け内には勾配起動スイッチが取付けられている。運転台正面にはモニタ装置が内蔵されている。[[ワンマン運転|ワンマン]]設備は準備工事のみに留められている。


=== 車内 ===
車内の色合いはE233系と同様としており、客室の座席はE721系と同じくセミクロスシートの配置となっているが、腰掛がE233系の座り心地を踏襲したE129系の座席を流用している<ref name="R&t2105">[[#R&t2105|『鉄道車両と技術』第23巻第5号、No.225 p.20 - 29]]</ref>。ハイブリッドシステムなどの機器を内蔵した機器室が車内の山側に設置されているため、本来はボックスシートが配置されている場所が機器室やロングシートとなっている。貫通引戸は、自然閉機能とブレーキ機能を持たせた水平式戸閉装置としている。客室扉に半自動機能が付いているため、車外と車内に設置された押しボタンを設けて乗客がドアを開閉できるようになっている。室内[[照明]]には[[発光ダイオード|LED]]照明を採用しており、機器室の壁には本車のハイブリッドシステムの動作状況を表示する液晶式のハイブリッドモニタが設置されている。また仙台方のHB-E211形後位側の端部には[[車椅子スペース]]および[[乳母車|ベビーカー]]スペースと車椅子対応の洋式[[列車便所|便所]]が設置されており、トイレ内には、炎検知装置と非常通話装置を設置している。また、トイレ内の[[換気|排気]]はE233系と同じ床下からとなっている。
<gallery widths="150" style="font-size:90%">
<gallery widths="150" style="font-size:90%">
File:HB-E210 interior.JPG|車内
ファイル:JR-HB-E210 Inside.jpg|車内
ファイル:JR-HB-E210 Inside Priority-seat.jpg|優先席
File:HB-E210 hybrid information display.JPG|車内に設置された、本車のハイブリッドシステムの動作状況を表示する液晶式のハイブリッドモニタ
ファイル:JR-HB-E210 Inside Machine-room.jpg|機器室付近
ファイル:HB-E210 hybrid information display.JPG|車内に設置された、本車のハイブリッドシステムの動作状況を表示する液晶式のハイブリッドモニタ
ファイル:JR-HB-E210 Cab.jpg|運転台
</gallery>
</gallery>


=== 主要機器 ===
== 機器 ==

==== 電源・制御システム ====
=== 電源・制御システム ===
[[File:HB-E210 main circuit.png|thumb|350px|主回路の見取り図]]
[[File:HB-E210 main circuit.png|thumb|350px|主回路の見取り図]]
採用されているハイブリッドシステムはキハE200形や[[JR東日本HB-E300系気動車|HB-E300系]]と同じく、エンジンの動力は発電機を回転させる電力用として使用し、発電機からの電力と搭載された蓄電池の電力と組合わせてモーターを駆動する[[ハイブリッドカー#シリーズ方式|シリーズハイブリッド方式]]と呼ばれるシステムで、エンジンは発電専用とし、車両の速度制御には電気車の技術が最大限に活かされている。システムは、エンジンとそれに直結した発電機・主回路用蓄電池・[[主変換装置]]・車輪駆動用の[[主電動機]](モーター)で構成されており、[[力行]]時には主回路用蓄電池からの電力または主回路用蓄電池とエンジン発電機からの両方の電力を使用して、主変換装置に内蔵されたVVVFインバータ装置により[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]でモーター([[誘導電動機]])を駆動させる。制動時には[[回生ブレーキ]]によりモーターから発生した電力をVVVFインバータ装置を介して主回路用蓄電池に充電する<ref>主変換装置内はコンバータ部とVVVFインバータ部に分かれており、その間に主回路用蓄電池が接続されている。力行時はDM113形交流発電機からの[[三相交流]]の電力をコンバータで[[直流]]の電力に変換した後に主回路用蓄電池からの直流の電力を加えてVVVFインバータで三相交流に変換して誘導電動機を駆動させ、制動時は誘導電動機からの三相交流をVVVFインバータで直流の電力に変換した後に主回路用蓄電池に充電される仕組みとなっている。また、補助電源装置の[[静止形インバータ]](SIV)へ送る電力は、停止時や低速域での力行時では主回路用蓄電池から、中高速域での力行時には主回路用蓄電池からの電力の他に発電機からの電力の一部が送られる、制動時は回生ブレーキにより発生した電力が主回路用蓄電池に充電するために送られる際、その一部が送られる。</ref>。また、エンジン発電機の起動または停止は主回路用蓄電池の充電状態により自動的に行われている。キハE200形やHB-E300系と同様の「エネルギー管理制御システム」を搭載しており、各装置からの情報を集約して最適な動作の指令を各装置に指示することで、エンジン発電機と最適な蓄電池の充放電の制御を行なっている。車両の床下には主変換装置・エンジン発電機・エンジン[[ラジエーター]]・電動空気[[圧縮機]]・制御用蓄電池箱・ブレーキ制御装置などの機器を搭載しており、HB-E300系と同じくエンジン冷却性能向上のためエンジンラジエーターの大形化や後述する静止形インバータの容量増加による主変換装置の大形化が図られている。これによる床下ぎ装面積の低下は、屋根上の[[集中式冷房装置]]を挟んで前位に主回路用蓄電池を2個、後位に元空気だめの一部を搭載することで補われている(HB-E212形では前後逆)。
採用されているハイブリッドシステムは[[JR東日本キハE200形気動車|キハE200形]]や[[JR東日本HB-E300系気動車|HB-E300系]]と同じく、エンジンの動力は発電機を回転させる電力用として使用し、発電機からの電力と搭載された蓄電池の電力と組合わせてモーターを駆動する[[鉄道車両におけるハイブリッド#シリーズ方式|シリーズハイブリッド方式]]と呼ばれるシステムで、エンジンは発電専用とし、車両の速度制御には[[電気車の速度制御|電気車の技術]]が最大限に活かされている。
システムは、エンジンとそれに直結した発電機・主回路用蓄電池・[[主変換装置]]・車輪駆動用の[[主電動機]](モーター)で構成されている。[[力行]]時には主回路用蓄電池からの電力または主回路用蓄電池とエンジン発電機からの両方の電力を使用して、主変換装置に内蔵されたVVVFインバータ装置により[[可変電圧可変周波数制御|VVVFインバータ制御]]でモーター([[誘導電動機]])を駆動させる。制動時には[[回生ブレーキ]]によりモーターから発生した電力をVVVFインバータ装置を介して主回路用蓄電池に充電する<ref group="注">主変換装置内はコンバータ部とVVVFインバータ部に分かれており、その間に主回路用蓄電池が接続されている。力行時はDM113形交流発電機からの[[三相交流]]の電力をコンバータで[[直流]]の電力に変換した後に主回路用蓄電池からの直流の電力を加えてVVVFインバータで三相交流に変換して誘導電動機を駆動させ、制動時は誘導電動機からの三相交流をVVVFインバータで直流の電力に変換した後に主回路用蓄電池に充電される仕組みとなっている。また、補助電源装置の[[静止形インバータ]](SIV)へ送る電力は、停止時や低速域での力行時では主回路用蓄電池から、中高速域での力行時には主回路用蓄電池からの電力の他に発電機からの電力の一部が送られる、制動時は回生ブレーキにより発生した電力が主回路用蓄電池に充電するために送られる際、その一部が送られる。</ref>。また、エンジン発電機の起動または停止は主回路用蓄電池の充電状態により自動的に行われている。キハE200形やHB-E300系と同様の「エネルギー管理制御システム」を搭載しており、各装置からの情報を集約して最適な動作の指令を各装置に指示することで、エンジン発電機と最適な蓄電池の充放電の制御を行なっている。
車両の床下には主変換装置・エンジン発電機・エンジン[[ラジエーター]]・電動空気[[圧縮機]]・制御用蓄電池箱・ブレーキ制御装置などの機器を搭載しており、HB-E300系と同じくエンジン冷却性能向上のためエンジンラジエーターの大形化や後述する静止形インバータの容量増加による主変換装置の大形化が図られている。これによる床下ぎ装面積の低下は、屋根上の[[集中式冷房装置]]を挟んで前位に主回路用蓄電池を2個、後位に元空気だめの一部を搭載することで補われている(HB-E212形では前後逆)。


動力源として、エンジンと[[交流発電機]]を1基ずつ搭載する。エンジンは[[燃焼室#直接噴射式|直噴式]][[直列6気筒]]横形<ref>「横形」とは、水平シリンダー式エンジンを指す[[日本国有鉄道|国鉄]]時代からの内部呼称で、[[横置きエンジン|クランクシャフトが枕木方向]]という意味ではない。</ref>ディーゼルエンジン DMF15HZB-G を各車両に1基搭載する<ref name="R&M2305_32">[[#R&M2305|『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.32]]</ref>。定格出力331kW(450PS)定格回転数2100rpmであり、DMF15HZ(キハE120形・キハE130系)をベースに過給機を水冷式に変更し、スターターを省略した構造である<ref name="R&M2305_32" />。燃料噴射系は高圧電子制御システム(コモンレール式)を採用して、排気中の窒素酸化物(NOx)を約60%低減させている。交流発電機は出力270kWのDM113形三相交流発電機を各車両に1基搭載し、エンジンと直結駆動することで車両運行に必要な電力をまかなっている<ref name="R&M2305_32" />。
動力源として、エンジンと[[交流発電機]]を1基ずつ搭載する。エンジンは[[燃焼室#直接噴射式|直噴式]][[直列6気筒]]横形<ref group="注">「横形」とは、水平シリンダー式エンジンを指す[[日本国有鉄道|国鉄]]時代からの内部呼称で、[[横置きエンジン|クランクシャフトが枕木方向]]という意味ではない。</ref>ディーゼルエンジン [[DMF15HZ系エンジン|DMF15HZB-G]] を各車両に1基搭載する<ref name="R&M2305_32" />。定格出力331kW(450PS)定格回転数2100rpmであり、DMF15HZ([[JR東日本キハE120形気動車|キハE120形]][[JR東日本キハE130系気動車|キハE130系]])をベースに[[過給機]]を水冷式に変更している。エンジン起動の際には主回路用蓄電池からの電力をコンバータにより制御し、発電機を起動モーターとして利用してエンジンを起動させる。このため、エンジンスターターを省略している<ref name="R&M2305_32" />。燃料噴射系は高圧電子制御システム([[噴射ポンプ#コモンレール式|コモンレール式]])を採用して、排気中の[[窒素酸化物]](NOx)を約60%低減させている。交流発電機は出力270kWのDM113形三相交流発電機を各車両に1基搭載し、エンジンと直結駆動することで車両運行に必要な電力をまかなっている<ref name="R&M2305_32" />。


主回路用蓄電池には出力密度が高く、軽量高出力のMB3形[[リチウムイオン二次電池|リチウムイオン電池]]が使用されており、1両あたりの容量は15.2kWhで電圧は直流680Vである。また、蓄電池を2群構成とすることで[[冗長性]]を持たせており、不具合が発生した場合を考慮している。主制御装置にはCI24形[[主変換装置]]を搭載しており、補機類とサービス電源用の電源装置である静止形インバータ(SIV)と一体構成となっている。なお補助電源装置の容量は70kVAで三相交流400Vを出力する。また各車には、補助電源で作動するMH3125-C600N形電動空気圧縮機(CP)を搭載している。
主回路用蓄電池には出力密度が高く、軽量高出力のMB3形[[リチウムイオン二次電池|リチウムイオン電池]]が使用されており、1両あたりの容量は15.2kWhで電圧は直流680Vである。また、蓄電池を2群構成とすることで[[冗長性]]を持たせており、不具合が発生した場合を考慮している。主制御装置にはCI 24形[[主変換装置]]を搭載しており、補機類とサービス電源用の電源装置である[[静止形インバータ]](SIV)と一体構成となっている。なお静止形インバータの容量は70kVAで[[三相交流]]400Vを出力する。また各車には、補助電源で作動するMH3125-C600N形電動空気圧縮機(CP)を搭載している。


[[主電動機]]は、キハE200形やHB-E300系で実績のあるMT78形[[かご形三相誘導電動機]]を採用する<ref name="R&M2305_32" />。軽量化、低騒音化および保守省力化を図った構造で1時間定格出力は95kWであり、動力台車1台につき2基搭載する<ref name="R&M2305_32" />。
[[主電動機]]は、キハE200形やHB-E300系で実績のあるMT78形[[かご形三相誘導電動機]]を採用する<ref name="R&M2305_32" />。軽量化、低騒音化および保守省力化を図った構造で1時間定格出力は95kWであり、動力台車1台につき2基搭載する<ref name="R&M2305_32" />。

このほか主変換装置には、主回路用蓄電池が不具合を起こし必要電力が得られない場合に備えて、エンジン起動専用の非常蓄電池(直流340V,1.9kWh2基直列)を内蔵している。エンジン起動の際には、非常蓄電池からの電力をコンバータ制御により、発電機を起動モーターとして利用して起動させる。その後は、エンジンで駆動させる発電機からの電力により主電動機を駆動させる電気式気動車としての運転が可能な機器回路構成となっている。この非常蓄電池は使用後または充電率低下時に、エンジン発電機からの電力により充電が可能である。また、車庫において一定の充電率まで充電操作を自動で行うことができるようになっている<ref name="hitachihyoron-2016_10_11_02" /><ref group="注">非常蓄電池は車庫内でエンジン発電機から充電する。なお、HB-E300系の2016年増備車「橅」編成にも同様のシステムが搭載された。</ref>。


車両が[[停車 (鉄道)|停車]]→発車→[[加速]]→惰行→制動→停車するまでの車両の状態は以下の通りになる。
車両が[[停車 (鉄道)|停車]]→発車→[[加速]]→惰行→制動→停車するまでの車両の状態は以下の通りになる。
; 停車中・惰行中
; 停車中・惰行中
: エンジン発電機は[[停車時エジン停止]]を行い、車両の補機類とサービス用の電源は、主回路用蓄電池からの電力が補助電源装置を経由して送られる。また、エンジン発電機は起動させることも可能であり、そこから送られる電力は、主回路用蓄電池への充電と補助電源装置で使用される。
: エンジン発電機は[[アイドリグストップ]]を行い、車両の補機類とサービス用の電源は、主回路用蓄電池からの電力が補助電源装置を経由して送られる。また、エンジン発電機は起動させることも可能であり、そこから送られる電力は、主回路用蓄電池への充電と補助電源装置で使用される。電気式気動車としての運用時には、エンジン発電機は出力160kWでの待機モードとして常時発電しており、コンバータが定電圧制御(直流680V)を行いながら、補助電源装置への電力供給を行う
; 力行時(低速時)
; 力行時(低速時)
: 主回路用蓄電池からの電力のみでモーターを駆動させる。15 km/h程度からエンジン発電機を起動させて、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながら増速する。
: 主回路用蓄電池からの電力のみでモーターを駆動させる。15 km/h程度からエンジン発電機を起動させて、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながら増速する。電気式気動車としての運用時には、エンジン発電機は、モーター駆動用のVVVFインバータと補助電源装置の合計消費電力を基にエンジン回転数を調整して、その後にコンバータが定電圧制御(直流680V)を行い、VVVFインバータと補助電源装置の合計消費電力との収支のバランスを取りながら、補助電源装置とモーターに電力が供給される。
; 力行時 (中高速時)
; 力行時 (中高速時)
: エンジン発電機を起動させ、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。惰行中からの場合はエンジン発電機を起動させる。また走行負荷の状態に応じて主回路用蓄電池の充放電を行う。
: エンジン発電機を起動させ、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。惰行中からの場合はエンジン発電機を起動させる。また走行負荷の状態に応じて主回路用蓄電池の充放電を行う。電気式気動車としての運用時には、力行の低速時と同様である
; 制動時(抑速ブレーキ時も含む)
; 制動時(抑速ブレーキ時も含む)
: エンジン発電機を停止させ、回生ブレーキによりモーターから発生した電力は主回路用蓄電池に充電されるが、一部は補助電源装置に送られる。
: エンジン発電機を停止させ、回生ブレーキによりモーターから発生した電力は主回路用蓄電池に充電されるが、一部は補助電源装置に送られる。電気式気動車としての運用時には、回生ブレーキは使用できないため、空気ブレーキのみで減速停車する。エンジンは停止せず、停止惰行中と同様に補助電源装置への電力供給を行う


==== 台車 ====
=== 台車 ===
[[鉄道車両の台車|台車]]は、HB-E300系用を基本としており、軸梁式軸箱支持装置を備えた[[ボルスタレス台車]]である<ref name="R&M2305_32" />。HB-E300系用(DT75A・TR260A)と極力部品を共通化できるように配慮しつつ、EXバネを新たに採用した<ref name="R&M2305_32" />。電動台車は DT75B、付随台車は TR260B と呼称される<ref name="R&M2305_32" />。[[スノープラウ]]、[[フランジ#鉄道車輪|フランジ]][[塗油器|塗油装置]]、[[砂撒き装置|セラジェット]]は準備工事とされている<ref name="R&M2305_32" />。
[[鉄道車両の台車|台車]]は、HB-E300系用を基本としており、軸梁式軸箱支持装置を備えた[[ボルスタレス台車]]である<ref name="R&M2305_32" />。HB-E300系用(DT75A・TR260A)と極力部品を共通化できるように配慮しつつ、EXバネを新たに採用した<ref name="R&M2305_32" />。電動台車は DT75B、付随台車は TR260B と呼称される<ref name="R&M2305_32" />。[[スノープラウ]]、[[フランジ#鉄道車輪|フランジ]]塗油装置、[[砂撒き装置|セラジェット]]は準備工事とされている<ref name="R&M2305_32" />。基礎ブレーキには、両者とも踏面片押し式のユニットブレーキとしている


1両あたり電動台車と付随台車を1台ずつ装備しており、HB-E211形前位とHB-E212形後位が DT75B(動力台車)、HB-E211形後位とHB-E212形前位が TR260B(付随台車) となる<ref name="R&M2305_30" />。
1両あたり電動台車と付随台車を1台ずつ装備しており、HB-E211形前位とHB-E212形後位が DT75B(動力台車)、HB-E211形後位とHB-E212形前位が TR260B(付随台車) となる<ref name="R&M2305_30" />。
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</gallery>
</gallery>


==== 乗務員室 ====
=== 保安装置 ===
地方線区において[[自動列車停止装置#ATS-Ps形(変周地上子組合せパターン型)|ATS-Ps]]の整備を行ってきたが、将来的に[[自動列車停止装置#ATS-P形(デジタル伝送パターン形)|ATS-P]]に統一することを念頭におき、統合形ATS車上装置 RSCU77 をHB-E212形客室内の機器室に搭載する<ref name="R&M2305_31" /><ref name="R&M2305_34" />。これは、ATS-PとATS-Psの車上装置機能を兼ね備えたものであるが、本形式においてはATS-Pは準備工事としている<ref name="R&M2305_34" />。
[[JR東日本E721系電車|E721系電車]]と同じく半室構造となっており、非[[貫通扉|貫通]]時においては、引戸により[[操縦席|運転台]]と客室との間を完全に仕切ることができる。運転台は左側に主幹制御器が配置されており左手操作式の[[マスター・コントローラー#ワンハンドルマスコン|ワンハンドルマスコン]]である。その周囲にはリセットスイッチ・システム停止・定速スイッチが取付けられており、右手手掛け内には勾配起動スイッチが取付けられている。また、正面にはモニタ装置が内蔵されている。[[ワンマン運転|ワンマン]]設備は準備工事のみに留められている。
<gallery>
File:JRE HB-E210 cab.JPG|運転台
</gallery>

==== 保安装置 ====
地方線区においてATS-Psの整備を行ってきたが、将来的に[[自動列車停止装置#ATS-P形(デジタル伝送パターン形)|ATS-P]]に統一することを念頭におき、統合形ATS車上装置 RSCU77 をHB-E212形客室内の機器室に搭載する<ref name="R&M2305_31">[[#R&M2305|『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.31]]</ref><ref name="R&M2305_34">[[#R&M2305|『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.34]]</ref>。これは、ATS-PとATS-Psの車上装置機能を兼ね備えたものであるが、本形式においてはATS-Pは準備工事としている<ref name="R&M2305_34" />。


デジタル[[列車無線]](3形)、[[列車防護無線装置|防護無線]]、[[緊急列車停止装置|EB]]・[[緊急列車防護装置|TE装置]]のほか、[[JR東日本E233系電車|E233系]]等で導入された移動禁止システムも装備している。
デジタル[[列車無線]](3形)、[[列車防護無線装置|防護無線]]、[[緊急列車停止装置|EB]]・[[緊急列車防護装置|TE装置]]のほか、[[JR東日本E233系電車|E233系]]等で導入された移動禁止システムも装備している。


== 運用 ==
== 形式・編成 ==
; HB-E211形
[[File:HB-E210 C1 C2 Zushi 20150113.JPG|thumb|200px|甲種輸送されるC-1+C-2編成<br />2015年1月13日、[[逗子駅]]]]
2015年(平成27年)1月に第1陣となるC-1とC-2編成が[[総合車両製作所]]横浜事業所を出場している<ref>[http://tetsudo-news.com/article/newtrain/277.html JR仙石東北ライン用新型車両 HB-E210系出場・甲種輸送] 鉄道ニュース部(2015年1月13日)</ref>。同年3月までに2両編成8本が出揃い、[[小牛田運輸区]]に配置された<ref>[[交友社]]『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』2015年7月号「JR旅客会社の車両配置表」</ref>。

同年5月30日から仙台 - 石巻間の「[[仙石東北ライン]]」と、仙台への[[回送|送り込み]]を兼ねた東北本線の仙台 - [[小牛田駅|小牛田]]間で、2016年8月6日から[[石巻線]]の石巻 - [[女川駅]]間で[[運用 (鉄道)|運用]]を開始した。

== 形式 ==
; HB-E211
: 仙台方の先頭車。前位側に運転台、後位側に身障者対応トイレと車椅子スペースを備える。
: 仙台方の先頭車。前位側に運転台、後位側に身障者対応トイレと車椅子スペースを備える。
; HB-E212
; HB-E212
: 小牛田・石巻・女川方の先頭車。前位側に運転台を備える。
: 小牛田・石巻・女川方の先頭車。前位側に運転台を備える。
;編成表
;編成表
{|class="wikitable" style="text-align: center; font-size:80%;"
{|class="wikitable" style="text-align: center; font-size:80%;"
|-style="border-bottom:solid 2px #ffccff;"
|-style="border-bottom:solid 2px #ffccff;"
|style="background:#ccc;"|
|colspan="2"|編成番号
|colspan="4"|{{TrainDirection|仙台|小牛田<br/>石巻<br/>・女川}}
|colspan="3"|{{TrainDirection|仙台|小牛田<br/>石巻<br/>・女川}}
|-style="border-top:solid 2px #0000FF;"
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|colspan="6"|
|colspan="3"|
|-style="border-top:solid 5px #0000FF;"
|-style="border-top:solid 5px #0000FF;"
!rowspan="3"|C-1 - C-8
!形式
!形式
|HB-E211
|HB-E211
125行目: 141行目:
|}
|}


== 今後の予定 ==
== 車歴表 ==
* 製造…横浜:[[総合車両製作所]]横浜事業所
当形式のうち8両に、[[国鉄205系電車|205系]]や[[国鉄キハ40系気動車 (2代)|キハ40系]]と同様のマンガラッピングが施される予定である。<ref>{{PDFlink|[https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10181000/8561/05_taikou3.pdf 施策大綱3 自然への畏敬の念を持ち自然とともに生きる] 石巻市震災復興基本計画実施計画(平成27年度から平成29年度)P180 石巻市}}</ref>
* 配置…小牛田:[[小牛田運輸区]]

<div class="NavFrame" style="clear: both; border: 0px;">
<div class="NavHead" style="text-align:left;">車歴表(HB-E210系)</div>
<div class="NavContent" style="text-align:left;">
{| class="wikitable sortable" style="font-size:80%; text-align:center;"
!編成番号
!HB-E211
!HB-E212
!製造
!落成日
!落成配置
!備考
|-
!C-1
|1
|1
|rowspan="8"|横浜
|rowspan="2"|2015年{{0}}1月16日<ref name="JRD-2022_33" />
|rowspan="8"|小牛田
|&nbsp;
|-
!C-2
|2
|2
|&nbsp;
|-
!C-3
|3
|3
|rowspan="2"|2015年{{0}}2月13日<ref name="JRD-2022_33" />
|&nbsp;
|-
!C-4
|4
|4
|&nbsp;
|-
!C-5
|5
|5
|rowspan="2"|2015年{{0}}3月{{0}}6日<ref name="JRD-2022_33" />
|&nbsp;
|-
!C-6
|6
|6
|&nbsp;
|-
!C-7
|7
|7
|rowspan="2"|2015年{{0}}3月{{0}}7日<ref name="JRD-2022_33" />
|&nbsp;
|-
!C-8
|8
|8
|&nbsp;
|}</div></div>

== 運用 ==
2015年1月に第1陣となるC-1・C-2編成が[[総合車両製作所]]横浜事業所を出場した<ref name="tetsudo-news/20150113" /><ref>https://railf.jp/news/2015/01/14/180000.html</ref>。同年3月までに2両編成8本が出揃い<ref>https://railf.jp/news/2015/02/11/092000.html</ref><ref>https://railf.jp/news/2015/03/04/150000.html</ref><ref>https://railf.jp/news/2015/03/13/173000.html</ref>、[[小牛田運輸区]]に配置された<ref name="RF201507" />。

同年5月30日から仙台 - 石巻間の「[[仙石東北ライン]]」と、仙台への[[回送|送り込み]]を兼ねた東北本線の仙台 - [[小牛田駅|小牛田]]間で、2016年8月6日からは仙石東北ラインの延長として[[石巻線]]の石巻 - [[女川駅|女川]]間で[[運用 (鉄道)|運用]]を開始した。

本形式のうち8両にラッピングが施される予定とされ<ref name="ishinomaki" />、その後動きはなかったが、2022年(令和4年)1月中旬から2編成4両が「仙石東北ライン マンガッタンライナー」として運行されることが発表された<ref group="JR東" name="jreast/sendai/press/20220106_s01" />。同年1月19日よりC-2編成が「マンガッタンライナー 夢」、27日よりC-1編成が「マンガッタンライナー 風」としてそれぞれ運行を開始した。

2022年12月3・4日には、仙石線の変電設備点検により、初めて[[松島海岸駅]]まで乗り入れた<ref>{{Cite web|和書|title= 仙石線で工事にともなう臨時ダイヤ|date=2022-12-04|url= https://railf.jp/news/2022/12/04/131000.html |website=鉄道ファン・railf.jp|accessdate=2022-12-10|language=ja}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}

{{Reflist}}
=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注"}}

=== 出典 ===
{{Reflist|refs=
<ref name="RF201507">[[交友社]]『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』2015年7月号「JR旅客会社の車両配置表」</ref>
<ref name="JRD-2022_33">[[#jr-diesel-hensei-2022|『JR気動車客車編成表』2022 p.33]]</ref>
<ref name="jreast/tech-49_21-24">{{PDFlink|[https://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_49/tech-49-21-24.pdf 落石衝撃時の車両の安全性向上に関する研究]}} - JR EAST Technical Review No.49 p21 - 24</ref>
<ref name="tetsudo-news/20150113">{{cite news|url=http://tetsudo-news.com/article/newtrain/277.html |title=JR仙石東北ライン用新型車両 HB-E210系出場・甲種輸送|publisher= 鉄道ニュース部 |date=2015-01-13}}</ref>
<ref name="ishinomaki">{{PDFlink|[https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10181000/8561/05_taikou3.pdf 施策大綱3 自然への畏敬の念を持ち自然とともに生きる]}} - 石巻市震災復興基本計画実施計画(平成27年度から平成29年度)P180 石巻市</ref>
<ref name="jrc/bl2016">{{Cite press release|和書|url=https://www.jrc.gr.jp/award/bl/bl2016|title=2016年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両|publisher=鉄道友の会|date=2016-05-24|accessdate=2016-05-24}}</ref>
<ref name="R&t2105">[[#R&t2105|『鉄道車両と技術』第23巻第5号、No.225 p.20 - 29]]</ref>
<ref name="R&M2305_30">[[#R&M2305|『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.30]]</ref>
<ref name="R&M2305_31">[[#R&M2305|『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.31]]</ref>
<ref name="R&M2305_32">[[#R&M2305|『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.32]]</ref>
<ref name="R&M2305_34">[[#R&M2305|『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.34]]</ref>
<ref name="hitachihyoron-2016_10_11_02">{{PDFlink|[http://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2016/10-11/pdf/2016_10_11_02.pdf 蓄電池駆動システムにおける最新技術と展望]}} - 日立評論2016年10,11月合併号 p.21-22</ref>
}}

==== JR東日本 ====
{{Reflist|group="JR東"|refs=
<ref group="JR東" name="jreast/sendai/press/20220106_s01">{{PDFlink|[https://www.jreast.co.jp/press/2021/sendai/20220106_s01.pdf 「仙石東北ライン マンガッタンライナー」の運行開始について]}} - JR東日本仙台支社 2022年1月6日</ref>
}}


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
137行目: 245行目:
* 平成27年5月30日、「仙石東北ライン」にデビュー! HB-E210系ディーゼルハイブリッド車両 『鉄道ファン』2015年4月号、交友社、2015年、p.62 - p.67。
* 平成27年5月30日、「仙石東北ライン」にデビュー! HB-E210系ディーゼルハイブリッド車両 『鉄道ファン』2015年4月号、交友社、2015年、p.62 - p.67。
* 「仙石東北ライン」、東北本線、仙石線にデビュー! 「HB-E210系一般形ハイブリッド車両」 『鉄道ファン』2015年5月号、交友社、2015年、p.48 - p.54。
* 「仙石東北ライン」、東北本線、仙石線にデビュー! 「HB-E210系一般形ハイブリッド車両」 『鉄道ファン』2015年5月号、交友社、2015年、p.48 - p.54。
* 永浦康宏「[http://www.hitachihyoron.com/jp/archive/2010s/2016/10-11/02/index.html 蓄電池駆動システムにおける最新技術と展望]」『日立評論』2016年10,11月合併号、日立製作所、2016年、p.19 − p.23。
* {{Cite book|和書|author=ジェー・アール・アール編|title=JR気動車客車編成表|volume=2022|date=2022-06-16|publisher=交通新聞社|page=33|isbn=978-4-330-03222-1|ref=jr-diesel-hensei-2022}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commonscat|JR East HB-E210}}
{{Commonscat|JR East HB-E210}}
* [[ハイブリッドカー]]
* [[鉄道車両におけるハイブリッド]]
* [[JR東日本キハE200形気動車]](ハイブリッド式気動車)
* [[JR東日本キヤE991形気動車]]
* [[JR東日本HB-E300系気動車]](ハイブリッド式気動車)
* [[JR東日本キハE200形気動車]]
* [[JR東日本HB-E300系気動車]]
* [[JR東日本E129系電車]]

== 外部リンク ==
* [https://www.jreast.co.jp/train/local/hb_e210.html HB-E210系:JR東日本]
* 総合車両製作所『総合車両製作所技報』第4号(2015年12月)製品紹介{{PDFlink|[https://www.j-trec.co.jp/company/070/04/jtr04_082-087.pdf 「JR東日本 HB-E210系 一般形ハイブリッド車両」]}}(pp.82-87)
* 総合車両製作所『総合車両製作所技報』第5号(2016年12月)製品紹介{{PDFlink|[https://www.j-trec.co.jp/company/070/05/jtr05_020-023.pdf 「「sustina HYBRID」JR東日本 HB-E210系 一般形ハイブリッド車両」]}}(pp.20-23)


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[[Category:東日本旅客鉄道の気動車|210]]

2025年1月1日 (水) 08:57時点における最新版

JR東日本HB-E210系気動車
仙石線で運用されるHB-E210系気動車
(2021年9月 陸前小野駅 - 野蒜駅
基本情報
運用者 東日本旅客鉄道
製造所 総合車両製作所横浜事業所
製造年 2015年
製造数 8編成16両
運用開始 2015年5月30日
投入先 仙石東北ライン
東北本線仙台 - 塩釜 (- 小牛田)間)
仙石線高城町 - 石巻間)
石巻線(石巻 - 女川間)
主要諸元
編成 2両編成
軌間 1,067 mm
最高運転速度 100 km/h
起動加速度 2.3 km/h/s と 1.8 Km/h/s を切替え可能
減速度(常用) 3.5 km/h/s
編成定員 262名(座席定員90名)
自重 38.4 t(HB-E211形)
39.6 t(HB-E212形)
編成重量 78 t
全長 20,000 mm
車体長 19,500 mm
車体幅 2,950 mm
車体高 3,620 mm
車体 ステンレス
台車 軸梁式ボルスタレス台車
DT75B(動力)/TR260B(付随)
機関 DMF15HZB-G直噴式直列6気筒ディーゼルエンジン
機関出力 331 kW (450 PS)
主電動機 かご形三相誘導電動機 MT78形
主電動機出力 95 kW × 2
歯車比 14:99 (7.07)
編成出力 380 kW
制御方式 IGBT素子コンバータ+VVVFインバータ制御
制御装置 日立製作所製
CI24形 主変換装置
制動装置 回生・発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(応荷重・滑走・再粘着機能付き)直通予備ブレーキ 抑速ブレーキ
保安装置 ATS-Ps
防護無線EB装置TE装置
第56回(2016年
ローレル賞受賞車両
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HB-E210系気動車(HB-E210けいきどうしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)が2015年(平成27年)に導入した一般形気動車

東日本大震災により全線で被害を受けた仙石線は、その後の一部区間の高台移設を含んだ復旧工事を進め、2015年5月30日より全線の運転を再開するとともに、仙台駅より東北本線を走行し、松島町の東北本線と仙石線の並走区間に新たに設けられた接続線を経由して仙石線に入線の上、石巻までを結ぶ「仙石東北ライン」の運転を開始することになった。

東北本線は交流電化方式、仙石線は直流電化方式とそれぞれ電気方式が異なることと仙石線・東北本線接続線が非電化区間となるため気動車による直通運転となり、ディーゼルハイブリッドシステムを搭載した当車両が開発された。

2016年(平成28年)「鉄道友の会」のローレル賞を受賞[1]

構造

[編集]

車体

[編集]

E129系に準じた軽量ステンレス車体のsustinaS23シリーズとし、客室扉のレールヒータなどを装備した耐寒耐雪構造となっている。ハイブリッドシステムの搭載に伴う車体質量増加に対応するため、側窓などの側開口周囲や車体中央部出入口の側を補強することで強度剛性の強化を図っている。車幅は30 mm広い2950mmに拡大された。

運転席前面はステンレス構体にFRP製の成形品を被せた構造となっている。仙台地区の通勤需要に配慮して半自動扉機構付き片側3扉としており、客室の床面高さは仙石線ホームの高さ1100mmと東北本線ホームの920mmに対応するため1130mmとなっている。

搭載量が最大550リットルの燃料タンクは車両両側からの給油が可能で、タンク体は鋼製であるが部分的に板厚を変えることで軽量化している。なお線路内で使用されるバラストなどが衝突しても損傷が発生しないように、燃料タンクの中段より下部には社内で研究開発された防爆塗料を4mm厚で塗布している[2][3]。また、タンクの気抜き管(ブリーザーパイプ)部に燃料漏れ検知センサを装備して燃料漏れを検知することが可能となっている[注 1]

車両のデザインは、仙石線のラインカラーである青と東北本線のラインカラーである緑を基調とし、東北本線沿線のシオガマザクラ・仙石線沿線の矢本海浜緑地公園・石巻の日和山公園のサクラの名所をイメージした桜色を用いた[4]。二つの四角形が重なるデザインを用いることで、仙台エリアと石巻エリアをつなぐことを表現している[4]。また、車体の前面の向かって右下と4位側の側面には「HYBRID TRAIN」の文字が描かれている[4]

内装

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客室の色合い、つり革等はE231系と同様としているが、優先席付近などはE233系に準ずる。客室の座席はE721系と同じくセミクロスシートの配置で、座席はE129系と同一のものを採用した[3]。ハイブリッドシステムなどの機器を内蔵した機器室が車内の山側に設置されているため、本来はボックスシートが配置されている場所が機器室やロングシートとなっている。貫通引戸は、自然閉機能とブレーキ機能を持たせた水平式戸閉装置としている。客室扉に半自動機能が付いているため、車外と車内に設置された押しボタンを設けて乗客がドアを開閉できるようになっている。

室内照明にはLED照明を採用しており、機器室の壁には本車のハイブリッドシステムの動作状況を表示する液晶式のハイブリッドモニタが設置されている。また仙台方のHB-E211形後位側の端部には車椅子スペースおよびベビーカースペースと車椅子対応の洋式便所が設置されており、トイレ内には、炎検知装置と非常通話装置を設置している。また、トイレ内の排気はE233系と同じ床下からとなっている。

乗務員室はE721系と同じく半室構造となっており、非貫通時においては引戸により運転台と客室との間を完全に仕切ることができる。運転台はJR東日本の標準である左手操作式のワンハンドルマスコンを採用しており、周囲にはリセットスイッチ・システム停止・定速スイッチが取付けられており、右手手掛け内には勾配起動スイッチが取付けられている。運転台正面にはモニタ装置が内蔵されている。ワンマン設備は準備工事のみに留められている。

機器類

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電源・制御システム

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主回路の見取り図

採用されているハイブリッドシステムはキハE200形HB-E300系と同じく、エンジンの動力は発電機を回転させる電力用として使用し、発電機からの電力と搭載された蓄電池の電力と組合わせてモーターを駆動するシリーズハイブリッド方式と呼ばれるシステムで、エンジンは発電専用とし、車両の速度制御には電気車の技術が最大限に活かされている。

システムは、エンジンとそれに直結した発電機・主回路用蓄電池・主変換装置・車輪駆動用の主電動機(モーター)で構成されている。力行時には主回路用蓄電池からの電力または主回路用蓄電池とエンジン発電機からの両方の電力を使用して、主変換装置に内蔵されたVVVFインバータ装置によりVVVFインバータ制御でモーター(誘導電動機)を駆動させる。制動時には回生ブレーキによりモーターから発生した電力をVVVFインバータ装置を介して主回路用蓄電池に充電する[注 2]。また、エンジン発電機の起動または停止は主回路用蓄電池の充電状態により自動的に行われている。キハE200形やHB-E300系と同様の「エネルギー管理制御システム」を搭載しており、各装置からの情報を集約して最適な動作の指令を各装置に指示することで、エンジン発電機と最適な蓄電池の充放電の制御を行なっている。

車両の床下には主変換装置・エンジン発電機・エンジンラジエーター・電動空気圧縮機・制御用蓄電池箱・ブレーキ制御装置などの機器を搭載しており、HB-E300系と同じくエンジン冷却性能向上のためエンジンラジエーターの大形化や後述する静止形インバータの容量増加による主変換装置の大形化が図られている。これによる床下ぎ装面積の低下は、屋根上の集中式冷房装置を挟んで前位に主回路用蓄電池を2個、後位に元空気だめの一部を搭載することで補われている(HB-E212形では前後逆)。

動力源として、エンジンと交流発電機を1基ずつ搭載する。エンジンは直噴式直列6気筒横形[注 3]ディーゼルエンジン DMF15HZB-G を各車両に1基搭載する[5]。定格出力331kW(450PS)定格回転数2100rpmであり、DMF15HZ(キハE120形キハE130系)をベースに過給機を水冷式に変更している。エンジン起動の際には、主回路用蓄電池からの電力をコンバータにより制御し、発電機を起動モーターとして利用してエンジンを起動させる。このため、エンジンスターターを省略している[5]。燃料噴射系は高圧電子制御システム(コモンレール式)を採用して、排気中の窒素酸化物(NOx)を約60%低減させている。交流発電機は出力270kWのDM113形三相交流発電機を各車両に1基搭載し、エンジンと直結駆動することで車両運行に必要な電力をまかなっている[5]

主回路用蓄電池には出力密度が高く、軽量高出力のMB3形リチウムイオン電池が使用されており、1両あたりの容量は15.2kWhで電圧は直流680Vである。また、蓄電池を2群構成とすることで冗長性を持たせており、不具合が発生した場合を考慮している。主制御装置にはCI 24形主変換装置を搭載しており、補機類とサービス電源用の電源装置である静止形インバータ(SIV)と一体構成となっている。なお静止形インバータの容量は70kVAで三相交流400Vを出力する。また各車には、補助電源で作動するMH3125-C600N形電動空気圧縮機(CP)を搭載している。

主電動機は、キハE200形やHB-E300系で実績のあるMT78形かご形三相誘導電動機を採用する[5]。軽量化、低騒音化および保守省力化を図った構造で1時間定格出力は95kWであり、動力台車1台につき2基搭載する[5]

このほか主変換装置には、主回路用蓄電池が不具合を起こし必要電力が得られない場合に備えて、エンジン起動専用の非常蓄電池(直流340V,1.9kWh2基直列)を内蔵している。エンジン起動の際には、非常蓄電池からの電力をコンバータ制御により、発電機を起動モーターとして利用して起動させる。その後は、エンジンで駆動させる発電機からの電力により主電動機を駆動させる電気式気動車としての運転が可能な機器回路構成となっている。この非常蓄電池は使用後または充電率低下時に、エンジン発電機からの電力により充電が可能である。また、車庫において一定の充電率まで充電操作を自動で行うことができるようになっている[6][注 4]

車両が停車→発車→加速→惰行→制動→停車するまでの車両の状態は以下の通りになる。

停車中・惰行中
エンジン発電機はアイドリングストップを行い、車両の補機類とサービス用の電源は、主回路用蓄電池からの電力が補助電源装置を経由して送られる。また、エンジン発電機は起動させることも可能であり、そこから送られる電力は、主回路用蓄電池への充電と補助電源装置で使用される。電気式気動車としての運用時には、エンジン発電機は出力160kWでの待機モードとして常時発電しており、コンバータが定電圧制御(直流680V)を行いながら、補助電源装置への電力供給を行う。
力行時(低速時)
主回路用蓄電池からの電力のみでモーターを駆動させる。15 km/h程度からエンジン発電機を起動させて、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながら増速する。電気式気動車としての運用時には、エンジン発電機は、モーター駆動用のVVVFインバータと補助電源装置の合計消費電力を基にエンジン回転数を調整して、その後にコンバータが定電圧制御(直流680V)を行い、VVVFインバータと補助電源装置の合計消費電力との収支のバランスを取りながら、補助電源装置とモーターに電力が供給される。
力行時 (中高速時)
エンジン発電機を起動させ、主回路用蓄電池とエンジンからの電力を併用しながらモーターを駆動させる。惰行中からの場合はエンジン発電機を起動させる。また走行負荷の状態に応じて主回路用蓄電池の充放電を行う。電気式気動車としての運用時には、力行の低速時と同様である。
制動時(抑速ブレーキ時も含む)
エンジン発電機を停止させ、回生ブレーキによりモーターから発生した電力は主回路用蓄電池に充電されるが、一部は補助電源装置に送られる。電気式気動車としての運用時には、回生ブレーキは使用できないため、空気ブレーキのみで減速停車する。エンジンは停止せず、停止惰行中と同様に補助電源装置への電力供給を行う。

台車

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台車は、HB-E300系用を基本としており、軸梁式軸箱支持装置を備えたボルスタレス台車である[5]。HB-E300系用(DT75A・TR260A)と極力部品を共通化できるように配慮しつつ、EXバネを新たに採用した[5]。電動台車は DT75B、付随台車は TR260B と呼称される[5]スノープラウフランジ塗油装置、セラジェットは準備工事とされている[5]。基礎ブレーキには、両者とも踏面片押し式のユニットブレーキとしている。

1両あたり電動台車と付随台車を1台ずつ装備しており、HB-E211形前位とHB-E212形後位が DT75B(動力台車)、HB-E211形後位とHB-E212形前位が TR260B(付随台車) となる[4]

保安装置

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地方線区においてATS-Psの整備を行ってきたが、将来的にATS-Pに統一することを念頭におき、統合形ATS車上装置 RSCU77 をHB-E212形客室内の機器室に搭載する[7][8]。これは、ATS-PとATS-Psの車上装置機能を兼ね備えたものであるが、本形式においてはATS-Pは準備工事としている[8]

デジタル列車無線(3形)、防護無線EBTE装置のほか、E233系等で導入された移動禁止システムも装備している。

形式・編成

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HB-E211形
仙台方の先頭車。前位側に運転台、後位側に身障者対応トイレと車椅子スペースを備える。
HB-E212形
小牛田・石巻・女川方の先頭車。前位側に運転台を備える。
編成表
← 仙台
小牛田
/石巻
・女川 →
形式 HB-E211 HB-E212
車両重量(t) 39.6 38.4

車歴表

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運用

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2015年1月に第1陣となるC-1・C-2編成が総合車両製作所横浜事業所を出場した[10][11]。同年3月までに2両編成8本が出揃い[12][13][14]小牛田運輸区に配置された[15]

同年5月30日から仙台 - 石巻間の「仙石東北ライン」と、仙台への送り込みを兼ねた東北本線の仙台 - 小牛田間で、2016年8月6日からは仙石東北ラインの延長として石巻線の石巻 - 女川間で運用を開始した。

本形式のうち8両にラッピングが施される予定とされ[16]、その後動きはなかったが、2022年(令和4年)1月中旬から2編成4両が「仙石東北ライン マンガッタンライナー」として運行されることが発表された[JR東 1]。同年1月19日よりC-2編成が「マンガッタンライナー 夢」、27日よりC-1編成が「マンガッタンライナー 風」としてそれぞれ運行を開始した。

2022年12月3・4日には、仙石線の変電設備点検により、初めて松島海岸駅まで乗り入れた[17]

脚注

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注釈

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  1. ^ 燃料タンクから燃料が漏れるとそれに見合う量の空気量が気抜き管を介して燃料タンクに流入することを利用しており、ある一定の値の空気流入量を超えた場合、それを検知して燃料漏れと判断することで早期の燃料漏れに対応することができる。
  2. ^ 主変換装置内はコンバータ部とVVVFインバータ部に分かれており、その間に主回路用蓄電池が接続されている。力行時はDM113形交流発電機からの三相交流の電力をコンバータで直流の電力に変換した後に主回路用蓄電池からの直流の電力を加えてVVVFインバータで三相交流に変換して誘導電動機を駆動させ、制動時は誘導電動機からの三相交流をVVVFインバータで直流の電力に変換した後に主回路用蓄電池に充電される仕組みとなっている。また、補助電源装置の静止形インバータ(SIV)へ送る電力は、停止時や低速域での力行時では主回路用蓄電池から、中高速域での力行時には主回路用蓄電池からの電力の他に発電機からの電力の一部が送られる、制動時は回生ブレーキにより発生した電力が主回路用蓄電池に充電するために送られる際、その一部が送られる。
  3. ^ 「横形」とは、水平シリンダー式エンジンを指す国鉄時代からの内部呼称で、クランクシャフトが枕木方向という意味ではない。
  4. ^ 非常蓄電池は車庫内でエンジン発電機から充電する。なお、HB-E300系の2016年増備車「橅」編成にも同様のシステムが搭載された。

出典

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  1. ^ 2016年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両』(プレスリリース)鉄道友の会、2016年5月24日https://www.jrc.gr.jp/award/bl/bl20162016年5月24日閲覧 
  2. ^ 落石衝撃時の車両の安全性向上に関する研究 (PDF) - JR EAST Technical Review No.49 p21 - 24
  3. ^ a b 『鉄道車両と技術』第23巻第5号、No.225 p.20 - 29
  4. ^ a b c d 『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.30
  5. ^ a b c d e f g h i 『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.32
  6. ^ 蓄電池駆動システムにおける最新技術と展望 (PDF) - 日立評論2016年10,11月合併号 p.21-22
  7. ^ 『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.31
  8. ^ a b 『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、p.34
  9. ^ a b c d 『JR気動車客車編成表』2022 p.33
  10. ^ “JR仙石東北ライン用新型車両 HB-E210系出場・甲種輸送”. 鉄道ニュース部. (2015年1月13日). http://tetsudo-news.com/article/newtrain/277.html 
  11. ^ https://railf.jp/news/2015/01/14/180000.html
  12. ^ https://railf.jp/news/2015/02/11/092000.html
  13. ^ https://railf.jp/news/2015/03/04/150000.html
  14. ^ https://railf.jp/news/2015/03/13/173000.html
  15. ^ 交友社鉄道ファン』2015年7月号「JR旅客会社の車両配置表」
  16. ^ 施策大綱3 自然への畏敬の念を持ち自然とともに生きる (PDF) - 石巻市震災復興基本計画実施計画(平成27年度から平成29年度)P180 石巻市
  17. ^ 仙石線で工事にともなう臨時ダイヤ”. 鉄道ファン・railf.jp (2022年12月4日). 2022年12月10日閲覧。

JR東日本

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参考文献

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  • 山田孝夫「仙石東北ラインHB-E210系一般形ディーゼルハイブリッド車両の概要」『Rolling stock & Technology』第21巻第5号、レールアンドテック出版、2015年7月、20 - 29頁。 
  • 山田孝夫(JR東日本鉄道事業本部運輸車両部車両技術C在来線車両Gr)「仙石東北ラインHB-E210系ハイブリッド車両の概要」『Rolling stock & Machinery』第23巻第5号、日本鉄道車両機械技術協会、2015年5月、29 - 34頁。 
  • 平成27年5月30日、「仙石東北ライン」にデビュー! HB-E210系ディーゼルハイブリッド車両 『鉄道ファン』2015年4月号、交友社、2015年、p.62 - p.67。
  • 「仙石東北ライン」、東北本線、仙石線にデビュー! 「HB-E210系一般形ハイブリッド車両」 『鉄道ファン』2015年5月号、交友社、2015年、p.48 - p.54。
  • 永浦康宏「蓄電池駆動システムにおける最新技術と展望」『日立評論』2016年10,11月合併号、日立製作所、2016年、p.19 − p.23。
  • ジェー・アール・アール編『JR気動車客車編成表』 2022巻、交通新聞社、2022年6月16日、33頁。ISBN 978-4-330-03222-1 

関連項目

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外部リンク

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