西鉄3000形電車
西鉄3000形電車 | |
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基本情報 | |
製造所 | 川崎重工業 |
製造年 | 2005年 - 2016年 |
製造数 | 60両 |
主要諸元 | |
編成 |
3両編成 (Tc-M-Tc) 2両編成 (Mc-Tc) 5両編成 (Tc-M-T-M-Tc) |
軌間 | 1,435 mm |
電気方式 |
直流1,500V (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 110 km/h |
設計最高速度 | 120 km/h |
起動加速度 | 2.5 km/h/s |
減速度(常用) | 3.5 km/h/s |
減速度(非常) | 4.0 km/h/s |
車両定員 |
先頭車118人(座席44人) 中間車131人(座席56人) |
車両重量 |
先頭車 26.9-28.3 t 中間車 26.7-36.3 t |
全長 | 19,500 mm |
全幅 | 2,770 mm |
全高 |
4,096mm パンタグラフ搭載車4,170 mm |
車体 | ステンレス鋼 |
主電動機 | かご形三相誘導電動機 |
主電動機出力 | 175kW |
歯車比 | 101:16 |
編成出力 |
2連 175kw×3個=525kw 3連 175kw×4個=700kw 5連 175kw×7個=1225kw |
制御装置 | IGBT素子VVVFインバータ制御 |
制動装置 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ |
保安装置 | 西鉄型ATS |
西鉄3000形電車(にしてつ3000けいでんしゃ)は、2006年(平成18年)にデビューした西日本鉄道(西鉄)天神大牟田線用の急行形電車。2007年(平成19年)に鉄道友の会ローレル賞を受賞した[1][2]。
概要
西鉄3000形の導入理由は当初は老朽化した600形と700形を、後に2000形及び8000形を置き換えるべく、2005年(平成17年)から製造した。導入にあたっては、車両は、鉄道事業の商品であるという考えのもと、以下の3つのコンセプトのもと、車両の仕様を決定した。
- 一新
- 現存の車両とは異なる新しいデザインで車両を作り、「ときめき」を感じる車両を作る。
- 快適
- お客様の立場に立ち誰もが利用しやすい「ぬくもり」、「やすらぎ」を提供できる車両を作る。
- 高品質
- 社会の共感を得ることができるような「ゆとり」ある移動空間を提供できる車両を作る。
技術的には、車体組み立てへのレーザー溶接を日本のオールステンレス量産車両として初めて採り入れたことが最大の特徴としている。これにより低コストながら高品位な車体が実現できるとしている。以上のようなコンセプトや先進技術の初採用が評価され、2007年(平成19年)には、鉄道友の会のローレル賞を受賞した。
2017年には3両2編成が柳川観光列車「水都」として、5両1編成が太宰府観光列車「旅人」として、それぞれ運行を開始した。
車両構造
車体
車体は軽量化により消費電力の低減 、無塗装による車体保守の簡素化を図るため、西鉄車両として初めてステンレスを使用し耐蝕性を高めているほか、一般的な抵抗スポット溶接ではなく、ステンレス鋼にレーザービーム高速移動照射させて接合するレーザー溶接を採用したことにより歪みが少なく溶接後も目立たなくなった。
側面は2000形や5000形に準じ、両開き式の扉を片側3か所に配置している。
車体幅は従来車よりの2,670mmよりも54mm拡大した2,724mmとし、客室スペースの拡大を図っている。
前頭部は普通鋼製で、傾斜をつけ、丸みのある形状としている。前面は貫通形で、前面窓は両側とも下部を斜めに切ったパノラミックウインドウとしてる。前面窓の真下に前照灯および尾灯を設け、前面窓上部に種別表示灯を設置している。本形式より前照灯は従来のシールドビームから高輝度HIDランプ(ディスチャージヘッドランプ)に変更した。
車体塗装は無塗装ステンレス地(前頭部は銀色地)とし、車体側面窓下に西鉄のコーポレートカラーでもある、ブルー・イエロー・レッドの3色の帯を入れ、側面上部にもブルーの帯を入れている。また、貫通扉や前面排障器(スカート)はブルーとしている。
従来車の前面方向幕は行先と列車種別を同位置に表示するものであったが、本形式では列車前方から見て左側の窓上に列車種別表示器を、右側窓上に行先表示器を分けて装備した。ワンマン列車として運行することはないが、方向幕の中に7000形から踏襲した「ワンマン」の幕がある。
台車・機器
台車は6050形6157編成以来採用している川崎重工業製の軸梁式軸箱支持ボルスタレス台車の改良版KW-161B(動力台車)、KW-162B(付随台車)を採用している。3両編成の大牟田側制御車ク3000は将来の主電動機増設に対応するよう、制御車でありながら台車は動力台車を装着した。
主電動機は出力175kWの全閉外扇式[3]台車架装式かご形三相誘導電動機SEA-412で、2両編成の制御電動車モ3100の連結面側台車の中央寄りには7000形・7050形と同様に、主電動機を搭載していないため、2両編成は1基の制御器で3個の主電動機を制御する1C3Mとなっている。
制御装置は、東芝製IGBT素子によるVVVFインバータ制御装置を搭載している。
パンタグラフは従来の下枠交差式から、振動に対し追従性に優れるシングルアーム式としている。
冷房装置は従来の集約分散式から集中式としイニシャルコストやメンテナンスコストの低減の図っている。
運転装置
7000形と同型のT型ワンハンドルマスコンを採用し、低床式運転台としている。音声合成式自動案内放送装置と、カラーディスプレイ表示の運転支援装置を装備している。
車内
座席は乗降扉間が転換式クロスシートで、8000形や2000形とは異なり乗降扉寄りの座席も転換式となっている。乗降扉と座席の間には防風板を設けている。なお、車端の連結部には4人掛けのバケットタイプロングシートを設置しており、一部は優先席としている。室内の騒音低減、空調効果向上を図るため、車両間に妻引き戸を設置している。この他、先頭車両には車椅子スペースを設けている。
車内には液晶ディスプレイを設置しており、主に列車の行き先、停車駅案内、お客様へのお願いなどを流している。7000・7050形と同様にLED式の車内案内表示器もドア上部に千鳥配置で設置している。
平成27年に増備した3114編成より化粧板、防風板、天井板など車内の一部の部品を変更している。
形式番号・編成
車両番号は以下の種類に分かれる。
- 2両固定編成
3103、3104、3105、3108、3113、3114、3119、3120編成
- 3両固定編成
3001、3002、3006、3007、3015、3016、3017、3018編成
- ク3000 :大牟田方制御車
- モ3300 :中間電動車、パンタグラフを2基搭載
- ク3500 :福岡方制御車
- 5両固定編成
3009、3010、3011、3012編成
- ク3000 :大牟田方制御車
- モ3300 :大牟田方中間電動車、パンタグラフ2基搭載
- サ3400 :付随車
- モ3600 :福岡方中間電動車、パンタグラフ2基搭載
- ク3500 :福岡方制御車
製造
当初は2005年度から2007年度までに3両編成3本、2両編成4本の計17両を製造することを発表[4]した、2007年(平成19年)2月27日に発表された第11次中期経営計画(2007 - 2009年度)の中において、本形式32両の追加投入を盛り込んだ。
2006年(平成18年)3月に3両編成・2両編成各2本(3001、3002、3103、3104編成)、2007年8月に3両編成・2両編成各1本(3105、3006編成)[5]、2008年3月に3両編成・2両編成各1本(3007、3108編成)、2009年3月に5両編成2本(3009、3010編成)[6]、2010年3月に5両編成2本と2両編成1本(3011、3012、3113編成)が落成し、2005年度から2009年度までに13編成42両を就役した。
2015年からは8000形との置き換えを目的に導入を進め、2015年に2両編成1本・3両編成2本(3114、3015、3016編成)を投入し、2016年に2両編成2本・3両編成2本(3017、3018、3119、3120編成)を投入した[7]。これにより3両編成8本、2両編成8本、5両編成4本の20編成60両となった。
運用
2006年3月25日から営業運転を開始した。営業運転開始当初は、3両編成2本を連結した6両編成を主に急行に、2両編成2本を連結した4両編成を主に普通に充当していた。その後同年6月3日からは、3両編成と2両編成を連結した5両編成で主に急行に充当。2008年より2000形を代替し、2010年3月までの増備で5両編成での最大8本使用が可能となり、日中のすべての急行に3000形が使用することが多くなった。
2012年(平成24年)夏には、電力需給逼迫により節電要請が出されたため、平日昼間の列車が減車され、通常では行わない5両編成での特急運用や3両編成単独での運用も行った。
製造を再開した後の2015年(平成27年)4月より、8000形の代替として[8]6両編成(3両編成2本または2両編成3本連結)で特急に使用することが多くなり、それ以前にも正月・ゴールデンウィークなどの多客期に7両編成として特急運用に入れた例や、先述の節電運行時の5両編成特急運用などはあったが、これ以降、通常時にも特急に使用するようになった。5両編成はこれ以降も日中の急行に使用しているが、日中の急行は3000形だけでは賄えなくなったため、9000形や5000形も充当されている。
なお、従来の特急・急行用車両と同様、ラッシュ時には普通列車にも使用し、2021年3月にダイヤ改正より、日中時間帯の普通列車の定期運用にも充当されている。
2024年(令和6年)4月19日より、臨時有料座席列車「Nライナー」として、5両編成での運行が計画されている[9]。
ラッピング車両
- 2016年3月に福岡ドームで開催されたももいろクローバーZのライブにあわせて、2016年3月3日から5月21日まで3011編成に、メンバーが各車両[注 1]にラッピングされた「毎日トレイン にしてつ電車だZ」を運行した[10]。また、3月19日からは急行運用の一部駅到着時に、メンバーによる車内アナウンスも行った[11]。
- 2016年7月23日から9月28日まで、3010編成がアニメ映画『ONE PIECE FILM GOLD』のラッピングを施した[12]。
- 2017年2月1日から5月11日まで、3012編成が大木町の農産物をPRするラッピングを施した「おお貴族ラッピング電車」として運行した[13][14]。
- 2017年7月21日から9月8日まで、3012編成が『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』公開を記念した「にしてつポケモンクイズラリー」に合わせ、ドア部分に映画のシーン及びポケモンをラッピング、さらにピカチュウのヘッドマークを掲出した「ポケモントレイン」として運行した[15][16]。
- 2018年5月25日から12月下旬まで、3015+3016編成が「にしてつ110年目の車窓から」をコンセプトに、天神大牟田線系統の全62駅をデザインした110周年記念ラッピング車両として運行した[17][18]。
- 2018年8月11日から天神エリアで開催される「TENJIN AMURO MONTH」及び安室奈美恵のファイナルイベント「namie amuro Final Space」に併せ、3011編成にメインビジュアルと展覧会メインビジュアルで装飾したラッピング電車を8月11日から9月16日まで運転[19]。期間中は西鉄福岡(天神)駅の発車メロディが代表曲である「Hero」(オルゴール調)に変更された。
柳川観光列車「〜水都〜」
柳川観光列車「水都」は平成27年10月に登場した列車で、初代は8000形を改造して運行していたが、老朽化により平成29年7月で引退が決定。その代替として、3017編成・3018編成が改造された。[20]
車両デザインは、”柳川の伝統と四季の彩り”をテーマにさげもんや白秋祭など古くから続く伝統行事や、柳川に咲く花を車両デザインにしてにしている。また、城下町柳川に息づく武家文化を象徴する「漆黒」を全車両に使用している。
各車両を各季節のコンセプトでまとめており、季節をあしらったデザインとしている。
- 1号車(3017号車) 秋・冬 菊の節句と御花に越冬する鴨
- 2号車(3317号車) 夏・秋 有明海花火フェスタと白秋祭
- 3号車(3517号車) 初夏 花菖蒲
- 4号車(3018号車) 初夏 からたちの花
- 5号車(3318号車) 春 柳の新緑と水面
- 6号車(3518号車) 春 柳川まりと雛祭り
2号車には柳川の特産品や、立花家史料館より寄贈した柳川藩主立花家伝来品をイメージ させる文化財レプリカの展示のためディスプレイキャビネットを設置。
そのほか、各車両には、柳川藩主立花家の鎧や刀などを紹介 する 6 種類の記念乗車カードを設置している。
無料公衆無線 LAN サービス「Nishitetsu Train Free Wi-Fi」を新 たに導入し、増加する訪日外国人観光客をはじめとする来街者の利便性向上を図っている[21]。
改造費用は約3,300万円。
2017年7月22日に福岡(天神)駅で8000形「水都」からの引継式を実施し、同日福岡(天神)駅11時00分発大牟田行き特急(第A111列車)より運行を開始した。
-
3518号車 車内
太宰府観光列車「〜旅人〜」
太宰府観光列車「旅人」は平成26年3月に登場した列車で初代は8000形を改造して運行していたが老朽化により、平成29年9月で引退し、その代替として3000形(3010編成)を改造。[22]
車両デザインは太宰府のさまざま観光名所や太宰府に咲く花を絵巻風デザインした外装と5つの開運模様で構成している。
- 1号車 竈門神社と紅葉 紗綾形文様
- 2号車 榎社と蓮の花 瓢 箪 文様
- 3号車 太鼓橋と花菖蒲 雷文様
- 4号車 菅原道真公と藤 蝶文様
- 5号車 太宰府天満宮と梅 梅文様
「水都」と同様に、「Nishitetsu Train Free Wi-Fi」サービスが利用できる。
3号車には新たに願い事の紙と祈願箱を設置している。
各車両に設定された開運テーマ・和文様がデザインされたカードを、それぞれの 車両に設置している。
改造費用は約3,300万円。
2017年9月16日に西鉄福岡(天神)駅で、8000形「旅人」との引継式を行い、同日福岡(天神)10時48分発太宰府行き急行(第L103列車)より運行を開始した。
脚注
注釈
出典
- ^ 西日本鉄道ニュースリリース「鉄道友の会選定 西鉄3000形車両が「ローレル賞」受賞!」
- ^ 鉄道友の会「2007年 ブルーリボン・ローレル賞選定車両」
- ^ 村上理、白石茂智、長谷部寿郎 (2009-09). “環境に配慮した鉄道車両用主電動機”. 東芝レビュー (東芝) 64 (9): 10-14.
- ^ 西日本鉄道ニュースリリース「西鉄天神大牟田線に『新型3000形車両』を導入します!」
- ^ 西日本鉄道ニュースリリース 「ローレル賞」受賞の3000形 追加導入します!〜より快適な移動時間をご提供〜 - 2007年8月24日(インターネット・アーカイブ)
- ^ 西鉄3000形,5連貫通編成が営業運転を開始 - 交友社「鉄道ファン」railf.jp鉄道ニュース 2009年3月28日
- ^ “【西鉄】3000形新造車が特急運用入り”. 鉄道ホビダス (2015年3月24日). 2015年9月18日閲覧。
- ^ 西日本新聞朝刊、2015年3月5日付
- ^ “~移動をもっと楽に・もっと快適に~ 天神大牟田線・臨時有料座席列車「Nライナー」を運行します”. 西日本鉄道. 2024年4月11日閲覧。
- ^ ももクロ×にしてつ タイアップ企画「毎日トレイン にしてつ電車だZ」ももクロ仕様のラッピング電車が登場!大好評「西鉄紫駅だZ」看板も再登場します! - 西日本鉄道ニュースリリース(2016年3月2日発表)
- ^ ももクロ×にしてつ タイアップ企画第二弾 ラッピング電車にてメンバーによる車内アナウンス開始! - 西日本鉄道 2016年3月18日(2016年3月22日閲覧)
- ^ 西鉄3000形に映画「ONE PIECE FILM GOLD」のラッピング車が登場 - railf.jp(鉄道ファン・交友社) 2016年6月24日(2016年6月26日閲覧)
- ^ 西鉄電車×大木町 タイアップ企画!「おお貴族ラッピング電車」を運行いたします! - 西日本鉄道ニュースリリース(2017年1月27日発表)
- ^ 西鉄で「おお貴族」号が運転される - railf.jp(鉄道ファン・交友社) 2017年2月3日(同日閲覧)
- ^ にしてつ・ポケモンクイズラリー - 西日本鉄道 2017年7月20日(2017年7月22日閲覧)
- ^ 西鉄天神大牟田線に「ポケモントレイン」登場 - railf.jp(鉄道ファン・交友社) 2017年7月25日(2017年7月25日閲覧)
- ^ 西鉄グループはおかげさまで110周年 110周年記念ラッピング電車・バスの運行! - 西日本鉄道 2018年5月21日(2018年5月28日閲覧)
- ^ 西鉄3000形に110周年記念ラッピング - railf.jp(鉄道ファン・交友社) 2018年5月26日(2017年5月28日閲覧)
- ^ TENJIN AMURO MONTH コラボレーション企画を実施します! - 西日本鉄道 2018年8月1日(2018年8月10日閲覧)
- ^ 柳川観光列車「水都」3000形車両にリニューアル!平成29年7月22日(土)運行開始! - 西日本鉄道 2017年06月23日
- ^ 「Nishitetsu Train Free Wi-Fi」導入について - 西日本鉄道 2017年6月3日(2017年7月22日閲覧)
- ^ 太宰府観光列車「旅人-たびと-」リニューアル! - 西日本鉄道 2017年8月25日(2017年8月25日閲覧)