近鉄5820系電車
近鉄5820系電車 | |
---|---|
近鉄大阪線を走行する5820系 | |
基本情報 | |
運用者 | 近畿日本鉄道 |
製造所 | 近畿車輛 |
製造年 | 2000年 - 2003年 |
製造数 | 7編成42両 |
投入先 |
(近畿日本鉄道)難波線・大阪線・奈良線・京都線・橿原線・天理線・山田線・鳥羽線 (阪神電気鉄道)本線・阪神なんば線 |
主要諸元 | |
編成 | 6両編成(3M3T) |
軌間 | 1,435 mm |
電気方式 | 直流1500V |
最高運転速度 |
奈良線・京都線:105 km/h 大阪線:110 km/h 阪神電車:106 km/h |
起動加速度 | 2.5 - 3.0 km/h/s |
減速度(常用) | 4.0 km/h/s |
減速度(非常) | 4.5 km/h/s |
編成長 | 124,320 mm |
全長 | 20,720 mm [1][2] |
全幅 | 2,800 mm [1] |
全高 | 4,150 mm [1] |
車体高 | 4,110 mm [1] |
車体 | アルミニウム合金 [2] |
台車 |
積層ゴムブッシュ片側軸箱支持式ボルスタレス台車 [2][3] Tc車:KD-311A [1] M車:KD-311 [1] |
主電動機 |
三相交流かご式誘導電動機 型式:MB-5085-A[1][3] |
主電動機出力 | 185 kW [1][3] |
駆動方式 | WNドライブ |
歯車比 | 6.31(16:101)[3] |
編成出力 | 2,220 kW |
制御方式 | IGBT素子VVVFインバータ制御 |
制御装置 |
三菱 MAP-194-15VD86 [1][3] 日立 VFI-HD-1420A |
制動装置 |
電気指令式空気ブレーキ (KEBS-21) [1] (回生・抑速・保安ブレーキ付) |
保安装置 | 近鉄型ATS、阪神型ATS(奈良線所属車のみ)、列車選別装置、列車無線装置 |
備考 |
編成記号:DH(奈良・京都線) DF(大阪線) |
近鉄5820系電車(きんてつ5820けいでんしゃ)は、近畿日本鉄道(近鉄)の保有する電車(通勤用の一般車両)。
概要
[編集]5800系(L/Cカー・デュアルシート採用車)をベースに車体、走行機器を見直した「シリーズ21」の一系列で[1][2][4][3][5]、奈良線用は2000年に[1][2]、大阪線用は2002年に登場し[6][2]、2003年までに6両編成7本 (42両) が製造された[6][2][4][5]。
車両概説
[編集]車体
[編集]塗装は3220系に準じて車体上部をアースブラウン、車体下部をクリスタルホワイトに、そしてサンフラワーイエロー帯に配色されている[2]。側面窓ガラスは車端部を除いて固定式となり、5800系などにあった中央の縦桟はなくなっている[2]。5800系と異なり、L/Cカーをイメージしたグラフィックロゴのカラーシールは先頭車前面のみ貼られ、運転席後部戸袋部とデュアルシートを設置した窓下には貼られていない[2][4]。
内装
[編集]デュアルシートは5800系同様、扉間に2人掛け3列のクロスシートまたは6人掛けのロングシートとなるよう配置されているが、車内全体の配色は他の「シリーズ21」車両に合わせて仕様変更されている[2][4]。シートモケットの色は赤系統に変更されており、ヘッドレストの色も車体色に合わせたアースブラウンとしている[2][4]。また車端部の固定ロングシートは3220系などと同一とされたが1人掛け優先座席「らくらくコーナー」はデュアルシート部分には用意されず、車端部のロングシート部分のみに用意されている。化粧板とつり革、仕切り壁は5800系と同一仕様であるが[4]、床敷物は5800系よりも明るく仕上げられている。全体的にグレートーンでまとめられた内装と、赤系の座席や大型の固定窓と相まってより質の高い開放感と高級感の漂う車内空間となっている[2]。この他、車内案内表示器を出入り口上部に正面を向いて左右交互になるように設置している[2]。
大阪線所属のク5750形およびサ5550形を連結した編成には車椅子対応の洋式トイレが設置されている[6][2][4][5][* 1]。従来のトイレ装備車とは異なりトイレ前の区画は車椅子スペースとし、座席を設置していない。
-
ロングシート時
-
クロスシート時
-
車椅子スペース
-
車内案内表示器
機器類
[編集]基本的な走行機器は先行して登場した3220系に準拠している。制御装置は1C4M制御によるIGBT素子(3300V/1200A)のVVVFインバータ制御を採用したが、シリーズ21では同じ系列で三菱電機製と日立製作所製が混在しており[1][3]、本系列では5825Fと5852F以外の編成は三菱製インバータを搭載している[1]。
制動装置は電気指令式ブレーキだが、電磁直通ブレーキである従来車との連結を考慮してブレーキ読替装置が搭載されている[2][3]。主電動機は三菱電機製MB-5085A形(185kW×4)を採用し[1][3]、歯車比は6.31へと再び大きくなった[3]。SIVは三菱電機製NC-WAT140[3]、空気圧縮機はHS-20を搭載[3]。性能面では最高速度105km/hおよび110km/hを確保している[2]。
台車は全軸片押し踏面ブレーキ式のボルスタレス台車で[2][3]、電動車(M)はKD-311形、制御車(Tc)・付属車(T)はKD-311A形を装着する[1][3]。また、大阪線所属車のサ5550形およびモ5450形の貫通路部分には入換用の簡易運転台と前照灯が設けられ、大阪側2両と宇治山田側4両で分割可能な構成としている[* 2]。
集電装置はM車に1基ずつ搭載され[2][4][3]、2018年4月時点では5822F・5823Fが下枠交差形を装備する他は、シングルアーム式を装備する[7][8]。
改造
[編集]阪神電車相互直通対応改造
[編集]奈良線所属車については、2006年から2007年にかけて阪神直通運転対応工事(阪神用のATSと列車選別装置の設置)およびク5320形に貫通幌受台座と先頭連結部への注意喚起スピーカー取付工事が行われた[2][4][5]。
その他
[編集]2009年3月に奈良線所属車の[* 3][2]、2012年に大阪線所属車のL/Cマークが撤去されている。
編成
[編集]← 神戸三宮・大阪難波・京都 近鉄奈良・天理・橿原神宮前 →
| ||||||
西大寺検車区 所属 |
Tc1 ク5720形 |
M1 モ5820形 |
M2 モ5620形 |
T サ5520形 |
M3 モ5420形 |
Tc2 ク5320形 |
← 大阪上本町 宇治山田・鳥羽 →
| ||||||
高安検車区 所属 |
Tc2 ク5350形 |
M3 モ5450形 |
T サ5550形 |
M2 モ5650形 |
M1 モ5850形 |
Tc1 ク5750形 |
配置と運用線区
[編集]奈良線・京都線用
[編集]2018年4月現在、西大寺検車区に6両編成5本(5821F - 5825F)を配置している[8]。編成記号はDH[9]。
5800系および9820系、1026系1026F - 1029Fと共通運用で、奈良線および阪神なんば線、阪神本線直通列車を中心に運用されている[1]。京都線、橿原線、天理線でも運用されている。
大阪線用
[編集]2018年4月現在、高安検車区に6両編成2本(5851F・5852F)を配置している[8]。電算記号はDF[10]。
5800系との共通運用とされ、6両編成のほか、他形式と併結して8両編成、10両編成で運用されている。
アートライナー
[編集]- 5821F:スカイランド生駒(2003年7月 - 2003年11月)
- 5822F:高津理容美容専門学校(KOZU)(2004年10月 - 2006年11月)
- 5823F:明治安田生命(2005年8月)
- 5824F:近鉄ウェルスマイル八戸ノ里(2015年1月 - )
- 5852F:大阪・関西万博ラッピングトレイン(2023年11月30日〜2025年10月13日までの予定[11])
脚注
[編集]注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 三好好三『近鉄電車』p.93
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 『私鉄車両年鑑2012 大手15社 営業用車両完全網羅』(発行 イカロス出版 2012年)p.28 ISBN 978-4-86320-549-9
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 日本の私鉄「近畿日本鉄道」(著者・編者 広岡友紀、出版・発行 毎日新聞社 2012年)p.106 - p.109 ISBN 978-4-620-32003-8
- ^ a b c d e f g h i 『近畿日本鉄道完全データ』 (発行 メディアックス 2012年)p.52・p.53・p.52写真1 - 5 ISBN 9784862013934
- ^ a b c d 『近鉄時刻表 2009年3月20日ダイヤ変更号 』「The Densha 30 」p.46・p.47(著者・編者 近畿日本鉄道、出版・発行 同左)
- ^ a b c 三好好三『近鉄電車』p.127
- ^ 『鉄道ファン』2017年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2017 車両配置表」
- ^ a b c 『鉄道ファン』2018年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2018 車両配置表」
- ^ 三好好三『近鉄電車』p.231
- ^ 三好好三『近鉄電車』p.230
- ^ “大阪・関西万博オリジナルデザインのラッピングトレインを運行します”. 近畿日本鉄道. 2024年2月11日閲覧。
参考文献
[編集]- 三好好三『近鉄電車 大軌デボ1形から「しまかぜ」「青の交響曲」まで100年余りの電車のすべて』(JTBキャンブックス)、JTBパブリッシング、2016年。ISBN 978-4-533-11435-9 C2065
- 『私鉄車両年鑑2012 大手15社 営業用車両完全網羅』(発行 イカロス出版 2012年)p.28 ISBN 978-4-86320-549-9
- 『近畿日本鉄道完全データ』 (発行 メディアックス 2012年)p.52・p.53・ ISBN 9784862013934
- 日本の私鉄「近畿日本鉄道」(著者・編者 広岡友紀、出版・発行 毎日新聞社 2012年)p.106 - p.109 ISBN 978-4-620-32003-8
- 『近畿日本鉄道のひみつ』 p.114・p.115(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0
- 『近鉄時刻表 2009年3月20日ダイヤ変更号 』「The Densha 30 」p.46・p.47(著者・編者 近畿日本鉄道、出版・発行 同左)
関連項目
[編集]- 他社のデュアルシート車両
- 国鉄クハ79929号電車
- JR東日本205系電車3100番台 - 一部編成の制御車のみ可変座席を装備。
- JR東日本E331系電車 - 制御車のみ可変座席を装備。
- 東武50090系電車
外部リンク
[編集]- 鉄路の名優(シリーズ21) - 近鉄公式サイト