「鬼畜系」の版間の差分
511行目: | 511行目: | ||
* '''[[青山正明]]''' - [[薬物乱用|ドラッグ]]、[[ロリータ・コンプレックス|ロリコン]]、[[スカトロジー|スカトロ]]、[[奇形|フリークス]]から[[カルト映画|カルトムービー]]、[[テクノポップ|テクノ]]、[[サイケデリック・ミュージック|辺境音楽]]、[[異端|異端思想]]、[[精神世界]]まで幅広く[[アンダーグラウンド (文化)#文化としてのアンダーグラウンド|アングラシーン]]を論ずる[[鬼畜系#サブカルチャーに於ける鬼畜系|鬼畜系]][[著作家|文筆家]]の草分け的存在<ref>BURST 2001年9月号.[[吉永嘉明]]×[[木村重樹]]×園田俊明「鬼畜系ライターの草分け的存在・天才編集者 [[青山正明]]追悼座談会」</ref>。[[1980年代]]から[[1990年代]]の[[サブカルチャー]]に与えた影響は大きく、[[薬物乱用|ドラッグ]]に関する文章を書いた日本人ライターの中では、実践に基づいた記述と薬学的記述において特異であり[[快楽主義]]者を標榜していた。著書に『[[青山正明#東京公司結成|危ない薬]]』『[[危ない1号#廃刊|青山正明全仕事]]』(ともに[[データハウス]]刊)がある。[[2001年]][[6月17日]]に[[縊死|首つり]][[自殺]]。40歳没。 |
* '''[[青山正明]]''' - [[薬物乱用|ドラッグ]]、[[ロリータ・コンプレックス|ロリコン]]、[[スカトロジー|スカトロ]]、[[奇形|フリークス]]から[[カルト映画|カルトムービー]]、[[テクノポップ|テクノ]]、[[サイケデリック・ミュージック|辺境音楽]]、[[異端|異端思想]]、[[精神世界]]まで幅広く[[アンダーグラウンド (文化)#文化としてのアンダーグラウンド|アングラシーン]]を論ずる[[鬼畜系#サブカルチャーに於ける鬼畜系|鬼畜系]][[著作家|文筆家]]の草分け的存在<ref>BURST 2001年9月号.[[吉永嘉明]]×[[木村重樹]]×園田俊明「鬼畜系ライターの草分け的存在・天才編集者 [[青山正明]]追悼座談会」</ref>。[[1980年代]]から[[1990年代]]の[[サブカルチャー]]に与えた影響は大きく、[[薬物乱用|ドラッグ]]に関する文章を書いた日本人ライターの中では、実践に基づいた記述と薬学的記述において特異であり[[快楽主義]]者を標榜していた。著書に『[[青山正明#東京公司結成|危ない薬]]』『[[危ない1号#廃刊|青山正明全仕事]]』(ともに[[データハウス]]刊)がある。[[2001年]][[6月17日]]に[[縊死|首つり]][[自殺]]。40歳没。 |
||
* '''[[村崎百郎]]''' - [[鬼畜]][[著作家|ライター]]。[[1990年代]]後半に「'''[[鬼畜系#鬼畜・悪趣味ブーム|鬼畜系]]'''」「'''[[電波系]]'''」を標榜して[[ゴミ漁り]][[ルポルタージュ|ルポ]]や[[幻覚|電波]]にまつわる[[随筆|エッセイ]]を執筆した。著書にゴミ漁りの[[マニュアル|手引書]]『[[村崎百郎|鬼畜のススメ]]』([[データハウス]])や電波系にまつわる体系的な考察を行った単行本『[[電波系]]』([[根本敬]]との共著/[[太田出版]])がある。その後も村崎は虚実交えた寄稿を行った末、そのような表現に引きつけられた[[統合失調症]]の読者により48ヶ所を滅多刺しにされて[[2010年]][[7月23日]]に[[殺害]]された。 |
* '''[[村崎百郎]]''' - [[鬼畜]][[著作家|ライター]]。[[1990年代]]後半に「'''[[鬼畜系#鬼畜・悪趣味ブーム|鬼畜系]]'''」「'''[[電波系]]'''」を標榜して[[ゴミ漁り]][[ルポルタージュ|ルポ]]や[[幻覚|電波]]にまつわる[[随筆|エッセイ]]を執筆した。著書にゴミ漁りの[[マニュアル|手引書]]『[[村崎百郎|鬼畜のススメ]]』([[データハウス]])や電波系にまつわる体系的な考察を行った単行本『[[電波系]]』([[根本敬]]との共著/[[太田出版]])がある。その後も村崎は虚実交えた寄稿を行った末、そのような表現に引きつけられた[[統合失調症]]の読者により48ヶ所を滅多刺しにされて[[2010年]][[7月23日]]に[[殺害]]された。 |
||
* '''[[石丸元章]]''' - [[フリーランス|フリー]][[著作家|ライター]]。[[1990年代]]より日本の[[ドラッグ・カルチャー]]を取材していたが、潜入取材の過程で自身も[[覚醒剤]]を使用し、[[1995年]][[9月]]に[[覚 |
* '''[[石丸元章]]''' - [[フリーランス|フリー]][[著作家|ライター]]。[[1990年代]]より日本の[[ドラッグ・カルチャー]]を取材していたが、潜入取材の過程で自身も[[覚醒剤]]を使用し、[[1995年]][[9月]]に[[覚醒剤取締法]]違反で[[現行犯]][[逮捕]]された。一連の騒動を描いた、私小説的ノンフィクション『スピード』([[文春文庫]])は[[ベストセラー]]となった。 |
||
* '''[[秋田昌美]]''' - 世界的な[[ノイズミュージック|ノイズ]][[ミュージシャン]]として知られる一方で[[アンダーグラウンド (文化)#文化としてのアンダーグラウンド|アングラシーン]]や[[スカム|スカム・カルチャー]]にも精通しており、[[性的倒錯]]や[[異端|異端文化]]にまつわる学術的ないし書誌学的な研究書も多い。著書に『スカム・カルチャー』『ボディ・エキゾチカ』『アナル・バロック』など多数。また昭和初期の[[エログロナンセンス]]文化を代表する[[梅原北明]]、[[伊藤晴雨]]、[[中村古峡]]、[[斎藤昌三 (古書研究家)|斎藤昌三]]、[[酒井潔]]などの元祖鬼畜系文化人や当時発刊されていた変態雑誌などについては秋田の著作『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』([[青弓社]]・[[1994年]])に詳しい。 |
* '''[[秋田昌美]]''' - 世界的な[[ノイズミュージック|ノイズ]][[ミュージシャン]]として知られる一方で[[アンダーグラウンド (文化)#文化としてのアンダーグラウンド|アングラシーン]]や[[スカム|スカム・カルチャー]]にも精通しており、[[性的倒錯]]や[[異端|異端文化]]にまつわる学術的ないし書誌学的な研究書も多い。著書に『スカム・カルチャー』『ボディ・エキゾチカ』『アナル・バロック』など多数。また昭和初期の[[エログロナンセンス]]文化を代表する[[梅原北明]]、[[伊藤晴雨]]、[[中村古峡]]、[[斎藤昌三 (古書研究家)|斎藤昌三]]、[[酒井潔]]などの元祖鬼畜系文化人や当時発刊されていた変態雑誌などについては秋田の著作『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』([[青弓社]]・[[1994年]])に詳しい。 |
||
* '''[[下川耿史]]''' - 風俗史家。[[サンケイ新聞社]]を経て[[フリーランス|フリー]]編集者、家庭文化史、性風俗史の研究家として活躍中。スーパー変態マガジン『[[ビリー (雑誌)|Billy]]』1984年9月号より「下川耿史の新・日本アウトサイダー列伝」を連載していた(第1回は「セクシー・フロイト」で山下省死、アルチュール・絵魔を紹介)。著書に『昭和性相史』『死体の文化史』『殺人評論』『日本残酷写真史』『盆踊り 乱交の民俗学』『混浴と日本史』『エロティック日本史』などがある。 |
* '''[[下川耿史]]''' - 風俗史家。[[サンケイ新聞社]]を経て[[フリーランス|フリー]]編集者、家庭文化史、性風俗史の研究家として活躍中。スーパー変態マガジン『[[ビリー (雑誌)|Billy]]』1984年9月号より「下川耿史の新・日本アウトサイダー列伝」を連載していた(第1回は「セクシー・フロイト」で山下省死、アルチュール・絵魔を紹介)。著書に『昭和性相史』『死体の文化史』『殺人評論』『日本残酷写真史』『盆踊り 乱交の民俗学』『混浴と日本史』『エロティック日本史』などがある。 |
||
519行目: | 519行目: | ||
* '''[[高杉弾]]''' - メディアマンを自称する[[編集者]]、[[著作家|ライター]]、[[評論家]]、[[AV監督]]。伝説的[[自販機本]]『'''[[Jam (自販機本)|Jam]]'''』『'''[[HEAVEN (雑誌)|HEAVEN]]'''』初代編集長。[[青山正明]]を始めとして[[1970年代]]後半以降のバット・テイスト文化に多大な影響を与えた。本名は佐内順一郎。 |
* '''[[高杉弾]]''' - メディアマンを自称する[[編集者]]、[[著作家|ライター]]、[[評論家]]、[[AV監督]]。伝説的[[自販機本]]『'''[[Jam (自販機本)|Jam]]'''』『'''[[HEAVEN (雑誌)|HEAVEN]]'''』初代編集長。[[青山正明]]を始めとして[[1970年代]]後半以降のバット・テイスト文化に多大な影響を与えた。本名は佐内順一郎。 |
||
* '''[[佐川一政]]''' - [[日本]]の[[殺人罪|殺人犯]]、[[カニバリズム|カニバリスト]]、[[随筆家|エッセイスト]]、[[小説家]]、[[翻訳家]]。[[パリ人肉事件]]の犯人として知られる。 |
* '''[[佐川一政]]''' - [[日本]]の[[殺人罪|殺人犯]]、[[カニバリズム|カニバリスト]]、[[随筆家|エッセイスト]]、[[小説家]]、[[翻訳家]]。[[パリ人肉事件]]の犯人として知られる。 |
||
* '''[[釣崎清隆]]''' - [[死体]][[写真家]]。世界各国の犯罪現場や紛争地域を取材し、これまでに撮影した死体は1000体以上に及ぶ。[[ラテンアメリカ|中南米]]の麻薬組織を取材する過程で自身も[[覚醒剤]]を使用し、[[2017年]][[8月]]に[[覚 |
* '''[[釣崎清隆]]''' - [[死体]][[写真家]]。世界各国の犯罪現場や紛争地域を取材し、これまでに撮影した死体は1000体以上に及ぶ。[[ラテンアメリカ|中南米]]の麻薬組織を取材する過程で自身も[[覚醒剤]]を使用し、[[2017年]][[8月]]に[[覚醒剤取締法]]違反で[[現行犯]][[逮捕]]された<ref>{{Cite news|title=「麻薬組織取材で勧められ」 写真家、覚醒剤所持の疑い|newspaper=[[朝日新聞|朝日新聞DIGITAL]]|date=2017-08-03|url=http://www.asahi.com/articles/ASK834DJHK83UTIL017.html|accessdate=2017-09-11}}</ref>。 |
||
* '''[[小林小太郎 (編集者)|小林小太郎]]''' - スーパー変態マガジン『'''[[ビリー (雑誌)|Billy]]'''』([[白夜書房]])編集長。[[編集プロダクション]]「'''VIC出版'''」主宰。[[1990年代]]には『'''[[TOO NEGATIVE]]'''』([[吐夢書房]])の編集長を務め、[[死体]][[写真家]]の[[釣崎清隆]]を同誌でデビューさせている。 |
* '''[[小林小太郎 (編集者)|小林小太郎]]''' - スーパー変態マガジン『'''[[ビリー (雑誌)|Billy]]'''』([[白夜書房]])編集長。[[編集プロダクション]]「'''VIC出版'''」主宰。[[1990年代]]には『'''[[TOO NEGATIVE]]'''』([[吐夢書房]])の編集長を務め、[[死体]][[写真家]]の[[釣崎清隆]]を同誌でデビューさせている。 |
||
* '''[[柳下毅一郎]]''' - [[殺人]]研究家。[[翻訳家]]としても活動しており、普通の翻訳家が取り扱わない特殊な文献や文学作品を好んで翻訳することから「'''特殊翻訳家'''」を自称する。 |
* '''[[柳下毅一郎]]''' - [[殺人]]研究家。[[翻訳家]]としても活動しており、普通の翻訳家が取り扱わない特殊な文献や文学作品を好んで翻訳することから「'''特殊翻訳家'''」を自称する。 |
2020年4月22日 (水) 08:23時点における版
鬼畜系(きちくけい)とは悪趣味にまつわるサブカルチャーの一ジャンルで、1990年代の悪趣味ブームにおいて鬼畜ライターの村崎百郎によって作り上げられた造語・概念である。現在では成人向け漫画などにおける反社会的行為、ないし残酷描写が含まれる作品、またその作家を指す言葉として用いられている。
サブカルチャーに於ける鬼畜系
前々々史
この節の加筆が望まれています。 |
前々史
昭和初期の1929年(昭和4年)から1936年(昭和11年)にかけて「エログロナンセンス」と呼ばれる退廃文化が日本を席巻した。
このブームの中心人物こそ「エログロナンセンスの帝王」「地下出版の帝王」「発禁王」「罰金王」「猥褻研究王」などと謳われたエログロナンセンスのオルガナイザー梅原北明である。梅原は『デカメロン』『エプタメロン』の翻訳で知られる出版人で、1925年(大正14年)11月に既成文壇へのカウンター誌『文藝市場』(文藝市場社)を創刊。同誌の創刊号では「文壇全部嘘新聞」と題して田山花袋、岡本一平、辻潤が春画売買容疑で取調べられている横で、菊池寛邸が全焼し、上司小剣が惨殺されるという過激な虚構新聞を見開き一頁を割いて掲載した。それら内容はいずれも冗談と諧謔の精神に満ち溢れており、既成権威に対してイデオロギーを持たず無意味なまでに反抗するような姿勢は、当時の同人からも「焼糞の決死的道楽出版」と評された[3][4]。結果、梅原は生涯で家宅捜索数十回、刑法適用25回、出版法適用12回、罰金刑十数回、体刑5年以下の懲罰を受けることになった[5]。
その後、梅原は出版法19条の「風俗壊乱」の疑いで市ヶ谷刑務所に投獄され、前科一犯となるが、仮出獄後すぐに『文藝市場』の後継誌『グロテスク』(グロテスク社→文藝市場社→談奇館書局)を1928年(昭和3年)11月に創刊。新年号が発禁になると、それを逆手にとって全国紙『読売新聞』に「急性發禁病の爲め、昭和三年十二月廿八日を以て『長兄グロテスク十二月號』の後を追い永眠仕り候」という死亡広告を出すなどして世人の注目を集めた。また梅原は度重なる発禁処分を「金鵄勲章ならぬ禁止勲章授与、数十回」と声高らかに喧伝し、警察からは「正気だか気ちがいだか、わけのわからぬ猥本の出版狂」と見なされた[4]。戦後、発禁本研究家の斎藤昌三は「軟派の出版界に君臨した二大異端者を擧げるなら、梅原北明と宮武外骨老の二人に匹敵する者はまずない。その実績に於て北明は東の大関である」と梅原について評価している[6]。
後に梅原は当局から逃れるため満州に逃亡し、梅原の雑誌は廃刊を余儀なくされる。また二・二六事件以降は国内での検閲・発禁が激化していき、一連のムーブメントは1936年(昭和11年)頃を最後に終息していった。この年、日本三大奇書の一つ『ドグラ・マグラ』を著した夢野久作も急逝する。
しかしながら終戦後は出版自由化に同調する形で再びエロ(性・性風俗)やグロ(猟奇・犯罪)に特化した低俗な大衆向け娯楽雑誌が大量に出回るようになる。これらの多くは3号で廃刊(=3号雑誌)したことから「3合飲むと酔い潰れる」粗悪なカストリ酒にかけて「カストリ雑誌」と総称された。
周囲からは「これからが梅原北明の真の出番だ」と期待されたが、すでに梅原にその意志はなく、1946年(昭和21年)に発疹チフスであっけなく死亡する。終戦でエロ産業は一挙に解放され、巷は第二の桃色風俗出版ブームの華々しい黄金時代を迎えようとしていた[7]。この時代の代表的なカストリ雑誌に『猟奇』『りべらる』『あまとりあ』『奇譚クラブ』などがある。なお『奇譚クラブ』は後にSM雑誌に転身して団鬼六の『花と蛇』や沼正三の『家畜人ヤプー』を連載する。
前史
1960年代にヨーロッパやアメリカで観客の見世物的好奇心に訴える猟奇系ドキュメンタリー・モキュメンタリー映画が登場し、人気を博していた。これらの映画は俗に「モンド映画」(Mondo film)と呼ばれ、世界中の悪趣味(バッド・テイスト)文化に多大な影響を及ぼしたことで知られている[注 1]。なお、著名なモンド映画監督に『世界残酷物語』のグァルティエロ・ヤコペッティ、『ピンク・フラミンゴ』のジョン・ウォーターズ、『ファスター・プシィキャット!キル!キル!』のラス・メイヤーなどがいる。
その後、モンド映画ブームは収束するが、トッド・ブラウニング監督の『フリークス』(1932年・MGM)がアメリカの映画館で深夜上映されたのを皮切りに、1970年代よりアメリカでカルトムービーやインディーズ・ムービーが深夜上映の形態で続々公開されるようになり、一部の映画マニアを中心に熱狂的な人気を博した。この一連のムーブメントは「ミッドナイトムービー・ブーム」と呼ばれ、このブームから『ピンク・フラミンゴ』『エル・トポ』『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ロッキー・ホラー・ショー』『イレイザーヘッド』など多数のカルト映画が生み出されていった。
一方、日本国内では1960年代よりテレビの普及に伴い、映画館の観客動員数が減少し、これに対抗した大手以外の独立系映画会社が「テレビでは出来ないこと」としてピンク映画の製作に舵を切り始め、隆盛を極めていた。これに目を付けた東映が『網走番外地』シリーズで知られる映画監督の石井輝男と『くノ一忍法』『893愚連隊』『日本暗殺秘録』で知られる中島貞夫を抜擢し、日本の大手映画会社としては初となるポルノ映画『大奥㊙物語』(監督・中島貞夫)および『徳川女系図』(監督・石井輝男)を製作した。これに手応えを感じた東映と石井は本作より「異常性愛路線」を前面に打ち出し、作中にサドマゾ、拷問、処刑などグロテスクな描写を次々に取り入れ、エログロとサディズムの極限を追求した成人映画を立て続けに製作し、和製モンドの一ジャンルを築き上げた。これら一連の作品によって石井輝男は国内におけるカルトムービーのパイオニアとしてみなされている。
この「異常性愛路線」は1968年公開の『徳川女系図』の大ヒットを嚆矢として『徳川女刑罰史』『異常性愛記録 ハレンチ』『徳川いれずみ師 責め地獄』『明治大正昭和 猟奇女犯罪史』とシリーズを重ねるごとに、その過激さを加速度的にエスカレートさせていくが、1969年の『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』の興行的失敗、併映作『㊙劇画 浮世絵千一夜』の警視庁から東映と映倫に対するわいせつシーンの削除要請、そして警察庁による取り締まり強化宣言などによって60年代末に終焉を迎える事となる[8]。
その後、エログロ路線が下火になる中、1971年に東京テレビ動画(後の日本テレビ動画)は谷岡ヤスジ原作の劇場用アニメ映画『ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!』を製作。本作はそれまで子供向けであると言われたアニメの世界にエログロやバイオレンス表現を大胆に取り入れ、強姦や獣姦、幼児姦に近親相姦といったハードコア要素を存分に詰め込んだアブノーマルな世界観に仕上がっており[9]、今日では伝説的なカルトムービーとして一部で再評価されている。しかし、公開前に映倫からのクレームで11カ所がカットされ、主人公がメスゴリラと姦通した後、割腹自殺を遂げるラストシーンは前年の三島事件を連想させるとのことで全面的に撮り直された[9]。そのうえ公開後は全く客が入らず、2週続映が1週で打ち切られ、ほとんどの批評誌からも酷評されるなど興行は大失敗に終わり、本作を最後に東京テレビ動画は解散を余儀なくされた[9]。その後、1984年にワンダーキッズが中島史雄原作の成人向けOVA『雪の紅化粧/少女薔薇刑』を公開するまで国産アダルトアニメは12年半にわたり姿を消す事となった。
黎明期
20世紀末の日本で花開いた「鬼畜系」の系譜において伝説的編集者の高杉弾と山崎春美が1979年3月に創刊した伝説的自販機本『Jam』『HEAVEN』(エルシー企画→アリス出版→群雄社出版)が元祖的存在としてしばしば挙げられる[10][11]。とくに同誌を有名にしたのは『Jam』創刊号掲載の爆弾企画「芸能人ゴミあさりシリーズ」で、この企画では山口百恵やかたせ梨乃など有名芸能人の自宅から出たゴミを回収し、誌面のグラビアで電波系ファンレターから使用済み生理用品まで大々的に公開したことで物議を醸した。また、それ以外にも同誌ではドラッグやパンク・ロック、皇室、臨済禅、神秘主義、フリーミュージックなど先鋭的なオルタナティブ・カルチャーを積極的に取り上げ、冗談と諧謔に満ちたパンクな誌面を展開したことから今日では「伝説のサブカル雑誌」として神話化・伝説化されている[12]。なお大塚英志はエロ本に限らず、80年代に特異なサブカル雑誌が出現した背景について「全共闘世代が〈おたく〉第一世代に活動の場を提供する、という形で起きた」と指摘しており[13]、これに関して高杉弾は「あの頃は自販機本の黄金期で出せば売れるという時代だったから、僕らみたいなわけの分からない奴にも作らせる余裕があったんだね。それに編集者は全共闘世代の人が多かったから、僕らみたいな下の世代に興味を持ってくれたんだと思うよ。それで『Jam』や『HEAVEN』を作ったんだよね」と述懐している[14]。
ちなみに鬼畜系文筆家の草分け的存在である青山正明と村崎百郎は同誌の影響を強く受けており、青山は慶應義塾大学在学中の1981年にキャンパスマガジン『突然変異』(突然変異社)を創刊。障害者や奇形、ドラッグ、ロリコン、皇室揶揄まで幅広くタブーを扱い[15]、熱狂的な読者を獲得したものの、椎名誠等々の文化人から「日本を駄目にした元凶」「こんな雑誌けしからん、世の中から追放しろ!」[16]と袋叩きに遭い、わずか4号で廃刊。一方の村崎は『Jam』からヒントを得て「鬼畜のゴミ漁り」というスタイルを後に確立することになる[17]。
1981年には白夜書房がスーパー変態マガジン『Billy』を創刊。当初は芸能人インタビュー雑誌だったが全く売れず路線変更し、死体や奇形、女装にスカトロ、果ては獣姦・切腹・幼児マニアまで何でもありの最低路線を突き進んだ。その後も一貫して悪趣味の限りを尽くし、日本を代表する変態総合雑誌として、その立ち位置を不動のものにしたが、度重なる条例違反や有害図書指定を受け、誌名を変更するなどしたが全く内容が変わっておらず、1985年8月号をもって廃刊に追い込まれた[18]。
成熟期
「鬼畜系」という言葉自体は1995年に創刊された東京公司編集/データハウス発行の鬼畜系ムック『危ない1号』の周辺から生まれた1990年代の特徴的なキーワードおよびムーブメントであるが[19]、鬼畜ブームの直接的な引き金となった『危ない1号』以前にも青山正明が1992年に上梓した日本初の実用的なドラッグマニュアル『危ない薬』(データハウス)が10万部を超えるヒットを記録したほか[20]、1993年に鶴見済が発表した単行本『完全自殺マニュアル』(太田出版)は100万部を売り上げるミリオンセラーを記録している[19]。
1994年には『Billy』元編集長の小林小太郎が奇形&死体雑誌『TOO NEGATIVE』(吐夢書房)を創刊し、同年にはアルバロ・フェルナンデス(無記名)の死体写真集『SCENE―屍体写真集 戦慄の虐殺現場百態』が発刊され、定価15000円で2000部を売り上げるなど1980年代後半から始まったバブル景気が崩壊した1993年頃から自殺や死体など危ない書籍に対して大衆的な注目が集まるようになり[21]、これらは1990年代後半以降に「鬼畜/悪趣味」という一語にまとめられることになる[19]。
周辺文化研究家のばるぼらは、これら『危ない1号』以前の「悪趣味」について、どこかフェティッシュで学術的な内容が強い「外部からの視点」のものであるとし、村崎百郎の定義した鬼畜的な行為あるいは妄想に「娯楽性」を見出す積極的意識こそが『危ない1号』以降の「鬼畜系/鬼畜ブーム」の本質であることを指摘している[19]。
なおエロティシズム文化に詳しい伴田良輔は「悪趣味」の起源そのものは「キッチュ」「マニエリスム」「バロック」「グロテスク」といったヨーロッパ文化にあると指摘し、それが大量消費時代を迎えた1950年代以降のアメリカ合衆国で「モンド」「スカム」「ビザール」「ローファイ」「バッド・テイスト」に発展し、それが米国での流行の経緯とは無関係に日本で新しい意味や機能が付け加えられて蘇ったと解説している(ただし、伴田の定義する「悪趣味」とは、ある範囲の事物に共通して見られる「けばけばしさ」「古臭さ」「安っぽさ」の類型的特徴を意味しており、最初から露悪的な表現や様式を追求するような「鬼畜系」は含まれていない)[22]。
鬼畜・悪趣味ブーム
1990年代中頃になると鬼畜系サブカルチャーが鬼畜ブーム・悪趣味ブームとして爛熟を迎え、不道徳な文脈で裏社会やタブーを娯楽感覚で覗き見ようとする露悪的なサブカル・アングラ文化が「鬼畜系」または「悪趣味系」と称されるようになった[23]。
青土社発行の芸術総合誌『ユリイカ』1995年4月臨時増刊号「総特集=悪趣味大全」では文学や映画、アートにファッションなどあらゆるカルチャーにキッチュで俗悪な「悪趣味」という文化潮流が存在することが提示され、これを境に露悪趣味(バッド・テイスト)を全面に押し出した雑誌やムックが相次いで創刊され一大ブームとなる。また同年6月には世紀末B級ニュースマガジン『GON!』(1994年4月創刊)が月刊化された。
このブームを代表する1995年7月創刊の鬼畜系ムック『危ない1号』(東京公司/データハウス)では「妄想にタブーなし」を謳い文句に「鬼畜系」を標榜し、ドラッグ・強姦・死体・ロリコン・スカトロ・電波系・障害者・変態・畸形・獣姦・殺人・風俗・盗聴・テクノ・カニバリズム・フリークス・身体改造・精神疾患・動物虐待・肛門性交・変態漫画・児童買春・ゴミ漁り・ゲテモノ・新左翼の内ゲバ・V&Rプランニング・青山正明全仕事まで、ありとあらゆる悪趣味を徹頭徹尾にわたり特集した。鬼畜・変態・悪趣味が詰め込まれた同誌はシリーズ累計で25万部を超えるヒットとなり、初代編集長の青山正明は鬼畜ブームの立役者とみなされた[23][24]。
また鬼畜本ブームの先駆けとなった『危ない1号』の創刊以降
- 『BURST』 - 1995年9月創刊。死体写真・タトゥー・スカトロ・違法薬物・身体改造などの先鋭的なカルチャーやバッドテイストを扱った、平成時代を代表するカウンターカルチャー誌である。派生誌に『TATTOO BURST』『BURST HIGH』『BURST Generation』がある。コアマガジン発行。
- 『週刊マーダー・ケースブック』 - 全世界の特異な殺人事件を扱う海外の週刊誌。日本語版は1995年10月創刊。監修は精神科医の作田明。1997年8月の終刊まで全96号を刊行した。デアゴスティーニ・ジャパン発行。
- 『世紀末倶楽部』 - 1996年6月創刊。土屋静光編集。テーマは死体、フリークス、殺人鬼、見世物、解剖、レイプ、暴力、病気、事故、戦争、宗教儀式、法医学、胎児などで当時の悪趣味ブームの集大成的な内容となっている。コアマガジン発行。
- 別冊宝島シリーズ
- 別冊宝島228『死体の本―善悪の彼岸を超える世紀末死人学!』
- 別冊宝島250『トンデモ悪趣味の本―モラルそっちのけの,BADテイスト大研究!』
- 別冊宝島281『隣のサイコさん―電波系からアングラ精神病院まで!』
- 別冊宝島356『実録!サイコさんからの手紙―ストーカーから電波ビラ、謀略史観まで!』
などの鬼畜/悪趣味を前面に押し出した雑誌、週刊誌、月刊誌、隔月刊誌、ムック、単行本が相次いで出版されるようになり、ますますブームの過熱を煽っていった[25]。
電波系鬼畜ライター・村崎百郎の登場
青林堂(当時)発行の『月刊漫画ガロ』1993年10月号の特集「根本敬や幻の名盤解放同盟/夜、因果者の夜」でメディアに初登場し、1995年4月刊行の『悪趣味大全』で本格的に文筆デビューした鬼畜系・電波系ライターの村崎百郎は、1995年から「すかしきった日本の文化を下品のどん底に叩き堕とす」ために「鬼畜系」を名乗り、この世の腐敗に加速をかけるべく「卑怯&卑劣」をモットーに「日本一ゲスで下品なライター活動をはじめる」と宣言して[26]、鬼畜本ブームの先駆けとなった『危ない1号』の編集・執筆に同年から参加し、編集長の青山正明と知己を得る。
翌1996年1月10日には新宿ロフトプラスワンで『危ない1号』関係者総決起集会『鬼畜ナイト』(東京公司新年会兼青山正明を励ます会)が村崎百郎の主催で開催され、大麻取締法違反で保釈されたばかりの青山正明が一日店長を務めたほか、吉永嘉明、柳下毅一郎、根本敬、佐川一政、夏原武、釣崎清隆、宇川直宏、石丸元章、クーロン黒沢ら30人以上の鬼畜系文化人が総決起し「誰もがいたたまれない気分に浸れる悪夢のトークセッション」を繰り広げた。このイベントの模様は同年8月に『鬼畜ナイト 新宿でいちばんイヤ~な夜』(データハウス)として書籍化され、7万部を売り上げるヒットを記録した[27]。
その後も村崎は、同年7月刊行の著書『鬼畜のススメ 世の中を下品のどん底に叩き堕とせ!! みんなで楽しいゴミ漁り』(データハウス)で他人のゴミを漁ってプライバシーを暴き出す「ダスト・ハンティング」を世に紹介し、同年9月には電波系にまつわる体系的な考察を行った単行本『電波系』を特殊漫画家の根本敬との共著で太田出版から上梓する。
鬼畜ブームの背景
ばるぼらは鬼畜ブームについて「95年8月に創刊した『危ない1号』(データハウス)を中心に流行した、死体や畸形写真を見て楽しんだり、ドラッグを嗜んだりと、人の道を外れた悪趣味なモノゴトを楽しむ文化」と定義し、「元々『完全自殺マニュアル』のベストセラー化をきっかけに『死ぬこと』への関心が高まり、死体写真集などの出版で『死体ブーム』とでも言うべき状況があったが、同じ頃『悪趣味ブーム』も並行して起こり、それらの総称として現れたキーワードが『鬼畜』だった。『危ない1号』の編集長、故・青山正明氏の出所記念イベント『鬼畜ナイト』(96年1月10日)が“鬼畜”のはじまりかと思う」と解説している[25]。
なお鬼畜・悪趣味ブームの背景について、週刊誌『SPA!』は「それまで日本に蔓延していた軽薄短小なトレンディ文化に辟易していた人々の支持を集めた」とブーム当時指摘していたが[28]、一方でロマン優光はオウム真理教や阪神・淡路大震災などの影響で「たいした根はないけど変な終末『気分』になっていた人が増えていた」という状況に触れ「金銭や名誉、勉強やスポーツ、地道に文化を身につけるといったことから落ちこぼれたり、回避したりしながらも、他人との差異をつけたがるような自意識をこじらせた人たちが他人と違う自分を演出するためのアイテムとして、死体写真を使うようになった」と分析し、こうした新しい流れは悪趣味系/鬼畜系から派生したものというより、自販機本などの過去のアングラなサブカルチャーの流れを踏まえた界隈に流れこんでいったと結んでいる[29]。
前述したように『危ない1号』が創刊された1995年には阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件などの重大事件が立て続けに発生しており、それらに起因する一連の社会現象が悪趣味ブームと深く関わっているとされている[30]。特に1995年は「インターネット元年」[31]と呼ばれるように社会環境が大きく移り変わっていった激動の年でもあり[30]、劇作家の宮沢章夫はこれらの事象による社会の混乱や不安定な情勢が、ある種の世紀末的世界観や終末的空気感を醸し出している悪趣味ブームの土壌になったことを指摘している[30][32]。また宮沢は自身が講師を務めるNHK教育テレビの教養番組『ニッポン戦後サブカルチャー史Ⅲ』の最終回において1995年を「サブカル」のターニングポイントと定義し、根本敬や村崎百郎をはじめとする1990年代の鬼畜系サブカルチャーを取り上げている[30]。
インターネットでの動向
インターネット黎明期だった1995年から2000年にかけてアンダーグラウンドサイトが乱立した[25]。
1995年夏には地下鉄サリン事件を題材にした不謹慎ゲーム『霞ヶ関』がパソコン通信上に出回るようになり、これを『朝日新聞』と『毎日新聞』が1995年10月26日夕刊が取り上げたことで、多くのメディアの注目を集めた[33]。当時このゲームを所有していたしばは、このソフトを配布する目的で電子掲示板「あやしいわーるど」を起ち上げ、同サイトは1990年代後半から2000年代初頭にかけて日本最大の規模を誇るアンダーグラウンドサイトに発展する[25]。
1996年4月には日本初と推定されるグロサイト「Guilty」が開設され[25]、同年5月には伝説的自販機本『Jam』『HEAVEN』初代編集長の高杉弾によるWEBマガジン《JWEbB》が創刊される[34]。同年11月には現代版『腹腹時計』の異名をとる危険図書『魔法使いサリン』(冥土出版/1994年12月)で一躍有名になった『危ない1号』『危ない28号』のライター・北のりゆき(別名義に死売狂生・行方未知など)主宰の危険文書サイトの最左翼「遊撃インターネット」がスタートし、翌1997年にはスーパー変態マガジン『Billy』『TOO NEGATIVE』元編集長の小林小太郎が運営していた死体写真ギャラリー「NG Gallery」のWEBサイトや漫画誌『ガロ』の裏サイト「裏ガロ」が本格始動する[25]。
1998年には『コンピューター悪のマニュアル』の著者であるKuRaReを編集長に『危ない1号』の事実上の後継誌『危ない28号』がデータハウスの鵜野義嗣によって創刊される(これについてばるぼらは「90年代雑誌文化のサブカルの流れをコンピューター文化が引き継いだ」と指摘している[35])。同誌はハッキング、ドラッグ、兵器、安楽死など様々な違法・非合法行為のハウツーが記載された危険情報満載のムック本で『危ない1号』に次ぐヒットを飛ばしたが、発売前の段階にも関わらず有害図書指定を受けるなど自治体からの風当たりも強く、のちにKuRaReは「どんだけ何も見てない連中なんだよ。そうやって仮想の敵をやっつけて良いことをしたと思う自慰的行為」「28号は意識的に有害図書指定になろうとしてたので、別にいいのですが」と述懐している[36]。
そして2000年1月に浦和駅、東海村、大阪府で発生した一連の連続爆発事件で、犯人が同誌を参考に爆発物を製造したと供述[37]した結果、同誌は全国18都道府県で有害図書指定され[38]、発行済みの第5巻(1999年11月発行)を最後に廃刊を余儀なくされた。
こうしたインターネット発のアングラカルチャーは1996年のアダルトサイト摘発、1999年の通信傍受法成立と悪趣味ブームの終焉、そして2000年の不正アクセス禁止法が決定打となり、完全消滅したとされている[25][39]。
ブームの終焉
1997年の神戸連続児童殺傷事件以降は、悪趣味系のサブカルチャー書籍を棚から撤去する書店が続々と現れるようになり[40]、2000年の『危ない28号』廃刊をもって悪趣味ブームは完全に終焉を迎えた。時期を同じくして悪趣味系に属する雑誌の廃刊や路線変更が相次ぎ、鬼畜系のシーンは拡散・消滅した。
またインターネット上でも1999年以降はテイストレスに興味を持つ人口も減少したようで、死体や奇形など悪趣味に特化したグロサイトは殆ど作られなくなった(テイストレスサイトの総本山だった「下水道入口」も1999年6月17日付で閉鎖している)[25]。これについてばるぼらは「おそらく『何か変わったもの』だったはずの死体や畸形画像が、いつのまにか『ありふれたもの』になってしまい、当時アクセスしていた人々はまた別の変なものを求めて、ネットを徘徊しているのだろうと思う。そもそも2004年に本物の殺人動画、あの首切り映像が出回ったウェブに、これ以上何を求めればいいのだろう。いつかまた会うその時まで、死体は墓に埋めておいてほしい」とコメントしている[25]。
青山正明の自殺(2001年)
2001年6月17日、青山正明は神奈川県横須賀市の自宅で首を吊って自殺した[41]。
ともに鬼畜ブームを牽引した村崎百郎は青山の訃報に際して雑誌に次の文章を寄稿している。
“サブカルチャー”や“カウンターカルチャー”という言葉が笑われ始めたのは、一体いつからだったか? かつて孤高の勇気と覚悟を示したこの言葉、今や“おサブカル”とか言われてホコリまみれだ。シビアな時代は挙句の果てに、“鬼畜系”という究極のカウンター的価値観さえ消費するようになった。「──鬼畜系ってこれからどうなるんでしょう?」編集部の質問に対し、単行本『鬼畜のススメ』著者であり、故・青山正明氏とともに雑誌『危ない1号』で“電波・鬼畜ブーム”の張本人となった男・村崎百郎の答はこうだった。鬼畜“系”なんて最初からない。ずっと俺ひとりが鬼畜なだけだし、これからもそれで結構だ。
次に主張しておきたいのは「青山正明が鬼畜でも何でもなかった」という純然たる事実である。これだけは御遺族と青山の名誉の為にも声を大にして言っておくが、青山の本性は優しい善人で、決して俺のようにすべての人間に対して悪意を持った邪悪な鬼畜ではなかった。『危ない1号』に「鬼畜」というキーワードを無理矢理持ち込んで雑誌全体を邪悪なものにしたのはすべてこの俺の所業なのだ。
俺の提示した“鬼畜”の定義とは「被害者であるよりは常に加害者であることを選び、己の快感原則に忠実に好きなことを好き放題やりまくる、極めて身勝手で利己的なライフスタイル」なのだが、途中からいつのまにか“鬼畜系”には死体写真やフリークスマニアやスカトロ変態などの“悪趣味”のテイストが加わり、そのすべてが渾然一体となって、善人どもが顔をしかめる芳醇な腐臭漂うブームに成長したようだが、「誰にどう思われようが知ったこっちゃない、俺は俺の好きなことをやる」というのがまっとうな鬼畜的態度というものなので、“鬼畜”のイメージや意味なんかどうなってもいい。
(中略)ドラッグいらずの電波系体質のためドラッグにまったく縁のない俺だが、それでも青山の書いた『危ない薬』をはじめとするクスリ関連の本や雑誌のドラッグ情報の数々が、非合法なクスリ遊びをする連中に有益に働き、その結果救われた命も少なくなかったであろうことは推測がつく。こんな話はネガティヴすぎて健全な善人どもが聞いたら顔をしかめるであろうが、この世にはそういう健全な善人どもには決して救いきれない不健全で邪悪な生命や魂があることも事実なのだ。青山の存在意義はそこにあった。それは決して常人には成しえない種類の“偉業”だったと俺は信じている。 — 村崎百郎「非追悼 青山正明──またはカリスマ・鬼畜・アウトローを論ずる試み」太田出版『アウトロー・ジャパン』第1号 2002年 166-173頁
青山の没後、村崎百郎が明かしたのは、実際に『危ない1号』に関わった人間で本当に「鬼畜」な人間は、村崎本人以外に誰もいなかったという事実である[19]。これについてばるぼらは「実際に『危ない1号』に関わった人間は、青山も含め鬼畜のポーズを取っていただけであって、つまり鬼畜ブームは実質、村崎一人によって作られたといえるだろう。ただ当時は『危ない1号』は鬼畜な人間が集まって作った、サイテーでゲスな雑誌であるというイメージ戦略によって売り出され、そして結果的に成功した」と解説している[19]。
村崎百郎の刺殺(2010年)
2010年7月23日、村崎百郎は読者を名乗る男に東京都練馬区の自宅で48ヶ所を滅多刺しにされて殺害された[注 2][42]。犯人は精神鑑定の結果、統合失調症と診断され不起訴となり、精神病院に措置入院となった[43]。
同年11月、村崎本人が遺した文章や関係者の証言などから綴った鬼畜系総括の書『村崎百郎の本』がアスペクトから刊行された。
関連年表
- 3月 - 高杉弾編集の伝説的自販機本『X-magazine Jam』(エルシー企画)創刊。創刊号に掲載された「芸能人ゴミあさりシリーズ/山口百恵編」が伝説化する。また無名時代の蛭子能収と渡辺和博が隔月ごとに作品を発表している。
- 3月 - 明石賢生の逮捕により『Jam』の後継誌『HEAVEN』(アリス出版→群雄社出版)廃刊。
- 4月 - ロリータ、障害者、皇室などを取り扱い、鬼畜系サブカルチャーの原型となった伝説のミニコミ誌『突然変異』(慶応大学ジャーナリズム研究会→突然変異社)創刊。編集に慶大在学中の青山正明が参加。後に作家の椎名誠が同誌に対して『朝日新聞』誌上で名指し批判を行ったほか、2018年になって野間易通が発表した著書『実録・レイシストをしばき隊』(河出書房新社)の中でヘイトスピーチの源泉として「何でもありのポストモダン=1980年代」という構図があると仮定し、青山らが同誌で皇室も障害者も等価に茶化そうとした姿勢に「権威の頂点と弱者を同じレベルで茶化した場合、弱者には大きなダメージがいく」「等価という青山の視線は自分の行為にしか向いておらず、社会構造の非対称性は無視されている」と批判している。
- 6月11日 - 佐川一政がパリ人肉事件を起こす。
- 6月17日 - 幼児を含む数名を殺傷した電波系による無差別殺人事件・深川通り魔殺人事件が起きる。犯人は初公判で読み上げた書状で「私が事件を引き起こしたのは、とても世間一般の常識では考えることのできない非人間的な、人間に対して絶対に行うべきではない、普通の人であったら一週間ももたないうちに神経衰弱になるだろう、心理的電波・テープによる男と女のキチガイのような声に、何年ものあいだ計画的に毎日毎晩、昼夜の区別なく、一瞬の休みもなく、この世のものとは思えない壮絶な大声でいじめられ続けたことが、原因なのであります」と語る。
- 根本敬の入選作「青春むせび泣き」が『月刊漫画ガロ』(青林堂)9月号に掲載され、特殊漫画家デビュー。
- 『Billy』(白夜書房)が2月号から変態路線に誌面刷新し、スーパー変態マガジンとなる。
- 『Hey!Buddy』(白夜書房)が5月号からロリコン路線に誌面刷新。青山正明は「六年四組学級新聞」改め「Flesh Paper」(肉新聞)を2月号から連載開始(同誌の廃刊後は他誌に移籍して1996年まで続くライフワーク的連載となる)。
- 8月 - 日本初のロリータビデオ『あゆみ11歳 小さな誘惑』発売。ヒロインに懸想する青年のツトム役として青山正明が出演する。青山によると3万円という高額なビデオにも関わらず4000本が即完売したという[44]。
- 9月1日 - ニューウェーブ自販機本『HEAVEN』3代目編集長の山崎春美が「自殺未遂ギグ」決行。体中を出刃包丁で切りつけ救急車で運ばれる。ドクターストップ役は精神科医の香山リカが務めた。
- この年、幻の名盤解放同盟が自販機本『コレクター』(群雄社)誌上でクロスレビュー開始。その後も自販機本『EVE』(アリス出版)で引き続き連載を持つ。
- TACOの1stアルバム『タコ』発表。坂本龍一、遠藤ミチロウ、町田町蔵、工藤冬里、上野耕路、川島バナナなど多彩なミュージシャンと山崎春美の歌詞がコラボレートしたもの。ピナコテカレコードからのリリースで、ジャケットは花輪和一が担当。同年、収録曲の「きらら」に差別的表現があるとして同和団体から抗議が寄せられたため廃盤となる。
- 2月 - 山野一の初作品集『夢の島で逢いましょう』(青林堂)刊行。
- 『月刊漫画ガロ』7月号から山野一の『四丁目の夕日』が連載開始(1986年7月号まで)。
- 8月 - スーパーへんたいマガジン『Billy』の後継誌『Billyボーイ』(白夜書房)が東京都の不健全図書に指定され、8月号をもって廃刊。
- 11月15日 - 青山正明編集の超変態世紀末虐待史『サバト』(三和出版)創刊。高杉弾、永山薫、秋田昌美、丸尾末広、栗本慎一郎、日野日出志、蛭児神建らが参加。魔女狩りから呪術、妖怪、フリークス、死体、スカトロ、幼児マニア、果ては妊婦の切腹まで悪趣味の限りを尽くすが商業的には不発に終わる。
- この年、白夜書房の少女ヌード写真集『ロリコンランド8』が警視庁より摘発され発禁。少女のワレメも「わいせつ」とみなされる。『Hey!Buddy』も「ワレメが見えないロリコン雑誌はもはやロリコン雑誌ではない」として85年11月号をもって自主廃刊。
- 根本敬が『月刊漫画ガロ』1989年2・3月号から1992年4月号にかけて大河精子ロマン三部作『タケオの世界』『ミクロの精子圏』『未来精子ブラジル』を連載する。突然変異で生まれた巨大精子のタケオが、ありとあらゆる差別と悲劇に直面しながらも成長していく第1部『タケオの世界』は1990年の単行本『怪人無礼講ララバイ』(青林堂/青林工藝舎)に収録され、気弱で善良ないじめられ役の「村田藤吉」といつも独善的に振る舞い村田一家を苦しめる「吉田佐吉」の因縁をめぐる第2部『ミクロの精子圏』は1990年の単行本『龜ノ頭のスープ』(マガジンハウス/青林工藝舎)に収録された。なお第3部『未来精子ブラジル』は執筆中断中のため2019年現在まで未完となっている。
- 9月20日 - 『危ない1号』の前身にあたる特殊海外旅行誌『エキセントリック』(全英出版/中央法科研究所)創刊。90年8月刊行の第6号「バンコクびっくりショー!」は青山正明が編集を務める。後に『エキセントリック』編集部を母体として編集プロダクション「東京公司」結成。
- この年、宮崎勤が東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件を起こす。
- 中森明夫と赤田祐一が『週刊SPA!』(扶桑社)12月25日号で90年代サブカルの起点となる[45]カラー16ページ特集「サブカルチャー最終戦争」を組む。この特集で赤田は『Quick Japan』の創刊を宣言し、中森は同号で予告した新連載「中森文化新聞」を同誌に10年以上にわたって連載する。
- 卯月妙子が三和出版のエロ本で漫画家デビュー。後に特殊系AV女優として1994年に井口昇監督のアダルトビデオ『史上最強のエログロドキュメント ウンゲロミミズ』に、1995年には『エログロドキュメント ウンゲロミミズ2』に出演する(いずれもV&Rプランニング作品)。卯月はこれら作品でスカトロやゲテモノ食いなどのハードプレイを演じ「エログロの極み」と評される。その後、元夫が投身自殺し、幼少の頃から悩まされていた統合失調症が悪化する。2008年には飛び降り自殺未遂を起こし、顔面崩壊および片眼を失明する。2012年、描き下ろしの近況自伝エッセイ『人間仮免中』を発表し作家復帰する。
- 青山正明の処女単行本『危ない薬』(データハウス)刊行。
- 5月2日 - 自主制作アニメーション映画『地下幻燈劇画 少女椿』公開。1999年、成田税関でマスターフィルムが没収後破棄され、国内輸入および日本国内で上映禁止となる
- 5月24日 - 漫画家の山田花子が日野市の高層団地11階から投身自殺。24歳没。なお1993年刊行の『完全自殺マニュアル』には彼女が自殺に至るまでの顛末と自殺直前の日記の一部が紹介されている。
- 8月 - 『銀星倶楽部16』(ペヨトル工房)のクローネンバーグ特集をきっかけに村崎百郎が根本敬・青山正明と知り合う。
- バクシーシ山下監督の『初犯』(V&Rプランニング)がビデ倫から審査拒否される。
- 根本敬プロデュースによるつめ隊(障害者プロレスのレスラー・マグナム浪貝によるパンク・バンド)や川西杏らが出演した「ガロ脱特殊歌謡祭`92」が開催(のちに幻の名盤解放同盟監修のもと『ガロビデオ第3弾 ひさご』のタイトルで青林堂からビデオ化)。
- この年、ゲテモノパンクレーベル「殺害塩化ビニール」に所属する殺害系バンド「猛毒」が代表曲「はたらくくるま」をリリース。下品で倫理性に欠けた過激な歌詞の内容から日本でこの曲をプレスしてくれる会社がおらず、海外でプレスしたという逸話がある。また同曲をモチーフとした動画がいわゆるFLASH黄金期に作られ、アングラサイトなどで話題となる。
- 主に自主流通本・ミニコミ誌・ガロ系コミックなどを取り扱う独立系書店「タコシェ」開店。のちに中野ブロードウェイ3階に移転する。創設者はライターの松沢呉一。
- 山野一の長編漫画『どぶさらい劇場』が『コミックスコラ』(スコラ)4月6日号から連載開始(~1994年4月5日号)。
- 6月8日 - 別冊宝島特別編集『宝島30』創刊(~1996年6月号)。『オウムという悪夢』
- 『月刊漫画ガロ』(青林堂)1993年8月号に掲載された幻の名盤解放同盟のフィールドワーク特集「夜、因果者の夜/根本敬や幻の名盤解放同盟」内の根本敬によるインタビューで鬼畜系・電波系を自称する村崎百郎がメディアに初登場[46]。このインタビューでは村崎の生い立ちから製粉工場でのバイト経験、趣味のゴミ漁り、特有の電波系体質などが語られており、この時点で村崎百郎のキャラクターが殆ど確立していたことがわかる。
- 根本敬周辺の奇妙な人物や物件のレポートが収録された『因果鉄道の旅』(KKベストセラーズ)刊行。
- 幻の名盤解放同盟によるモンド歌謡曲の紹介本『ディープ歌謡』(ペヨトル工房)刊行。
- ハリウッドの暗黒面や猟奇事件を元にした洋画などを悪趣味な文脈で取り上げた町山智浩編集『映画宝島 Vol.3 地獄のハリウッド』(JICC出版局)刊行。のちに『映画秘宝』(洋泉社)の源流の一つとなる。
- 当時『死霊の盆踊り』などの最低映画(エクスプロイテーション映画)を買い付けをしていた江戸木純が自ら紹介したZ級映画評論『地獄のシネバトル』(洋泉社)刊行。
- 唐沢俊一監修の『まんがの逆襲―脳みそ直撃! 怒濤の貸本怪奇少女マンガ』(福武書店)刊行。
- 死体を通した現代文明論である布施英利『死体を探せ!』(法藏館)刊行。同書のビジュアル版として出版された『図説・死体論』(法蔵館)は死体写真の多さから話題になり、死体ブームの先駆となる(これは本来の意図とは全く違う消費のされ方だった)。
- 『芸術新潮』(新潮社)6月号で「悪趣味のパワー 悪趣味から目をそむけるな! これこそ、次代の文化を生み出す原動力だ!」特集。主に梅原北明や伊藤晴雨に代表される日本のエログロナンセンスからヨーロッパの世紀末芸術、キリストの磔刑、ヒンドゥー教の宗教画、フリークス写真やエイズ患者の死体写真、アメリカ文化、日光東照宮に代表される金ピカ趣味まで幅広く取り上げている。本特集は歴史的芸術や文化様式に見られる悪趣味な側面について美学的アプローチから多面的に言及しているが、いわゆる「90年代悪趣味サブカル」については一切含まれていない。
- 7月 - 鶴見済の『完全自殺マニュアル』(太田出版)が刊行され、100万部を売り上げるミリオンセラーを記録する(この本もまた本来のテーマとは異なる文脈で消費された本であった)。
- 7月 - 猟奇漫画家の氏賀Y太がエログロ同人誌『毒どく』発表。テーマは蟲責め。花輪和一や蛭子能収などガロ系のバット・テイストとは異なる文脈で鬼畜系コミックの地平を開拓する。
- 8月1日 - 赤田祐一が私財600万円を投じて『Quick Japan』創刊準備号を飛鳥新社から刊行。
- この年、身体障害者を男優に起用した安達かおる監督のアダルトビデオ『ハンディキャップをぶっとばせ!』(V&Rプランニング)がビデ倫から「障害者を見世物にするのは差別的」として審査拒否され発禁となる。後に安達は「何らかの原因で体がシンメトリーじゃない人がAVに出ちゃいけないって、僕はどう考えても納得いかない」と吐露している[49]。
- シリアルキラー・ブームの先鞭をつけたロバート・K・レスラー『FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記』(早川書房)刊行。日本の書籍では見られなかったような生々しい事件現場などの写真を収録。
- ノイズバンド「メルツバウ」の活動で知られる秋田昌美による、サタニズムとヘルズ・エンジェルス、妄想に満ちた奇怪な学説、アウトサイダー建築などについて論じた『スカム・カルチャー』(水声社)刊行。
- 田野辺尚人が編集、中原昌也がライターとして名をあげることになった『悪趣味洋画劇場』(洋泉社)刊行。
- 比嘉健二編集のB級ニュースマガジン『GON!』(ミリオン出版)創刊(1995年に月刊化)。『東京スポーツ』や女性週刊誌の怪しい噂・トンデモネタのみをかき集めたような雑誌で、大量の悪趣味かつ真偽不明な記事で誌面が彩られていた。ちなみに派生誌の『別冊GON!』は本誌『GON!』の猥雑さに比べてコミック(のちに『COMIC GON!』として独立雑誌化)やホラーなどのワンテーマ総特集制だった。
- スーパー変態マガジン『Billy』『ORG』(いずれも発禁処分)などを手がけてきた小林小太郎編集の隔月刊誌『TOO NEGATIVE』(吐夢書房)創刊。同誌では死体写真家の釣崎清隆を輩出する。2001年廃刊。
- 赤田祐一編集のカルチャー誌『Quick Japan』が太田出版から創刊。1970年代から1980年代の忘れられたサブカルチャー(漫画、雑誌、音楽、作家など)を再発掘する特集を多く組み、80年代を代表するサブカル誌『宝島』(方向転換して当時は単なるエロ本となっていた)と入れ替わる形で90年代を代表するサブカルチャー雑誌となる。また大泉実成による連載『消えた漫画家』が人気を博したことから米澤嘉博と竹熊健太郎の責任編集でカルト漫画の復刻レーベル「QJ漫画選書」が企画され、水木しげるの『悪魔くん』や徳南晴一郎の『怪談人間時計』、杉本五郎(つゆき・サブロー)の『奇生人』などの貸本漫画・カルト漫画を多数復刻し、話題を呼ぶ。
- 7月 - アルバロ・フェルナンデスの写真集『SCENE―屍体写真集 戦慄の虐殺現場百態』(桜桃書房)刊行。定価1万5千円と高額な写真集にも関わらず2千部を売り上げ、90年代死体ブームの起爆剤となる[50]。
- 9月 - 秋田昌美『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』(青弓社)刊行。大正末期から昭和初期にかけての日本を席巻した「エロ・グロ・ナンセンス」の時代を彩った一連の変態雑誌群と梅原北明、伊藤晴雨、斎藤昌三、中村古峡、酒井潔など元祖鬼畜系文化人の仕事を再検証した性メディア史。
- 10月 - 幻の名盤解放同盟『定本ディープ・コリア―韓国旅行記』(青林堂)刊行。
- 『週刊SPA!』10月5日号で「猟奇モノ死体写真ブームの謎」特集
- 11月 - カルトビデオショップ「高円寺バロック」開店。死体、フリークス、殺人鬼グッズ、カルト漫画、鬼畜系雑誌、人体改造もの、フェチ系AV、立島夕子のアウトサイダー・アートなど鬼畜系にカテゴライズされるアングラ商品を専門に取り扱っていた。2011年に店舗を縮小して新宿に移転後、2013年頃に閉店。
- 12月 - 松本サリン事件に触発された『危ない1号』ライターの北のりゆき(別名義に死売狂生・行方未知など)が現代版『腹腹時計』の異名をとる危険図書『魔法使いサリン』(冥土出版刊。アメリカで通信販売されていた『サイレント・デス』というサリン製造マニュアルを抄訳したもの)をコミックマーケット47で頒布した。翌95年5月4日、東京晴海で催されていた同人誌即売会のコミックシティでも北は同誌を頒布し、更にオウム真理教から譲り受けた大量のパンフレットをオマケと称して無料配布していた。これを問題視した主催者側が警察に通報したため騒動となり、北は会場内で現行犯逮捕された(逮捕の名目は、北が刃渡り6センチの小型ナイフを所持していたことによる銃刀法違反。結局不起訴となる)[51][52]。その後、週刊誌『サンデー毎日』(毎日新聞出版)95年5月28日号で「度を越えた『稚気』は『狂気』をはらんでいた」「作成者に怒りがわいてくる」などの感情的批判が目立つ特集記事も掲載され物議を醸した。もうひとつのサリン騒動の顛末については、95年10月刊行の『Quick Japan』(太田出版)4号に掲載された北へのインタビューに詳しい。
- この年、青山正明主宰の編集プロダクション「東京公司」結成。
- 1月17日 - 阪神淡路大震災発生。
- 2月 - 月刊誌『マルコポーロ』(文藝春秋)廃刊。
- 3月 - 『BRUTUS』(マガジンハウス)3月15日号で「インモラル図書館へようこそ!」特集。ハイカルチャーな悪趣味をアカデミックな文脈で紹介。
- 3月20日 - オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こす。教団への強制捜査が近づいていることを察知した麻原彰晃の策略で警視庁のある霞ケ関駅を通る地下鉄3路線5両の電車内にサリン入りのポリ袋に穴を空けて散布。結果として乗客乗員13人が死亡し、約6000人が重軽傷を負った。
- 4月 - 『ユリイカ』(青土社)臨時増刊号「総特集=悪趣味大全」。鬼畜系の生みの親・村崎百郎のデビュー原稿「ゲスメディアとゲス人間」が掲載され、他にも森村泰昌、小谷真理、香山リカ、松沢呉一、清水アリカ、松尾スズキ、バクシーシ山下、横尾忠則、中沢新一、石子順造、上野昂志、高山宏、高遠弘美、巽孝之、上野俊哉、風間賢二、岸野雄一、佐々木敦、安田謙一、柳下毅一郎、澤野雅樹、宇川直宏、山野一、阿部幸弘、関口弘、唐沢俊一、田中聡、比嘉健二、永江朗、ナガオカケンメイ、木村重樹、西原珉、大竹伸朗、都築響一、伴田良輔ら文化人が多数参加。鬼畜・悪趣味ブーム到来。
- 4月21日 - 電気グルーヴの6枚目のシングル『虹』リリース(1994年のアルバム『DRAGON』からのシングルカット)。曲中の歌詞「トリコじかけにする」というフレーズは根本敬が採取した電波系人間・湊昌子(港雅子)の造語「トリコじかけの明け暮れ」に由来する。
- 5月 - と学会『トンデモ本の世界』(洋泉社)刊行。と学会初代会長の山本弘は「と学会とは世に氾濫する『とんでもないもの』を観察し、研究する軽い趣味のグループ」「赤瀬川源平の『超芸術トマソン』や『宝島』の『VOW』のようなもの」[53]と説明しているが、実際はオカルト本や陰謀論の類いの電波的な主張を面白がるという消費のされ方もした。
- 7月 - 東京公司編集『危ない1号』(データハウス)創刊。第1巻の特集テーマは「ドラッグ」。創刊号発売時に編集長の青山正明は逮捕されていた。
- 7月 - 町山智浩と田野辺尚人が合流し、映画雑誌『映画秘宝』(洋泉社)シリーズを創刊。第1弾は「エド・ウッドとサイテー映画の世界」。当初はA5判ムックであったが、1999年にA4判の隔月刊映画雑誌としてリニューアルし、2002年より月刊化。
- 7月 - トークライブハウス「新宿ロフトプラスワン」開店。
- 7月 - 宮台真司『終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル』(筑摩書房)刊行。
- 7月 - V&Rプランニング所属のAV監督であるバクシーシ山下が『セックス障害者たち』(太田出版)を刊行。
- 7月 - 映画秘宝シリーズ第2弾『悪趣味邦画劇場』(洋泉社)刊行。内田栄一の評論『ヤスジのポルノラマ「やっちまえ!!」と性の現場作り』再録。
- 8月 - 『Quick Japan』(太田出版)3号で「ぼくたちのハルマゲドン」特集(竹熊健太郎『私とハルマゲドン』の草稿「おたくとハルマゲドン」掲載)。同号より新しい方法で“いじめ”を考えてみるシリーズ「村上清のいじめ紀行」連載開始(第1回ゲストは元いじめっ子の小山田圭吾)。当初は小山田のいじめ被害者とされる人物とコンタクトを取って対談させる企画だったが実現せず。後に当該記事についてロマン優光は「当時としても、こういう内容のインタビューが掲載されるというのは普通は有り得ないことであり、悪趣味/鬼畜系文化の影響のもとに起こったものであろうことは容易に想像することができる」とコメントしている[54]。
- 8月 - 別冊宝島228『死体の本―善悪の彼岸を超える世紀末死人学!』(宝島社)刊行。死体写真蒐集家としての顔も持つ水木しげるのインタビュー記事などを掲載。
- 8月 - 92年1月22日号より『週刊SPA!』で連載を開始した小林よしのりの『ゴーマニズム宣言』が編集部との対立から8月2日号掲載の最終回「さらばSPA!よ」をもって3年7ヶ月におよぶ連載を終了。
- 8月25日 - ネクロフィリアをテーマにしたドイツの発禁ホラー映画『ネクロマンティック』(1987年)がニューセレクトの配給で日本初ビデオ化。日本語字幕の翻訳は柳下毅一郎。
- 9月 - 不良系サブカルチャー中心のカウンターカルチャー誌『BURST』(白夜書房→コアマガジン)が隔月誌として創刊。当初はバイクとパンクの不良雑誌で、のちにタトゥーやピアスなどの身体改造=モダン・プリミティブ路線とマリファナ路線がヒットする(いずれも『TATTOO BURST』『BURST HIGH』として独立雑誌化)。他にも死体や殺人など悪趣味系の記事が同居していた。初代編集長はピスケンこと曽根賢。
- 『週刊SPA!』9月20日号で「[最低・最悪] モンド・カルチャーの正体」特集
- 10月4日 - テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』放送開始(~96年3月27日まで)
- 10月 - 作田明監修の殺人百科『週刊マーダー・ケースブック』(省心書房→デアゴスティーニ・ジャパンに吸収合併)創刊。第1弾は「チャールズ・マンソンとシャロン・テート殺人事件」特集(Vol.1・2の合併号)。次いで第2巻には佐川一政も登場。1997年8月1日まで全96巻を刊行する。
- 10月 - 椹木野衣+木村重樹編『ジ・オウム―サブカルチャーとオウム真理教』(太田出版)刊行。椹木野衣・飴屋法水・福居ショウジンとの鼎談を始め、村崎百郎、大澤真幸、福田和也、岡田斗司夫、村上隆、根本敬、宇川直宏、中原昌也、清水アリカらが参加。村崎百郎は本名の黒田一郎名義で「導師(グル)なき時代の覚醒論」を寄稿し「観念の中に閉じこもるな。現実としっかり向かい合え。覚醒も堕落も、創造も破壊も、あらゆる可能性は常に我々の内にあり、いずれを選ぶかは、常に我々自身の意志に委ねられている。その権利と自由を決して手放すな」と語る。
- 『週刊SPA!』11月1日号で「電波系な人々大研究―巫女の神がかりからウィリアム・バロウズ、犬と会話できる異能者まで」特集。根本敬と村崎百郎の対談「電波系の正体を解き明かす電波対談ここに開催!」掲載(のちに大幅な加筆修正と語り下ろし談話を加えて単行本『電波系』に収録)。
- 11月 - 竹熊健太郎『私とハルマゲドン―おたく宗教としてのオウム真理教』(太田出版)刊行。60年代生まれの元祖オタク世代として漫画やアニメなどの戦後サブカルチャーの洗礼を受け、高度資本主義社会の恩恵に浴しながら、いまひとつ世間との折り合いがつかない著者自身の体験を踏まえつつ、おたく文化の土壌から世紀末最大のカルト教団「オウム真理教」が生まれたと論じる極私的おたく文化論。2000年7月に筑摩書房から改訂文庫版が刊行。
- 11月 - クーロン黒沢ほか『さわやかインターネット -ネットの達人-』(秀和システム)刊行。
- 11月23日 - Windows 95日本語版リリース。「インターネット元年」到来。この前後に多数のパソコンに関連する書籍やサブカル誌が刊行されるが「万引きの方法」や「ラーメン特集」など何の役にも立たないか如何わしい内容のものも多かった。
- 『週刊SPA!』12月13日号の特集「`95年ジャンル別裏BEST10」内で特殊翻訳家の柳下毅一郎が「個人的にはこの猟奇ブームは嫌い」「猟奇とかサイコとかいうのは、本来なら世間に顔向けできないもののはず。恥と覚悟がないと付き合えない。それを抜きにして、ただ刺激だけで面白がる人ばかり」「結局、恥知らずな人が世の中には多かったってだけかも」とコメント。
- 12月24日 - 『Quick Japan』5号で石野卓球と青山正明のテクノ対談「裏テクノ専門学校」掲載。
- この年、オウム真理教事件関連の不謹慎ゲーム『霞ヶ関』『上九一色村物語』がパソコン通信で流通。死体写真家の釣崎清隆が池尻大橋NGギャラリー(元『Billy』編集人の小林小太郎が運営していたギャラリー)で初個展。
- 1月10日 - 大麻取締法違反で逮捕されていた青山正明が95年8月末に保釈されたのを記念して村崎百郎とニコラス啓司による「鬼畜ナイト実行委員会」の主催で東京公司のトークライブイベント『鬼畜ナイト―新宿でいちばんイヤ~な夜』が新宿ロフトプラスワンにて開催される。8月にはイベントのダイジェスト版が『別冊危ない1号』としてデータハウスから書籍化され、8万部を売り上げる。主な出演者は青山正明、村崎百郎、石丸元章、釣崎清隆、柳下毅一郎、根本敬、夏原武、宇川直宏、吉永嘉明、佐川一政、クーロン黒沢など30人以上にのぼった。
- 2月 - 悪趣味ブームの元祖本としてアメリカの大衆文化に根ざしたバット・テイスト文化を評論したジェーン・スターン&マイケル・スターン著/伴田良輔監訳『悪趣味百科』(新潮社)が刊行。
- 3月 - 別冊宝島250『トンデモ悪趣味の本―モラルそっちのけの,BADテイスト大研究!』刊行。根本敬による蛭子伝説「茶の間のピンヘッドは無意識の殺人者!?」が掲載。1990年代当時すでに人気タレントとなっていた蛭子能収の知られざる素顔について鬼畜系の文脈で紹介。
- 4月 - 『危ない1号』第2巻「特集/キ印良品」刊行。第2巻では村崎百郎のアイデアで「鬼畜系カルチャー入門講座」と称し、多様多種なジャンルの危ないコンテンツをガイドブックのような形式で横断的に紹介したほか、元祖鬼畜系漫画家の山野一ロングインタビューなどが掲載。
- 6月 - 24歳で夭折した漫画家の山田花子が遺した日記やメモなどをまとめた単行本『自殺直前日記』(太田出版)が¥800本シリーズから刊行。
- 7月 - 村崎百郎『鬼畜のススメ―世の中を下品のどん底に叩き堕とせ!! みんなで楽しいゴミ漁り』(データハウス)刊行。
- 雑誌『ホットドッグ・プレス』(講談社)8月25日号で「いいかもしれない“悪趣味”の世界 BAD TASTE BOOK」特集。根本敬は「ブームの終焉を見たなと思ったのは『ホットドッグ・プレス』で悪趣味特集やった時ね」と述べている[55]。
- 9月 - 根本敬と村崎百郎の共著『電波系』(太田出版)刊行。
- 相良好彦編集『マンガ地獄変』(水声社)シリーズがスタート。吉田豪、植地毅、大西祥平、宇田川岳夫などが執筆し、それまで『紙のプロレス』の読者以外には余り知られていなかった吉田豪が広く知られる切っかけとなる。また『マンガ地獄変3』(1998年)で大西が紹介したB級ホラー漫画記事をきっかけに押切蓮介が漫画家を志す。
- 土屋静光編集の悪趣味総決算ムック『世紀末倶楽部』(コアマガジン)創刊。交通事故で内臓が飛び出した死体写真や奇形児などの写真が大量に掲載されていたこのシリーズはビジュアル面によせた見世物的かつ即物的なつくりのものが多いが、第1弾の『特集チャールズ・マンソンとシャロン・テート殺人事件』は1冊丸ごとマンソン特集という圧巻ぶりで読みものとしても評価が高い。第2号には『危ない1号』初代編集長の青山正明、カルト映画『恐怖奇形人間』の石井輝男監督、スーパー変態マガジン『Billy』編集人の小林小太郎、V&Rプランニング創業者の安達かおるなど鬼畜系キーマンにまつわる貴重なインタビュー記事を多数掲載。
- 10月30日 - 東京大学教養学部「オタク文化論」ゼミ講師の岡田斗司夫に招かれて村崎百郎が登壇。この日のテーマはゴミ漁り。講義の模様は岡田斗司夫『東大オタク学講座』(講談社・1997年)の「第九講 ゴミ漁り想像力補完計画」に収録。
- 11月 - 別冊宝島281『隣のサイコさん―電波系からアングラ精神病院まで!』(いずれも宝島社)刊行。
- 11月 - 鶴見済『人格改造マニュアル』(太田出版)刊行。厳しい世の中を自殺せず生き抜くための大脳コントロール法。
- 11月1日 - 『危ない1号』『危ない28号』ライターの北のりゆきが主宰する同人サークル「遊撃隊」「冥土出版」の合同ホームページとして「遊撃インターネット」開設。
- 11月30日 - B級のエロネタ中心の悪趣味雑誌『BAD TASTE』(フロム出版)創刊。米澤嘉博の遺作『戦後エロマンガ史』の初出(のちに青林工藝舎『アックス』に移籍)。
- 12月 - 『Quick Japan』(太田出版)11号で山崎春美特集「山崎春美という伝説─“自殺未遂ギグ”の本音」掲載。
- 『週刊SPA!』12月11日号で「鬼畜たちの倫理観─死体写真を楽しみ、ドラッグ、幼児買春を嬉々として語る人たちの欲望の最終ラインとは?」特集。
- ロリータ官能小説家の斉田石也、V&Rプランニング代表の安達かおる、雑誌『BUBKA』創刊編集長の寺島知裕、KUKIの鬼畜レーベル“餓鬼”の山本雅弘、特殊漫画家の根本敬らにコメントを求め、鬼畜系ショップ「高円寺バロック」周辺の客に質問し、日本でベストセラーとなった『FBI心理分析官』著者のロバート・K・レスラー、『痴呆系―すばらしき痴呆老人の世界』著者の直崎人士、タコシェ創設者の松沢呉一らが鬼畜ブームに一言呈した上で、ラストに青山正明と村崎百郎の対談「鬼畜カルチャーの仕掛け人が語る欲望の行方」を掲載。
- 後に青山と交友があったデザイナーのこじままさきは「『SPA!』のインタビューを受けた直後に本人から聞いた話なんですが、『SPA!』的には(青山に)村崎百郎さん的な鬼畜キャラを期待してたらしいんですよ。そうしたらものすごく普通の、インテリジェントな人だから、予定していた見開き2ページを埋めるのは無理だと判断したらしくて。『小さなコラム扱いになっちゃったんだよねー』って話してたのが一番印象に残ってますね。本当に常識的で穏やかないい人なんですよ。どちらかというと気弱で温厚で」と語っている[56]。
- 「鬼畜系」について『SPA!』編集部は特集冒頭で「モラルや法にとらわれず、欲望に忠実になって、徹底的に下品で、残酷なものを楽しんじゃおうというスタンス」と改めて定義し、「死体写真ブームから発展した悪趣味本ブームの流れとモンド・カルチャーの脱力感が合流。そこに過激な企画モノAVの変態性が吸収され、さらにドラッグ、レイプ、幼児買春などの犯罪情報が合体した」ことを踏まえつつ「インターネットの大ブームにより、過激なアンダーグラウンド情報が容易に入手できるようになったのも、この流れを加速させた要因だろう」と「鬼畜系」の誕生プロセスについて簡単に解説。
- マーケティング雑誌『流行観測アクロス』(パルコ出版)12月号に竹熊健太郎と岡田斗司夫の対談「“鬼畜”に走るサブカル雑誌に未来はあるか?」掲載。
- 奥崎謙三主演『神様の愛い奴』が後に藤原章、大宮イチ監督名義で発表されたものとは違う内容のラフ版がBOX東中野(現・ポレポレ東中野)にて年末に上映される。
- 幻の名盤解放同盟周辺にいた直崎人士が老人介護施設の介護士として接触した痴呆老人についてのレポート『痴呆系―素晴らしき痴呆老人の世界』(早田工二との共著、データハウス)刊行。
- 忘れられた異端のカルト漫画について積極的に再評価を行っていた宇田川岳夫が『マンガゾンビ』(太田出版)を刊行。
- 『GON!』(ミリオン出版)のフォロワー雑誌『BUBKA』(コアマガジン→白夜書房)創刊。後にAKB48を中心としたアイドル雑誌に路線を変更する。
- 6月 - 別冊宝島334『トンデモさんの大逆襲!―超科学者たちの栄光と飛躍』(宝島社)刊行。
- 雑誌『AERA』(朝日新聞出版)6月23日号に高橋淳子の記事「世紀末カルチャー 残虐趣味が埋める失われた現実感」が掲載。鬼畜ブームを仕掛けた『危ない1号』側の見解として「目で見て明らかに分かるグロテスクさに人気が集中している。表層的な露悪趣味に、終始しているんじゃないか」(青山正明)「死体も殺人鬼も刺激物として喜んでいる連中が大勢いて、それを説教する人も、自制が働く人もいない。ああいうのは、まっとうな人間がやることじゃないという“つつしみ”が、80年代以降、なくなった」(柳下毅一郎)とのコメントが掲載。
- 7月7日 - 青林堂の全社員が退職。結果として1964年の創刊以来一度も休刊することなく日本のマイナー文化を支え続けた伝説の漫画雑誌『ガロ』が8月号で休刊に至る。その後、青林堂から分裂した青林工藝舎が事実上の後継誌『アックス』(1998年2月~)を創刊する。『ガロ』休刊の真相については白取千夏雄の自伝『全身編集者』(おおかみ書房/2019年)に詳しい。
- この年『危ない1号』愛読者の酒鬼薔薇聖斗が神戸連続児童殺傷事件を起こす。鬼畜・悪趣味ブーム事実上の終焉へ。
- 『週刊アスキー』7月28日号で「検証・ジャンク・カルチャーと酒鬼薔薇の危険な関係」特集。酒鬼薔薇事件と鬼畜系カルチャーの関係性の有無について問題提起した上で青山正明、木村重樹、柳下毅一郎、テリー伊藤、猪瀬直樹らが事件に言及している。
- 1月 - 別冊宝島356『実録!サイコさんからの手紙―ストーカーから電波ビラ、謀略史観まで!』(宝島社)刊行。
- 『神様の愛い奴』の藤原章、大宮イチによるバージョンが公開される。
- 宇田川岳夫が漫画のみならず、アンダーグラウンドな音楽やオカルト、偽史作家などについて記した著書『フリンジ・カルチャー』(水声社)上梓。
- 5月10日 - 漫画家のねこぢるが自殺。可愛さと残酷さが同居するポップでシュールな作風が人気を博した。31歳没。
- 津山事件、深川通り魔殺人事件、宮崎勤事件、酒鬼薔薇聖斗事件など日本の凶悪犯罪について当時の若手ライターがサブカル的アプローチで記述した『犯罪地獄変』(水声社)刊行。
- プロレスに対して悪趣味系のアプローチをした『悶絶!プロレス秘宝館』(シンコー・ミュージック)刊行。
- 『危ない1号』の実質的な後継誌として季刊誌『危ない28号』(データハウス)が創刊。アングラサイトの人脈によって創刊され、より実用的なアングラ情報を扱う。一方『危ない1号』執筆陣からの参加は少なく、引き続き村崎百郎と北のりゆきのみ参加。
- H&Cクラブ/KuRaRe編『コンピュータ悪のマニュアル』(データハウス)刊行。参考文献には『危ない薬』『完全自殺マニュアル』『魔法使いサリン』『診断名サイコパス』などパソコン関連書籍とは縁遠いサブカル本の書名が羅列されている。
- 青山正明の2冊目の単著である『危ない1号』第4巻「特集/青山正明全仕事」が刊行され、『危ない1号』シリーズ終刊。
- 1997年に第5回日本ホラー小説大賞に応募されるも落選した高見広春の小説『バトル・ロワイアル』に興味を持った赤田祐一が『Quick Japan』の誌面で「尋ね人」の広告を出し、高見とコンタクトを取ることに成功。1999年4月に太田出版から刊行され、100万部を超えるミリオンセラーとなる。
- 11月1日 - 児童ポルノ禁止法施行。
- 12月6日 - 『BURST』2000年1月号で「世紀末トラッシュ・カルチャー10年間の総括―90年代式幽霊列車の葬送」特集。『世紀末倶楽部』『トラッシュメン』編集人の土屋静光によるコラム「悪趣味雑誌/ゴミ、クズ、カスのお宝雑誌」が掲載。小林小太郎による『Billy』『ORGANIZER』『TOO NEGATIVE』、比嘉健二による『GON!』『ティーンズロード』、のちの『映画秘宝』につながる『悪趣味洋画劇場』『悪趣味邦画劇場』などの紹介や『世紀末倶楽部』を編集する上で影響を受けたという海外ミニコミ『FUCK!』『BOILD ANGEL』の解説などを収録。
- この年、アロマ企画が疑似殺人を記録した穴留玉狂監督のアダルトビデオ『猟奇エロチカ 肉だるま』発売。発売直前に出演女優の大場加奈子が電車に飛び込み自殺[57]。
- 『危ない28号』第3巻「特集/危険物特集号」の記事を参考にして作られた爆弾による連続爆発事件が起こり、結果同誌は全国18都道府県で有害図書に指定される。同年『危ない28号』廃刊決定(最終巻となる第5巻は99年11月刊行)。
- 『BURST』9月号に青山正明の遺稿「イメージの治癒力──『諦観』と『リズム』でハイな毎日を」と生前最後のインタビュー記事「シャバはいいけどシャブはいけません──帰って来た? 天才編集者 青山正明」掲載。
- 12月 - 佐川一政『まんがサガワさん』(オークラ出版)刊行。
- 12月16日 - 映画『バトル・ロワイアル』公開。R-15指定。
- 5月 - 村田らむ『こじき大百科―にっぽん全国ホームレス大調査』(データハウス)刊行。人権団体からの抗議で発禁、絶版、自主回収となる。
- 6月 - 多田在良編集『激しくて変』(光彩書房)刊行。宮崎勤事件の影響で長く休筆していた鬼畜漫画家の早見純が同誌掲載の「復活祭」で再デビュー。
- 6月17日 - 『危ない薬』『危ない1号』の編著者・青山正明が自殺。40歳没。
- 『BURST』9月号で木村重樹・吉永嘉明・園田俊明の鼎談「青山正明追悼座談会」掲載。
- 雑誌『AERA』11月19日号に速水由紀子の記事「新人類世代の閉塞 サブカルチャーのカリスマたちの自殺」掲載。青山正明、ねこぢる、hideの自殺や『別冊宝島 死体の本』『完全自殺マニュアル』に触れつつ、新人類の行く末について案じる。
- 12月 - 『アウトロー・ジャパン』(太田出版)創刊号に村崎百郎が「非追悼 青山正明──またはカリスマ・鬼畜・アウトローを論ずる試み」を寄稿。
- 11月 - 吉永嘉明『自殺されちゃった僕』(飛鳥新社)刊行。内容は同僚の青山正明、友人のねこぢる、最愛の妻の3人に相次いで先立たれた『危ない1号』2代目編集長が綴る慟哭の手記。プロデュースは赤田祐一。2008年10月に幻冬舎アウトロー文庫から文庫化(文庫版解説は春日武彦)。
- 9月 - 90年代の鬼畜ブームの空気を詰め込んだ雑誌『SIDE FREAK』(三才ブックス)が創刊されるも、発売予定だった第2号が発売されず休刊。
- この年、アダルトビデオメーカーのバッキービジュアルプランニングが一連の強姦致傷事件(通称・バッキー事件)を起こす。
- ばるぼら+加野瀬未友責任編集『ユリイカ』8月臨時増刊号で「総特集=オタクVSサブカル! 1991→2005ポップカルチャー全史」特集。ばるぼらと加野瀬未友の対談「オタク×サブカル15年戦争」が掲載されたほか、90年代サブカルに関連して近藤正高「カミガミの黄昏〈一九九三年〉以前・以後」、屋根裏「悪趣味と前衛が支えたアングラ」、オクダケンゴ「平成大赦(仮)-平成サブカルチャー年表-」などの記事が収録されている。
- 5月 - 『危ない1号』以降、鬼畜系雑誌の代表とされたカウンターカルチャー誌『BURST』が6月号を最後に休刊することが発表される。
- 3月 - 吉永嘉明『自殺されちゃった僕たち』が『実話GON!ナックルズ』で連載開始(~2008年11月号まで全32回)
- 『STUDIO VOICE』12月号で「90年代カルチャー完全マニュアル」特集。村崎百郎インタビュー「今こそ『鬼畜』になれ! 『アングラ/サブカル』が必要なわけ」掲載。
- 2006年6月から7月にかけてウクライナのドニプロペトロウシクに住む若者らが約1ヶ月の間に快楽目的で21人を殺害した。2008年末には殺人行為を記録したビデオがインターネット上に流出し、そのうち「ウクライナ21」と称される動画は動画共有サイトに完全な状態で流出した(この前後に日本では「検索してはいけない言葉」という言葉が定着している)。その後、ウクライナ21に触発された模倣犯が「アカデミーマニアックス」事件を起こす。
- 6月30日 - 元『週刊SPA!』編集長のツルシカズヒコが『「週刊SPA!」黄金伝説』(朝日新聞出版)を刊行。
- 7月23日 - 村崎百郎が読者を名乗る男に自宅で48ヶ所を滅多刺しにされ刺殺。鬼畜系終焉。
- 9月 - 根本敬『生きる2010』(青林工藝舎)刊行。
- 11月25日 - 村崎百郎(鬼畜系)総括の書『村崎百郎の本』(アスペクト)刊行。根本敬は同書のインタビューで「90年代の悪趣味ブームを支えていた人たちっていうのは教養があって知的な人が多かったし、読んでいる方も「行間を読む」術は自ずと持っていたと思うんですよ。それに『影響受けました!』っていう第二世代、第三世代が出てくるにつれどんどん崩れて、次第に単に悪質なことを書いてりゃいいや、みたいな“悪い悪趣味”が台頭してくるようになる。だいたい趣味がいい人じゃないと、悪趣味ってわからないからね。村崎さんにしろ、オレの漫画にしろ、結局世の中がちゃんとしていてくれないと、立つ瀬がないわけですよ。でも、世の中がどんどん弛緩していっちゃって、もう誰もがいつ犯罪者になるのか、わからないような状況になっちゃったのが鬼畜ブームの終わり以降。とりわけ90年代終わりからここ数年、特に激しいじゃない?」と語る。
- 11月16日 - アウトロー雑誌『BURST』(コアマガジン)の派生誌『TATTOO BURST』が2013年1月号をもって終刊。
- 酒鬼薔薇聖斗こと元少年Aが著書『絶歌』(太田出版)を上梓。
- 6月19日 - NHK教育テレビ『ニッポン戦後サブカルチャー史Ⅲ』第4回(最終回)「サブカルチャーが迎えた『世紀末』」放送。根本敬が悪趣味ブームについて言及。
- 青野利光+赤田祐一編集『スペクテイター』39号で「パンクマガジン『Jam』の神話」特集。
- 平野悠『TALK is LOFT 新宿ロフトプラスワン事件簿』(ロフトブックス)刊行。
- 12月 - 『Quick Japan』135号で座談会「ロフトプラスワンと90年代サブカルチャー」(赤田祐一・石丸元章・姫乃たま)掲載。
- 5月2日 - 大阪ロフトプラスワン・ウエストで宮沢章夫と野間易通が幻の名盤解放同盟の韓国旅行記『ディープ・コリア』をめぐる対談イベント「サブカルに決着をつける」を行った。これを発端として音楽評論家の高橋健太郎がTwitter上で『ディープ・コリア』論争を起こす[58]。識者の見解や論争の流れについては香山リカ『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論』(太田出版)やロマン優光『90年代サブカルの呪い』(コアマガジン)に詳しい。
- 5月30日 - 政治活動家で作家の雨宮処凛が『90年代サブカルと「#MeToo」の間の深い溝。の巻』という論考を発表。 これは「90年代、私はクソサブカル女だった」と語る雨宮が「鬼畜ブーム的なものが盛り上がる中、意図的に見ないふりをしてきたことについて、改めて考えなくてはいけないと思っている」と自己批判あるいは反省を促す内容で、これを皮切りにTwitter上で90年代サブカル論争が起こる。
- 6月24日 - ブロガーのHagexが荒らしユーザーに刺殺される。
- 9月1日 - RRR(両国楽園部屋)で催された『バースト・ジェネレーション』創刊記念座談会「90年代カウンターカルチャーを振り返る」に登壇した幻の名盤解放同盟の根本敬が『ディープ・コリア』論争について「その頃はいわゆる進歩的な文化人とされる左翼系の人達が言論界を握っていて、韓国に対して悪い事を言うと贖罪意識が強過ぎて、非常に風当たりが強かった。(中略)良い意味の間抜け加減とか、そういうものに対しても、みんな口を閉ざして」いた80年代の空気感に言及しながら、あえて「韓国のことを正直に書く」ことによって、執拗な贖罪意識にとらわれた形でしか韓国を語れず、硬直していた日本の韓国観に対し「ある種のカウンターカルチャー」として機能していたと改めて解説した[59]。また根本は高橋の『ディープ・コリア』に対する執拗なバッシングについて「それこそ本も読まないで、その行間も読まないで、そして80年代がどんな空気だったのかってことを無視して…(中略)その男が『あれはヘイト本のルーツだ』っていうキャンペーンを始めたんですよ」と不快感を示し、「結局『ディープ・コリア』バッシングっていうのは、実はある音楽評論家が『ディープ・コリア』とヘイトスピーチを結びつけて、それを自分が社会正義の立場からバッシングしているという事に置き換えてるんですけど、実は(同い年で自分より先に出世した湯浅学に対する)極めて個人的な嫉妬」が全ての元凶として一蹴している[59]。以上のように当時の時代性を考慮せずに『ディープ・コリア』がヘイト本のルーツというような批判・主張については的外れであるとしながらも「非常に表層の部分だけを捉えれば、それはもしかしたら受け手によっては『韓国をバカにしてる』『ヘイトスピーチに何かしら影響を与えたことは否めない』と捉えられるかもしれない」と受け手がそういった解釈をしてしまう可能性については根本も認めている[59][60]
- かつて鬼畜本ブームを仕掛けたデータハウス社長の鵜野義嗣が村田らむのインタビューで「『危ない』系の本は今は絶対ダメですね。『危ない』のに興味を持つのは、経済的に余裕がある時なんですよ。どうやって食っていくか大変な時代に、『危ない』とかそんなことは言ってられない。こういう“すねた本”がうけるのって実は貴族文化なんですよ」と語る[61]。
- 12月5日 - 『BURST』の後継誌『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)創刊号が発売。責任編集はケロッピー前田。カバーガールは姫乃たま。
- ロマン優光が悪趣味ブームおよび90年代サブカルに関する手引き書として『90年代サブカルの呪い』(コアマガジン)刊行。
- 香山リカ『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論』(太田出版)刊行。『HEAVEN』編集者時代の自身の経験と特殊漫画家の根本敬を主軸に90年代サブカルと平成末期のヘイト現象を論じる試み。
- 谷岡ヤスジ原作の劇場用アダルトアニメ『ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!』(1971年公開/東京テレビ動画)が初ソフト化。
- 参考文献
- 東京公司編『危ない1号』第2巻「特集/キ印良品」データハウス、1996年
- 双葉社MOOK 好奇心ブック15『悶絶!!怪ブックフェア』双葉社、1998年
- 青土社『ユリイカ』2005年8月臨時増刊号「総特集=オタクVSサブカル!」
- 赤田祐一+ばるぼら『20世紀エディトリアル・オデッセイ 時代を創った雑誌たち』誠文堂新光社、2014年
- ロマン優光『90年代サブカルの呪い』コアマガジン、2019年
- 宮沢章夫『ニッポン戦後サブカルチャー史』
- BLACK BOX - PANDORA
ポルノグラフィに於ける鬼畜系
成人向け漫画やアダルトゲームなどのポルノにおいて、SM・緊縛・拉致・監禁・拷問・調教・洗脳・催眠・強姦・輪姦・屍姦・獣姦・異種姦・臍姦・カニバリズム・スカトロ・ロリコン・孕ませ・寝取られ・触手責め・拡張プレイ・異物挿入・焼印・欠損・寄生・蟲責め・悪堕ち・肉体改造・人体破壊・内臓掻爬・四肢切断・精神崩壊・公衆便所など強制的な性行為を強調した作品は「鬼畜系」(または「陵辱系」)と呼ばれており、これは度が過ぎるサディストを指した用語でもある。それに対して恋愛や合意の上での性行為を重視した作品を「純愛系」と呼ぶことがある[62]。
いずれもオタク系の媒体で用いられることの多い表現であり、評論家の本田透は「鬼畜系」について「萌え」とは対極に位置する概念であると指摘し[63]、監禁や調教といった鬼畜系のジャンルは1990年代半ば(鬼畜ブーム期)までがピークとして「現在(2005年時点)では一部の根強いファンだけに支えられている」と主張していた[64]。
また、成人向け漫画の世界で自分の世界を築き上げる作家も多く、もちろん、性的描写を避けては描けない世界というものでもある。また一つには性的描写が必須であることを除けば、それ以外の表現はむしろ一般の雑誌より制約の少ない舞台であり、その自由度の高さから作家独自の嗜好によって特異ともいえる表現が追及され、一般誌では掲載不可能な作風を実現する作家も存在する。
アダルトビデオに於ける鬼畜系
V&Rプランニング
安達かおるが1986年に創業したアダルトビデオメーカーのV&Rプランニングはレイプ、スカトロ、蟲責めなどを題材にしたキワモノ系の異色作・問題作を1990年代に多数リリースして異彩を放ち、鬼畜ブーム時には『危ない1号』に特集が組まれるなどマニアの間で密かに注目を集めていた。
V&Rは当時台頭していた規制の少ないインディーズメーカーを差し置くほど過激極まりない作風で知られ[65]、当時加盟していた日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)からはしばしば発売禁止・審査拒否の対象となった。
例えば1993年に制作されたスカトロビデオ『ハンディキャップをぶっとばせ!』(監督:安達かおる)では身体障害者が出演したことが問題視されお蔵入りとなり[66]、平野勝之監督の『水戸拷悶2 狂気の選択』(1997年)では過激な描写を追求するあまり2名が負傷して3名が引退宣言し、撮影の舞台となった渋谷はパニック状態に陥り警察が出動する騒ぎとなった(当然ビデ倫からは「論外の外」と審査拒否されたため、自主規制した不完全版のみが流通した[67])。また下水道を舞台に撮影を敢行した平野監督の『ザ・ガマン』(1993年)でも警察官や水道局員が大挙する騒動に発展している[67]。
AV史上最大の問題作とされるバクシーシ山下監督のデビュー作『女犯』(1990年)は既存のレイプ作品では到底考えられないほど迫真に迫ったリアルな描写・演出から女性人権団体から抗議が殺到、社会問題化した[68]。しかし、後に山下が語るところによれば作品は意図的に後味の悪さを狙ったもので、事前に山下は本気で嫌がるよう女優に説明し、あえて男優にその事実を教えなかったという[68]。これらを踏まえて著作家の本橋信宏は「実際に弄ばれていたのは女優でなく男優だった」と述べている[68]。その後も山下は抗議に萎縮することなく、1992年には路上ドキュメント『ボディコン労働者階級』を監督し、山谷のドヤ街を舞台に日雇い労働者とAV女優との交接を描いたことで物議を醸すことになった[68]。ちなみに死体写真家の釣崎清隆は人権団体と争ってまで問題作を送り出すV&Rプランニングの姿勢に感銘を受け、過去にAV業界で活動していたこともある。
V&Rのスカトロ作品では井口昇監督・卯月妙子主演の『ウンゲロミミズ エログロドキュメント』(1994年)が最も有名で排泄物の食糞、塗糞、脱糞に始まり、嘔吐物やミミズまでを扱った過激な演出からマニアの間でカルト的な人気を集め、翌1995年には続編も制作された。
2004年にはV&Rプランニングの制作陣によってV&Rプロダクツが発足し、現在も事業を継続中である。なお、2015年には封印されていた障害者主演のスカトロビデオ『ハンディキャップをぶっとばせ!』がアップリンク渋谷で上映され、制作から22年目にしての解禁となった[69]。
バッキービジュアルプランニング
この節の加筆が望まれています。 |
アダルトアニメに於ける鬼畜系
この節の加筆が望まれています。 |
鬼畜系漫画家
この節の加筆が望まれています。 |
主に鬼畜系、陵辱系、猟奇系(リョナ)の漫画を執筆している漫画家・イラストレーターを生年順に挙げる。
1940年代生
- 花輪和一 - 丸尾末広と並ぶ「耽美系」「猟奇系」の作家であり、ベースとなるテーマが人間の「業」である作品が多い。著作に『赤ヒ夜』『月ノ光』『刑務所の中』『花輪和一初期作品集』(ともに青林工藝舎)などがある。
- 蛭子能収 - 『ガロ』1973年8月号掲載の入選作「パチンコ」で漫画家デビュー。つげ義春やATG映画に影響されたシュールで不条理なギャグ漫画や暴力的なモチーフを多用するダークな作風の漫画家で知られる。高杉弾・山崎春美編集の伝説的自販機本『Jam』『HEAVEN』でも執筆活動を行っていたほか、スーパー変態マガジン『Billy』(白夜書房)1982年3月号では山崎春美のスーパー変態インタビュー(遠藤ミチロウ、明石賢生に次いで3人目)にも応じている。主な作品集に『地獄に堕ちた教師ども』『私はバカになりたい』(ともに青林工藝舎)などがある。
1950年代生
- 平口広美
- 内山亜紀
- 丸尾末広 - 高畠華宵の影響を受けたレトロなタッチに幻想・怪奇・猟奇・グロテスクな描写を交えた過激な作風を特徴としている。代表作に『少女椿』(青林工藝舎)ほか多数。
- 森園みるく - 鬼畜系・電波系ライターの夫・村崎百郎が原作を担当し、妻の森園が作画を担当した漫画作品が多数ある。
- 根本敬 - 自称・特殊漫画家。東洋大学文学部中国哲学科中退。『ガロ』1981年9月号掲載の「青春むせび泣き」で漫画家デビュー。しばしば便所の落書きと形容される猥雑な絵柄と因果で不条理なストーリーで知られ、日本のオルタナティブ・コミックの作家の中でも最も過激な作風の漫画家である。『平凡パンチ』から『月刊現代』、進研ゼミの学習誌からエロ本まで活動の場は多岐に渡り、イラストレーションから文筆、映像、講演、装幀まで依頼された仕事は原則断らない。主著に『生きる』『因果鉄道の旅』『人生解毒波止場』『怪人無礼講ララバイ』『豚小屋発犬小屋行き』他多数。
- 海明寺裕
- 蛭児神建(文筆家・イラストレーター) - 主に幼女姦を主題にした猟奇的な官能小説やイラストおよび変質者ルックで知られた。
1960年代生
- 山野一(ねこぢるy) - 貧困や差別、電波、畸形、障害者などを題材にした作風を得意とする鬼畜系漫画家。立教大学文学部卒。四年次在学中、青林堂に持ち込みを経て『ガロ』1983年12月号掲載の「ハピネスインビニール」で漫画家デビュー。以後、各種エロ本などに特殊漫画を執筆。不幸の無間地獄を滑稽なタッチで入念に描いた作風が特徴的である。ちなみに青山正明は山野の才能を早くから認めており『危ない1号』第2巻には山野一ロングインタビュー(聞き手・構成/吉永嘉明)が掲載されている。鬼畜系の主著に『夢の島で逢いましょう』『四丁目の夕日』『貧困魔境伝ヒヤパカ』『混沌大陸パンゲア』『どぶさらい劇場』(すべて青林堂刊)が、双子女児の育児漫画に『そせじ』(Kindle)がある。なお山野の前妻で漫画家のねこぢるが自身の私生活を題材にしたエッセイ『ぢるぢる日記』には「鬼畜系マンガ家」である「旦那」が登場している[70]。
- ゴブリン森口
- 洋森しのぶ
- 町田ひらく - 少女を主人公とした、厭世観・無常観・失望感の漂う、空虚でリアリズムな作風の成人向け漫画が多い。
- 架空まさる
- 松永豊和
- 町野変丸
- 駕籠真太郎 - エログロ、ナンセンス、シュール、不条理、ブラックユーモアなどを得意とする奇想漫画家で、海外での評価も高い。
1970年代生
- 氏賀Y太 - 猟奇漫画家を自称しており、性表現のみならず四肢切断やカニバリズムなど猟奇的な題材を主眼とした暴力性・加虐性にあふれたスプラッターな作風で知られる。女子高生コンクリート詰め殺人事件など実際に起きた事件をモチーフにした『真・現代猟奇伝』は物議を醸した。
- 沙村広明
- 卯月妙子
- 玉置勉強
- 胃之上奇嘉郎(中村嘉宏)
1980年代生
1990年代生
生年不詳
- 朝凪
- 朝比奈まこと
- いトう
- オイスター - 広告媒体では「陵辱の帝王」と冠されるほど、作品の内容は女性への陵辱のみに徹しており、年齢層を問わずあらゆる女性が社会復帰不可能なほど精神的肉体的に破壊・陵辱される話が多い。
- OKINA
- 香愁(果愁麻沙美)
- カワディMAX - 孤児の少女が引き取られた親戚の伯父に性的虐待を受けるという漫画『コロちゃん』がネット上で話題となり、作中に登場する台詞「家族が増えるよ!!」「やったねたえちゃん!」はインターネットスラングとして定着するなど作品の代名詞となった。
- keny
- ゴージャス宝田
- 心島咲
- 冴樹高雄
- 坂辺周一
- ジョン・K・ペー太 - 異物挿入などハードなSMプレイの描写が多いが、非現実的な領域まで達してしまっている物がほとんどであり、ファンタジーもしくはギャグとも称される。
- ZUKI樹
- ぜろぽんち
- 仙道八
- ダーティ・松本
- 樽本一 - 1980年代に活動したスプラッタ系の美少女漫画家
- 茶否
- つくすん
- 774(ナナシ) - 現在は一般向け漫画に転向
- NABURU
- 猫頭巾
- 早見純 - 1980年代のエロ劇画界においてロリコン趣味や猟奇殺人などのタブーを、私小説の様に文学的な独白調かつ端正な劇画タッチで描き、残虐かつ救いの無いストーリーを圧倒的画力と迫力をもって描き出した昭和のエロ劇画界を代表する伝説的な鬼畜系漫画家。東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件に先駆けて少女趣味、ストーカー、のぞき、リストカット、SM、監禁、窒息レイプ、ひきこもり、バラバラ殺人など現代で起こりうる異常犯罪を予言していたかのような作品を発表していたが、前述の宮崎勤事件を契機に1989年頃から寡作になり、その後10年以上休筆していたが、大西祥平による再評価や復刻本刊行等によって2000年に再デビューを果たす。以降「伝説の猟奇エロ漫画家」「エロ漫画界の極北」「漫画界の暗黒大陸」として国内外で再評価が進んでいる。
- 風船クラブ
- 掘骨砕三
- 牧村みき(エル・ボンデージ)[71]
- 窓口基 - 人間を食肉として正確に調理する描写を得意とする漫画家。作品集に『カニバリズム!』(ジーウォーク)がある。
- みなすきぽぷり(椎木冊也)
- 目高健一[72]
- もりしげ(初期)
- 山本雲居
関連ライター
- 青山正明 - ドラッグ、ロリコン、スカトロ、フリークスからカルトムービー、テクノ、辺境音楽、異端思想、精神世界まで幅広くアングラシーンを論ずる鬼畜系文筆家の草分け的存在[73]。1980年代から1990年代のサブカルチャーに与えた影響は大きく、ドラッグに関する文章を書いた日本人ライターの中では、実践に基づいた記述と薬学的記述において特異であり快楽主義者を標榜していた。著書に『危ない薬』『青山正明全仕事』(ともにデータハウス刊)がある。2001年6月17日に首つり自殺。40歳没。
- 村崎百郎 - 鬼畜ライター。1990年代後半に「鬼畜系」「電波系」を標榜してゴミ漁りルポや電波にまつわるエッセイを執筆した。著書にゴミ漁りの手引書『鬼畜のススメ』(データハウス)や電波系にまつわる体系的な考察を行った単行本『電波系』(根本敬との共著/太田出版)がある。その後も村崎は虚実交えた寄稿を行った末、そのような表現に引きつけられた統合失調症の読者により48ヶ所を滅多刺しにされて2010年7月23日に殺害された。
- 石丸元章 - フリーライター。1990年代より日本のドラッグ・カルチャーを取材していたが、潜入取材の過程で自身も覚醒剤を使用し、1995年9月に覚醒剤取締法違反で現行犯逮捕された。一連の騒動を描いた、私小説的ノンフィクション『スピード』(文春文庫)はベストセラーとなった。
- 秋田昌美 - 世界的なノイズミュージシャンとして知られる一方でアングラシーンやスカム・カルチャーにも精通しており、性的倒錯や異端文化にまつわる学術的ないし書誌学的な研究書も多い。著書に『スカム・カルチャー』『ボディ・エキゾチカ』『アナル・バロック』など多数。また昭和初期のエログロナンセンス文化を代表する梅原北明、伊藤晴雨、中村古峡、斎藤昌三、酒井潔などの元祖鬼畜系文化人や当時発刊されていた変態雑誌などについては秋田の著作『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』(青弓社・1994年)に詳しい。
- 下川耿史 - 風俗史家。サンケイ新聞社を経てフリー編集者、家庭文化史、性風俗史の研究家として活躍中。スーパー変態マガジン『Billy』1984年9月号より「下川耿史の新・日本アウトサイダー列伝」を連載していた(第1回は「セクシー・フロイト」で山下省死、アルチュール・絵魔を紹介)。著書に『昭和性相史』『死体の文化史』『殺人評論』『日本残酷写真史』『盆踊り 乱交の民俗学』『混浴と日本史』『エロティック日本史』などがある。
- 梅原北明 - 編集者、翻訳家、性風俗研究家。大正後期から昭和初期にかけてのエログロナンセンス文化を牽引した中心人物であり、日本における悪趣味系サブカルチャーの先駆者として知られる。梅原が翻訳出版した『デカメロン』は当時ベストセラーとなった[74]。風俗壊乱罪で投獄された後、1928年より変態雑誌『グロテスク』を創刊、毎号当局より摘発され発禁処分を繰り返す。梅原は逮捕を免れるため満州で逃亡生活を送り、1931年まで同誌の刊行を続けた[75]。これ以外にも梅原は性風俗にまつわる書籍を多数刊行し、その大半が発禁となっている。
- 奥崎謙三 - 元大日本帝国陸軍上等兵、著述家、殺人犯。昭和天皇パチンコ狙撃事件やドキュメンタリー映画『ゆきゆきて、神軍』などで知られるアナキストで「神軍平等兵」「神様の愛い奴」を自称する。肩書は殺人・暴行・猥褻図画頒布・前科三犯・独房生活13年8カ月。著書に『ヤマザキ、天皇を撃て!』『田中角栄を殺すために記す』などがある。
- 根本敬 - 『ガロ』出身の漫画家、文筆家、随筆家、蒐集家、映像作家、人物研究家。独自の妥協を許さぬ特異な作風で「特殊漫画家」「特殊漫画大統領」の地位を確立する。また歌謡曲研究家としての顔も持ち「幻の名盤解放同盟」と称して昭和歌謡や辺境音楽の復刻活動も行っている。因果者・電波系人間探訪の権威であり、「因果者」「イイ顔」「電波系」「ゴミ屋敷」「特殊漫画」といったキーワードを案出するなど日本のオルタナティブ・コミックや悪趣味系サブカルチャーに与えた影響は大きい。主著に『生きる』『天然』『亀ノ頭のスープ』『怪人無礼講ララバイ』『因果鉄道の旅』『人生解毒波止場』『豚小屋発犬小屋行き』など多数。
- 高杉弾 - メディアマンを自称する編集者、ライター、評論家、AV監督。伝説的自販機本『Jam』『HEAVEN』初代編集長。青山正明を始めとして1970年代後半以降のバット・テイスト文化に多大な影響を与えた。本名は佐内順一郎。
- 佐川一政 - 日本の殺人犯、カニバリスト、エッセイスト、小説家、翻訳家。パリ人肉事件の犯人として知られる。
- 釣崎清隆 - 死体写真家。世界各国の犯罪現場や紛争地域を取材し、これまでに撮影した死体は1000体以上に及ぶ。中南米の麻薬組織を取材する過程で自身も覚醒剤を使用し、2017年8月に覚醒剤取締法違反で現行犯逮捕された[76]。
- 小林小太郎 - スーパー変態マガジン『Billy』(白夜書房)編集長。編集プロダクション「VIC出版」主宰。1990年代には『TOO NEGATIVE』(吐夢書房)の編集長を務め、死体写真家の釣崎清隆を同誌でデビューさせている。
- 柳下毅一郎 - 殺人研究家。翻訳家としても活動しており、普通の翻訳家が取り扱わない特殊な文献や文学作品を好んで翻訳することから「特殊翻訳家」を自称する。
- ドクタークラレ - 『危ない28号』(データハウス)初代編集長。上梓した刊行物の多くが有害図書指定を受けていることでも知られる。また薬理凶室のリーダーとして『図解アリエナイ理科ノ教科書』(三才ブックス)シリーズも執筆している。
- クーロン黒沢 - ノンフィクションライター。海賊版・違法コピーにまつわる書籍やアジアを舞台としたアングラな旅行記の執筆活動を行った。
- バクシーシ山下 - AV監督、文筆家。旧所属はV&Rプランニング。衝撃的なデビュー作『女犯』は余りにリアルな作風からフェミニズム団体から抗議を受けるなど物議を醸した[77]。また山谷のドヤ街でAV女優と日雇い労働者の情交を描いた『ボディコン労働者階級』をはじめ『実録妖怪ドキュメント 河童伝説』『熟女キョンシー』などの怪作も多数。
- 白井智之 - 推理作家。特殊な舞台設定や破天荒かつ不道徳な世界観で知られ「鬼畜系特殊設定パズラー」の異名を持つ[78]。著書に『人間の顔は食べづらい』『東京結合人間』『おやすみ人面瘡』『少女を殺す100の方法』などがある。
- 友成純一 - 官能小説家、映画評論家。スーパー変態マガジン『Billy』(白夜書房)での執筆活動を経て1985年に『肉の儀式』(ミリオン出版)で小説家デビュー。悪趣味系の小説家で知られ、変態性欲やスプラッタに主眼を置いた猟奇的な作風を得意とする。
- 平山夢明 - 実話怪談や鬼畜系の短編小説で知られるホラー小説家。一般的に「鬼畜系作家」とされている[注 3]。映画評論家としてはデルモンテ平山名義でも活動。代表作品集『独白するユニバーサル横メルカトル』収録の『無垢の祈り』は亀井亨監督によって映画化されている。しかし児童虐待や新興宗教、連続殺人などがテーマであるため各国の映画祭からは出展を断られ続けており、結果的にR18+指定映画として2016年に国内で初上映され、アップリンク渋谷では13週ロングランを記録した[79]。現在はUPLINK Cloudより視聴可能である[79]。
- ジャック・ケッチャム - アメリカ合衆国の鬼畜系ホラー小説家[80]。人間の弱さや残虐性を浮き彫りにする作風で知られており、重苦しい陰鬱な物語展開のうえカタルシスや救いの無い結末が多く、スティーブン・キングに「正真正銘の偶像破壊者」と賞賛された[81]。著名な作品に実際にあった少女監禁事件を題材にした『隣の家の少女』や食人族をモチーフにした衝撃的なデビュー作『オフシーズン』などがある。
- 綺羅光 - 官能小説家。一貫して凌辱物を書いており、作品中には薬物や暴力団が登場することも多い。救いのない結末が多く、陰鬱なもの、タブーとされるものが多く描写される。
- 村田らむ - ルポライター。ホームレスをテーマにしたルポルタージュが多く、2001年にデータハウスから上梓した単行本『こじき大百科―にっぽん全国ホームレス大調査』は労働団体から差別であると抗議を受けた結果、絶版になった[82]。2005年に竹書房から発行した『ホームレス大図鑑』でも同じ結果になっている。2013年には鹿砦社から『ホームレス大博覧会』を上梓した。
- 松沢呉一 - 編集者、フリーライター、性風俗研究家、古本蒐集家。著書に『ぐろぐろ』(ちくま文庫)などがある。
- 吉永嘉明 - 鬼畜系ムック『危ない1号』(データハウス)副編集長。著書に『自殺されちゃった僕』(飛鳥新社/幻冬舎アウトロー文庫)がある。
関連雑誌
休廃刊
- グロテスク - 昭和初期のエログロナンセンス文化を代表するサブカルチャー専門誌。編集長は梅原北明。1928年(昭和3年)創刊。当局より幾度となく弾圧や発禁処分を受けながらも、グロテスク社、文藝市場社、談奇館書局など発行所を変えつつ1931年(昭和6年)まで全21冊が出版された。2015年にはゆまに書房より全10巻で復刻刊行されている[83]。
- 奇譚クラブ - 1947年創刊のカストリ雑誌。不定期刊行を経てSM系月刊誌となる。GHQや当局からの発禁処分を度々受けた影響から曙書房、天星社、暁出版と発行所を変え1983年まで刊行された。著名な掲載作品に団鬼六の『花と蛇』や沼正三の『家畜人ヤプー』などがある。
- 月刊漫画ガロ - 1964年から2002年まで青林堂が刊行していた漫画雑誌。漫画界の極北に位置する伝説の漫画雑誌であり、サブカルチャーの総本山として漫画界の異才・鬼才をあまた輩出した。1998年からは青林堂の系譜を引き継いだ青林工藝舎が事実上の後継誌『アックス』を隔月刊行中。
- Jam - 1979年2月創刊の自販機本。初代編集長は高杉弾。創刊にあたって実行された「山口百恵宅のゴミ漁り」(有名芸能人の使用済み生理用品をグラビアで無断公開する鬼畜企画シリーズ第2弾 ※第1弾はかたせ梨乃)で名を轟かせる。以後ドラッグやインディーズパンク、カウンターカルチャーの記事のほか、この世のものとも思えぬ冗談企画を連発するなどパンクな誌面を展開した。1980年にエルシー企画とアリス出版が合併したことを機に『HEAVEN』と改題して1981年3月まで続刊。なお本誌は青山正明や村崎百郎らにも多大な影響を与えており、鬼畜系サブカルチャーのルーツとみなされている[10]。
- HEAVEN - 『Jam』の後継誌として1980年4月に創刊。3代目編集長は山崎春美。1980年代を代表する伝説的なニューウェーブ雑誌として知られる[84]。キャッチコピーは「空中楼閣的天眼通」。
- 突然変異 - 青山正明が慶應義塾大学在学中の1981年4月に創刊した変態ミニコミ誌。本誌は伝説的自販機本『Jam』『HEAVEN』の影響を大きく受けており[85]、小学校の盗撮や差別用語のクロスワードパズルなどの鬼畜企画を始め、奇形・障害者から皇室揶揄まで幅広くタブーを扱った[86]。当時のロリコンブームに乗ってメディアからの取材が殺到。熱狂的な読者を獲得したものの『突然変異』に嫌悪感を抱いた椎名誠が朝日新聞紙上で批判文を発表。抗議や脅迫の電話が殺到し、わずか4号で休刊に追い込まれた。キャッチコピーは「脳細胞爆裂マガジン」「ペーパードラッグ」。
- Hey!Buddy - 白夜書房が発行していたポルノ雑誌。1980年7月創刊。1982年春から明確なロリコン路線に移行してブームの過熱を煽り、最盛期には8万部を売り上げた。読者投稿の写真コーナーも充実しており、3年余りで7万2000枚もの写真が編集部に寄せられた[87]。しかしその内容には、少女を物陰に連れ込んで撮影した「いたずら写真」のコーナーなど明らかな犯罪行為も多く含まれていた[88]。別冊の投稿写真集『少女アングル』が当局から警告を受け[89]、同じく増刊『ロリコンランド』が発禁となり、『Hey!Buddy』本誌も1985年11月号をもって廃刊となった[90]。
- Billy - 白夜書房が発行していたポルノ雑誌。1981年6月創刊。スカトロから死体・獣姦・ロリコン・ドラッグ・フリークスまで悪趣味の限りを尽くした伝説的な変態雑誌であり、エロ本とはいえ商業誌としては斬新な異端ネタが満載だった[91]。都条例のため1984年12月より『Billyボーイ』と新創刊したが全く内容が変わっておらず、条例違反により1985年8月号をもって再度廃刊となった[18]。キャッチコピーは「スーパー変態マガジン」。
- プチ・パンドラ - 一水社が発行していたアングラなロリコン漫画雑誌(雑誌コードが取られていないため正確にはムック本である)。季刊・隔月刊・不定期刊を経て全12冊を刊行した。編集長は日本初のロリコン文芸誌『愛栗鼠』およびロリコン漫画同人誌『シベール』を創刊した蛭児神建。
- BD - 1993年1月創刊のミニコミ誌。『突然変異』の影響を色濃く受けており、結果的に1990年代の悪趣味ブームを先取りした。編集長はデザイナーのこじままさき。吉田豪、早川いくを、枡野浩一、リリーフランキー、根本敬らが寄稿し、全15号を発行(1・3・4号は欠番[92])。
- 宝島30 - 宝島社発行の月刊オピニオン雑誌。初代編集長は町山智浩。1993年6月創刊。政治からサブカルチャーまでテーマは広く、オウム特集や『SPA!』決別時の小林よしのりインタビュー、根本敬の連載『人生解毒波止場』など攻めた内容が多い。爆笑問題が連載していたコラム『爆笑問題の日本原論』は30万部を超えるベストセラーにもなった。1993年8月号では宮内庁守旧派による皇室内幕の告白手記を掲載し、右翼による銃撃事件に発展した[93]。1996年6月休刊。
- TOO NEGATIVE - 吐夢書房発行の隔月刊雑誌。初代編集長は元『Billy』編集長の小林小太郎。本誌では1990年代の『Billy』を標榜し、SM・ボンデージを主軸にしつつ撮り下ろしの死体写真も多数掲載して死体写真家の釣崎清隆を輩出した。1994年10月から2000年1月まで発禁による中断を挟みながら全13冊を刊行したが、新創刊した7号(1997年1月)以降、小林は編集に関わっていない[25]。キャッチコピーは「禁じられた絵本」。
- GON! - ミリオン出版が1994年から2001年にかけて発行していたサブカルチャー系の月刊誌。ヤンキー雑誌『ティーンズロード』(ミリオン出版)編集者の比嘉健二によって創刊された。東京スポーツ新聞のB級ニュースやフェイク記事のみをかき集めて独立した雑誌にしたような内容で、海外タブロイド誌『Wilkly World News』の日本的解釈のもと創刊された。主にコンビニルートで全国的に流通し、悪趣味系雑誌では最も広く読まれたとみられる。また印字級数は極小で、内容の無意味ぶりに比して情報密度は非常に高かったのも特徴である。誌面では死体写真や仰天ニュースの類がよく掲載されており、びっくり箱を具現化したようなインパクト重視の誌面となっている(ただし『世紀末倶楽部』編集人の土屋静光は「たんなるアメリカン・ジョークのビジュアル化に過ぎず、悪趣味というタームからはズレるだろう」と評している)[94]。本誌は村崎百郎の活動拠点となり、月刊ペースで「汚物童子・村崎百郎の勝手に清掃局/隣の美女が出すゴミ」というゴミ漁りの連載を行なっていたことから同誌で村崎を知った読者も多い。その後は亜流誌『BUBKA』(コアマガジン→白夜書房)も登場するに至った。しかし鬼畜ブームが去ったのち『GON!』は徐々に内容がソフト化し『BUBKA』もアイドル雑誌となる。のちに『GON!』は『実話ナックルズ』に発展するが「B級の実話誌」という点を除けば、ほぼつながりは存在しない。
- 危ない1号 - 悪趣味ブームの原点とされている鬼畜系ムック。初代編集長は青山正明。「妄想にタブーなし」を謳い文句に数多くの悪趣味を扱った。1995年7月創刊。東京公司編集/データハウス発行。
- 危ない28号 - データハウスが発行していたムック。ハッキングや兵器、ドラッグなど、実行すれば犯罪者になってしまいそうな情報が満載であり、結果全国18都道府県で有害図書指定された[95]。2000年1月に浦和駅、東海村、大阪府で発生した一連の爆弾事件で、犯人が同誌を参考に爆発物を製造したと供述したため[96]、刊行済みだった第5巻を最後に廃刊を余儀なくされる。
- BURST - かつてコアマガジンから発行されていたカウンターカルチャー雑誌。死体写真、タトゥー、スカトロ、違法薬物、身体改造までアングラな題材を中心に扱った。1995年に隔月誌として創刊され、1999年から月刊化する。派生誌に『TATTOO BURST』(1999年 - 2012年)、『BURST HIGH』(2001年 - 2008年)、東京キララ社発行の『BURST Generation』(2018年 - )がある。本誌『BURST』は2005年に休刊。
- 世紀末倶楽部 - 1996年に創刊されたコアマガジン発行のムック。見世物小屋的な扇情主義の編集方針で、死体や奇形などの猟奇写真を大量に掲載しており、ほぼフリークスの写真集となっている。第2巻には『危ない1号』編集長の青山正明によるインタビューとフリークス映画の全ガイドが掲載されており、当時の鬼畜/悪趣味ブームの集大成的な内容となっている[97]。1999年までに全4冊が不定期刊行され、2000年のCD-ROM版を最後に事実上の終刊。
- COMIXフラミンゴ - かつて三和出版が発行していた特殊エロマンガ誌。町野変丸・TAGRO・しのざき嶺・駕籠真太郎といったSM・鬼畜・サブカル・アングラ系の異色作家が数多く寄稿した。2000年10月号を以って休刊。
- 激しくて変 - かつて光彩書房が発行していた鬼畜系アンソロジーコミック。2000年創刊。編集兼発行人は多田在良。主な執筆陣は早見純、町田ひらく、沙村広明、玉置勉強、町野変丸、ほりほねさいぞう。4巻以降は『暗黒抒情』『知的色情』『Hのある風景』とタイトルを変えながら全12冊を刊行[98]。2004年終刊。
刊行中
- コミックMate - 一水社発行の鬼畜SMコミック。1992年9月創刊。2015年から『コミックMate L』に改題し隔月刊行中。
- エログロス - 氏賀Y太が発案したリョナ系アンソロジーコミック。ジーウォーク発行。2017年8月創刊。主な執筆陣は氏賀Y太、掘骨砕三、つくすん、ぜろぽんち、桃色卍流、ai7n、猫頭巾ほか。
関連項目
- エログロ
- スカム
- リョナ
- 電波系
- ゴミ漁り
- 自販機本
- 見世物小屋
- カストリ雑誌
- 美少女ゲーム
- レイプレイ
- サイコパス
- ホームレス
- データハウス
- 危ない1号
- 東京公司
- 1995年
- 宮崎勤
- ロリコン
- 白夜書房
- 別冊宝島
- ガロ系
- 水地獄
- バッキー事件
- 鬼畜大宴会
- オールナイトロング
- V&Rプランニング
- エログロナンセンス
- 神戸連続児童殺傷事件
- 穴留玉狂
関連書籍
- 青山正明『危ない薬』データハウス 1992年11月
- 鶴見済『完全自殺マニュアル』太田出版 1993年7月
- 鶴見済編『ぼくたちの「完全自殺マニュアル」』太田出版 1994年2月
- 秋田昌美『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』青弓社 1994年9月
- マガジンハウス『BRUTUS』1995年3月15日号「特集・インモラル図書館へようこそ!」
- 青土社『ユリイカ』1995年4月臨時増刊号「総特集=悪趣味大全」
- 宮台真司『終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル』筑摩書房 1995年7月(1998年3月に同社より文庫化)
- 竹熊健太郎『私とハルマゲドン―おたく宗教としてのオウム真理教』太田出版 1995年11月(2000年7月に筑摩書房より文庫化)
- 別冊宝島228『死体の本―善悪の彼岸を超える世紀末死人学!』宝島社 1995年8月
- 別冊宝島250『トンデモ悪趣味の本―モラルそっちのけの,BADテイスト大研究!』宝島社 1996年3月
- 別冊宝島281『隣のサイコさん―電波系からアングラ精神病院まで!』宝島社 1996年11月
- 別冊宝島356『実録!サイコさんからの手紙―ストーカーから電波ビラ、謀略史観まで!』宝島社 1998年1月
- 村崎百郎『鬼畜のススメ―世の中を下品のどん底に叩き堕とせ!! みんなで楽しいゴミ漁り』データハウス 1996年7月
- 東京公司+鬼畜ナイト実行委員会『鬼畜ナイト―新宿でいちばんイヤ~な夜』データハウス 1996年8月
- 根本敬+村崎百郎『電波系』太田出版 1996年9月
- 青山正明『危ない1号』第4巻「特集/青山正明全仕事」データハウス 1999年9月
- 桃園ムック92『鬼畜系美少女ゲーム攻略200連発』桃園書房 2002年2月
- 青土社『ユリイカ』2005年4月臨時増刊号「総特集=オタクVSサブカル!」
- アスペクト編『村崎百郎の本』2010年12月
- 『Quick Japan』Vol.135 太田出版 2017年12月
- ケロッピー前田責任編集『BURST Generation 01』東京キララ社 2018年12月
- 木澤佐登志『ダークウェブ・アンダーグラウンド 社会秩序を逸脱するネット暗部の住人たち』イースト・プレス 2019年1月
- ロマン優光『90年代サブカルの呪い』コアマガジン 2019年3月
- 香山リカ『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論』太田出版 2019年3月
参考文献
- 青林堂『月刊漫画ガロ』1993年9月号「特集/三流エロ雑誌の黄金時代」
- コアマガジン+世紀末倶楽部編集部『世紀末倶楽部』Vol.2「総力特集/地下渋谷系―恐怖!怪奇!猟奇!残酷!ショック大全科」
- 扶桑社『SPA!』1995年11月1日号特集「電波系な人々大研究──巫女の神がかりからウィリアム・バロウズ、犬と会話できる異能者まで」
- 扶桑社『SPA!』1995年9月20日号特集「最低・最悪 モンド・カルチャーの正体」
- 扶桑社『SPA!』1996年12月11日号特集「鬼畜たちの倫理観──死体写真を楽しみ、ドラッグ、幼児買春を嬉々として語る人たちの欲望の最終ラインとは?」
- アスキー『週刊アスキー』1997年7月28日号「特集/検証・ジャンク・カルチャーと酒鬼薔薇の危険な関係」
- 別冊宝島345『雑誌狂時代!―驚きと爆笑と性欲にまみれた〈雑誌〉というワンダーランド大研究!』宝島社 1997年11月
- コアマガジン『BURST』2000年1月号「特集/90年代式幽霊列車の葬送──世紀末トラッシュ・カルチャー10年間の総括」
- 土屋静光(『世紀末倶楽部』編集長)「悪趣味雑誌/ゴミ、クズ、カスのお宝雑誌」
- 太田出版『アウトロー・ジャパン』第1号 2002年1月 166-173頁
- 吉永嘉明『自殺されちゃった僕』飛鳥新社 2004年11月/幻冬舎アウトロー文庫 2008年10月
- ばるぼら『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』翔泳社 2005年5月
- 流行通信『STUDIO VOICE』2006年12月号特集「90年代カルチャー完全マニュアル」
- 村崎百郎「今こそ『鬼畜』になれ! 『アングラ/サブカル』が必要なわけ」
- NHK教育テレビ『ニッポン戦後サブカルチャー史Ⅲ』
- 第4回(最終回)サブカルチャーが迎えた「世紀末」 NHK公式サイト 2016年6月19日放送
- エディトリアル・デパートメント/幻冬舎『スペクテイター』39号「パンクマガジン『Jam』の神話」2017年6月
- ばるぼら+さやわか『僕たちのインターネット史』亜紀書房 2017年7月
- “ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界”. ばるぼら. S&Mスナイパー (2008年3月23日). 2017年6月17日閲覧。
- “吉永嘉明氏インタビュー”. ばるぼら. S&Mスナイパー (2008年5月18日). 2017年9月15日閲覧。
- 村崎百郎(黒田一郎)が遺したオウム論「ゲス事件/ゲスメディア/ゲス視聴者」「導師(グル)なき時代の覚醒論」
- 曽根賢(Pissken)のBurst&Ballsコラム「90年代悪趣味サブカルチャー誌について」 - 元『BURST』『BURST HIGH』編集長ピスケンのブログ
脚注
注釈
- ^ 日本のサブカルチャーに「MONDO」という概念・用語を輸入したのは伝説的自販機本『Jam』『HEAVEN』初代編集長の高杉弾であるといわれている。ちなみに高杉は「MONDO」に一番近い日本語として「ひょっとこ」を挙げている。
- ^ 当初犯人は特殊漫画家の根本敬を殺害する予定であったが、根本が不在だったため『電波系』(太田出版)の共同執筆者であった村崎の自宅に向かったという。
- ^ 「鬼畜系作家」というのは自称でなく通称であり、京極夏彦の対談では「鬼畜系作家」でなくハートレスな「キクチ系作家」として呼んで欲しいとのこと。
京極:平山さんは、いうなれば鬼畜系ですよね。
平山:それを言われると嫁が泣く(笑)。ネットで「鬼畜系作家」と書かれているのを読んで、「あなた鬼畜系なの?私は鬼畜の嫁なの?」って泣いたんだよね(笑)。まあいいんだけど、漢字だと重たいから、できればカタカナにしてもらえたら(笑)。
京極:表記の問題なのか(笑)。でも音で区別はつかないから。発音を変えて対談するしかないじゃないですか。「キチク」……「キクチ」ならいい?
平山:そうそう、「キチク」とか「キクチ」とか……「キクチ」だね。
京極:じゃあ「キクチ」系にしましょう(笑)。で、「キクチ」系作家の平山夢明さんとしては、ハートフルな小説というのはあまりお書きになりませんね?ハートレスですよね(笑)。
平山:ハートレスだね。(中略)僕が書くこわい話なんかは、どっちにしろ死んでるやつのほうが多く出てくるわけ。そういう生き物より死人のほうが多いような小説はともかく(笑)。でも、そうじゃない小説って、みんな愛の方向にもっていくでしょう?
京極:もっていきがちですわね、愛の方向に。
平山:愛なんて所詮、算数でいうゼロみたいなもの。幸も不幸もゼロを掛ければみんな同じ。駆け込み寺みたいな安易な逃げ場所なんだけど、酷いことを書いて、そのまんまで終わらせちゃうとだいたい鬼畜系作家とか言われちゃうわけだよね。
出典
- ^ 秋田昌美『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』青弓社 1994年9月 53頁。
- ^ 秋田昌美『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』青弓社 1994年9月 56頁。
- ^ 「公敵」としてのコンテクストメイカー梅原北明『殺人會社』『文藝市場宣言』『火の用心』『ぺてん商法』【FIGHT THE POWER】
- ^ a b 梅原正紀『えろちか No.42 エロス開拓者 梅原北明の仕事』三崎書房 1973年1月
- ^ 秋田昌美『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』青弓社 1994年9月 51頁。
- ^ 斉藤昌三『三十六人の好色家―性研究家列伝』創芸社 1956年
- ^ 秋田昌美『性の猟奇モダン―日本変態研究往来』青弓社 1994年9月 63頁。
- ^ “現代の映画とセックス 人間の深奥へ ますます大胆な追求”. 読売新聞 夕刊 (東京): pp. 9. (1970年3月7日)
- ^ a b c 記憶のかさブタ 幻のポルノアニメ特集
- ^ a b 太田出版『Quick Japan』19号、198頁。
- ^ 蓮實重彦、鬼畜系、麻原彰晃、あるいは2つの共時性を巡って - ゲンロンスクール
- ^ 赤田祐一「──はじめに」『SPECTATOR』vol.39「パンクマガジン『Jam』の神話」p.30-35 幻冬舎 2017年
- ^ 大塚英志『「おたく」の精神史 一九八〇年代論』星海社文庫 2016年3月 18頁
- ^ 青林堂『月刊漫画ガロ』1997年3月号「僕と私の脳内リゾート―ブレイン・リゾーター高杉弾とメディアマンのすべて」46頁
- ^ 吉永嘉明『自殺されちゃった僕』(幻冬舎アウトロー文庫)第3章「青山正明の思い出」の中「幻のキャンパス・マガジン」より。
- ^ 天才編集者 故青山正明インタビュー 平野悠. BURST 2000年9月号
- ^ ばるぼら「『Jam』創刊号を完読してみる」『SPECTATOR』vol.39「パンクマガジン『Jam』の神話」p.50-65 幻冬舎 2017年
- ^ a b ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第37回「変態雑誌ビリーにおける青山正明」
- ^ a b c d e f ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第18回
- ^ ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第1回
- ^ ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第13回
- ^ ジェーン&マイケル・スターン著・伴田良輔訳『悪趣味百科』(新潮社 1996年)「序文」と「訳者あとがき」より。
- ^ a b 吉永嘉明『自殺されちゃった僕』(幻冬舎アウトロー文庫)第3章「青山正明の思い出」の中「『危ない1号』の創刊」より。
- ^ 扶桑社『SPA!』1996年12月11日号 青山正明×村崎百郎「鬼畜カルチャーの仕掛け人が語る欲望の行方」
- ^ a b c d e f g h i j ばるぼら『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』翔泳社、2005年5月、ISBN 978-4798106571
- ^ 村崎百郎『鬼畜のススメ 世の中を下品のどん底に叩き堕とせ!! みんなで楽しいゴミ漁り』データハウス 1996年 著者略歴
- ^ ロフトプラスワン・今は亡き伝説の一日店長たち/第1回 青山正明(編集者・『危ない1号』編集長)
- ^ 扶桑社『SPA!』1996年12月11日号特集「鬼畜たちの倫理観──死体写真を楽しみ、ドラッグ、幼児買春を嬉々として語る人たちの欲望の最終ラインとは?」
- ^ ロマン優光のさよなら、くまさん 連載第127回 90年代死体ブーム - ブッチNEWS 2019年1月25日
- ^ a b c d ニッポン戦後サブカルチャー史Ⅲ90'sリミックス 第4回(最終回)サブカルチャーが迎えた「世紀末」 - NHK公式サイト
- ^ マイクロソフトは1995年にWindows 95日本語版を発売。同年の新語・流行語大賞のトップテンには「インターネット」が選出されている。
- ^ 遊園地再生事業団と主宰・宮沢章夫のサイト
- ^ “サリン、STAP、佐村河内守…事件のたびに作られる“不謹慎ゲーム”とは?”. TOCANA (2016年4月2日). 2019年5月8日閲覧。
- ^ 高杉弾年譜
- ^ ばるぼら+さやわか『僕たちのインターネット史』亜紀書房、2017年7月、75頁。
- ^ くられのツイート 2016年2月16日
- ^ “東海村爆発物事件 爆発物マニュアル本 県内の書店で撤去の動き=群馬”. 読売新聞 朝刊 (東京): pp. 35. (2000年1月15日)
- ^ ドクタークラレのWebサイト - ウェイバックマシン(2016年4月5日アーカイブ分)
- ^ ばるぼら+さやわか『僕たちのインターネット史』亜紀書房、2017年7月、93頁。
- ^ “文章力もセンスもある...が、元少年Aが"サブカル不快感野郎"である紛れもない理由”. エキサイトニュース (2015年10月22日). 2019年5月8日閲覧。
- ^ イメージの治癒力──「諦観」と「リズム」でハイな毎日を 青山正明. BURST 2000年9月号
- ^ 『週刊新潮』2010年8月5日号「包丁男に48ヶ所滅多刺しにされた“鬼畜作家”村崎百郎」134-135頁。
- ^ … 町山智浩ホームページ 2010年12月4日/根本敬 『人生解毒波止場』 幻冬舎文庫 2010年 286-288頁。
- ^ 宝島社『宝島30』1994年9月号
- ^ 中森明夫のツイート 2014年8月17日
- ^ のちに村崎百郎が編集した幻の名盤解放同盟の単行本『夜、因果者の夜』(1997年11月・ペヨトル工房)に再録。
- ^ 宝泉薫『平成の死 追悼は生きる糧』KKベストセラーズ、2019年5月、305-306頁
- ^ ばるぼら+加野瀬未友「オタク×サブカル15年戦争」(青土社『ユリイカ』2005年8月臨時増刊号「総特集=オタクVSサブカル! 1991→2005ポップカルチャー全史」114頁)
- ^ “【閲覧注意・インタビュー】ウンコ、SM、奇形・障害者AV…鬼のドキュメンタリスト・安達かおるのリアル”. 安達かおる. TOCANA (2017年3月23日). 2019年7月10日閲覧。
- ^ ミリオン出版『実話ナックルズ』2008年10月号 死体カメラマン 釣崎清隆インタビュー「遙かコロンビアの戦友《とも》よ」
- ^ 遊撃隊逮捕の顛末 - (C)怪文書保存館
- ^ 太田出版『Quick Japan』vol.4「『魔法使いサリン』事件・発行人インタビュー もうひとつの“サリン”事件、当事者が語るその真相」(近藤正高)25-29頁
- ^ 宝島社『宝島30』1994年7月号、104-105頁、と学会「今月のトンデモ本」
- ^ ロマン優光『90年代サブカルの呪い』コアマガジン、2019年、128頁
- ^ アスペクト編『村崎百郎の本』根本敬インタビュー「村崎さんには“頑張れ”という言葉が相応しい、というか、これしかない」2010年
- ^ ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第84回 こじままさきインタビュー part3
- ^ “舌や足首を切断…! 主演女優が自殺した封印AV映像『肉だるま』の恐怖”. 天野ミチヒロ. TOCANA (2018年3月25日). 2019年7月10日閲覧。
- ^ 香山リカ『ヘイト・悪趣味・サブカルチャー 根本敬論』(太田出版)第4章「『ディープ・コリア』論争2018」
- ^ a b c ケロッピー前田責任編集『バースト・ジェネレーション』(東京キララ社)創刊号、90-93頁、座談会「90年代カウンターカルチャーを振り返る」
- ^ ロマン優光『90年代サブカルの呪い』コアマガジン、2019年、55-57頁「『ディープ・コリア』再考」
- ^ “データハウス社長・鵜野義嗣インタビュー 「悪の手引書」編み出した男の強烈なとがり方”. 村田らむ. 東洋経済オンライン (2018年3月25日). 2019年7月10日閲覧。
- ^ 高橋直樹『エロ萌え☆テクニック~はぁはぁテキストのお作法~』双葉社 2011年 37頁。
- ^ 本田透『萌える男』ちくま文庫 2005年 158頁。
- ^ 「男たちが群がる『監禁ワールド』をのぞいてみた!連続する監禁事件」『週刊朝日』2005年6月3日号、pp.126-129
- ^ こじままさき「ウンコ、ゲロ、低能、病原菌……キワモノ系変態ビデオを正視せよ!」『危ない1号』第2巻、34 - 35頁。
- ^ 青山正明「全盲青年がウンコ喰らって勃起する!!『ハンディキャップをぶっとばせ!~僕たちの初体験~』」『危ない1号』第2巻、70 - 71頁。
- ^ a b “80-90年代平野勝之鬼畜大特集上映”. アップリンク (2013年). 2018年1月27日閲覧。
- ^ a b c d “史上最大の問題作『女犯』弄ばれていたのは男優だった”. 本橋信宏. NEWSポストセブン (2016年8月24日). 2018年1月27日閲覧。
- ^ “カンパニー松尾やバクシーシ山下の師・安達かおるの発禁作、20年の沈黙破り上映”. 映画ナタリー (2015年8月6日). 2018年1月27日閲覧。
- ^ ねこぢる『ぢるぢる日記』(二見書房 1998年)75頁。
- ^ “しずかちゃんが黒ベエに犯され喰われる──真のパロディ作家:エル・ボンテージの底知れぬヒロイン愛”. 昼間たかし. おたぽる (2016年1月6日). 2017年6月29日閲覧。
- ^ 単行本発売記念インタビュー!! 第3回「乳欲児姦と目高健一先生」 - ウェイバックマシン(2006年10月4日アーカイブ分)
- ^ BURST 2001年9月号.吉永嘉明×木村重樹×園田俊明「鬼畜系ライターの草分け的存在・天才編集者 青山正明追悼座談会」
- ^ 刊行後すぐ発禁となり改訂を余儀なくされた。
- ^ “【日本のアダルトパーソン列伝】「変態」を追究した編集者にしてジャーナリスト・梅原北明”. 橋本玉泉. メンズサイゾー (2011年9月30日). 2017年9月11日閲覧。
- ^ “「麻薬組織取材で勧められ」 写真家、覚醒剤所持の疑い”. 朝日新聞DIGITAL. (2017年8月3日) 2017年9月11日閲覧。
- ^ “史上最大の問題作『女犯』 弄ばれていたのは男優だった”. 本橋信宏. NEWSポストセブン (2016年8月24日). 2017年9月11日閲覧。
- ^ “綾辻行人氏命名!“鬼畜系特殊設定パズラー”白井智之が放つ異形の本格ミステリ『東京結合人間』、9月30日解禁!!”. 2017年11月12日閲覧。
- ^ a b 平山夢明の人気原作を監督・亀井亨が容赦なく映画化!『無垢の祈り』 - UPLINK Cloud
- ^ ジャック・ケッチャムの鬼畜な世界 - All About
- ^ ジャック・ケッチャム著、金子浩訳『隣の家の少女』(扶桑社)解説/スティーブン・キング
- ^ 四国新聞 2001年7月14日号「ホームレス差別で新刊回収/データハウス社、絶版に」
- ^ 叢書エログロナンセンス 第Ⅰ期 グロテスク 全10巻+補巻 - ゆまに書房
- ^ “幻の自販機本『HEAVEN』にUGルーツを追え!”. Cannabis C4. BLUEBOX (2001年11月18日). 2017年6月17日閲覧。
- ^ 青山正明は『別冊宝島345 雑誌狂時代!』(宝島社 1997年)掲載の永山薫との対談記事の中で「面白かった時代っていうと、やっぱり『ジャム』『ヘヴン』の頃。要するに、エロとグロと神秘思想と薬物、そういうものが全部ごちゃ混ぜになってるような感じでね。大学生の頃にそこらへんに触れて、ちょうど『ヘヴン』の最終号が出たくらいのときに、『突然変異』の1号目を作ったんです」と語っている。
- ^ 吉永嘉明『自殺されちゃった僕』(幻冬舎アウトロー文庫)第3章「青山正明の思い出」の中「幻のキャンパス・マガジン」より。
- ^ ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第30回「ロリコンにおける青山正明(2)」
- ^ 『宝島30』1994年9月号(宝島社)青山正明×志水一夫×斉田石也「受験と女権とロリータ文化」138-145頁。
- ^ 『宝島30』1994年9月号(宝島社)青山正明「ロリータをめぐる冒険」167頁。
- ^ ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第11回
- ^ BLACK BOX:鬼畜 =ビリー=
- ^ ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第83回「こじままさきインタビュー」part2
- ^ 町山智浩ホームページ内 2010年12月04日付/根本敬『人生解毒波止場』幻冬舎文庫、2010年、pp.286-288
- ^ コアマガジン『BURST』2000年1月号「特集/90年代式幽霊列車の葬送──世紀末トラッシュ・カルチャー10年間の総括」より土屋静光(『世紀末倶楽部』編集長)「悪趣味雑誌/ゴミ、クズ、カスのお宝雑誌」
- ^ ドクタークラレのWebサイトより。
- ^ “東海村爆発物事件 爆発物マニュアル本 県内の書店で撤去の動き=群馬”. 読売新聞 朝刊 (東京): pp. 35. (2000年1月15日)
- ^ ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第19回
- ^ アンソロジー『激しくて変』シリーズ
外部リンク
この節の外部リンクはウィキペディアの方針やガイドラインに違反しているおそれがあります。 |
- 村崎百郎WEBサイト
- BLACK BOX PANDORA - 鬼畜系書籍の紹介サイト
- 平成大赦(仮)-平成サブカルチャー年表- - 『ユリイカ』2005年8月臨時増刊号「オタクVSサブカル! 1991→2005ポップカルチャー全史」(青土社)に提供されたサブカルチャー年表
- GON!ファンページ - 世紀末B級ニュースマガジン『GON!』の記事一覧
- カルトブックマーク - インターネット黎明期のアングラサイトを網羅的にまとめたリンク集(主な内容はハック&クラック、ドラッグ、オカルト、精神世界など)
- 漫画屋ホームページ - 『コミックMate』の編集を請け負うエロ漫画編集者の塩山芳明が主宰している編プロ「漫画屋」のウェブサイト
- 鬼畜、電波系、悪趣味、ゴミ漁り、境界性人格障害、女装、Torture Garden - 食品産業情報銀行
- 対談・青山正明×永山薫/別冊宝島345『雑誌狂時代!』(1997年11月)
- “ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界”. ばるぼら. S&Mスナイパー (2008年3月23日). 2017年6月17日閲覧。
- “幻の自販機本『HEAVEN』にUGルーツを追え!”. Cannabis C4. BLUEBOX (2001年11月18日). 2017年5月14日閲覧。
- “『突然変異』青山正明のミニコミを解剖する!”. Cannabis C4. BLUEBOX (2001年12月11日). 2017年6月16日閲覧。
- “90年代サブカルに救われた話”. 本郷保長. En-Soph (2016年8月24日). 2017年1月15日閲覧。
- “データハウス社長・鵜野義嗣インタビュー 「悪の手引書」編み出した男の強烈なとがり方”. 村田らむ. 東洋経済オンライン (2018年3月25日). 2017年7月10日閲覧。
- “舌や足首を切断…! 主演女優が自殺した封印AV映像『肉だるま』の恐怖”. 天野ミチヒロ. TOCANA (2018年3月25日). 2019年7月10日閲覧。
- “鬼畜系とエログロナンセンスの時代/鬼畜系は20世紀の世紀末現象だったということ”. 麻生結 (2006年2月15日). 2018年9月12日閲覧。
- “鬼畜系サブカルチャーの終焉/正しい悪趣味の衰退”. 虫塚虫蔵 (2017年6月4日). 2018年9月12日閲覧。
- “鬼畜系の弁明 ― 死体写真家・釣崎清隆寄稿「SM、スカトロ、ロリコン、奇形、死体…悪趣味表現を排除してはならぬ理由」”. 釣崎清隆. TOCANA (2019年4月2日). 2019年4月3日閲覧。