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コンパクトカセットのように録音可能で、圧縮音源のためコンパクトディスクより音質は劣るものの、デジタルサウンドかつ頭出しが可能という両者の長所を合わせ持ったMDはコンパクトカセットの代替を視野に開発・販売されてきた。しかし2000年代前半にソニーを含む各社からフラッシュメモリを使用した[[デジタルオーディオプレーヤー]]が発売され、2004年には[[Apple]]がディスクレスかつ[[ハードディスクドライブ]]に最大10,000曲もの音楽を保管できるメリットを伝えるため「Goodbye MD」とウェブページ上で喧伝<ref>{{Wayback|url=http://www.apple.co.jp/ipod/goodbyemd/|title=アップル - Goodbye MD|date=20040604071956}}</ref> するなど、次第にMD離れが進み{{Efn|ただし、各社のデジタルオーディオプレーヤーや[[iPod]]も128Kbpsの[[AAC]]または[[MP3]]を標準(つまりMDが採用したATRACと同様に圧縮音源)としていたため、音質が原因でMD離れが進んだわけではない}}、2000年代後半頃からMDの方が先に録音再生機器の製造・販売が縮小・終了していった。{{Main|[[MDレコーダー#普及状況]]}} |
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[[2010年代]]より再評価されているコンパクトカセットのように、再評価される兆しは2020年時点では見られていない。{{See also|[[コンパクトカセット#再評価]]}} |
[[2010年代]]より再評価されているコンパクトカセットのように、再評価される兆しは2020年時点では見られていない。{{See also|[[コンパクトカセット#再評価]]}} |
2021年5月20日 (木) 22:19時点における版
ミニディスク(英語: MiniDisc)とは、ソニーが1991年(平成3年)に発表し、翌年の1992年(平成4年)に製品化したデジタルオーディオの光学ディスク記録方式、および、その媒体である。略称はMD(エムディー)。MDレコーダーやMDプレーヤーなどで録音・再生ができる。
アナログコンパクトカセットを代替するという目標が開発の背景にあった[1]。
2000年代後半以降、録音媒体としては主にフラッシュメモリに取って代わられていった。
なお、データ用規格であるMD DATA、長時間録音規格であるMDLP、転送規格であるNetMD、容量などを拡張した規格であるHi-MDについても本項で述べる。
音楽用MD
MiniDisc MD | |
---|---|
メディアの種類 | 光ディスク、光磁気ディスク (カートリッジ:あり) |
記録容量 | 60/74/80分(ステレオ音声) |
コーデック | ATRAC |
読み込み速度 | 292 kbit/s |
回転速度 | 1.4 m/s (60 分) ほか |
読み取り方法 | 非接触光学式 |
書き込み方法 | 磁界変調オーバーライト |
回転制御方式 | CLV |
策定 | ソニー |
主な用途 | 音声 |
ディスクの直径 | 64 mm |
大きさ | D 68 * W 72 * H 5 mm |
関連規格 | コンパクトディスク、MO |
音楽用MDの規格書は "Rainbow Book"と呼ばれている[2]。他の規格書としてIEC 61909(Audio recording - Minidisc system)、IEC 62121(Methods of measurement for minidisc recorders/players)などがある。
音楽用MDには再生専用MDと録音用MD、ハイブリッドMDの3種類が規定されている。2000年代以降に流通しているMDはほとんどが録音用MDである。
共通仕様
- サイズ
- 直径64 mm・厚さ1.2 mmのディスクが縦68 mm、横72 mm、厚さ5 mmのカートリッジに封入された構造になっている[3]。このためディスクに傷や埃が付きにくく、成人の掌に収まるサイズであり、12cmのコンパクトディスクと比較して持ち運びしやすく取り扱いが容易である。
- TOC
- 曲情報はTOC (Table Of Contents) 領域に書き込まれる。音楽データ以外に曲名などの文字情報の記録や編集、録音日時の記録などが可能である。TOCは0から31までの32セクタが存在するが、実際に使用されているのは0から4までの5セクタのみである[4]。なお1992年のMDレコーダー発売当初からセクタ1及び4の表示に完全に対応してはいなかった。→「MDレコーダー#文字入力」も参照
- セクタ0 - ディスクのパラメータ情報、トラックのアドレス情報、記録可能領域の登録。このセクタにコピープロテクト(SCMSおよびHCMS)に関する情報を格納する。
- セクタ1 - ディスク名、トラック名が半角カタカナと英数字がJIS X 0201で記録される。
- セクタ2 - 日時情報が記録される。セクタ2の対応機器は主に生録が可能なもの、特にポータブルMDレコーダーに多い。
- セクタ3 - 再生専用MDでのみ使用され、CDと同じようにディスクのバーコードや国際標準レコーディングコード(International Standard Recording Code, ISRC)が記録される。
- セクタ4 - ディスク名、トラック名が漢字やひらがながシフトJISで記録される。
- 読み取り方法
- CDと同様に、780nmの赤外線レーザーを、変調方式はEFMを使用する。誤り検出訂正はCDのCIRCと異なり、ACIRC(Advanced Cross Interleaved Reed-Solomon Code)を採用している[5]。
録音用MD
通常はユーザーが自身で録音を行うためのブランクディスクとして販売されている。シャッターはカートリッジ両面にある。ディスクタイプは当初ステレオモードで60分タイプのみだったが、1993年(平成5年)に74分タイプ、1999年(平成11年)に80分タイプが発売され3種となった。録音用MDの発売当初は非常に高価格(一枚1400~1700円程度)であったが、ハードウェアが普及するにつれて結果的にコストダウンが進み、低価格化へとつながった。最初期の80分ディスクは、74が80に変更されている以外にも、外観を同種の74分ディスクと変えてあるものも存在した。なおモノラルモードや各種拡張モードを使って録音した場合の分数はこれと一致しない。
- 年表
- 1992年11月1日 - ソニーより60分ディスク「MDW-60」発売。
- 1993年4月10日 - ソニーより74分ディスク「MDW-74」発売。同年10月には富士フイルム(AXIA)やTDK、日立マクセル(現・マクセルホールディングス)のそれぞれが録音用MDを発売。日本コロムビア(DENONブランド。現・ディーアンドエムホールディングス)も同年に録音用MDを発売。
- 1997年 - 松下電器産業(現・パナソニック)や花王(KAO DIGITAL SOUNDブランド)がそれぞれ録音用MDを発売。
- 1999年2月10日 - 長時間録音に対するユーザーの要望を受け、ソニーより80分ディスク「MDW-80H」発売[6]。
- 記録方式
- 録音用MDは磁界変調オーバーライト方式により記録される光磁気ディスクである。
- UTOC
- 録音用MDにはUTOC (User's TOC) 領域があり、これによってトラックの移動・分割・結合・消去といった編集を行うことができる[5]。最大255トラックまで作成できるが、条件次第ではもっと少ないトラック数しか作れないケースもある。
- 録音モード
- ステレオとモノラルの2種類がある。モノラル録音モードではディスク額面表記の2倍の長時間録音ができるため、会議やラジオ番組の録音などに利用される。どちらのモードで録音した場合も、ソニーが開発したATRAC (Adaptive Transform Acoustic Coding) 符号化方式で音声の非可逆圧縮が行われる。
- なおATRACはスケールファクタが独立しているため、録音後に音量の調整などが可能である。この特徴は一部機器が「S.F.エディット」機能として利用している。
- 回転速度
- 74分MDはディスクの回転速度を1.2 m/sにすることで(60分は1.4 m/s)、80分MDはこれに加えてトラックピッチを1.5 μmにすることで(60分MDと74分MDは1.6 μm、規格上は1.5 - 1.7 [μm] )、それぞれ実現している。
- ビットレート
- 通常ステレオ録音時で292 kbps、モノラル録音時で146 kbpsであり、これにより記憶容量がCDと比べて小さいMDで、CDと同等の録音時間を実現している。
- 黎明(最初)期のMD機器での録音ではエラー制御に容量を割いていたため、音声記録には現在の半分しか割り当てられていなかった。そのため後継モデルのMDや先述の通りMDとほぼ同期に登場した競合規格のDCCに比較してあまり音質が良くなく、特にピュアオーディオファンからはネガティブイメージを持たれていた。
音楽配信
1999年にはマルチメディア端末機を利用した、録音用MDへの音楽ダウンロードサービスが開始された。
企業 | 端末名 | サービス開始年 | サービス終了年 |
---|---|---|---|
ブイシンク | ミュージックポッド(Music Press On Demand)[7] | 1999年5月23日[8] | 2002年10月頃[9] |
メディアラグ | ミュージックデリ | 1999年 | 2004年11月30日[10] |
デジキューブ | デジタルコンテンツターミナル (D.C.T.) | 1999年11月[11] | 2002年3月末[12][13] |
セブンドリーム・ドットコム | セブンナビ | 2000年12月8日[14] | 2002年10月31日[15] |
ファミリーマート | Famiポート | 2000年12月[16] | |
ガズーメディアサービス | e-TOWER | 2000年[17] | |
オムロン | DCS+music | 2001年7月[18][19][20] | |
NTTソルマーレ | Foobio | 2002年6月19日[21][22][23] | 2003年7月31日[24] |
2000年11月にはコンテンツホルダーであるソニー・ミュージックエンタテインメントはこれら端末に対して音楽配信サービスを開始した[25][26]。
ゆずの「アゲイン」や本田美奈子.の「満月の夜に迎えに来て」などダウンロード専売の曲は盛況したものもあったが、上記の表の通り、配信サービスは約1~5年と短期間で終了した。
自主制作音源
録音用MDへの音楽配信は2004年で終了したが、それ以降もhalやExist†trace、クリトリック・リスなど、一部の歌手は自主制作で録音用MDにライブ音源やデモ音源を収録して発表している。
再生専用MD
再生専用MDはCDと同様の構造の光ディスクである。録音用MDと異なり、シャッターがカートリッジの裏側のみにある。CDのように既成曲の入ったパッケージメディアが録音用MDと同月の1992年11月に主に日本のソニー・ミュージックエンタテインメント (SME)(現・ソニー・ミュージックレーベルズ)を中心に88タイトルから発売された[27]。その後、ソニーミュージックを筆頭に各社から1996年5月末までに約900タイトルが発売され[28]、一時期はオリコンチャートも実施されていたが、その後は発売タイトル数の減少や廃盤タイトルも出始めた。新譜についてはソニーミュージックが2000年(平成12年)まで、ソニーが受託販売しているzetimaのモーニング娘。の新譜はCDと同時に2001年(平成13年)まで発売されていた。結果的には、2001年までに1000タイトル以上発売された[29]。
また、再生専用MDは下記のように展開された。
- ソニーミュージックはCDと合わせた新譜発売の他に、CD選書のMD版であるMD選書などの廉価盤も発売していたが、ソニーミュージック(販売受託レーベルも含む)以外のレーベルは人気作品のMD化が中心だった。ただ、発売タイトルは少なかったもののメーカー合同による販促キャンペーンとして対象ソフトを購入するとスリーブケースが特典として貰える施策もあった[注釈 1]。
- ソニーに製造委託をしていたレーベル[注釈 2]からMDタイトルが多く発売されていたが、ライバルのDCC陣営の当時松下電器傘下のビクターとテイチクからもMDソフトが供給されていた[注釈 3]。
- 1990年代後半ソニーマガジンズが発行していた『WHAT's IN?』の年末号に、MDソフトの総カタログが別冊付録として添付されていた。
- タワーレコードやHMVでは、マイケル・ジャクソンやマライア・キャリー・セリーヌ・ディオンなどソニーミュージック所属アーティストのアメリカから輸入されたMDソフトも取り扱われており、日本盤MDとはケースの形態が異なっていた[注釈 4]。
- 2020年現在、MDタイトルで最後に発売された作品は、2009年(平成21年)に発売された倉木麻衣の『ALL MY BEST』(品番: VNYM-9001-2) である。製造設備の関係からか、再生専用の光ディスクではなく録音用光磁気ディスクを使用し、出荷時に誤消去防止用のツメを開けて固定した状態としていた。
再生専用MDは以下のレーベルにて発売された。品番のアルファベット4桁に関しては、規格品番を参照。"x"は0から9の数字が入る。
レーベル | 主な歌手 | 規格品番 | 発売年 | 作品数 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
ソニーレコード | 尾崎豊、久保田利伸、UNICORN | SRYL-7xxx | 1992-2000 | 約380 | 現・ソニー・ミュージックレコーズ |
エアロスミス、ボブ・ディラン、マライア・キャリー | SRYS-1xxx | 1992-1999 | 約270 | ||
ソニー・クラシカル | ヨーヨー・マ | SRYR-6xxx | 1992-1998 | 約90 | |
EPIC・ソニー | JUDY AND MARY、TM NETWORK、DREAMS COME TRUE | ESYB-7xxx | 1992-2000 | 約170 | 現・エピックレコードジャパン |
ジャミロクワイ、セリーヌ・ディオン、マイケル・ジャクソン | ESYA-1xxx | 1992-1999 | 約130 | ||
キューン・ソニー・レコード | X、電気グルーヴ、ラルク・アン・シエル | KSY2-20xx | 1992-2000 | 63 | 現・キューンミュージック |
Sony Music Entertainment (Japan) Inc. | 藤井フミヤ、鈴木亜美 | AIYT-900x | 1998-1999 | 3程度 | 現・ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ |
日本コロムビア | 観月ありさ、THE YELLOW MONKEY、ピチカート・ファイヴ | COYA-xx | 1992-1995,1997 | 50程度 | |
東芝EMI | 中原めいこ、甲斐バンド | TOYT-50xx | 1992-1993 | 50程度 | 現・ユニバーサル ミュージックLLC |
BMGビクター | 福山雅治、林田健司 | 現・アリオラジャパン | |||
ファンハウス | 稲垣潤一、岡村孝子、加山雄三 | FHYF-10xx | 1992-1993,1995 | 23程度 | |
Little Tokyo | 小田和正 | FHYL-100x | 1992 | 1 | |
ビクターエンタテインメント | サザンオールスターズ、小泉今日子、河村隆一 | VIYL-600xx | 1993, 1997 | 10数程度 | 現・JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント |
チープ・トリック | VIYP-600xx | 1997 | |||
テイチク | PERSONZ | TEYN-3000x | 1993 | 現・テイチクエンタテインメント | |
キングレコード | 森口博子 | KIYS xx | 1993 | ||
徳間ジャパンコミュニケーションズ | BOØWY | TKYA-100x | 1993 | ||
ポニーキャニオン | 中島みゆき、工藤静香、前川清 | PCYA-000xx | 1994-1998 | 20程度 | |
キング・クリムゾン | PCYY-x | ||||
ウォルト・ディズニー・レコード | PCYD-000xx | 1994-1998 | 10数程度 | 1990年代前半から1999年の初夏までポニーキャニオンとライセンス契約を結ぶ | |
エイベックス | globe | AVYG-7200x | 1997 | 2 | 現・エイベックス・エンタテインメント globeのタイトルのみ |
フォーライフミュージックエンタテイメント | 杏里 | 1998年に販売委託先がポニーキャニオンからSMEJに移管 | |||
ゼティマ | 森高千里、モーニング娘。 | EPYE-50xx | 1998-2001 | 10程度 | 現・アップフロントワークス 1998年に販売委託先がワーナーミュージック・ジャパン(ゼティマの前身にあたるワン・アップ・ミュージック時代のみ)からSMEJに移管 |
NORTHERN MUSIC | 倉木麻衣 | VNYM-900x | 2009 | 1 | 現・ビーイング 倉木麻衣の『ALL MY BEST』のみ。 |
ハイブリッドMD
ハイブリッドMDは、再生専用エリアと録音用エリアの双方を持つ特殊なMDである。レンズ・ヘッド両用クリーナーで一部存在していた。再生専用エリアで光ピックアップレンズを、録音用エリアで磁気ヘッドをクリーニングすることができる。
拡張規格
MDclip
MDclipはMDの予備データ領域に静止画像 (JPEG)とテキスト情報を記録できる音楽用MDの拡張規格であり、1999年6月21日に発売された「MDS-DL1」に導入された[30]。
MDS-DL1はソニーが提唱した「PlusMedia STATION」というデジタル機器によるネットワーク[31] を構成する一部であり、CS放送を専用チューナー「DST-MS9」で受信し、SKY PerfecTV!の音楽配信番組「MusicLink」で配信された音楽をi.LINK経由で録音するものだった[32]。また、i.LINK搭載のVAIOと接続し、専用のアプリケーションをインストールすることで、MDの再生、編集、静止画像やテキスト情報の記録操作が行える。
MDLP
MDLP(MiniDisc Long-Play mode) は録音時間の延長を求めるユーザーの要望に応えるため、2000年7月18日に発表され[33][34][35]、同年9月以降に発売された製品に導入された、従来の音楽MD規格に2倍、4倍の長時間録音モードを追加する上位規格である。
MDLPはメーカー・ユーザーのいずれからも歓迎され、登場から数年で、市場で従来型の音楽MD機器を置き換えた。現在では、MD機器には欠かせないモードとなっている。
録音モード
追加録音モードはそれぞれLP2モード、LP4モードとよばれ従来のステレオモード(MDLP対応機器ではSPあるいはSTモードと呼ばれる)のそれぞれ2倍、4倍の時間、録音できる。
LPモードの符号化方式には表のとおりATRAC3を採用しビットレートはLP2モードで132 kbps、LP4モードで66 kbpsである。
モード名 | 符号化方式など | CH | 80分ディスク | 74分ディスク | 60分ディスク | 表記時間比 | 適した用途 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
SP-STEREO | ATRAC 292kbps | ステレオ | 80分 | 74分 | 60分 | 1.0倍 | CDからの録音、音楽演奏の収音など |
SP-MONO | ATRAC 146kbps | モノラル | 160分 | 148分 | 120分 | 2.0倍 | モノラル音源(ナレーション等)の録音など |
LP2 | ATRAC3 132kbps | ステレオ | 160分 | 148分 | 120分 | 2.0倍 | 楽器の練習など |
LP4 | ATRAC3 66kbps | ステレオ | 320分 | 296分 | 240分 | 4.0倍 | 会議やラジオの録音など |
LP4モードではステレオ音声の左右相関を利用して圧縮するJoint Stereoを導入することで、ビットレートの不足を補っている。各LPモードにはいずれもモノラル録音モードはない。また、ATRACと違いスケールファクターが存在しないため音量の調整は出来ない。
なお、これらLPモードのビットレートはSPモード (292kbps) の2分の1、4分の1より若干小さい。これは、MDLP非対応機器でLP形式のトラックを再生した際に問題が起こるのを避けるために各サウンドグループ(212バイト)毎に20バイトのダミーデータが挿入されているためである。
互換性
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
MDLP規格で録音されたディスクはMDLP非対応機器でも認識が可能で、そのうちSPモードで記録されたトラックは正常に再生できる。ただし、LP2・LP4モードで記録したトラックを再生すると曲名欄の先頭に「LP:」と表示され、音声が流れない。なお、録音機の設定によりトラック名に「LP:」を付加せずに記録されたトラックの再生時には「LP:」の表示もされない。
一方、MDLP対応機器は従来型音楽MDとの上位互換性を確保しているため、従来機器で記録されたディスク・トラックの再生及びSPモードでの録音が問題なく行える。なお曲名欄の先頭に「LP:」を付加して記録されたトラックを再生した場合は、「LP:」は表示されない。
このように、MDLPは従来仕様との互換性が比較的高いのが特徴である。これはMDLPが録音モードの追加を目的としているため、ディスク・ファイルフォーマットなどが従来のまま引き継がれたことが大きい。しかしこのことで、ディスクあたりに記録できるトラック数は最大255トラックまで、および入力できる文字数は最大半角約1700文字・全角約800文字という従来の制約も引き継いだ。そのため、使用法によっては、残記録可能時間に余裕があるのに録音できない、条件次第では全曲に曲名をつけられないなど、せっかくの長時間録音を活かせない。
Net MD
NetMDは2001年6月27日にソニーによって発表されたMD機器・PC間の音楽転送規格[2]。このシステムは、当時流行の兆しを見せていたデジタルオーディオプレーヤーのように、PCに録りためた音楽を転送して持ち出すスタイルをMDに持ち込んだ。登場当初はフラッシュメモリが高額であり、MDは当時のメモリーカードや内蔵メモリタイプのオーディオプレーヤーに比べて、容量単価が安価だった。
MD機器とPCの接続にはUSBを使用・もしくはPCに内蔵されているNet MDデバイスを用いて、SonicStage(旧OpenMG JukeBox)・BeatJamにてATRAC3方式へリッピングとOpenMGで暗号化した、もしくはBitmusicなどのEMDで購入・ダウンロードファイルをMagicGateでPCとNet MD機器間を認証し相互転送する。Net MD機器でのMDへの録音・転送はATRAC3(MDLP相当)もしくはATRAC(SP相当)であるため、記録内容は従来のMD (MDLP) プレーヤーでも問題なく再生できる事が利点として宣伝された。ただし、編集は一部制限される。またPC側でMD機器側と接続制御するソフトウェアの制限などによりPC側のソフトウェアに履歴の無い楽曲データ、つまり別のPCでMDにチェックアウトした楽曲のチェックイン(リッピング)は不可となっている。通常のMDレコーダーで録音したトラックをリッピングする事はごく一部の機種で対応していた。
データ用MD
データ用MDにはMD DATAとMD DATA2(MD VIEW)の2種類が存在する。
MD DATA
MD DATA | |
---|---|
メディアの種類 | 光磁気ディスク (カートリッジ:あり) |
記録容量 | 140MB(データ)、296分(ステレオ音声) |
コーデック | ATRAC |
読み込み速度 | 150kBytes/sec |
回転速度 | 1.2 m/s |
読み取り方法 | 780nm赤外線レーザー |
書き込み方法 | 磁界変調ダイレクトオーバーライト |
策定 | ソニー |
主な用途 | 音声、データ |
ディスクの直径 | 64 mm |
大きさ | D 68 * W 72 * H 5 mm |
MD DATAはMDに音楽以外のデータを記録させるニーズに応える[36]ため、1993年に発表され、1995年(平成7年)にソニーからは「MMD-140」、TDKからは「MD-D140」、シャープからは「AD-DR140」として発売された。
基本的な仕様は音楽用MDと同様だが、音楽用MD利用者の混乱を避けるため、MD DATA専用のカートリッジ・ディスクが用いられており、音楽用MDとは異なり、ゴミの影響を排除するためロングシャッターを採用している[36]。なお、非公式ではあるが音楽用MDをMDデータドライブにてフォーマットすることでMD DATAとして使用可能となる。
データ用途
容量は140 MBで、ファイルフォーマットには特定のOSに依存しない独自のものを採用している。
PC用ドライブはソニーが1995年7月に発売したSCSI接続のポータブル型ドライブ「MDH-10」とOEM用の内蔵型ドライブの「MDM-111」があり、MDH-10は音楽用MDの再生も可能であるが録音はできない。
一方、PC以外ではソニーのパーソナルMDファイルのDATA EATA「PDF-5」[37]、「PDF-5mkII」[38]、「PDF-HD7」[39][40]、「PDF-V55」、「PDF-W77」[41] やデジタルカメラなどの製品で利用できる。
また、1994年(平成6年)にはMD DATAで画像を扱うための規格としてPicture MDが発表された[36]。この規格の採用製品はデジタルカメラが主で、1996年(平成8年)10月10日に発売されたソニーのサイバーショット「DSC-F1」の画像形式であるPIC_CAM(JPEGベース、拡張子pmp)で採用された。DSC-F1はMDデータドライブを搭載していないが、同年11月10日に発売されたソニーのデジタルピクチャーアルバム「DPA-1」[42][43] はドライブを搭載しており、DSC-F1からIrDAを利用して、MDデータディスクに画像を保存できる。
1997年にはドライブを搭載した、ソニーのMDサイバーショット「DSC-MD1」[44] やシャープのMDデジタルビューハンター「MD-PS1」[45][46][47] が発売された。これらDPA-1、DSC-MD1、MD-PS1は音楽MDの録音再生も可能である。
また、業務用機器として「DPA-300」[48] や「DKR-700」[49]、「コニカピクチャーMDシステム」[50][51][52] がある。
オーディオ用途
MD DATAという名称だが、オーディオ用途で用いることもでき、マルチトラックレコーダー(ソニーの「MDM-X4」、「MDM-X4 Mk2」、ティアックの「TASCAM DIGITAL PORTASTUDIO 564」[53]、ヤマハの「MD4」[54][55]、「MD8」[56][57]、「MD4S」[58][59])で使用できる。ただし、データ用途で使用したディスクはフォーマットしなければオーディオ用途では使用できない。なお、マルチトラックレコーダーは通常の録音用MDへの録音も対応しており、録音した音声はMDプレーヤーやレコーダーで再生できる。通常の録音用MDではなくMDデータディスクを使用するメリットは、MD DATAで採用されたATRAC2によって、マルチチャンネル (4ch / 8ch) による録音や長時間録音(ステレオ296分、モノラル592分)[60]ができる点であるが、その代わりにMDプレーヤーやレコーダーで再生できなくなる。
MD DATA2
MD DATA2 | |
---|---|
メディアの種類 | 光磁気ディスク (カートリッジ:あり) |
記録容量 | 650MB(データ) |
読み込み速度 | 1170kBytes/sec |
回転速度 | 2.0 m/s |
読み取り方法 | 780nm赤外線レーザー |
書き込み方法 | レーザーストローブ磁界変調方式 |
策定 | ソニー |
主な用途 | データ |
ディスクの直径 | 64 mm |
大きさ | D 68 * W 72 * H 5 mm |
1996年12月16日、容量を650MBに大容量化し転送速度を9.4Mbpsに高速化したMD DATA2が発表され[61]、MDVIEW(MMD-650A)として1999年12月3日に発売された。
そして同日に発売されたソニーのMDビデオカメラ「MD DISCAM(DCM-M1)」で初採用された[62][63]。映像記録にMPEG-2、音声にATRACを利用し動画は最大20分、静止画約4,500枚、音声最大260分が記録でき、音楽用MDの再生もできる(録音は不可)[64]。MDのランダムアクセス性を活かしたカメラ単体でのノンリニア編集や10BASE-TによるPCとの連携に対応するカメラだったが後継機種が出ないまま販売が終了した。
Hi-MD
Hi-MD | |
---|---|
メディアの種類 | 光磁気ディスク (カートリッジ:あり) |
記録容量 | 1GB(データ)、94分(リニアPCM) |
フォーマット | FAT32(データ) |
コーデック | リニアPCM、ATRAC |
回転速度 | 1.4 m/s |
読み取り方法 | 780nm赤外線レーザー |
策定 | ソニー |
主な用途 | 音声、データ |
ディスクの直径 | 64 mm |
大きさ | D 68 * W 72 * H 5 mm |
Hi-MD(ハイエムディー)は高音質化や長時間録音、PCとの親和性向上など多岐に渡る拡張がなされた規格。2004年(平成16年)1月8日、ソニーによって発表された[65]。
以前の音楽MD・MDLP・Net MDからの主な変更点や特徴は次の通り。
- 新たに発表された大容量ディスクを使い、最大45時間の長時間録音ができる
- 従来のディスクはHi-MD用に初期化することで、以前の約2倍の容量で利用できる
- 48 kbpsから352 kbpsまでの、幅広い用途に使える圧縮録音モードが追加された
- MDでは初となる、44.1 kHz、16ビットリニアPCMによる非圧縮録音モードに対応した
- 録音したトラックをPCに吸い出せるようになった
- PCからミニディスクをストレージメディアとして利用でき、USBメモリと同じように文書・音楽・写真ファイルを保存可能
- 別売りのHi-MD専用カードリーダーを使用して、Hi-MDモードのディスク(従来MDを初期化したものを含む)へ画像データの転送ができる
また、2005年(平成17年)3月2日には規格拡張が発表された[66]。
- DCF・Exifをベースにした写真管理用規格Hi-MD PHOTOを追加
- これにあわせ、音楽用規格の名称はHi-MD AUDIOに変更
- Hi-MD AUDIOの対応コーデックにオプション扱いでMP3を追加
以上、Hi-MDは従来のMD機器をベースに、音楽以外のコンテンツも記録できる汎用メディアとしての利用が想定された[65]。
メディアとフォーマット
Hi-MDフォーマットでは信号処理技術が変更されたことで高密度化され、従来に比べ大幅な大容量化を実現している。
80分・74分・60分の従来型ミニディスクは、Hi-MDフォーマットで初期化することで約2倍の容量を持たせることができる。例えば80分ディスク (177 MB) は、Hi-MD機器で初期化すると305 MBの容量になる。
一方で、Hi-MDフォーマット専用の大容量ディスクも追加された。このディスクは1GBの容量を持ち、Hi-MD AUDIOの最低音質 (48 kbps) では45時間の録音ができる。発売当初の価格は1枚700円前後。
ただし最低音質の48 kbpsは音楽としては実用的なビットレートではない。音楽の場合最低64 kbpsほどは必要とされるため、48kbpsはラジオ録音などの用途向けといえる。
ファイルシステムにはFATを採用している。パソコンからMOやDVD-RAMやUSBメモリのように、大容量の外部記憶メディアとして手軽に利用できる。なおHi-MD AUDIO機器から利用される音楽トラックもFAT領域に格納されているが、PCからは不可視の"Proprietary Area"に記録された情報により暗号化されているため、SonicStageなどの対応ソフトウェア以外ではPC上での再生・コピーを行うことはできない。
Hi-MD AUDIO
録音モード
この節の正確性に疑問が呈されています。 |
Hi-MD AUDIOでは多くの録音モードがサポートされ、幅広い用途に対応できるようになった。しかし録音操作の複雑化を避けるためか録音モードの多くはPCからの転送のみの扱いであり、Hi-MD機器本体のみで録音できるモードは3モードに絞られている。
また、MD創生期から利用されていたATRACの両モード (292kbps、146kbps) は廃止となった。このため、Hi-MD機器でこれらのモードを利用したい場合には従来フォーマットでディスクを使う必要がある。
Hi-MD AUDIOが対応する録音モード[67] は以下のとおり。
- ATRAC3plus 352 kbps, 256 kbps, 192 kbps, 64 kbps, 48 kbps
- 256 kbpsはHi-SPモード、64 kbpsはHi-LPモードと呼ばれHi-MD機器単体で録音ができる。
- 一方で352 bps, 192 kbps, 48 kbpsにはモード名が無く、録音手段はPCからの転送のみである。
- ATRAC3 132 kbps, 105 kbps, 66 kbps
- いずれもPCからの転送のみ対応。132 kbps, 66 kbpsはMDLPで導入済みだが、105 kbpsはHi-MD AUDIOで新たに追加された。このビットレートは従来からネットワークウォークマンなどで利用されていたがMDには導入されていなかったため、使いまわしに難があった。132 kbps, 66 kbpsの呼称として従来使われていたLP2、LP4というモード名は廃止され、ビットレートで呼ばれる。
- リニアPCM (1.4 Mbps)
- 無圧縮モード。従来のMDはどの録音モードでも必ず非可逆圧縮がかかっていたため高音質を求める層には敬遠されていたが、これが追加されたことでそれらの層にもアピールできるようになった。
- また、これにあわせてソニーからはHi-MDの音声トラックをPC上で汎用のWAV形式に変換するWindows用のソフトウェアWAV Conversion Toolが無償公開された。なお、現在この機能はSonicStageに統合されている。
- なお変換元トラックの録音モードはPCMに限らずどれであっても問題ないが、いずれの場合でもディスクがHi-MDフォーマットのみに限定されている。
- MP3 32 kbps - 320 kbps
- 2005年春の規格拡張で追加されたコーデック。サンプリング周波数は44.1 kHz、ビットレートは32 - 320 kbps(固定・可変両対応)である。PCからの転送においては、他のコーデックと同様にSonicStageなどの専用ソフトウェアで暗号化を行う必要がある。
- なおこのコーデックはオプション扱いであり、2005年春以降のすべてのHi-MD AUDIO機器が再生に対応するわけではない。
モード名 | 符号化方式など | 録音手段 | 1GBディスク | 80分ディスク | 74分ディスク | 60分ディスク | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
PCM | リニアPCM 1.4Mbps | 本体・PC | 約1時間34分 | 約28分 | 約26分 | 約21分 | MD初の無圧縮モード。 |
名称なし | ATRAC3plus 352kbps | PCのみ | 約5時間30分 | 1時間35分 | 1時間30分 | ||
Hi-SP | ATRAC3plus 256kbps | 本体・PC | 約7時間55分 | 約2時間20分 | 約2時間10分 | 約1時間45分 | 主観評価実験にて音質はPCMと比較して違いはわからないとされる[68] |
名称なし | ATRAC3plus 192kbps | PCのみ | 約11時間00分 | 3時間10分 | 3時間00分 | ||
Hi-LP | ATRAC3plus 64kbps | 本体・PC | 約34時間00分 | 約10時間10分 | 約9時間20分 | 約7時間40分 | 主観評価実験にて音質はMP3 128kbpsと同等とされる[68] |
名称なし | ATRAC3plus 48kbps | PCのみ | 約45時間00分 | 約13時間30分 | 約12時間30分 | ||
(旧・LP2) | ATRAC3 132kbps | PCのみ | 約16時間30分 | 約4時間50分 | 約4時間30分 | 約3時間40分 | |
名称なし | ATRAC3 105kbps | PCのみ | 約20時間40分 | 約6時間10分 | 約5時間40分 | 約4時間40分 | |
(旧・LP4) | ATRAC3 66kbps | PCのみ | 約32時間40分 | 約9時間50分 | 約9時間00分 | 約7時間20分 | |
名称なし | MP3 128kbps | PCのみ | 約17時間00分 | 約5時間00分 | 約4時間30分 | MP3対応機種のみ再生可能。 これ以外にも多くのレートが利用できる。 |
互換性
Hi-MD専用ディスクは従来の音楽MD・MDLP機器からは一切の認識・再生が出来ず、Hi-MDフォーマットで初期化された従来ディスクはディスク名がHi-MD DISCと表示されるだけで編集や再生はできない。一方、Hi-MD AUDIO機器側では従来の音楽MD・MDLP規格との上位互換性を確保している。このため従来規格で録音されたディスクの再生が可能である。従来規格での録音は一部機種のみ。
Hi-MD PHOTO
Hi-MD PHOTOは、2005年春のHi-MD規格拡張の際に発表された画像記録用規格。
ベースはデジタルカメラのアプリケーションフォーマットとしてデファクト・スタンダードとなっているDCF・Exifだが、独自にサムネイル用キャッシュファイルの仕組みを追加することで画像閲覧の高速化を図っている。
この規格の発表と同時に、対応機器の第1弾であるHi-MDウォークマン「MZ-DH10P」が発表された。この機種は約130万画素のCMOSカメラと1.5インチのカラー液晶を内蔵しており、撮影した画像はHi-MDへ記録される。またHi-MD AUDIOにも対応しているため、音楽再生中に写真をスライドショー再生する機能や内蔵カメラでCDなどのジャケットを撮影してHi-MD AUDIOトラックのジャケット画像として登録する機能などもある。
累計出荷数
日本記録メディア工業会調べ
比較のため、カセットテープと録音用CD-Rも記す。
国内需要において、2008年は推定実績値。2009年以降は予測値。
年 | カセットテープ | 録音用ミニディスク | 録音用CD-R |
---|---|---|---|
1994[69] | 351 | 4 | |
1995[69] | 336 | 10 | |
1996[69] | 293 | 31 | |
1997[69] | 258 | 53 | |
1998[69] | 238 | 92 | |
1999[69][70] | 200 | 139 | |
2000[69][71] | 157 | 161 | 9 |
2001[69][71] | 130 | 164 | 18 |
2002[69][72] | 107 | 159 | 23 |
2003[69][73] | 95 | 160 | 25 |
2004[69][74] | 79 | 158 | 28 |
2005[69][75] | 64 | 123 | 30 |
2006[69] | 55 | 85 | 34 |
2007[76] | 46 | 62 | 40 |
2008[77] | 36 | 41 | 44 |
2009[77] | 29 | 26 | 42 |
2010[77] | 22 | 18 | 39 |
2011[77] | 17 | 11 | 36 |
以下の表は国内需要を含むものである。 世界需要において、2006年以降は推定実績値。2009年以降は予測値。
年 | カセットテープ | 録音用ミニディスク | 録音用CD-R |
---|---|---|---|
1994[78] | 1,891 | 6 | |
1995[78] | 1,869 | 12 | |
1996[78] | 1,842 | 35 | |
1997[78] | 1,742 | 66 | |
1998[78] | 1,546 | 125 | |
1999[78] | 1,308 | 187 | |
2000[78] | 1,130 | 225 | 106 |
2001[78] | 929 | 243 | 169 |
2002[78] | 758 | 219 | 246 |
2003[78] | 614 | 208 | 290 |
2004[78] | 487 | 191 | 300 |
2005[78] | 369 | 145 | 293 |
2006[79] | 285 | 95 | 275 |
2007[80] | 213 | 68 | 265 |
2008[77] | 166 | 46 | 248 |
2009[77] | 130 | 29 | 223 |
2010[77] | 97 | 20 | 200 |
2011[77] | 72 | 12 | 177 |
以上より日本国内において、MDは2000年から2004年をピークとし、2007年から2008年頃まで他の録音メディア以上に、若しくは同等の需要があったが、世界規模ではカセットテープの需要に追いつくことはなく、後発であった録音用CD-Rにも2年程で後塵を拝すことになり、そのまま追い越すことはなかった。
ソニー調べ
- 1995(平成7)年度 - 録音用MDが約1000万枚[81]
- 1996(平成8)年度 - 録音用MDが約3000万枚[82]
- 1997(平成9)年度 - 録音用MDが約5000万枚[82]
- 2001(平成13)年まで - 録音用MDが約10億枚[1]
- 2003(平成15)年まで - 録音用MDが約11億枚に達する見込み[65]
- 2005(平成17)年まで - 録音用MDが約16億枚に達する見込み[66]
現状
コンパクトカセットのように録音可能で、圧縮音源のためコンパクトディスクより音質は劣るものの、デジタルサウンドかつ頭出しが可能という両者の長所を合わせ持ったMDはコンパクトカセットの代替を視野に開発・販売されてきた。しかし2000年代前半にソニーを含む各社からフラッシュメモリを使用したデジタルオーディオプレーヤーが発売され、2004年にはAppleがディスクレスかつハードディスクドライブに最大10,000曲もの音楽を保管できるメリットを伝えるため「Goodbye MD」とウェブページ上で喧伝[83] するなど、次第にMD離れが進み[注釈 5]、2000年代後半頃からMDの方が先に録音再生機器の製造・販売が縮小・終了していった。
2010年代より再評価されているコンパクトカセットのように、再評価される兆しは2020年時点では見られていない。
録音用MD
2000年代半ば頃からMD機器の出荷数減少に伴い、ディスクの流通も減少していった。ただし、現在流通している音声記録メディアではCDレコーダーやDATとともに、パソコンを一切使用せずにCDなどからの音源を直接デジタル録音できる数少ないメディアであるため、パソコンやスマホを持たない、あるいは持っていても十分に使用することが困難なユーザーなど、一部では未だに根強い需要がある。そのためミニディスクそのものは、スーパーマーケットなどでも大抵は5巻パックなどが揃っている場合が多く、ビクターアドバンストメディア(Victorブランド)製「MD-80RX5/MD-80RX10」とパナソニック(AY-MD74D、2001年1月発売)が、その他の単品ディスクは大創産業からも発売されていたが、それぞれ生産・販売終了となった。
2020年(令和2年)12月現在、国内メーカーでは唯一、ソニー(MDW80T、2015年11月発売)だけがディスクを生産・販売している状況である。
再生専用MD
先述の通り2001年をもって新譜の発売が終了した。以下の要因で普及しなかった。
- 機能面
- 流通面
-
- ソニーミュージックの作品がMDソフトのカタログの大半を占めており、他レーベルはMDソフトを殆ど発売しなかった。
- 音楽雑誌の新譜紹介にMDソフトの発売があっても掲載されていない事があった為、ユーザーに発売が知られていなかった[注釈 6]。
- 大手CDショップではMDソフト専用棚を設け展開されていたが、CDやカセットテープと比べて小規模だった。またMDソフトを取り扱わなかった店舗も多かった。
- 初期はポータブル機から普及が進んだため、据え置き型のMDレコーダーやMDデッキ搭載コンポーネントシステムが相対的に普及していなかった。そのため再生専用MDを購入しても、外出時と在宅時で使いまわしできなかった。
- 多くのユーザーから「MDはCDをコピーして外に持ち出すことのできるメディア」として認識されたことで、CDでも発売されているタイトルをわざわざMDで購入するメリットを訴求できなかった。
- MDタイトルのレンタルが存在しなかった。
データ用MD
1995年に登場したMDデータディスクだが、容量面では1994年に3.5インチMOで230MBのディスクが登場した[84]ことで優位性は既になく、サイズはMOよりもコンパクトであるが、読み書き速度がMOと比較して遅く (150KBytes/sec)、1995年時点でMOドライブが100万台以上を出荷していた[84]こともあり、また、後継のMDデータドライブも発売されなかったため、結果としてPC用メディアとしてはほとんど普及しなかった。
PC以外のハードにおいてはMD DATAは一定の需要はあったが、いずれも10万円を超える高額品であったり、マルチトラックレコーダーのような特定の人が利用するものにしかドライブが搭載されなかったため、ディスクの利用者は限定的だった。ただし、ディスクには根強い需要があるためか、「MMD-140A」が1998年6月9日に販売開始され(現在は販売終了)、「MMD-140B」が2016年(平成28年)10月11日に販売開始されている(2020年現在も販売中)。
MD DATA2はMD DISCAMのみの採用に留まった。
Hi-MD
2004年より販売していたHi-MDディスク「HMD1GA」は録音用MDとデータ用MDの両方の性質を兼ね備えたディスクだったが、デジタルオーディオプレーヤー市場の主流がフラッシュメモリベースとなった関係で需要が減少したため[85]、2012年(平成24年)5月に出荷終了(製造終了)となった[86]。
書籍
MDに関する書籍を列挙する。 書籍タイトルからも1990年代前半はまだDCCと同列に位置していたことが窺える。
- 村田欽哉『DCC (デジタル・コンパクト・カセット)・MD (ミニ・ディスク) ガイドブック : 話題の新デジタルオーディオ規格DCC・MDをわかりやすく解説』電波新聞社、1992年4月。ISBN 978-4885543418。OCLC 674817162。
- 沢村とおる『DCCとMDがすべてわかる本 : Newデジタル宣言』音楽之友社、1992年10月。ISBN 978-4276241619。OCLC 674837169。
- 小林紀興『松下・ソニー生き残り最終戦争―DCC対MDの読み方』光文社〈カッパビジネス〉、1993年2月。ISBN 978-4334012755。OCLC 675462330。
- 村田欽哉『DCC・MDガイドブック 2 (活用編)』電波新聞社、1993年10月1日。ISBN 978-4885543982。OCLC 673510438。
- 原田益水『マルチメディアの基礎技術―デジタルの基礎からDCC、MD、CD‐ROM、LDの解説まで』 13巻、電波新聞社〈ハイテクブックシリーズ〉、1994年8月。ISBN 978-4885544224。OCLC 674984695。
- 河村正行『MDのすべて―MDの原理から構造まで』 16巻、電波新聞社〈ハイテクブックシリーズ〉、1998年8月。ISBN 978-4885544903。OCLC 676238281。
- 川崎晃『MD&CDのデジタルサウンド自由自在』 284巻、エーアイ出版〈エーアイムック〉、2001年9月。ISBN 978-4871938426。
- 「今見直したいDCC&MD ポスト「コンパクトカセット」を目指した2つのデジタルメディア」『ステレオ時代』 14巻、ネコ・パブリッシング、2019年3月5日。ISBN 978-4777023073。OCLC 1089694929。
脚注
注釈
- ^ ソニーミュージックが販売受託しているジャニーズエンタテイメント (現・ジェイストーム) からは、MDタイトルは発売されていない。
- ^ ソニーに一部製造していたワーナーミュージックジャパンや日本クラウンなどはMDソフトを供給していない。
- ^ ソニーミュージックはDCCソフトを一切供給していない。
- ^ コロムビアレコードの商標は日本では日本コロムビアが保有しているので、コロムビアレコードの商品には許諾シールが貼付されて販売されていた。
- ^ ただし、各社のデジタルオーディオプレーヤーやiPodも128KbpsのAACまたはMP3を標準(つまりMDが採用したATRACと同様に圧縮音源)としていたため、音質が原因でMD離れが進んだわけではない
- ^ 主にCD・カセットテープの品番・価格が掲載されていた。
出典
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- ^ ““Hi-MDウォークマン”『MZ-RH1』出荷完了のお知らせ”. お知らせ ポータブルオーディオプレーヤー ウォークマン. ソニー (2012年2月14日). 2020年9月23日閲覧。
参考文献
- 前田保旭「ミニディスクシステム」『日本音響学会誌』第49巻第4号、日本音響学会、1993年、277-283頁、doi:10.20697/jasj.49.4_277、ISSN 0369-4232、NAID 110003110493。
- 小林稔治、橘川千里「ピクチャーMD」『テレビジョン学会技術報告』第19巻第27号、映像情報メディア学会、1995年、15-19頁、doi:10.11485/tvtr.19.27_15、ISSN 0386-4227、NAID 110003679628。
- 重田定明「光磁気ディスクの現状と技術動向」『日本印刷学会誌』第32巻第5号、日本印刷学会、1995年、284-289頁、doi:10.11413/nig1987.32.284、ISSN 09143319、NAID 10001985669。
- 阿部三樹、森永英一郎、荒瀧裕司「ミニディスクAVレコーダの開発」『映像情報メディア学会技術報告』第24巻第75号、映像情報メディア学会、2000年、27-32頁、doi:10.11485/itetr.24.75.0_27、ISSN 1342-6893、NAID 110003688587。
関連項目
- 大賀典雄 - MDの立ち上げに関わる。
- 堀米秀嘉 - MDの開発者。
- ソニーDADCジャパン(現・ソニー・ミュージックソリューションズ 大井川プロダクションセンター) - MDの生産者。
- 音響機器
- 記録媒体
- ソニーのMDメディア製品一覧
- DAT - 専用のテープにデジタルで音声が記録される。
- デジタルマイクロカセット (NT) - 後のICレコーダーに繋がるソニーの独自規格。
- メモリースティック - ミニディスク同様現在では事実上終焉した、ソニー独自のメモリーカード。
- レガシーデバイス
- ガラパゴス化
外部リンク
- Sony History 第2部 第10章
- 気分はぷわぷわ - MDに関する種々の情報を集めた個人サイト