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枇杷島分岐点

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
砂入信号場から転送)
枇杷島分岐点
枇杷島分岐点
左-名古屋本線・右-犬山線(踏切から)
びわじま
BIWAJIMA
地図
所在地 愛知県清須市
北緯35度11分44秒 東経136度52分3秒 / 北緯35.19556度 東経136.86750度 / 35.19556; 136.86750座標: 北緯35度11分44秒 東経136度52分3秒 / 北緯35.19556度 東経136.86750度 / 35.19556; 136.86750
所属事業者 名古屋鉄道
乗入路線 2 路線
所属路線 名古屋本線
キロ程 71.3 km(豊橋起点)
NH38 東枇杷島 (0.6 km)
(0.3 km) 西枇杷島 NH39
所属路線 犬山線
キロ程 0.0 km(枇杷島分岐点起点)
(1.0km) 下小田井 IY01►
備考 西枇杷島駅構内
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枇杷島分岐点(びわじまぶんきてん)は、愛知県清須市にある名古屋鉄道(名鉄)の分岐点(信号場)。

かつては枇杷島橋駅(びわじまばしえき)という駅が存在したが、廃止後は西枇杷島駅構内に属する信号場となった。本項では枇杷島橋駅に隣接して存在した下砂杁信号場(しもすいりしんごうじょう)[注釈 1]や、これらが構成するデルタ線(三角線)についても解説する。

位置

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東枇杷島 - 西枇杷島下小田井駅間の庄内川橋梁の北側にあり、名古屋本線犬山線が分岐する。ではないのでプラットホームなどの設備はなく、全ての列車が通過する。1949年昭和24年)7月31日までここは枇杷島橋駅という駅(特急停車駅)であったため、同駅の廃止後も運賃計算上の箇所として扱われている。名古屋本線(当分岐点以西)と犬山線とを跨いで乗車する場合、乗換は東枇杷島・栄生名鉄名古屋のいずれかの駅で行われるが、運賃は当分岐点で乗り換えたものとした距離で計算され、この場合には当分岐点から名鉄名古屋駅までの重複乗り越し運賃は不要となっている(栄生駅または東枇杷島駅で途中下車する場合は対象外)。特急の特別車(名鉄での有料座席指定席車の呼称)同士の乗り換えには「乗り継ぎミューチケット」制度が適用される[4]。また、別途乗車の場合などには当分岐点を発着する乗車券類も発売される。犬山線は現在でも枇杷島分岐点を起点とするため、国土交通省の混雑率調査結果においても最混雑区間が下小田井→枇杷島分岐点となっている。

枇杷島橋駅は当分岐点と踏切に挟まれてホームの延長ができない立地条件にあり、また駅と庄内川橋梁との間には40 の急勾配が存在していた[注釈 2]。そのため、拡張余地のない枇杷島橋駅を廃止し、その代替として隣接して休止中だった西枇杷島駅を復活させた。なお、この時下小田井駅も500 m枇杷島分岐点寄りへ移設している[5]。その後1958年(昭和33年)に庄内川橋梁が上流側に架け替えられ現状となった。架け替え前はほぼ直線の名古屋本線に対して犬山線が分岐する形となっていたが、この配線変更で両開きとなった[5]。後年軌道強化により制限速度が40 km/hから50 km/hに引き上げられ現在に至る。

構造

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西枇杷島駅構内は枇杷島分岐点(B)、西枇杷島駅(N)、下砂杁信号場(S)を頂点とするデルタ線(三角線)であり、

  • 経路1(BN間):名古屋本線(豊橋方面)と名古屋本線(岐阜方面)
  • 経路2(BS間):名古屋本線(豊橋方面)と犬山線
  • 経路3(NS間):名古屋本線(岐阜方面)と犬山線を短絡する電留線

の3経路が存在する(便宜上、本項ではこの番号を用いて経路を表す)。

定期旅客列車が運行されるのは経路1および経路2で、前者が名古屋本線、後者が犬山線の本線路である。経路3は貨物側線で、貨物営業廃止後は教習や車両の留置場所として使用される[1]。経路3の延長に当たる経路2の着発線(有効長6両分)は、河和内海 - 名古屋駅間運転の特急が折り返すための場所としても用いられている[6]。経路3を通過すると編成の向きが逆転するため、三角線回しによって車両の方向転換を行う際に利用される。過去には三河線電車の方向転換[1]やディーゼル列車「北アルプス号」の入れ換え[7]1000系電車(パノラマスーパー)に一般席車を組み込む際などに使用された。

方向転換させずにNS間を行き来したい場合は経路3は使用できない。かつてはNS間(津島線・犬山線間)を直通運転する定期旅客列車が存在したが、同列車は経路3を使用せず、枇杷島分岐点(B)から2駅先にある栄生駅スイッチバックしていた[8][注釈 3]

分岐はどの頂点も平面交差であり、特に経路1と経路2が交わる枇杷島分岐点は日中でも上下線で計毎時50本以上の定期列車が通過する輸送密度が大きい地点である[1]。ここでは経路1上り列車(N→B)と経路2下り列車(B→S)が同時に通過できない。両列車が直近に迫った場合、

  • B→S列車が第1場内信号機手前(庄内川橋梁上)で停止し、交差するN→B列車の通過を待つ。
  • N→B列車が分岐点の手前の第2出発信号機(この時、停止信号を現示)まで警戒信号で運転 (25 km/h) を行い、経路2(交差するB→S列車および合流するS→B列車)の列車通過を待つ。

のどちらかの方法で対処する。列車ダイヤは、極力同じ運転系統の列車同士を当分岐点至近ですれ違わせ、分岐点手前で停止することなく通過できるように工夫して組まれているが、実際には、特にラッシュ時において共に名鉄名古屋方面へ向かう経路1上り列車(N→B)と経路2上り列車(S→B)が直近に迫り、列車ダイヤによってどちらかが分岐点手前で停止することがある。

名古屋本線のうち枇杷島分岐点 - 神宮前駅 間は、岐阜犬山津島方面 - (名古屋駅) - 知立豊橋豊川稲荷西尾)・常滑中部国際空港)・半田(河和・内海)方面の経路を運行する列車が集約される高密度運行区間であるが、神宮前駅側が立体交差と一部複々線化により比較的スムーズな列車の振り分けができているのに対し[1]、枇杷島分岐点は先述のような制約を抱えた平面交差のままで運用されている[注釈 4]。この様な高密度運行区間の分岐点は、本来なら立体化したり、駅を設置して岐阜方面と犬山方面の列車を接続、または片方の列車を折り返し運転にする等で、捌き易くする方法を採ることが多い。しかし枇杷島分岐点は住宅密集地にあることのほか、

といった、線形の制約となるボトルネックがあり、線形変更が大変困難な状況である[10]1990年代には名鉄から立体化の検討がされた事もあったが、前述した複数の制約に加え、近年の名鉄の財政難もあって立体化検討の続報は無く、当分は現状のままとなる見込である。

空中写真でも判る通り、かつては三角地内の名鉄の所有地でない部分に民家が1軒あり、人が居住していた。これはデルタ線完成後の1939年(昭和14年)に名鉄が民家の所有者に対して代替地を確保の上で立ち退きを打診したものの、「建てたばかりの家を壊したくない」[注釈 5]との理由で所有者が立ち退きを拒否したためである。その後所有者が死去したことでこの民家は長い間空き家となっていたが、2011年(平成23年)秋頃に取り壊された。経路3の途中には第4種踏切が1ヶ所あり、民家の住人はこの踏切から外部と出入りをしていた。

配線図

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西枇杷島駅 構内配線略図(2020年)
↑ 名古屋本線 名古屋方面
西枇杷島駅 構内配線略図(2020年)
名古屋本線
一宮・岐阜方面
↓ 犬山線 岩倉・犬山方面
凡例
出典:[11]


隣の施設

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名古屋鉄道
NH 名古屋本線
東枇杷島駅 - 枇杷島分岐点 - 西枇杷島駅
IY 犬山線
東枇杷島駅 - 枇杷島分岐点 - 下小田井駅

脚注

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注釈

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  1. ^ 1949年(昭和24年)8月1日に西枇杷島駅に統合。資料によっては「砂入[1]」「砂杁[2]」「下砂入[3]」、読みについても「(しも)すいり」「(しも)ずいり」などの表記揺れが見られる。なお、「砂杁」と表記した場合の「杁」は尾張地方国字であり、同じ清須市内に二ツ杁駅が存在する。
  2. ^ 現状でも枇杷島分岐点への線路の勾配は比較的急で、名古屋本線は 29 、犬山線は 30 ‰ となっている。
  3. ^ 団体列車による経路3通過事例はあり、近年では犬山線開通100周年記念イベントで2000系団体列車が犬山検査場から新川検車区へ向かう際に経路3を経由した[9]
  4. ^ 栄生駅から枇杷島分岐点までは半径160 - 200 m 余りのカーブが連続し、50 km/h の速度制限が何度もかかる。この平面交差と速度制限が名古屋 - 岐阜間のJR東海との競争力を弱める原因の一つにもなっている。
  5. ^ 当該民家は立ち退きを打診された当時築2年だった。

出典

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  1. ^ a b c d e 白井良和「名鉄に見る運転と施設の興味」『鉄道ピクトリアル』第624巻、電気車研究会、1996年7月、114頁。 
  2. ^ 川島令三『東海道ライン 全線・全駅・全配線 第5巻』講談社、2009年、64頁。ISBN 978-4-06-270015-3 
  3. ^ 澤田幸雄「名鉄の駅,構内設備の思い出」『鉄道ピクトリアル』第816巻、電気車研究会、2009年3月、146頁。 (本文。図中表記は「下砂杁信号所」)
  4. ^ 乗り継ぎミューチケット - 名古屋鉄道(平成28年4月1日更新/2016年7月12日閲覧)
  5. ^ a b 沢田幸雄 「廃止された線路を訪ねて 押切町 - 枇杷島橋間と柳橋乗入れ」(『鉄道ピクトリアル No.473 1986年12月増刊号』、p.106,電気車研究会、1986年
  6. ^ 徳田耕一『名古屋鉄道 今昔―不死鳥「パノラマカー」の功績』交通新聞社〈交通新聞社新書〉、2017年8月、71頁。ISBN 978-4330819174 
  7. ^ 清水武『名古屋鉄道各駅停車』洋泉社、2016年、55頁。ISBN 978-4-8003-0800-9 
  8. ^ 清水武「名古屋鉄道各線相互の直通運転」『鉄道ピクトリアル』第246巻、電気車研究会、1971年1月、62頁。 
  9. ^ 犬山線開通100周年記念イベントを8月6日(月)から開催します - 名古屋鉄道
  10. ^ PHP研究所(編)『名古屋鉄道のひみつ』PHP研究所、2013年、101頁。ISBN 978-4569815428 
  11. ^ 豊科穂(作図)「名古屋鉄道 線路配線略図」『鉄道ダイヤ情報』通巻第438号 2020年11月 別冊付録「名鉄車両ハンドブック」、22頁、交通新聞社、2020年

関連項目

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