パトロールカー
本記事ではパトロールカー(patrol car)や police car(ポリスカー、警察車両)と呼ばれるものについて解説する。
概説
日本語では「パトロールカー」という言葉が使われ、それは警察官が乗って、犯罪の予防・検挙や、交通の指導・取り締まりのために巡回するのに用いる自動車のことである[1]。日本語では「パトカー」と略す[1]。 英語では、もう少し広い範囲を指す 「police car 」(警察車両という意味)という名称・概念を用いることが一般的である。
本記事では各国のパトロールカーについて述べる。
- 各国のパトカー
警察は行政系の組織であるので、各国の警察で、(しっかりした自動車産業が育っている国では)基本的には、自国の産業を優遇すべく、自国の自動車メーカーの車種を優先的に採用しようとしている。
例えばドイツでは、ドイツ車、つまりBMWやメルセデス(ダイムラー・ベンツ製)やフォルクスワーゲンなどが用いられている。フランスでは、フランス車であるルノーやシトロエン、プジョーなどが用いられている。
ただし、自国の自動車メーカーで実用的な車種が消滅してしまったり、警察組織にもコストや環境性能が求められるようになると、耐久性や環境性能で優位性がある日本車や、コストパフォーマンス(性能向上・世界シェア増加と価格)の高さから韓国車が導入されることも増えている。
イタリア警察では、式典や広報用には、イタリア製の(他国の人は驚くが)スーパーカーを使うことがある。(大量導入が必要な現場向けには日本車を使っていることもある)
アメリカ合衆国では「Marked」(一目で警察とわかる白黒の車両)と「Unmarked」(覆面車両)に大別される。米国の自動車メーカーのGM、Ford、クライスラー製のものが大半である。 →#アメリカ合衆国
日本では、昭和25年(1950年)に警視庁が採用した[1]。日本では日本の自動車メーカー(や、もともと日本の自動車メーカーだったが、後に外資の出資比率のほうが増した企業)の自動車を用いている。→#日本
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韓国のパトカー(現行デザイン)
ヒュンダイ・YFソナタ
アメリカ合衆国
アメリカ合衆国の警察のパトカーは「Marked」と「Unmarked」に大別される。
「Marked」は日本で言うところの白黒パトカー。車体に警察機関名、バッジのイラスト[2]、「POLICE」「HIGHWAY PATROL」「STATE TROOPER」といったマークが施されている(=Marked)もの。塗装はカリフォルニア州で多く見られるような白黒も存在するが、後述するように中古で出すこともあるため、専用の塗装はせず、単色のボディにステッカーのマークを貼り付けているだけの場合も多く見られる。図柄は機関の数だけあると言っても過言ではない。基本的に警ら任務に用いられるものを指すが、特殊部隊や特殊任務班で使用されるもので、マークが施されていれば含まれる。
「Unmarked」は覆面パトカー。先述のマークが施されていないという意味。「Undercover」などとも呼ばれる。用いられる車両は警ら用と同じ車種も多いが、中には個人所有の車両や、押収した車両を捜査車両として使用できる機関もあり、逮捕した禁制薬物の売人から押収した高級車が使用されていることもある。ニューヨーク市警察のタクシースクワッドは、タクシーに偽装した車両に刑事2人が運転手役と乗客役に分かれて乗車し、防犯活動をしている。一方でハイウェイパトロールの覆面パトカーは、警光灯が外から見えないようになっているだけでドアには大きくマークが描かれている(カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールの例)。これは警察車と認識されないと、追尾した相手から強盗と勘違いされ最悪の場合は銃撃を受ける事さえあるためである[3]。
SWAT要員は個人ロッカー代わりに装備品一式をトランクに納め、いつでも・どこの現場への招集でも応じられるようにしている(ロサンゼルス市警察)。この場合使用されるのはやはり覆面車である。
なお、アメリカ合衆国における覆面パトカーの運用態勢は自治体ごとに異なる。例えばオレゴン州警察・バージニア州警察・メリーランド州警察などでは、速度違反を含む幅広い捜査に覆面車両が投入されている[4][5]。カリフォルニア州では1923年以来、交通違反取り締まりにおいて覆面車両を使用することが認められてこなかったが、2008年にカリフォルニア高等裁判所は速度制限違反の取り締まりを除いた全ての違反取り締まりに際し覆面車両を使用することを認める判決を出した[6]。ニューヨーク州では1996年の州知事令により州警察が交通取り締まりのために覆面車両を使用することが禁止された。しかし、これはあくまで州警察に限られたことであり、市警察や保安官事務所が使用する車両には現在適用されていない。アメリカ国内では、覆面パトカーを装った車両の指示に従って停止したところ強盗や強姦の被害に遭うケースが頻発しているため、ニューヨーク州などでは、州内において覆面車両を交通取り締まりに用いることを全面的に禁止する法案の審議が行われている[7]。
車種
採用されている自動車は、国産のビッグスリー、つまりゼネラルモーターズ(シボレー、GMCが多い)、フォード・モーター(フォードが多い)、クライスラー(ダッジ、ジープが多い)の各社製が大半を占める(日本でトヨタ・日産が多く採用されるのと同じ理屈である)が、外国製も使用されている。
フォード・クラウンビクトリア・ポリスインターセプター(フォードのパトカー仕様車の呼称)が、全パトカーの7割〜8割を占めているといわれる。90年代中頃までは同車とシボレー・カプリスが多かったが、カプリスが生産中止になってしまい、警察一般で好まれる「パワフルなFRのフルサイズセダン」という要件を満たすものが同車のみになってしまったのが要因。
1990年代の終わりごろ、カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール(CHP)はボルボS70-Tを試験的に採用したことがある。当時採用していたカプリスが生産中止になり、クラウンビクトリアも経営の効率化のために生産中止になるのではないかと言われ、アメリカ的なFRフルサイズセダンの存在自体が自動車市場において風前の灯火であると言われていたのが原因。これらの車両がなくなってからも円滑に車両を調達するため、もっと他の車種にも目を向けようと考慮したものであった。しかしボルボS70はフルサイズセダンに乗りなれた警官にはあまりに狭く、不評で、本格的な採用とはならなかった。幸いにしてクラウンビクトリアの生産は継続され、CHPは今日までそれを使用している。
ただし、FRが絶対条件というわけではなく、FFのシボレー・ルミナ、シボレー・インパラ、ダッジ・イントレピッドなども採用されている。
2006年にダッジ・チャージャーのパトカー仕様車が、フォード以外から発売されるパトカー向けFRセダンとして久々に登場し、以後採用する機関は徐々に増えている。2008年にはカーボンモータース社がセダン型のパトカー専用車「E7」を発表した。ディーゼルエンジンによる燃費の向上や専用設計によるパトカーとしての最適化が行われていると同社は説明している。2009年、ニューヨーク市警察は環境対策の一環として日産・アルティマを採用。また、GMは2011年から傘下のホールデンで製造されているカプリスをベースにしたシボレー・カプリスPPV(Police Patrol Vehicle)を供給すると発表した。
そのほか、管轄や目的によって、シボレー・カプリスやダッジ・マグナムなどのステーションワゴン、シボレー・コルベット、同・カマロ、フォード・マスタングなどのスポーツカー、シボレー・サバーバン、シボレー・タホ、フォード・エクスプローラー、フォード・エクスペディション、ダッジ・デュランゴのようなSUV、シボレー・シルバラードやフォード・レンジャーなどのピックアップトラック、シボレー・エクスプレス、同・アストロなどのバン、ハマーなどのオフロードビークルなども多く使用されている。特殊部隊では器材と要員を運び現地対策本部にもなるバンが必須である他、発砲を避けて民間人を救出するために軽装甲車を配備することもある。
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シボレー・カプリスポリスパッケージ、見本車両
パトカー専用モデルの詳細
一般的に「ポリスパッケージ(Police package)」と呼ばれるもの。フォードは「P71」、GMは「9C1」「B4C」などといった商品コードを使用している。
土台となる車種からの変更点としてはエンジンの出力向上、ラジエーターやバッテリーの大容量化、電装品の耐久性向上、足回りの強化、内装の簡素化といったもの。メーカー出荷時にワーニングライトやサイレンなどを装備することもできるが、後述するように実際にはその警察ごとに装備の仕方は異なるので、購入後に緊急車両専門の架装業者に依頼することも多い。大きな自治体や警察組織では自前の工場を持っていたりする。
- シボレー・インパラ
- シボレーのミッドサイズセダン「インパラ」を土台に使用した、パトカー仕様車。ポリスパッケージのトリムグレードが9C1、アンダーカバーポリスパッケージのトリムグレードが9C3。エンジンとサスペンションが強化されているほか、「SURV MOD」というボタン1つでライトを全て消せる機能が備わっている。
- シボレー・カプリスPPV
- GMが2011年から供給する新型のパトカー。ベースとなるカプリスは往年とは違い、現在はGM傘下のホールデンが製造しオーストラリアなど向けに販売されている車種。グレードはパトロール用の「9C1」と、覆面パトカー用の「9C3」の二種類。
- エンジンはV型8気筒とV型6気筒の2種類のガソリンエンジンで、自動変速機を介して後輪を駆動する。パトカー専用装備としては機能強化や各種端末や通信装置などの他、赤外線暗視装置も装着できる。バッテリーは2個搭載しており、そのうちの一つは高度化する電子装備の駆動用に使用するという。カプリスのホイールベースは3011mmなので、これにより前後席の間に設けられるパーテーションを前席より後ろにずらすことができ、運転席の調整しろが大きくなっている。さらにセンターコンソールをタッチパネル式入力機器にすることも可能。座席も市販車の使い回しではなく、パトカー用にチューニングされたものを使うとのこと。またシボレーブランドで販売されることから、フロントグリルはホールデンのCIがついたものから、シボレーのCIがついたものに変更された。
- ダッジ・チャージャー
- ダッジのフルサイズセダン「チャージャー」を土台に使用した、パトカー仕様車。ハイウェイパトロールに好まれている5.7リッターV8エンジン搭載車と、燃費面で市街地の警察に好まれている3.5リッターV6エンジン搭載車がある。ブレーキ、冷却システム、電子制御スタビリティーコントロール装置、ステアリングが強化あるいは最適化されているほか、シフトレバーがフロアからコラムに移されている。ミシガン州警察とCHPのテストによれば、V8エンジン搭載車は加速・旋回・制動能力においてほかのライバル車よりも優れているという。現在はアメリカのみならず、カナダ、メキシコ、バーレーンなどでも採用されている。チャージャーの警察仕様車の項参照。
- フォード・クラウンビクトリア・ポリスインターセプター(Police Interceptor)
- フォードのフルサイズセダン「クラウンビクトリア」を土台に使用した、パトカー仕様車。商品コードP71。世間での通称は「CVPI」など。
- ベース車両からパトカーへの変更点としては上記のもののほか、ドア内側に防弾パネルを注文装備できる。公式サイトの動画によると、散弾銃の12ゲージから発射されるスラグ弾や、7.62mmライフル弾をこのパネルは完全に止める。注文料金は運転席ドアのみが$1200、左右前部ドアが$2400。
- その他の安全対策としては、後部衝突時に燃料漏れによる火災が発生しやすいと言う欠陥騒動があったことから、燃料タンク防護材の無料取付けを実施した。フォードによると、時速75マイル(約120km/h)で後部に衝突されても燃料タンクに穴はあかないという。また燃料タンク付近に自動消火装置を装備した。これは強い衝撃をセンサーが感知すると作動するもので、運転席のスイッチから手動操作することも可能。
- 2011年9月に最後のモデルがロールアウトし、同年で生産終了となった[8]。
- フォード・ポリスインターセプター
- 2011年に発売された、3世代目のポリスインターセプター。セダンとユーティリティの二種類があり、前者はCVPIの後継にあたる。
- セダンのベースとなるのはフォード・トーラス。V6自然吸気を搭載する前輪駆動と四輪駆動、V6ターボを搭載する四輪駆動の三種類があり、これはトーラスの構成と同じ。冷却系やサスペンションが強化されており、フロントにはサブフレームも装着される。シフトレバーはコラム式に変更され、シートも警察官の要望を取り入れた専用の6ウェイパワーシートにされた。センターコンソールはCVPIと同じもので、装備の使い回しができる。オプションでドアに防弾パネルをつけることも可能。クラウンビクトリアで後部衝突時の問題があったことから、時速75マイル後部衝突試験もクリアするという。見通しの悪い交差点での衝突を回避するために警告を出す、BLIS(Blind Spoto Information System)も装着可能。
- ユーティリティのベースはフォード・エクスプローラー。エンジンはV6自然吸気の一種類のみで、2WDと4WDが用意されている。
- カーボンモータース・E7
- カーボンモータース社が2008年に発表した次世代のパトカー専用車。同社によると供給開始は2012年からとされていたが、後述の資金供給問題により2013年に同社が倒産した為、実際に製造される事はなかった。
- 動力系統には300馬力を発生するBMW製3.0L直6ディーゼルエンジンと6速ATを搭載していた。
- 同社はE7は0→100km/h加速を6.5秒で、ゼロヨン加速を14.5秒で行う動力性能を備えつつも燃費は28〜30マイル/ガロン(およそ12km/L)で済み、航続距離は522マイル(およそ835km)で、他社製品と比べて動力性能でも運用コストでも優れていると述べていた。
- 外観の特徴は警光灯やプッシュバンパーをはじめから組み込んでいること。警光灯はボディの屋根前端部や側面、ピラーなどに組み込まれており、一見するとスリックトップのような外観ながら後付のように車内にはみ出すようなことはなかった。ドアは観音開きで、後部へ容疑者を載せる時の負担を軽減していた。
- 機能面ではレベルⅢ-Aの防弾措置が施されていた。ナンバー読取装置なども搭載可能。ステアリングスイッチは無線や警光灯を操作するためのものになっており、見た目は一般の乗用車で使用されるものと似ているが、機能はパトカー専用モデルらしいもの。シートは腰の辺りが大きくえぐれており、ガンベルトを装着した状態でも着座しやすいようになっていた。
- 同社は2008年にアメリカ合衆国エネルギー省(DOE)が先進的なエコカー開発を後押しする目的で発表した自動車製造先端技術インセンティブプログラム(ATVM)に基づく資金供給を当て込んで車両の開発を行っていたが、2009年にフォード・モーターや北米日産、テスラモーターズ、フィスカー・オートモーティブが早々とATVMでの資金調達に成功する中、同社の融資計画はDOEからなかなか承認されなかった。2012年3月7日、当時のアメリカ合衆国エネルギー長官スティーブン・チューは、同社の融資資金返済計画に問題があるとして同社が申請していた310万米ドルの資金供給を最終的に拒否した。同社はDOEの融資拒否は警察車両における既得権益を持つビッグスリーに配慮した政治的意図に基づいたものであると主張したが、ATVMは元々リーマンショックにより疲弊したアメリカの自動車産業を救済する目的でアメリカ合衆国財務省が発表した不良資産救済プログラム(GM、クライスラーが救済融資を受けた)とは無関係であり、DOEは賃金の未払いや債務返済繰延べなど資金難に陥っていた同社の財務状況が融資拒否の原因であるとした。同社と同様にATVMでの融資を拒否されて倒産や吸収合併された会社は三輪自動車のアペラ・モーターズ、プラグインハイブリッド車のブライト・オートモーティブ、電動オートバイのブラムモなどがあった。
装備
アメリカでは機関ごとの方針でパトカーの装備は異なり、上記の写真で見られるようにプッシュバンパーひとつ取ってもまちまち。装備品の製造メーカーも多く、同じ機能を目的としていても様々な製品がある。
- ワーニングライト(ライトバー)
日本で使用されているものと機能や形状はおおむね同じだが、アメリカではハロゲンやストロボ式以外にもLED式がかなり広く普及している。ハロゲンやストロボ式に比べ、LED式はかなり薄くできるのが特徴。高速走行で空気抵抗が強くなると稀に警光灯が風圧で取り付け部からもげてしまうことがあるので、高速での追尾を行うCHPは、ハロゲン式ながらより高速走行に耐えられるFederal Signal社の「Vector」を採用していた(5個の回転灯が三角形に並んでいる)。しかしLED式の方が空力的に優れており、また警光灯としての性能も十分であることからLED式に変更した。ハイウェイパトロール以外では、ハロゲンランプと反射鏡を使用するウィレン社の「Street Hawk」を採用する機関がまだ多い。
- スリックトップと呼ばれる、通常の警ら用パトカーと同様の塗装を施しているものの、上のダッジ・チャージャーのようにライトバーを設置しないパトカーもある。元々は高速追尾時の空気抵抗を減らすためであり、より目立ちにくくなる効果もある。
- ワーニングライト(そのほか)
- グリル内やプッシュバンパーに取り付けるタイプ、ボディやサイドミラー前面に埋め込むタイプ、ライトシールド内に設置するタイプ、フロントグラス内やダッシュボード、デッキに取り付けるタイプなど様々な形状のものがある。
- ヘッドライトや、ブレーキ&バックアップライト自体をリレーや半導体で点滅させるものも多い。
- カリフォルニア州では、道路法で“赤の不動光が前から見えること”が緊急走行の条件となっている。また、覆面車のデッキには黄と青の点滅灯を装備している。
- ディレクショナルライト
- 他の車両に対して交通誘導のための合図を出す装置。8個程度のライトが横一列についており、左流れや右流れ(トラックやバスの3連ウインカーのような感じ)、中央から両脇向け流れ、全点滅などの発光パターンを使って交通誘導を行ったり、ワーニングライトとして使用する。ライトバーと一体になっているものと、単独で設置するものがある。全てオレンジ色のライトのもののほか、最端部のみ赤や青だったり、最近ではLEDの普及によって何色か発光させられるものもある。Whelen社の「トラフィックアドバイザー」やCode3社の「アロースティック」という製品名がその役割をよく表している。
- LED電光掲示板 (Message board)
- ディレクショナルライトと同様に、警光灯後部やリアハッチ窓の上部に装着するもの。POLICE EMERGENCY KEEPBACK(警察官対応中 接近注意)といった文章を表示可能[9][10]。文章及び発光色は専用のソフトを使って編集と設定をすることが可能。
- サイレンアンプ&スピーカー
- 日本より音の強い100Wタイプが主流で、200Wタイプもある。音色は以下のようにいくつかの種類がある。
- 他にも、ヨーロッパ風の「Hi-Lo」や交差点進入時などに使うブーブー音の「Air Horn」などがある。覆面車用の簡素なモデルを除いては、マイク拡声機能、無線音声を拡声できる機能も備わっている。
- 停止指示板
- ミシガン・ハイウェイパトロールの特徴的装備だが、ボンネット上に「STOP」と書かれた照明付の板を設置し、停止を求める場合にそれを点灯させて停止を促す。その形状から「Shark fin」(サメのヒレ)というあだ名がついている。
- 昔のパトカーには右前のフェンダー付近に「STOP」の文字が出る警光灯を装備し、これを用いて停止指示を行うこともあった。現在はワーニングライトとサイレン、拡声器によって停止指示を行うのが一般的なので、殆ど見られなくなった装備である。
- スポットライト
- ライトバーに前方や周囲を照らすテイクダウン(takedown―分解・解体)ライトや、側方を照らすアーリー(alley―路地・裏通り)ライトというものが内蔵されている。また、車体前部ピラーに、内側から操作可能なガンスポットライトを設置しているものが多い。手持ちのものを車内に備え付けている場合もある。
- プッシュバンパー
- グリルガードのような形状をしたグリル正面に突き出している部品。フェンダーまで回りこむような形状のものもある。PITマニューバと呼ばれる逃走車両への強制停止措置などにおいて、車体を防護しつつ確実に目標を「押す」ために用いられる。
- パーティション
- 前後の座席を仕切る板。金属製の下部に、上部は金属メッシュやアクリル板というのが一般的。後部座席に乗せた容疑者が暴れても、前席の乗員に危害が及ばないようにするためのもの。
- リアシート
- 前席がファブリックシートでも、後席はビニールレザーであることが多い。護送中の被疑者が隠し持つ証拠物件を座席の隙間に隠すようなことができないよう、合成樹脂で一体成型された硬いベンチのような後部座席もある。これは頑丈な構造ゆえ被疑者が後部座席で暴れても痛みにくく、体液や嘔吐物などで汚れても洗浄が容易。ドアパネルまで覆ってしまうものもある。
- ガン・ロック
- ショットガンや自動小銃の火器固定用器具で、電子ロックで施錠できるようになっている。天井やパーティション、ダッシュボード、トランク内などに設置されている。銃を戻す時はワンタッチ、取る場合は開錠が必要になっている(隠しボタンを押す事で一瞬だけ固定部が解放される)。
- 無線機
- パトカーのことをRMP(Radio Mobile Patrol)と呼ぶ所以でもある無線機は必需品。単独で使用する一般的なタイプのほか、携帯無線機を差し込んで使用するハンドマイク付きの充電スタンドタイプなどもある。CHP、ロサンゼルス市警察では小型無線機が搭載されており、カーラジオやサイレン・警光灯などと共に集中制御出来る制御盤が接続されダッシュボードに装備されている(ラジオが鳴っていても無線の信号が入ると最優先で音を大きくして聴かせる)。州の他官庁の動静を知るために受信機(一般には800MHz帯。無線機では既設定の周波数しか送受信出来ない)を装備する機関もある。
- 車載端末(MDT/CDT)
- データ通信を活用し、ナンバー照会や手配情報においてより複雑な情報のやり取りを行う。カーロケーターと同じく警察の指令所で位置を確認したり、また他のパトカーの所在地を表示する機能もある。MDT(Mobile Data Terminal)に対しCDT(Computer Data Terminal)はWindowsなどのOS(使用されているのは一般版ではなくWindows Embedded)で動かすため、車内で報告書などの文書作成を行うことなどもできる。取り外し可能なノートパソコンを乗務ごとに接続するものや、デスクトップ又はノートパソコンをトランクに固定設置するものなどがある。近年はパトカーに搭載される電子装置が増えたため、車載端末のインターフェイスはデータのやり取りに用いるだけではなく、サイレン、警光灯、無線、レーダーなどを統合的に操作できるものが増えてきた。一例を挙げると、ロックウェル・コリンズ社の緊急車両用システム「iForce」がそれである。乗務している警察官はタッチモニターパネルや手元の入力機器を通じ、アクセス可能な車載機器を操作できる。
- またタブレット端末の普及は警察にも及んでおり、車載端末のインターフェイス部分をタブレットとしたものもある。車外へ容易に持ち出すことが可能で、車外でも免許証や各種身分証明の照会などが可能[11][12]。
- ビデオカメラ
- 車内の天井、またはダッシュボードに設置される記録用カメラ。前方や後方を撮影し、主に容疑者追跡や制圧の様子、パトカーや警察官に対する発砲の映像などを捉える。映像には字幕で日時、警光灯の作動状態、アクセルやブレーキの操作、走行速度などが記録されるが、日時以外の要素は採用したシステム毎に異なる。裁判での証拠資料や警察官の職務執行の適法性を証明する目的でつけられているが、逆に警察官の不適切な発砲や過剰な実力行使による制圧の様子が捉えられ、後に人権問題になることがままある。
- 動画はハードディスクなどの記録メディアに保存され、ファイルはワイヤレス通信や、取り外し式ハードディスクを直接警察のコンピュータに接続するなどし、パトカーから管理用サーバに移される。管理権限者以外の者がメディアに触れられないようにするため、車載記録装置のハードディスク収納部に鍵がつけられたものもあるなど[13]管理は厳重である。ここまで厳重に管理されるのは、撮影された映像が裁判資料になることから、その客観性を保つ必要がある為。また警察に不利な証拠であっても、保存・公開されることが一般的である。
- ナンバープレート自動読取り装置
- 日本のNシステムと似たようなものだが、車載になっているのが特徴[14]。トランクなどにカメラを設置し、傍を通過した車両のナンバーを読み取る。装置が読み取ったナンバーの情報は日時やGPSの座標データと共に電送することができる[15]。どのような部署及び車両に搭載するかは各警察機関の判断となる[16]
- トラフィックシグナルライトチェンジャー
- 信号を変える装置。緊急走行中に前方の信号機を操作することによって、より安全な通行・追跡を可能にする。
- レーダー
- 主にスピード取締を目的とするパトカーのみに搭載されることが多い。
- 車両に搭載される用具
- 停車させた車両が逃げようとしたら踏ませてタイヤをパンクさせるスパイクシステム、パイロン、事件現場を仕切るためのバリケードテープ、発煙筒、救急資機材(人工呼吸用マスクの付いた医療用酸素のボンベ、絆創膏)、予備の警棒など。大抵はトランクに搭載される。
パトカーの乗務員になる為の訓練
アメリカでは地域警察の中核にパトカーによる警ら活動がある。日本のような交番制度が極一部にしかなく[17]、日本と比べて遥かに広い管轄を守るには自動車が必要不可欠である(逆に、街中で見かけるパトカーの種類と数も、地元自治体だけでなく郡保安官あり州警察あり、日本の比ではない)。またそういった事情から、全くの新人が最初にパトロール部門に配属される点は日本と同じだが、新人もまたパトカーの乗務から警察官としてのキャリアを始めることが一般的である。故にパトカー運転技術の習得は全ての警察官にとって必須になっており、警察学校で初任教育を受ける警察官は全員が操縦課程を受講しなければならない。
緊急車両の操縦技術訓練は「Emergency Vehicle Operator Course」通称EVOCと総称され、直訳すると「緊急自動車操縦者課程」になる。初任の候補生が受ける基本的なものから、現職が受ける操縦訓練、白バイの操縦訓練などを包括する。訓練内容は故意に車をスピンさせるもの、パイロンで作られたコースを走る前走車を追尾するもの、三箇所ある信号機のうち「青」になったところを瞬時に判断して通過するものなど様々。
アメリカの映画やドキュメントで見られる、車体を被疑車両にぶつける強制停止措置「PIT maneuver(PITマニューバ)」の訓練もEVOCに定められる。PITは基本的な訓練には含まれず、後に所定の訓練を受けなければならない。またPIT資格を有していない警察官は実施することができない。
PITマニューバ
車両を被疑車両にぶつけてスピンさせるなどし、逃走の継続を阻止する強制停止措置。PITの意味には諸説あり、Pursuit Immobilization Technique(追尾走行阻止技術)、Precision Immobilization Technique(精密走行阻止技術)、 Push It Tough(強く押す)など。いずれにしても、逃走を阻止するために車体をぶつけて被疑車両を押す、という意味が含まれる。なお、スピンさせたからと言って被疑車両が必ずしも走行不能になるわけではないので、態勢を立て直して引き続き逃走するケースも見られる。このようなケースを防ぐ為に、スピンして停止した車両を他の警察車両で取り囲んだり、場合によっては前後・左右から警察車両をぶつけて完全に包囲する事もある。
PITは以下の三つの過程を経る。
- パトカーの前部フェンダーの角あたりを、目標の後部フェンダー辺りに当てる。
- 当たったらそのまま舵を切り、目標のフェンダーを介して後輪に横方向の力を生じさせる。
- 目標は後輪に発生した横方向の力により、安定を失ってスピンする。
実行にあっては、管轄機関の当直責任者などの指令に基づく必要があるのが一般的。概ね時速50マイル(約時速80km)以下では致死性の威力行使とはならず、PITの違法性は阻却される。しかし最近では横滑り防止装置の普及により、後輪に外部から横方向の力を入力しても装置が減衰してしまうため、PITの効果が薄れているとの見解もある。[18]
このようにPITは制度として現在は確立されており、警察官が思いつきでぶつけているわけではない。よって、同様のことを日本の警察官がやることはできず、もし場当たり的にやった場合はその警察官及び都道府県警察が刑事・民事双方で、違法性が問われる恐れがある。もし日本で行うには、PITを行うための法整備及び訓練や実施制度の確立が不可欠であろう。
車両の評価制度
警察車両はその性能が任務や運営費を左右することから、警察独自の評価制度を設けて警察向け車両の試験を行うことがある。言わば「警察車両アセスメント」であろう。有名なものは、ミシガン州警察とロサンゼルス郡保安官によって実施される試験。これらの機関では毎年各メーカーの警察向け自動車及びオートバイを集めて試験を実施しており、試験内容やその結果は一般にも公表されている。試験項目は周回路でのラップタイム、急加速、急制動、追尾を想定した走行試験、燃費、居住性、無線など機器の設置性、快適性、整備性など多岐に及ぶ。
審査は、ミシガン州警察は警察官及び民間の協力者によるテストチームが、ロサンゼルス郡保安官のものは同郡保安官助手とロス市警警察官の合同テストチームが、それぞれ行っている。
これら以外の機関でも調達にあたって独自のテストを行うことがあり、性能やコストのバランスが勘案される。よって調達単価が安ければ採用されるとは限らない。
中古パトカー
日本とは逆に警察が積極的に売却しているため、中古パトカーは広く流通しており、中古パトカー専門業者も数多くある。新車市場が年間7万台ほどのようなので、単純に考えて毎年数万台のパトカーが中古として放出されていることになる。放出はワーニングライトやラジオなどの警察用装備は取り外された状態にされ、入札によって売却先を決定する。先述の専門業者が落札することも多い。そのようにして放出されたパトカーは、予算規模の小さい警察が購入して再びパトカーとして使用することもあれば、タクシーとして使用されるもの、一般の中古車と同様に個人の自家用車として使用されるものがある。中には熱心なパトカー愛好家により、再びパトカーの装備を施されて趣味として楽まれる車もある。そのような再びパトカー仕様に改造された車は日本からでも購入可能であり、日本の保安基準を満たしていれば実用も可能である。パトカーは酷使される一方で整備が行き届いている個体が多いので、長持ちする事を考えてあえてパトカーを購入する者もいる。
レース仕様車
アメリカではアマチュアが参加するドラッグレースなどの草レースが盛んだが、これにレース仕様のパトカーが時々出ている。殆どが警官による自主的な広報活動を目的としたもので、麻薬追放や公道における違法レースの撲滅、及び合法レースへの参加を呼びかけるものが多い。車両購入と改造、レース出場にかかる諸費用は警官有志が自費負担している。車両は基本的にそのレースの種類に応じたレーシングカーで、警光灯などを装備しパトカーとしているのが特徴。所属している機関の許可が出れば、公式シンボルマークや名称ロゴを車体に施すこともある。
日本
日本では主に、警察の治安維持活動、ライフラインを点検する為の水道局、ガス会社、電力会社、電話会社、鉄道会社、法務省入国管理局、国土交通省、高速道路会社(旧日本道路公団等)の交通管理隊、また「青色防犯パトロール」と呼ばれる自主防犯活動に用いられる町内会(自治会)などで使用される車両や民間警備会社の車両などがある。防犯活動用など一部のもの(住民有志の自家用車であったり役所の公用車だったりする)を除き、特種用途自動車(8ナンバー車)である。
日本の警察におけるパトロールカーは、緊急自動車指定を受けた警察の車両であり、パトカーと略される。
パトロールカーは、大きく白黒パトカー(一般に見ることのできるパトカー)と覆面パトカーに大別される。
よく見かけるパトカーは、消防車や救急車と違い「機動警ら(地域警察)」という運用であり、警察本部・警察署などの庁舎で待機ではなく、常に街中にいて犯罪・事故の未然防止と110番通報時に現場へすばやく臨場をすることに備えている。また「交通警察(交通機動隊・高速道路交通警察隊・警察署交通課)」や「刑事警察(機動捜査隊・警察署刑事課)」でも街中で取締や警戒・捜査を行うだけではなく、街中から現場へすばやく臨場することもまた運用目的である。
白黒パトカー
制服警察官が乗務するパトカーで警察署の地域課機動警ら係や、交通課、自動車警ら隊、高速隊などに配置され、正式には、交通取締用の車両を「交通取締用四輪車(交通取締用無線自動車)」、主にパトロール用の物を「無線警ら車(警ら用無線自動車)」という。つまり各警察部門用の無線機を搭載した、交通取締用もしくは警ら活動用に行う自動車という意味である。先述の街中による警らや交通取り締まりなどの公務執行をしてる自動車であり、「警察官の乗用車」というわけではなく警察部門の各執行活動の為の自動車としてある。
これは警察において最も多い型のパトカーで、日本の警察では主に地域警察の警邏活動、交通警察の事故や違反の抑止、刑事警察における捜査・犯罪警戒活動において使用される。刑事捜査における尾行の際、被疑者への警察の存在を秘匿する(密行と称する)必要があるので覆面パトカーを使うが、それ以外の場合は、むしろ警察車両であることを前面に押し出しわかりやすく白黒パトカーで捜査や取締を行う。
車両のデザインについて、警察庁では「車体を白黒色に塗り上部及び前面に赤色警光灯と拡声器を備え、横部に都道府県名を表記する」という指針がある。1950年(昭和25年)に登場したパトロールカー(当時は移動警察車と呼ばれた)の塗装は白色一色であった。1955年(昭和30年)、当時ほとんどが白色一色であった一般車と区別するため[19]、米国のパトロールカーを参考にして、未舗装道路が多かった当時の道路事情を考慮して下半分を汚れの目立たない黒塗装のデザインにした。しかし細かな規定はなく、各都道府県警により塗り分け方や警光灯の形状などが微妙に異なっている。文字表記は道府県によって「○○県(府)警」(例・大阪府警)と「○○県(北海道)警察」(例・神奈川県警察)に分かれている。香川県警察では以前は「香川県警」だったが、近年導入された車両では「香川県警察」に変更されている。字体についても様々であるが石川県警のように明朝体からゴシック体に変更された地域もある(現在、明朝体を使用しているのは鹿児島県警や熊本県警など少数。)。青森県警は、フロントドア下側に白抜きで白鳥のイラストが描かれている。大分県警は、以前はアメリカの車両のように赤色と青色の混合の警光灯を装備していた車両も存在したがこれは皇族警衛の際に使用された車両である。皇族警衛では地域を問わず車列先導を担当する白黒パトカーは、散光式警光灯の片側もしくは一部のカバーを青色に付け替えた車両を用いる慣習であるが、近年は赤色灯はそのままで着脱式流線型の青色警光灯を取り付けた車両が主流となった。また、2008年12月に福岡県で開催された日中韓首脳会議の警護の際は警護対象車を識別するため国ごとに異なる色の警光灯を装備していた[20]。
また、在日米軍が所有する一部のパトカーも青と赤混合の警光灯を装備した車両がある。また警視庁は2007年、外国人にもパトカー(ポリスカー)であると認識してもらえるように、また視認性向上などの理由で、黄色の反射材で作られた「POLICE」文字のステッカーを左右ドアと後部バンパーに、警察手帳に装填されている記章をデザイン化した、やはり反射材製のステッカーをドアに貼り付ける事を決めた[21]。
パトカーは警察の証として赤色警光灯やサイレンを装備しているのではなく、警光灯・サイレンは道路運送車両法に定められた緊急通行車両の緊急走行時の安全装備として取り付けている。急走行する際にパトカーと事故を起こさないよう、視覚(警光灯の光)と聴覚(サイレン音)で道路を通行している他の車両や歩行者に緊急走行中と認識させる注意喚起の為の安全装備品(警光灯・サイレン)としてである。
なおパトカーは種類・用途により排気量・出力が異なっている(大きい順に「高速隊・交機パトカー(3500-2000cc)」・「警らパトカー(2500-1900cc)」・「ミニパトカー(1500-660cc)」)ため、隊を越えての車両異動(例:自ら隊から交機隊への車両異動など)は基本的になく、各隊毎に専用車両が新規発注されている。
また多くのパトロールカーには、屋根に所属警察署・隊名略号(コード)と号車数字が表記されており、警視庁や一部の警察本部ではフロントガラスにもこの表記がある(一例として警視庁麹町警察署所属の1号車であればフロントガラスに「麹町1」、屋根には「麹1」、本部302号車なら「302」、高速道路交通警察隊所属3号車なら「高速3」、屋根には「速3」など)。無線のコールサインを兼ねているため警察官は無線交信時、最初にその番号を名乗る事になっている。特に屋根上の表記は「対空表記」と呼ばれ、ヘリコプターを運用する航空隊員が地上の車両と無線交信をする際にコールサインを把握する目的がある。そのため警察ヘリと交信するための基幹系警察無線を基本的には車載していないミニパトなどの交通執行車両や交番・駐在所配備車両には対空表記がないものが多い。秘匿の用をなさなくなるため、覆面パトカーにも通常は表記されない。
覆面パトカー
覆面パトカーは平時の外観は一般車両と同じ様相をしており、緊急走行開始時や対象者検挙時にのみ赤色灯を露出させサイレンを鳴らすパトカーをいう。パトカーであると気づかれずに不審車両や不審人物への職務質問が出来るので、不審者を取り逃がす割合が低い。正式には取締りに用するものを「交通取締用四輪車(反転警光灯)」、要人警護に用するものを「警護車」、犯罪捜査の用に供するものを捜査車両といい、総称してこの3種を覆面パトカーと呼び単に「覆面」や「覆面車」と略される時もある。但し捜査車両の中には緊急自動車指定(騒音走行認定)を受けておらず、着脱式赤色回転灯とサイレンを装備していない一般車両も存在する。また覆面パトに乗務する警察官は必ずしも警察の制服を着ているとは限らず、「私服警察官」として一般人と同様にスーツを着てパトロールを行う場合もある[22]。
外装上の特徴として、警察無線用のアンテナがある。基本的には無線機を搭載していると思わせない擬装を施したアンテナが使用され、古くはフェンダーに取り付けるラジオアンテナを模した「F-1型アンテナ」やパーソナル無線用のアンテナを模したタイプが使用され、1990年代には自動車電話用アンテナを模した「TLアンテナ」が主流となった。それぞれに「本来のラジオ用アンテナは存在するため『ラジオアンテナが2本有る』ように見える」「パーソナル無線搭載一般車両の減少」「携帯電話の普及による自動車電話の減少と携帯電話オプション品としての同型アンテナの普及率の低さ」という短所から「覆面パトカーの象徴」のように広く一般にも認知され秘匿性に欠けるため、2000年代初め頃からは車載アナログテレビのダイバーシティアンテナを模した「TAアンテナ」に殆ど置き換わった。しかし、地上デジタル放送の開始で一般車両のテレビ視聴用にはフィルムアンテナが主流となった現在においてはTA型の秘匿性も落ちており、警察無線用の周波数に調整したフィルムアンテナや、現在ラジオアンテナの主流であるプラスチック外装で短い棒状の通称「ユーロアンテナ(日本アンテナ製:MG-UV-TP、WH-UV-TPなど)」が主流となっている。例外として、一部の県警ではアマチュア無線用のホイップアンテナを模したデザインの物を使用している場合もある。
交通取締用四輪車(反転警光灯)
交通取締用四輪車(反転警光灯)は、警護車同様に赤色警光灯が車内天井部に格納されており、緊急時にはルーフ中央部分が開いて小型の流線型赤色警光灯が外部にせり上がって来る(かつて180度反転して収納されていた構造から「反転式」と呼ばれるが、現行製品は格納スペースの中で横倒しになっており、蓋が開く動きに連動するアームによって外部に露出させる)。また、ごく初期の覆面パトカーは、回転灯が上昇・下降するのみで、反転はしなかった模様である[23]。
交通覆面パトカーは交通機動隊(交機隊)や高速道路交通警察隊(高速隊)、また警察署(所轄署)の交通課などに配備されて主に交通取締りを行なっている。交通機動隊など交通違反取締りを行う車両には、屋根中央部分から格納されている赤色灯がスイッチ操作により自動的にせり上がるようになっている。そのため、車内天井には反転灯を収納する場所の窪み(その形状から「洗面器」と呼ばれる事がある)がある。また、車内に乗っている警察官は原則として交通機動隊の青色制服または合皮製黒色制服を着用することになっているので、車内をよく観察すれば警察車両であると判別できる。例外として各地の暴走族(マル走)対策車両などには、捜査用車両と同様にマグネット式の赤色灯を使うものが存在し、マル走対策などでは交通機動隊であっても私服で出動する場合もある。リアトレイに設置された電光表示板に「パトカーに続け」や「速度落とせ」などと表示される機能の付いた車両もある。
交通覆面パトカーは白黒パトカーと同じく、各自動車メーカーにグレードが存在する。しかし白黒パトカーに比べて需要台数が少ないために車種も少なく、現在はトヨタ・クラウンのみカタログモデルとして設定されている。しかし白黒での記述にあるように県警単位で購入したり、警察庁が直接入札するケース、寄贈されるケースが主流となっているため、普通車仕様の覆面パトカーも多数存在する。バブル期には貿易黒字を減少するために、国費でメルセデス・ベンツやBMWの外国製高級車が購入され、主要県警の高速隊に配備されていた事例もある。
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フロントバンパー内にオートカバー形状の警光灯と、リアガラス上部左右にTAアンテナを装着した180系クラウン
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フロントグリル内に警光灯と、リアガラス上部左右にTAアンテナを装着した180系クラウン
警護車
警護車は、主に内閣総理大臣を初めとする閣僚や官公庁の上官、都道府県知事など国内外の要人警護を目的に使用され、ベース車にはトヨタ・センチュリー、トヨタ・セルシオ、トヨタ・クラウンマジェスタ、日産・シーマ、日産・フーガ、日産・スカイライン、日産・ティアナ、ホンダ・レジェンド、スバル・レガシィB4(BM9)などの国産高級車やスポーツセダンが採用される場合が多いが、2008年頃にはメルセデス・ベンツ・S600L(W221・右ハンドル防弾仕様)が数台国費導入されている。また、トヨタ・ランドクルーザープラド、トヨタ・ハイラックスサーフ、スバル・レガシィアウトバックなどのSUVをベースとし、警護の車列には直接加わらない遊撃警護車も配備されている。
一部の車両を除き交通取締用四輪車同様に、赤色警光灯が車内天井部に格納されており、ルーフ中央部分が開いて小型の流線型赤色警光灯が外部にせりあがってくる。前面赤色警光灯は、フロントグリルの中に取り付けられているのが一般であるが、近年は全国的に視認性を高める目的でLEDの前面赤色警光灯を装備する志向にある。このうちセルシオなど大排気量車の中には防弾ガラス仕様も存在する。
警護車は各都道府県警の警備部に配備され、私服(多くは背広にネクタイ)の警察官(警視庁のセキュリティポリス(SP)や道府県警察の警備隊員)が乗務する。警護車を使った警備については、警護車を1台ないしは2台利用して車列をつくり(車列警護)、警護対象者の乗る対象車の前で先導するか、対象車の後から追尾するスタイルが一般的である。なお、この場合では警護車は緊急自動車とならず、車列の走行に障害となる一般の交通を一時停止させるため、乗務する警察官が、警護車から身を乗り出し(「ハコ乗り」)、誘導灯を振るなどして一般車などを排除しながら走行する。
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ランドクルーザープラド
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スカイライン
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レガシィB4
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S600L
捜査車両
捜査車両は機動捜査隊、警察署(所轄署)の刑事課や生活安全課、交通課などに配備され、私服の刑事警察官が乗務する。国費購入の場合には機動捜査用車、私服用セダン型無線車、私服用ワゴン型無線車などとカテゴリーが分けられて入札により調達されるが、時には数百台単位での台数となる。白黒パトカーと比較すると改造箇所が少なく、近年市場人気が下落傾向のセダン型車を多く販売できるため、メーカーやディーラーはマイナーチェンジやフルモデルチェンジ直前のモデルや、不人気モデルであるとかなり安値で入札することがある。調達する警察側としては結果的に一番安いときに大量購入することになることが多い。近年ではセダン型の自動車が市場でも人気が落ち、ミニバンやSUVの乗用車が販売台数を飛躍的に伸ばしているため、捜査上秘匿性を重要視する覆面パトカーにとっては、セダン型ではかえって目立ってしまう事態もあり得るためミニバン型の車種を導入することが多くなってきた。
私服用ステーションワゴン型無線車、私服用ワゴン型無線車、私服用ワゴン型車などとカテゴリ分けされ、いずれも2000cc級や2400cc級などと排気量によっても分別している。また、狭い道路での活動(被疑車両の追尾など)などでは排気量が小さめな車種も必要とされることから、1500cc級のセダン型やハッチバック型、ステーションワゴン型が調達されることもある。
刑事ドラマやサスペンス系の2時間ドラマによく登場するタイプのもので、緊急時にはマグネット吸着式の流線形赤色警光灯をルーフに付けて走行する。また、高速時の脱落を防止する為に、ルーフ中央には、ボルト固定しているピンを装備する場合があるが、外見から固定用ピンが目立つので、車両によっては取り外し、ネジ等で穴を塞いでいる場合もある。
神奈川県警刑事部では視認性をより高めるために赤色灯を左右2個取り付けるという独自の指針を出している。
ただし必ずしも捜査車両=覆面パトカーではなく、特に地方の所轄警察署などでは緊急走行のための装備を持たない車両が多く、以前は1500ccクラスのセダン型が多く見られた。ナンバーを外部に知られると用をなさなくなるので、必要に応じてレンタカーを借りたり、捜査員などの私有車(マイカー)を使うようなケースもある。場合によっては、地域課や鑑識などが覆面車を使用する事もある。また、一部の県警では所有者がリース会社名義の捜査車両もある。
捜査車両の中でも警察署長や警察本部の幹部クラスが乗務する車両を指揮用車という。事件や事故で臨場することはあるが、普段は幹部の移動用として用いられ、警らに用いられることはない。
現在使用されている国費導入された主な捜査車両
- 機動捜査用車
- マークX(2代目GRX130前期・後期)
- スカイライン(V36)
- スカイライン(V35)
- ティアナ(J31・J32・L33(XE/自動ブレーキレス))
- レガシィB4(BE・BL・BM)(BM9は2.5GTベースで捜査用と警護用が存在)
- インプレッサWRX(GDA-F・リアスポレス・AT)
- 私服用無線警邏車・その他のカテゴリーの捜査車両
- アリオンA20・A18(2014年度予算分からはA18を導入)(初代・2代目)
- クレスタ(GX100)
- ノア(AZR60・ZRR70)
- ガイア
- エスティマ・アエラス(2013年モデル)
- ブルーバードシルフィ(G10)
- セレナ(C24・C25・C26)
- エクストレイル
- エルグランド(E51)
- エルグランド・ハイウェイスター(E52後期型・サンルーフ付き)
- アテンザ(初代)
- MPV
- レガシィツーリングワゴン(BH5D・TX)
- インプレッサアネシス
- フィット(GE9・15XH 4WD)
- インサイト(ZE2)
- アコード(CE・CF)
- ステップワゴン
- エアトレック
- デリカ
- SX4
- SX4・S-CROSS
- スイフト(3代目)
- ランディ(C26)
- キザシ
- エスクード
かつて使用されていた主な捜査車両
- マークIIセダン
- ビスタ
- キャバリエ4ドア
- ローレル
- セフィーロ(A31)
- プレセア(R11)
- オースター
- サニー・スーパーツーリング(B14前期)
- ブルーバード(U14)
- ギャランΣ/ギャラン
- エメロード(最終形)
- ランサーフィオーレ
- ホンダ・バラード
- アコード
- カペラ
- レオーネ
- レガシィセダン(BC/BD)
また、最近では大人数の人間を乗せたり優れた積載性、居住性が必要となる場合のためにミニバン型の捜査車両も増えており貨物車、*日産・エクストレイルなどSUVが採用されているケースもある。
警視庁などでは近年ダイハツ・ハイゼットや三菱・ミニキャブ、日産・クリッパーなどのいわゆる軽ワンボックスの捜査車両やハイエースなどワンボックス捜査車両も導入されている。これらの車も、赤色灯とサイレンアンプが装備され緊急走行が可能であり、また隠蔽性の良さが買われ交通取り締まりを職務とする交通執行課(主に警視庁)に配属されている車両もあり、交差点や信号等の交通違反の取り締まりにも使用され威力を発揮している。
指揮用車は2000ccから3000cc級のセダン型の高級車が多い。トヨタではクラウン、マークXなど、日産ではティアナなど、スバルでは レガシィB4(BM9)などが採用されている。
ちなみに1960年代頃までは単にセダンに円柱型の回転灯をつけた車両が使用されていた。その後円柱型回転灯をネジで固定する形での脱着式、流線型回転灯のネジ止めを経て現在に至る。地域と時代によって交通取締用四輪車と同じ反転装置を使用していた車両も存在した。
ミニパト
1,500cc以下でなおかつ、5ナンバーサイズの枠内に入る(例外的にごく一部に全幅1,700mmを超える3ナンバー扱いの車種も存在)小型自動車ないし軽自動車を用いたパトカーで、白黒パトカーと覆面パトカーの二種あるが、一般的に現場ではミニパトと呼ぶのは本署から比較的遠方の交番や駐在所に配備される「小型警ら車」と、もっぱら違法駐車の取締や街頭での交通整理や指導を行うために使われる所轄署の交通課や交通機動隊に配備される軽自動車~1,300cc程度の白黒パトカー(現場でも「ミニパト」と呼ぶことが多いようである)を指すことが多い。「小型警ら車」と呼ばれる前者は昭和49年、全国100か所の道路事情や気象条件の厳しい駐在所に初めて配備された(昭和50年版「警察白書」)。政府(警察庁)により国費で1,000cc~1,300ccクラスのものが大量導入され全国に配備されるため、街頭でも比較的見かける機会が多い。年度によっては4WD指定で入札が行われることがあり、2WD車の入札も行われる場合、その年度は2車種配備されることもある。
また、都道府県費での調達も少なからずあり、その場合は政府調達の車種と違った車種が導入されることもある。現場で「ミニパト」と呼ばれることが多い後者は、特に警視庁のような大都市圏では軽自動車を採用することが多く、取締りの際にパトカーを停車させるスペースさえも確保しづらい混雑した道路では威力を発揮する。地方都市ではいわゆるリッターカーと呼ばれるクラスを採用する傾向が多く、管轄が広く移動距離が比較的長くなることでの、耐久性などを考慮しているものと思われる。調達は、いずれも都道府県費によるものが大多数を占めるため、全国的に統一された車種ということはない。赤色回転灯とサイレンアンプを搭載して道路交通法施行令による緊急自動車の指定を受けている。
国費導入された小型警ら車の代表的車種
- パッソ(2007・2008・2009・2012年度国費分)
- プラッツ(2001年・2004年度国費分)
- インサイト(2009年度国費分)
- スイフト(2000・2002・2003・2005・2015年度国費分)
- ソリオ(2006・2007・2009・2011・2013・2014年度国費分)
都道府県費で導入された車種 ※ ☆は軽自動車、★は3ナンバー規格のボディが用いられた小型車
- スターレット
- キャミ
- ヴィッツ(KSP90/NCP95)
- ベルタ(NCP96)
- ファンカーゴ
- カローラアクシオ(NZE164)
- マーチ
- キューブ
- サニー(FB15)
- パルサーセダン(N14・N15)
- ティーダラティオ(SC11)
- デミオ
- ファミリアセダン
- トッポBJ☆
- コルト
- ランサーセダン(セディアは除く)
- kei☆
- インプレッサセダン(2代目の1.5Lモデルのみ)
- ストーリア
- アトレー7
- テリオス
- テリオスキッド☆
- ビーゴ
- エリオ/エリオセダン
- SX4セダン★
- ジムニーシエラ(ジムニープラスを含む)
- アクセラセダン(初代の1.5Lモデルのみ)★
またミラ(ジーノ、イース含む)、エッセ、ハイゼットカーゴ、ミニカ、アルトなどの軽自動車が特に警視庁などの大都市圏で多く見られる。
装備に関しては、無線警ら車と呼ばれるクラウンなどの白黒パトカーよりも簡素化されているのが通例で、速度取締用のストップメーターや車載型の無線機などは装備されていないことが多い。そのため、多くの警察本部では小型警ら車の運用要領などを定め、乗車する警察官は携帯無線機や無線受令機を携行するよう定めている。多くの車両にはアンテナは設置されており、これに接続されたケーブルを無線機に接続し運用する事も多い。一部の車両では、データ通信端末やカーロケなどを搭載している。
また、近年無線警ら車に装備が進むカーナビゲーションは、運用性格上あまり必要とされていないためか、装備されていることはほとんどない。無線警ら車と違い、パトカー専用グレードで製作されるものではなく市販車をベースにされるので、ベース車の装備はそのまま残されている。赤色灯は小型の散光式警光灯が取り付けられているがブーメランタイプについては他のパトカーと同じである。
パトカーの主要装備
- 赤色回転灯 - 散光式警光灯、集光式警光灯、前面形警光灯。日本国外では警告標識灯。都道府県や所属によっては、スピード計測用に前面警光灯のみ点滅させることができる車両もある。
- 昇降機 - 2000年以降の専用グレードを持つ警ら用パトカー(クルー、150系後期型以降のクラウン)に装備。散光式警光灯を地上3m程にまで持ち上げ視認性を高める。赤い光の点滅が見えない後続車に、職務質問中の警察官が接触されて負傷する事案が相次いだための対策。この装備を持つ車両はその姿から「鏡餅」と呼ぶ人もいる。
- サイレンアンプ - 拡声装置付きサイレン。かつては松下通信工業製が多かったが、現在はほぼ100%パトライト製。音は消防車と同じような「ウーウー」という音である。テレビドラマのパトカーの出動シーンで「ファンファンファン…」という音が鳴ることがあるが、これは1970年代から90年代にかけて警視庁の所轄署地域課(当時警ら課)の警らパトカーで用いられていた音で、現在では使われていない。
- ストップメーターまたはスピードガン - 警らパトカー、交通パトカーが装備。速度違反車両の速度測定に用いる。
- 警察無線、データ通信端末(グローブボックスを外して装着する)とアンテナ
- カーロケーター - パトカーの現在位置を警察が把握できる装備だが、ない車両も少数存在する。
- ドライブレコーダー - 警らパトカーに装備。違反車や犯行車両追跡時に使用し、前者の違反行為の証拠や犯人割り出しに使われる。フロント中央部に設置される。
- 助手席用ルームミラー
- 助手席用ナビミラー - Aピラーとドアミラーに装着するタイプがあり、前者は多くがカーメイト製。助手席の足元には、モーターサイレンか電子式サイレンの吹鳴スイッチペダル(押したときだけ吹鳴)がある(他車両や人などによる突発的危険時に手動よりも足元の方が速く、サイレンの吹鳴ができ危険への警告ができるからである)。
- 防犯板 - 後部座席から運転者が攻撃されるのを防ぐため、運転席上部に取り付けられるアクリル板。タクシーと同様のもの。
- 探索灯
- カーナビ - 事件・事故発生場所を迅速に確認。パトカーのみならず、ほとんどの緊急自動車に標準装備。
- バグガード - 走行中にフロントガラスに虫が当たって付着するのを防ぐための板。ボンネット上に透明な板を取り付け、空気の流れを制御する。高速隊白黒パトカーに装備されるが、170系クラウンを最後に装備されなくなった。
- 電光掲示板 - 一部の高速隊パトカーの車内後方に装備。「左に寄れ」「パトに続け」等のバリエーションがある。
- 一部の高速パトカーは180km/h以上で走れる性能を持つ。
パトカーの後席右側のドアは内側から開かない場合があるが、これは一般車でも装備されているチャイルドロックがされているだけであって特別なことではない(ただし、解除できないようにつまみを固定していることが多い。制服パトカーや交通取締用の覆面パトカーは内側のドアハンドルやドアリンクなどが取り外され、外からしか開かないよう改造されている)。
トランクに積まれている主な用具
- カラーコーン、矢印表示板、後続車に規制を知らせる赤旗(事故現場での車線規制時に使用)
- 「止まれ」の表示旗(検問や職務質問のため車両を停止させる時に使用)
- ウォーキングメジャー、巻き尺、チョーク(事故現場の実況見分時に使用。チョークは駐車違反取り締まり時にも用いる)
- ジュラルミン製またはポリカーボネート製の盾(機動隊とほぼ同型だが高さが約10センチ低い。ジュラルミン製のものは裏が緑色に塗装、縁も車体の損傷防止のため緑色のウレタンが装着されている)、刺又(暴動鎮圧や人質立てこもり・監禁事件における強行突入時に用いる。機動隊や特殊部隊が用いる物と同型)
- 懐中電灯(一般的な3ボルトではなく6ボルトや12ボルトの強力灯。夜間のパトロール・出動時に使用)
- トランジスタメガホン(災害及び事故発生時における避難や交通規制の告知・暴動やデモの鎮圧・雑踏警備時における観衆への呼びかけ・立てこもり犯への説得などに使用。パトカー助手席にあるマイクとサイレン兼用スピーカーをハンドマイク代わりに用いる場合もあり)
- 誘導棒(事故現場やイベント会場の雑路警備等での交通整理や緊急配備時における車両検問の停止呼びかけに使用。「ニンジン」「シグナルライト」など俗称や商品名を含めて複数の名称がある)
- 発光機能を持たない反射材付きバトンを同じ目的で使用する場合もある。
- 雨衣(雨天時のパトロール・捜査に使用 交通警察は白色雨衣で、前後と袖と裾に光反射布付)
- ヘルメット(事故処理・実況見分時に使用・光反射材付)
- 救急箱(事件・事故現場にいる負傷者の応急処置に使用)
- 規制線(事件・事故発生現場へ捜査関係者以外の部外者が立ち入るのを防ぐために貼る「立入禁止 KEEP OUT (警察本部名)」と書かれた線。かつてはトラロープに「立入禁止 (警察署名)」のプレートを下げたものだったが現在の主流は「バリケードテープ」という、文字が印刷された黄色の非粘着性ビニールテープ。パトのバックミラー支柱は規制線固定箇所としてよく使われている)。
- 飲酒検査用具(職務質問時に酒の臭いがした運転者に対し飲酒検査を行うための道具。ストローの先端に付いている袋に運転者より息を吹き込んでもらったのち、アルコール反応が出ると色が変わる測定管を吹き口に差し込んで呼気に含まれるアルコール濃度を測定。
- 薬物検査用具(職務質問時に不自然な言動を取った人物に対し麻薬・覚せい剤・危険ドラッグ使用の疑いがないかを調べる道具。麻薬・覚せい剤などの薬物反応が出ると色が変わるリトマス試験紙や試薬などで構成されている。
- 車輪止め・駐車禁止標章(標章は駐車禁止区間に駐められた車両のフロントガラスに貼り付け、当該車両が違法駐車である旨を示す。車輪止めは「車輪止め」標識付き駐車禁止区間へ違法駐車された車両のタイヤを固定し動かせなくする鍵付き輪留め。いずれも運転者自身が所轄の警察署へ申告せず勝手に撤去すると道路交通法「駐車禁止遵守」違反となり罰金=反則金が科せられる)
- 交通違反切符(シートベルト不着用・信号無視・運転中の携帯電話使用・一時不停止・指定方向以外通行禁止違反・一方通行逆走などの交通違反をした旨を示す切符で、赤と青と白の3種類ある。全ての警察官は反則告知手続きの処理が必ず出来なければいけない)。
パトライト昇降機構非装備のパトカーでは、トランク蓋内側に回転灯を左右に一つずつ装備している車両もある(点滅するLED警光灯の場合もある)。
その他、パトカー乗務時に警察官は所轄地域の住宅地図や道路地図、クリップボード、ノート、筆記用具、デジタルカメラ・ビデオカメラ(いずれも違反車や事件・事故現場の証拠写真・映像撮影用)、メモ用紙、携帯無線機(他の警察車両・警察官や所轄警察署との連絡用)、警笛(交通整理及び危険周知用)などを携行する。最近ではスパイクシステムを一部の車両に搭載している様子が警察24時等の番組でも確認できる。また、最近では警らパトカー等に自動体外式除細動器が積載してある車両もいる。
一般車両と覆面パトカーの相違点
かつての覆面パトカーは、8ナンバーであった。乗用車はモノコックボディということで、反転式赤色灯の装備が「構造変更を伴う車体改造」となり、それを取り付けた事によって「車体の形状」が「警察車四輪」に変わるためである(陸運局に提出する構造変更概要の書類において、「車体の形状」は書き換える事ができるので8ナンバーとなっていた)。
現在、白黒パトカーでは型式認定を受けているクラウンも含めて全てが「持ち込み登録」となり、記載事項の変更をする。高さや重量が変わるためで、「車体の形状」も「箱型」などから「警察車四輪」に変わるため8ナンバーとなる。赤色灯等の取り付けのためにボディに穴を開けたり、エンジンやミッションなどを載せ変えたりしている場合もあるため、こういった場合は構造変更の検査・登録も同時に行う。サンルーフ仕様車を架装ベース車とすることにより構造変更要件をパスしている車両もあるとされる(元々ガラスなど重いものが付く上、同時に補強もされているので架装時の補強が不要とされることから)。
覆面パトカーは車両の入れ替えなどにより大部分が3ナンバーまたは5ナンバーになっている。しかし、注意して観察すると下記の特徴、相違点を見出す事ができる(基本的に交通取締用四輪車・警護車に限った特徴。捜査用についてはこの限りでない)。
- 車種
- トヨタ・クラウン、日産・スカイラインなど排気量2,500cc以上の中大型セダンが多い。
- 車体エンブレム
- 例えばクラウンでは通常「CROWN」という車種のエンブレムの横に「ROYAL SALOON」などグレードを示すエンブレムがあるが、覆面パトカーの場合は「CROWN」という車種のエンブレムのみである。ただし、所属場所で新たにグレードバッジなどを付けているものもある。
- アンテナの装備
- 警察無線用にNTTドコモから供給(製造は電気興業株式会社)された、外観が自動車電話用と同一のアンテナ(TL型アンテナ、TLアンテナなどと呼ばれる事がある)をトランクリッドに立てている。これは警察無線用であり、周波数帯が違うために内部の構造および電気的特性は自動車電話用とはまったく異なっているが、自動車電話用に擬装するためDoCoMoマークが入ったアンテナを使用している(データ通信用等の目的で携帯電話を装備し、正規の自動車電話用アンテナを立てている車両も存在する)。警護車では広域無線など複数の系統を使用するためアンテナが2本以上立っている場合もある。最近は、自動車電話の減少により、自動車電話のアンテナ自体が目立つようになってきて、擬装の意味がなくなってきたことから、自動車TV型(ダブルダイバシティ)(TA擬装(型)アンテナまたは、単にTA(型)アンテナなどと呼ばれることがある)が多くなっている。
- 近年では、フィルムアンテナ(フロントおよび、リアのウインドウに貼り付けるアンテナ)などの普及により、自動車TV型アンテナの装着車が減少して、TA擬装アンテナも目立つようになり、擬装の役割を果たせなくなってきた。それにより、今までには装着のなかったような種々の擬装アンテナ(フィルムアンテナやユーロアンテナなど)が装着されはじめている。
- フロントグリル
- クラウン、セドリックなどの場合、フロントグリル内に点滅式の赤色警光灯(「前方集中式警光灯」)を装備する。4ドアのスカイラインの場合、前面ナンバーの両サイドにフォグランプを模した赤色灯や、格子状のレンズカバーが付いている。また、捜査車両などはオートカバー付のフォグランプを模した赤色警光灯を装備している場合が多い。一部の捜査車両などでは助手席のサンバイザー部分にフラットビーム(サンバイザーに付ける、赤色LEDを多数並べた全面発光式点滅灯)を装備していることもある。
- リアビューミラー
- アウターミラーは一部の例外を除き、従来フェンダーミラーが大半であったが、現在ではドアミラーを装着した車種が多い。相勤用のために、助手席側のサッシ(Aピラー側)に市販車にはないアウターリアビューミラー(ナビゲーターズミラー)が付いているが、目立つため最近は装備していない覆面パトカーも多い。覆面以外でこれがついているのは教習車やごく一部のハイヤーなどだけである。インナーリアビューミラーも、助手席2段(クラウンなど)や横2列(セドリックなど)のもの、最近は市販されている吸盤貼付け式のサブミラーが付いたものもある。
- ホイール
- 現在新たに導入されている車両では、ほとんどが純正のアルミホイールか、スチールホイールにホイールキャップが装着されている。また、地域上必要な場合(降雪地におけるスタッドレスタイヤ装着等)は、市場から調達した社外品のアルミホイールや旧型車のホイールなどを装着することもある。
- 乗車人数
- 基本的には2名乗車である(運転手は若手警察官、助手席には先輩或いは上司のベテラン警察官が車長として座る。車長は通常は運転手を監督するだけだが、不審車追跡など緊急時には無線連絡と安全確保のための拡声器広報で、マイク二つを抱えることになり、運転者同様非常に忙しい)。覆面乗務中はヘルメットを装着しないで乗務することを認めている警察本部も多いが、近年では交通警察官の職務中の受傷事故や殉職が増加傾向にあるため、覆面車乗務中でもヘルメット着用を定めている警察本部も増えてきた。ブルー系の制服(冬季は黒)を着た交通機動隊ないし高速隊員が乗車していることが多い。なおパトカーの後部座席は通常、大規模事件・事故や警備等の際の応援警察官を乗せたり、任意同行者や検挙・逮捕者を乗せる空間(両側を警察官で囲み護送途中で逃げられないようにする)となっており、外部の一般人を乗せるための空間ではない。
車種
パトカー専用モデル、あるいはパトカー仕様を持つ車種は、トヨタがジープBJ、ランドクルーザー(主に国警向け)、トヨタ・パトロール(専用、生産終了)、トヨタ・パトロールカー(専用、生産終了)、クラウン(現行型製造中)、マークII(市販車の6代目まで)、日産がパトロール(主に国警向け)、セドリック(セドリックセダン)(生産終了)、グロリア(市販車の7代目まで)、クルー(生産終了)、スカイライン(市販車の7代目まで)、既に生産を中止しているメーカーのものでは三菱のギャランΣ、シグマ、マツダのルーチェなどが挙げられる。
購入・配置
警察庁が購入し各都道府県警に配備する国費配置車と各県が購入する県費配置車が存在するが、大量に要する国費配置車は現在国産で唯一パトロールカー専用グレードをもつトヨタ・クラウンパトロールカー(200系)が圧倒的に多く、最近は警邏用や交番配置用としてパッソ・ソリオなどが国費または県費で大量に購入されることが多い。ただ、専用グレードがないため国費と県費、また購入時期によって導入するグレードが違う場合もある。エスティマ(警視庁)、ティアナ(北海道警)、日産・サファリ(愛知県警)など少数存在するが都県費での購入となり台数も少ない。また最近では地域事情(積雪地であることなど)からメーカーでパトカー専用グレードを設定していない車種を県費で購入するケースもあり、青森県警のレガシィB4などがこれに当てはまる。
財政事情の悪化により、数十台分という予算を一括計上する事が困難になっている事から、一部においては購入ではなくリース導入する例もあり、このような車も緊急自動車としてサイレン・赤色灯を装備している。消防車や救急車に於いては古くからリース導入の実績はあったものの、これらは一般のリース車と異なり他用途への転用や中古市場への流通が出来ない事からクローズドエンドリースであり、リースアップ後は廃車される。
パトカーの寄贈
何かの縁故により自動車メーカーから直接寄贈されているケースも少なからずある。神奈川県警察の歴代フェアレディZ、スカイラインGT-R(鶴見工場および大森ファクトリーが存在する縁故)、栃木県警のNSX(寄贈当時、NSX専用工場が県内にあった縁故)が代表的な例である。
一方、外国車の場合は地元有志(ロータリークラブ、地元自動車ディーラーなど)による寄贈が多いといわれている。
退役と廃車
納入から13年程で、ほとんどのパトカーは退役する。悪用防止の観点から、消防車や救急車などと異なり一般への払い下げはされず、無線機等の保安上の問題となる資機材を撤去もしくは破壊し、一般の修理工場などに送られ廃車手続きを行って解体処分される。まれに例外として、綿密な検査で耐久寿命が残っている車両が高速隊仕様から警ら仕様にダウングレードされて再度パトカーとして使われたり、表記を所属警察のものから「交通安全指導車」などと書き換え、交通安全協会等へ送られて交通指導車として余生を送るもの、新潟県警のポルシェ・911のようにイベント用として残されるものなどもある(前述の通りあくまでも稀なケースであり、多くの交通指導車は市販車に白黒塗装を施し、赤色灯とスピーカーを取付けたもの)。
また、覆面車両の一部は警察での用途廃止後はそのまま自衛隊等に置かれる司法警察組織へ譲渡される場合もある。
パトカー専用モデルの詳細
初代のトヨタジープBJ型は警察予備隊の小型汎用車両の競争入札に参加する目的で設計された。結果として、競合車であった日産・4W60型と共にウィリス・ジープのノックダウン生産(後にライセンス生産で国産化)である三菱・ジープの前に敗れ、民需の道を模索することになる。そのような中、頑丈なシャシと強力なB型エンジンが評価され、国家地方警察(国警)の警ら車両として採用される。
二代目のJ20系では国警向けに力を注いだ結果、全ラインナップの半数が後輪駆動(2WD)となる。初代の途中で消防用シャシ向けに追加された、より新しいF型エンジンもすべてのモデルで選べるようになる。
J40系はジープBJやJ20系の置き換えや補充用として納入されてはいたが、この頃になると国産乗用車の性能や信頼性が高まり、道路舗装も進んだことから、機動隊や消防指揮車を除き、一般的な警ら車両はS40系クラウンをベースとしたトヨタ・パトロールへと移行してゆく。
- トヨタ・パトロール
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- BDR型、BHR型、BH/FH26型、FS20系、FS40系、FS50系
BDRはトヨタパトロールの試作車で、小型トラックと同様のはしご型フレームを持ち、サスペンションも全後輪ともにリーフリジッドである。型式からも判るように、エンジンは戦前に設計された大型トラック・バス用の、初代B型であり、これはジープBJや20系ランドクルーザーとも共通である。トランスミッションも小型トラック用の3速MTの歯車比を変更したもので、6.00-16のタイヤサイズもやはり小型トラックと共通である。
この時代のRS系クラウンは排気量1500cc、出力は48馬力と非力なため、白黒のパトロールカーは無かった。当時は犯罪者側がアメリカ車で逃亡を計る場合も多く、国産乗用車の性能では全く太刀打ちできなかったため、大型トラック用の大排気量ガソリンエンジンの採用に至った。この時代、日産やいすゞでも、同様な警ら専用車を納入している。
2代目となるH26系は、外観こそ初代クラウンのRS系に酷似するが、シャシやパワートレインはBHRと同様で、新設計のF型エンジンが追加設定されている。長大な直列6気筒エンジンを搭載するため、クラウンに比べホイールベースとボンネットが長く、タイヤサイズが大きく車高も高い。この外観的特徴は先代にも共通する。右フロントフェンダー上に電動サイレンが装備されており、そのためアウターリアビューミラーはドアミラーとなっている。クラウンではBピラー埋め込みであった矢羽式方向指示器(アポロ)は、フロントカウル左右端にステーで直立しており、非常に目立つ。この他、H20系には2ドア・2シーターで、非常に短いクーペのようなキャビンを持ち、白黒の塗り分けも通常とは異なる仕様が少数存在する。
また、このシャシとエンジンの組み合わせは、四輪駆動の必要の無い地域向けの消防用シャシ(カウルシャシ)としても販売されており、これらはFA型大型トラックの縮小コピーのようなボンネットを持っており、パトロールカーとは全くスタイルが異なる。
3代目のFS20系からFS50系までは、クラウン(S20系、S40系、S50系)の各部を補強した上で先述のF型エンジンを搭載したものとなる。H20系までとは異なり、ボンネットの延長は無く、前輪がダブルウィッシュボーン式の独立懸架となり、車高も通常の乗用車と変わらないため、クラウンとの見分けは難しくなった。
なお、FS20、FS40、FS50系には、クラウンバンを大幅に設計変更した「トヨタ・救急車」も存在する。
- トヨタ・パトロールカー
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- FS60系、FS80系
クラウンをベースとした専用車。制服車(白黒)、特殊車(覆面)、警護車、私服無線車(赤灯無し)がセダン、事故処理車、鑑識車、捜査用車、保全車がバンベースである。ここへ来てようやくトラック用エンジンと決別し、4M型と5R型という、クラウン縁のものとなり、タイヤも乗用車用となった。
- トヨタ・クラウン
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- トヨタ・クラウンセダン
- (130系、1987-1995)
交通取締り用、警邏用ともに排気量は3000cc(JZS133Z)の5速MTのみであった、1991年に後期型へのモデルチェンジ、その2年後の1993年に一部マイナーチェンジを行った、フェンダーミラーが標準だが覆面パトカー車にはドアミラーを装備している車体もあった、このモデルまでは全車MTである、基本的に交通機動隊と高速道路交通警察隊に配属させた警察本部が多かった。現在はほとんどが廃車となっており愛知県警など一部地方の警察本部などに予備車や乗務訓練用として残るのみである。
- (150系、-2001)
- 排気量は2000cc(GS151Z)と3000cc(JZS155Z)がある。ただし、積雪地域向けに2500cc・4WDも20台余り作っていた(JZS153改)。このモデルから80系マークⅡセダンパトロールカーが生産終了したため、1クラス上のクラウンセダンに初めて2000ccの警邏仕様が設定された。ドア内張りやシートなどはビニール[24]で、ホイールもスチールホイールにセンターキャップという組み合わせ。覆面パトカー仕様のみドアミラーが標準である。後期型(99年-)から警邏用の2000cc車に昇降機が装備された。覆面はオートカバーがフロントグリルの外側に付いた仕様も存在する。基本的にはMT仕様だが2000ccにはAT仕様もあった、クラウンパトカー初のATはこのモデルが最初である。2001年にベースのクラウンセダンがコンフォートベースになったため、クラウンセダンベースはこれが最終となった。なお、車名「クラウンパトロールカー」を対象とした2000年のリコールでは一般のクラウンは対象外であった。また小型タクシーに多く用いられるコンフォートは、パトカーでは愛知県警などごく一部でしか採用されていない。現在は多くが廃車となり、一部の地域で残っている程度である。
- 170系(2001-2005)
- 2001年、クラウンのマイナーチェンジに合わせる形で170系クラウンパトロールカーの生産を開始。よって前期型は存在しない。ベースのクラウンセダンが1クラス下のコンフォートベースになったため、クラウンロイヤルがベースになった。これまでと異なりロイヤル系をベースとすることとなったため大幅に高級感が増し、デビュー当初はパトロールカーらしくない・高級車だと国民から酷評されたモデルでもある。シフトはATのみとなった。2000cc(GS171、2003年追加)と3000cc(JZS175改)の他に2500ccの4WDも正式に追加された(JZS173Z)。エンジンは各モデルとも市販車と同様だが、エンジンコンピュータのセッティングが専用となる。ホイールキャップも装備されて先代に比べると豪華になったが、シートは先代同様にビニール張りのアームレストなしの仕様と市販モデルには存在しないタイプであった。また、内装はアスリートと同じ黒内装、黒木目調ウッドパネルとなっていた(但しシフトレバーはロイヤル系と同じ形状)。オーディオはコントロールパネルこそ市販車同様のクラウン・ロイヤルサウンドシステムだが、AM/FMラジオ機能のみとなり、助手席側トリムに無線スピーカーを装着するため3スピーカーとなっている。左右独立フルオートエアコン、全席オートパワーウィンドウ、オプティトロンメーターなどは市販車同様に装備されていた。現在は多くが廃車となり、一部の地域で残っている程度である。
- 180系 ゼロクラウン(2005-2010)
- 2005年10月、クラウンのマイナーチェンジに合わせ180系クラウンパトロールカーの生産が開始された。よって前期型は先代170系同様存在しない。白黒、白黒(昇降機付き)、覆面が存在しており、市販モデル(全車アルミホイール装備)には設定のないスチールホイールにマークXのホイールキャップを装着している。なお、ホイールキャップのエンブレムはトヨタCIエンブレムで、いわゆる「王冠」マークではない。エンジンは市販車で2000ccが廃止されたため、V型6気筒の2500と3000が設定される。新型のエンジンは随所で直噴機構なしのエンジンと誤記されているが、実際には市販車と同じ直噴機構を採用した4GR-FSEと3GR-FSEである。なお、2WDで2500ccのパトカー専用モデルの国費警邏車はシグマ以来である。ミッションは2500は5AT。3000ccはマニュアルモードであるシーケンシャルマチック付きの6ATが装備される。装備は市販最廉価グレードの「ロイヤルエクストラ」に準じており、ヘッドランプは市販車の後期モデルに全車標準装備のAFS付ディスチャージは設定がなく、前期のロイヤルエクストラと同じAFSなしのディスチャージが装備される。パトカー専用モデルでのディスチャージランプ装着はGRS18#系が史上初。これは180系クラウンにハロゲン式の設定がないため、ハロゲン式を搭載するとヘッドランプハウジングを再設計しなければならないためとされる。170系に装着されていた高級感のある黒木目調パネルは廃止され、艶消しブラックパネルとなり市販車に比べやや質素なインテリアとなる。ただウレタンステアリングに市販車同様オーディオスイッチがあり、この部分が微かに黒木目調パネルになっている。オーディオは先代同様にコントロールパネルこそ市販車同様のクラウン・ロイヤルサウンドシステムだが、AM/FMラジオ機能のみで、助手席側トリムに無線スピーカーを装着するため3スピーカーとなっている。左右独立フルオートエアコン、全席オートパワーウィンドウ、オプティトロンメーターが装備されている。シートとフロアも先代同様ビニールレザー仕様である。覆面仕様には前面赤色灯用のオートカバー設定だったが、08年度導入車からはグリル内埋め込みとなりより隠蔽性を向上している。2005年度末から全国で納車されており、市販車が2008年にGRS200系に切り替わってからもパトロールカー向けへはGRS180系を2009年度国費予算分までは投入し続けていたが、2010年度国費予算分からは現行のGRS200系に切り替わった。現在数が減りつつある。
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180系クラウン・2500cc(埼玉県警)
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180系クラウン・3000cc(神奈川県警)
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180系クラウン(覆面・オートカバー)
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180系クラウン(覆面・グリル内LED警光灯)
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180系クラウン(覆面)
- GRS200系 クラウン(2011-)
- 2011年1月、ベース車である200系クラウンのマイナーチェンジから1年置いた2011年初頭から200系クラウンロイヤルをベースとしたパトロールカーの生産が開始された。よって前期型は先々代170系、先代180系同様存在しない。エンジンは先代同様警邏用無線車にV6の2500の4GR-FSEと交通・交通覆面用に3000の3GR-FSEがそれぞれ設定される。ミッションは先代では2500は5ATであったが、今モデルから2500・3000ccともにマニュアルモードであるシーケンシャルマチック付きの6ATが装備される。装備面で先代モデルとの大きな違いは、全タイプに純正アルミホイールが標準装備されたことで、2500cc警邏用に16インチ、交通・覆面用に17インチが装備されるようになった。アルミホイールの標準装着は、国費で大量導入されるパトカー専用グレード車としては史上初のことである。警邏・交通仕様の赤色灯が新型のものに切り替えられた。また外観上の市販車との違いはこれまで同様グレードエンブレムで、白黒はそれに加え先代まで存在したCビラーの王冠のピラーオーナメントと、トランクの「CROWN」エンブレムが廃止された。そのため「クラウン」としての王冠マークはステアリングパッド部のみとなる。その他装備は市販最廉価グレードの「ロイヤルサルーン・スペシャルパッケージ」に準じており、ヘッドランプはディスチャージが装備される。エンジンキーは2010年度予算分の1次車のみが従来のキーシリンダー式であったが、2011年度予算分の2次車から「キーシリンダー式ドア施解錠キー&キーレスプッシュスタートキー」が各5本付属となり、ドアの施解錠は従来同様マスターキーで、エンジン始動は専用のスマートキーで行うシステムが採用された。オーディオは先代同様にビルトインのコントロールパネルに、AM/FMラジオ機能のみで、助手席側トリムに無線スピーカーを装着するため3スピーカーとなっている。VDIM、左右独立フルオートエアコン、全席オートパワーウィンドウ、オプティトロンメーターを装備されている。シートとフロアも先代同様ビニールレザー仕様である。インテリアパネルも先代180系同様艶消しブラックパネルだがシフトレバー回りのみはシルバー加飾となる。覆面仕様には、5色のボディカラーが設定され、「シルバーメタリック」「ブラック」「ブラキッシュレッドマイカ」「シルキーゴールドマイカメタリック」「ダークブルーマイカ」が設定される。富士重工業が落札した2013年度を除く2011年から2015年にかけて納車された。
- GRS210系 クラウン(2016-)
- 2016年、ベース車である210系クラウンのマイナーチェンジを機に210系クラウンをベースとしたパトロールカーの生産が開始された。よって前期型は170系、180系、200系同様存在しない。今モデルからは外観が警邏系と交通・覆面系で外装を大きく変え前者がロイヤル系、後者がアスリート系の外観となった。エンジンは先代同様警邏用無線車にV6の2500の4GR-FSE形(203馬力)が、交通・覆面仕様にはV6の3500の2GR-FSE形(315馬力)が搭載される。180系・200系では整備性と点検性を重視し省略されていたエンジンカバーが170系以来復活している。アルミホイールは警邏系に16インチ。交通覆面系に18インチアルミ(市販車で存在しないシルバー塗装の18インチアルミ・デザインはアスリートの18インチメッキアルミと同一)が採用される。ミッションはシーケンシャルマチック付きの6ATが装備される。先代では装備を見送られたCピラーの王冠のピラーオーナメントと、トランクの「CROWN」エンブレムが210系では復活。その他装備は市販最廉価グレードの「ロイヤル」に準じており、ヘッドランプ・車幅灯・フォグランプ・テールランプは全てLED式が採用されている。エンジンキーは先代同様「キーシリンダー式ドア施解錠キー&キーレスプッシュスタートキー」が各5本付属となり、ドアの施解錠は従来同様マスターキーで、エンジン始動は専用のスマートキーで行うシステムを先代に引き続き採用。オーディオは先代と異なり市販車がオーディオレス仕様を基本とする仕様となり今回はプロボックス等に装備されているトヨタ純正1DINサイズのAM/FM電子チューナーがセンターパネル下部にサイレンアンプと共に装備された。スピーカー数は助手席側トリムに無線スピーカーを装着するため3スピーカーとなっている。なお、本来オーディオを装備するスペースにはストップメーターを装備している。VDIM、左右独立フルオートエアコン(タッチパネル式ヒーターコントロールパネル「トヨタ・マルチオペレーションタッチ」)、全席オートパワーウィンドウ、オプティトロンメーター、室内LED照明を装備されている。シートとフロアも先代同様パトロールカー専用グレードの仕様書に準拠しビニールレザー仕様であるが今モデルから電動ランバーサポートはパトカー専用グレードについては廃止された。インテリアパネルは180系・200系と艶消しブラックを採用してきたが今回の210系から市販車のアスリートに標準のメノウ加飾木目調パネルが採用されたことにより170系以来の木目調パネルが復活したほか、インパネやドアトリムには市販車アスリート同様合皮の部分に赤いステッチ(縫い糸)が縫い込まれ再び内装の質感がパトロールカーとは思えないほど豪華になった。覆面仕様のボディカラーは「シルバーメタリック(1F7)」と「ブラック(202)」が今回用意される。なお、市販車で全車標準装備のToyota Safety Senseはパトカー専用グレードには装備されない。2016年10月から導入が開始された。
- 日産・セドリック(セドリックセダン)(YPY31、-2002)
かつては刑事ドラマにも多く登場した車種。排気量は3000ccのみ設定。室内は170系以降高級になったクラウンとは対照的に質実剛健さに徹しており、総ビニール内装でエンブレム類はメーカーのものと車名以外全て撤去されている(クラウンでもフロントグリルとCピラーには付いている)。窓は全席手回し式となっている。また日産のエンブレムが楕円形となっている。MTが基本だがATもあった。YPY31は2度の大きなマイナーチェンジを受けているが中期型(91-95)はフロントグリルがオリジナル(営業車の最下級グレード)と同じだった。覆面の最終モデルはドアミラーが標準となり、オートカバーが装備された。また、中期型まではグロリアにもパトカー仕様があった(前期は5ナンバー枠で中期は3ナンバー枠)。こちらは2000ccで型式はYY31改であった。
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セドリック(北海道警)
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セドリック(覆面)
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セドリック(皇族護衛)
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セドリック(皇族護衛)
- 日産・クルー(YHK30、-2002)
- 排気量は2000ccのみ設定。5ナンバーサイズで警邏用に使われた。赤色灯は初期モデルがバー型で後期セドリックパトカーが出た頃からブーメラン型となり末期モデルは昇降機が付いた。安価であったため、クラウン、セドリック同様に大量購入された。タクシー仕様がベースとなるために質素な造りが特徴であった。2002年に一般向けのガソリンエンジン車(クルーは本来タクシー専用モデルとして登場したがデビュー翌年に一般向けガソリン車が登場した)が生産中止となったため、パトカー仕様も消滅した。MT・バー型仕様の初期型は退役してしまったが、155系クラウンが生産終了となり、2002年度の国費分の170系クラウンが2003年3月にデビューするまでの過渡期に155系クラウンより後に全国に大量導入された2001年度国費分の昇降ブーメラン仕様も殆ど廃車された。
- 三菱・ギャランΣ/ギャラン (3代目 1976年-1980年、4代目 1980年-1984年、5代目 1983年-1999年、6代目 1987年-1992年)
当時の警ら車両には直列6気筒エンジン車ばかりが採用されていたが、三菱ではデボネア用の直6エンジンの生産をすでに中止しており、適当なエンジンを持っていなかった。しかし、ギャランΣに搭載されたアストロン・80シリーズは、直列4気筒エンジンに付きものの振動を打ち消すサイレントシャフトを備えており、直4エンジンながら制式な警ら車両として採用された経緯がある。
- 三菱・シグマ(F13AK、-1996)
- 排気量は2500ccで駆動方式はFF。販売台数が少なく、パトカー以外にはあまり見られなかった車種である。実質的には同社のディアマンテの姉妹車であり、その外観も酷似している。1990年代前半に全国で大量配備されたがブーメランパトライトでないこともあり、今となっては一部県警や乗務訓練用等で残るのみとなり、ほぼ全車が退役している。市販車同様の2500ccV6エンジンで、室内も木目調パネルがそのまま残されるなど、コスト増となる箇所の変更は少なく当時のパトカーとしては比較的高級感ある造りが特徴であった。リアシート形状はアームレストなどを省略したパトカー専用仕様。トランスミッションは基本的にマニュアルだが、試験的に導入された4速オートマチック車も存在する。生産終了に伴う後継車はディアマンテパトカー。現在も愛知県警に現存車がある。
- 三菱・ディアマンテ(F31AK、-1999)
排気量は2500ccで駆動方式はFF。シグマパトカーの後継として登場した。パトカー用グレードとしては唯一のハードトップである。ホイールキャップこそないが、ドアミラーが装着されていた。先代のシグマとは違い、全国配備はされていない。市販では最初期のモデルにのみあった(1993年のマイナーチェンジで消滅)マニュアルが標準設定されていた。オートマチック車は市販車同様マニュアルモードがついていた。装備はシートはビニールだが、パワーウィンドウ、オートエアコン、ウッドパネルなど170系クラウンに近いものになっている。
- スバル・レガシィB4(BM9-2012〜)
- エンジンはEJ25型水平対向4気筒2500ターボエンジン、トランスミッションはパドルシフト付き5速AT。駆動方式は4WD(VDC-4WD)。足回りは17インチタイヤ&アルミホイールに17インチフロントディスクブレーキを搭載。2012年度の国費の制服用無線警邏車(4WD指定)として国費で全国の警察に228台納入された車両。クラウン、クルー以外で昇降式警光灯を搭載した初のパトカーでもある。色は上部がサテンホワイトパール・下部がクリスタルブラックシリカとなっている。ベースグレードはD型の「2.5GTアイサイト」であるが、市販車には存在しない実質的なパトカー専用グレードであり、装備品のうち、アイサイト、キーレスアクセスプッシュスタート、両席パワーシート、アルミペダル、HIDヘッドランプ、濃色ガラス、オールウェザーパック等が省略され、左右独立オートエアコンを通常のオートエアコンに、中央カラー液晶付きエレクトロメーターが通常のメーターに変更されている。インテリアパネルは前期型2.5iと同様のシルバー塗装。クルーズコントロールやSI-DRIVEはそのまま装備。その一方で制服用無線警邏車のガイドライン仕様に従いビニールレザーシート表皮・警察車両専用装備品に合わせ型取りされた塩ビフロアマット仕様等を採用し、2012年度からから180系クラウン初期車の置き換えとして納車が開始された。2013年度車では警邏用4WD指定枠だけでなく、警邏用駆動方式指定なし・交通用4WD指定枠でも富士重工業が国費分を落札したため180系クラウンの置き換えとして全国すべての都道府県警察に大量導入された。2013年度車ではトランクリッドがすべてホワイトパールで塗られ、前面警光灯がLEDに変更されているなど相違点がある。
- 2013年度には交通覆面仕様も登場した他、警護車、捜査覆面として採用実績がある。現行BS9型では日本向けの市販車が2.5のNA車のみとなった影響からか今のところ国費の警察車両としての採用実績はない。
- スズキ・ソリオ(MA15S-2011〜)
- エンジンは1200cc直列4気筒エンジンで4WD。Gグレードをベースにドアサッシをボディ同色にしたり、ドアノブ・ドアミラーが黒色になるなどコストダウンが行われている。2015年度からはスイフトのXGをベースとした小型パトロールカーが国費導入されている。
- スズキ・キザシ(RE91S-2012〜)
- エンジンは2400cc直列4気筒エンジンで、私服用無線警邏車として導入。市販車のキザシは1グレードで本革シート等が標準装備された仕様であるが、コストダウンのため本革・電動シートをファブリック・手動式シート、本革巻きステアリング・シフトノブをウレタン素材、BOSEオーディオをラジオレス、フロントフォグランプもレスとなり、チューニングが行われたパトカー専用グレードを設定。2012年度に国費分として908台が導入され、2013年度も240系アリオン(グレードA20)の置き換えとして大量導入が見込まれる。
- 神奈川県では制服用無線警邏車が県費にて導入されている。
パトカー乗務員になるために警察官が受ける訓練
パトカー・白バイに用いられる乗用車・バイク(自動二輪車)は(違反車・逃走車を迅速に発見・確保する目的から)一般の自家用車・企業の営業車より高出力・大排気量の大型エンジンを搭載している(覆面パトを含む警ら・交機・高速・機捜の各隊に属する車両がこれに該当。なお地域巡回を主とし緊急走行の頻度が低いミニパトの排気量・出力は一般車と同程度)。また一般の自家用車や企業の営業車と異なり、パトロール・取締は天候とは無関係に24時間年中無休で行われている。
このため警察官がパトカー及び白バイを運転する場合、(交通量が多く渋滞の激しい道路や住宅街等の狭隘道路においても)一般車両との人身・物損・接触事故を避けて周囲の交通に危険を及ぼすさずに事件・事故発生現場へ急行したり、挙動不審の車両・人物(特に指名手配犯や盗難届が出されている車両)を迅速に発見・追跡・確保出来るようにするため、(一般の自家用車・第二種免許を要する緑ナンバー車を含めた企業の営業車より)非常に高度かつ熟練の運転技能、及び臨機応変の判断力が要求される(ただ単に「普通・中型・大型・自動二輪・大型二輪の第一種運転免許を有している」のみではパトカー・白バイの運転不可であり、警察官は指定自動車教習所指導員以上の高度な運転技能を有している)。
よって、所轄の警察署内練習コースや運転免許試験場内コース等で(一般の自動車教習所より)高度かつ手厳しい運転技能習熟訓練を長期にわたり積み重ね、かつその試験(検定)に合格しなければならない(訓練・試験内容は所属部署や車種により異なる)。また高速隊所属の警察官は(車両の排気量・出力が一般道路用パトカーより大きく速度も速いため)一般道路以上に高度な運転技能・体力・判断力が要求される。なお新人警察官は場内コースにおける走行訓練・教習のみならず、パトカー警ら中も先輩・上司警察官から運転技能等を徹底的に叩き込まれる。
さらに積雪の多い地方においてはスリップ事故を起こさぬよう、夏期の乾燥路面以上に慎重かつ迅速な運転が要求される。このため全警察官に対し冬道安全運転技能向上訓練が課されている。なお検定は1級〜4級まであり、緊急走行をする(サイレンを鳴らしパトライトを点灯させて走る)場合は2級以上の検定に合格しなければならない(3級以下は「緊急走行可能な車種と場面を絞る」という条件付きでの運転となるため、警察官としての守備=任務遂行範囲が狭まる)。またパトカー運転訓練指導員になるためには最も難関である1級の検定に合格する必要がある(これら技能検定は一般の運転免許技能試験より難しく、合格は狭き門となっている)。加えて(一般の「運転免許更新試験」にあたる)「パトカー及び白バイ運転技能考査」も毎年実施されており、これに不合格となった警察官はパトカー・白バイの運転が一定期間出来なくなる。
パトカー(緊急車両)運転資格の車種区分は各都道府県警により異なっており、警視庁の場合、運転資格は軽自動車限定とそれ以外の二種類であり、公用車の運転には緊急走行を行わない一般職員であっても同じ資格を取得しなければならない。技能試験は緊急車両向けの特殊な項目や高度な技術が必要なものは存在せず、免許試験場における普通免許の実技試験と全く同一の内容である。
パトカー・白バイの運転技能習熟訓練は「普通MT免許及び自動二輪免許を取得後2年以上経過し、かつ無事故無違反を1年以上継続」という条件を満たした警察官のみ参加可能(新人警察官は警察学校における研修期間中に「3級」までの取得を目標とした車両運転訓練を受ける)。なおパトカーはMT車が大半を占めているため、AT限定免許では原則運転不可(MT免許取得が最低条件)。
主な訓練・試験内容
現場でのパトカー運転及び取締・パトロール経験が豊富な(警察車両の使用頻度が高い部署=主に自ら・交機・高速の各隊に所属する)先輩ベテラン警察官が教官となって若手警察官へパト運転指導にあたる。特に前後左右の安全確認は(緊急走行時には一般車より速度が速い事から)一般車を運転する時以上に重要である。
- 高速でのスラローム・クランク走行(一般車両及び障害物に見立てたカラーコーンを避け、急カーブで速度を上げた時でも車体をコーンにぶつけないようジグザグ走行。前進のみならず袋小路や狭隘路等の反転不能箇所における追跡を想定し、バックによるスラローム・クランク走行もある。一部カラーコーンをあらかじめ倒した状態での訓練も実施)。
- 急停止(歩行者・自転車・他車等が側方から急に飛び出してきた場合を想定。緊急走行時でも衝突を避け規定の停止位置で確実に止まれるようにする)。
- 事故発生時における交通規制(カラーコーン、表示板等を素早く準備し、後続車に追突される二次災害防止のために事故発生を迅速に知らせる体制を整える)。連携確認のため(NEXCO等の)道路管理者と合同訓練という形を採る場合もある。
- 交通整理方法(雑踏警備時や停電で信号機が止まった場合に「手信号による的確な交通整理」が出来るようにする。また停電時でも稼働可能な自家発電装置付き信号機を備えた交差点では「電源を自家発電へ迅速に切り替える」訓練も実施)。
- (白バイ隊員のみ)幅の狭いジグザグの板から外れないように、さらに足場の悪い凹凸路面でも転倒しないよう走行。
- (万一路肩の障害物に乗り上げたり、足場の悪い凹凸路面を走行する場面を想定し)片側のタイヤのみを細い板に載せてバランスを崩さないよう走行。
- (不審者・違反者が検問・職務質問等を振り切って逃走した場合を想定した)車両の急発進・急反転・急旋回。
- スリップ体験(冬期におけるスリップ事故の怖さを凍結=アイスバーン路面を再現したスキッドコースで体験し、緊急走行中に万一スリップした場合でも横転や他車との接触事故を未然に防ぎ、落ち着いて車両を元の姿勢へと立て直せるようにする)。
- 心肺蘇生法及びAEDの使用法(事故現場に救急車が到着するまでの間、負傷者・意識不明者へ応急処置を確実に施し、救命率を上げる)。
- 逮捕術(柔道・剣道・空手等の各種日本武道の技を組み合わせ、犯人=被疑者を無傷かつ迅速に身柄確保出来るようにする)。
- 挙動不審の車両・人物の見抜き方(特に車内におけるシートベルト非着用・携帯電話やスマートフォンを操作しながらの脇見運転・不自然な蛇行運転・夜間や悪天候時の無灯火走行・正しい通行帯から大きく外れての走行や逆走・交差点や横断歩道での信号無視や一時不停止・駐車禁止及び駐停車禁止場所への違法駐停車・Uターン禁止場所で故意に車両を反転させる・指定方向外進行禁止規制のある交差点での違反行動など道路交通法違反や飲酒運転・無免許運転が疑われる危険な行動、パトロール中のパトカー・白バイ・警察官を見て急に目を背けたり走って逃げる・車両の向きを急に変えたり速度を急に上げる・一般ドライバーの模範となるべく「緊急走行時以外は制限速度及び法定速度遵守で走行」しているパトカー・白バイを故意に追い越すなどの不可解な行動、営業時間外の店舗・公共駐車場・駐車帯・路肩に目的もなく深夜でも長時間駐まっている・ナンバープレートを折り曲げて見えなくしたり故意に付け替えている=他車から盗んできたナンバーを付けている・違法無線アンテナを搭載している・違法改造をしている・フロントガラスが割れたり故意に塞がれている・車体が一部破損し轢き逃げや当て逃げをした疑いがある・車検切れや自賠責はじめ各種保険未加入の疑いがある・ドアミラーやバックミラーが破損していたり前照灯・後部標識灯・ブレーキランプが切れている・車内からゴミをポイ捨てしているなどの不審車両や整備不良車両、盗難届が出されていたり指名手配犯・覚せい剤や危険ドラッグ使用者がいる疑いのある車両などを夜間でも瞬時に見抜く方法、自殺志願の疑いがある人物を保護して自殺を未然に防ぐ方法などを徹底的に学ぶ)。
- 地図の使い方(自分が管轄する地区の地図=主に昭文社県別マップル・都市地図両シリーズとゼンリン住宅地図を暗記し、110番入電無線を受信後1分1秒でも迅速に当該事件・事故の発生現場へ急行出来るようにすると共に、通常のパトロール中においても自分がいる現在地や事件・事故発生場所、不審者・犯人の身柄確保場所を所轄本部へ無線で的確に伝えられるようにする)。
- 災害時における臨時本部設置訓練(警察署や交番が地震・津波で被災し使用不能となった場合に備え、あらかじめ協定を結んでいる管内の公共施設へ臨時の警察署機能を設ける場合に無線装置などを迅速に立ち上げ、大規模災害発生時でも警察署機能を維持出来るようにする)。及び「大規模災害発生時における初動・非常招集訓練」(地震・大雨・洪水・土砂災害などで道路が寸断され車の使用が困難となった場合、所轄署から徒歩圏内にある警察官舎在住の警察官を非常招集して災害対策本部を立ち上げ、自治体と連携して迅速・的確な災害情報収集体制を構築出来るようにする)。
- 無線交信訓練(所轄本部・現場警察官相互間で的確な無線のやりとりが出来るよう、若手警察官と所轄本部通信指令室での110番通報受信担当警察官を中心に「事件・事故・災害発生現場の状況やパトロール中に追尾・職務質問・身柄確保した不審人物や不審車両の特徴を無線で所轄本部へ的確に伝える訓練」を定期的に実施)。
- (交番・駐在所勤務の若手警察官のみ)巡回連絡訓練(管内にある世帯・事業所へ所轄警察署からの連絡事項を的確に伝えると共に、管内住民との良好な関係を築く「巡回連絡」の方法を学び、「相手の心に寄り添った伝え方がきちんと出来る」ようにする)。
- 交通違反ごとの反則金及び違反点数の区分・反則切符の扱い方(交通取り締まり活動を行う上での基本事項である「道路交通法で規定された交通違反の種類とそれに応じた反則金徴収額の違い」及び「反則切符の正しい交付方法と違反点数&反則金の算定方法」について学ぶ)。
- (機動隊員のみ)大規模災害発生現場を想定した救助訓練(消防救助隊の訓練と同じ)。
- 拳銃の適正な使い方(刃物などの凶器で挑発・威嚇する犯人の制圧及び身柄確保のための「一般人に危険を及ぼさない適正な拳銃使用方法」を学ぶ。「警察官拳銃射撃技能大会」も都道府県及び管区警察局ごとに実施。なお拳銃は銃刀法により使用場面が手厳しく規制されており、一歩間違えば殺人兵器になる「取扱注意」の道具であるため、各警察署にある拳銃保管庫は警察関係者であっても出入り可能人物を厳格に制限)。
警察・消防以外で緊急自動車を保有する企業(電力・ガス・水道・鉄道・通信事業者、輸血用血液供給センターなど)においても、(人身・物損・死傷事故を避けて安全かつ迅速に事故発生現場へ急行出来るよう)警察官ほどではないが(一般の自動車教習所より手厳しく)高度な運転技能習熟訓練が必要である。
青色防犯パトロール
青色防犯パトロール(青パト)は、防犯活動を認められた団体が自主防犯パトロールとして実施を許可された青色回転灯装備の自主防犯活動用自動車で、一般自動車への回転灯装備は法令で禁止されているが、2004年12月1日(道路運送車両法の保安基準緩和)より、警察からの自主防犯パトロールを適正に行うことが出来ると証明を受けた団体は青色回転灯の装備が認められている。申請はパトロール地域を管轄する警察署を通じ行い、パトロール実施者証の交付後、約2年毎に青色防犯パトロール講習を受講しなければならない。また証明書発行より15日以内に地方運輸支局で、自動車検査証に自主防犯活動用自動車の記載を受ける必要もある。
日本のパトカー ギャラリー
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ダイハツ・ミラジーノ(警視庁)
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三菱・パジェロ(福島県警)
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三菱・GTO(広島県警)
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トヨタ・エスティマ(警視庁)
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日産・サファリ(愛知県警)
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日産・スカイラインR34GT-R(埼玉県警)
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日産・スカイラインV35型(埼玉県警)
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スバル・インプレッサWRX STi(埼玉県警)
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マツダ・RX-8(警視庁)
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スズキ・ジムニーシエラ (静岡県警)
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日産・キューブ(兵庫県警)
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スバル・レガシィB4(茨城県警)
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日産・スカイライン350GT(研修用)
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日産・スカイラインGT-Rオーテックバージョン(神奈川県警)
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日産・マーチ(千葉県警)
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三菱・ランサー(福島県警)
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ダイハツ・ストーリア(石川県警)
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スバル・インプレッサG4(山形県警)
脚注
- ^ a b c デジタル大辞泉「パトロールカー」
- ^ ロサンゼルス市警察は他部署と同様、バッジではなく市紋章と「POLICE」文字。
- ^ 辰巳出版「世界の警察 アメリカ篇」pp.30『密着!CHPオフィサー24時』
- ^ “Unmarked Police Cars Encourage Impersonators”. theNewspaper.com. (2007年7月11日) 2010年1月4日閲覧。
- ^ Tim King (2009年4月7日). [http://www.salem-news.com/articles/april072009/unmarked_cops_tk_4-7-09.php “Video Oregon Police Increasingly Using Unmarked Vehicles for Traffic Stops (VIDEO)”]. Salem-News.com 2010年1月4日閲覧。
- ^ “Dyer v. Department of Motor Vehicles” (PDF). California Court of Appeal, Third Appellate District (2008年5月22日). 2010年1月4日閲覧。
- ^ New York State Senate (2009年1月7日). “S289: Prohibits the use of unmarked police vehicles to routinely stop motorists for vehicle and traffic law violations, with exceptions”. 2010年1月4日閲覧。
- ^ Last Ford Crown Victoria build documented by St. Thomas Assembly
- ^ NYPD Highway RMP Message Board - Whelen Smart Arrow:実際のパトカーに装着されたもの。
- ^ MB1 LED Message Board:製品の一例でフェデラルシグナル社のもの。
- ^ Huge mobile push by NYPD – 6,000 Panasonic ruggedized Windows tablets, 41,000 mobile devices to police officers (video)
- ^ panasonic タフブック CF-20。画面部分をタブレット端末のように使う事ができる。
- ^ COBAN EDGE Mobile Video Recording System
- ^ ALPR Products and Solutions > Overview
- ^ ALPR Products and Solutions > Criminal Intelligence
- ^ 配備先が分かる車両の一例。写っているのはニューヨーク市警察のパトカー。トランクに読取り装置のカメラが設置されている。車体側面にCTBと書いてあるが、これはCounter Terrorism Bureau(テロ対策局)を意味しており、この車両が同局に配備されていることを示す。
- ^ ハワイのホノルル市警察にあるのみ
- ^ http://jianbolu.tripod.com/paper/DSCC2008-2183.pdf VEHICLE DYNAMICS IN RESPONSE TO THE MANEUVER OF PRECISION IMMOBILIZATIONTECHNIQUE
- ^ 朝日新聞「しつもん!ドラえもん」より
- ^ 日本は赤と青の混合の前面警光灯、韓国は赤と青の混合の警光灯、中国は赤と緑の混合の警光灯
- ^ パトカー側面に「POLICE」文字 視認性向上へ共同通信2007年2月8日
- ^ 警ら・交機の覆面パト隊員は制服・ヘルメット着用、機捜の覆面パト隊員はスーツ着用というのが一般的
- ^ KBCアーカイブズで、1967年に導入の覆面パトカーの映像が視聴できる。
- ^ で、フロントドアのみパワーウィンドー。ただし、覆面用途やパトロールに使用しない一般業務向けに納入されたものには、同世代のスーパーデラックスと同様の部分ファブリックシート(布張り)の車両も存在した。
関連項目
- 交通安全協会
- 警察学校
- 白バイ
- 黒バイ
- 事故処理車
- 特殊自動車
- 緊急自動車
- 自動車
- 交番
- 駐在所
- 自動車警ら隊
- 交通機動隊
- 機動捜査隊
- 高速道路交通警察隊(高速隊)
- 警察24時
- 自動車教習所
- 運転免許試験場
- 消防車 - 日本の消防車
- 救急車 - 日本の救急車