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{{翻訳依頼中|date=2023年12月24日 (日) 13:59 (UTC)}}
{{生物分類表
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| 名称 = カルノタウルス
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| 画像キャプション = ノタウルスの復元図
| 画像キャプション = [[プラハ]]のフパーチ博物館に展示された全身骨格
| 地質時代 = 約7,200万 - 約6,990万年前<br>(中生代[[白亜紀後期]][[マーストリヒチアン]])
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'''カルノタウルス'''([[学名]] '''''Carnotaurus'''''、「肉食の雄牛」の意味)は、[[後期白亜紀]]の約7,200万年前から6,900万年前の間に[[南アメリカ]]に生息していた[[獣脚類]]の[[恐竜]]の[[属 (分類学)|属]]。カルノタウルスはこの'''カルノタウルス・サストレイ'''('''''Carnotaurus sastrei''''')一[[種 (分類学)|種]]からなる。カルノタウルスは、保存状態のよい1体の骨格から知られ、[[南半球]]に生息する獣脚類のなかでも最もよく解明されている獣脚類のひとつである。1984年に発見されたカルノタウルスの[[化石]]は、[[アルゼンチン]]の[[チュブ州]]で{{仮リンク|ラ・コロニア層|en|La Colonia Formation}}の岩石から発見された。カルノタウルスは[[アベリサウルス科]]の属で、後期白亜紀に[[ゴンドワナ大陸]]南部で広大な捕食ニッチを占めていた大型獣脚類である。アベリサウルス科のなかでも、この属は南アメリカに限定された短吻型の分類群である{{仮リンク|ブラキロストラ類|en|Brachyrostra}}の属とされることが多い。


カルノタウルスは、全長7.5〜8[[メートル|m]]、体重1.3~2.1[[トン|t]]の、軽快で[[二足歩行]]の捕食動物であった。獣脚類のカルノタウルスは非常に特殊で特徴的だった。[[眼]]の上には他の[[肉食動物]]には見られない太い[[洞角|角]]があり、[[筋肉]]質な[[首]]の上に非常に深い[[頭蓋骨]]が乗っていた。カルノタウルスは小さく退化した[[痕跡器官 (生物)|痕跡]]的な[[前肢]]と細長い[[後肢]]を特徴としていた。骨格は広範囲な皮膚痕とともに保存されており、直径約5[[ミリメートル|mm]]の重なり合わない小さな[[鱗]]がモザイク状に並んでいた。鱗は側面に並んだ大きな凸凹で途切れており、[[羽毛]]のある痕跡はなかった。
'''カルノタウルス'''([[学名]] '''''Carnotaurus''''')は、[[後期白亜紀|白亜紀後期]](約7,200万 - 約6,990万年前)に現在の[[南アメリカ大陸|南米大陸]]に生息した[[獣脚類]]の[[恐竜]]の一[[属 (分類学)|属]]である。名は「肉食の雄牛」の意。


特徴的な角と筋肉質な首は、[[同種]]の動物と戦うために使われた可能性がある。他の研究では、敵対関係にあった個体同士は、素早く頭で殴り合ったり、頭蓋骨の上側でゆっくり押したり、角を衝撃吸収材として使って正面からぶつかり合うなどし、戦っていた可能性がある。[[竜脚類]]のような非常に大きな獲物を狩ることができたという研究もあれば、比較的小さな動物を主に捕食していたという研究もあり、カルノタウルスの食性についてはまだよくわかっていない。[[脳]]の空洞から[[嗅覚]]が鋭敏だったことがうかがえるが、[[聴覚]]と[[視覚]]はそれほど発達していなかった。カルノタウルスは走ることによく適していたとされ、大型獣脚類のなかでも特に速く走っていたとされる。
== 概要 ==
[[File:Carnotaurus_Size_Chart.png|thumb|240px|left|人間との比較]]
[[File:Carnotaurus skeleton in Bonn.jpg|thumb|240px|left|骨格標本]]
全長は7.5~9m<ref name="G.S.Paul2010">{{Cite book |title=The Princeton Field Guide to Dinosaurs |last=Paul |first=Gregory S. |date=2010 |publisher=Princeton University Press |isbn=9780691137209}}</ref>、体重は推定1.35t<ref name="valieri2010">{{Cite journal |last=Juárez Valieri |first=Rubén D. |last2=Porfiri |first2=Juan D. |last3=Calvo |first3=Jorge O. |year=2010 |title=New information on ''Ekrixinatosaurus novasi'' Calvo et al. 2004, a giant and massively-constructed Abelisauroid from the "Middle Cretaceous" of Patagonia |journal=Paleontologıa y Dinosaurios en América Latina |pages=161–169}}</ref>、1.5t<ref name="GVPaleobiology">{{cite journal |last=Mazzetta |first=Gerardo V. |last2=Fariña|first2= Richard A. |last3=Vizcaíno|first3= Sergio F. |year=1998 |title=On the palaeobiology of the South American horned theropod ''Carnotaurus sastrei'' Bonaparte |journal=Gaia |volume=15 |pages=185–192 |url=http://www.arca.museus.ul.pt/ArcaSite/obj/gaia/MNHNL-0000782-MG-DOC-web.PDF}}</ref>、2t<ref name="G.S.Paul2010" />、2.1t<ref name="mazzettaetal2004">{{cite journal |last=Mazzetta |first=Gerardo V. |last2=Christiansen|first2= Per |last3=Fariña|first3= Richard A. |year=2004 |title=Giants and Bizarres: Body size of some southern South American Cretaceous dinosaurs |url=http://www.miketaylor.org.uk/tmp/papers/Mazzetta-et-al_04_SA-dino-body-size.pdf |journal=Historical Biology |volume=16 |issue=2 |pages=71–83 |doi=10.1080/08912960410001715132}}</ref>と変動している。いずれにしろ、大型だが軽量な種であった<ref name="candeiro2005">{{cite journal |title=Abelisauroidea and carchardontosauridae (theropoda, dinosauria) in the cretaceous of south america. Paleogeographical and geocronological implications |first=Carlos Roberto dos Anjos |last=Candeiro |last2=Martinelli|first2= Agustín Guillermo |journal=Uberlândia |publisher=Sociedade de Naturaleza |volume=17 |pages=5–19 |issue=33}}</ref>。アベリサウルス科の恐竜は研究が進んでいないこともあり、他の種類もカルノタウルスに匹敵する可能性はあるが、現在把握されている範囲ではカルノタウルスは同科でも最大級であり、2016年の研究ではカルノタウルスを体長7.8mと推定すると、この数値よりも大きいのは体長8.9mと推測された[[ピクノネモサウルス]]だけである<ref name="valieri2010">{{Cite journal |last=Juárez Valieri |first=Rubén D. |last2=Porfiri |first2=Juan D. |last3=Calvo |first3=Jorge O. |year=2010 |title=New information on ''Ekrixinatosaurus novasi'' Calvo et al. 2004, a giant and massively-constructed Abelisauroid from the "Middle Cretaceous" of Patagonia |journal=Paleontologıa y Dinosaurios en América Latina |pages=161–169}}</ref><ref name="carrano2008">{{cite journal |doi=10.1017/S1477201907002246 |volume=6 |pages=183–236 |last=Carrano |first=Matthew T. |last2=Sampson|first2= Scott D. |title=The Phylogeny of Ceratosauria (Dinosauria: Theropoda) |journal=Journal of Systematic Palaeontology |date=January 2008 |url=http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1017/S1477201907002246 |issue=2}}</ref>。


== 発見 ==
カルノタウルスは、目の上に大きめの[[円錐]]状の角を持つ。角のある[[肉食]]の獣脚類としては、「角のあるトカゲ」という意味の名を持つ[[ケラトサウルス]]が存在するが、こちらは鼻先にあるコブ程度のもので、[[角竜]]類以外でこの様な特徴を持つものは見られない。この角については「捕食の際、獲物の体腔に傷をつけ、それを押し広げる」「同種族間での儀式的闘争に用いた」等、様々に解釈されているが結論は出ていない。またカルノタウルスの[[頭蓋骨]]は前後に極端に短く、長さと高さがほぼ同じで、これだけでも他の獣脚類と区別できる特徴となっている。
[[File:Carnotaurus Los Angeles County Museum 15.jpg|thumb|left|{{仮リンク|ロサンゼルス郡自然史博物館|en|Natural History Museum of Los Angeles County}}にあるカルノタウルスの骨格]]
唯一の骨格標本([[ホロタイプ]] '''[[ベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館|MACN]]-CH 894''')は、1984年に[[アルゼンチン]]の[[古生物学者]]{{仮リンク|ホセ・ボナパルテ|en|José Bonaparte}}率いる探検隊によって発掘された{{efn-ua|name="09N276"|p. 276 in Novas (2009)<ref name="novas2009"/>}}。この探検隊は他に、特徴的なトゲのある[[竜脚類]]の[[アマルガサウルス]]も発見した<ref name="salgadobonaparte1991"/>。これは1976年に始まった[[ナショナル ジオグラフィック協会]]主催のプロジェクト「南アメリカのジュラ紀と白亜紀の陸生脊椎動物」の8回目の探検であった<ref name="salgadobonaparte1991"/>{{efn-ua|name="90B2"|p. 2 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}。骨格はよく保存されており、関節も繋がっていたが、[[尾]]の後3分の2、[[下肢]]の大部分、両足低部は[[風化]]により破壊されていた{{efn-ua|name="90B2"}}<ref name="bonaparte1985"/>。頭骨の癒合した{{仮リンク|縫合|en|Suture (anatomy)}}線から、この骨格は[[成体]]のものだとわかった<ref name="carabajal2011"/>。右側を下に横たわった状態で発見され、首が胴体の上で反り返った典型的な[[デスポーズ]]をとっていた<ref name="czerkas1997"/>。珍しいことに、広範囲に及ぶ皮膚の痕跡が保存されていた{{efn-ua|name="90B2"}}。これらの痕跡の重要性を考慮し、元の発掘現場を再調査するために2回目の探検が開始され、さらにいくつかの皮膚の跡が発見された<ref name="czerkas1997"/>。[[頭蓋骨]]は化石化の過程で変形し、左側の[[鼻骨]]は右側に対し前方に変位し、また、鼻骨は上方に押し上げられ、[[前上顎骨]]は鼻骨に向かって後方に押し下げられた。変形により、[[上顎]]の上方への湾曲を誇張した{{efn-ua|name="08CS191"|p. 191 in Carrano and Sampson (2008)<ref name="carrano2008"/>}}。吻は頭蓋骨の後部よりも変形の影響を大きく受けたが、これは後者の方が剛性が高いためだったと考えられている。上または下から見ると、上顎は[[下顎]]ほどU字型ではなく、明らかに一致していなかった。この不一致は、側面から作用する変形の結果であり、この変形は上顎には影響したが、下顎には影響しなかった。これはおそらく下顎の関節の柔軟性が高いためだった<ref name="Cerroni2020"/>。


[[File:Carnotaurus skin.jpg|220px|thumb|right|upright|カルノタウルスの皮膚印象化石(尾の部分]]
[[File:Carnotaurus reconstruction Headden.jpg|thumb|カルノタウルス骨格発見されている部分]]
骨格標本は、アルゼンチン[[チュブ州]]{{仮リンク|テルセン・デパルタメント|en|Telsen Department}}バハーダ・モレノ近郊の「ポチョ・サストレ」という名の農場で発見された<ref name="bonaparte1985"/>。化石は非常に硬い岩である[[赤鉄鉱]]の大きな[[コンクリーション]]に埋まっていたため、プレパレーションは複雑で進捗は遅かった<ref name="Paul1988PDW"/><ref name="bonaparte1985"/>。1985年、ボナパルテは ''Carnotaurus sastrei'' を新属新種として発表し、頭蓋骨と下顎について簡単に記述した論文を出版した<ref name="bonaparte1985"/>。''Carnotaurus''という[[属名]]は、[[ラテン語]]で「肉」を意味する "carnis" と、「雄牛」を意味する "taurus" に由来し、雄牛のような角を持つことから「肉食の雄牛」と訳される<ref name="yong"/>。''sastrei'' という[[種小名]]は、化石が発見された牧場のオーナーである、アンヘル・サストレに因んだもの<ref name="headden2006"/>。1990年には骨格全体の包括的な説明が続いた<ref name="bonaparte1990" />。カルノタウルスは、[[アベリサウルス]]に続いて発見されたアベリサウルス科の2番目の属である<ref name="bonaparte1991"/>。長年にわたり、この恐竜はその[[科 (分類学)|科]]の中で群を抜いて最もよく解明されていた種であり、また[[南半球]]で最もよく解明されていた獣脚類でもあった<ref name="bonaparte1996"/><ref name="glut1997"/>。[[アウカサウルス]]、[[マジュンガサウルス]]、[[スコルピオヴェナトル]]など、保存状態のよい類似のアベリサウルス類が発見されたのは[[21世紀]]に入ってからのことで、それによって研究者たちはカルノタウルスの[[解剖学]]的側面を再評価することができるようになった{{efn-ua|name="08CS191"}}。ホロタイプの骨格は[[ベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館]]([[カバジート]])に展示されており{{efn-ua|name="90B3"|p. 3 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}、レプリカは同博物館や世界中の他の博物館で見ることができる<ref name="glut2003"/>。造形家の StephenとSylvia Czerkasはカルノタウルスの実物大復元模型を制作し、これは以前{{仮リンク|ロサンゼルス郡自然史博物館|en|Natural History Museum of Los Angeles County}}に展示されていた。この模型は、1980年代半ばに博物館が依頼したもので、獣脚類の皮膚の正確な状態を再現した初めての復元模型であった<ref name="czerkas1997"/><ref name="glut2000"/>。
皮膚の[[化石|印象化石]]が残っており、その結果恐竜の皮膚組織について詳しいことが分かったため、それまで想像でしかなかった皮膚組織の詳しい研究が進むことになった。鈍い円錐状の飾り鱗が背中の方に向かって後ろに伸びている<ref>{{Cite book|和書 |title=図録 恐竜博2023 |publisher=NHK,NHKプロモーション,朝日新聞社 |pages=142,143}}</ref>。


== 解説 ==
走行に適した発達した後肢を持つ一方で、前肢は4本の指を持つが、[[ティラノサウルス]]よりさらに短く、特に前腕部の縮小が著しく、上腕部から直接指が生えているようにも見える。尾[[大腿筋]]は地球の生物史上最大であり、小回りが利かないが、大型獣脚類でも最も速く走ることができた一種でもあった。発達した脚部と尾の筋力と構造は[[ティラノサウルス]]にも似ているとされる。また、同じ科学者の研究により、ティラノサウルスにも強力な尾大腿筋と脚力があることが発見された。<ref>[[アルバータ大学]], 2011, [https://www.sciencedaily.com/releases/2011/10/111014212405.htm Super-sized muscle made twin-horned dinosaur a speedster], サイエンスデイリー</ref><ref>W. Scott Persons IV , Philip J. Currie,
[[File:Carnotaurus_Size_Chart.png|thumb|alt=Size comparison of ''Carnotaurus''|カルノタウルスとヒトの比較図]]
2011, [http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0025763 Dinosaur Speed Demon: The Caudal Musculature of Carnotaurus sastrei and Implications for the Evolution of South American Abelisaurids], [[PLoS ONE]]</ref>
カルノタウルスは大型だが軽量な捕食動物であった<ref name="candeiro2005"/>。唯一知られている個体の全長は約7.5〜8mで{{efn-ua|name="90B38"|p. 38 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}{{efn-ua|name="10V162"|p. 162 in Juárez Valieri et al. (2010)<ref name="valieri2010" />}}<ref name="G.S.Paul2010">{{cite book |last=Paul |first=Gregory S. |author-link=Gregory S. Paul |date=2010 |title=The Princeton Field Guide to Dinosaurs |title-link=The Princeton Field Guide to Dinosaurs |edition=1st |publisher=Princeton University Press |isbn=9780691137209}}</ref>、カルノタウルスは最大級のアベリサウルス科でもあった{{efn-ua|name="08CS191"}}{{efn-ua|name="10V162"}}<ref name="G.S.Paul2010" />。非常に不完全だか、{{仮リンク|エクリクシナトサウルス|en|Ekrixinatosaurus}}と[[アベリサウルス]]は、カルノタウルスと大きさが同程度か、あるいはもっと大型であった可能性がある{{efn-ua|name="10V163"|p. 163 in Juárez Valieri et al. (2010)<ref name="valieri2010" />}}{{efn-ua|name="04C556"|p. 556 in Calvo et al. (2004)<ref name="calvoetal2004"/>}}{{efn-ua|name="08CS191"}}。2016年の研究では、全長8.9mの{{仮リンク|ピクノネモサウルス|en|Pycnonemosaurus}}のみが全長7.8mと推定されたカルノタウルスよりも長かったことが判明した<ref>{{cite journal |last1=Grillo |first1=O.N. |last2=Delcourt |first2=R. |date=2016 |title=Allometry and body length of abelisauroid theropods: ''Pycnonemosaurus nevesi'' is the new king |journal=Cretaceous Research |doi=10.1016/j.cretres.2016.09.001 |volume=69 |pages=71–89|bibcode=2017CrRes..69...71G }}</ref>。また、体重は1.33[[トン|t]]{{efn-ua|name="90B30"|p. 30 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}、1.5t{{efn-ua|name="98M187"|p. 187 in Mazzetta et al. (1998)<ref name="GVPaleobiology"/>}}、2t<ref name="G.S.Paul2010" />、2.1t{{efn-ua|name="04M79"|p. 79 in Mazzetta et al. (2004)<ref name="mazzettaetal2004"/>}}、1.3-1.7t<ref name="Cerroni2019">{{cite journal |last1=Cerroni |first1=Mauricio A. |last2=Paulina-Carabajal |first2=Ariana |date=2019 |title=Novel information on the endocranial morphology of the abelisaurid theropod ''Carnotaurus sastrei'' |journal=Comptes Rendus Palevol |doi=10.1016/j.crpv.2019.09.005 |volume=18 |issue=8 |pages=985–995|doi-access= |bibcode=2019CRPal..18..985C }}</ref>と、異なる算定法を用いた別々の研究により幅広く推定されてきた。カルノタウルスは、特に[[頭蓋骨]]、[[椎骨]]、[[前肢]]の特徴に見られるように、高度に特殊化した[[獣脚類]]であった{{efn-ua|name="09N276"}}。一方、[[骨盤]]と後肢は比較的原始的であり、より[[基部系統]]の[[ケラトサウルス]]に似ていた。また、骨盤も後肢も細長かった。この個体の左[[大腿骨]]の長さは103cmだが、[[断面]]の平均直径は11cmしかない{{efn-ua|name="90B2832"|pp. 28–32 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}。

=== 頭蓋骨 ===
[[File:Carnotaurus skull.jpg|thumb|left|alt=Side of skull|頭蓋骨の複数の角度からの画像 推定された皮膚構造の詳細と、右前頭骨角]]
頭蓋骨の長さは59.6cmで、他のどの大型肉食恐竜よりも相対的に短く、深かった{{efn-ua|name="90B8"|p. 8 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}{{efn-ua|name="08CS191"}}。[[鼻口部]]先は適度に広く、ケラトサウルスのようなより原始的な獣脚類のように先細りではなく、顎は上向きに湾曲していた<ref name="sampson2007"/>。眼の上には一対の角が斜めに突き出ており、これらの角は[[前頭骨]]によって形成され{{efn-ua|name="90B4-5"|pp. 4–5 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}、太く[[円錐形]]状で、中空ではなく、断面はやや垂直に平らになっており、長さは15cmであった<ref name="carabajal2011"/><ref name="Cerroni2020"/>。ボナパルテは1990年、これらの角はより長い[[ケラチン]]質の角鞘の骨芯を形成していたと示唆した{{efn-ua|name="90B5"|p. 5 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}。Mauricio Cerroni ''et al.'' (2020)は、頭蓋骨の角がケラチン質の鞘を支えていたことを認めつつ、その角鞘は骨芯よりもそれほど長くはなかったとした<ref name="Cerroni2020"/>。

他の恐竜と同様、頭蓋骨には左右に6つの主要な開口部があった。これらの開口部のうち最も前方にある[[外鼻孔]]は長方形の様な形で、前方と側方に向いているが、ケラトサウルスなど他の恐竜のように側面から見て傾斜していなかった。この開口部は[[鼻骨]]と前顎骨のみによって形成されるが、一部のケラトサウルス類では上顎骨もこの開口部に接していた。[[鼻孔]]と[[眼窩]]の間には[[前眼窩窓]]があった。[[スコルピオヴェナトル]]や[[マジュンガサウルス]]などの近縁種では、高さよりも長さがあったが、カルノタウルスは対照的に長さよりも高さがあった。前眼窩窓は前方の上顎骨と後方の[[涙骨]]によって形成される大きな窪みである前眼窩窩に位置している。これは他のアベリサウルス科と同様、カルノタウルスでもこの窪みは小さかった。前眼窩窩の前下方隅には、上顎内の空洞につながるpromaxillary fenestraと呼ばれる小さな穴があった<ref name="Cerroni2020"/>。眼は鍵穴状の眼窩の上部に位置していた{{efn-ua|name="90B3"}}。この上部は、比例して小さく円形に近い形状で、前方に突出した{{仮リンク|後眼窩骨|en|Postorbital bone}}によって眼窩の下部から分離されていた<ref name="Cerroni2020"/>。わずかに前方に回転しており、おそらくある程度の{{仮リンク|両眼視|en|Binocular vision}}が可能になっていた{{efn-ua|name="98M191"|p. 191 in Mazzetta et al. (1998)<ref name="GVPaleobiology"/>}}。眼窩の鍵穴のような形状は、頭蓋骨の顕著な短縮と関係している可能性があり、類似の吻を持つアベリサウルス科にも見られた<ref name="Cerroni2020"/>。すべてのアベリサウルス科と同様に、前頭骨は眼窩に接しなかった。眼窩の背後には、側部に[[下側頭窓]]、頂部に[[上側頭窓]]の2つの窓があった。下側頭窓は高く、短く、腎臓形をしており、上側頭窓は短く、四角形だった。もう一つの窓である[[下顎窓]]は下顎に位置しており、カルノタウルスでは、比較的大きかった<ref name="Cerroni2020"/>。

[[File:Carnotaurus skull diagram.svg|thumb|upright=1.2|復元された頭蓋骨の図]]
上顎には両側それぞれに[[前上顎骨]]歯が4本、[[上顎骨]]歯が12本あり{{efn-ua|name="09N255"|p. 255 in Novas (2009)<ref name="novas2009"/>}}、下顎の[[下顎骨]]には片側に15本の歯が備わっていた{{efn-ua|name="90B6"|p. 6 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}<ref name="Cerroni2020"/>。その歯は他のアベリサウルス科に見られる非常に短い歯とは対照的に<ref name="sampson2007"/>、長く細いものだった<ref name="Paul1988PDW"/>。しかし、Cerroni ''et al.'' (2020)は頭蓋骨について記載した際、発掘中にすべての歯はひどく損傷しており、後に石膏で復元されたものであったと述べた(ボナパルテは1990年に下顎歯には断片化しているものがあると述べるに留まっている)<ref name="Cerroni2020"/>{{efn-ua|name="90B6"}}。したがって、歯の形状に関する信頼できる情報源は、まだ顎の内部にある置換歯や[[歯根]]に限られ、[[CTスキャン|CT画像]]を使用し調査することができる<ref name="Cerroni2020"/>。置換歯は、低く平らな[[歯冠]]を持ち、間隔が狭く、前方に約45度傾斜していた<ref name="Cerroni2020"/>。1990年の記載で、ボナパルテは下顎が浅く弱い構造であり、[[歯骨]]が最後部の顎骨と2つの不動結合でしか繋がっていないことを指摘し、またこれは、頑丈そうな頭蓋骨とは対照的であったとした<ref name="Paul1988PDW"/>{{efn-ua|name="90B6"}}。Cerroniらは、歯骨と最後部の顎の骨の間に、複数の緩い結合を発見した。この結合部分が非常に柔軟であることには変わりないが、必ずしも貧弱であったとは限らない<ref name="Cerroni2020">{{cite journal |last1=Cerroni |first1=M. A. |last2=Canale |first2=J. I. |last3=Novas |first3=F. E. |date=2020 |title=The skull of ''Carnotaurus sastrei'' Bonaparte 1985 revisited: insights from craniofacial bones, palate and lower jaw |journal=Historical Biology |volume=33 |issue=10 |doi=10.1080/08912963.2020.1802445 |pages=2444–2485|s2cid=225374445 |url=https://figshare.com/articles/dataset/The_skull_of_i_Carnotaurus_sastrei_i_Bonaparte_1985_revisited_insights_from_craniofacial_bones_palate_and_lower_jaw/12848981 }}</ref>。歯骨の骨縁下は凸状であったが、マジュンガサウルスでは直線であった<ref name="Cerroni2020"/>。

[[File:Carnotaurus Reconstruction (2022).png|thumb|left|alt=Illustration|カルノタウルスの復元図]]
下顎は、生存していた場合の位置にある[[骨化]]した[[舌骨]]とともに発見された。[[舌]]などの[[筋肉]]等を支えるこの細い骨は、他の恐竜ではほとんど見つかっておらず、それはこれらが一般的に[[軟骨]]状であることが多く、他の骨とつながっていないため、簡単に紛失する為である{{efn-ua|name="90B6"}}<ref name="hartman2012"/><ref name="Cerroni2020"/>。カルノタウルスには、3つの舌骨が保存されていた。湾曲した棒状の一対の舌骨が、一つの台形状の舌骨(底舌骨)と連結している。またカルノタウルスは、底舌骨が知られている唯一の[[非鳥類型獣脚類]]である<ref name="Cerroni2020"/>。他のアベリサウルス科と同様に、頭蓋骨の後方には[[脳室]]を取り囲むように発達した室があった。[[中耳腔]]と繋がっている[[鼓室]]と、[[頸部]]にある[[気嚢]]の成長により生じた室の、2つの独立した室が存在していた<ref name="Cerroni2019"/>。

カルノタウルスの頭蓋骨には、一対の角や非常に短く深い頭蓋骨など、多くの[[固有派生形質]]が見られた。上顎骨の前上顎窓の上には窪みがあり、前眼窩洞により窪んだと考えられている。[[鼻涙管]]は、機能が不明の管を通り管の表面に出ていた。また、[[方形骨]]の深く長い空気を含む窪みや、[[口蓋骨]]の[[翼突筋]]に細長い窪みが存在するといったものが、固有派生形質であった可能性がある<ref name="Cerroni2020"/>。

=== 椎骨 ===
[[File:Carnotaurus-tail-vertebra-caudal-ribs.png|thumb|alt=Three views of the caudal ribs on vertebrae|[[ホロタイプ]]の第六尾椎 A.側面図 B.正面図 C.上面図 矢印は尾肋が大きく変形していることを示す]]
椎骨は10個の[[頸椎]]、12個の[[胴椎]]、6個の癒合した[[仙椎]]{{efn-ua|name="08CS191"}}、そして未知の数の[[尾椎]]から構成されていた<ref name="bonaparte1990" />。頸部は他の獣脚類に見られるS字カーブではなく、ほぼ直線であり、特に付け根にかけて異常に幅が広かった<ref name="mendez"/>。首の[[脊柱]]の上部には、[[w:Epipophyses|epipophyses]]と呼ばれる拡大した上向きの突起が二列に並んでおり、首の椎骨の上部に滑らかな溝を作っていた。これらの突起は頸椎の最も高い部分にあり、異常に低い[[棘突起]]の上にそびえ立っていた<ref name="bonaparte1990" /><ref name="hartman2012"/>。このepipophysesはおそらく、著しく強い頸部の筋力の付着部となっていたとされている{{efn-ua|name="09N257"|p. 257 in Novas (2009)<ref name="novas2009"/>}}。尾椎にも同様な二列があり、高度に変化した尾肋によって形成され、正面から見るとV字型に上方に突出し、その内側が尾椎前部の滑らかで平らな上面を作っている。各尾肋の端には、前方に突出したフック状の拡張部があり、前方の椎骨の突起とつながっている<ref name="hartman2012"/><ref name="personscurrie2011"/>。

=== 前肢 ===
[[File:CarnotaurCMNShoulder.jpg|thumb|[[肩]]と[[腕]] 手は日常生活では動かすことができないほど湾曲していた]]
[[File:Carnotaurus manus.svg|thumb|upright|Ruiz ''et al.'' (2011)による手の骨の解剖<ref name="ruiz2011"/>]]
[[前肢]]は、[[ティラノサウルス科]]を含む他のどの大型肉食恐竜よりも、比率的に短かった{{efn-ua|name="11R1276"|p. 1276 in Ruiz et al. (2011)<ref name="ruiz2011"/>}}。[[前腕]]は[[上腕]]の4分の1の大きさしかなかった。手には[[手根骨]]がなく、[[中手骨]]は前腕と直接連結していた<ref name="ruiz2011"/>。手には4本の基本的な指が見られたが<ref name="bonaparte1990" />、真ん中の2本だけが指骨で終わっており、4本目は外側の "けづめ" に相当する可能性のある添え木のような中手骨1本で構成されていた。指自体は癒合して動かず、[[爪]]もなかった可能性がある<ref name="agnolin&chiarelli2010" />。カルノタウルスは、他のすべてのアベリサウルス科と比較し、前肢が短く頑丈で、添え木のような第4中手骨が手の中で最も長い骨であるという点で異なっていた<ref name="ruiz2011"/>。2009年の研究では、刺激伝達を担う[[神経繊維]]が同様に痕跡的な前肢をもつ現生の[[エミュー]]や[[キーウィ (鳥)|キーウィ]]に見られる程度にまで減少していたため、アベリサウルス科でも前肢は[[痕跡器官 (生物)|痕跡器官]]であったと示唆されている<ref name="senter2010"/>。

=== 皮膚 ===
カルノタウルスは、かなりの数の[[皮膚]]印象[[化石]]が発見された最初の獣脚類である<ref name="czerkas1997"/>。これらの皮膚化石は、骨格右側の下となった部分で発見され、下顎{{efn-ua|name="90B32"|p. 32 in Bonaparte (1990)<ref name="bonaparte1990" />}}、前頸部、[[肩帯]]、[[骨性胸郭]]など、様々な体の部位からなる<ref name="czerkas1997"/>。最大の皮膚化石は尾の前部から発見された{{efn-ua|name="90B32"}}。発掘以前は、頭蓋骨の右側に大きな皮膚の痕が存在していたが、発掘する際に皮膚があったことに気づかず、化石は失われてしまった<ref name="czerkas1997"/>。しかし、いくつかの頭蓋骨の表面から、皮膚痕がどのようなものであったかを推測することは可能である。吻の側面と前面には、溝、穴、などを持った凹凸の表面があり、おそらく現在のワニのように平らな鱗で覆われていたと考えられている。鼻先の上部には多数の小さな穴と棘があり、この質感は[[角質化]]した皮膚と関係していた(角質層で覆われていた)とされている。このような皮膚はマジュンガサウルスにも存在したが、[[アベリサウルス]]と[[ルゴプス]]には存在しなかった。涙骨と後眼窩窓に縦溝のある丘陵状の表面があることから、おそらく大きな鱗の列が[[眼]]を囲んでいたと考えられる<ref name="Cerroni2020"/>{{efn-ua|name="90B3"}}。
[[File:Carnotaurus skin.jpg|thumb|left|尾部の皮膚印象]]
皮膚は、直径約5~12mmの多角形の重なり合わない鱗の形で構成されていた。この鱗は細い平行の溝で区切られていた{{efn-ua|name="09N264-299"|pp. 264–299 in Novas (2009)<ref name="novas2009"/>}}。鱗の模様は頭部を除いて体のさまざまな部分で類似していたが、頭部は明らかに異なる不規則な鱗のパターンを示していた{{efn-ua|name="09N264-299"}}<ref name="glut2003"/>。また、[[羽毛]]の痕跡はなかった<ref name="czerkas1997"/>。より大きなコブ状の隆起した構造が首、背中、尾の側面に不規則な列で存在していた。これらの隆起は、直径が4~5cm、高さが最大5cmで、低い[[正中線]]の隆起を示すことが多かった。これらは互いに8~10cm離れており、頭部に近づくほど大きくなっていた。この隆起は、おそらく特徴的な鱗(集まった{{仮リンク|稜鱗|en|scute}}の塊)を表しており、[[ハドロサウルス科]]の体の正中線に沿って走る柔らかいフリルに見られるものと似ていた。また、これらの構造には骨は含まれていなかった{{efn-ua|name="90B32"}}<ref name="czerkas1997"/><ref name="champione2020">{{Cite book| publisher = Springer| isbn = 978-3-030-27222-7| pages = 213–243 |editor=Christian Foth |editor2=Oliver W.M. Rauhut | last1 = Campione| first1 = Nicolás E.| last2 = Barrett| first2 = Paul M.| last3 = Evans| first3 = David C.| title = The Evolution of Feathers| chapter = On the ancestry of feathers in Mesozoic dinosaurs| date = 2020}}</ref>。Stephen Czerkas (1997)は、これらの構造は、同種や他の獣脚類と戦闘時に脇腹を保護した可能性があると示唆し、同様の構造が現代の[[イグアナ]]の首にも見られ、闘争時に限定的な防御を提供していたと主張した<ref name="czerkas1997"/>。

2021年に発表されたカルノタウルスの皮膚に関するより新しい研究では、体の鱗のこれまでの描写は不正確であり、大きな特徴的な鱗は、古い復元図のように別々の列に分布しているのではなく、体に沿ってランダムに分布していたことが示唆されている。また、体に沿って異なる部位の特徴的な鱗の大きさが段階的に変化する兆候も見られない。それに対しカルノタウルスの基底部の鱗は非常に様々で、胸部、肩甲骨部、尾部それぞれにおいて、小さく細長いものから大きく多角形のもの、また円形からレンズ状のものまで、大きさは非常に多様であった。この鱗の分化は、体が大きく活動的な生活を送っていたため、体温調節によって体温を調節し、余分な熱の発散させることに関係していた可能性がある<ref>{{cite journal |last1=Hendrickx |first1=Christophe |last2=Bell |first2=Phil R. |title=The scaly skin of the abelisaurid Carnotaurus sastrei (Theropoda: Ceratosauria) from the Upper Cretaceous of Patagonia |journal=Cretaceous Research |date=August 2021 |volume=128 |pages=104994 |doi=10.1016/j.cretres.2021.104994 |bibcode=2021CrRes.12804994H }}</ref>。

== 分類 ==
[[File:Dinossauromcnpucminas.jpg|thumb|alt=Restored skeleton|ホロタイプの復元模型:PUC-MG自然科学博物館]]
[[File:Forelimb of Carnotaurus.jpg|thumb|upright|前肢の骨]]
カルノタウルスは、[[超大陸]][[ゴンドワナ大陸]]南部に限定された大型獣脚類の[[科 (分類学)|科]]である[[アベリサウルス科]]の中で、最もよく理解されている[[属 (分類学)|属]]のひとつである。アベリサウルス科はゴンドワナ大陸の[[後期白亜紀]]において支配的な捕食者で、[[カルカロドントサウルス科]]に取って代わり、[[ティラノサウルス科]]が北方大陸で埋めた生態的地位を占めていた<ref name="candeiro2005"/>。頭蓋骨と腕の短縮や頸椎と尾椎の特殊性など、この科内で進化したいくつかの注目すべき特徴は、カルノタウルスでは他のどのアベリサウルス科よりも顕著であったことである{{efn-ua|name="09N276-7"|pp. 276–277 in Novas (2009)<ref name="novas2009"/>}}{{efn-ua|name="09N256-261"|pp. 256–261 in Novas (2009)<ref name="novas2009"/>}}<ref name="personscurrie2011"/>。

アベリサウルス科内の関係については議論があるものの、カルノタウルスは[[系統分類学]]的分析により、この科の中で最も[[共有派生形質|派生的]]な属のひとつであることが一貫して示されている{{efn-ua|name="08CS188-9"|pp. 188–189 and 202 in Carrano and Sampson (2008)<ref name="carrano2008"/>}}。最も近縁であった属は[[アウカサウルス]]<ref name="canaleetal2009"/><ref name="coria2002"/><ref name="ezcurra2010"/><ref name="delcourt2018">{{cite journal |last=Delcourt |first=Rafael |date=2018 |title=Ceratosaur palaeobiology: new insights on evolution and ecology of the southern rulers |journal=Scientific Reports |pmid=29950661 |pmc=6021374 |doi=10.1038/s41598-018-28154-x |bibcode=2018NatSR...8.9730D |volume=8 |issue=1 |page=9730}}</ref>あるいは[[マジュンガサウルス]]であった可能性がある<ref name="sereno2004"/><ref name=tykoskirowe2004/><ref name="wilson2003"/>。これに対し2008年の論文では、カルノタウルスはどちらの属とも近縁ではないとし、代わりに[[イロケレシア]]を[[姉妹群]]として提唱した{{efn-ua|name="08CS202"|p. 202 in Carrano and Sampson (2008)<ref name="carrano2008"/>}}。Juan Canale ''et al.'' (2009)は、マジュンガサウルスを含まないカルノタウルスを含む新しい[[分岐群]]{{仮リンク|ブラキロストラ類|en|Brachyrostra}}を設立した。この分類方はそれ以来多くの研究で採用されてきた<ref name="canaleetal2009"/><ref name="delcourt2018"/><ref name="wang2017">{{cite journal |last1=Wang |first1=Shuo |last2=Stiegler |first2=Josef |last3=Amiot |first3=Romain |last4=Wang |first4=Xu |last5=Du |first5=Guo-hao |last6=Clark |first6=James M. |last7=Xu |first7=Xing |title=Extreme Ontogenetic Changes in a Ceratosaurian Theropod |journal=Current Biology |date=January 2017 |volume=27 |issue=1 |pages=144–148 |doi=10.1016/j.cub.2016.10.043 |pmid=28017609 |doi-access=free |bibcode=2017CBio...27..144W }}</ref>。

カルノタウルスは、アベリサウルス科の2つの下位分類群、[[カルノタウルス亜科]]と[[カルノタウルス族]]の名の由来となっている。[[古生物学者]]らはこれらの分類学をすべて採用しているわけではない。カルノタウルス亜科は、ほとんどの研究で原始的な属とされている[[アベリサウルス]]を除く、すべての派生したアベリサウルス科を含むように定義された<ref name="sereno_carnotaurinae"/>。しかし、2008年の論文では、アベリサウルスは派生したアベリサウルス科であることが示唆されている{{efn-ua|name="08CS202"}}。カルノタウルス族は、カルノタウルスとアウカサウルスによって形成された分岐群を命名するために設立された<ref name="coria2002"/>。アウカサウルスをカルノタウルスの近縁属とする古生物学者のみがこの分類群を使っている<ref name="sereno_carnotaurini"/>。2024年の研究では、カルノタウルス族はカルノタウルス、アウカサウルス、{{仮リンク|ニエブラ|en|Niebla antiqua}}、{{仮リンク|コレケン|en|Koleken}}からなる有効な分岐群として回復した<ref name="pol2024"/>。

以下は、2009年にCanaleらが発表した[[クラドグラム]]である<ref name="canaleetal2009"/>。

{{clade| style=font-size:100%; line-height:85%
|label1=[[カルノタウルス亜科]]
|1={{clade
|1=''[[マジュンガサウルス|Majungasaurus]]'' [[File:Majungasaurus BW (flipped).jpg|80 px]]
|label2=[[ブラキロストラ類]]
|2={{clade
|label1=[[カルノタウルス族]]
|1={{clade
|1=''[[アウカサウルス|Aucasaurus]]'' [[File:Aucasaurus garridoi by Paleocolour.jpg|80 px]]
|2='''''Carnotaurus''''' [[File:Carnotaurus Reconstruction (2022).png|80 px]] }}
|2={{clade
|1=''[[イロケレシア|Ilokelesia]]'' [[File:Ilokelesia (flipped).jpg|80 px]]
|2={{clade
|1=''[[スコルピオヴェナトル|Skorpiovenator]]'' [[File:Skorpiovenator bustingorryi.jpg|80 px]]
|2=''[[エクリクシナトサウルス|Ekrixinatosaurus]]'' [[File:Ekrixinatosaurus novasi by Henrique Paes.png|80 px]] }} }} }} }} }}

== 研究 ==
=== 角の機能 ===
[[File:Carnotaurus head.jpg|thumb|alt=Drawing of a ''Carnotaurus'' head|頭蓋骨の骨形態から推定される軟部組織を示す頭部の復元図]]
カルノタウルスは、前頭骨に一対の角を持つ唯一の肉食二足歩行動物として知られる<ref name=GVMetal09/>。この角の用途は完全には明らかになっていない。同種と戦ったり、獲物を殺すために使われたという解釈がいくつかあるが、求愛や同種を認識するためのディスプレイとして使われた可能性もある<ref name="Cerroni2020"/>。

1988年に[[グレゴリー・ポール]]は、角は突きつけ合うための武器であり、眼窩が小さいため、戦いの際に目を傷つける可能性を最小限に抑えることができたと主張している<ref name="Paul1988PDW"/>。1998年にGerardo Mazzettaらは、カルノタウルスが雄羊に似た方法で角を使っていたことを示唆した。彼らの計算では、首の筋肉組織は、2頭のカルノタウルスが双方毎秒5.7mの速度で正面から頭を衝突させたときの衝撃を吸収するのに十分な強さがあったとされる<ref name="GVPaleobiology"/>。2009年にFernando Novasは、いくつかの骨格の特徴を、頭部で打撃を与えるための[[適応 (生物学)|適応]]のためであったとした{{efn-ua|name="09N259-261"|pp. 259–261 in Novas (2009)<ref name="novas2009"/>}}。彼は、頭蓋骨が短いことで[[慣性モーメント]]が減少し、頭の動きが素早くなったのではないか、また筋肉質な首によって、頭部への強い打撃が可能になったのではないかと指摘した。彼はまた、頭や首から伝わる衝撃に耐えるために進化した可能性のある脊椎の剛性と強度の向上についても言及した{{efn-ua|name="09N260-1"|pp. 260–261 in Novas (2009)<ref name="novas2009"/>|group="upper-alpha"|}}。

他の研究では、敵対関係にあったカルノタウルスは頭を激しく突きつけ合うのではなく、頭蓋骨の上部でゆっくりと押し合っていたと示唆されている<ref name=GVMetal09/><ref name="chure1998"/>。Mazzetta ''et al.'' (2009)は、角は脳に損傷を与えることなく圧縮力を分散させるための器官ではないかと主張した。これは、角の上側が平坦になっていること、頭蓋骨の上部の骨が強く癒合していること、そして頭蓋骨が急激な頭部打撃に耐えられないことから裏付けられる<ref name=GVMetal09/>。2018年にRafael Delcourtは、角は現代の[[ウミイグアナ]]に見られるように、ゆっくりと頭突きをしたり、突き飛ばしたりするか、あるいは現代の[[キリン]]に見られるように、相手の首や脇腹を打撃するのに使われた可能性があると示唆した<ref name="delcourt2018"/>。後者の可能性は、関連するマジュンガサウルスについて2011年の学会論文で提案されたことがある<ref name="snively2011">{{Cite conference| publisher = American Society of Mechanical Engineers| volume = 54587| pages = 1075–1076| last1 = Snively| first1 = Eric| last2 = Cotton| first2 = John R.| last3 = Witmer| first3 = Lawrence| last4 = Ridgely| first4 = Ryan| last5 = Theodor| first5 = Jessica| title = Finite element comparison of cranial sinus function in the dinosaur ''Majungasaurus'' and head-clubbing giraffes| book-title = Summer Bioengineering Conference| date = 2011}}</ref>。

Gerardo Mazzetta ''et al.'' (1998)は、角は小さな獲物を傷つけたり殺したりするためにも使われたのではないかと主張している。角の芯は鈍いものの、[[ケラチン]]質の被膜があれば、現代の[[ウシ科]]の角と似た形をしていた可能性がある。しかし、これは動物の角が[[狩猟]]用の武器として使用された唯一の報告例であろう<ref name="GVPaleobiology"/>。

=== 顎の機能と食事 ===
[[File:Carnotaurus Skull.jpg|thumb|upright|alt=Cast of skull|頭蓋骨の模型 [[アメリカ合衆国]][[ケノーシャ (ウィスコンシン州)|ケノーシャ]]にある{{仮リンク|恐竜ディスカバリーミュージアム|en|Dinosaur Discovery Museum}}]]
1998年、2004年、2009年のMazzettaらによるカルノタウルスの顎の構造の分析では、カルノタウルスは素早い噛みは可能だったが、強い噛みはできなかったことが示唆された<ref name="GVPaleobiology"/><ref name="mazzettaetal2004"/><ref name=GVMetal09/>。現代の[[クロコダイル科]]の研究で示されているように、小さな獲物を捕らえるときには、強く噛むことよりも素早く噛む方が重要である<ref name=GVMetal09/>。彼らはまた、頭蓋骨と特に下顎に高い柔軟性([[頭蓋キネシス|キネシス]])があり、現代の[[ヘビ]]にやや類似していることにも注目した。顎の弾力性によって、カルノタウルスは小さな獲物を丸呑みできたとされる。さらに、下顎の前部は蝶番関節で連結されており、上下に動くことができた。歯は下向きに押されると前方に突き出し、カルノタウルスは小さな獲物を突き刺すことができた。歯が上向きに湾曲したとき、後方に突き出した歯は捕らえた獲物が逃げるのを妨ぐことができた<ref name="GVPaleobiology"/>。Mazzettaらはまた、頭蓋骨が大きな獲物を引っ張るときに生じる力に耐えられることも発見した<ref name=GVMetal09/>。したがって、カルノタウルスは主に比較的小さな獲物を捕食していた可能性があるが、大型恐竜を狩ることもできた<ref name=GVMetal09/>。2009年、Mazzettaらはカルノタウルスの[[咬合力]]を約3,341[[ニュートン (単位)|ニュートン]]と推定した<ref name=GVMetal09/>。2022年に行われた33種類の恐竜の咬合力を推定する研究では、カルノタウルスの咬合力は顎の前方部で約3,392ニュートンと推定され、これはそれまでの推定値よりも少し高かった。一方、顎の後方部での咬合力は7,172ニュートンと推定された<ref>{{cite journal | doi=10.7717/peerj.13731 | title=Estimating bite force in extinct dinosaurs using phylogenetically predicted physiological cross-sectional areas of jaw adductor muscles | year=2022 | last1=Sakamoto | first1=Manabu | journal=PeerJ | volume=10 | pages=e13731 | pmid=35846881 | pmc=9285543 | doi-access=free }}</ref>。

2005年にこの解釈はFrançois Therrienらによって疑問視され、彼らはカルノタウルスの咬合力が[[アメリカアリゲーター]](現生の[[四肢動物]]の中で最も咬合力が強いとされる)の2倍であることを発見した。彼らまたは、現代の[[コモドオオトカゲ]]との類似点も指摘している。下顎の[[曲げ強さ]]は先端に向かって直線的に減少しており、このことから、この顎は小さな獲物を高精度で捕らえるのに適しておらず、大きな獲物を弱らせ、切り傷を与えるのに適していた。その結果、この研究によれば、カルノタウルスは主に大型動物を捕食していたに違いなく、おそらく待ち伏せをし捕食していたと考えられた<ref name="therrien2005"/>。Cerroni ''et al.'' (2020)は、柔軟性は下顎に限られていたと主張した。一方、頭蓋の天井が厚くなっていることや、頭蓋のいくつかの関節が骨化していることから、頭蓋に運動機能はなかったか、あってもごくわずかだったことが示唆されている<ref name="Cerroni2020"/>。

1998年に[[ロバート・T・バッカー]]は、カルノタウルスが主に非常に大きな獲物、特に[[竜脚類]]を捕食していたことを発見した。彼が指摘したように、短い吻、比較的小さな歯、そして強い頭蓋後部([[後頭骨]])など、頭蓋骨のいくつかの適応は、[[アロサウルス]]においても同様に独立して進化した。これらの特徴から、上顎は[[鋸歯]]状の棍棒のように傷を負わせるために使われていたことを示唆しており、大型の竜脚類は繰り返し攻撃を受けることで弱体化していたと考えられる<ref name="bakker1998" />。

=== 移動 ===

{{multiple image
|align = left
|total_width = 400
|image1 = Carnotaurus tail cross section.png
|alt1 = Cross-section of the tail muscles
|caption1 = カルノタウルスの尾の断面図 肥大した尾大腿筋とV字型の尾椎が伺える
|image2 = Robustly modeled tail of Carnotaurus.png
|caption2 = 尾の筋肉、尾、骨盤を横と上から見た3D復元図
|alt2 =
}}

1998年と1999年にMazzettaらは、カルノタウルスは走るのが速かったと推定し、[[大腿骨]]が走る際の高い[[断面力|曲げモーメント]]に耐えられるように適応していたと主張している。動物の脚のこのような力に耐えられる能力は、最高速度を制限した。カルノタウルスの走力への適応は、[[ダチョウ属|ダチョウ]]ほどではないが、ヒトよりは優れていた{{efn-ua|name="98M186190"|p. 186 and 190 in Mazzetta et al. (1998)<ref name="GVPaleobiology"/>}}<ref name="mazzetta1999"/>。科学者の計算によるカルノタウルスの最高速度は、時速48~56kmであった<ref>{{cite news|title=Predatory dinosaur was fearsomely fast|url=http://www.cbc.ca/news/technology/predatory-dinosaur-was-fearsomely-fast-1.1064092|access-date=April 22, 2017|work=[[CBC News]]|date=October 21, 2011}}</ref>。

恐竜において、最も重要な歩行筋は尾にあった。この筋肉は{{仮リンク|尾大腿筋|en|caudofemoralis}}と呼ばれ、大腿骨の突出部である[[第四転子]]に付着し、収縮すると大腿骨を後方に引っ張った。2011年にScott Personsと[[フィリップ・J・カリー]]は、カルノタウルスの尾椎では尾部肋骨が水平に(T字型)突き出ているのではなく、椎骨の垂直軸に対して角度がついておりV字型であると主張した。これにより、他のどの獣脚類よりも大きな尾大腿筋のためのスペースが確保されたと考えられる。筋肉の質量は、脚1本あたり111~137[[キログラム|kg]]と推定されている。したがって、カルノタウルスは大型獣脚類のなかでも最速だった可能性がある<ref name="personscurrie2011"/>。尾大腿筋が肥大する一方で、尾骨の上部に位置する[[軸上筋]]は比例して小さくなっていたと考えられる。これらの筋肉は[[最長筋]]と[[棘筋]]と呼ばれ、尾の動きと安定性を担っている。これらの筋肉の減少にもかかわらず尾の安定性を維持するために、尾部肋骨は前方に突出した突起を持ち、尾部肋骨同士および骨盤と連結して尾を硬くした。その結果、他の獣脚類とは異なり、腰と尾を同時に回転させる必要があったため、急旋回する能力が低下した<ref name="personscurrie2011"/>。

=== 脳と感覚 ===
CerroniとPaulina-Carabajalは2019年、CTスキャンを使用し脳を含む頭蓋骨内を調査した。頭蓋骨内の容積は168.8&nbsp;cm<sup>3</sup>であったが、脳はこの空間のほんの一部のみを占めていたと考えられている。彼らは2つの異なる脳の大きさを推定し、それぞれ頭蓋骨内の50%と37%の脳の大きさと仮定した。その結果、知能の指針となる爬虫類[[脳化指数]]は近縁属のマジュンガサウルスよりは大きいが、[[ティラノサウルス科]]よりは小さかったことがわかった。[[ホルモン]]を作り出す[[松果体]]は、他のアベリサウルス科恐竜よりも小さかった可能性がある。これは、松果体があったと考えられる前脳上部の空間である硬膜の拡張が低いことからわかる<ref name="Cerroni2019"/>。

嗅覚を司る[[嗅球]]は大きく、視覚を司る[[上丘|視葉]]は比較的小さかった。これは、嗅覚が視覚よりも発達していた可能性があることを示唆しているが、現代の鳥類ではその逆であった。嗅索と嗅球の前端は下向きに湾曲しており、これは[[インドサウルス]]にのみ見られる特徴で、他のアベリサウルス科では、これらの構造は水平に向いていた。CerroniとPaulina-Carabajalの仮説では、この下向きの湾曲と嗅球の大きなサイズは、カルノタウルスが他のアベリサウルス科よりも嗅覚に頼っていたことを示している可能性がある。視線の安定化と相関関係にあると考えられている脳葉の{{仮リンク|片葉|en|Flocculus}}は、カルノタウルスや他の南米のアベリサウルス科内では大きかった。これは、これらの形態が頭と体の素早い動きが頻繁に使用されていたことを示している可能性がある。カルノタウルスや他のアベリサウルス科では、[[内耳]]の壺 (lagena) が短いことからわかるように、聴覚はあまり発達していなかった可能性がある。可聴域は3kHz以下と推定されている<ref name="Cerroni2019"/>。

== 生息年代と環境 ==
[[File:Carnotaurus sastrei Andrey Atuchin.jpg|thumb|当時の環境におけるカルノタウルス]]
当時、カルノタウルスが発見された岩石は、{{仮リンク|セロ・バルシーノ層|en|Cerro Barcino Formation}}(ゴロ・フリヒオ層)の上部に割り当てられており、約1億年前([[アルビアン]]あるいは[[セノマニアン]])のものであると考えられていた<ref name="bonaparte1985"/>{{efn-ua|name="90B3"}}。その後、それらははるかに新しい地層の{{仮リンク|ラ・コロニア層|en|La Colonia Formation}}<ref name="bonaparte1996"/>とされ、[[カンパニアン]]と[[マーストリヒチアン]](8360万年前から6600万年前)であることが判明した<ref name="Cerroni2020"/>。Novasは2009年の著書で、7200万年前から6990万年前(前期マーストリヒチアン)というより狭い期間を挙げた{{efn-ua|name="09N276"}}。したがって、カルノタウルスは南米で知られているアベリサウルス科恐竜の中で最も新しい恐竜であった<ref name="personscurrie2011"/>。後期白亜紀までに、南アメリカはすでにアフリカと北アメリカの両方から独立していた<ref name="leloeuff1997"/>。

ラ・コロニア層は{{仮リンク|北パタゴニア山塊|en|North Patagonian Massif}}の南斜面に露出している<ref name="pascual2000"/>。カルノタウルスを含む脊椎動物の化石のほとんどは、この地層の中層から産出している<ref name="pascual2000"/>。この部分は、[[三角江]]、[[干潟]]、または[[海岸平野]]の環境の堆積物である可能性が高い<ref name="pascual2000"/>。気候は季節によって異なり、乾期と湿期があったとされる<ref name="pascual2000"/>。最も多く産出している脊椎動物は、[[ハイギョ]]の{{仮リンク|セラトドゥス科|en|Ceratodontidae}}、[[カメ]]、[[首長竜]]、[[ワニ]]、[[恐竜]]、[[トカゲ]]、[[ヘビ]]、[[哺乳類]]などである<ref name="sterli2011"/>。他に生息していた恐竜には、カルノタウルスに近縁の''[[コレケン|Koleken inakayali]]''<ref name="pol2024">{{cite journal |last1=Pol |first1=Diego |last2=Baiano |first2=Mattia Antonio |last3=Černý |first3=David |last4=Novas |first4=Fernando |last5=Cerda |first5=Ignacio A. |title=A new abelisaurid dinosaur from the end Cretaceous of Patagonia and evolutionary rates among the Ceratosauria |journal= Cladistics|date=21 May 2024 |volume=40 |issue=3 |pages=307–356 |doi=10.1111/cla.12583 |doi-access=free |pmid=38771085 }}</ref>、[[ティタノサウルス類]]{{仮リンク|サルタサウルス上科|en|Saltasauroidea}}の''[[ティタノマキア (恐竜)|Titanomachya gimenezi]]''<ref>{{Cite journal|last1=Pérez-Moreno |first1=A. |last2=Salgado |first2=L. |last3=Carballido |first3=J. L. |last4=Otero |first4=A. |last5=Pol |first5=D. |year=2024 |title=A new titanosaur from the La Colonia Formation (Campanian-Maastrichtian), Chubut Province, Argentina |journal=Historical Biology: An International Journal of Paleobiology |pages=1–20 |doi=10.1080/08912963.2024.2332997 |doi-access=free}}</ref>、未命名の[[曲竜類]]、未命名の[[ハドロサウルス上科]]などがある。発見されたヘビには、''[[アラミトフィス|Alamitophis argentinus]]''などといった、[[ボア科]]や[[マッツォイア科]]に属するものがある<ref name="albino2000"/>。カメは少なくとも5つの[[タクソン]]からなり、そのうちの4つは[[ヘビクビガメ科]]([[曲頸類]])、1つは{{仮リンク|メイオラニア科|en|Meiolaniidae}}([[潜頸類]])である<ref name="gasparinifuente2000"/>。首長竜には、[[エラスモサウルス科]]の2属(''[[カワネクテス|Kawanectes]]''と''[[チュブティネクテス|Chubutinectes]]'')と{{仮リンク|ポリコティルス科|en|Polycotylidae}}(''[[スルクスクス|Sulcusuchus]]'')がある<ref>{{Cite journal |last1=O’Gorman |first1=José P. |last2=Carignano |first2=Ana Paula |last3=Calvo-Marcilese |first3=Lydia |last4=Pérez Panera |first4=Juan Pablo |date=2023-08-10 |title=A new elasmosaurid (Sauropterygia, Plesiosauria) from the upper levels of the La Colonia Formation (upper Maastrichtian), Chubut Province, Argentina |journal=Cretaceous Research |volume=152 |language=en |pages=105674 |doi=10.1016/j.cretres.2023.105674 |bibcode=2023CrRes.15205674O |s2cid=260830333 |issn=0195-6671}}</ref><ref>{{cite journal | title = Revision of ''Sulcusuchus erraini'' (Sauropterygia, Polycotylidae) from the Upper Cretaceous of Patagonia, Argentina | first1 = J.P. | last1 = O'Gorman | journal = Alcheringa: An Australasian Journal of Palaeontology | last2 = Gasparini | first2 = Z. | volume = 37 | issue = 2 | date = 2013 | pages = 163–176 | doi = 10.1080/03115518.2013.736788 | bibcode = 2013Alch...37..163O | s2cid = 131429825 | hdl = 11336/2489 | hdl-access = free }}</ref>。哺乳類では、''[[レイギテリウム|Reigitherium bunodontum]]''と''[[コロニアテリウム|Coloniatherium cilinskii]]''が代表的であり、前者は南米の[[梁歯目]]の最初の記録と考えられている<ref name="pascual2000" /><ref>{{cite journal |last1=Rougier |first1=G. W. |last2=Turazzinni |first2=G. F. |last3=Cardozo |first3=M. S. |last4=Harper |first4=T. |last5=Lires |first5=A. I. |last6=Canessa |first6=L. A. |title=New Specimens of ''Reigitherium bunodontum'' from the Late Cretaceous La Colonia Formation, Patagonia, Argentina and Meridiolestidan Diversity in South America |journal=Journal of Mammalian Evolution |date=2021 |volume=28 |issue=4 |pages=1051–1081 |doi=10.1007/s10914-021-09585-2|s2cid=254704047 }}</ref>。また、{{仮リンク|ゴンドワナテリウム類|en|Gondwanatheria}}または[[多丘歯目]]の可能性がある''[[アルゲントディテス|Argentodites coloniensis]]''と''[[フェルグリオテリウム|Ferugliotherium windhauseni]]''も代表的である<ref name=kielanjaworowska2007/><ref>{{Cite journal | last1 = Gurovich | first1 = Y. | last2 = Beck | first2 = R. | doi = 10.1007/s10914-008-9097-3 | title = The phylogenetic affinities of the enigmatic mammalian clade Gondwanatheria | journal = Journal of Mammalian Evolution | volume = 16| issue = 1| pages = 25–49 | year = 2009| s2cid = 42799370 }}</ref>。[[エナンティオルニス類]]の化石と、不確定だが[[鳥類|今鳥亜綱]]の化石が発見されている<ref name="lawver2011"/><ref>{{Cite journal|last1=Acosta Hospitaleche |first1=C. |last2=O'Gorman |first2=J. P. |last3=Panzeri |first3=K. M. |year=2023 |title=A new Cretaceous bird from the Maastrichtian La Colonia Formation (Patagonia, Argentina) |journal=Cretaceous Research |volume=150 |at=105595 |doi=10.1016/j.cretres.2023.105595 |bibcode=2023CrRes.15005595A |s2cid=259059084 }}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
=== 注釈 ===
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
{{Reflist|25em|group=upper-alpha}}
=== 出典 ===
{{Reflist|40em|refs=
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== 関連項目 ==
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2024年11月11日 (月) 07:42時点における版

カルノタウルス
プラハのフルパーチ博物館に展示された全身骨格
地質時代
約7,200万 - 約6,990万年前
中生代後期白亜紀マーストリヒチアン
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : ケラトサウルス下目 Ceratosauria
: アベリサウルス科 Abelisauridae
階級なし : ブラキロストラ類 Brachyrostra
: カルノタウルス族 Carnotaurini
: カルノタウルス属 Carnotaurus
学名
Carnotaurus
Bonaparte1985

カルノタウルス学名 Carnotaurus、「肉食の雄牛」の意味)は、後期白亜紀の約7,200万年前から6,900万年前の間に南アメリカに生息していた獣脚類恐竜。カルノタウルスはこのカルノタウルス・サストレイCarnotaurus sastrei)一からなる。カルノタウルスは、保存状態のよい1体の骨格から知られ、南半球に生息する獣脚類のなかでも最もよく解明されている獣脚類のひとつである。1984年に発見されたカルノタウルスの化石は、アルゼンチンチュブ州ラ・コロニア層英語版の岩石から発見された。カルノタウルスはアベリサウルス科の属で、後期白亜紀にゴンドワナ大陸南部で広大な捕食ニッチを占めていた大型獣脚類である。アベリサウルス科のなかでも、この属は南アメリカに限定された短吻型の分類群であるブラキロストラ類英語版の属とされることが多い。

カルノタウルスは、全長7.5〜8m、体重1.3~2.1tの、軽快で二足歩行の捕食動物であった。獣脚類のカルノタウルスは非常に特殊で特徴的だった。の上には他の肉食動物には見られない太いがあり、筋肉質なの上に非常に深い頭蓋骨が乗っていた。カルノタウルスは小さく退化した痕跡的な前肢と細長い後肢を特徴としていた。骨格は広範囲な皮膚痕とともに保存されており、直径約5mmの重なり合わない小さながモザイク状に並んでいた。鱗は側面に並んだ大きな凸凹で途切れており、羽毛のある痕跡はなかった。

特徴的な角と筋肉質な首は、同種の動物と戦うために使われた可能性がある。他の研究では、敵対関係にあった個体同士は、素早く頭で殴り合ったり、頭蓋骨の上側でゆっくり押したり、角を衝撃吸収材として使って正面からぶつかり合うなどし、戦っていた可能性がある。竜脚類のような非常に大きな獲物を狩ることができたという研究もあれば、比較的小さな動物を主に捕食していたという研究もあり、カルノタウルスの食性についてはまだよくわかっていない。の空洞から嗅覚が鋭敏だったことがうかがえるが、聴覚視覚はそれほど発達していなかった。カルノタウルスは走ることによく適していたとされ、大型獣脚類のなかでも特に速く走っていたとされる。

発見

ロサンゼルス郡自然史博物館英語版にあるカルノタウルスの骨格

唯一の骨格標本(ホロタイプ MACN-CH 894)は、1984年にアルゼンチン古生物学者ホセ・ボナパルテ英語版率いる探検隊によって発掘された[A]。この探検隊は他に、特徴的なトゲのある竜脚類アマルガサウルスも発見した[3]。これは1976年に始まったナショナル ジオグラフィック協会主催のプロジェクト「南アメリカのジュラ紀と白亜紀の陸生脊椎動物」の8回目の探検であった[3][B]。骨格はよく保存されており、関節も繋がっていたが、の後3分の2、下肢の大部分、両足低部は風化により破壊されていた[B][5]。頭骨の癒合した縫合線から、この骨格は成体のものだとわかった[6]。右側を下に横たわった状態で発見され、首が胴体の上で反り返った典型的なデスポーズをとっていた[7]。珍しいことに、広範囲に及ぶ皮膚の痕跡が保存されていた[B]。これらの痕跡の重要性を考慮し、元の発掘現場を再調査するために2回目の探検が開始され、さらにいくつかの皮膚の跡が発見された[7]頭蓋骨は化石化の過程で変形し、左側の鼻骨は右側に対し前方に変位し、また、鼻骨は上方に押し上げられ、前上顎骨は鼻骨に向かって後方に押し下げられた。変形により、上顎の上方への湾曲を誇張した[C]。吻は頭蓋骨の後部よりも変形の影響を大きく受けたが、これは後者の方が剛性が高いためだったと考えられている。上または下から見ると、上顎は下顎ほどU字型ではなく、明らかに一致していなかった。この不一致は、側面から作用する変形の結果であり、この変形は上顎には影響したが、下顎には影響しなかった。これはおそらく下顎の関節の柔軟性が高いためだった[1]

カルノタウルス骨格の発見されている部分

骨格標本は、アルゼンチンチュブ州テルセン・デパルタメント英語版バハーダ・モレノ近郊の「ポチョ・サストレ」という名の農場で発見された[5]。化石は非常に硬い岩である赤鉄鉱の大きなコンクリーションに埋まっていたため、プレパレーションは複雑で進捗は遅かった[9][5]。1985年、ボナパルテは Carnotaurus sastrei を新属新種として発表し、頭蓋骨と下顎について簡単に記述した論文を出版した[5]Carnotaurusという属名は、ラテン語で「肉」を意味する "carnis" と、「雄牛」を意味する "taurus" に由来し、雄牛のような角を持つことから「肉食の雄牛」と訳される[10]sastrei という種小名は、化石が発見された牧場のオーナーである、アンヘル・サストレに因んだもの[11]。1990年には骨格全体の包括的な説明が続いた[4]。カルノタウルスは、アベリサウルスに続いて発見されたアベリサウルス科の2番目の属である[12]。長年にわたり、この恐竜はそのの中で群を抜いて最もよく解明されていた種であり、また南半球で最もよく解明されていた獣脚類でもあった[13][14]アウカサウルスマジュンガサウルススコルピオヴェナトルなど、保存状態のよい類似のアベリサウルス類が発見されたのは21世紀に入ってからのことで、それによって研究者たちはカルノタウルスの解剖学的側面を再評価することができるようになった[C]。ホロタイプの骨格はベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館カバジート)に展示されており[D]、レプリカは同博物館や世界中の他の博物館で見ることができる[15]。造形家の StephenとSylvia Czerkasはカルノタウルスの実物大復元模型を制作し、これは以前ロサンゼルス郡自然史博物館英語版に展示されていた。この模型は、1980年代半ばに博物館が依頼したもので、獣脚類の皮膚の正確な状態を再現した初めての復元模型であった[7][16]

解説

Size comparison of Carnotaurus
カルノタウルスとヒトの比較図

カルノタウルスは大型だが軽量な捕食動物であった[17]。唯一知られている個体の全長は約7.5〜8mで[E][F][19]、カルノタウルスは最大級のアベリサウルス科でもあった[C][F][19]。非常に不完全だか、エクリクシナトサウルス英語版アベリサウルスは、カルノタウルスと大きさが同程度か、あるいはもっと大型であった可能性がある[G][H][C]。2016年の研究では、全長8.9mのピクノネモサウルス英語版のみが全長7.8mと推定されたカルノタウルスよりも長かったことが判明した[21]。また、体重は1.33t[I]、1.5t[J]、2t[19]、2.1t[K]、1.3-1.7t[24]と、異なる算定法を用いた別々の研究により幅広く推定されてきた。カルノタウルスは、特に頭蓋骨椎骨前肢の特徴に見られるように、高度に特殊化した獣脚類であった[A]。一方、骨盤と後肢は比較的原始的であり、より基部系統ケラトサウルスに似ていた。また、骨盤も後肢も細長かった。この個体の左大腿骨の長さは103cmだが、断面の平均直径は11cmしかない[L]

頭蓋骨

Side of skull
頭蓋骨の複数の角度からの画像 推定された皮膚構造の詳細と、右前頭骨角

頭蓋骨の長さは59.6cmで、他のどの大型肉食恐竜よりも相対的に短く、深かった[M][C]鼻口部先は適度に広く、ケラトサウルスのようなより原始的な獣脚類のように先細りではなく、顎は上向きに湾曲していた[25]。眼の上には一対の角が斜めに突き出ており、これらの角は前頭骨によって形成され[N]、太く円錐形状で、中空ではなく、断面はやや垂直に平らになっており、長さは15cmであった[6][1]。ボナパルテは1990年、これらの角はより長いケラチン質の角鞘の骨芯を形成していたと示唆した[O]。Mauricio Cerroni et al. (2020)は、頭蓋骨の角がケラチン質の鞘を支えていたことを認めつつ、その角鞘は骨芯よりもそれほど長くはなかったとした[1]

他の恐竜と同様、頭蓋骨には左右に6つの主要な開口部があった。これらの開口部のうち最も前方にある外鼻孔は長方形の様な形で、前方と側方に向いているが、ケラトサウルスなど他の恐竜のように側面から見て傾斜していなかった。この開口部は鼻骨と前顎骨のみによって形成されるが、一部のケラトサウルス類では上顎骨もこの開口部に接していた。鼻孔眼窩の間には前眼窩窓があった。スコルピオヴェナトルマジュンガサウルスなどの近縁種では、高さよりも長さがあったが、カルノタウルスは対照的に長さよりも高さがあった。前眼窩窓は前方の上顎骨と後方の涙骨によって形成される大きな窪みである前眼窩窩に位置している。これは他のアベリサウルス科と同様、カルノタウルスでもこの窪みは小さかった。前眼窩窩の前下方隅には、上顎内の空洞につながるpromaxillary fenestraと呼ばれる小さな穴があった[1]。眼は鍵穴状の眼窩の上部に位置していた[D]。この上部は、比例して小さく円形に近い形状で、前方に突出した後眼窩骨英語版によって眼窩の下部から分離されていた[1]。わずかに前方に回転しており、おそらくある程度の両眼視英語版が可能になっていた[P]。眼窩の鍵穴のような形状は、頭蓋骨の顕著な短縮と関係している可能性があり、類似の吻を持つアベリサウルス科にも見られた[1]。すべてのアベリサウルス科と同様に、前頭骨は眼窩に接しなかった。眼窩の背後には、側部に下側頭窓、頂部に上側頭窓の2つの窓があった。下側頭窓は高く、短く、腎臓形をしており、上側頭窓は短く、四角形だった。もう一つの窓である下顎窓は下顎に位置しており、カルノタウルスでは、比較的大きかった[1]

復元された頭蓋骨の図

上顎には両側それぞれに前上顎骨歯が4本、上顎骨歯が12本あり[Q]、下顎の下顎骨には片側に15本の歯が備わっていた[R][1]。その歯は他のアベリサウルス科に見られる非常に短い歯とは対照的に[25]、長く細いものだった[9]。しかし、Cerroni et al. (2020)は頭蓋骨について記載した際、発掘中にすべての歯はひどく損傷しており、後に石膏で復元されたものであったと述べた(ボナパルテは1990年に下顎歯には断片化しているものがあると述べるに留まっている)[1][R]。したがって、歯の形状に関する信頼できる情報源は、まだ顎の内部にある置換歯や歯根に限られ、CT画像を使用し調査することができる[1]。置換歯は、低く平らな歯冠を持ち、間隔が狭く、前方に約45度傾斜していた[1]。1990年の記載で、ボナパルテは下顎が浅く弱い構造であり、歯骨が最後部の顎骨と2つの不動結合でしか繋がっていないことを指摘し、またこれは、頑丈そうな頭蓋骨とは対照的であったとした[9][R]。Cerroniらは、歯骨と最後部の顎の骨の間に、複数の緩い結合を発見した。この結合部分が非常に柔軟であることには変わりないが、必ずしも貧弱であったとは限らない[1]。歯骨の骨縁下は凸状であったが、マジュンガサウルスでは直線であった[1]

Illustration
カルノタウルスの復元図

下顎は、生存していた場合の位置にある骨化した舌骨とともに発見された。などの筋肉等を支えるこの細い骨は、他の恐竜ではほとんど見つかっておらず、それはこれらが一般的に軟骨状であることが多く、他の骨とつながっていないため、簡単に紛失する為である[R][26][1]。カルノタウルスには、3つの舌骨が保存されていた。湾曲した棒状の一対の舌骨が、一つの台形状の舌骨(底舌骨)と連結している。またカルノタウルスは、底舌骨が知られている唯一の非鳥類型獣脚類である[1]。他のアベリサウルス科と同様に、頭蓋骨の後方には脳室を取り囲むように発達した室があった。中耳腔と繋がっている鼓室と、頸部にある気嚢の成長により生じた室の、2つの独立した室が存在していた[24]

カルノタウルスの頭蓋骨には、一対の角や非常に短く深い頭蓋骨など、多くの固有派生形質が見られた。上顎骨の前上顎窓の上には窪みがあり、前眼窩洞により窪んだと考えられている。鼻涙管は、機能が不明の管を通り管の表面に出ていた。また、方形骨の深く長い空気を含む窪みや、口蓋骨翼突筋に細長い窪みが存在するといったものが、固有派生形質であった可能性がある[1]

椎骨

Three views of the caudal ribs on vertebrae
ホロタイプの第六尾椎 A.側面図 B.正面図 C.上面図 矢印は尾肋が大きく変形していることを示す

椎骨は10個の頸椎、12個の胴椎、6個の癒合した仙椎[C]、そして未知の数の尾椎から構成されていた[4]。頸部は他の獣脚類に見られるS字カーブではなく、ほぼ直線であり、特に付け根にかけて異常に幅が広かった[27]。首の脊柱の上部には、epipophysesと呼ばれる拡大した上向きの突起が二列に並んでおり、首の椎骨の上部に滑らかな溝を作っていた。これらの突起は頸椎の最も高い部分にあり、異常に低い棘突起の上にそびえ立っていた[4][26]。このepipophysesはおそらく、著しく強い頸部の筋力の付着部となっていたとされている[S]。尾椎にも同様な二列があり、高度に変化した尾肋によって形成され、正面から見るとV字型に上方に突出し、その内側が尾椎前部の滑らかで平らな上面を作っている。各尾肋の端には、前方に突出したフック状の拡張部があり、前方の椎骨の突起とつながっている[26][28]

前肢

手は日常生活では動かすことができないほど湾曲していた
Ruiz et al. (2011)による手の骨の解剖[29]

前肢は、ティラノサウルス科を含む他のどの大型肉食恐竜よりも、比率的に短かった[T]前腕上腕の4分の1の大きさしかなかった。手には手根骨がなく、中手骨は前腕と直接連結していた[29]。手には4本の基本的な指が見られたが[4]、真ん中の2本だけが指骨で終わっており、4本目は外側の "けづめ" に相当する可能性のある添え木のような中手骨1本で構成されていた。指自体は癒合して動かず、もなかった可能性がある[30]。カルノタウルスは、他のすべてのアベリサウルス科と比較し、前肢が短く頑丈で、添え木のような第4中手骨が手の中で最も長い骨であるという点で異なっていた[29]。2009年の研究では、刺激伝達を担う神経繊維が同様に痕跡的な前肢をもつ現生のエミューキーウィに見られる程度にまで減少していたため、アベリサウルス科でも前肢は痕跡器官であったと示唆されている[31]

皮膚

カルノタウルスは、かなりの数の皮膚印象化石が発見された最初の獣脚類である[7]。これらの皮膚化石は、骨格右側の下となった部分で発見され、下顎[U]、前頸部、肩帯骨性胸郭など、様々な体の部位からなる[7]。最大の皮膚化石は尾の前部から発見された[U]。発掘以前は、頭蓋骨の右側に大きな皮膚の痕が存在していたが、発掘する際に皮膚があったことに気づかず、化石は失われてしまった[7]。しかし、いくつかの頭蓋骨の表面から、皮膚痕がどのようなものであったかを推測することは可能である。吻の側面と前面には、溝、穴、などを持った凹凸の表面があり、おそらく現在のワニのように平らな鱗で覆われていたと考えられている。鼻先の上部には多数の小さな穴と棘があり、この質感は角質化した皮膚と関係していた(角質層で覆われていた)とされている。このような皮膚はマジュンガサウルスにも存在したが、アベリサウルスルゴプスには存在しなかった。涙骨と後眼窩窓に縦溝のある丘陵状の表面があることから、おそらく大きな鱗の列がを囲んでいたと考えられる[1][D]

尾部の皮膚印象

皮膚は、直径約5~12mmの多角形の重なり合わない鱗の形で構成されていた。この鱗は細い平行の溝で区切られていた[V]。鱗の模様は頭部を除いて体のさまざまな部分で類似していたが、頭部は明らかに異なる不規則な鱗のパターンを示していた[V][15]。また、羽毛の痕跡はなかった[7]。より大きなコブ状の隆起した構造が首、背中、尾の側面に不規則な列で存在していた。これらの隆起は、直径が4~5cm、高さが最大5cmで、低い正中線の隆起を示すことが多かった。これらは互いに8~10cm離れており、頭部に近づくほど大きくなっていた。この隆起は、おそらく特徴的な鱗(集まった稜鱗の塊)を表しており、ハドロサウルス科の体の正中線に沿って走る柔らかいフリルに見られるものと似ていた。また、これらの構造には骨は含まれていなかった[U][7][32]。Stephen Czerkas (1997)は、これらの構造は、同種や他の獣脚類と戦闘時に脇腹を保護した可能性があると示唆し、同様の構造が現代のイグアナの首にも見られ、闘争時に限定的な防御を提供していたと主張した[7]

2021年に発表されたカルノタウルスの皮膚に関するより新しい研究では、体の鱗のこれまでの描写は不正確であり、大きな特徴的な鱗は、古い復元図のように別々の列に分布しているのではなく、体に沿ってランダムに分布していたことが示唆されている。また、体に沿って異なる部位の特徴的な鱗の大きさが段階的に変化する兆候も見られない。それに対しカルノタウルスの基底部の鱗は非常に様々で、胸部、肩甲骨部、尾部それぞれにおいて、小さく細長いものから大きく多角形のもの、また円形からレンズ状のものまで、大きさは非常に多様であった。この鱗の分化は、体が大きく活動的な生活を送っていたため、体温調節によって体温を調節し、余分な熱の発散させることに関係していた可能性がある[33]

分類

Restored skeleton
ホロタイプの復元模型:PUC-MG自然科学博物館
前肢の骨

カルノタウルスは、超大陸ゴンドワナ大陸南部に限定された大型獣脚類のであるアベリサウルス科の中で、最もよく理解されているのひとつである。アベリサウルス科はゴンドワナ大陸の後期白亜紀において支配的な捕食者で、カルカロドントサウルス科に取って代わり、ティラノサウルス科が北方大陸で埋めた生態的地位を占めていた[17]。頭蓋骨と腕の短縮や頸椎と尾椎の特殊性など、この科内で進化したいくつかの注目すべき特徴は、カルノタウルスでは他のどのアベリサウルス科よりも顕著であったことである[W][X][28]

アベリサウルス科内の関係については議論があるものの、カルノタウルスは系統分類学的分析により、この科の中で最も派生的な属のひとつであることが一貫して示されている[Y]。最も近縁であった属はアウカサウルス[34][35][36][37]あるいはマジュンガサウルスであった可能性がある[38][39][40]。これに対し2008年の論文では、カルノタウルスはどちらの属とも近縁ではないとし、代わりにイロケレシア姉妹群として提唱した[Z]。Juan Canale et al. (2009)は、マジュンガサウルスを含まないカルノタウルスを含む新しい分岐群ブラキロストラ類英語版を設立した。この分類方はそれ以来多くの研究で採用されてきた[34][37][41]

カルノタウルスは、アベリサウルス科の2つの下位分類群、カルノタウルス亜科カルノタウルス族の名の由来となっている。古生物学者らはこれらの分類学をすべて採用しているわけではない。カルノタウルス亜科は、ほとんどの研究で原始的な属とされているアベリサウルスを除く、すべての派生したアベリサウルス科を含むように定義された[42]。しかし、2008年の論文では、アベリサウルスは派生したアベリサウルス科であることが示唆されている[Z]。カルノタウルス族は、カルノタウルスとアウカサウルスによって形成された分岐群を命名するために設立された[35]。アウカサウルスをカルノタウルスの近縁属とする古生物学者のみがこの分類群を使っている[43]。2024年の研究では、カルノタウルス族はカルノタウルス、アウカサウルス、ニエブラ英語版コレケン英語版からなる有効な分岐群として回復した[44]

以下は、2009年にCanaleらが発表したクラドグラムである[34]

カルノタウルス亜科

Majungasaurus

ブラキロストラ類
カルノタウルス族

Aucasaurus

Carnotaurus

Ilokelesia

Skorpiovenator

Ekrixinatosaurus

研究

角の機能

Drawing of a Carnotaurus head
頭蓋骨の骨形態から推定される軟部組織を示す頭部の復元図

カルノタウルスは、前頭骨に一対の角を持つ唯一の肉食二足歩行動物として知られる[45]。この角の用途は完全には明らかになっていない。同種と戦ったり、獲物を殺すために使われたという解釈がいくつかあるが、求愛や同種を認識するためのディスプレイとして使われた可能性もある[1]

1988年にグレゴリー・ポールは、角は突きつけ合うための武器であり、眼窩が小さいため、戦いの際に目を傷つける可能性を最小限に抑えることができたと主張している[9]。1998年にGerardo Mazzettaらは、カルノタウルスが雄羊に似た方法で角を使っていたことを示唆した。彼らの計算では、首の筋肉組織は、2頭のカルノタウルスが双方毎秒5.7mの速度で正面から頭を衝突させたときの衝撃を吸収するのに十分な強さがあったとされる[22]。2009年にFernando Novasは、いくつかの骨格の特徴を、頭部で打撃を与えるための適応のためであったとした[AA]。彼は、頭蓋骨が短いことで慣性モーメントが減少し、頭の動きが素早くなったのではないか、また筋肉質な首によって、頭部への強い打撃が可能になったのではないかと指摘した。彼はまた、頭や首から伝わる衝撃に耐えるために進化した可能性のある脊椎の剛性と強度の向上についても言及した[AB]

他の研究では、敵対関係にあったカルノタウルスは頭を激しく突きつけ合うのではなく、頭蓋骨の上部でゆっくりと押し合っていたと示唆されている[45][46]。Mazzetta et al. (2009)は、角は脳に損傷を与えることなく圧縮力を分散させるための器官ではないかと主張した。これは、角の上側が平坦になっていること、頭蓋骨の上部の骨が強く癒合していること、そして頭蓋骨が急激な頭部打撃に耐えられないことから裏付けられる[45]。2018年にRafael Delcourtは、角は現代のウミイグアナに見られるように、ゆっくりと頭突きをしたり、突き飛ばしたりするか、あるいは現代のキリンに見られるように、相手の首や脇腹を打撃するのに使われた可能性があると示唆した[37]。後者の可能性は、関連するマジュンガサウルスについて2011年の学会論文で提案されたことがある[47]

Gerardo Mazzetta et al. (1998)は、角は小さな獲物を傷つけたり殺したりするためにも使われたのではないかと主張している。角の芯は鈍いものの、ケラチン質の被膜があれば、現代のウシ科の角と似た形をしていた可能性がある。しかし、これは動物の角が狩猟用の武器として使用された唯一の報告例であろう[22]

顎の機能と食事

Cast of skull
頭蓋骨の模型 アメリカ合衆国ケノーシャにある恐竜ディスカバリーミュージアム英語版

1998年、2004年、2009年のMazzettaらによるカルノタウルスの顎の構造の分析では、カルノタウルスは素早い噛みは可能だったが、強い噛みはできなかったことが示唆された[22][23][45]。現代のクロコダイル科の研究で示されているように、小さな獲物を捕らえるときには、強く噛むことよりも素早く噛む方が重要である[45]。彼らはまた、頭蓋骨と特に下顎に高い柔軟性(キネシス)があり、現代のヘビにやや類似していることにも注目した。顎の弾力性によって、カルノタウルスは小さな獲物を丸呑みできたとされる。さらに、下顎の前部は蝶番関節で連結されており、上下に動くことができた。歯は下向きに押されると前方に突き出し、カルノタウルスは小さな獲物を突き刺すことができた。歯が上向きに湾曲したとき、後方に突き出した歯は捕らえた獲物が逃げるのを妨ぐことができた[22]。Mazzettaらはまた、頭蓋骨が大きな獲物を引っ張るときに生じる力に耐えられることも発見した[45]。したがって、カルノタウルスは主に比較的小さな獲物を捕食していた可能性があるが、大型恐竜を狩ることもできた[45]。2009年、Mazzettaらはカルノタウルスの咬合力を約3,341ニュートンと推定した[45]。2022年に行われた33種類の恐竜の咬合力を推定する研究では、カルノタウルスの咬合力は顎の前方部で約3,392ニュートンと推定され、これはそれまでの推定値よりも少し高かった。一方、顎の後方部での咬合力は7,172ニュートンと推定された[48]

2005年にこの解釈はFrançois Therrienらによって疑問視され、彼らはカルノタウルスの咬合力がアメリカアリゲーター(現生の四肢動物の中で最も咬合力が強いとされる)の2倍であることを発見した。彼らまたは、現代のコモドオオトカゲとの類似点も指摘している。下顎の曲げ強さは先端に向かって直線的に減少しており、このことから、この顎は小さな獲物を高精度で捕らえるのに適しておらず、大きな獲物を弱らせ、切り傷を与えるのに適していた。その結果、この研究によれば、カルノタウルスは主に大型動物を捕食していたに違いなく、おそらく待ち伏せをし捕食していたと考えられた[49]。Cerroni et al. (2020)は、柔軟性は下顎に限られていたと主張した。一方、頭蓋の天井が厚くなっていることや、頭蓋のいくつかの関節が骨化していることから、頭蓋に運動機能はなかったか、あってもごくわずかだったことが示唆されている[1]

1998年にロバート・T・バッカーは、カルノタウルスが主に非常に大きな獲物、特に竜脚類を捕食していたことを発見した。彼が指摘したように、短い吻、比較的小さな歯、そして強い頭蓋後部(後頭骨)など、頭蓋骨のいくつかの適応は、アロサウルスにおいても同様に独立して進化した。これらの特徴から、上顎は鋸歯状の棍棒のように傷を負わせるために使われていたことを示唆しており、大型の竜脚類は繰り返し攻撃を受けることで弱体化していたと考えられる[50]

移動

Cross-section of the tail muscles
カルノタウルスの尾の断面図 肥大した尾大腿筋とV字型の尾椎が伺える
尾の筋肉、尾、骨盤を横と上から見た3D復元図

1998年と1999年にMazzettaらは、カルノタウルスは走るのが速かったと推定し、大腿骨が走る際の高い曲げモーメントに耐えられるように適応していたと主張している。動物の脚のこのような力に耐えられる能力は、最高速度を制限した。カルノタウルスの走力への適応は、ダチョウほどではないが、ヒトよりは優れていた[AC][51]。科学者の計算によるカルノタウルスの最高速度は、時速48~56kmであった[52]

恐竜において、最も重要な歩行筋は尾にあった。この筋肉は尾大腿筋英語版と呼ばれ、大腿骨の突出部である第四転子に付着し、収縮すると大腿骨を後方に引っ張った。2011年にScott Personsとフィリップ・J・カリーは、カルノタウルスの尾椎では尾部肋骨が水平に(T字型)突き出ているのではなく、椎骨の垂直軸に対して角度がついておりV字型であると主張した。これにより、他のどの獣脚類よりも大きな尾大腿筋のためのスペースが確保されたと考えられる。筋肉の質量は、脚1本あたり111~137kgと推定されている。したがって、カルノタウルスは大型獣脚類のなかでも最速だった可能性がある[28]。尾大腿筋が肥大する一方で、尾骨の上部に位置する軸上筋は比例して小さくなっていたと考えられる。これらの筋肉は最長筋棘筋と呼ばれ、尾の動きと安定性を担っている。これらの筋肉の減少にもかかわらず尾の安定性を維持するために、尾部肋骨は前方に突出した突起を持ち、尾部肋骨同士および骨盤と連結して尾を硬くした。その結果、他の獣脚類とは異なり、腰と尾を同時に回転させる必要があったため、急旋回する能力が低下した[28]

脳と感覚

CerroniとPaulina-Carabajalは2019年、CTスキャンを使用し脳を含む頭蓋骨内を調査した。頭蓋骨内の容積は168.8 cm3であったが、脳はこの空間のほんの一部のみを占めていたと考えられている。彼らは2つの異なる脳の大きさを推定し、それぞれ頭蓋骨内の50%と37%の脳の大きさと仮定した。その結果、知能の指針となる爬虫類脳化指数は近縁属のマジュンガサウルスよりは大きいが、ティラノサウルス科よりは小さかったことがわかった。ホルモンを作り出す松果体は、他のアベリサウルス科恐竜よりも小さかった可能性がある。これは、松果体があったと考えられる前脳上部の空間である硬膜の拡張が低いことからわかる[24]

嗅覚を司る嗅球は大きく、視覚を司る視葉は比較的小さかった。これは、嗅覚が視覚よりも発達していた可能性があることを示唆しているが、現代の鳥類ではその逆であった。嗅索と嗅球の前端は下向きに湾曲しており、これはインドサウルスにのみ見られる特徴で、他のアベリサウルス科では、これらの構造は水平に向いていた。CerroniとPaulina-Carabajalの仮説では、この下向きの湾曲と嗅球の大きなサイズは、カルノタウルスが他のアベリサウルス科よりも嗅覚に頼っていたことを示している可能性がある。視線の安定化と相関関係にあると考えられている脳葉の片葉英語版は、カルノタウルスや他の南米のアベリサウルス科内では大きかった。これは、これらの形態が頭と体の素早い動きが頻繁に使用されていたことを示している可能性がある。カルノタウルスや他のアベリサウルス科では、内耳の壺 (lagena) が短いことからわかるように、聴覚はあまり発達していなかった可能性がある。可聴域は3kHz以下と推定されている[24]

生息年代と環境

当時の環境におけるカルノタウルス

当時、カルノタウルスが発見された岩石は、セロ・バルシーノ層英語版(ゴロ・フリヒオ層)の上部に割り当てられており、約1億年前(アルビアンあるいはセノマニアン)のものであると考えられていた[5][D]。その後、それらははるかに新しい地層のラ・コロニア層英語版[13]とされ、カンパニアンマーストリヒチアン(8360万年前から6600万年前)であることが判明した[1]。Novasは2009年の著書で、7200万年前から6990万年前(前期マーストリヒチアン)というより狭い期間を挙げた[A]。したがって、カルノタウルスは南米で知られているアベリサウルス科恐竜の中で最も新しい恐竜であった[28]。後期白亜紀までに、南アメリカはすでにアフリカと北アメリカの両方から独立していた[53]

ラ・コロニア層は北パタゴニア山塊英語版の南斜面に露出している[54]。カルノタウルスを含む脊椎動物の化石のほとんどは、この地層の中層から産出している[54]。この部分は、三角江干潟、または海岸平野の環境の堆積物である可能性が高い[54]。気候は季節によって異なり、乾期と湿期があったとされる[54]。最も多く産出している脊椎動物は、ハイギョセラトドゥス科英語版カメ首長竜ワニ恐竜トカゲヘビ哺乳類などである[55]。他に生息していた恐竜には、カルノタウルスに近縁のKoleken inakayali[44]ティタノサウルス類サルタサウルス上科英語版Titanomachya gimenezi[56]、未命名の曲竜類、未命名のハドロサウルス上科などがある。発見されたヘビには、Alamitophis argentinusなどといった、ボア科マッツォイア科に属するものがある[57]。カメは少なくとも5つのタクソンからなり、そのうちの4つはヘビクビガメ科曲頸類)、1つはメイオラニア科英語版潜頸類)である[58]。首長竜には、エラスモサウルス科の2属(KawanectesChubutinectes)とポリコティルス科英語版Sulcusuchus)がある[59][60]。哺乳類では、Reigitherium bunodontumColoniatherium cilinskiiが代表的であり、前者は南米の梁歯目の最初の記録と考えられている[54][61]。また、ゴンドワナテリウム類英語版または多丘歯目の可能性があるArgentodites coloniensisFerugliotherium windhauseniも代表的である[62][63]エナンティオルニス類の化石と、不確定だが今鳥亜綱の化石が発見されている[64][65]

脚注

注釈

  1. ^ a b c p. 276 in Novas (2009)[2]
  2. ^ a b c p. 2 in Bonaparte (1990)[4]
  3. ^ a b c d e f p. 191 in Carrano and Sampson (2008)[8]
  4. ^ a b c d p. 3 in Bonaparte (1990)[4]
  5. ^ p. 38 in Bonaparte (1990)[4]
  6. ^ a b p. 162 in Juárez Valieri et al. (2010)[18]
  7. ^ p. 163 in Juárez Valieri et al. (2010)[18]
  8. ^ p. 556 in Calvo et al. (2004)[20]
  9. ^ p. 30 in Bonaparte (1990)[4]
  10. ^ p. 187 in Mazzetta et al. (1998)[22]
  11. ^ p. 79 in Mazzetta et al. (2004)[23]
  12. ^ pp. 28–32 in Bonaparte (1990)[4]
  13. ^ p. 8 in Bonaparte (1990)[4]
  14. ^ pp. 4–5 in Bonaparte (1990)[4]
  15. ^ p. 5 in Bonaparte (1990)[4]
  16. ^ p. 191 in Mazzetta et al. (1998)[22]
  17. ^ p. 255 in Novas (2009)[2]
  18. ^ a b c d p. 6 in Bonaparte (1990)[4]
  19. ^ p. 257 in Novas (2009)[2]
  20. ^ p. 1276 in Ruiz et al. (2011)[29]
  21. ^ a b c p. 32 in Bonaparte (1990)[4]
  22. ^ a b pp. 264–299 in Novas (2009)[2]
  23. ^ pp. 276–277 in Novas (2009)[2]
  24. ^ pp. 256–261 in Novas (2009)[2]
  25. ^ pp. 188–189 and 202 in Carrano and Sampson (2008)[8]
  26. ^ a b p. 202 in Carrano and Sampson (2008)[8]
  27. ^ pp. 259–261 in Novas (2009)[2]
  28. ^ pp. 260–261 in Novas (2009)[2]
  29. ^ p. 186 and 190 in Mazzetta et al. (1998)[22]

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関連項目