2022年の野球 において、メジャーリーグベースボール(MLB) のポストシーズン は10月7日に開幕した。ナショナルリーグ の第53回リーグチャンピオンシップシリーズ (英語 : 53rd National League Championship Series 、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、18日から23日にかけて計5試合が開催された。その結果、フィラデルフィア・フィリーズ (東地区 )がサンディエゴ・パドレス (西地区 )を4勝1敗で下し、13年ぶり8回目のリーグ優勝およびワールドシリーズ進出 を果たした。
両球団がポストシーズンで対戦するのはこれが初めて。今シーズン開幕前、機構と選手会 が新たな労使協定 を締結し、以下のふたつの規則変更がなされた。
今シリーズはリーグ優勝決定戦史上初めてワイルドカード球団どうしの対戦となり[ 注 1] 、フィリーズが勝利した。シリーズMVP には、第1戦・第4戦・第5戦の3試合で決勝打を放つなど、5試合で打率 .400・2本塁打 ・5打点 ・OPS 1.250という成績を残したフィリーズのブライス・ハーパー が選出された。フィリーズは第3ワイルドカード、つまり前年までの形式であればポストシーズンに進出できない成績であり、ハーパーも右肘の靭帯損傷 によりDHでなければ試合に出場できない状態だったため、前述の規則変更が今シリーズの結果に大きく影響したといえる[ 3] 。レギュラーシーズン90勝未満の球団どうしがリーグ優勝決定戦で対戦するのも、短縮シーズンを除けば史上初のことであった[ 4] 。しかしフィリーズは、ワールドシリーズではアメリカンリーグ 王者ヒューストン・アストロズ に2勝4敗で敗れ、14年ぶり3度目の優勝を逃した。
2021年 、MLB機構が非銀行 系住宅ローン 会社のローンデポ (英語版 ) と契約を締結し、同社はその年から5年間リーグ優勝決定戦の冠スポンサー となった[ 5] 。これにより、大会名はナショナルリーグチャンピオンシップシリーズ presented by ローンデポ (英語 : National League Championship Series presented by loanDepot )となる。
10月15日、まず先に行われた試合でフィリーズ(東地区 3位=第3ワイルドカード )が、そのあとの試合ではパドレス(西地区 2位=第2ワイルドカード)が、それぞれ地区シリーズ突破 を決めてリーグ優勝決定戦へ駒を進めた。
フィリーズは2021年 、地区優勝アトランタ・ブレーブス に6.5ゲーム差 届かずポストシーズン 進出を逃した。チームの弱みは守備だったが、オフには守備に難のある強打の外野手カイル・シュワーバー やニック・カステヤノス を獲得した[ 6] 。2022年は序盤から低迷し、22勝29敗となったところで監督のジョー・ジラルディ が解任される[ 7] 。ロブ・トムソン が引き継いだあとは勝率が上向くも、6月下旬には中心打者ブライス・ハーパー が死球 で左手親指 を骨折 して離脱した。前半戦終了時は49勝43敗の地区3位で、首位ニューヨーク・メッツ には8.5ゲーム差離された。8月2日のトレード 期限までには、課題の外野守備と救援投手陣 を強化するため、ブランドン・マーシュ やデビッド・ロバートソン を補強した[ 8] 。後半戦も、メッツとブレーブスの首位争いに割って入ることはできず。ただワイルドカード争いでは、この年から枠がひとつ増えたこともあって圏内に留まり続け、10月3日に最後の1枠へ滑り込んだ[ 9] 。平均得点4.61はリーグ5位、防御率 3.98はリーグ9位。打線が200本超の本塁打 を放った一方、投手陣では先発ローテーション でアーロン・ノラ とザック・ウィーラー に次ぐ位置へレンジャー・スアレス らが台頭し、救援陣も補強が実って致命的な弱みとならずに済んだ[ 10] 。ワイルドカードシリーズ ではセントルイス・カージナルス を2勝0敗で[ 11] 、地区シリーズではブレーブスを3勝1敗で[ 12] 、それぞれ下した。
パドレスは2021年を79勝83敗の負け越しで終え、オフには監督のジェイス・ティングラー を解任しボブ・メルビン を招聘した。だがそのオフ、正遊撃手フェルナンド・タティス・ジュニア がオートバイ 事故で手首 を骨折し、2022年は長期欠場を余儀なくされる[ 13] 。チームは開幕からロサンゼルス・ドジャース を追いかけ、一時はドジャースを抜いて地区首位に立つ。しかし6月18日に2位へ後退すると[ 14] 、7月17日の前半戦終了時にはゲーム差を10.0にまで広げられた。8月2日のトレード期限までには外野手フアン・ソト や内野手ジョシュ・ベル 、救援投手ジョシュ・ヘイダー ら大物選手を相次いで獲得し、他球団よりも派手な動きで勝利への意思を鮮明にする[ 13] 。しかし復帰目前だったタティスが禁止薬物使用 で出場停止処分を受け、新加入選手たちも揃って成績を落とすなど、補強後はチームの調子が却って悪くなった[ 15] 。9月15日の零封負け後、不甲斐ない戦いぶりをメルビンが一喝してからは調子が上向き[ 16] 、地区2位で10月2日にワイルドカード2枠目を確保した[ 17] 。平均得点4.35はリーグ8位、防御率3.81はリーグ5位。チームが踏みとどまったのは、投打の中心選手であるダルビッシュ有 とマニー・マチャド が期待通りに活躍したことや、メルビンの冷静な采配によるところが大きい[ 15] 。ワイルドカードシリーズではメッツを2勝1敗で[ 18] 、地区シリーズではドジャースを3勝1敗で[ 19] 、それぞれ下した。
リーグ優勝決定戦の第1・2・6・7戦を本拠地で開催できる "ホームフィールド・アドバンテージ " は、地区優勝球団どうしやワイルドカード球団どうしの対戦の場合はレギュラーシーズンの勝率がより高いほうの球団に、地区優勝球団とワイルドカード球団が対戦する場合は地区優勝球団に与えられる。したがって今シリーズでは、パドレスがアドバンテージを得る。この年のレギュラーシーズンでは両球団は7試合対戦し、フィリーズが4勝3敗と勝ち越していた[ 20] 。
両チームの出場選手登録(ロースター) は以下の通り。
名前の横の★ はこの年のオールスターゲーム に選出された選手を、# はレギュラーシーズン開幕後に入団した選手を示す。
年齢は今シリーズ開幕時点でのもの。
フィリーズは地区シリーズ のロースターから救援右腕をひとり入れ替え、ニック・ネルソン に代えてデビッド・ロバートソン を登録した。ロバートソンは8月2日のトレード 移籍後23.1イニングで防御率 2.70を記録、ワイルドカードシリーズ 第1戦では2点ビハインドの8回裏を2奪三振 で三者凡退に抑える好投を見せ、9回表の逆転につなげた。ただ翌日の第2戦、2回表にブライス・ハーパー が先制本塁打 を放った際、ダグアウトではしゃぎすぎて右ふくらはぎ を痛め、地区シリーズではロースターを外れた。地区シリーズ中に多血小板血漿 療法で回復に努めたことで、リーグ優勝決定戦の開幕前日には投球練習も守備練習も問題なくこなせるようになり、復帰が決まった[ 21] 。ネルソンは今ポストシーズン では登板機会がなかった。これに対し、パドレスは地区シリーズからのロースター変更はない[ 22] 。
ノラ兄弟の兄でパドレスの捕手
オースティン (左。写真は2021年8月27日撮影) と、弟でフィリーズの先発投手
アーロン (写真は2018年9月18日撮影)
今シリーズではノラ兄弟の兄オースティン がパドレス捕手として、弟アーロン がフィリーズ投手としてロースター入りした。ポストシーズンで兄弟が敵味方に分かれて対戦するのは、1997年アメリカンリーグ優勝決定戦 においてアロマー兄弟の兄サンディー・ジュニア がクリーブランド・インディアンス 、弟ロベルト がボルチモア・オリオールズ の一員として出場して以来25年ぶり6組目・9度目。ただし過去の5組は全て兄弟ともに野手であり、ノラ兄弟のような片方が投手という組み合わせはないため、兄弟が投打で直接対決すればポストシーズン史上初ということになる[ 23] 。レギュラーシーズンにおけるノラ兄弟の直接対決は過去に2度あって、2021年 8月にはアーロンが兄を2打数無安打 1四球 に封じ、2022年 6月にはオースティンが弟から決勝適時打を放っている[ 24] 。両親は今ポストシーズンで息子兄弟を応援するため全米を飛び回っており、ルイジアナ州 バトンルージュ の自宅からニューヨーク州 ニューヨーク →ミズーリ州 セントルイス →自宅→ペンシルベニア州 フィラデルフィア と移動して現地観戦を続けたあと、兄弟対決が決まると再び自宅を経て今シリーズ開幕の地カリフォルニア州 サンディエゴ へ向かった[ 25] 。過去8度あったポストシーズン兄弟対決では、兄の所属球団が6勝に対して弟の所属球団が2勝という結果になっている[ 23] 。
MLB.comが所属記者・アナリスト76人にどちらがシリーズを制するか予想させたところ、パドレス勝利予想が46人に対しフィリーズ勝利予想が30人という結果となった[ 26] 。ESPN も同様の企画を記者12人で実施し、パドレス支持が7人でフィリーズ支持の5人を上回った[ 27] 。『スポーツ・イラストレイテッド 』の企画では、記者7人のうちフィリーズ支持がひとりいたものの、残りの6人はパドレス勝利と予想した[ 28] 。
2022年のナショナルリーグ優勝決定戦は10月18日に開幕し、途中に移動日を挟んで6日間で5試合が行われた。前年シーズン終了後にMLB機構と選手会 との労使交渉がもつれてロックアウト が実施され、今シーズンの開幕が3月31日から4月7日へ後ろ倒しされた影響で、例年設けられていた第5戦と第6戦の間の移動日が今シリーズではなくなったが[ 29] 、結局シリーズは5試合で決着した。日程・結果は以下の通り。
日付
試合
ビジター球団(先攻)
スコア
ホーム球団(後攻)
開催球場
10月18日(火)
第1戦
フィラデルフィア・フィリーズ
2 -0
サンディエゴ・パドレス
ペトコ・パーク
10月19日(水)
第2戦
フィラデルフィア・フィリーズ
5-8
サンディエゴ・パドレス
10月20日(木)
移動日
10月21日(金)
第3戦
サンディエゴ・パドレス
2-4
フィラデルフィア・フィリーズ
シチズンズ・バンク・パーク
10月22日(土)
第4戦
サンディエゴ・パドレス
6-10
フィラデルフィア・フィリーズ
10月23日(日)
第5戦
サンディエゴ・パドレス
3-4
フィラデルフィア・フィリーズ
優勝:フィラデルフィア・フィリーズ(4勝1敗 / 13年ぶり8度目)
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球団 歴代本拠地 文化 永久欠番 フィリーズ球団殿堂 ワールドシリーズ優勝(2回) ワールドシリーズ敗退(6回) リーグ優勝(8回) 傘下マイナーチーム
球団 歴代本拠地 文化 永久欠番 パドレス球団殿堂 ワールドシリーズ敗退(2回) リーグ優勝(2回) できごと 傘下マイナーチーム