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早稲田大学本源氏物語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

早稲田大学本源氏物語(わせだだいがくほんげんじものがたり)とは、源氏物語の写本。現在早稲田大学の所蔵であるためこの名称で呼ばれる。本写本は三条西実枝(実世、実澄、永正8年8月4日1511年8月27日) - 天正7年1月24日1579年2月19日))の筆と伝えられていることから「伝三条西実枝筆源氏物語」と呼ばれることもある。ただし後述の理由から三条西実枝の筆ではないと考えられている。

概要

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三条西家旧蔵とされ、現在は早稲田大学図書館に「貴重資料」として所蔵されている。54帖の揃い本で、綴葉装の表紙には金茶色に桜の花が織り込まれた緞子が使われており、中央の題箋には金泥をひいた紙が用いられている。嫁入本の形態を持ち、蒔絵の描かれた豪華な小箪笥に収められており、全体として非常に美しい作りになっている[1]。本文は三条西家本系統の青表紙本である。

表紙裏の反故

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本写本を多数の反故を表紙裏に含んでおり、これらの反故は江戸時代初期の写本制作事情を知ることができる貴重な資料になっている[2]。反故の中には本写本の書写と同筆の「源氏物語」の反古が複数含まれていることから、現在附されている表紙は書写と同時に作成されたものであることがわかる。また反古に使用されている文書(柏木)の中に三条西実枝没後の慶長9年(1604年)に成立した『兵主大明神縁起』についての記述があるため、この写本は実枝筆ではないと考えられる。

校本への採用

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本写本は『校異源氏物語』・『源氏物語大成校異編』や『源氏物語別本集成』といった主要な校本には採用されていない。

影印・翻刻

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本写本についてはごくわずかの影印が明らかにされている[3][4]だけで、翻刻は本文そのものについては全く存在しないものの、表紙裏反故については翻刻が存在する[5][6]

脚注

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  1. ^ 津本信博「伝三条西実枝筆『源氏物語』収納箱(早稲田大学図書館蔵)」鈴木一雄監修津本信博編集『国文学解釈と鑑賞 別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.40 手習』至文堂、2005年(平成17年)5月、p. 187。
  2. ^ 新美哲彦「近世前期の写本製作--伝三条西実枝筆『源氏物語』表紙裏反故から」京都大学文学部国語学国文学研究室編『国語国文』第72巻第7号(通号第827号)、中央図書出版社、2003年(平成15年)7月、pp. 1-16。のち新美哲彦『源氏物語の受容と生成』武蔵野書院、2008年(平成20年)9月、pp. 214-236。ISBN 978-4-8386-0227-8
  3. ^ 新美哲彦「影印本を読む 伝三条西実枝筆本「絵合」(早稲田大学図書館蔵)」鈴木一雄監修田中隆昭編集『国文学解釈と鑑賞 別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.20 絵合・松風』至文堂、2002年(平成14年)1月、pp. 22-23。
  4. ^ 津本信博「影印本を読む 伝三条西実枝筆本「手習」(早稲田大学図書館蔵)」鈴木一雄監修津本信博編集『国文学解釈と鑑賞 別冊 源氏物語の鑑賞と基礎知識 No.40 手習』至文堂、2005年(平成17年)5月、pp. 22-23。
  5. ^ 新美哲彦「伝三条西実枝筆『源氏物語』の表紙裏反故--翻刻と紹介・文学資料篇」『早稲田大学図書館紀要』第47号、早稲田大学図書館、2000年(平成12年)3月、pp. 8-31。のち新美哲彦『源氏物語の受容と生成』武蔵野書院、2008年(平成20年)9月、pp. 299-340。ISBN 978-4-8386-0227-8
  6. ^ 新美哲彦「伝三条西実枝筆『源氏物語』の表紙裏反故--翻刻と紹介・雑記篇」『早稲田大学図書館紀要』第50号、早稲田大学図書館、2003年(平成15年)3月。のち新美哲彦『源氏物語の受容と生成』武蔵野書院、2008年(平成20年)9月、pp. 341-386。ISBN 978-4-8386-0227-8

参考文献

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  • 新美哲彦『源氏物語の受容と生成』武蔵野書院、2008年(平成20年)9月。ISBN 978-4-8386-0227-8

外部リンク

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