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レット・イット・ビー (映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビートルズ > ビートルズの作品 > レット・イット・ビー (映画)
レット・イット・ビー
Let It Be
監督 マイケル・リンゼイ=ホッグ
製作 ニール・アスピノール
製作総指揮 ザ・ビートルズ
出演者 ビートルズ
マル・エヴァンズ
マイケル・リンゼイ=ホッグ
リンダ・マッカートニー
ヘザー・マッカートニー
オノ・ヨーコ
ビリー・プレストン
デレク・テイラー
音楽 ジョン・レノン
ポール・マッカートニー
ジョージ・ハリスン
リンゴ・スター
撮影 アンソニー・B・リッチモンド
配給 ユナイテッド・アーティスツ
公開 イギリスの旗 1970年5月20日
日本の旗 1970年8月25日
上映時間 81分
製作国 イギリスの旗 イギリス
言語 英語
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レット・イット・ビー』(Let It Be)は、ビートルズが1969年1月に行ったセッション(ゲット・バック・セッション)と、彼らの最後のライブ・パフォーマンスとなった「ルーフトップ・コンサート」の模様を記録した、ドキュメンタリー映画である[1]。「ペイパーバック・ライター」や「レイン」等のプロモーション・フィルムの制作を手がけたマイケル・リンゼイ=ホッグが監督を担当した。

映画の当初の目的は、ビートルズのリハーサルとライブ演奏を見せることであった。しかし、メンバーの心はバラバラに分かれ始め、結果的に本作は解散に向かうビートルズの姿を記録するものとなった。

クレジットは"APPLE an abkco managed company presents"となっており、ビートルズの会社「アップル・コア」と、当時のビジネスマネージャーだったアラン・クレインの会社「アブコ・レコード」が名を連ねている。本来はテレビ放映のために16mmフィルムで収録されたが、クラインの意向により劇場用の35mmフィルムに焼き直された。

スタジオ・セッション

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1969年1月2日、ビートルズはロンドンのトゥウィッケナム映画撮影所英語版にてセッションを開始し、映画クルーによってその模様が撮影された。慣れないスタジオでの作業、常に撮影をされていることなど、緊張と不満がビートルズの中に存在し、彼らはトゥイッケナム映画撮影所の状態と仕事のスケジュールも嫌がっていた。彼らは朝早くからセッションを始めるよりは普段、録音していたアビー・ロード・スタジオで、いつものように夜遅くにセッションを行いたがった。

1月10日ジョージ・ハリスンはバンドからの離脱を告げた[2]が、フィルムには記録されなかった。彼は戻ってくるように説得され、1月22日からはロンドンサヴィル・ロウにあるアップル・コア内の録音スタジオに場所を移し、セッションを再開した。アップルでのセッションの際、ハリスンは電気ピアノオルガン演奏をしてもらうためにキーボード奏者のビリー・プレストンを連れてきた[3]

バンド内での衝突は映画から抜け落ちているが、作品中ではマッカートニーとハリスンの間での口論や、マッカートニーとレノンの噛み合わない会話など、バンド内で漂う不協和音を感じさせる場面も含んでいる。映画で演奏された曲は多くがアルバム『レット・イット・ビー』に収録されたが、1969年夏にバンドが再集合した時のアルバム『アビイ・ロード』の数曲も含まれている。スタジオでのセッションの場面は1969年1月31日、アップルにてビートルズが「トゥ・オブ・アス」、「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」、「レット・イット・ビー」のスタジオ・ライブの場面で終了する[4]

ルーフトップ・コンサート

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ルーフトップ・コンサートが行われた旧アップル・コア本社

映画プロジェクトの元々の構想では最後にライブ・ショー(1966年8月29日サンフランシスコキャンドルスティック・パークで最後のツアーを終えてから初の公式なライブ・パフォーマンス)で終わるというものであった。しかしライブの方法についての意見はなかなかまとまらなかった。ポール・マッカートニーはビートルズが初期に行っていたように小さいクラブで演奏することを主張し、ジョン・レノンアフリカのような海外で行うことを主張した[注釈 1]リンゴ・スターイングランドにとどまるよう要求し、ジョージ・ハリスンはどんなライブ・パフォーマンスにもほとんど興味を示さなかった。

結局、ライブの方法はアップル本社の屋上において予告無しでコンサートを行うことになった。ビートルズはプレストンと一緒に1969年1月30日、ゲリラ的にライブ演奏を行った。映画は屋上から大音量で鳴り響く演奏に驚くロンドンの住民たちの姿も記録されている。映画は駆けつけた警察官によって演奏が止められ、コンサートが終了するところで終わる。のちに「ルーフトップ・コンサート」呼ばれるこのコンサートはビートルズの最後の公式なライブ・パフォーマンスとなった。

ビートルズはルーフトップ・コンサート中に5曲演奏している。「ゲット・バック」(3回)、「ドント・レット・ミー・ダウン」(2回)、「アイヴ・ガッタ・フィーリング」(2回)、「ワン・アフター・909」と「ディグ・ア・ポニー」である。(ビートルズは短くしたゴッド・セイヴ・ザ・クイーンと短いリハーサルの「アイ・ウォント・ユー」も演奏したが、その間セカンドエンジニアのアラン・パーソンズがテープの入れ替え作業をしており、この演奏は映画から省かれてしまった)[5]

最後の曲が終わってから、マッカートニーが"Thanks Mo!"と言うのが聞こえる。これはモーリン・スターキーが大きな拍手と励ましを送ったことに応えたものである。それからレノンがよく知られた言葉である"I'd like to say 'thank you' on behalf of the group and ourselves, and I hope we passed the audition!"[5]で閉じた。このやりとりはアルバム『レット・イット・ビー』の最後に追加された。

映画『レット・イット・ビー』内の曲

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特記されている以外のすべての曲のクレジットはレノン=マッカートニーである。

Paul's Piano Intro
マッカートニーのアドリブで演奏されたピアノソロ。サミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」が元になっている[6]。1月3日収録。
2003年に発売された『レット・イット・ビー...ネイキッド』のボーナスCD『フライ・オン・ザ・ウォール』では、「Paul's Piano Piece」と題されている。
ドント・レット・ミー・ダウン
サビのみ。
マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー
マッカートニーがコードをメンバーに教えながら演奏する(1月3日収録)。ロード・マネージャーのマル・エヴァンズが金属の塊をハンマーで叩いて演奏に参加する(1月7日収録)。この後のシーンでハリスンがマイクで感電しマッカートニーが「ジョージが死んだら君ら(スタッフ)はオシマイだぞ」とジョークを言う(1月3日収録)。
トゥ・オブ・アス
通常編成での演奏で、マッカートニーがベース、レノンとハリスンがエレクトリック・ギターを弾く。リリース版ではフォーク調だが、このテイクではロックンロール調のパフォーマンスである。1月8日収録。
アイヴ・ガッタ・フィーリング
曲の終盤のみのパフォーマンス後、マッカートニーがレノンに対してチョーキングのニュアンスを指示するが(1月8日収録)、1月31日の最後のライブではそのパートをハリスンが弾いている。その後中間部からパフォーマンス再開(1月9日収録)。終演後に「フォー・ユー・ブルー」(アルバム『レット・イット・ビー』収録テイク)の冒頭に収録されることになるレノンの"Queen says 'No' to pot-smoking FBI members."という語りが入る(1月8日収録)。
オー!ダーリン
マッカートニーのピアノ弾き語りによるワンフレーズのみ。その後マッカートニーの語りが続く。1月6日収録。
ワン・アフター・909
直前に、監督のマイケル・リンゼイ=ホッグに「この前演ってたのは何て曲?」と訊かれ、マッカートニーが「『ワン・アフター・909』だよ」と答える。スタッフから「いい曲だ」と言われたが、マッカートニーは「よくないよ。初期の曲だしね」と言って口ずさみ、歌詞を笑う。その後、バンド演奏で始まる。アルバム収録版に近い仕上がりだが、レノンが前半部を声色を変えて歌っている。またコーラス部分でレノンがフェイクを入れているほか、マッカートニーも間奏前のコーラスの最後でハイノートを出している。1月9日収録。
I Bought a Piano the Other Day
マッカートニーとスターがピアノ連弾しながらアドリブで歌うブギー調の曲。既存の楽曲、ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン に酷似している。1月14日収録。
トゥ・オブ・アス
ロックンロール調のパフォーマンスであるが、イントロのあと冒頭部分を歌ってすぐにマッカートニーがレノンに「マイクに向かって歌え。聴こえないよ」と言って中断。その後、マッカートニーの語りとなるが、マッカートニーの指示に対しハリスンと口論になる。ハリスンが「テープに録って、演奏を確認しよう」と言うが、マッカートニーが「サウンドが合わない。君と僕との… (You and I are uh...)」といった際にハリスンは"You and I have...”と『トゥ・オブ・アス』を口ずさみ、マッカートニーも"...memories"と乗る。ハリスンが「じゃあ全部自分で演れよ。僕はコードだけ弾くから」と言って、マッカートニーは「君はいつでも悪いように取る。だけど傷つけるつもりはないんだ。ただ、もっとよくなるように言ってるだけなんだ」と諭すが、ハリスンは聞こうとしなかった。その後、マッカートニーは「ヘイ・ジュード」のギター・プレイ(完成版で消されたフレーズ)で口論があったことと同じだと言うと、ハリスンは「もうそんなことはどうでもいい。君の言う通りにするさ。弾けと言うなら弾くし、弾くなと言うなら弾かない。好きなようにしてやる」と言い、場が険悪になる。1月6日収録。
アクロス・ザ・ユニヴァース
上記の口論にレノンが「テープに録れば客観的に見れるな」と言って仲裁したような編集が意図的にされているが、実際には翌1月7日の収録。「"Nothing is gonna change my world"の回数を変えよう」と言ってこの曲が始まる。マッカートニーはレノンの前奏にハミングを入れており、コーラス部分で3度上のハモリを入れている。
ディグ・ア・ポニー
まだ仕上がっておらず、メロディを口ずさむ。1月7日収録。
Suzy Parker (Lennon-McCartney-Harrison-Starkey)
映画内で実際には"Suzy's Parlour"と歌われていたブルース進行のアド・リブ演奏で、レノンがヴォーカル、マッカートニーが合いの手で「Suzy Parker」を入れ、ハリスンとマッカートニーが間奏部で「Da da da da da...」とスキャット。1月9日収録。
アイ・ミー・マイン (Harrison)
ハリスンがスターに「ヘビー・ワルツだよ」と言って、1人でギター弾き語しながらこの曲を聴かせている場面から、途中で場面が切り替わりマッカートニーも交えてバンド形式に移る。レノンは演奏に参加せず、ヨーコと共に座って聴いている。ハリスンのギターはレコーディングされたテイクとは趣を異にしてフラメンコ調である。映画では、この曲に合わせてヨーコとワルツを踊る映像がかぶせられている。この曲までトゥイッケナム映画撮影所での収録。1月8日収録。
フォー・ユー・ブルー (Harrison)
この曲以降、アップル・スタジオでの収録。間奏部分からの収録で、演奏をバックにメンバーがアップル・スタジオに入っていくシーンが重ねられ、曲の後半からビートルズの演奏風景に変わる。マッカートニーはミュートしたピアノ、レノンはラップ・スティール・ギターを演奏している。1969年1月25日の収録。
演奏終了後、のちにアルバム『レット・イット・ビー』に収録される"'I Dig a Pygmy' by Charles Hawtrey and the Deaf Aids. Phase One, in which Doris gets her oats."というレノンの語りが入る(1月24日録音)。その後、マッカートニーとレノンの談笑。
ベサメ・ムーチョ(Consuelo Velázquez-Sunny Skylar)
マッカートニーがヴォーカル。『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』等に収録されている初期ヴァージョンとは異なり、ゆったりとしたテンポでオリジナルに近い。マッカートニーは声色を変えて、なんちゃってスペイン語とスペイン訛りの英語で歌っている。1月29日収録。
オクトパス・ガーデン (Starkey)
マッカートニー不在のスタジオで、スターが作曲途中のこの曲をピアノで弾き語りでハリスンに聴かせている。ハリスンにコード進行のアドヴァイスを受けている様子が分かる。レコードとは異なり、C調で演奏している。ジョージ・マーティンがハミングを入れ、レノンもタバコを吸いながら、ドラムを演奏する。その後マッカートニーが恋人リンダとリンダの娘ヘザーを連れて入ってきて「例のデモ音源はひどい曲だな」とけなし、ジョージ・マーティンが「まだ完成してないから」と言う。その後、セッションの準備をし始める。その途中、カメラはヘザーを追い、スターのドラムを叩き、スターがおどけてキョロキョロする様子が撮影されている。ヘザーがスタジオ入りしていることから1月26日の収録と察せられる。
ユー・リアリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミー(Smokey Robinson)
ビリー・プレストン(電気ピアノ)も加わり、オールディーズ・ナンバーを歌う。『ウィズ・ザ・ビートルズ』収録テイクと異なり、マッカートニーがピアノ、レノンが6弦ベース。1月26日収録。
ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
マッカートニーがボサノヴァ風にアップ・テンポで口ずさむ。その後、スロー・バラードで歌い始めるも突然声色を変え大声を出し中断となる。1月26日収録。
シェイク・ラトル・アンド・ロール (Jesse Stone (変名のCharles E. Calhounを使った))
再びオールディーズ・ナンバー。『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』にも収録。
カンサス・シティ (Jerry Leiber-Mike Stoller)
ミス・アン (Johnson-Penniman)
ローディ・ミス・クローディ (Lloyd Price)
オールディーズ・ナンバーのメドレー。「カンサス・シティ」は、ビートルズ・フォー・セールヴァージョンとは異なり、「ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ」とのメドレーになっておらず、オリジナルのものに近い。ハリスンのイントロでマッカートニーが「ミス・アン」だと勘違いし、歌いだしが「カンザス・シティ」と被ってしまう。その後、「ミス・アン」に移る。ヘザーがクルクル回って踊っている様子が挿入されている。1月26日収録。
ディグ・イット (Lennon-McCartney-Harrison-Starkey)
アルバムには数十秒にカットされているが、もともとは十数分もの長い曲であった。映画では4分程度に編集。レノンが6弦ベースをコード弾きしながらアド・リブで歌う。ジョージ・マーティンがショーカリョを振って演奏に参加している。1月26日収録。
終演後、マッカートニーがレノンに今後のライブ活動について話しかける。

以下の3曲は、セッション最終日(1月31日)のスタジオ・ライブより。

トゥ・オブ・アス
アルバム収録版とほぼ同じだが、エンディングのレノンの口笛はアルバムとは異なる。ハリスンはオール・ローズ・テレキャスターの低音弦でベース・ラインを弾いている。
レット・イット・ビー
レット・イット・ビー...ネイキッド』収録版とほぼ同じだが、3ヴァース目にオリジナル版やネイキッド版にはない"There will be no sorrow"という歌詞を含んでいる。
ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
『レット・イット・ビー...ネイキッド』収録版とほぼ同じ。ただし、プレストンの演奏が映像と一致しないため、演奏と音声はそれぞれ別テイクが使われた可能性が高い。

以下6曲はルーフトップ・コンサート1月30日)より。

ゲット・バック
シングル・ヴァージョンとほぼ同じだが、レノンのソロやオブリガートが若干違うほか、マッカートニーのセリフも若干違う。シングル・バージョンと似たセリフ、「Mommy is wating. And high heel shoes and a low-neck sweater. Get back, Loretta. Get back!(母ちゃんも待ってるぜ。ハイヒールとローネックのセーターもな。帰れロレッタ!)」と2ヴァース後の間奏で入れる。また、街行く人々が演奏に気付き、近くのビルの屋上に登って、またはアップルの屋上に侵入して見学に来る様子が写っている。演奏後、レノンが「デイジー・モリスとトミーのリクエストでした」とMCする。
ドント・レット・ミー・ダウン
歌いだしがシングルと違い、マッカートニーとハリスンのハモリが入っている。レノンが歌詞を忘れて適当にフレーズを口ずさんでいる箇所があり、うしろでスターが笑う。
アイヴ・ガッタ・フィーリング
『レット・イット・ビー』収録版とほぼ同じだが、道行く人々がインタヴューに答えている映像が挿入されている。「素晴らしいグループです」と答える老人や、「タダで聴けてラッキー」と答える若者、「何のつもりなの?」と怒る婦人、「新曲かい?いいね」と答えるタクシー運転手、「音楽はいいが、然るべき場所でやってもらいたい。ビジネスエリアを混乱させないでほしい」と答える紳士などのインタビューが挿入された。
ワン・アフター・909
『レット・イット・ビー』収録版とほぼ同じ。終了後にレノンが「ダニー・ボーイ」を歌う。 
ディグ・ア・ポニー
レノンが「カンペを持っててくれ」と言い、演奏が始まる。スターがタバコ休憩に入っていたところでカウントが始まったため、1度スターが制止する。冒頭とラストの"All I want is..."というユニゾンが入る。このユニゾンの削除は理由は不明であるがアルバム『レット・イット・ビー』で施され、アルバム『レット・イット・ビー...ネイキッド』においても準じて削除されている。マル・エヴァンスの助手のケヴィン・ハリントンが歌詞が書かれた画用紙を持って、レノンの前にかがんでいる。警察がアップル本社に訪れ、マルが中へ入れる様子が挿入されている。
ゲット・バック
ザ・ビートルズ・アンソロジー3』にも収録。レノンがオブリガートのフレーズをミスしている。警察が「音を下げろ」と警告したため、マル・エヴァンスがハリスンとレノンのアンプを切るが、接続を確認してアンプが切られたことに気付いたハリスンが電源を入れ直し、それを見たマルはレノンの電源を入れ直す。その後、マッカートニーがアドリブで「また屋上で演奏してるのか!・・・君のママがいつも嫌がってるだろ・・・そのうち逮捕されちゃうぞっ!」と歌う。
エンディング
撤収するメンバーがストップ・モーションし、「The End」とコピーライト表記、MPAA審査の表記が出ると同時に『ゲット・バック』が流れる。1月28日収録テイク19でのアドリブのセリフが流れて、「MADE ON LOCATION AT APPLE, AND AT TWICKENHAM FILM STUDIO LONDON, ENGLAND」のクレジットが表示され、マッカートニーの笑い声がフェードアウトして映画は終わる。Disney+で配信されたレストア版では、前半にオー!ダーリング、後半にアイ・ロスト・マイ・リトル・ガールのリハーサル音源が流れ、1970年の映画製作スタッフと2024年スタッフ、映画内の楽曲のクレジット等が表示されるエンドロールに変更されている。

ゲット・バック・セッション中に演奏したものの、映画『レット・イット・ビー』では採り上げられなかった曲は主に次のものが挙げられる。「ラヴ・ミー・ドゥ」「アイ・ウォント・ユー」「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」「レディ・マドンナ」「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」「浮気娘」「オール・シングス・マスト・パス」(Harrison)、「バック・シート」(McCartney)、「チャイルド・オブ・ネイチャー」(Lennon) [注釈 2]、「ウォッチング・レインボーズ」「エヴリ・ナイト」(McCartney)、「テディ・ボーイ」(McCartney)、「真実が欲しい」(Lennon)、そして「アイ・ロスト・マイ・リトル・ガール」(McCartney)[注釈 3][2][3][4][5][7]

その他にも、膨大なオールディーズ・ナンバーやデビュー前の自作曲が演奏されているが、それらの多くは断片的なものに留まる。

プレミアと受賞

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映画はLiverpool Gaumontにて1970年5月20日、プレミアショーが行われ、その年のアカデミー賞編曲・歌曲賞グラミー賞の映画音楽賞を受賞した[8]。 ビートルズは誰もアカデミー賞の授与式に参加しなかった。

映画のソフト化

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映画は1980年代の初め、アブコ・レコードが主導してソフト化された。VHSベータマックスビデオRCA SelectaVision videodiscレーザーディスクなどでのリリースが確認されているが、アップル・コアの許諾を得ていなかったため、程なく販売中止となった。以降はテレビやファンクラブの上映会などで公開されることはあっても、正式にソフト化されることはなかった。

2004年以降、ポール・マッカートニーを含め、複数の関係者の口からDVD・ブルーレイ化に向けての作業が進められていることが語られているが[注釈 4]2024年4月時点で正式に入手できるのは、抜粋が収録された映像版『ザ・ビートルズ・アンソロジーVo.8』のみであった。

2019年1月31日ピーター・ジャクソンの手により、ルーフトップ・コンサートを含む60時間の未公開フィルムと140時間の未公開音源を元にした新編集版が現在制作中であることが発表された。同時にオリジナルのレストア版も発売される予定であることが発表された[10][11]。新編集版の『ザ・ビートルズ: Get Back』は当初2020年9月劇場公開を予定していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行などの影響で、2021年8月27日公開予定に延期された[12]。さらに2021年6月23日になって、配給元であるディズニーは劇場での公開を取りやめ、ディズニーの動画配信サービスであるDisney+(ディズニープラス)にて、2021年11月25日、26日、27日の三日間にわたり3部に分けて動画配信の形で公開することを発表した[13]。2022年より順次セル版がリリースされた。

2024年5月8日、オリジナルのレストア版が『ザ・ビートルズ:Get Back』と同じ技術でリマスターされたオーディオを採用して、Disney+で配信されることが正式に発表された[14][15]。また、レストア版では冒頭の5分間に同映画について、ピーター・ジャクソンとマイケル・リンゼイ=ホッグによる対談映像「Get back to LET IT BE」が追加された。この他、新たにエンドロールを追加するなど細かな変更点がある。

日本での公開

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日本では、1970年8月25日に初公開された。

1977年3月21日TBSテレビにてテレビ初放映された(14:00~15:30まで)。かまやつひろしによるナレーションが追加されたカット版で、このバージョンが幾度か再放送された。

1984年4月14日には、TBSテレビの『名作洋画ノーカット10週』枠で初のノーカット放映が行われた。字幕放送であり、翻訳は井場洋子、字幕演出は小山悟、制作は東北新社が担当した。

脚注

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注釈

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  1. ^ しかし、彼はまた皮肉っぽくライブを精神病院で行うことを望んでいた
  2. ^ この曲は後に「ジェラス・ガイ」へ作り直された
  3. ^ マッカートニーが14歳の時初めて作った曲。後に『公式海賊盤』に収録。
  4. ^ 2007年2月、ニール・アスピノール(元アップル・コア代表取締役)はインタビューで、「映画が最初に出てきたときは非常に物議を醸した。その修復作業が半分を過ぎたときに、アウトテイクを見てこう気づいた。この素材は未だに議論を呼んでいると。これは古い議論をよみがえらせた。」と語っている[9]

出典

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  1. ^ 「ザ・ビートルズ:Get Back」ほか3本”. 産経ニュース (2021年12月3日). 2021年12月3日閲覧。
  2. ^ a b The Twickenham Sessions”. The Get Back Rehearsals. 2006年10月29日閲覧。
  3. ^ a b The Apple Sessions”. The Get Back Rehearsals. 2006年10月29日閲覧。
  4. ^ a b The Apple Studio Performance”. The Get Back Rehearsals. 2006年10月29日閲覧。
  5. ^ a b c The Rooftop Concert”. The Get Back Rehearsals. 2006年10月29日閲覧。
  6. ^ Sulpy, Doug; Schweighardt, Ray (1999). Get Back: The Unauthorized Chronicle of the Beatles' Let It Be Disaster. Macmillan.. p. 26. ISBN 0-312-19981-3 
  7. ^ Watch the Lost Beatles”. NPR's Online Music Show. 2006年10月29日閲覧。
  8. ^ Awards for Let It Be”. Internet Movie Database. 2006年10月29日閲覧。
  9. ^ “Beatles Ready for Legal Downloading Soon”. FOXNews.com (フォックス・コーポレーション). (2007年2月12日). オリジナルの2007年2月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20070214064734/https://www.foxnews.com/story/0,2933,251410,00.html 
  10. ^ “ビートルズ『レット・イット・ビー』制作時の未公開映像を基にした映画が制作中、監督はピーター・ジャクソン”. Billboard JAPAN (ビルボード). (2019年1月31日). https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/72135/2 2019年2月1日閲覧。 
  11. ^ “ビートルズの新作映画製作が決定 ピーター・ジャクソン監督「究極の映像体験に」”. デイリースポーツ online (株式会社デイリースポーツ). (2019年1月31日). https://www.daily.co.jp/gossip/2019/01/31/0012025688.shtml 2019年2月1日閲覧。 
  12. ^ “「ザ・ビートルズ:Get Back」2021年8月27日(金)待望の世界同時劇場公開&邦題決定‼”. ディズニー. (2020年12月22日). https://www.disney.co.jp/movie/news/20201222_01.html 2021年1月13日閲覧。 
  13. ^ 「ザ・ビートルズ:Get Back」2021年8月27日(金)待望の世界同時劇場公開&邦題決定‼”. ディズニー公式. 2021年10月28日閲覧。
  14. ^ ビートルズのドキュメンタリー映画『レット・イット・ビー』レストア版 5月8日にDisney+で配信開始”. amass (2024年4月17日). 2024年4月18日閲覧。
  15. ^ ビートルズのドキュメンタリー映画『レット・イット・ビー』の初レストア版が Disney+ で配信決定”. HYPEBEAST (2024年4月17日). 2024年4月18日閲覧。

関連書籍

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  • Get Back: The Unauthorized Chronicle of the Beatles "Let it Be" Disaster, by Doug Sulpy and Ray Schweighardt. New York: St. Martin's Griffin, 1999. ISBN 0-312-19981-3. (セッションテープの完全な分析を行っている)
  • スティーヴ・マッテオ『ザ・ビートルズ レット・イット・ビー』石崎一樹訳、水声社、2013年。ISBN 978-4891769420

外部リンク

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