「夫婦別姓」の版間の差分
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* 被告側の理事は、「今回の裁判は、『個人のアイデンティティーvs.学校のアイデンティティー』という構図になってしまった。でも、別姓を認める法律があれば、こんな戦いをせずに済んだはず」としている<ref name=area20161024 />。 |
* 被告側の理事は、「今回の裁判は、『個人のアイデンティティーvs.学校のアイデンティティー』という構図になってしまった。でも、別姓を認める法律があれば、こんな戦いをせずに済んだはず」としている<ref name=area20161024 />。 |
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==各国の状況== |
==各国の状況・子供の姓の対応== |
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過去には日本以外にも夫婦同氏とする規定を持つ国(ドイツ、オランダ、イタリア、ノルウェー、フィンランド、タイ、トルコ等、以下参照)もあったがそれぞれ改正がなされ、2014年時点では法的に夫婦同氏と規定されている国家は日本のみとなっている<ref name=ohmura2010 /><ref name="akita20151122" /><ref name="nikkei20160326" />。 |
過去には日本以外にも夫婦同氏とする規定を持つ国(ドイツ、オランダ、イタリア、ノルウェー、フィンランド、タイ、トルコ等、以下参照)もあったがそれぞれ改正がなされ、2014年時点では法的に夫婦同氏と規定されている国家は日本のみとなっている<ref name=ohmura2010 /><ref name="akita20151122" /><ref name="nikkei20160326" />。 |
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{{see also|en:Maiden and married names|en:Surnames by country}} |
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:朝鮮半島では父権主義であり、「親からもらった姓は変えない」という儒教 的発想で昔から不文の法として「姓不変の原則」があり、夫婦別姓、実質は妻のみ一家で別姓・別本貫であった<ref name=ozawa2021 /><ref name="chukanmatome"/><ref name=":2">[https://www.newsweekjapan.jp/tokyoeye/2020/11/post-46.php 韓国「父姓主義」への違和感と日本の夫婦別姓問題] |
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2020年11月14日(土)14時20分 |
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⚫ | 外国人リレーコラム 李 娜兀(リ・ナオル)</ref>。子の姓・本貫は法的に父親のモノを受け継ぐと義務化してきたが、2008年改正の際に「子は父親の姓と本貫に従う」という民法第781条1項を残したまま、「婚姻届提出の際に夫婦間で同意すれば、母の姓に従うことができる」との文言が付け加えられたことにより、父母が婚姻届出の時に協議したにチェックを入れた場合にのみ母の姓とすることも可能になった<ref name=":2" /><ref>柳淵馨「大韓民国における新しい家族関係登録制度の概要」『戸籍時報』特別増刊号640、2009年。</ref><ref name="soredemo2015">朝日新聞 (著),「それでも夫婦別姓ダメですか 女性閣僚3人が旧姓のいま」、朝日新聞社、2015年</ref><ref name=":3">{{Cite web|title=書類上離婚まで考えた…「父親の姓を継ぐのが当たり前ではない」=韓国(ハンギョレ新聞)|url=https://news.yahoo.co.jp/articles/966555014bdc1b037f9e037e5d24b3e734950331|website=Yahoo!ニュース|accessdate=2021-11-24|language=ja}}</ref>。なお、古代の[[律令制]]導入以来からあった、日本と同様の戸籍制度は、2008年に[[血統主義]]に立脚した正当な理由のない制度だとして廃止されている<ref name="chou2005">趙慶済、[http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/05-4/cho.pdf 「2005年2月3日戸主制憲法不合致決定に関して」], 『立命館法学』([[立命館大学]]), 2005年4号 (302号), p. 36 (1506)-95 (1565).</ref>。また、2008年より、離婚後に母が引き取った子の姓を母の姓にすることが可能になった<ref>『結婚の比較文化』 130 ページ小檜山ルイ、北條文緒,2001年10月</ref><ref>『増補改訂版 帰化申請マニュアル』- 81 ページ, 前田修身,2014年</ref>。なお[[同姓不婚|同姓同本不婚]]の規定は、1997年憲法裁判所が違憲の決定をし、1999年に廃止された<ref>[http://www.lec-jp.com/h-bunka/item/v226/pdf/200304_38.pdf 韓国法の特色―家族法を中心として] 高麗大学校名誉教授 崔達坤</ref>。2021年11月時点でも、子供の姓・本貫は夫の姓にするのが基本であり、妻の姓に出来ることは一般的に知られていない<ref name=":3" />。 |
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2021年11月24日 (水) 11:26時点における版
夫婦別姓(ふうふべっせい)、あるいは夫婦別氏(ふうふべっし/ふうふべつうじ)は、夫婦が結婚後も法的に改姓せず、婚前の姓(氏、名字、苗字)を名乗る婚姻および家族形態あるいは制度のことをいう[1]。これに対し、婚姻時に両者の姓を統一する婚姻および家族形態、またはその制度のことを「夫婦同姓」(ふうふどうせい)あるいは「夫婦同氏」(ふうふどうし/ふうふどううじ)という。夫婦別姓・同姓を選択できる制度を、「選択的夫婦別姓」(せんたくてきふうふべっせい)、あるいは「選択的夫婦別氏」(せんたくてきふうふべっし/せんたくてきふうふべつうじ)と呼ぶ[2]。通称として旧氏(旧姓)を使用することは「旧姓通称使用」と呼ぶ[3][4]。現在法的に夫婦同氏が規定されているのは日本のみであり[5][6]、日本においては夫婦別姓を選択できる選択的夫婦別姓制度の導入の可否が議論・検討されている[7]。(夫婦別姓(氏)に限らない夫婦の婚前・婚姻後の姓一般については、「Maiden and married names」(英語版記事)を参照)
概要
日本においては、現在、民法750条で夫婦の同氏が規定されており、戸籍法によって夫婦同氏・別氏が選択可能な国際結婚の場合を除き、婚姻を望む当事者のいずれか一方が氏を変えない限り法律婚は認められていない[8](「#関連法令」参照)。現在の日本において何らかの理由で当事者の双方が自分の氏を保持したい場合、旧姓通称使用や事実婚などが考えられるが様々な議論があり(「#問題の所在」参照)、別氏のまま婚姻することを選択できる選択的夫婦別姓制度を導入することの是非が議論されている[9][8](「#民法改正案」「#戦後の動き」「#賛否の状況」参照)。関連して訴訟等も提議されている(「#訴訟」参照)。なお、日本で夫婦同氏が法的に規定されたのは明治31年(1898年)に施行された明治民法からで、明治民法施行以前は明治9年(1876年)の太政官指令15号前段によって夫婦別氏が定められていた[10](「#歴史的経緯」参照)。過去には、日本以外にも夫婦同氏が規定されている国もあったが[11]、2014年時点で、法的に夫婦同氏と規定されている国家は日本のみとされ[5][6]、選択的夫婦別氏制度導入に関しては国際的な要請もあるとされる(「#国際世論・状況」「#各国の状況」参照)。
用語
現代では、氏、姓、名字、苗字は、同義に扱われることが多い[12]。「夫婦別姓(氏)」については、現在の一般的な議論では「夫婦別姓」という語が用いられることが多い[13]。また、歴史学者の久武綾子は、「氏」という表記が家族主義的概念だとして「夫婦別姓」を用いる[14]。一方、法令用語としては明治民法以来「姓」ではなく「氏」(うじ)が用いられているため、弁護士や法の専門家は「夫婦別氏」(ふうふべつうじ)を用いる傾向があり[13]、法史学者の井戸田博史は、法律用語として「氏」を使うべきとしている[15]。法務省ホームページでは、民法等の法律で「姓」や「名字」のことを「氏(うじ)」と呼んでいるとし、「選択的夫婦別姓(氏)」について「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)」と記載している[16]。「選択的夫婦別姓(氏)」については、ほかに「夫婦別姓選択制[17]」「夫婦別氏選択制[18]」「選択的夫婦同姓[19]」「夫婦同姓別姓選択制[20]」などの表記も使用あるいは使用の提案がされている。なお、現行制度下の非法律婚を夫婦別姓と呼ぶ[21][22]ことがあるが、本項では「事実婚」を用いる。
問題の所在
関連法令
民法および戸籍法の規定
日本では以下の民法および戸籍法により、日本人間の婚姻の場合、夫婦は同氏と定められている。
- 民法 第750条(夫婦の氏)
- 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
- 民法 第739条(婚姻の届出)
- 1 婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
- 2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。
- 戸籍法 第74条
- 婚姻をしようとする者は、左の事項を届出に記載して、その旨を届け出なければならない。
- 一 夫婦が称する氏
- ニ その他法務省令で定める事項
- 婚姻をしようとする者は、左の事項を届出に記載して、その旨を届け出なければならない。
これに対し、アイデンティティ喪失、間接差別、改氏の不利益[23]などの理由から、別氏のままの婚姻を選択できる制度の導入が検討され、訴訟も起きている[10][9][8][24]。一方で、親子別氏となるのは問題とする主張[25][26][27]や、旧姓の通称使用拡大で十分との主張[28]などの反対論・消極論がある。(「#賛否の論点」参照)
国際結婚および婚姻挙行地の方式による婚姻
前節の夫婦を同氏とする規定は国際結婚には適用されず、国際結婚では選択的夫婦別氏が認められている。法の適用に関する通則法により外国人には民法750条が適用されず夫婦別氏になるが、戸籍法第107条に従い、戸籍法上の届け出をすれば戸籍法上同氏になる(原則別氏、例外同氏)。ただし、戸籍法上の届け出によって同氏となった場合も、戸籍実務では民法上改氏はしていないものとして扱われる[注釈 1]。戸籍上の氏と民法上の氏が食い違うほかのケースとして、離婚時、養子離縁時に旧氏に復さず婚氏、縁氏の名乗りを継続する場合(婚氏続称、縁氏続称)がある[29][30]。
また、日本人間の婚姻であっても、外国で現地の方式にしたがって、夫婦が同じ氏を定めないまま結婚を挙行した場合、戸籍の届出をしておらず別氏のままであっても婚姻は有効とされる[31]。
- 法の適用に関する通則法 第24条(婚姻の成立および方式)[32]
- 婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
- 2. 婚姻の方式は、婚姻挙行地の法による。
- 3. 前項の規定にかかわらず、当事者の一方の本国法に適合する方式は、有効とする。ただし、日本において婚姻が挙行された場合において、当事者の一方が日本人であるときは、この限りでない。
- 婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による。
- 戸籍法 第107条[33]
- 2. 外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
旧姓通称使用
職場・職種によっては旧姓(氏)を通称にすることが便宜上認められる。1988年に富士ゼロックスで初めて導入され、国家公務員でも2001年から認められた[34]。他にも、旧姓に限らない通称(ビジネスネーム)の利用も見られ[35]、社員全員がそのような通称を用いる企業もある[36]。しかし、二つの名前の管理は企業の負担が大きく[37][38]、認めない職場も少なくない[39]。2010年の時点では、導入済みの企業は192社中55.7%、従業員1千人以上の企業で71.8%(産労総合研究所調べ)[40]。2016年の内閣府調査では旧姓使用を認める企業は全体の半数以下の49.2%である[41]。役員登記、特許出願などは戸籍上の氏で行われるため、旧姓を使用できない[41]など通称は公文書には使えず、二重の氏の使い分けが生じる問題や、アイデンティティ上の問題も残る[39][42][43][44][45]。親から法人を受け継いだ女性等は自分の氏を失うわけにはいかず、結婚をあきらめたり事実婚も多い[41]。(「旧姓#問題点」および「#旧姓通称使用訴訟」参照)
事実婚
事実婚は法律上の婚姻ではないため、入院時などの家族関係の証明[46]、海外赴任時の配偶者ビザの問題[47]、など日常生活上の問題、相続法・税法上の問題[48][49][50][46][51][52][53][47]、成年後見の問題[47]等がある。また、子は戸籍上非嫡出子(婚外子)として扱われ[50]、単独親権に服し、父母が共同で親権を行うことができない[49]。(「事実婚#事実婚における問題点」参照)
国際世論・状況
過去には現在の日本と同様に法的に同姓を義務付けていた国家もあったが改正され、2014年現在、比較法的に見て夫婦同氏を強制する国は日本のみ、とされている[10][54][5][6]。2018年には、法務省民事局長が衆議院法務委員会において、婚姻後に夫婦のいずれかの氏を選択しなければならない夫婦同氏制を採用している国は法務省の把握している限りで日本のみ、と説明している[55]。(「#各国の状況」を参照)
国連女子差別撤廃委員会勧告
国際連合が1979年に採択した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に、日本は1980年に署名し、1985年に批准した[56]。国連の女子差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本民法の夫婦同氏が同条約に抵触する「差別的な規定」だとし、2003年、2009年、2016年、と3度にわたり改善を勧告している[57][10][58](「#戦後の動き」も参照)。現民法が抵触するのは同条約の以下の規定とされる[59][39][60][61]。
- 第16条1
- 締結国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
- (g) 夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)。
- 締結国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
これに関連しては、条約違反により権利を侵害された個人・団体が同委員会に通報できる「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書」を日本は批准しておらず、批准を求める動きがある[62][63][64]。
米国国務省人権状況に関する年次報告書
アメリカ合衆国国務省による世界199カ国・地域の人権状況に関する年次報告書は2015年版から日本の民法規定に言及を続けている(2015年[65]、2016年[66]、2017年[67]、2018年[68]、2019年[69]、2020年[70][71])。
民法改正案
1994年の「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」[72]、1996年の法制審議会答申の民法改正案[73]、超党派野党や公明党などが2015年などに提示した案、選択的夫婦別姓訴訟原告らの提示案、自民党内の例外的に夫婦の別姓を実現させる会が2002年に提案した案などがある[74]。
1996年法制審議会答申
国際連合の1975年の国際婦人年から始まる国際的な女性の権利保障の推進運動や、1985年に日本も批准した女性差別撤廃条約などを受け、1991年、日本は国内の男女平等施策を推進するための国内行動計画を策定するとともに、法制審議会において家族法の見直し作業に着手した[75]。法制審議会の審議は5年にわたって行われ、1992年、1995年の2回の中間報告、1994年の要綱試案の発表などを経て、1996年2月、法務大臣の諮問機関である法制審議会が、家族法の見直しを含む民法改正案要綱を法務大臣に答申した[75]。主な内容は以下の通り[75]。
このうち、婚姻年齢統一は2018年に成立(2022年(令和4年)4月1日施行)[76]、再婚禁止期間の短縮は(再婚禁止期間訴訟の最高裁違憲判決により)2015年12月16日に実施[77]、婚外子の相続分差別の廃止は(婚外子相続差別訴訟における最高裁の違憲判決により)2013年に実現している[78][79]。
答申では、選択的夫婦別氏の導入を答申する理由として、以下の3点を挙げている[24]。
要綱試案(1994年)
1994年に法務省民事局参事官室は、1996年の法制審議会答申へ向けた中間報告において、3つの案を「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」として提示した[72][24]。
- A案
- 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。ただしこの定めをしないことも可能(原則同氏、例外別氏)。
- 別氏夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻のいずれかの氏を、子が称する氏として定めなければならないものとする。
- 別氏夫婦は、嬌姻後、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、夫又は妻の氏を称することができるものとする。
- B案
- 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称することができるものとする(原則別氏、婚姻の際に特段の合意がされた場合にかぎり、同氏を称することができる)。
- 婚姻後の別氏夫婦から同氏夫婦への転換、及び、同氏夫婦から別氏夫婦への転換はいずれも認めない。
- 別氏夫婦の子の氏は、その出生時における父母の協議により定める。
- C案
- 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称するものとする。
- 婚姻により氏を改めた夫又は妻は、相手方の同意を得て、婚姻の届出と同時に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏を自己の呼称とすることができるものとする。
- 婚姻前の氏を自己の呼称とする夫又妻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その呼称を廃止することができるものとする。
これらの案に対し、日本弁護士連合会は、A・B案は同氏・別氏のいずれかを原則としているが、優劣をつけるべきではないと批判[74]。C案に対しては、氏の二重制はわかりづらく実質的にも平等でないと批判している[74]。子の氏についてはB案を支持する[74]が、協議が調わない、又は協議できない場合家庭裁判所の審判で定めるべきとする[74]。
後の1996年の法制審議会答申では、現行制度の枠組みを維持しつつ希望者に別氏を認めるA案に同氏・別氏を対等とする修正を加え、B案と折衷した要綱案が作成された[24][56][80]。法務省は2002年4月にも、A案と同様の案(例外的夫婦別氏案)を提示している[81]。
最終答申(1996年)
1991年1月に設置された法制審議会身分法小委員会での審議を経て、法制審議会は、1996年の答申で民法改正案を法務大臣に提示した[73][24][82]。法務省は2001年11月[81]、2010年2月[83]にも同様の案を再提示している。
- 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
- 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称する氏として定めなければならないものとする。
この審議に合わせ、民事行政審議会は、「別氏夫婦に関する戸籍の取り扱い」についても法務大臣に答申した。
- 戸籍は夫婦およびその双方又は一方と氏を同じくする子ごとに編製する。
- 氏名は、子が称する氏として定めた氏を称する者、その配偶者の順に記載する。
- 戸籍には、現行戸籍で名を記載している欄に氏名を記載する。
原優は、親子・相続関係を一覧的に把握できる現行制度の利点を尊重し、夫婦及び親子の戸籍編製基準単位は維持された、と論評している[84]。
超党派野党案/公明党案
法制審議会答申以来、野党は超党派でほぼ会期ごとに民法改正案を提出し続けているが、未審議のまま廃案と再提出が繰り返されている[85][86][87](「#年表」参照)。公明党も2001年に改正案を単独で提出している[88]。民主党が2015年に、社民党、日本共産党等と共同で参議院に提出した案は以下のような案である[89][90]。
- 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若しくは妻の氏を称し、又は各自の婚姻前の氏を称するものとする。
- 改正法の施行前に婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、婚姻中に限り、配偶者との合意に基づき、改正法の施行の日から2年以内に別に法律で定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏に復することができる。
- 別氏夫婦の子は、その出生の際に父母の協議で定める父又は母の氏を称するものとする。
- ただしその協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることができる。
2018年に、立憲民主党、国民民主党、無所属の会、日本共産党、自由党、社民党の5野党1会派が提出した案の内容も同様である[91]。公明党が2001年に提出した案も同様の内容である[88]。これらは法制審議会答申案とほぼ同じ内容[81]だが、さらに日弁連の提言[74]に沿っている。
家裁許可制選択的夫婦別氏案
2002年7月16日に発足した、野田聖子ら自民党一部議員による例外的に夫婦の別姓を実現させる会が提案した案。職場の事情や祖先祭祀の必要など特段の事由がある場合に、家庭裁判所による許可を得て認める、とする案。議員立法として自民党法務部会に提出されたが党内合意に至らず国会提出は見送られた[92][93][94][95][96]。
- 職業生活上の事情、祖先の祭祀の主宰その他の理由により婚姻後も各自の婚姻前の氏を称する必要がある場合において、別氏夫婦となるための家庭裁判所の許可を得ることができる。
- 夫婦同氏が原則とし、別氏夫婦から同氏夫婦への転換は認める。逆は認めない。
- 別氏夫婦は、婚姻時に「子が称すべき氏」を定める[92]。
朝日新聞は、強硬な反対論者を説得するための妥協案である(村上まどか[97])、両性の合意以外に家裁の許可を必要とするのは違憲、職業による差別や家制度の復活に繋がる恐れがある、という批評(多賀愛子[98])を紹介している[99]。
この案は2004年にも再度議論されたが、国会提出は見送られた[100][注釈 2]。
その他の案
旧姓続称制度(1997年)
自民党・社会党・さきがけ政権時の1997年に自民党法務部会「家族法に関する小委員会」(座長:野中広務)で検討された案として「旧姓続称制度」[102][81][103]がある。配偶者の同意を得た上で届け出れば、社会生活上の全場面で旧姓を使えるようにするもの[102][103][104][注釈 3]。
日本弁護士連合会会長声明は、事実上選択的夫婦別氏と変わらないのであれば戸籍上の同氏強制に固執する必要は無く、二重の氏は社会的混乱を招くと批判している[105]。
例外的夫婦別氏案(2001年)
2001年に法務省は法制審答申案と同様の案を再提出し見送りとなったため、翌2002年4月要綱試案A案と同様の「例外的夫婦別姓案」を提示したが、見送りとなった[81]。
通称使用の法制化案(2002年・2020年)
2002年、選択的夫婦別氏に反対する高市早苗は、野田聖子らによる「家裁許可制選択的夫婦別氏案」が自民党内で検討された際に、「対案」として「通称使用の法制化」を主張した[103]。高市は2020年にも自民党法務部会に同じ案を再提出している[106]。この案は以下のような内容である[107]。
- 戸籍に「婚姻前の氏を通称として使用する」旨を記載する。
- 国、地方公共団体、事業者、あらゆる公私の団体は、通称として使用するとされた婚姻前の氏を「併記」するための処置を講ずる義務を負う。
この案について、法相(当時)の森山真弓は、「二つの名前を一人の人が公式に使うとなると、混乱を生じ、犯罪に使われる可能性がある」と否定的だった[103]。
戸籍法改正による選択的夫婦別氏案(2018年)
2018年1月の国に対する訴訟で、原告は、婚氏続称制度を念頭に、「戸籍上の氏」と「民法上の氏」を分け、戸籍法の届け出により、民法上の旧氏を戸籍上の氏=本名として称せるよう戸籍法を改正すべきと主張している[108][109][110][111][112]。具体的には、戸籍法に以下の条文を加えることで、民法を改正することなく選択的夫婦別姓を実現できる、と原告らは主張している[112]。
- 婚姻により氏を変えた者で婚姻の前に称していた氏を称しようとする者は、婚姻の年月日を届出に記載して、その旨を届け出なければならない
同案に関しては、2019年に国民民主党代表の玉木雄一郎が、日本人同士の結婚時にも別氏を選択できる戸籍法改正を目指す考えを示した[113][114]。
日本維新の会マニフェスト(2019年)
2019年、日本維新の会は、参議院選挙の公約(マニフェスト)に「同一戸籍・同一氏の原則を維持しながら旧姓使用にも一般的な法的効力を」を掲げた[115][116]。
婚前氏続称制度(2020年)
2020年に稲田朋美[注釈 4]が提唱した私案。戸籍上は同一戸籍で、例えば筆頭者は夫でも、妻は旧氏を使うと届け出れば戸籍に明記して公的には旧氏のみを使い続けられるようにし、ファミリーネームは私的な場面で用いる[119]。稲田が2020年11月13日に衆院法務委員会において提案した案では、3カ月以内に届け出をすれば以前の氏を使えるようにする、とした[120][121]。案では、民法、戸籍法に以下の変更を加える[122]。
- 民法750条第2項「前項の規定により氏を改めた夫または妻は、婚姻の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、婚姻前の氏を称することができる」を新設。
- 戸籍法74条第2項「民法750条2項の規定によって婚姻前の氏を称しようとする者は、婚姻の年月日を届書に記載して、その旨を届けなければならない」を新設。
ミドルネーム案(2021年)
結婚した際に夫婦双方の姓をミドルネームとして戸籍に書き込み、家族が同一戸籍のまま、旧姓にも法的な根拠を与えるという案。自民党の森雅子が2021年3月に参議院法務委員会で提案[123]。
関連する他の民法改正論
2019年、超党派野党は日本で初めて同性婚を法制化する婚姻平等法案を衆議院に提出[124][125]。同時に選択的夫婦別氏法案に対する新旧対照表も示されている[124]。同性婚を求める訴訟もあり[126]、2021年3月17日には札幌地裁で初の違憲判断がなされた[127]。(「同性結婚」参照)
他に離婚後共同親権を求める動き[128][129]や、夫婦創姓の提案[130]がある。(「共同親権」「夫婦創姓論」参照)
歴史的経緯
中世以前
- 姓
大和朝廷によって、古代豪族が元々持っていた氏名(うじな)が新たに下賜されるものもあった(源平藤橘)。さらに国政上の地位を示す姓(カバネ)が与えられた[注釈 5]。奈良時代に律令制が確立するとカバネは形骸化し、氏名(うじな)と同化して姓(せい)と呼ばれるようになる[131]。
一般庶民(公民)は戸籍によって把握され、何らかの大氏族集団に属して姓を持った(百姓、ひゃくせい)。奥富孝之は、平安時代前期まではこれが重んじられた、としている[132]。坂田聡は、姓は父系継承であり、婚姻によって改姓することはなかった(夫婦別姓)としている[133]。夫婦の氏の記録としては、夫婦がすべて別氏である戸籍の記録[注釈 6]、同氏と別氏が混在する記録[注釈 7]、すべて同氏である記録[注釈 8]それぞれ存在するが、久武綾子によれば、中国や韓国と異なり同姓不婚のタブーが無く、同姓の記録は同姓の者同士の婚姻による同姓の夫婦と考えられる[136]。
- 名字・苗字
公家が互いを区別する為に個人の邸宅の居住地に由来する呼称から、一定の家系の呼称に転化して「名字」となった。
東国の豪族武士達が自分の名前に本領地の地名を冠して名乗るようになり「名字」と呼ばれた[137]。
鎌倉時代の分割相続が南北朝時代には単独相続に移行し、家産や家業などを継承する「家」が成立。名字は家名となり苗字として代々継承されるようになった[138]。後藤みち子は、戦国時代の公家の正妻は婚家の一員として婚家の苗字+妻の社会的呼称で呼ばれるようになり[注釈 9]、これを夫婦別氏で、夫婦同苗字(家の名)としている[139]。
坂田聡は、戦国時代から近世にかけての丹波の国の史料にあった三例の実例から庶民の夫婦同苗字について述べている[注釈 10]。
江戸期
- 士分の氏
井戸田博史は、近世(江戸期)になると、士分以外の者(庶民)は一部を除き姓・苗字(氏)の使用が原則として禁止されていた(1801年(享和元年)の禁令)、とし[141]、明治維新以前、氏を称することができたものは士分以上の者に限られ、国民の94.5%は氏を名乗ることができなかった、としている[99]。田中優子は、同じ人物が複数の異なる名前を名乗ることも多かった、としている[142]。坂田聡は、姓と苗字の区別が曖昧になり混同されることが多くなったとしている。一方で坂田は、官職の授与などの儀式の際に実名とのセットで姓を使う風習は江戸時代でも残っていた、としている[143]。
- 庶民の氏
洞富雄や坂田聡や久武綾子は、庶民の使用例も指摘している[144][145]。士分以外への禁令について奥富孝之は、安易な苗字帯刀を「領主・地頭」に禁じたもの、と主張している[146]。井戸田博史は、庶民の氏には公称を許された氏と、私称している氏があったとする[141][注釈 11]。一方、久武綾子らは、庶民にとっては苗字よりも代々の襲名[注釈 12]や屋号が重要だったとしている[148][149]。
- 妻の氏
妻については、柳谷慶子は、氏を持つ場合には妻はもっぱら生家の氏を名乗り、夫婦別氏だったとしている[150][141][注釈 13]。芦東山の妻の夫の幽閉赦免願書の例[注釈 14]、多勢の誓詞帳の例[注釈 15]、夫婦別氏の墓標があることなどが夫婦別氏の例としてあげられる[154]。また、妻の死後実家の墓地に「帰葬」する習慣が北陸~東北に広く分布することも指摘される[155]。
妻の氏に関する庶民慣習については、大藤修は史料が少ないことから不明としている[156]。熊谷開作は、妻が氏を自ら名乗ることは少なかった、としている[157]。井戸田博史は、役儀等の事由で庶民が氏の公称が許された場合に氏を名乗れるのは当主を中心とする男子のみで、女性には氏は無縁だった(無氏)としている[141]。熊谷は、大坂の町人の未亡人が「○○家後家」と名乗るケースなどがあったとし[158]、武士においても夫の苗字を名乗った例[注釈 16]がある、としている[159]。
近代
明治維新後、明治8年に氏使用が義務化され、明治9年に太政官指令によって夫婦別氏が定められた。その後、明治31年に施行された明治民法によって始めて法的に夫婦同氏が規定された。
氏使用の義務化
1870年10月13日(明治3年9月19日)、太政官布告により平民にも氏使用が許可された[160][注釈 17]。同年12月、叙位任官する際には従前の姓+実名から苗字+実名での表記に改め、翌年10月には公用文書も苗字+実名で統一された。1872年(明治5年)5月、国民全員に実名と通称のどちらかを本人に選択させる方針に変更した[注釈 18][162]。
1872年3月9日(明治5年2月1日)、徴税・徴兵・治安維持などのために国民の現況を把握する目的で、戸籍法(壬申戸籍)施行[163]。ここでは苗字または姓が「氏」、通称または実名が「名」として登録され、一人一名主義の原則が確立した[162][注釈 19]。同年8月24日の太政官布告は改氏・改名を禁止。久武綾子は、襲名や屋号を家名として使っていた庶民に混乱をもたらした、としている[165]。そのため、1880年(明治13年)1月7日の太政官指令では改名禁止は一部緩和されている[166]。
1875年(明治8年)2月13日の太政官布告22号では、兵籍取調の必要から氏の使用を義務化した[160]。夫婦の氏の扱いについては、1875年12月の太政官布告で婚姻・縁組・離婚などの際に新しい氏を作って良いとされた[164]。
夫婦別氏とする太政官指令の発令
夫婦の氏に関して、妻は夫の身分に準じるので夫家の氏を称するのが穏当だが前例が無く決し兼ねる、として内務省が太政官の判断を仰いだのに対し、1876年(明治9年)3月17日に発令した太政官指令15号において「伺の趣婦女人に嫁するも仍ほ所生の氏を用ゆ可き事/但夫の家を相続したる上は夫家の氏を称すへき事」[注釈 20]とした[160][167][168][169]。前段で、妻は「所生の氏」すなわち生家の氏を用いるべきと定めた[168](夫婦別氏制[160])。なお後段は、これに先立つ明治6年の太政官布告第28号で夫の死後子もなく養子をとることも難しい場合などやむをえない場合に妻が女戸主として家督を相続することが認められたことに対応したもので、その場合の女戸主は家督相続後夫家の氏を称する[168][注釈 21]。
太政官法制局が夫婦別氏制をとった理由について、「妻は夫の身分に従うとしても、姓氏と身分は異なる」「皇后藤原氏であるのに皇后を王氏とするのはおかしい」「歴史の沿革を無視」の3点が指摘されている[170][168]。一方、この後明治民法公布直前まで、妻が夫家の氏を称するのが慣習だとする地方官庁からの伺いが多数出された[171]。増本敏子らは、太政官指令後も民間の慣例では多くの場合妻は夫の氏を称していた、としている[172]。東京府では、婚姻後も生家の氏を称する妻は僅かと報告されていた[173][174][注釈 22]。熊谷開作は、同指令後、戸籍上妻の氏を記載しない例も氏を残す例もあった、としている[179]。
なお、太政官指令15号による夫婦を別氏とする規定は、1891年(明治24年)の司法省指令でもそのまま残されている[180]。
民法制定までの動き
明治民法の制定以前に、いくつかの民法草案や施行されなかった旧民法などが作成されている。
1872年(明治5年)、司法省が作成した民法草案「皇国民法仮規則」では、姓不変の原則を規定している(夫婦別氏)[180][注釈 23]。
1877年(明治10年)9月に上程された「民法草案人事編」[注釈 24]では、「妻は夫の姓を用いる」と規定した(夫氏での夫婦同氏)[注釈 25][注釈 26][注釈 27][注釈 28]。星野通は、全体的に出来が悪く大木喬任司法卿の要望にも沿わなかったため不採用になった、としている[183]。
1888年(明治21年)に熊野敏三らによって作成された旧民法人事編草案(旧民法第一草案)では、妻が夫の氏を称する普通婚姻(原則)と夫が妻の氏を称する特例婚姻(双方の意思がある場合の特例)の規定が設けられた(いずれも夫婦同氏)[注釈 29][注釈 30][注釈 31]。
法律取調委員会の修正案(旧民法再調査案)では、戸主及び家族はその家の氏を称する、と規定した(夫婦同氏)[197][注釈 32]。この案では、入夫婚姻に加え第一草案では認められていなかった女戸主を認めている[198][注釈 33]。
1890年(明治23年)10月、民法典(旧民法)家族法が公布されるも民法典論争により施行されなかった[202][203]。この旧民法では戸主及び家族はその家の氏を称する、と規定された(夫婦同氏)[注釈 34]。原則は妻は夫家の氏を称するが、入夫婚姻の場合には夫が妻家の氏を称する[204]。星野通は、旧民法の夫婦が家の氏を称するとする規定について、西洋の夫婦一体思想を採り入れたものとしている [205][注釈 35]。仁井田益太郎は、旧民法の家族法部分は後の明治民法に継承された、としている[209][注釈 36]。
夫婦同氏とする明治民法の制定
1898年(明治31年)に明治民法家族法部分が公布・施行され、法的に夫婦同氏が初めて規定された。
- 第746条
- 戸主及ひ家族は其の家の氏を称す
- 第788条
- 1.妻は婚姻に因りて夫の家に入る
- 2.入夫婚姻及ひ婿養子は妻の家に入る
すなわち、「妻は婚姻に因りて夫の家に入る」ため(788条1項)、妻が夫家の氏を名乗るのが原則である(746条)[注釈 37]。ただし、入夫婚姻および婿養子の場合は、夫が妻の家に入るため、妻家の氏を名乗る(788条2項・746条)[214][注釈 38]。
当時の諸外国民法
フランスでは、1793年の革命法の氏の名乗りの自由化が混乱を招き翌年に覆されていた[注釈 39]ものが、フランス民法典が規定しなかったことから効力を保ち、氏不変の原則が確定した[216][注釈 40][注釈 41][注釈 42]。ナポレオン体制下でフランス法が適用されていたオランダでも、1829年のオランダ民法典[223]によって姓不変の原則が規定された[注釈 43]。一方イタリアは、同様にナポレオン体制下にあったものの1865年に多少独自色を加えた民法典を制定している[225][注釈 44]。また、ドイツ(神聖ローマ帝国)では、妻が夫の氏を称するのが慣習法として確立しており、領邦もそれに依っていた[227][注釈 45]。1888年(明治21年)1月にドイツ民法第一草案が完成した[229]。
- 明治民法との関連
政治学者の中村敏子は、明治民法で規定された夫婦同氏の規定について、「夫婦一体」という結婚観によって同姓を強制していた西洋の影響が大きい、としている[230]。佐藤一明、田中優子や山口一男は、明治31年の民法の同氏規定は、ドイツの影響と主張している[231][142][232]。これに対し、法学者の滝沢聿代は、夫婦同氏規定についてドイツ民法が参照されたのは明治民法ではなく戦後の改正民法だと主張している[233][注釈 46]。梅謙次郎は、明文の無い場合も含めスイス[注釈 47]、オーストリア、イタリア、ドイツ[注釈 48]の民法では妻が夫の氏を称すると紹介しつつ、プロイセン法典(1789年)の影響は少なく[237]、日本において入夫婚姻及び婿養子縁組で妻の家に入るのは慣習だとしている[238][239][注釈 49]。
戦後の動き
改正民法・戸籍法の制定
戦後、1946年(昭和21年)7月より、内閣臨時法制審査調査会と司法省司法法制審議会で民法の改正の審議が開始され、1947年12月、改正民法が成立し、翌年1月施行。夫あるいは妻の氏での夫婦同氏が規定された。婚姻に関しては、夫氏での同氏婚とする案と「氏は社会の慣習に委ねる」案があったが、最終案では夫または妻の氏を称する夫婦同氏とする案となった[242][注釈 50]。家制度は廃止され、それに伴い婿養子や入夫婚姻の制度も廃止された。(「#関連法令」参照)
同民法施行と同時に改正戸籍法も施行。戸籍は戸主と家族を記載する家の登録から、個人の登録に変わった。戸籍の編成基準は一組の夫婦と氏を同じくする子(戸籍法6条)とされた[246]。個人の登録となったにも関わらず戸籍編成が残された点について起案当事者の我妻栄は、戸籍を廃止するか(川島武宜)、最低限の補修で済ますか議論があったが、改修のコスト面から妥協的に決着した、とし[247]、二宮周平は「紙や手数などにかかるコストを理由に戸籍の廃止は見送られた」としている[248]。
1980年代までの動き
1954年7月、早急に制定された改正親族法の再検討のため民法部会を設置。1955-1959年公表の「法制審議会民法部会身分法小委員会における親族編の仮決定及び留保事項」では「夫婦異姓を認むべきか」が挙げられた[249][注釈 51]。
1960年代には、選択的夫婦別氏への支持や立法論が出てきた[242]。
1974年には「結婚改姓に反対する会」が結成され[251]、1975年には参議院に選択的夫婦別氏を求める請願が提出される[252][246]。
1976年には、女性の地位向上の観点から、離婚時に妻が婚姻時の氏を保持できない民法規定が見直され、選択可能にする婚氏続称制度が導入された[24][注釈 52]。
1984年、戸籍法が改正され、外国人の称する氏への変更を簡易に認める規定が設けられ、国際結婚では選択的夫婦別氏が実現した[251]。同年には、「夫婦別氏をすすめる会」(現、夫婦別姓選択制をすすめる会)が東京で結成された[253]。
1985年には日本政府が女性差別撤廃条約を批准。これに応じて政府の婦人問題企画推進本部は、社会情勢の変化に対応して婚姻・親子の法制の見直しを検討するとした[242]。
1987年には、養子離縁時の縁氏続称が認められた[254][255]。
1988年には、国立大学の女性教授が通称として旧姓を使用する権利を求めて訴訟[256](1993年東京地裁棄却、1998年和解、「#国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟」参照)
1989年、岐阜県各務原市の夫婦が、別氏の婚姻届不受理への不服申し立てを家裁に行い、却下された。同年、法務大臣諮問機関である婦人問題有識者会議において、選択的夫婦別氏問題が取り上げられた[134]。
1990年代から2010年代まで
1991年には法制審議会が「民法の婚姻・離婚制度の見直し審議」を開始した[10]。1996年には法制審議会が選択的夫婦別氏制度を含む「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申した[10]。しかし、自民党内の反対・慎重論によって同年5月に国会上程が見送りとなった[257]。
1992年の時点では多くの選択的夫婦別氏制推進団体の存在が報告されている[242][258]。
1997年にも自民党法務部会「家族法に関する小委員会」(座長:野中広務)で「旧姓続称制度」が検討されたが見送られた[102][81][103]。また、この頃より「選択的夫婦別姓制度」とする民法改正案が議員立法により提出されるようになった[242]。
その後も、1999年の男女共同参画社会基本法の成立および男女共同参画局の設立により選択的夫婦別姓問題は中心的課題と位置づけられた[259]。一方で、山口智美は、これらの運動が、日本会議や神道政治連盟などの反発を呼び起こしたとの主張している[259][260][261]。
2001年11月に法務省は選択的夫婦別氏案を再提示したが見送られた。2002年4月には、法務省は例外的夫婦別氏案を提示、意見一致せず見送りとなった[81]。同年7月には、自民党内の選択的夫婦別姓制度を求める議員ら(野田聖子ら例外的に夫婦の別姓を実現させる会)が法案の国会提出を模索し、党内反対派に譲歩し、家裁の許可を要件とすることを盛り込んだ例外的夫婦別氏制を議員立法で自民党法務部会に提出。しかし党内合意に至らず国会提出は見送られた。その後、2010年代までは党内の議論は停滞した[93][96][262]。
一方、立憲民主党や国民民主党、社民党、共産党などは、法制審答申以来、超党派で会期ごとに民法改正案を国会に提出し続けている[85][86][87]。2001年には公明党も参議院に選択的夫婦別氏案を提出した[9][88]。(「#超党派野党案/公明党案」を参照)
2003年(平成15年)国際連合女子差別撤廃委員会が、婚姻最低年齢、離婚届後の女性の再婚禁止期間の男女差、非嫡出子の扱いと共に「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な法規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」と日本に勧告[263]。その後も2009年、2016年に勧告[264][265][266]。これに対し、日本国政府は2008年4月に選択的夫婦別氏について、国民の議論が深まるよう努めていると報告したが[267]、2009年8月に再度、委員会は委員会は依然差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有すると勧告したほか、「本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき」と勧告した[57][266]。政府は2014年8月にも国連に報告書を提出したが[268]、2016年に委員会は再度批判的勧告を出した[264][265]。(「#国連女子差別撤廃委員会勧告」を参照)
一方、2010年に、民主党・社民党・国民新党の連立政権で法案提出が議論され、同年2月には1996年の法制審議会答申に沿った改正案が法務省政策会議で示された[83]。しかし連立政権を組んだ国民新党の反対や党内からの異論があり法案提出に至らなかった[96][56]。
また、多くの訴訟が起きている。2006年に別氏婚姻届不受理取り消しの申立てが却下。2011年に国に対し選択的夫婦別氏の導入を求める訴訟提議、2015年に最高裁は棄却。その後も同様の訴訟が4件提議されている。(「#選択的夫婦別氏訴訟」を参照)
2016年には、結婚後に職場で旧氏の通称使用を認めないのは人格権の侵害だとして、女性教諭が勤務先の学校法人を東京地裁に提訴、同年棄却[269][270]。2017年に和解した[271](「#女性教諭旧姓通称使用訴訟」を参照)。
2018年以降、地方議会から国へ選択的夫婦別氏法制化を求める意見書を可決する動きが広がり、三重県議会[272]、東京都議会[273][274]、大阪府議会[275]等で意見書が可決された[276][277][278]。(「#地方自治体議会の状況」を参照)
2019年の参議院選挙では、選択的夫婦別氏の是非が争点に挙げられた[279][280][281]。
2020年代以降
- 立法府の動き
2020年2月から3月にかけて、与野党超党派議員や自民党女性議員による勉強会の開催が報じられた[282][262]。2020年11月11日、政府は第5次男女共同参画会議の策定に向けた答申の中で、この問題に「国会の議論の動向を注視しながら検討を進める」と記述[283][284]。同月13日、衆議院法務委員会において自民党の稲田朋美が、結婚後も旧姓の使用を続けられる制度を提案[120]。24日には自民党で賛成派議員を中心に「氏の継承と選択的夫婦別氏制度に関する有志勉強会」が設立された[285]。一方、25日には自民党内で反対派議員を中心に「『絆』を紡ぐ会」設立[286]。同月26日、自民党の女性活躍推進特別委員会委員長の森雅子らは、この問題への対応を求める提言を首相の菅義偉に提出[287]。同年12月1日には、自民党女性活躍推進特別委員会で選択的夫婦別氏の検討を開始した[288]。しかし同月25日に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画では、「夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進める」とされ、「選択的夫婦別姓」という文言は削除された[289]。2021年3月、自民党内選択的夫婦別姓賛成派議員が、「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」を発足[290]。同年4月、自民党内の選択的夫婦別姓慎重(反対)派が、議員連盟「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」を発足[291]。これらの動きと並行して、同月、自民党は選択的夫婦別姓について議論する作業チーム(座長・石原伸晃)を発足させた[292]。同年9月の自民党総裁選では、争点の一つとして選択的夫婦別姓が挙げられた[293]。さらに同年10月の衆議院選挙では、選択的夫婦別氏の是非が争点に挙げられた[294]。
- 裁判の動き
2021年6月、事実婚夫婦による4件の選択的夫婦別氏を求めた家事審判、最高裁が却下[295][296]。同月、ソフトウエア開発会社社長らによる訴訟、および東京の再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟について上告棄却[296][297][298](「#選択的夫婦別氏訴訟」を参照)。
- 地方自治体議会の動き
2020年以降も、神奈川県議会[299]や埼玉県議会[300]、香川県議会[301]など、地方議会から制度の法制化を求める意見書を可決する動きが継続している[302][303][304][305][306]。(「#地方自治体議会の状況」を参照)
年表
- 1980年代まで
年月日 | 出来事 |
---|---|
1946年 | 7月内閣臨時法制調査会および司法省司法法制審議会において民法改正審議開始[242]。 |
1947年 | 5月 3日日本国憲法施行[242]。 |
1948年 | 1月 1日改正民法、改正戸籍法施行[307]。 |
1955年 | 7月 5日法制審議会民法部会、夫婦異氏を認める案を論議[9]。 |
1959年 | パスポート、別名併記を一部認める[308]。 |
6月29日-30日 | 法制審議会民法部会、夫婦異氏の問題はなお検討の必要があるとする[9]。 |
1975年 | 国際婦人年[307]。 |
9月26日 | 選択的夫婦別氏制を求める初めての請願が参議院に提出される[252][246]。 |
1976年 | 6月15日民法改正、離婚時の婚氏続称可能に[309][310]。 |
1984年 | 5月25日国籍法改正、国際結婚の際に外国氏への改氏可能に[311]。 |
1985年 | 6月24日女性差別撤廃条約、日本国批准[312]。 |
1987年 | 9月26日民法改正、養子離縁時の縁氏続称可能に[254][255]。 |
1988年 | 2月16日最高裁、NHK日本語読み訴訟判決判示「氏名は個人の人格の象徴」[307]。 |
5月 | 9日事実婚夫婦、住民票続柄記載差別訴訟、東京地裁(1991年敗訴、2005年最高裁棄却)[313]。 |
1988年11月28日 | 国立大学女性教授通称使用を求める訴訟、東京地裁[注釈 53][314]。 |
12月 | 富士ゼロックス、旧姓通称使用実施。 |
1989年 | 1月20日東京弁護士会が「選択的夫婦別姓採用に関する意見書」を法務省に提出[315]。 |
5月12日 | 岐阜県各務原市の夫婦、別姓婚姻届不受理処分の取り消しを求める不服申立書を提出[316]。 |
6月23日 | 別姓婚姻届不受理処分の取り消しを求める不服申立を岐阜家裁、却下[317]。 |
- 1990年代
年月日 | 出来事 |
---|---|
1991年 | 1月29日法制審議会、婚姻・離婚制度全般の改正に関する論議を開始[307]。 |
5月30日 | 婦人問題企画推進本部、2000年に向けての新国内行動計画第一次改訂において、夫婦の氏の法制の見直しを掲げる[307]。 |
1992年10月14日 | 東京都江東区議会、選択的夫婦別氏導入を求める請願を可決[242][278]。 |
12月 | 1日法務相民事局参事官室「婚姻及び離婚制度の見直し審議に関する中間報告(論点整理)」、夫婦同氏制度と別氏を許容する制度との対比[9]。 |
12月 | 4日東京都新宿区議会、選択的夫婦別氏を求める趣旨の請願、可決[242][278]。 |
1993年 | 9月20日埼玉県大宮市(現さいたま市)議会、選択的夫婦別氏を求める請願可決[242][278]。 |
11月19日 | 国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟、東京地裁、棄却[318]。 |
1994年 | 7月12日法務省民事局参事官室「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」A案B案C案の3案が俎上に[9]。 |
1995年 | 8月26日法制審議会民法部会、子の氏は婚姻時に統一するA案を軸にまとまる[319]。 |
9月12日 | 法務省民事局参事官室「婚姻制度の見直し審議に関する中間報告」[82] |
1996年 | 1月16日法制審議会民法部会、「民法改正要綱案」決定[320]。 |
2月26日 | 法制審議会、民法の一部を改正する法律案要綱[321]を法相に答申。 |
3月22日 | 徳島県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書を提出[322]。 |
6月18日 | 長尾立子法務大臣、法案提出を断念。埼玉県新座市、市職員の旧姓使用を4月に遡って実施[323]。 |
6月20日 | 茨城県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書提出[322]。 |
7月12日 | 千葉県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書提出[322]。 |
10月25日 | 日本弁護士連合会、選択的夫婦別氏並びに非嫡出子差別撤廃を求める決議[324]。 |
1997年 | 3月13日民主党、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[9]。 |
3月14日 | 長崎県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書提出[322]。 |
3月27日 | 法学者260人「選択的夫婦別姓制度の導入と婚外子相続分の平等化の実現を求めるアピール」[242] |
6月 | 5日社民、さきがけ、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[9]。 |
6月 | 6日平成会、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[9]。 |
9月29日 | 熊本県議会、選択的夫婦別氏に反対する意見書を提出[322]。 |
1998年 | 3月27日国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟、東京高裁、和解成立[307]。 |
6月 | 8日超党派野党(平和・改革、共産、社民、さきがけ)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[85][9]。 |
7月25日 | 政府、女子差別撤廃条約実施状況第4回報告、選択的夫婦別氏を「引き続き検討」[325]。 |
1999年 | 6月23日男女共同参画社会基本法施行[307]。 |
12月10日 | 超党派野党(民主、共産、社民、さきがけ)、衆参両議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[85][9]。 |
- 2000年代
年月日 | 出来事 |
---|---|
2000年 | 1月20日超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[9]。 |
9月26日 | 男女共同参画審議会答申において、夫婦同氏制など家族に関する法制の見直しを提言[307]。 |
10月31日 | 超党派野党(民主、共産、社民、無所属の会)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[85][9]。 |
2001年 | 3月29日女性取締役通称使用訴訟、人格権侵害として慰謝料を認める。大阪地裁[326]。 |
5月 | 8日民主党、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[9][327]。 |
5月10日 | 超党派野党(民主、共産、社民、さきがけ)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[85][9]。 |
7月 | 3日千葉県議会、「民法改正法案の採択を求める意見書」を提出[322]。 |
6月20日 | 公明党、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[9][88]。 |
10月 | 1日国家公務員の旧姓使用が可能に[328]。 |
10月11日 | 内閣府男女共同参画会議基本問題専門調査会、「選択的夫婦別姓制度に関する審議の中間まとめ」発表[328]。 |
10月11日 | 愛知県議会、「選択的夫婦別姓制度導入の検討についての意見書」を可決[329]。 |
11月13日 | 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[9]。 |
11月13日 | 自民党法務部会に法務省「選択的夫婦別氏制」民法改正試案および反対議員作成の通称使用を認める戸籍法改正案が提示[9]。 |
2002年 | 4月10日自民党法務部会に例外的夫婦別氏制度の法務省試案が提示[9]。 |
7月24日 | 自民党法務部会に例外的に夫婦の別姓を実現させる会が法案を提示[93][94][95][96][9]。 |
9月13日 | 政府、女子差別撤廃条約実施状況第5回報告、選択的夫婦別氏「制度の導入に向けて努力」[330]。 |
2003年 | 5月27日超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[9]。 |
7月 | 8日女子差別撤廃条約実施状況第4回・第5回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終コメント、「夫婦の氏の選択などに関する、差別的な規定を依然として含んでいることに懸念を表明する」[331]。 |
2004年 | 3月11日自民党、職業上の理由などで必要な場合に家庭裁判所の許可を得て別姓を認める改正案の国会提出を見送る[332][333]。 |
5月14日 | 超党派野党(民主、共産、社民)、衆参両議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[85][9]。 |
2005年 | 3月30日超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[85][9]。 |
2006年 | 3月20日パスポートに旧姓を併記し得る基準が緩和され、学者や記者だけでなく、「職場で旧姓使用が認められており、業務により渡航する者」も可能となる[334]。 |
4月25日 | 別姓婚姻届不受理処分の撤回を求める不服申立て、東京家裁、却下[335][336]。 |
5月31日 | 超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[337][85]。 |
6月 | 8日超党派野党(民主、共産、社民)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[85]。 |
2007年 | 5月18日超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[9]。 |
2008年 | 4月22日超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に民法改正案提出[338][85][9]。 |
4月30日 | 政府、女子差別撤廃条約実施状況第6回報告、「選択的夫婦別氏制度について、国民の議論が深まるよう引き続き努めている」[267] |
2009年 | 4月24日超党派野党(民主、共産、社民)、参議院に民法改正案を提出[85]。 |
8月 | 7日女子差別撤廃条約実施状況第6回報告に対する国連女子差別撤廃委員会最終見解、「夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定が撤廃されていないことについて懸念を有する」[339] |
- 2010年代
年月日 | 出来事 |
---|---|
2010年 | 2月 5日創生「日本」(会長・安倍晋三)、夫婦別姓反対の運動方針を採択[307]。 |
2月19日 | 法務省政策会議で、選択的夫婦別氏の導入を盛り込んだ民法改正案が提示[83]。 |
3月24日 | 岩手県議会、「夫婦別姓制度の導入及び婚外子相続差別の撤廃のための民法の一部改正を求める意見書」を提出[340]。 |
2011年 | 2月14日男女5人、違憲を争い選択的夫婦別氏を求める国家賠償提訴、東京地裁[341][342]。 |
2月24日 | 別姓婚姻届3度提出、不受理処分の撤回を求め、却下、東京地裁[343][342]。 |
2013年 | 5月29日男女5人、違憲を争い損害賠償請求、棄却、東京地裁[344][345]。 |
6月 | 3日旧姓通称使用訴訟、元教諭と神奈川県の和解成立[307]。 |
9月10日 | 別姓婚姻届訴訟、却下、最高裁[307]。 |
12月 | 4日非嫡出子の相続分が嫡出子の半分とする規定を削除する法改正成立[13]。 |
2014年 | 3月28日男女5人、控訴棄却、東京高裁[346]。 |
6月23日 | 日本学術会議が、提言「男女共同参画社会の形成に向けた民法改正」において選択的夫婦別氏制導入を提案[10][347]。 |
9月 | 5日第2次安倍改造内閣の松島みどり法務大臣は就任直後の会見で、旧姓使用など現実的な運用の改善を検討する意向[348][96]。 |
2015年 | 2月15日改正商業登記規則が施行され、役員登記において旧姓の併記を行うことが認められた[349]。 |
2月18日 | 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷は、審理を大法廷に回付し、憲法判断される[350]。 |
6月12日 | 超党派野党(民主、共産、社民、および無ク・無所属議員)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[351][352]。 |
12月16日 | 事実婚の夫婦合わせて5人が「夫婦別姓を認めない民法の規定は憲法違反」として、日本国政府に対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁判所大法廷、棄却[353]。ただし裁判官15人のうち、5人は違憲判断[354][355][356][357][358]。 |
12月25日 | 第4次男女共同参画基本計画決定。法改正について「司法の判断を踏まえ、検討を進める」[359] |
2016年 | 3月 7日国連女性差別撤廃委員会が日本に対し、「過去の勧告が十分に実行されていない」「実際には女性に夫の姓を強制している」として、民法改正を求める再度の勧告[264]。 |
5月12日 | 超党派野党(民進、共産、社民、生活)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[360][87]。 |
6月 | 3日東京都町田市の女性教諭が旧姓使用を求め勤務先の学校法人を提訴[269]。 |
10月11日 | 町田市の女性教諭による旧姓使用を求める裁判で、東京地裁は棄却[注釈 54][270]。 |
2017年 | 3月17日町田市の女性教諭による旧姓使用を求める裁判で和解成立。旧姓使用を認める内容[271]。 |
3月30日 | 総務省、「職員が旧姓を使用しやすい職場環境づくりの推進について」事務連絡[359]。 |
6月 | 6日「女性活躍加速のための重点方針2017」、マイナンバーカード、旅券、銀行口座への旧姓使用拡大を明記[359]。 |
7月 | 3日最高裁、裁判所職員の旧姓使用に関する通達。9月1日より可能に[359]。 |
7月 | 5日男女共同参画局、全国銀行協会に対し銀行口座等の旧姓使用の協力を要請[359]。 |
7月28日 | 特許庁、全職員の旧姓使用に関する通達。9月1日より可能に[359]。 |
8月31日 | 国の行政機関における職員旧姓使用に関する各府省庁官房長等申し合わせ[359]。 |
2018年 | 1月 9日ソフトウエア開発会社社長ら男女4人、国際結婚と異なり日本人同士の結婚で夫婦別氏が選択できないのは「法の下の平等」を定めた憲法に反するとして国家賠償提訴[361]。 |
3月14日 | 東京と広島の事実婚のカップル4組が、東京家裁、同立川支部、および広島家裁に別姓の婚姻届の受理を求める審判の申し立て[362][363]。 |
5月10日 | 東京と広島の事実婚当事者らが、同3か所に、別姓の婚姻届が受理されず法律婚ができないのは違憲だとして、国家賠償提訴[364][365]。 |
6月14日 | 超党派野党(立憲、国民、無所属の会、共産、自由、社民)、衆議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案を提出[86][366][366][367]。 |
6月18日 | 国外で別氏で結婚した夫婦であることの確認を求め、東京地裁に国家賠償提訴[368]。 |
6月19日 | 超党派野党(立憲、共産、希望の会(自由・社民)、沖縄の風)、参議院に選択的夫婦別氏を認める民法改正案提出[369]。 |
8月10日 | 東京の再婚・連れ子の弁護士夫妻が、連れ子再婚を想定しない現行法について東京地裁に国家賠償提訴[370]。 |
2019年 | 3月15日三重県議会、選択的夫婦別氏の法制化を求める意見書を可決[272]。 |
3月25日 | ソフトウエア開発会社社長ら男女4人による選択的夫婦別姓を求める訴訟棄却、東京地裁[371]。 |
4月 | 1日京都府の弁護士による役員登記に関する審査請求、棄却、京都地方法務局[372]。 |
6月 | 3日超党派野党(立憲、共産、社民)、衆議院に同性婚を認める民法改正案提出[124]。 |
6月18日 | 「女性活躍加速のための重点方針2019」国家資格等における旧姓使用拡大を明記[359]。 |
6月19日 | 東京都議会「選択的夫婦別姓の法制化を求める請願」可決[273]。国への意見書提出は見送り[373]。 |
7月21日 | 参議院選挙で選択的夫婦別氏が争点の一つに[279][280][281]。 |
9月14日 | 第1次選択的夫婦別姓訴訟の原告、死去[359]。 |
9月30日 | 再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟、棄却、東京地裁[374]。 |
10月 | 2日東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁における事実婚当事者3名による訴訟、棄却、東京地裁[375]。 |
10月25日 | 大阪府議会、選択的夫婦別姓制度の法制化に関する意見書、可決[275]。 |
11月 | 5日住民票、マイナンバーカードへの旧姓併記開始[359]。 |
11月14日 | 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁立川支部における事実婚当事者6名による訴訟、棄却[376]。 |
11月19日 | 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、広島地裁における訴訟、棄却[377]。 |
12月 | 1日運転免許証への旧姓併記開始[359]。 |
- 2020年代
年月日 | 出来事 |
---|---|
2020年 | 1月22日衆院代表質問で国民民主党代表の玉木雄一郎が選択的夫婦別氏の導入を求めたところ、自民党の女性議員から、それなら結婚しなくていい、との趣旨のヤジが飛び、波紋[378][379]。 |
2月14日 | 選択的夫婦別氏を考える超党派国会議員勉強会に与野党議員約40人が出席[282]。 |
2月26日 | ソフトウエア開発会社社長ら男女4人による訴訟、棄却、東京高裁[380]。 |
2月27日 | 選択的夫婦別氏を求める超党派集会に野党4党首、公明党副代表出席[381]。 |
3月 | 6日自民党女性議員による議連「女性議員飛躍の会」、選択的夫婦別氏に関する勉強会[262]。 |
3月23日 | 滋賀県議会、「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書」を可決[382]。 |
3月25日 | 神奈川県議会、自民党会派提案の選択的夫婦別氏の議論を求める意見書、可決[299]。 |
3月26日 | 再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟、棄却、東京高裁[383]。 |
6月19日 | 自民党幹事長代行の稲田朋美が選択的夫婦別氏に理解を示したことをきっかけに、自民党筆頭副幹事長の高鳥修一らは稲田が会長を務める伝統と創造の会から離反し、保守団結の会を発足させた[384]。 |
7月 | 1日「女性活躍加速のための重点方針2020」で、地方議会における旧姓使用の調査実施を明記[359]。 |
9月16日 | 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、広島高裁における訴訟、棄却[385]。 |
10月 | 8日自民党政調会長の下村博文が、選択的夫婦別氏について「議論していかなければいけない重要なテーマだ」と表明[386]。 |
10月 | 9日男女共同参画担当相の橋本聖子が、選択的夫婦別氏導入に向けた議論に取り組む姿勢を表明[387]。 |
10月 | 9日公明党の女性委員会(委員長:公明党副代表の古屋範子)が、首相の菅義偉に選択的夫婦別氏導入などの内容を含む提言「真の男女共同参画社会の実現へ すべての女性が安心して希望を持って生きられる社会をめざして」を申し入れ[388]。 |
10月20日 | 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁の事件の控訴審で、東京高裁が控訴を棄却[389]。 |
10月23日 | 東京と広島の事実婚当事者による訴訟のうち、東京地裁立川支部の事件の控訴審で、東京高裁が控訴を棄却[390][391]。 |
11月 | 6日首相の菅義偉は、以前に選択的夫婦別氏を推進する立場で議員活動をしていたことを認めつつ、そのように主張してきたことに「責任がある」と述べた[392]。 |
11月11日 | 政府、第5次男女共同参画会議の策定に向けた答申の中で、選択的夫婦別氏に関し「国会の議論の動向を注視しながら検討を進める」と記載[283][284]。 |
11月13日 | 男女共同参画担当相の橋本聖子、男女共同参画会議の答申に対し「深刻な少子高齢化を食い止めるために、非常に重要で配慮すべき」と表明[393]。 |
11月13日 | 自民党の稲田朋美が衆議院法務委員会で、結婚後も旧姓使用を続けられる制度の新設を提案[120]。 |
11月24日 | 自民党有志議員、選択的夫婦別氏制導入に向けた「氏の継承と選択的夫婦別氏制度に関する有志勉強会」立ち上げ[285][394]。 |
11月25日 | 自民党の選択的夫婦別氏制反対派議員を中心に「『絆』を紡ぐ会」立ち上げ[286]。 |
11月26日 | 自民党の保守系議員による「保守団結の会」、選択的夫婦別氏に関する勉強会[395]。 |
11月26日 | 自民党女性活躍推進特別委員会委員長の森雅子ら、選択的夫婦別氏をめぐり「真正面から対応していくこと」を求める提言を首相の菅義偉に提出[287]。 |
12月 | 1日自民党女性活躍推進特別委員会、選択的夫婦別氏制の検討開始[288]。 |
12月 | 9日事実婚夫婦による3件の選択的夫婦別氏を求めた家事審判で最高裁大法廷回付、決定[396]。 |
2021年 | 1月29日法学者や弁護士ら1022人、選択的夫婦別氏の早期実現を求める共同声明[397][398][399]。 |
3月17日 | 同性婚訴訟、違憲判断、札幌地裁[127]。 |
3月19日 | 滋賀県議会、選択的夫婦別姓を求める意見書、可決[400]。岡山県議会、選択的夫婦別姓反対の意見書、可決[401]。 |
3月25日 | 自民党内の選択的夫婦別氏推進派議員による「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」が発足[290]。 |
3月25日 | 岩手県議会、選択的夫婦別姓を求める意見書、可決[402]。 |
4月 | 1日自民党内の選択的夫婦別氏慎重(反対)派議員による「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」が発足[403]。 |
4月21日 | 国外で別氏で結婚した夫婦であることの確認を求める訴訟、請求は棄却するも原告夫婦の婚姻関係を有効とする判決、東京地裁[404][405]。 |
6月 | 7日東京都議会、選択的夫婦別姓について議論を求める意見書、可決[274]。 |
6月23日 | 事実婚夫婦による4件の選択的夫婦別氏を求めた家事審判のうち3件で特別抗告を棄却、申し立て却下の原審確定、最高裁[295]。 |
6月24日 | ソフトウエア開発会社社長ら男女4人による訴訟、上告棄却、最高裁[297][298]。 |
6月25日 | 事実婚夫婦による4件の選択的夫婦別氏を求めた家事審判のうち残る1件、特別抗告、棄却、最高裁[296]。 |
6月25日 | 東京の再婚・連れ子の弁護士夫妻による訴訟、上告棄却、最高裁[296]。 |
7月 | 2日埼玉県議会および北海道議会、選択的夫婦別姓について議論を求める意見書、可決[406]。 |
10月 | 1日特許出願における発明者氏名の旧氏併記が可能に[407]。 |
10月 | 8日香川県議会、選択的夫婦別姓について議論を求める意見書、可決[301]。 |
10月31日 | 衆議院選挙で選択的夫婦別氏が争点の一つに[294]。 |
訴訟
選択的夫婦別姓制度導入をめぐっては、1989年、2006年に家裁への不服申し立て[249][336]、2011年に国家賠償訴訟が提議され、訴えは退けられた[354]。2018年1月に戸籍法規定に関する国家賠償訴訟、同年5月に事実婚夫婦による国家賠償訴訟、同年6月に、外国で結婚した日本人別氏夫婦による婚姻を確認する訴訟、同年8月に再婚同士でそれぞれ連れ子のいる夫婦の国家賠償訴訟、と関連した訴訟が起きている[408]。
また、通称として旧姓を使用する権利を求めた民事裁判として、国立大学教授夫婦別姓通称使用訴訟(1993年東京地裁判決)、女性取締役通称使用訴訟(2001年3月判決)、神奈川元高校男性教諭通称使用訴訟(2013年横浜地裁和解)、女性教諭通称使用訴訟(2016年東京地裁判決)がある。また、他にも旧姓での役員登記に関する審査請求(2019年裁決)がある。
選択的夫婦別氏訴訟
1989年家事審判
1989年5月12日、岐阜県各務原市の夫婦が、市が別氏の婚姻届を受理しなかったのは基本的人権の侵害であり違憲だとして、岐阜家庭裁判所に不服申立書を提出[409]。同家裁は同年6月23日、「夫婦の同姓は一体感を高める上で役立ち、第三者に夫婦であることを示すためには必要」として、申立て却下[249][56][316][317][336]。
2006年家事審判
2006年4月25日、東京家裁は、別姓婚姻届不受理取り消しの申立てに対し「立法政策の問題であることは確定した解釈」だとして却下[336][410]。
2011年訴訟
2011年(平成23年)2月に、元高校教師らが、民法750条の夫婦同氏規定が憲法13条、14条1項、24条1項及び2項に違反するとして訴えた[411][412][413]。「第一次夫婦別姓訴訟」と呼ばれる[414]。
2015年(平成27年)12月16日、最高裁判所大法廷は「名字が改められることでアイデンティティが失われるという見方もあるが、旧姓の通称使用で緩和されており、日本国憲法に違反しない」「我が国に定着した家族の呼称として意義があり、呼称を1つに定めることには合理性が認められる」として、現在の民法規定を合憲とし訴えを棄却[415][416][417]。男性裁判官10名[注釈 55]が合憲とした一方、女性裁判官の3名全員を含む5名[注釈 56]が違憲として反対した。反対意見を出した山浦善樹裁判官は、立法の不作為を理由に国の損害賠償責任も認めた[354][418]。多数意見は氏の変更で「仕事上の不利益」「アイデンティティーの喪失感」などが生じることは一定程度認めており、裁判長寺田逸郎は補足意見で「人々のつながりが多様化するにつれて、窮屈に受け止める傾向が出てくる」と指摘[419]。選択的夫婦別氏が「合理性がないと断ずるものではない」とするとともに「制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」として立法に委ねた[420][421]。
2018年1月訴訟
2018年1月9日、ソフトウエア開発会社サイボウズ社長の青野慶久、女性1名、事実婚の男女の計4名[422]が、戸籍法上国際結婚では同氏か別氏かを選べるのに、日本人同士では選べないのは憲法上の「法の下の平等」に反すると提訴[361][423][424][425][108][426][427]。原告らはこの訴訟を「ニュー選択的夫婦別姓訴訟」と呼んでいる[428]。
2019年3月25日、東京地裁は原告の請求を棄却[429][371][430]。2020年2月26日、東京高裁が原告の控訴を棄却[380]。2021年6月24日、最高裁が原告の上告を棄却した[297][298]。
2018年3月家事審判
2018年3月、東京都と広島県の事実婚のカップル4組は、婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」の欄で双方の氏の欄にチェックを記入して役所に提出し不受理となったため、東京家裁、同立川支部、広島家裁の3カ所で、受理を求める家事審判を申し立てた[365][364][362][363][431][432]。2019年3月28日、東京家裁と立川支部は申し立てを却下[433]。2020年12月9日、これらのうち3件の特別抗告審のそれぞれについて最高裁大法廷への回付が決定[396][434]。2021年6月23日、最高裁大法廷は抗告を棄却し、申し立てを却下した原審が確定した[295][435]。決定は15人の裁判官の内11人[注釈 57]の多数意見。4人[注釈 58]は違憲判断だった[436]。同月25日、残る1組についても特別抗告を棄却する決定[296][437]。これに対し、同年7月26日、世田谷区の事実婚夫婦が再審申し立てを行った[438]が、同年9月17日、最高裁第三小法廷、棄却[439]。
この決定に関連して、2021年10月の最高裁裁判官の国民審査において、この最高裁決定において夫婦別姓を認めない民法の規定を「合憲」とした裁判官の罷免を求める率が他の裁判官よりも高かった、と報道されている[440][441][442]。
2018年5月訴訟
2018年5月10日、夫婦別氏の婚姻届が受理されず法律婚ができないのは違憲だとして、前節3月訴訟原告の一部を含む事実婚当事者が国に損害賠償を求め、同3か所の地裁で提訴[364][365][443]。「第二次夫婦別姓訴訟」と呼ばれる[444]。
この訴訟では、同氏を選べば法律婚ができるが、別氏を選ぶとできないのは「信条」によるカップル間の差別であり、憲法14条違反だとして、民法・戸籍法の違憲性を主張[364][445][432]。また、法律婚に限定された法益権利・利益(共同親権、相続権、税法上の優遇措置、不妊治療など)が与えられず、夫婦として社会的承認も得られないなど差別がある、両性の実質平等が保たれていないことが憲法第24条、国際人権規約(自由権規約)と女性差別撤廃条約に違反していることも問う、と主張[432]。原告は異なるが、弁護団は2011年訴訟と同じ弁護士が中心となって担当した[446]。
2019年10月2日、東京地裁は請求を棄却[375][447]。11月14日、立川支部[376][448]、19日広島地裁も請求棄却[377][449][447][448]。2020年9月16日、広島高裁が広島の事件の原告控訴を棄却[385]、同26日に原告が上告[450]。同年10月20日、東京地裁判決に対する控訴審で東京高裁が控訴を棄却[389]。同23日、同立川支部の事件の控訴審で東京高裁が控訴棄却[390]。いずれの原告も最高裁へ上告[391]。
2018年6月訴訟
2018年6月18日、1997年にアメリカ合衆国ニューヨーク市で適法に成立した夫婦別氏婚が日本の戸籍に反映されないのは立法の不備であり憲法24条違反に違反するとして、映画監督の想田和弘と舞踏家で映画プロデューサーの柏木規与子の夫妻が、国を相手取り婚姻関係の確認と慰謝料を求めて東京地方裁判所に提訴[451][368][452]。原告は当訴訟を「夫婦別姓確認訴訟」と呼んでいる[453]。2021年4月21日、東京地裁は請求を棄却[404]した一方で、原告夫婦が別姓のまま婚姻関係にあることについては認める判決[405]。原告は控訴せず判決は確定し、今後は判決で示された家裁への申し立てを検討[454]。
2018年8月訴訟
2018年8月10日、東京都文京区の弁護士と女性が、民法750条の夫婦同氏強制は初婚しか想定しておらず、立法府の法改正懈怠により精神的苦痛を受けたとして、国に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告夫婦双方に元配偶者との間の子(連れ子)がいるが、現民法は子どもへの影響等を想定しておらず法改正が必要と主張[370]。これに対し、2019年9月30日、東京地裁は、最高裁大法廷判決以後の議論の高まりは認めながらも、憲法違反といえるような事情の変化は認められないとして棄却[455][374]。同10月11日、東京高裁に控訴[456]。2020年3月26日、同棄却[383]。原告は上告の方針[457]。2021年6月25日、最高裁で上告が棄却され、敗訴が確定[296]。
旧姓通称使用訴訟
国立大学女性教授旧姓通称使用訴訟
1988年、国立大学の女性教授が通称として旧姓を使用する権利を求め、訴訟を起こした[256]。1993年に東京地裁は判決で、通称名も「人が個人として尊重される基礎となる法的保護の対象たる名称として、その個人の人格の象徴となりうる可能性を有する」が、同一性を把握する手段として戸籍名の使用は合理性があり、通称名が国民生活に根づいていない、また大学は業績の公表などで通称使用を配慮しており、違法性はないとして棄却[458][459][460]。控訴の後、1998年、東京高裁にて旧姓使用を認める和解が成立した[461]。国は研究報告や論文などで通称使用を認め、2001年には公務員の通称使用が認められた[256]。
女性取締役旧姓通称使用訴訟
2001年3月29日、被告の会社が女性取締役に対し夫が当該会社を退職したことに伴い支障がなくなったことを理由に婚姻氏を名乗ることを命じたのは人格権の違法な侵害だったとして、精神的苦痛に対する慰謝料が認められた。大阪地裁[326][462]。
男性元高校教諭旧姓通称使用訴訟
2012年4月、男性元高校教諭が教員異動の新聞発表に際して旧姓の通称が認められず、精神的苦痛を被ったとして神奈川県を提訴(横浜地裁)。2013年1月、神奈川県は旧姓使用取扱要綱を改正し、同年6月に和解が成立[463][464][326]。
女性教諭旧姓通称使用訴訟
2016年には、結婚後に職場で旧姓の通称使用を認めないのは人格権の侵害だとして、女性教諭が勤務先の学校法人を東京地裁に提訴[269]。東京地裁は同年に「旧姓を戸籍姓と同じように使うことが社会に根付いているとまではいえず、職場で戸籍姓の使用を求めることは違法ではない」として請求を棄却[270][465]。その後控訴審で高裁より和解勧告が出され、2017年に学校側が、時間割などの文書や日常的な呼び方で旧姓の使用を全面的に認める形で和解が成立[271]。
京都府弁護士役員登記審査請求
2018年に京都府の弁護士が、京都地方法務局に対し、旧姓での役員登記申請を却下したのはプライバシー権の侵害だとして却下処分の取り消しを求めた審査請求で、同局は2019年、却下は適法として請求を棄却[372][466]。
賛否の状況
世論調査
内閣府世論調査
内閣府は、1996年から約5年ごとに「家族の法制に関する世論調査」を実施している[467]。
調査 選択制の法制化に賛成[注釈 59] 普遍的な通称使用の法制化に賛成[注釈 60] いずれの法制化にも反対[注釈 61] 1996年6月[468] 32.5% 22.5% 39.8% 2001年5月[469] 42.1% 23.0% 29.9% 2006年12月[470] 36.6% 25.1% 35.0% 2012年12月[471] 35.5% 24.0% 36.4% 2017年12月[472] 42.5% 24.4% 29.3%
- 2012年調査
2012年12月の「家族の法制に関する世論調査」(回収率60.8%)では、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」と答えた者の割合が36.4%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」と答えた者の割合が24.0%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」と答えた者の割合が35.5%だった[471][注釈 62]。別姓に「反対」の回答は、男性の60歳代、70歳以上、女性の70歳以上で多く、「別姓容認」は男性の40歳代、女性の20 - 40歳代で多く、女性の20歳代では半数を超えた(53.3%)。若い世代は賛成が多数派であった[471][475]。夫婦の姓が違うと「子供にとって好ましくない影響があると思う」は67.1%、「影響はない」が28.4%だった[476]。結婚による改姓については、「名字(姓)が変わったことで、新たな人生が始まるような喜びを感じると思う」が47.5%、「相手と一体となったような喜びを感じると思う」が30.8%、「名字(姓)が変わったことに違和感を持つと思う」が22.3%[471]。「名字(姓)を変えたくないという理由で正式な夫婦となる届出をしない内縁の夫婦もいると思う」が6割を超えた[471]。
- 2017年調査
2017年11月-12月に内閣府が全国の男女5000人を対象に行った5回目の世論調査(回収率は59.0%)では、選択的夫婦別氏導入に向けて民法を改正すべきかを問うと「改めて(改正して)も構わない」とする賛成が42.5%で、「必要はない」とする反対(29.3%)を上回った[472][467][477][478][479]。「旧姓を通称としてどこでも使えるように法律を改めてもよい」は24.4%、「わからない」は3.8%だった[472]。反対の割合は過去最少、賛成の割合は過去最高となった[478]。世代別で見ると、60代までは賛成が上回った[467]。特に、18-39歳では賛成が5割を超えた[477]。一方、70歳以上では反対が52.3%と過半数を占めた[467]。法律が変わって旧姓を名乗ることができるようになれば利用したいかとの問いでは「希望する」が19.8%、「希望しない」が47.4%。別氏を希望する人は一人っ子で最も多く31.7%だった[477]。双方が名字を変えたくないという理由で正式な夫婦となる届け出をしない人がいると思うかとの問いには「いると思う」が67.4%(前回比6.1ポイント増)だった[477]。
その他政府系機関調査
- 1976年の総理府「婦人に関する世論調査」では、「夫婦が別々の姓を名のることを認めた方がよいと思う」が20.3%、「認めない方がよいと思う」が62.1%[480]。
- 1977年、内閣総理大臣官房婦人問題担当室による「婦人問題に関する有識者調査」では、賛成43.4%、反対45.8%だった[481]。
- 総理府の「女性に関する世論調査」では、1987年実施の調査で「夫婦別姓をみとめる方がよい」に対し賛成は13%、1990年実施の調査で同設問に対し賛成29.5%だった。1994年の総理府「基本的法制度に関する世論調査」では「選択的夫婦別姓制度」に対し賛成が27.4%であった[134][注釈 63]。
- 2018年の国立社会保障・人口問題研究所による既婚女性に対する「全国家庭動向調査」では、「夫、妻とも同姓である必要はなく、別姓であってもよい」に既婚女性の50.5%が賛成だった[483]。既婚女性を対象に5年ごとに行われているもので、1993年の調査では賛成は35.4%、1998年は39.0%、2003年は46.0%、2008年は42.8%、2013年は41.5%だった[484]。
大手メディア等調査
- 1994年9月27日の朝日新聞の調査では、賛成58%、反対34%。要綱試案A案には賛成51%[481]。
- 2009年の産経新聞の調査では賛成48%、反対41%[485][75]。
- 2009年の毎日新聞の調査では、賛成50%、反対42%[486][75]。
- 2009年の朝日新聞の10月の調査では、賛成48%、反対41%[487][75]。
- 2009年の朝日新聞の12月の調査では、賛成49%、反対43%[488][75]。
- 2009年の読売新聞による国会議員意識調査では、賛成43%、反対40%[489][75]。
- 2014年の毎日新聞の調査では、賛成は52%、反対は40%[490]。
- 2015年の日本経済新聞調査によれば、働く既婚女性の77%、仕事上の旧姓使用者の83%が、選択的夫婦別氏に賛成[491]。
- 2015年11月の朝日新聞の調査では、賛成が52%、反対が34%[492]。
- 2015年のNHKによる「夫婦別姓に関する世論調査」(RDD追跡法)では、夫婦は「同じ名字 名乗るべき」に対し、賛成が45.9%、反対が49.7%。年代別では、反対が賛成を上回ったのは70代以上のみで、50代以下では賛成が6割を超えた[493][494][495]。
- 2015年の毎日新聞の世論調査では賛成は51%、反対は36%。また、73%が同姓を、13%が別姓を選ぶとした[496][497]。
- 2015年12月の産経新聞社とフジニュースネットワークの合同世論調査で、賛成は51.4%、反対42.3%であり、選択できる場合に別氏を希望するかについては、13.9%、20代では21.1%が「希望する」だった[498]。
- 2015年12月の朝日新聞による世論調査(固定電話方式)では賛成49%、反対40%だった[499]。
- 2016年の読売新聞世論調査(郵送方式)では、賛成が38%、反対が61%。賛成する理由のトップは「夫婦別姓を認めることは時代の流れだから」の48%、反対する理由のトップは「子どもと親で姓が異なることに違和感があるから」の75%だった[500]。
- 2016年3-4月の朝日新聞による世論調査(郵送)では、賛成47%、反対46%[499]。
- 2017年の朝日新聞世論調査では、賛成が58%で、反対が38%。50代以下では賛成が6割を超える一方、70代以上では反対が52%を占めた[501]。
- 2019年の毎日新聞・埼玉大共同調査では、「戸籍上も通称も夫婦は同じ姓を名乗る方がよい」が36%、「戸籍上は夫婦で同じ姓を名乗り、旧姓を通称として使えるようにした方がよい」が27%、「それぞれが戸籍上でどちらの姓を名乗るか選べるようにすればよい」が35%。30歳未満では過半数が選択的夫婦別氏を支持、70歳以上では61%が反対[502]。
- 2019年11、12月の日本経済新聞の調査では、働く女性の74.1%が賛成。反対は25.9%[503][504]。
- 2020年1月の朝日新聞の世論調査(固定・携帯)では、賛成が69%、反対が24%。自民党支持層では賛成が63%、反対が31%。また、女性では賛成が71%、男性では賛成が66%。特に50代以下の女性は8割以上が賛成[499]。
- 2020年3月-4月の朝日新聞と東京大学谷口研究室による共同調査では、賛成が57%、どちらともいえない、が25%、反対が17%。自民支持層でも、賛成が54%、どちらともいえないが25%、反対が21%で、自民支持層では3年前の調査と比べ賛成が25%増加した[505]。
- 2020年10月の棚村政行(早稲田大学教授)と民間団体による調査(対象7000人)によると、賛成が71%、反対が14%。「別姓にできなかったことで結婚をあきらめたことや事実婚にしたことがある」は94人いた。都道府県別の調査で最も賛成割合の高かったのは沖縄、低かったのは愛媛[506][507][508][509]。
- 2020年10~11月の読売新聞、早稲田大学共同世論調査(郵送法、3000人対象、2022人回収)では、「法律を改正して、夫婦別姓を認めるべきだ」に対し、賛成、あるいはどちらかと言えば賛成は56%、どちらかと言えば反対、あるいは反対は43%[510]。
- 2020年12月に毎日新聞、社会調査研究センターが行った調査では、賛成が49%、反対が24%[511]。
- 2021年1月に時事通信が行った調査では、賛成は50.7%、反対は25.5%。自民支持層では賛成41.5%、反対36.9%、公明党支持層では、賛成57.4%、反対27.7%[512]。
- 2021年3月26-28日のNHK放送文化研究所の調査では、「同じ名字か、別の名字か、選べるようにすべきだ」が56.9%、「夫婦は、同じ名字を名乗るべきだ」が39.7%[513][514]。
- 2021年3月29日の日本経済新聞社の世論調査では、賛成が67%、反対が26%。18~39歳では84%、40~50代では74%、60歳以上では55%が賛成。自民支持層での賛成は64%、立憲民主党支持層での賛成は70%[515]。
- 2021年3-4月の共同通信による調査では、選択的夫婦別姓を認めるべきだとの考えに「どちらかといえば」も含め賛成が計60%、反対は計38%[516]。
- 2021年4月のJNN世論調査では、賛成63%、反対26%[517]。
- 2021年4月の朝日新聞世論調査では、法律改正に賛成が67%、反対が26%[518]。
- 2021年4月19日の時事通信世論調査では、賛成が59.7%、反対が24.1%[519]。
- 2021年4月の北海道新聞社による全道世論調査では、賛成が68%、反対が24%[520]。
政治状況
2019年の参議院選挙[279]や2021年の自民党総裁選挙[293]、2021年の衆議院選挙[294]において、選択的夫婦別氏が争点の一つであると報道された。一方、望月衣塑子(東京新聞記者)は、2021年10月衆議院選挙について、立憲民主党が掲げた夫婦別姓やジェンダーや多様性といったテーマは多くの有権者にとってまだ重要な争点になっていなかった、と主張している[521]。
国政各政党の状況
- 選択的夫婦別氏制度導入に積極的・賛成している政党
- 公明党: 選択的夫婦別氏導入に積極的[96][522][523]。2001年に民法改正案を衆議院に提出[9]。2002年には党大会重点政策として選択的夫婦別姓導入を掲げ、2005年、2007年、2009年、2010年、2021年には、公約に選択的夫婦別姓制度の導入を挙げている[524][525][29][526][527][528][注釈 64]。
- 2015年に、連立政権の足並みの乱れを生じさせたくないため、自民党を積極的に説得していない、と報道された[530]。
- 立憲民主党: 2017年の衆議院選挙[537][538]、2019年の参議院選挙[539][540][541]、2021年衆議院選挙[542][528]において選択的夫婦別姓の実現を公約として挙げた。2018年には、超党派で民法改正案を衆議院に提出している[366]。
- 国民民主党: 2018年に超党派で民法改正案を衆議院に提出[366]。2019年参議院選挙公約[543][544]、2021年衆議院選挙公約[545][528]において、選択的夫婦別氏実現を挙げている[注釈 65]。
- 日本共産党: 衆参両院において選択的夫婦別氏法案を提出してきた[548]。2003年、2004年、2005年、2007年、2010年、2014年等に発表した政策においても選択的夫婦別姓制度実現を挙げている[524][549][550][注釈 66]。2021年衆議院選挙公約でも選択的夫婦別姓を挙げている[528]。
- 社会民主党: 選択的夫婦別氏導入に賛成[96]。1999年に発表した人権政策大綱でも実現を掲げ、2004年参議院選挙、2007年参議院選挙、2009年衆議院選挙[524]、2009年衆議院選挙[551]、2016年参議院選挙[552]、2017年衆議院選挙[553]、2019年参議院選挙[554]、2021年衆議院選挙[528]等、選挙公約に選択的夫婦別姓制度導入の実現を盛り込んでいる。2018年、超党派での民法改正案の衆議院への提出にも参加[366]。
- 沖縄の風: 2018年に選択的夫婦別氏のための民法改正案を参議院に超党派で共同提出している[555][注釈 67]。
- れいわ新選組: 2021年衆議院選挙では公約として選択的夫婦別姓を挙げている[528][注釈 68]。
- 党内で選択的夫婦別氏への賛否が分かれている政党
- 自由民主党: 野田聖子が2002年に例外的に夫婦の別姓を実現させる会を立ち上げるなど選択的夫婦別氏制導入を目指したが断念[93][94][95][96][注釈 69]。その後自民党は、野党であった2010年の党公約においては選択的夫婦別氏導入反対を掲げた[566][530][567][注釈 70]。2012年の政権公約では民主党の夫婦別姓制度導入法案に反対する、とした[570]。2015年には、党の姿勢として選択的夫婦別氏制度に反対あるいは積極的でないと報道された[96][530][571][注釈 71]。2019年にも同党は選択的夫婦別姓に「後ろ向き」と報道されている[575][注釈 72][注釈 73]。一方、2020年になって、自民党議員を含む与野党超党派による選択的夫婦別姓に関する勉強会や同党女性議員による議連「女性議員飛躍の会」による選択的夫婦別姓に関する勉強会の開催が報道されている[282][262]。同年11月には、選択的夫婦別姓制度導入に賛同する議員を中心に「氏の継承と選択的夫婦別氏制度に関する有志勉強会」が立ち上げられた[285][注釈 74]。一方、同月、反対する議員を中心とする「『絆』を紡ぐ会」も立ち上げられた[286]。また、同月26日には、自民党の女性活躍推進特別委員会委員長の森雅子らが、選択的夫婦別姓をめぐり「真正面から対応していくこと」を求める提言を首相の菅義偉に提出した[287]。2021年3月25日には、賛成派議員による議連「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」が発足[290]。同年4月1日には、選択的夫婦別姓制度制度導入に慎重な(反対する)議員による議連「婚姻前の氏の通称使用拡大・周知を促進する議員連盟」が発足[291]。2021年衆議院選挙では当初の公約原案では選択的夫婦別姓について「具体的な制度のあり方についてさらに検討を進める」という文言があったが、公開された公約ではこの文言は削られた[584]。
- 選択的夫婦別氏制の代替案を主張している政党
- 日本維新の会: 2019年参議院選挙や2021年衆議院選挙の公約において、「同一戸籍・同一氏の原則を維持しながら旧姓使用にも一般的な法的効力を」を掲げている[115][116][528][注釈 75]。
- 過去の政党
- 社会保障を立て直す国民会議: 同会派を含む5野党・会派と市民連合は、共通政策として「選択的夫婦別姓の実現」を掲げた[586]。
- 自由党: 2018年、超党派での選択的夫婦別氏制度導入のための民法改正案の衆議院への提出に参加[366][注釈 76]。
- 民進党: 前身の民主党時代から選択的夫婦別氏制度導入のための民法改正に意欲的だった[589][85][590][591][592][351][352][593]。2001年、2003年、2005年には選挙公約において選択的夫婦別姓導入を掲げている[524]。しかし、民主党政権時には連立政権を組んだ国民新党の反対や党内からの異論があり法案提出には至らなかった[96][594]。維新の党と合流前の2016年2月には、共同で選択的夫婦別姓と再婚禁止期間短縮等を柱とする「民法の一部を改正する法律案」を共同議員立法として登録[595]、民主党から民進党への党名変更時には、党の柱として挙げる「民進党11の提案(共生イレブン)」の中に、選択的夫婦別姓の実現を盛り込んでいる[596][注釈 77]。2016年には、民進党を含む超党派野党4党が選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ民法改正案を衆議院に提出している[360][87]。
- 希望の党: 2017年の結党会見において細野豪志が、選択的夫婦別姓にも取り組む、と述べた[598]。同年衆議院選挙における公約において、選択的夫婦別姓を検討していることが報道された[599]。2018年5月に解党。
- 日本のこころ: 幹事長(当時)の中野正志が選択的夫婦別氏に反対する談話を出すなど、党として反対の立場[600]。
- 維新の党: 党分裂前の2014年の時点では「選択的夫婦別姓について反対」を掲げていた[601]。しかし、2015年の党分裂後の賛否は不明と報道された[96]。さらにその後、2016年2月に民主党と共同で選択的夫婦別姓と再婚禁止期間短縮等を柱とする「民法の一部を改正する法律案」を共同議員立法として登録した[595][注釈 78]。維新の党は2016年3月に『民進党』に合流[602]。
- 国民新党: 2010年に出した政策宣言において、選択的夫婦別氏に対し「反対」としていた[29]。
- 新党さきがけ: 選択的夫婦別氏の民法改正案を、1997年から2001年にかけて、2000年を除き毎年提出していた[9]。
- 新進党: 選択的夫婦別氏法案を議員立法で国会に提出[588]。
地方自治体議会の状況
地方議会からの選択的夫婦別氏に関連する意見書が、2000年7月27日から2020年2月末までの20年間で373件あり、反対意見書も2011年10月までは出されていたが、最高裁判決のあった2015年以降、2020年3月までの全意見書は制度導入を求めるものとなっている[304]。また、2021年10月12日の時点までに298の制度導入を求める意見書が地方議会で可決されている[603][278]。
- 選択的夫婦別姓に賛成する意見書を可決した都道府県議会として、千葉県[322]、愛知県(以上2001年)[604]、岩手県(2010年[605]、2021年[402])、三重県[272]、大阪府[275](以上2019年)、滋賀県(2020年[606]、2021年[400])、神奈川県(2020年)[299][注釈 79]、東京都[274][注釈 80]、埼玉県[300][406]、北海道[607][406]、香川県[301][608](以上2021年)の各議会がある。
- 選択的夫婦別姓に反対する意見書を可決した都道府県議会として、徳島県[322]、茨城県[322]、千葉県[322](以上1996年)、長崎県(1997年)[322]、熊本県(1997年[322]、2021年[609])、岡山県(2021年)[401]の各議会がある。
各種団体の賛否状況
学術団体
- 選択的夫婦別氏導入に積極的・賛成
- 日本学術会議は、選択的夫婦別氏制度導入を提言[10][610]。
- 日本女性学会は夫婦同氏の強制が差別的規定だとして法改正を要望[611]。
- 総合女性史学会[612]は、選択的夫婦別氏制度導入を国会に強く要請している[613]。
職能団体
- 選択的夫婦別氏導入に積極的・賛成
- 日本弁護士連合会は、国会に選択的夫婦別氏の積極審議を求めている[614]。
- 全国労働組合総連合は、ただちに選択的夫婦別氏のための法改正が必要との事務局長談話を発表[615]。
- 全国司法書士女性会は、選択的夫婦別氏制度導入が必要と主張[616]。
- 全国女性税理士連盟は選択的夫婦別氏制度導入を要望し、各党に要望行っている[617][618]。
- 日本女性法律家協会は選択的夫婦別氏制度導入を求めている[619]。
- 日本組織内弁護士協会は2021年、選択的夫婦別姓制度の導入を提言[620][621]。
- 日本跡取り娘共育協会[622]は、選択的夫婦別姓導入を求めている[623]。
政治/社会運動団体
- 選択的夫婦別氏導入に積極的・賛成
- 「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」は、選択的夫婦別氏制法制化を求める市民団体[624][625]。各地方議会への陳情支援、与野党の超党派の勉強会などを行っている[625][626][627][628]。
- NPO法人の「mネット・民法改正情報ネットワーク」は、選択的夫婦別氏を求めて運動[629][630][307]。
- 国連NGO女性団体の「新日本婦人の会」は、選択的夫婦別氏実現を求めている[631][632]。
- 「日本婦人団体連合会」は選択的夫婦別姓の実現を求めている[633][632]。同団体は女性団体や労働組合女性部など23団体から構成される団体。構成団体参加人数は90万人、としている[633]。
- 「実家の名前を継承したい姉妹の会」は、氏の継承問題の解決のため選択的夫婦別氏を求めて運動している[634][635]。
- 「夫婦別姓選択制実現協議会」は、「夫婦別姓のままで法律婚ができるように民法を改正してもらう」活動を行っている。顧問に野田聖子[636][637]。
- 「夫婦別姓選択制をすすめる会」は、1984年に発足した、選択的夫婦別氏の実現を目指す市民団体[638][639][640]。
- 「選択的夫婦別姓を実現する会・富山」は、2011年夫婦別姓訴訟支援者らでつくられた、選択的夫婦別氏のための民法改正を求める団体[641][642][643]。
- 「別姓訴訟を支える会2018」は、夫婦別姓訴訟を支援し、選択的夫婦別氏早期実現を目指す団体[644][645]。
- 「NPO法人選択的夫婦別姓の実現を願う会」は選択的夫婦別氏の実現を目指す団体[646][647]。目黒、群馬、東京西部等に支部がある。夫婦別姓に出来ず困っている人の相談を受ける等の活動を行っている[646]。
- 「別姓を考える会」は宮城県を中心に活動している選択的夫婦別氏を求める団体[648][649][650]。
- 選択的夫婦別氏導入に消極的・反対
- 日本会議は、選択的夫婦別氏導入に反対している[651]。関連国会議員連盟の日本会議国会議員懇談会も、選択的夫婦別姓制度導入への反対運動を行っている[652][653]。また、2001年設立の日本会議女性部「日本女性の会」[654]が、積極的に選択的夫婦別姓への反対運動を行っている[655][656][注釈 81]。2010年には、日本会議は「夫婦別姓に反対し家族の絆を守る国民大会」と題された大規模集会を開催し、複数の国会議員[注釈 82]も参加[655][658]。
- 日本会議には、神社本庁、解脱会、国柱会、霊友会、崇教真光、モラロジー研究所、倫理研究所、キリストの幕屋、仏所護念会、念法真教、新生佛教教団、オイスカ・インターナショナル、三五教等の宗教団体や宗教系財団法人等が参加[659][660]。生長の家本流運動との関係も指摘される[661]。構成団体のうち、特に神社本庁と新生佛教教団は教団単独でも選択的夫婦別姓反対運動を展開している[656][662]。キリストの幕屋は反ジェンダー団体として知られる[656][663][664][656]。(「#宗教団体」および「日本会議」も参照。)
- 日本政策研究センターは、機関誌「明日への選択」などの同団体出版物上などで選択的夫婦別姓反対の論説を掲載している[665][666][667]。設立者・代表の伊藤哲夫は日本会議の常任理事(政策委員)[668][669][670]。
- 「新しい歴史教科書をつくる会」は、他社の公民の教科書が「日本社会と国家を解体するために(選択的)夫婦別姓や外国人参政権を説いている」と主張し、『新しい公民教科書』は「家族解体、国家解体の傾向と闘」っているとしている[671]。
- 親学推進協会会長(当時)の木村治美は、「親学の観点からすれば、(選択的)夫婦別姓は家族を崩壊させる」と主張[672]。木村は日本会議の関連団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」代表発起人[673]。同団体は会長の高橋史朗(日本会議政策委員、新しい歴史教科書をつくる会副会長[674])が提唱する「親学」を推進する[675]。日本会議事務総長の椛島有三は、「親学は男女共同参画に対する対案」と述べている[675][676]。「親学」は非科学的であり、障害者への差別・誤解を生むとする批判もある(東京新聞)[677]。高橋は、選択的夫婦別氏へ反対する活動も行っており[678]、mネットなどは「ジェンダーへのバッシングの急先鋒」としている[674][679]。
宗教団体
- 選択的夫婦別氏導入に積極的・賛成
- 公益財団法人の日本キリスト教婦人矯風会は、選択的夫婦別氏制度導入を求めている[680][681]。
- 真宗大谷派解放運動推進本部女性室の発行する広報誌『あいあう』では家族形態の多様化が今後の寺院・教団に与える影響を重要視しており、夫婦別姓訴訟原告によるコラムを掲載するなどしている[682]。
- 選択的夫婦別氏導入に消極的・反対
- 宗教法人の神社本庁を母体とする神道政治連盟[注釈 83]は、選択的夫婦別氏反対を主張しそれを国会議員に働きかけてきた、とされる[683][684][683]。神社本庁は、機関誌「神社新報」でも選択的夫婦別氏制制度導入への反対論を展開している[685][686]。
- 神道政治連盟は2013年の参議院選挙で、有村治子(自民党)を支援したとされる[687]。有村は、2010年の日本会議主催の選択的夫婦別氏反対集会の参加議員の一人[655][658][688]。福島みずほによれば、個人的には賛成でも、神道政治連盟の推薦を受けているために表明できない自民党若手女性議員がいるとされる[689]。しんぶん赤旗は、1996年に法制審議会が答申した際、神社本庁や日本遺族会を背景とした自民党議員などから唐突に選択的夫婦別氏制制度導入への反対の声があがったと報道している[690]。1996年の法制審議会で中村敦夫は、神道政治連盟国会議員懇談会に属する議員や大臣が、懇談会の意向を政策にしたがって法案を論ずるのは政教分離に反し違憲ではないかと質問している[691]。これに対し国務大臣の臼井日出男は、一般論として、各宗教団体と関連議連は意見を交換するもので考え方が必ずしも一緒ではない、と答弁している[691]。
- 宗教法人の世界平和統一家庭連合(統一教会)[注釈 84]は、選択的夫婦別氏を危険としている[693]。同宗教団体は「猛烈に」ジェンダーバッシングを行っているとされる[656]。同宗教団体を母体とする宗教紙の世界日報でも選択的夫婦別氏制制度導入への反対論を展開している[694][695]。また、関連政治団体に国際勝共連合があり、運動方針の一つに「選択的夫婦別姓に潜む共産主義の策動を阻止する」をあげている[696]。
- 宗教法人の新生佛教教団[注釈 85]は、特に2000年代前半に男女共同参画に反対する活動を行っている[662]。同団体を母体とする宗教紙の日本時事評論でも、男女共同参画や選択的夫婦別氏制制度導入に対し反対論を展開している[698]。その後、同紙は男女共同参画反対の活動よりも原子力発電所推進に活動の軸を置くようになっている、との指摘が2012年になされている[662]が、2018年3月2日の記事においても、選択的夫婦別姓制度導入への反対論を行っている[699]。
- 2004年の参議院選挙では、同教団は山谷えり子(自民党)を推薦[700]。山谷は2001年に統一教会の宗教紙世界日報において、選択的夫婦別氏制制度導入反対を表明している[701]ほか、山谷は2020年に発足した選択的夫婦別氏制制度導入慎重(反対)派の国会議員による議員連盟「『絆』を紡ぐ会」の共同代表を務めている[702]。また、2013年の参院選では、同教団は衛藤晟一(自民党)を支援したとされる[687]。衛藤は、2010年の日本会議主催の選択的夫婦別氏反対集会の参加議員の一人[655][658]。2020年には、選択的夫婦別氏が議論された自民党の会議では、衛藤、山谷らが選択的夫婦別氏制制度導入反対論を行ったことが報道されている[703]。
- 宗教法人の幸福の科学を母体とするWeb媒体TheLibertyWebは、選択的夫婦別氏に否定的である[704][705]。同宗教団体を母体とする政治団体の幸福実現党の総務会長の矢内筆勝は、2010年に、選択的夫婦別氏法案について、国家解体法案だと主張している[706]。
- その他
- 天理教の表統庁に直属する諮問機関である「天理やまと文化会議」は、2004年の出版物において、同教団が世界のどの社会にも文化にも妥当する世界宗教だとし、夫婦同姓であるべきか否かといった形式にこだわることなく、それぞれの社会や文化の状況に応じて対処していくという姿勢が妥当、としている[707]。
メディア
社説等で姿勢を示している新聞社として、以下の新聞社がある。
- 選択的夫婦別氏導入に積極的・賛成
- 日本経済新聞[708][709][710][711][712][713][714][715]
- 朝日新聞[716][717][718][719][720][721][722]
- 毎日新聞[723][724][725][726][727]
- 讀賣新聞[728][729][730]
- 東京新聞・中日新聞[731][732][733][734][735][736][737]
- 日本農業新聞[571]
- 北海道新聞[738][739][740]
- 陸奥新報[741][742]
- 東奥日報[743]
- デイリー東北[744]
- 秋田魁新報[5][745]
- 河北新報[746][747][748]
- 山形新聞[749][750]
- 下野新聞[751]
- 茨城新聞[752][753][754]
- 千葉日報[755]
- 神奈川新聞[756][757][758]
- 信濃毎日新聞[759][760][761][762][763]
- 山梨日日新聞[764]
- 静岡新聞[765]
- 北日本新聞[766][767][768][769]
- 新潟日報[770]
- 京都新聞[771][772][773][774][775]
- 神戸新聞[776][777][778][779][780]
- 山陽新聞[781][782]
- 中国新聞[783][784][785][786][787]
- 山陰中央新報[788][789]
- 徳島新聞[790][791][792][793][794]
- 高知新聞[795][796]
- 愛媛新聞[797][798][799][800]
- 西日本新聞[801][802][803][804]
- 大分合同新聞[805][806]
- 熊本日日新聞[807]
- 宮崎日日新聞[808][809][810][811]
- 南日本新聞[812][813][814]
- 沖縄タイムス[815][816][817][818][819][820]
- 琉球新報[821][822][823][824][825][826]
- ジャパンタイムズ[827]
- 選択的夫婦別氏導入に消極的・反対
賛否の論点
議論状況分析
現行法起草委員の我妻栄は、1961年の著作で、民法750条の夫婦同氏規定には以下の2つの批判があるとした[834]。
- 妻が改氏することが多い一方で改氏しない側が戸籍筆頭者となるのは、夫婦の平等の理想の向上に害がある。
- 知名度が高い場合などの妻の改氏は妻にとっても社会的に不利である。
法務委員会調査室の内田亜也子は、2010年の論考で、選択的夫婦別姓について、戦後個人の価値観が多様化し賛成論が広がってきたとしている。反対論は、
- 夫婦とその未成年の子からなる集団を『家族』とし、その構成員の氏が同一であることが望ましいという考え方に基づいている
と解釈している。一方、賛成論は、
- これからの家族法は、家族を構成する個人相互の関係として規律するべき
- 家族法の個人主義化は行き過ぎだが、現行家族法の公序の組替えが必要
- 個人としての独立性を示すとともに、家族の一体性をも示したいという要請にも配慮する形で導入すればよい
の3つに分けられる、としている[9]。
社会学者の阪井裕一郎は2011年の論考で、「同姓原則論者」の中にも男女平等の観点から創姓や複合姓を提唱する論者やフェミニストもいる一方、「家名の継承」等の理由から「選択的夫婦別姓法制化」を求める保守層もおり、選択的夫婦別姓をめぐる論争は、「同姓=家族主義、保守」/「選択的夫婦別姓=個人主義、リベラル」のような二項対立ではない、としている。その上で阪井は、議論は
- 夫婦同姓原則論(複合姓論、創姓論の導入を主張しつつ法制化に反対する論を含む)
- 選択的夫婦別姓法制化賛成論(家名の継承などの理由による賛成も含む一般的な賛成論)
- 法律婚批判、戸籍制度廃止(届からの自由を求める論。法制化には反対)
- 選択的夫婦別姓法制化賛成、戸籍制度廃止(届からの自由への次善策としての賛成論)
に類型化できる、としている[835]。
各論
人権・多様性
積極・賛成論 | 消極・反対論 | |
---|---|---|
個人の尊重・人格権・自己決定権・アイデンティティー | 日本学術会議は、夫婦同氏の強制は人格権の侵害であり、個人の尊厳の尊重と婚姻関係における男女平等を実現するために選択的夫婦別氏制度を導入すべき、としている[10]。日本学術会議や水野紀子(法学者)は、同氏強要は個人の尊厳・両性の平等を定める憲法第14条、憲法第24条に抵触する[10][836]、と主張。日本弁護士連合会は、一方の氏の変更を強要する夫婦同氏制は、憲法第13条で保証された人格権を尊重していないと主張[39]。2011年訴訟の原告団も、婚姻に当たりの氏変更を強制する民法750条は、憲法13条が保障する人格権のうちの氏名権を侵害する、と主張した[837]。日本学術会議や二宮周平(法学者)は、民法2条の解釈基準と矛盾をきたす、としている[10][838]。
佐々木くみ(東北学院大学・法学者)は、民法750条における婚姻時の氏の変更という要件は、憲法第13条の人格権としての「氏の変更を強制されない自由」と憲法第24条で保障される「婚姻の自由」の双方の自由を同時に満たすことができず、十分な合理性も認められず憲法第24条に違反する、としている[345][839][840]。 宮内義彦(オリックス元会長・社長・グループCEO)らは、現制度のように法律婚が強制力を持つ社会は窮屈で非寛容である[841][842]、と主張している。 吉田晋(朝日新聞記者)は、利便性や不利益のみにではなく、姓を人格の象徴と考える人たちの「個人の尊厳」が問われている、としている[843]。 山田昌弘(社会学者)は選択肢が広がることはよいと主張[844]。また、反対論は感情論に過ぎないと批判した[845]。 福岡県弁護士会は、「選択制」であるから、別氏にすると家庭が崩壊すると思う人は同氏を選択すればよいとしている[846][847]。 朝日新聞は社説で、選択的夫婦別姓反対を叫ぶ人たちには、他人への寛容さが欠けている。それは、自分なりの生き方を選ぶ少数者に対する差別や偏見にさえつながりかねない、と主張している[848]。 林美子(ジャーナリスト)は、選択的夫婦別姓を認めない同一化圧力が気持ち悪い、とする。個人の尊厳やアイデンティティーは大切であり、違う立場や考え方や感じ方の人を認めようとしないのは全体主義への下り坂だ、と反対論者を批判している[849]。 青野慶久(ソフトウエア開発会社サイボウズ社長)は、現状の通称使用では氏の併用を余儀なくされることで、人格が分離したような感覚を受け、精神的苦痛が大きいとしている[850]。 松浦千誉(拓殖大学教授)は、1976年に、「夫婦は一体ではなく、夫や妻という個人が全面に出てきた時、(選択的)夫婦別姓は当然のこととして受けれられるだろう」「現在を女にとって独立の人格の権利・義務の過渡期としてとらえる時、別姓でも同姓でも選べる道を開いておく制度が望ましい」と述べている[851][481]。 山田卓生(法学者)は、1984年に、「氏不変の原則と自己決定権から『別姓を原則として改姓したいものは改姓してもよい』とする方がよりスッキリする」と述べている[852][481]。 立石直子(法学者)は、1960年代、1970年代の民法改正を通じて導入された婚氏続称制度、縁氏続称制度と比較したとき、婚氏ならば制限なく、離婚や離縁において縁氏ならば7年以上の実績によりその続称が保障されるのに対し、婚姻前の氏については、少なくとも16年以上の使用実績があるにもかかわらず制度保障がないことは整合性を欠く、としている[255]。 |
稲田朋美(政治家)は、2010年の時点では、選択的夫婦別氏運動は一部の革新的左翼運動等に利用されていると主張。一部の法案にあるような、婚姻届の提出時に生まれてくる子の姓を決めて提出することを年齢や健康上の事情により子が授からない場合に選択させることは人権侵害、と主張。また、改氏する者の不利益は改善されず、別氏の間接強制になりえる、とも主張していた[853]。ただし、2018年に「通称使用で2つも姓を用いるのは混乱を招く」「高齢者同士の結婚も多い」としている[118]。
宮崎哲弥(評論家)は、1996年の著書において、夫婦同姓の強制は人格権侵害というが、親の姓の使用強制(例えば親の離婚や再婚によって親権が変わることで子供の姓が変わることなど)や親による子の命名も同様に人格権の侵害に当たるはず、と主張し、人格権を根拠にするならば姓氏全廃を主張しないとおかしい、と主張している[854]。 |
多様性・多様な価値観 |
日本学術会議は日本社会は1980年代後半以降、国際的な男女平等の潮流と女性の経済的自立の傾向から、家族観、婚姻観、男女の生き方や役割観に変化があり、社会における男女の働き方、家族形態は多様化し、夫婦同氏制を支 える立法事実は変化している、としている[10]。 出口治明(ライフネット生命保険会長兼CEO)らは、多様な価値観を認めることが現代の日本では求められている、としている[842][855][571]。 宮崎裕子(最高裁判所判事)は、最高裁判所判事として初めて結婚前の旧姓を使い始めたことについて「選択的夫婦別姓なら全く問題ない。価値観が多様化する中、可能な限り選択肢を用意することが非常に重要」としている[856]。 佐藤莉乃(公益財団法人せんだい男女共同参画財団)は多様な家族の形を尊重すべき[857]と主張。 日本経済新聞は、別姓強制ではなく希望する人には認めようとするもので、多様性を認める発想こそ社会に必要と主張[708]。 青野慶久は、氏名制度はもっと多様化していくべき、としている[858]。 |
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プライバシー論 |
井戸田博史は、婚姻により強制的に氏を変更させられ新たな氏を世間に公表させられることはプライバシー侵害と主張[99]。 ジョン・C.マーハ(地域研究学者)は、「夫婦同姓は人権問題にもなるだろう。強制的に世間に対して自分は既婚である、離婚した、再婚したということを公表させられることで、女性のプライバシー権が侵害されるからである。」としている[859]。 西日本新聞は、「姓がころころ変わるのは、親しくない人にまで離婚や再婚を宣言しているようで、変えたくない」ために事実婚を選択した例を紹介[860]。 2018年1月に選択的夫婦別姓を認めない戸籍法を国に訴えた裁判で原告は、夫婦別氏の選択を認めない現行法はプライバシー権を侵害している、と主張[112]。 |
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平等・差別論 |
民法の規定は、夫又は妻の氏のいずれを称するかを夫婦の選択にゆだねているものの、実際には妻の側が改氏する割合が2014年の厚生労働省の調査で全体の96.1%[861][862]といわれており、日本学術会議などは、女性の間接差別に当たり男女平等に反すると主張している[10][861][75][837]。林陽子(国連女子差別撤廃委員会委員長)も、夫婦の98%[99](2015年の報道では96%[861])において女性が改姓することは、女性の間接差別にあたる[863]、と主張している。 選択的夫婦別姓を求める2018年5月訴訟において原告は、夫婦同姓を望むか、別姓を望むかは、個人の生き方に関するものであり、「信条」によって差別的取り扱いをすることは、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反する、と主張している[864]。さらに、2016年には約96%の夫婦において、妻が改姓しており、夫婦間の「実質的な平等」は保たれていない。これは、憲法24条に定めた「婚姻の自由」に違反する、とも主張している[864]。 村上春樹(作家)は、「結婚したからどちらかが姓を変えなくちゃならないというのは、憲法に保障された男女同権とあきらかに矛盾することです。そんなの不公平」と述べている[865]。 二宮周平(法学者)は、国際結婚では現在の制度でも夫婦別姓が可能であるが、日本国民同士の婚姻で夫婦別姓が認められないのは不公平と主張[75][866]。 日本学術会議は、国民の意識が変化しつつあり、別氏が選択でないため事実婚で我慢せざるを得ず婚姻の自由が侵害されている人たちにも平等に婚姻の権利を与える必要がある[10]、と主張している。 大塚玲子(ジャーナリスト)は、離婚時に離婚前の姓と旧姓を選べるのに、結婚時に旧姓を選べないのはおかしい[43]、とする。 土堤内昭雄(日本フィランソロピー協会シニアフェロー)は、結婚観が多様な現代において同姓規定が問われるようになっているとし、氏にアイデンティティを感じている人同士で一方が改姓しなければならない場合は、人権侵害にあたる可能性があるとしている[867]。 國重徹(政治家・弁護士)は、男女で同じ名前をつけることも増えており、現制度では同姓同名を避けられない場合がありうるため不合理としている[868]。 久保利英明(弁護士)は「(選択的夫婦)別姓がだめなら、仮に亀井静香という人がいて、荒川静香という人と結婚したらどうする」と述べている[869]。 |
秦郁彦(現代史家)は、夫婦の96.1%が夫の姓を選んでいることについて、この数字には養子による改姓が除外されており、もし改姓したくない女性が相手に改姓をお願いすれば受け入れる男性も多いのではないか、と主張している[25]。
|
社会システム・コスト
積極・賛成論 | 消極・反対論 | |
---|---|---|
社会的損失・経済的損失・コスト・利便性 | 江上敏哲(情報学者)らは、職業上、氏の変更が業績の連続性や信用、キャリアにとって損害となる場合もある、と主張している[870][571][42][37]。
井戸田博史(法史学者)は、現在の制度において、長年月社会生活を行ってきた者が姓を変えることは、多大の社会的損失[99][75]ならびに個人的損失[871][872][873]をもたらす、とする。氏の変更の際の様々な手続きは面倒でコストがかかる(朝日新聞[871])、などの指摘もある。 三浦義隆(弁護士)は、姓は変わらない方が便利とする[874]。 宮内義彦(オリックス シニア・チェアマン)は、社会で活躍している女性などが結婚によって姓を変更するときに周囲に与える混乱を指摘する[841]。 奥野正寛(経済学者)は、結婚しても旧姓を選択できれば、女性の国際的な活躍の場を広げられるとする[875]。 旧姓を用いていた期間は晩婚化によって以前よりも長く、共働き家庭も増えており、損失はより大きくなっている[876][877]。1997年にはすでに、共働き世帯の数が専業主婦世帯の数よりも多くなっており[871]、2014年時点では共働き世帯が1077万世帯、男性雇用者と専業主婦からなる世帯は720万世帯、と共働き世帯が大幅に専業主婦世帯を上回っている[878][532]。 青野慶久(ソフトウエア開発会社社長)は、ビジネスにおいて名前はブランドであり、変えると経済的にも損失と述べている[872]。 安里睦子(ナンポー代表取締役社長)は、制度を変えない限り「女性で役員や経営者になる人ほど、ビジネスの場で壁にぶつかる」としている[879]。 小川淳子(ゴルフライター)は、プロアスリートにとっても、改姓のデメリットがあるとしている[880]。 八幡彩子(熊本大教授・教育学)は、名刺、戸籍名だけでは結婚前と同一人物の論文だと理解してもらえず、使い分けは煩雑、と述べる[881]。 岩田規久男(経済学者)は、夫婦別氏を選択できるようになることによって、ほかの人が不利益をこうむることはない、と主張している[882]。 牟田和恵(大阪大学)は、現実の不便や苦労を感じなくても良い人々が反対するのはおかしい、と主張している[883]。 山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、選択的夫婦別姓制度の導入はパレート改善的であり、自由主義的社会制度設計の基本概念にかかわるもので、自由至上主義者、社会民主主義者などの立場に関係なく支持できるとしている[232]。 串田誠一(政治家)は、「夫婦が同姓同名だった場合、不動産登記簿謄本はどうなるのか。強制執行したときに、夫のものだと思ったら妻のものだったということもあり、家庭内の問題ではなく、社会的な混乱」と主張した[884]。 黒岩幸子(岩手県立大教授・外国語教育学者)は、女性の自立や男女平等といったことではなく、人生の途中で姓が変わるのは不便であり、単に選択的夫婦別姓の方が合理的、としている[885]。 |
八木秀次(日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、職業上の不便も各業界や組織・団体、あるいは個別法規の改正で足り、民法改正の必要性とするには足りない[886]、と主張している。
小谷野敦は、導入には反対し、簡易に氏名変更できるようにする方が先決、としている[887]。 |
旧姓通称使用をめぐる問題 |
朝日新聞は、社説において、旧姓通称使用は中途半端で限界があり、住民票などのシステム改修だけで自治体に176億円の補助を行うのは税金の無駄遣いとして、選択的夫婦別氏導入を主張している[721]。 青野慶久(ソフトウエア開発会社社長)は、「旧姓との使い分けに日々無駄なコストを払うのは社会全体にとっても非効率。法的根拠を与えればそれだけで済む」と主張 [888] 、「マイナンバーカード等に旧姓を併記できるようにする」ためのシステム改修に100億円の予算を取るという総務省発表について、戸籍法上の不備があるために、国民が税金として納付した公金を100億円も支出せざるを得なくなった事態は国家的損失としか表現できない、と国家にも不利益とする[850]。また「サイボウズ社の契約を結ぶ時、必ず法務部に確認をして、通称名である「青野」か、婚姻の姓で署名すべきか区別した上で、契約書作成をする必要がある。このタイムラグが迅速な経済活動が求められる株式会社において大きなロス」とする[850]。 稲田朋美(政治家)は、2018年に、「通称使用で2つの姓を用いるのは混乱を招く」と主張[118]。 冷泉彰彦(作家)は、パスポートの旧姓併記について、トラブルがおきないように運用するのは困難であり、選択的夫婦別姓を導入するのが現実的、と指摘している[889]。 関口礼子(元図書館情報大学教授・旧姓通称使用訴訟原告)は、旧姓通称使用について「根本的に、女性を一人の人間として認めるというものではない。中途半端な修正でお茶を濁すというものでしかない」とし、「これでは、優秀な女性たちが海外に出てしまうか、結婚しようとしないかで、日本の将来にかかわってくるのが目にみえている」とする[256]。 森沢恭子(政治家)は、旧姓では場合によっては選挙の立候補ができないなどハードルがある、としている[890]。 鬼丸かおる(元最高裁判事)は、「通称を名乗ることを認められていても、通称はあくまで通称であって、本当の名前ではない。かえって、通称を認めるということは税金や年金などの公的制度を利用する度に複雑な手続きが要求される」としている[891]。 |
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少子化問題 | 山田昌弘(社会学者)は、家名存続のために選択的夫婦別姓を求める声も多いことからもわかるように、夫婦同姓強制は婚姻の障害になっており、少子化の一因となっていると指摘している[892]。
板本洋子(全国地域結婚支援センター代表)は、婚姻率が下がっていることが少子化の大きな原因であり、選択的夫婦別姓を認めることは婚姻率を高める可能性が高く、少子化対策として非常に有効な施策と考えられ、特に農村などでは特に跡取り男女の未婚者も多く夫婦同姓の規定は結婚の障害となっている、とする[893]。 小笠原泰(明治大学教授)、渡辺智之(一橋大学教授)は、出生率を改善するには、選択的夫婦別姓制度すら認めないような家族観は抜本的に見直す必要があると主張している[894]。 冷泉彰彦(作家)は、制度導入が必要な理由の一つとして、「『嫁入りして家長の姓に合わせる』という価値観が男尊女卑につながり、結果として家事や育児の共同分担が遅れ、非婚少子化を招いているという深刻な問題に重なっている」ことを挙げている[895]。 夏野剛(ドワンゴ代表取締役社長)は、選択的夫婦別姓を実現したり、子育てのセーフティネットを手厚くすることで出生率の2が見えてくる、と主張している[896]。 勝間和代(評論家・株式会社監査と分析取締役)は、少子化を食い止めるには、選択的夫婦別氏を含む少子化対策や男女共同参画社会の推進に役たちそうなものはすべて実施すべきと主張[897]。 |
歴史・伝統論
舘幸嗣や榊原富士子らは、夫婦同氏の歴史は100年余、としている[253][898][30]。井戸田博史は、歴史上の「姓」と現代の「氏」は異なるものの[899]、古来より女性は婚姻しても生家の氏姓を保ち、この慣行は武士法を通して明治の前半期まで伝えられてきた、としている[900]。一方、坂田聡は、現行法の「氏」が前近代の「苗字」に相当し夫婦同氏の伝統は500~600年と主張するとともに、伝統を理由とする選択的夫婦別姓反対論は歴史の無視、夫婦別姓こそ伝統とする選択的夫婦別姓賛成論は姓と苗字の混同だとしている[901][902]。熊谷開作は、氏は各時代ごとの社会経済の反映で歴史の検討は不可欠と主張している[903]。一方、大藤修は、現行法の改正論と歴史は切り離して議論すべきと主張している[904]。
積極・賛成論 | 消極・反対論 | |
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歴史・伝統 | 日本学術会議は、夫婦同氏は日本の伝統文化ではなく、明治民法で家制度が確立した結果生じたもの、としている[10]。
千田有紀(武蔵大教授・現代社会論)は、「明治以降の夫婦同姓が家族本来のかたち、という考え自体が『日本の伝統』と呼べるのかは疑問」だとし、「(選択的夫婦)別姓を認めると家族の一体感が損なわれる」という反対論に根拠はないとしている[905]。 出口治明(ライフネット生命保険会長兼CEO)は、夫が妻のもとに通っていた妻問婚であった平安時代などを想起すれば日本も夫婦別姓の国だったことがすぐにわかる、とした上で、経済協力開発機構(OECD)に加盟している世界の先進国で法律婚の条件に同姓を強要している国が日本のみであることを指摘している[842]。 野田聖子(政治家)は、夫婦同姓の歴史は明治時代以降のものであり、郵便局の歴史と同じ、とし、その郵便局も民営化という改革がなされたのに、明治時代の役人が決めた夫婦同姓を日本の伝統だと言い続ける保守の政治家には違和感を覚える、としている[906]。 山田昌弘(社会学者)は、(中国や韓国と同じく)夫婦別姓が日本の伝統で、現在の夫婦同姓制度は、明治政府が西洋化政策の一環として法律で強制したものとし、多様性を認めるべきと主張[907][908]。 吉田信一(法学者)はたとえ僅か100年程度の歴史しかない夫婦同氏を日本の伝統と仮に認めたとしても、「伝統の強制」はするべきではない[30]、と主張している。 田中優子(法政大学総長)は江戸時代の武家は夫婦別姓だったので同姓の選択肢はなく、今は別姓の選択肢がないが、選択肢がある方がよいと主張している[909]。 山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、「夫婦同姓(同氏)」が法制化したのは、改正民法が公布された明治31年以降であり、これは当時のドイツ(ドイツ帝国)をモデルにしたものと考えられており日本の伝統とは言えない。また、女性の職業人が大多数となった現代には、何が伝統であろうと個人の選好を尊重しない制度の継続は全く合理的でない、としている[232]。 |
産経新聞は、「同姓がもたらす家族の一体感」は、日本の伝統・文化、と主張している[831]。
小谷野敦は、「夫婦別氏の方が日本の伝統」とする賛成論は夫婦別氏が進歩的という思い込みによるもので、近世のそれは男尊女卑思想の現れで守るべき伝統ではなく、進歩派を自認しながら復古主義を援用するのは自己矛盾、と主張している[910]。 |
家族制度
積極・賛成論 | 消極・反対論 | |
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家名・祭祀 | 日本農業新聞は、例えば長男長女が結婚した場合、選択的夫婦別姓制度導入により双方の墓を守る選択肢が従来より増える可能性もあると指摘している[571]。
祭祀の主宰やお墓の継承は別姓でも可能である。「○○家の墓」は普遍的なものではないし、「○○家の墓」には「○○」以外の氏の人の遺骨を納めてはいけないという規制はない。また、少子化のため、一人っ子同士の結婚が増えており、選択的夫婦別姓問題に関係なく、自由な方法が工夫されつつある(日本弁護士連合会[39])。 |
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戸籍制度 | 橋下徹(政治家・弁護士)は、現在の戸籍制度は廃止あるいは、完全個人戸籍とするべき、とし、マイナンバー制度などを用いれば、しっかりした制度を構築することが可能、としている。あるいはその次善策として、現戸籍制度を維持しつつ、夫婦別姓(氏)にしたときだけ個人単独戸籍とすることも可能、としている。反対派が「戸籍に一緒に入ることで家族の一体性が確保できる」と主張するのであれば、外国人にも適用するよう主張するべきで、反対派は論理が破綻している、としている[911]。
木村草太(法学者)は、「現在の戸籍は、『夫婦同一戸籍原則』と、『同一戸籍同氏原則』の2原則に基づき編さんされているが、外国人にはこれが適用されていないことからもわかるように、法律婚の効果を享受するための必須な原則ではない。日本人同士の婚姻でも、夫婦別々に単独戸籍を作ることは容易なはず。」としている[912]。 松田澄子(山形県立米沢女子短期大学)は、日本が戸籍制度を輸出した台湾や韓国では現在別姓となっており、選択的夫婦別姓制度は導入可能だとし、別姓を選んだ夫婦別々の戸籍を作ればよいと主張している[913]。また、松田は、完全夫婦別姓論者の代表として佐藤文明をあげ、夫婦別姓を求めるのであれば、戸籍制度を廃止して個人の身分登録制とし、「家」ごとの登録を崩すことで、女性だけではなく在日外国人や非嫡出子も含めた社会的弱者への差別の根源をなくすべきという主張を紹介している[913]。 小島慶子(エッセイスト)は、現在の戸籍制度は、非婚化が進みパートナーシップや生き方が多様化した今の日本ではもう無理があるのでは、と述べている[914]。 新見正則(医学者)は、選択的夫婦別氏をあえて否定する理由はない、個人番号があれば姓に関係なく個人の特定が可能であるため、「結婚したら全く新しい姓を名乗るようなシステム」でも良いと述べている[915]。 大藪順子(フォトジャーナリスト、元全米性暴力調査センター名誉役員)も、マイナンバー制度に全ての人が登録されることで戸籍制度は必要なくなり、選択的夫婦別姓制度を導入する好機、と主張している[916]。 |
秦郁彦(現代史家)は、戸籍制度を持たない国と夫婦の姓に関する仕組みを比較することはできない、と主張している[25]。
久武綾子(歴史学者)は1989年の論考において、日本の氏は戸籍と密接な関係にあるため、簡単に選択的夫婦別氏は導入できないし、夫婦同姓も別姓も文化であり、国によって違いがあってもよいし、十分な議論がなされておらず時期尚早、と主張していた[913]。
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家族のあり方
法務委員会調査室の内田亜也子は、選択的夫婦別姓に対する賛成論と反対論は、伝統的家族モデルの維持に関する議論において大きく対立している、とする[9]。
積極・賛成論 | 消極・反対論 | |
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家族観 | 多くの選択的夫婦別姓制度賛成論において、日本の「家族の一体感が損なわれるなどを理由とした」反対論は、時代遅れ、との主張が見られる[46][917][908][918][919][920][921][922][923]。
山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、反対論で見られる「選択的別姓が家族を崩壊させる」という主張について、理論的にも離婚率への影響もなく、選択的夫婦別氏制度を導入した国で離婚率が上がったという実証例もないとしている[232]。 琉球新報は社説において、家族の絆が壊れるとの指摘に根拠はなく、事実婚の家族に一体感がないと決めつけるのは失礼と主張[924]。 井戸田博史(歴史学者)は、現在の制度では夫の氏を婚氏とする(夫婦同姓の98%[注釈 86])ことは、夫の「家」に入ることになり、「嫁」と意識されることに結びつき、結婚する女性にとっては、姓の変更が男性への従属を意味するように感じられる、と主張している[99]。 奈良新聞のコラム「国原譜」では、結婚によって女性が夫の「家」に入るという意識は今も根強いが、負の側面がある、としている[925]。 青野慶久(サイボウズ代表取締役社長)は、選択的夫婦別姓が導入されれば、固定したまま長く続いてきてしまった「男女の役割分担観」や「日本の家庭こうあるべき」みたいなのが、いろいろあるようになってよい、と述べる[532]。 師岡カリーマ・エルサムニー(文筆家)は、「日本の強制的な同姓制度で無理やり繋ぎ止められた家族が幸せとは思えない」として、家族の絆を重視するならば導入を検討するべきだ、としている[926]。 夫婦同姓制度とは家父長制度、父権制であり、あるいはそれに準じる意識がDVの原因となっているとの指摘がある(R.E. Dobash[927],K. Yllo[928],[929],松島京[930])。 水無田気流(社会学者)は、選択的夫婦別姓は、同姓を選択したい夫婦はこれまで通り同姓を選択し得る以上、「家族を壊す」との批判には当たらない、と主張している。選択的夫婦別姓が導入されても恐らく多数派は選択しないと考えられるが、切実に必要とする人たちがいることは事実であり、「他人の生き方」まで拘束したいという意見はおかしいのではないか、形骸化した「理念としての家族像」ではなく生きた現実の家族生活を見るべき、と述べている[931]。 榊原富士子(弁護士)によれば、反対論に民法750条の立法目的が「家族の一体感の醸成」であったなどという主張が見られることがあるが、東京地方裁判所は平成25年の判決において、そのような主張は明確に退け、立法時の資料に忠実に同姓を強制する制度が「婚姻制度に必要不可欠のものであるとも、婚姻の本質に起因するものであるとも説明されていない」と認定している[932][933]。 稲田朋美(政治家)は、2018年に「高齢者同士の結婚も多い」ことを選択的夫婦別姓を求める理由の一つに挙げている[118]。 橋下徹(政治家・弁護士)は2010年の大阪府議会において、選択的夫婦別姓への反対論として挙げられる「家族のきずな」について、自身も母親と姓が異なるが子どもの立場で悪影響を受けたこともなく、姓と家族のきずなというものを簡単に同一視することは危険だと批判している[934]。 |
内田亜也子(法務委員会調査室)は、「選択的夫婦別姓は伝統的な家族モデル、親族間関係、家系、慣習(墓、介護問題等)を崩壊させる」といった反対意見がある、としている[9]。
百地章(日本会議理事)は、国際規約(10条1項)で国による家族保護が定められている、と主張し、選択的夫婦別姓制度がそれに逆行する、と主張している[26]。また、百地は、現在の夫婦同姓制は「家族を保護」しようとした憲法の精神にふさわしい、などとも主張している[26]。また、百地は、夫婦別姓を導入すると容易に家系をたどれなくなり、「祖先を敬うという日本人の道徳観に悪影響を与える可能性」もある、とも主張している[27]。 八木秀次(日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、選択的夫婦別氏を認めると姓は家族の呼称とは呼べなくなり同姓家族にも影響が及ぶため、一国の制度のあり方として国民全員が議論するべき[935][886]、と主張。 日本会議は、「夫婦同姓制度は『家族』を表すファミリーネームとしての意義がある」と主張し、夫婦同姓・親子同姓の原則を維持すべき」と主張[256]。 高橋史朗(親学推進協会会長・日本会議政策委員)は、選択的夫婦別氏が家族の絆を崩壊させるとして反対[678]。 神道政治連盟のメディア神政連Web Newsによれば、森隆夫(教育学者・親学推進協会特別委員)は、夫婦が別姓になれば、家族のきずなが弱まる、親と異なる姓がトラウマを招く、親子別姓がいじめに発展する、孤独感が増す危険性がある、と主張している[683]。 加藤彰彦(明治大学教授)は、「正論」誌上で、選択的夫婦別姓制度は、親族関係を調整する慣習法の破壊であり、祖父母という子育ての重要なサポート源を失わせ、出生率を低下させる可能性が高い、などと主張している[936]。 選択的夫婦別姓に反対する日本政策研究センターの機関誌「明日への選択」によれば、石原輝(弁護士)は、反対する理由として、最小単位の社会集団は夫婦であるべき、と主張している(1995年[937])。 清湖口敏(産経新聞記者)は、姓に固執して結婚をあきらめる女性(または男性)がいるとしたら、その程度のもので「別れたらよい」などとしている[938]。 宗教法人の新生佛教教団を母体とする宗教紙の日本時事評論は、選択的夫婦別姓は「離婚奨励」「結婚制度否定」だと主張し、「家族崩壊」につながり「薬物依存症」を増やし犯罪も誘発し社会荒廃を招く、などと主張している[699]。 |
子に関する議論 |
木村草太(憲法学者)は、民法の同姓規定が、別姓希望カップルやその子どもを法律婚から排除し、家族の一体感にも子どもの利益にもマイナスの影響を与えている、としている[815]。 山口一男(社会学者・シカゴ大学教授)は、反対論でよく見られる「両親が別姓だと子どもがいじめにあう」といった意見について、そのようないじめは「他者の自由への不寛容による心理コスト」が原因であり、そのために同姓を強制するのは本末転倒であり、禁止するべきなのはいじめや差別行為の方だと指摘している[232]。 本田和子(児童学者)は、子供への悪影響は不寛容な社会の風潮が原因であり、意識革命によって画一志向を払拭すべきだと主張している[9]。 内田亜也子(法務委員会調査室)は、選択的夫婦別氏制が法制度化され社会に周知されれば偏見に基づく「いじめ」等もなくなるとの意見がある、としている[9]。 大塚玲子(ジャーナリスト)は、実際に事実婚夫婦の子供にインタビューを行い、その家族は仲が良かったこと、(反対論でよく言われるような)子供がかわいそう、といったことはなかったこと、子供としても選択的夫婦別姓の早期導入を望んでいることを紹介した上で、社会全体が「多様な価値観」を認めるようになれば楽になる人や、力を発揮できる人が増えていく、としている[939]。 |
秦郁彦(現代史家)は、選択的夫婦別姓の問題は親子別姓となる点であり、子の姓を決める名案が存在せず、しわ寄せは子どもにいく、と主張している[25]。
阿比留瑠比(産経新聞記者)は、選択的夫婦別姓では、別姓を選択した夫婦に子供が生まれた場合、子供は必ず片方の親と別姓になり、夫婦のあり方や親の自由だけの問題ではなく子供の人権にも影響を及ぼす、と主張している[940]。 八木秀次(日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、選択的夫婦別姓制度の導入により、夫婦の間に生まれた子供の姓(氏)を夫と妻のどちらの姓にするのか、どの時点で決めるのか、複数生まれた場合はどうするのか、などの問題が生じてくる[886]、と主張している。 百地章(日本会議理事)は、選択的夫婦別氏制度導入については、親子別姓をもたらし、「親子の一体感の希薄化や子供の不安感などが生じ、成育に支障を来す」と家族の崩壊につながる、と主張している[26][27]。 山口意友(玉川大学教授)は、2007年の著書で、選択的夫婦別姓においては、夫婦間で子供を自身の姓にしたいとの争いが起きるなどと主張している。山口は、子供に成年後自ら改姓する選択権を与えるとしたとしてもその選択をさせるのは残酷、などと主張している[941]。 |
同性婚との関係 |
鈴木賢(法学者)は、同性婚について、同性カップルへの法的保障を考えれば同性同士の法律婚も認めていくべき、とし、その上で、実際に同性間での婚姻を認めるとなった場合には、婚姻時にそのどちらかが姓を変えることはおかしいとの声が上がると考えられるため、その場合には異性間の婚姻においても夫婦同姓の規定の改定は避けては通れない、としている[942]。 |
現在の情勢・状況
積極・賛成論 | 消極・反対論 | |
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世論に関する議論 | 村木厚子(元事務次官)は、2017年の内閣府による世論調査について、法改正容認派は70歳以上で5割を切るものの、60代では6割、50代以下では8割を超え、いずれの世代でも選択的夫婦別姓容認派が多い、婚姻の中心となる20代、30代で容認派が過半数と指摘。「国民の意見が大きく分かれている」とは言えないとしている[943]。
日本政府が世論が分かれていることを法案提出に至らない理由としてあげたことに対して、国際人権規約B規約人権員会は、法に関する態度の正当化のために統計調査を語るべきでないと批判している[10]。 国連女性差別撤廃委員会は、本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき、としている[10]。 |
百地章(日本会議理事)は、選択的夫婦別姓に賛成している人の大多数は消極的な賛成だと主張し、少数のために制度を改変するべきではない、と主張している[27]。
山田健太(大阪府議会議員、立憲民主党党員)は、2017年の内閣府世論調査の結果から「夫婦同姓であるべきだと考える人が53.7%いる一方、法改正により実際に名字変えたいかな、という人は8.4%しかいません」「現状の社会システム(戸籍法)の変革には大きなコストが生じることから、現状を漸次的に修正していく(通称を不便なく使えるようにしていく)という方法が望ましい」と主張している[944]。 |
宗教界の動きに関する議論 | 川橋範子(宗教学者・名古屋工業大学教授)は、神道界が右傾化するとともに、男女共同参画や選択的夫婦別姓に対し反対運動を行っていることに関して、選択的夫婦別姓に反対といったことは宗教界で言うべきようなことではない、と述べている[945]。
井上順孝(宗教学者)は、神社本庁が反対の立場であることについて、夫婦別姓は東アジアでは一般的で、日本が夫婦同姓を義務づけたのは明治期のことであり、神社本庁が明治期に生まれた「創られた伝統」を日本にふさわしい伝統として享受している、と主張している[946]。 |
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国際情勢 | 日本経済新聞は、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約批准から30年経っても夫婦同姓を強制している日本は国際的にも非難の対象となると主張している[947]。
日本はこれまでに3回、女性差別撤廃委員会から民法750条の改正を勧告されているが、2018年5月訴訟において原告は、日本は自由権規約と女性差別撤廃条約に批准しており、憲法98条2項によって、日本は条約を遵守する義務がある、と主張している[864]。 出口治明(ライフネット生命保険会長兼CEO)は現行法の状況は歴史的にも世界的にも「ガラパゴス的」と主張している[842]。 国際連合女性事務局長のプムジレ・ムランボヌクカは、「男女の平等を確かなものにするため、選択肢を持たなければならない。」として日本法を批判している[948]。 青野慶久(ソフトウエア開発会社社長)は、政府が「世界中で夫婦同氏を義務付けている国は、日本以外に知らない」との答弁を行っている一方で、日本が批准している女子差別撤廃条約の条約機関から日本は3回、夫婦同氏を定めた法律の規定を改定すべきという勧告を受けているが、そのような日本の姿勢は、日本だけでなく国際的な活動を行っている個々の日本企業への信頼をも損なう、としている[850]。 棚村政行(法学者・早稲田大学教授)は、「日本は先進国の中でも、アジアの近隣諸国と比べても、選択的夫婦別姓が認められておらず、遅れていることは明らか」としている[949]。 黄浄愉(家族法学者・輔仁大学)は、「今日の国際的な立法趨勢として、婚姻の際に、同姓にするか別姓のままにするかは夫婦の選択に任せ、子の姓についても夫婦の協議によって定めることが採用されている。こうして姓は、次第に集団的呼称から個人的呼称になりつつある。」としている[950]。 床谷文雄(家族法学者)は、夫婦同姓が社会常識であった多くの国で、裁判や法改正を通じて別姓が認められてきた経緯があり、そこでは、普遍的な人権である個人の尊重、人格権、平等の権利が指導理念となって、人及び家族の姓をめぐる制度の見直しが行われてきた、としている[951][952]。 →「§ 各国の状況」も参照
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秦郁彦(現代史家)は、世界の姓名事情は多彩であり、「女性差別」とは無関係だと主張している[25]。
→「§ 各国の状況」も参照
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立法府の動きに関する議論 |
榊原富士子らは、1996年に法制審議会が答申した民法改正案要綱が、立法府で長期にわたり放置されているのは異常[10][953][932]、と主張する。 葛西大博(毎日新聞記者)は、最高裁判決は「選択的夫婦別姓制度について合理性がないとするものではなく、国会で論じられるべき」としており、それを怠るのは司法の軽視にもあたる[954]、と主張している。 宮内義彦(オリックスシニア・チェアマン)は、かつて自民党内で提案された選択的夫婦別姓法案が党議拘束によって成立しなかったことについて、「『自分自身で自分の名前を決めよう』という提案に、党議拘束をかける必要はない」「政党内の結束も大事だが、課題の内容によっては、党派色を抜いて一人一人の良識で考え、答えを出すべきもの」として、批判している[955]。 河野太郎(行政改革担当相)は、「国会で党議拘束を外して議員が思うところを述べて議論する、決をとることがあってもいい」と述べている[956]。 大串博志(政治家)は、男女同数をめざして女性の政治参画が進んでいけば選択的夫婦別姓の問題も大きく進む、としている[957]。 野田聖子(政治家)は、2015年に、自民党の女性活躍政策に対して「女性が別姓を名乗れないことによる損失をわかっていない」と批判した[958]。また、2016年には、立法府が時代に適応した法律を作らないのは立法府の怠慢だとしている[959]。 |
その他の議論
2015年最高裁判決についての論評
判決批判 | 判決支持 |
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木村草太(憲法学者)は、民法750条には「氏の変更を強制されない自由の侵害」も「男女間の不平等」」も存在しないとし、合憲判決へのメディアの反発が強いとはしながらも、「原告の主張に対する法律論としては筋が通っており、やむをえない」と述べている[815]。しかし、「氏の変更を容認するカップル」と「氏の変更を容認しないカップル」間には不平等が存在するとし、選択的夫婦別姓を認めるか、事実婚にも法律婚と同等の権利を与えることによって解消できるとしている[815][960]。また、民法750条は「別姓希望カップルやその子どもを法律婚から排除するだけ」で、「家族の一体感にも子どもの利益にも、かえってマイナスの影響を与えてしまっている」としている[815]。 三浦まり(政治学者)は、裁判官出身か弁護士出身かという前職のプロフィルが反映された判決だとしている[961]。 新見正則(医学者)は、裁判官の男女比率が男女ほぼ同数であれば違憲となった可能性を挙げ、家族のあり方もいろいろであってよいとし、個人番号があれば姓に関係なく個人の特定が可能と主張している[915]。 下重暁子(作家)は、「先進国で夫婦同姓が残っているのは日本だけ」であり、合憲判決は「時代遅れで恥ずかしい」と主張している[962]。 土堤内昭雄(日本フィランソロピー協会シニアフェロー)は、世界的には同性婚の広がりなどがみられるように結婚観が多様になり、全ての夫婦に対して法律が一律に同姓を規定する国は少なく、多様な価値観に基づく議論を期待する、としている。さらに、少子高齢化という人口構造の変化がシルバー民主主義をもたらし、社会制度づくりの意思決定の議論に歪を与えてはならない、とも述べる[963]。 伊藤正志(毎日新聞論説委員)は、毎日新聞の論説で、合憲判決について女性の理解を得られるのかは疑問とし、女性が改姓することで「屈辱感を抱いたり、不便を感じたりする人は少なくない」ため、選択的夫婦別氏導入を進めるべきと主張している[964]。 東京新聞の社説では、「高裁で人格権の一部だと判断された姓を一方だけが変えなくてはならないのは差別的」と報じている[733]。 愛媛新聞は、合憲判決について、「国際的にも時代遅れで、不当な女性差別との批判も強い」とし、家族の絆や「幸せの形」も人によって異なる中、「法が個人を生きづらくし、逆に差別や排除の理由になってしまっては本末転倒」と報じている[965]。 琉球新報は、社説で、国会に判断を委ねる判決であるとし「法の番人」としての責任を果たしていないとし、国会での法改正を急ぐべきと報じている[924]。 泉徳治(元最高裁判事)は、政治家は常に多数を強く意識するため少数者の人権を守ることができるのは裁判所しかないのに、「今回の判決は、裁判所が果たすべき役割を果たしておらず残念」と批判している[966]。 山浦善樹(元最高裁判事)は、「家族をめぐる裁判は、裁判官の人生観や家族観に左右される。過去の価値観にとらわれないでほしい」「どんな結論が出ても、繰り返し訴えていくことが大事だ。いずれ、国際基準からみて、日本の状況を恥ずかしいと思う裁判官が多数になる」としている[967]。 鬼丸かおる(元最高裁判事)は、判決について、「男性は家の問題になると、他の事案には民主的だった方もかなり強硬に反対された」と述べ、「様々な事件への視点が男女で変わるなら、人口比で女性の最高裁判事を増やすべき」としている[891]。 |
産経新聞は、選択的夫婦別姓導入について、「国会で論じられ、判断されるべきだ」とした判決は妥当と主張し、別氏を「希望しない」が8割を超えている世論を考慮すべきと主張している[831]。多数の裁判官が「通称使用が広がることにより、不利益は緩和され得る」ために合憲と判断した、と主張している[968]。また、寺田長官は補足意見で、両親と子の姓が異なることについて、「嫡出子との結びつきを前提としつつ、夫婦関係をどうするのかに議論の幅を残す」と補足意見があることに関して、子の姓について、結婚後のどの時点で姓を選択するのか、一組の夫婦に複数の子供ができた場合に子供ごとに姓を選択するのか、きょうだいで統一とするのか、等の議論が存在すると報じている[968]。
八木秀次(日本教育再生機構理事長・新しい歴史教科書をつくる会元会長)は、この裁判は最高裁が家族を「社会の自然かつ基礎的な集団単位」と位置づけた判決だと主張するとともに、世界人権宣言第16条と国際人権規約A規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)第10条の内容を踏まえた家族共同体の意義を重視した判決だと主張している[935]。 |
2016年旧姓通称使用訴訟判決に関する論評
2016年の女性教諭による旧姓通称使用訴訟の東京地裁判決に関して様々な論評がある。
- 日本経済新聞は、2016年10月16日の社説において、判決は社会の流れを理解していないと批判。また2015年12月の第一次選択的夫婦別姓訴訟最高裁判決で「改姓不利益は通称使用で一定程度は緩和される」と判断したこととも食い違う、と批判している[969]。
- 毎日新聞は、2016年10月13日の社説において、旧姓使用が広がっている実情への理解が欠けた判決だと批判。2015年12月の第一次選択的夫婦別姓訴訟最高裁判決で、「旧姓使用が社会的に広まることで、改姓することの不利益は一定程度緩和される」としたこととも整合しない、と批判している[970]。
- 二宮周平(法学者)は、この地裁判決は、2015年12月の第一次選択的夫婦別姓訴訟最高裁判決の前提だった通称使用を『社会的に受け入れられていない』と真っ向から否定しており、最高裁からすれば、選択的夫婦別姓を認めよと言われているようなもの」としている[971]。
- 被告側の理事は、「今回の裁判は、『個人のアイデンティティーvs.学校のアイデンティティー』という構図になってしまった。でも、別姓を認める法律があれば、こんな戦いをせずに済んだはず」としている[971]。
各国の状況・子供の姓の対応
過去には日本以外にも夫婦同氏とする規定を持つ国(ドイツ、オランダ、イタリア、ノルウェー、フィンランド、タイ、トルコ等、以下参照)もあったがそれぞれ改正がなされ、2014年時点では法的に夫婦同氏と規定されている国家は日本のみとなっている[11][5][6]。
アジア
東アジア
東アジア地域においては、夫婦別姓を伝統としてきた国が多い[908][注釈 87]。
- 日本
- 現行法では国際結婚をのぞき夫婦同氏。ただし、外国で別氏のまま現地の方式で行った婚姻は戸籍登録前でも有効とされる[31]。国際結婚では同氏、別氏から選択可。なお、夫婦同氏規定は明治31年の明治民法制定以降の規定。それ以前は明治9年の太政官指令により夫婦別氏。
- 中華民国(台湾)
- 夫婦別姓または複合姓(冠姓:妻が自分の姓の前に夫の姓を付加[975])の選択が可能。1985年民法では原則冠姓、当事者が別段の取決めをした場合は別姓とされていた[976][952]。1998年の改正で、原則として本姓をそのまま使用し、冠姓にもできる、と改められた。職場では以前から冠姓せず本姓を使用することが多かった[977]。2018年の調査では冠姓を用いている者は4.74%で、そのうち女性が99.83%だった[952]。子の姓は、原則的に父系の姓が適用されていた(入夫の場合は逆)が、1985年の改正で、母に兄弟がない場合は母の姓にもできるようになり、兄弟別姓も可能となった[977]。しかし男女平等原則に反するとして、2008年の戸籍法改正で両親が子の姓を合意し、署名を入れ提出することになった。合意がない場合は役所が抽選で決める[978]。さらに養子も本姓を維持可能になった[950]。2010年改正では、成人の自由改姓が認められた[950]。
- 韓国
- 朝鮮半島では父権主義であり、「親からもらった姓は変えない」という儒教 的発想で昔から不文の法として「姓不変の原則」があり、夫婦別姓、実質は妻のみ一家で別姓・別本貫であった[952][979][980]。子の姓・本貫は法的に父親のモノを受け継ぐと義務化してきたが、2008年改正の際に「子は父親の姓と本貫に従う」という民法第781条1項を残したまま、「婚姻届提出の際に夫婦間で同意すれば、母の姓に従うことができる」との文言が付け加えられたことにより、父母が婚姻届出の時に協議したにチェックを入れた場合にのみ母の姓とすることも可能になった[980][981][982][983]。なお、古代の律令制導入以来からあった、日本と同様の戸籍制度は、2008年に血統主義に立脚した正当な理由のない制度だとして廃止されている[984]。また、2008年より、離婚後に母が引き取った子の姓を母の姓にすることが可能になった[985][986]。なお同姓同本不婚の規定は、1997年憲法裁判所が違憲の決定をし、1999年に廃止された[987]。2021年11月時点でも、子供の姓・本貫は夫の姓にするのが基本であり、妻の姓に出来ることは一般的に知られていない[983]。
- 中国
- 夫婦別姓、複合姓(冠姓)、夫婦同姓より選択可。1950年の婚姻法において「自己の姓名を使用する権利」が認められ、相手方の家族等に関係なく夫婦自らの意志での選択が可能[991][992]。1980年改正で、子の姓は両親のいずれかから選択することになり、2001年改正でより夫婦平等な文言となった。伝統的には父の姓が用いられる[993]。なお中国にも戸籍制度があり、是非には議論がある[994]。
東南アジア
- タイ
- 現行法では同氏、別氏、結合氏からの選択制。1913年の個人氏名法により国民全員が氏を持つことが義務化された。この時点では、別氏、妻が改氏する同氏、から選択可だった。1941年に妻が改氏する夫婦同氏制に転換。この同氏強制に対し2003年に憲法裁判所より違憲判決が下り[995]、2005年に現行法に改正された[251][996][997]。子の氏は父母のどちらかから選択[998]。
- フィリピン
- 2010年以前は、結婚時に、妻は自分の氏に夫の氏をミドルネームとして加えるか、夫の氏を用いるか、夫のフルネームにMrs.をつけるかからの選択だった。しかし、2010年に、裁判所は、女性の権利の尊重の観点から、自分の氏のみを用いてもよいとの判断を下した[999]。現在では夫婦別氏が可能[1000][1001]。
- マレーシア
- 婚姻時に氏が変更されない[1002][1003]。
- シンガポール
- 別氏、同氏を選択可能。多くは別氏[1004]。
- インドネシア
- 通常は夫婦は別氏。通称として夫の氏を名乗ることも多い。男性側の改氏も可能[1005]。
- 東ティモール
- 別氏の多い地域も、改氏、複合氏の多い地域もある[1006]。
- ブルネイ
- 妻は夫とは別に自身の氏を用いてよい[1007]。
- ミャンマー
- 国民の9割以上が氏を持たず、結婚時に人名は変わらない[1008]。名前の節は1つの場合もあれば、多数の場合もある[1009][1010]。
- ベトナム
- 結婚時に名前が変わらない。名前は2つから5つ程度の名前からなり、最初の名前がファミリーネーム、最後の名前がギブンネームである。両親の伝統や好みによって、ミドルネームはない場合もあれば、複数ある場合もある[1011][1012]。ベトナム政府は2017年に、戸籍制度の撤廃を発表している[1013]。
- カンボジア
- 婚姻で氏が変わらない[1014]。名前は「氏、名」の順[1015][1016]。氏としては、中国やベトナムと同じ氏も多い[1017]。多くの場合子の氏は父親の氏をつけるが、父親の名を子の氏とすることもあり、兄弟が異なる氏を持つこともある[1018]。
南アジア
- インド
- 結婚時の氏に関する厳密な法律的な規定は存在せず、同氏、別氏を選択可。氏名は自由に変更することが可能である[1021][1022]。2012年以降婚姻の登録が義務となったが、登録時には、改氏する場合には新氏を届ける[1023]。ヒンズー教徒は夫婦同氏とする[57][注釈 88]一方、シーク教徒は常に男性は「Singh」、女性は「Kaur」を氏として持ち、婚姻で変化しない[1024]。マハーラーシュトラ州では、婚姻時に婚前の氏を保持できることが2011年に明文化されている[1025]。2017年には首相のナレンドラ・モディが、女性が結婚後にパスポートを変更する必要はない、と述べている[1026][注釈 89]。
- ネパール
- 婚姻すると、女性は、自身の父または母の氏、夫の氏のいずれかを用いることができる[1027]。
- ブータン
- 氏は「家の名」ではなく個人それぞれに名付けられる。婚姻時に改氏しない[1028]。
- バングラデシュ
- 婚姻時に女性が改氏することもしないこともある[1029]。
- スリランカ
- 何も手続きを行わなければ、婚姻時に改氏はない。改氏したい場合は婚姻時より使いはじめ、証明などの必要が出た際に手続きを行う[1030][1031]。
- モルディブ
- 婚姻を理由とした改氏は法的に認められていない[1032]。
- パキスタン
- 別氏または夫の氏。イスラム法では夫の氏に変えることを求めておらず、イスラム系住民は別氏が多い[1033]。
- アフガニスタン
- 女性は伝統的には婚姻時に改氏しない。英語圏で改氏する女性もいる[1034]。
中央アジア
- カザフスタン
- 別氏、同氏、複合氏から選択可。すでに複合氏の場合追加できない。改氏しても離婚時に戻せる[1035]。
- ウズベキスタン
- 別氏、同氏から選択可[134]。
- キルギス
- 別氏、同氏、複合氏から選択可。すでに複合氏の場合追加はできない。改氏した場合離婚時に戻せる[1036]。
- トルクメニスタン
- 別氏、同氏から選択可[1037]。
- タジキスタン
- 別氏、同氏、複合氏から選択可[134]。
南コーカサス
中東・西アジア
中東や北アフリカのアラブ諸国では、イスラム教徒の女性は伝統的には婚姻時に改氏しない[1041]。
- トルコ
- 同氏、別氏、複合氏からの選択制。2001年の法改正により女性の複合氏がまず認められ[1042]、2014年に婚前の氏のみを名乗ることを認めないことの違憲判決が下され、婚前氏を継続できるようになった[1043][1044][1045]。
- イスラエル
- 別氏、同氏、ミドルネーム(複合姓)から選択可[1046]。
- イラン
- 通常、婚姻時に改氏しないが、夫の氏を後ろに加える女性もいる[1041]。1976年までは妻を含め家族の氏を決める権利が夫にあったが、現在では、家族のいずれの成員も氏を自身で決めることができる[1047][1048]。
- イラク
- 通常は婚姻時に改氏しないが、西欧風に夫の氏にする女性もいる[1041]。
- サウジアラビア
- 婚姻時に改氏しない[1049]。養子縁組でも改氏しない[336]。
- クウェート
- 婚姻時、女性は改氏しない[1050]。
- バーレーン
- 婚姻時、女性は改氏しない[1050]。
- カタール
- 婚姻時に改氏できない[1051]。
- アラブ首長国連邦
- 伝統的に婚姻時に改氏しない[1052]。
- シリア
- イスラム教徒の女性は婚姻時に改氏しない。改氏する女性もいる[1053]。
- オマーン
- 女性は婚姻の際に改氏しない権利を持つ[1054]。
ヨーロッパ
西ヨーロッパ
- イギリス
- 伝統的に氏に関する法律の規定はなく、詐害の意図がない限り氏を自由に変更でき、同氏も別氏も複合氏も選択できる。伝統的には妻が夫の氏を称する[979][336][952]。同氏とする場合も、どちらかの氏とする、併記する、ハイフンでつなぐ、合成して新たな氏を作る、同氏にした上で改氏した側のみ旧氏をミドルネームとして加える、関係ない新しい氏を作成する、など様々な夫婦が見られる[1055]。2016年のYouGovの調査では婚姻した女性の89%が夫の氏を用いていた[952]。婚姻には宗教婚と民事婚の2通りあるが、いずれも改氏はせず、同氏や複合氏など改氏する場合は、別に改氏のための証書(ディード・ポール[1056])を作成する必要がある[1055]。子の氏は公序良俗に反しなければ自由につけられる[1057]。2004年に同性カップルが婚姻と同等の保護を受けられる「シビル・パートナーシップ」制度ができたが、2018年よりこの制度を異性カップルでも用いることができるようになった[1055]。
- フランス
- 法に規定はなく、「氏名不変の原則」から改氏しない。1985年の通称使用法制化により、妻は夫の氏を通称として「合法的に」名乗ることができるようになった[952][1060][1061][1062]。通称として、出生氏と継承できなかった親の氏をハイフンでつなげた連結氏(順序自由)、出生氏とパートナーの氏をハイフンでつなげた連結氏(順序自由)、女性の場合に夫の氏、から選ぶことができる。さらに2013年からは男性の場合は妻の氏を選ぶことができるようになった[1062][1063][1064]。通称を用いる場合、パスポートに通称を記載することができる[1062]。2004年以前は子の氏は父の氏としていたが、2005年改正法は父母のどちらかか、両者の氏をハイフンでつないだ複合氏を選択可能にしている[1065][1057][1066]。2013年からは、夫婦が子の氏について一致できなかった際は父母の氏のアルファベット順の結合氏となる。養子は養子の氏と養親の氏の結合氏となる[251]。1999年、同性カップルの共同生活に関する契約PACSが法制化されたが、異性カップルも対象とするようになった[注釈 90][1062]。
- オランダ
- 別氏、同氏、複合氏(選択配偶者の氏の後に自己の氏を後置)から選択可[1067]。2001年時点では、夫の氏は不変、妻は夫の氏(同氏)または自己の氏(別氏)を称する。妻は自己の氏を後置することもできる、と報告されている[979]。かつては婚姻後妻は夫の氏に改氏するとされていたが、氏名法が改正され選択制となった[1068]。子の氏はどちらの氏でも構わないが、同じ両親の子の氏はいずれも同じとしなければならない[1069]。
- ベルギー
- 婚姻によっては氏は変更されない[1070][1002]。2014年以前は子の氏は父親のみとされていたが、2014年の法改正で父親、母親、または両親の氏からの複合氏(複数の子がいる場合、氏の順序は同じ)から選択可能となった[1071]。複合氏の順序について合意できない場合はアルファベット順[1072]。
- ルクセンブルク
- 婚姻によって法的な氏が変更されない。ただし、配偶者の許諾があれば、その氏を通称として使用できる。離婚後も元配偶者の許諾があれば用い続けることができる。なお、1982年より、氏あるいは名の変更が可能となった(十分な変更理由が必要)[1073][1074][1075]。子の氏に関しては、かつては父の氏と定められていたが、2006年の法改正により父の氏、母の氏、複合氏(順序は問わない)より選択可能となった[1076][1077]。
- ドイツ
- 現行法では同氏、別氏、複合氏(片方のみ)より選択可。双方とも複合氏とすることはできない[1078][1079]。かつては1900年発効の民法典により夫の出生氏での同氏が民法で規定されていたが、1957年に複合氏が認められ、さらに1976年に夫婦の合意の元で妻の出生氏を家族の氏とすることが認められた(合意が得られない場合は夫氏での同氏)。しかし1991年にこれらの規定が連邦憲法裁判所で違憲とされ、1993年の民法改正で、夫婦の氏を定めない場合は別氏とする選択制となった[1080][1081][56][952]。子の氏に関しては、親権が父母それぞれにある場合には、どちらの氏とすることも可能であるが、子一人ごとに氏を変えることはできない。婚姻で氏を変更して後離婚・死別した場合には、旧氏に戻す選択肢の他、旧氏を婚氏に加える二重氏を選択することもできる[1082][336]。ドイツ語協会(GfDS)の2016年の調査によると、婚姻時の氏の選択は、夫氏婚が約75%、別氏婚(夫婦双方とも改氏しない)約12%、複合氏が約8%、妻氏婚約6%だった[1083]。そのほか、養子の氏に関しては、養親の氏、あるいは養子縁組前の氏と養親の氏の複合氏から選択可能[1081]。
- オーストリア
- 2013年までは、原則夫の氏、決定がある場合は妻の氏を称する、あるいは自己の氏を後置する複合氏[979]、とされていたが、2013年4月以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則別氏になった[1084][1085]。夫の氏に変更、あるいは複合氏を選択するためにはそのように婚姻前に手続きを行わなければならない[1085]。子の氏には出生時に定める。父母が別氏の場合は、父母の氏、複合氏のいずれかから選択。子の氏を定めない場合は母の氏となる[251]。2013年以前は父の氏だった[251]。
- スイス
- 2013年以前は、夫の氏が優先。正当な利益があれば妻の氏を称したり、自己の氏を前置する複合氏も可能[979]とされていたが、2013年以降、婚前に特に手続きしないかぎり原則別氏に変更された。配偶者の氏や複合氏を選択するためには婚姻前に手続きが必要[1086]。別氏の場合、子の氏は婚姻時あるいは第一子の出生時に、父あるいは母の氏より選択する。第二子以降は第一子と同じ氏とする[1087]。
- リヒテンシュタイン
- 同氏、別氏、複合氏から選択可。別氏の場合の子の氏は親が決定[1088]。
南ヨーロッパ
- イタリア
- 選択制。1975年まで、婚姻時に妻が夫の氏にならうという民法規定が存在していたが、1961年の最高裁判決で妻は婚姻で本来の氏の使用権を失うのではなく、夫の氏の使用権を得ると解釈され夫婦別氏が可能となった[1089]。さらに、1975年に民法が改正され、明示的にも同氏、別氏、結合氏より選択可能となった[1090]。一方、子の氏に法的な規定はなく、慣習法は父親の氏としていた。これに対し、母の氏を選択できるようにするべき、との判決が2014年に欧州人権裁判所において出され[1091]、さらに2016年には国内の憲法裁判所においても子の氏として父の氏しか選択できないのは違憲とされた[1092][1093]。現在では、子の氏として、従来どおり父親の氏をつける選択肢に加え、父親の氏に母親の氏を加えた複合氏をつける選択肢がある。また、未婚の母親で、父親が認知していない場合には母親の氏のみを子につけることができる。これらは出生時に決定する[1094][1095][1096]。なお、イタリアは極めて離婚が少ない[1097]。
- スペイン
- 個人の名は、一般的には「名、父方の祖父の氏、母方の祖父の氏」だが、1999年に「名、母方の祖父の氏、父方の祖父の氏」でもよいと法改正された。順序は父母の合議による。兄弟でこの順序は統一される。夫婦の氏に関する規定は民法にはなく改氏の義務は無いが、女性は「de+夫の父方の氏」を後置する、「母方の祖父の氏」を「夫の父方の氏」に置き換える、「母方の祖父の氏」を「de+夫の父方の氏」に置き換える、などの選択が可能である[251][1098]。
- ポルトガル
- 別氏、または複合氏(配偶者の氏を自己の氏に前置または後置)から選択可能。1977年の法改正で別氏が選択可能になった[1099]。2011年の時点では、既婚女性の60%が婚前の氏をそのまま用いている[1100][1101]。子の氏は父の氏と母の氏を付与するが、順序は定められておらず、兄弟で順序が異なってもよい[251]。
- ギリシャ
- 別氏、複合氏から選択可。かつては妻が婚姻時に夫の氏に倣うのが伝統だった[1102]が、1983年の法改正で別氏が義務づけられ、同氏は選択できなくなった[1103][1104][1102]。その後、2008年の法改正で、自身の氏に配偶者の氏をハイフンで結び付加する複合氏が選択可能となった[1103][1102]。
- マルタ
- 別氏、同氏、結合氏から選択可。結合氏は稀[1105]。
北ヨーロッパ
- スウェーデン
- 選択制で、1983年の氏名法では同氏または別氏、自己の氏または配偶者の氏を中間氏(ミドルネーム)にもできた[979]が、2016年の新法で二重氏が許容されるとともに中間氏は取得できなくなった[952]。その後2019年の新法では創氏も可能となった[1078]。1983年の氏名法では、両親が別氏の場合、父か母の氏から選択する。その場合他方の氏を中間氏とすることもできた。なお複数の子がいるときは同じ氏としていた[251][1106]。2016年新法では、別氏夫婦の子の場合に父か母の氏、あるいはそれらの二重氏、父母いずれかの名前に-son(息子)、-dotter(娘)を付加した氏、父母が同じである他の子の氏から選択、となり、中間氏は選べなくなった[952]。
- ノルウェー
- 選択制。婚姻時、妻が夫の氏に加え自己の氏を中間氏とするのが46%、夫の氏に変更するのは34%、別氏は20%、と2016年に報告されている[1107]。1923年以前は父称を用いており、婚姻時に改氏する伝統もなかったが、1923年の氏名法によって、婚姻時に妻が夫の氏に改氏する(夫婦同氏)と定められた。その後、1949年の法改正で夫の同意のもと別氏が可能となった[952]。さらに1965年の改正で夫の同意なく別氏が可能となった。さらに1979年の法改正で男女の権利が平等となるとともに、別氏を原則とする形となった。さらに2003年の改正で二重氏が認められた[952][1108]。
- デンマーク
- 同氏、別氏、配偶者の氏をミドルネームとすることから選択可。1981年までは、特段の書類による定めによらない限り夫婦は同氏とされていたが、1981年の法改正で婚姻前の氏を原則とし、届け出によって氏を変更するとされた。氏は祖父母の氏や許諾を得た別人の氏を用いることも可能[1109][1110]。子の氏は、両親いずれかの氏、いずれかの両親が過去に称したことのある氏、および国内で2000人以上の個人によって称せられている氏であればどのような氏でも子につけることが可能である。父親の氏を選ぶことが多いが、届けのない場合は母親の氏となる[1071]。
- フィンランド
- 同氏、別氏、複合氏、創氏(新しい氏を作成)から選択可[1111][1112][1078]。1930年の婚姻法では妻が夫の氏を用いることが義務付けられていたが、1985年8月の改正で別姓(非改姓婚)が可能となった[1111][1112][1113][952]。さらに2018年1月の法改正によって、複合氏のバリエーションが増えるとともに、新しい氏を作ることも可能となった[1111]。また、事実婚の場合も夫婦を同氏とすることが可能となった[1111]。子の氏に関しては、親が同氏(複合氏で同氏の場合を含む)の場合はその氏、そうでない場合は、出生後に届け出た氏(父親・母親いずれかの氏)とする。ただし、複数の子がある場合はいずれの子も同じ氏とする[1113]。子につけられる名前は2018年の法改正で最大3つから4つに増えた[1111]。
- アイスランド
- 特に請求がない限り人名は変更されない[1114]。なお、アイスランドでは「家族の氏」という概念はなく、原則として、父の名前、母の名前、あるいはその双方それぞれに「の息子」の意を表す-sonあるいは「の娘」の意を表す-dóttirを付けたもの(父称)をラストネームとして名乗る[1115]。
バルト諸国
東ヨーロッパ
- ロシア
- 選択制。1995年家族法典では別氏、同氏、複合氏から選択できる(第32条1項)[1119][1120]。名前は、名、父称、の氏からなる[1121]。子の氏は、両親の協議により父か母の氏から選択する[1120]。14歳以上ならば、氏も名も父称も自分の意思で変更可能である[640]。
- ポーランド
- 別氏、同氏、複合氏から選択可[1122]。ただし複合氏にする場合、3つ以上の氏をつなげてはいけない[1122](1964年)。
- チェコ
- 別氏、同氏、結合氏から選択可[1123]。
- スロバキア
- 別氏、同氏から選択可[134]。
- ハンガリー
- 別氏、同氏、複合氏(順序はいずれでもよい。ハイフンでつなぐ)、自らのフルネームを配偶者のフルネームにnéを付加したものに変更する(この場合出生時の氏名は失われる)、配偶者のフルネームにnéを付加したものに自己のフルネームを加えたものを自己のフルネームとする(この場合フルネームは4つの名からなる)、自己の氏の前に配偶者の氏にnéを付加したものを追加する(自己の氏は中間氏となる)、などより選択できる[1124]。伝統的には、妻が夫のフルネームにnéを付加したフルネームに改名し、出生時の名前は失われていた。その後、1895年、1953年、1974年、2004年などの改正を経て男女の公平性が高められ、選択肢が増えた[1124]。なお、ハンガリーでは、日本同様、氏が名の前に来る[1124]。
- ルーマニア
- 別氏、同氏から選択可。子の氏はどちらかの氏とする。両親の合意が無い場合裁判所が決定[1125]。
- ウクライナ
- 別氏、同氏、複合氏から選択可[1126][1127]。
- モルドバ
- 別氏、同氏から選択可[134]。
- ベラルーシ
- 別氏、同氏、複合氏から選択可[1128]。
バルカン諸国
- ブルガリア
- 別氏、同氏、複合氏から選択可[1129]。
- セルビア
- 別氏、同氏、複合氏から選択可[1130][1131][1132]。
- クロアチア
- 別氏、同氏、複合氏から選択可[1133]。
- 北マケドニア
- 選択制。伝統的には女性は婚姻時に夫の氏の女性形に改氏していたが、近年では別氏、夫の氏、複合氏を用いる女性もいる[1041]。
- コソボ
- 別氏、同氏、複合氏から選択可[1134]。
- アルバニア
- 別氏、同氏から選択可[1135]。
- モンテネグロ
- 別氏、同氏、複合氏で統一(同氏)、一方の配偶者のみ複合氏、から選択できる[1136]。
アメリカ
北アメリカ
- アメリカ合衆国
- 婚姻関係の法は州ごとに定められている。1976年にハワイ州民法における夫氏での夫婦同姓規定が違憲となって以後、全州で選択的夫婦別氏が認められ[952]、別氏の他にミドルネームなど概ね5つの選択肢がある[1137][1138]。2015年のニューヨーク・タイムズの調査では自己の氏を維持した女性は15.9%だった[952]。2015年より全州で認められている同性結婚でも異性婚と同様の婚姻時の氏の選択が認められている[1139]。ニューヨーク州では、1)改氏しない、2)他方の配偶者の婚姻時の氏、3)自身または他方の配偶者が過去に保持していたことのある氏、4)それぞれの配偶者の婚姻時の氏または過去の氏の全てまたは一部をつなげた氏、5)それぞれの配偶者の婚姻時または過去の氏からなるハイフンあるいはスペースで区切られた複合氏、から選択が可能である[952]。カリフォルニア州では、婚姻で改氏の必要はなく、変更を希望する場合は、他方の配偶者の氏、自己または配偶者の出生時の氏、それぞれの配偶者の現在または出生時の氏の全部または一部をつなげた氏、それぞれの氏の組み合わせ、のいずれかであり、また、希望するならばミドルネームの変更も可能である[952]。
- 憲法上は子の氏に規定はなく[1140]、ケンタッキー州ではどのような氏を子につけてもよい。ジョージア州では子の氏は父母いずれか、またはその複合氏に限られる。ルイジアナ州、テネシー州では、子の氏は原則として父の氏とするが、両親の合意の上変更可能である。アリゾナ州、ワシントン州、マサチューセッツ州では、氏の長さの規定がある。テキサス州ではアクセントやウムラウトなどに制限がある。ニュージャージー州では公序良俗に反する氏は禁止されている[1057][1141]。一方、子に氏を付ける権利について、1970年代までは父親が持つとする州が多かったが、その後平等になるよう改正されてきた。合意できない場合は、多くの州では裁判所が決定するが、フロリダ州、ニュージャージー州では両親の氏のアルファベット順による複合氏になる[1142][1143]。
- カナダ
- 婚姻関係の法は州ごとに定められている。ケベック州では1981年以降婚姻による改氏が禁じられている[1144][1145][1146][952]。同州では、子の氏は、父、母、父母の氏の複合氏のいずれかより選択する[1147]。ただし3つ以上の氏からなる複合氏を与えることはできない[952]。オンタリオ州では、婚姻しても出生証明書の氏名は変わらないが、運転免許証等では配偶者の氏を用いることができる[1148]。子の氏は、父の氏、母の氏、複合氏から選択するが、両親が同意に至らない場合は、両親の氏のアルファベット順の複合氏とする[1149]。アルバータ州では、別氏、同氏、結合氏から選択[1150]。ブリティッシュコロンビア州では、同氏、別氏、複合氏から選択。直前の氏、出生時または養子縁組により有していた氏、配偶者の氏を使用可能[1151][952]。ニューブランズウィック州では、婚姻しても氏は変わらないが手続きをすれば配偶者の氏に改氏できる[1152]。
中央アメリカ
- メキシコ
- 一般的に女性は改氏しない[1153]。各個人は二つの氏を持ち、伝統的には、父親の第一氏と母親の第一氏が子の第一氏と第二氏となるが、2017年には両親双方の第二氏を子の氏とすることが認められた[1154]。
- コスタリカ
- 妻の氏は不変だが、夫の氏を結合させて使うことができる[251]。
- ジャマイカ
- 法の規定は無い。夫は妻の氏に変えない。別氏のほか、婚姻の際妻が夫の氏にならうか、複合氏を名乗ることがある[1155][1156][1157][1158][1159]。慣習では夫婦は同氏とされる[57]。改氏する場合、パスポート申請時に婚姻証明書を提出しなければならない[1160]。
南アメリカ
- ブラジル
- 別氏、同氏、複合氏から選択可。1977年以前は妻は結合氏を義務付けられていたが、1977年の改正で別氏が可能となり、2002年改正で夫側も結合氏が可能になった[251][1161]。子の氏は一般的には母の氏と父の氏を並べるが、逆順も可[251]。
- コロンビア
- 別氏、または婚姻時に女性が改氏。父方の氏を夫の父方の氏に置き換えるか、de+夫の父方の氏を後置できる[1162]。
- ペルー
- 別氏、または「de+夫の氏」を後置する複合氏にできる[1163]。
- チリ
- 通常、婚姻によって改氏しない。社交上「de+夫の氏」を追加した複合氏を用いることもあるが、廃れつつある[1164]。子の姓は一般的に父親の氏、次に母親の氏となっていたが、2021年より両親の合意により逆順も可とした。また、同年より18歳以上の成人が1回に限り氏を変更することを認めた[1165]。
- アルゼンチン
- 別氏、または婚姻時にde+夫の氏を追加した複合氏にできる[1166]。
オセアニア
- ニュージーランド
- 別氏、結合氏、同氏から選択可。結合氏の場合、つなげる順序はどちらが先でもよく、ハイフンで結んでも、間にスペースを入れて結んでもよい[1167]。伝統的には女性が男性の氏を名乗ることが多いとされる[1168]。子の氏は公序良俗に反しなければどのような氏でも自由につけることができる[1057]。また18歳以上であれば、ほぼ自由に改氏することも可能である[1169]。
- オーストラリア
- 別氏、結合氏、同氏から選択可。氏名の変更も比較的容易に可能[1170][1171][1172][952]。また、子の氏を定める法的な規則は存在せず、公序良俗に反しない限り自由である。したがって、父の氏、母の氏、複合氏だけでなく、新たな創氏も可能である。複数の子が異なる氏でも構わない[1173]。子の氏について夫婦が同意に至らなかった場合は、ビクトリア州法では、登記官あるいは裁判所が決定できる[1174]。
アフリカ
北アフリカ
北アフリカや中東のアラブ諸国では、イスラム教徒の女性は伝統的には婚姻時に改氏しない[1041]。
東アフリカ
- エチオピア
- 婚姻してもほとんどの女性は改氏しない[1176]。
- エリトリア
- 婚姻してもほとんどの女性は改氏しない[1176]。
- ソマリア
- ソマリ人は伝統的には結婚しても改氏しない。一方、西欧社会的な家庭では、妻は夫の氏を用いる[1041]。
- ケニア
- 結婚時に改氏することもしないことも可能[1177]。
- ウガンダ
- 結婚時に改氏することもしないことも可能[1178]。
- ルワンダ
- 氏が同じことは親類関係を意味せず、氏は家族間で異なるのが一般的。慣習では、子には家族のいずれとも異なる氏をつける。家族がすべて同じ氏を持つことは極めて稀[1149]。
西アフリカ
中部アフリカ
- カメルーン
- 別氏、夫氏での同氏から選択可[1182]。
- ガボン
- 婚姻しても女性は改氏しない。夫の姓を用いる、あるいは加えることもできる[1183]。
- アンゴラ
- 別氏、同氏、複合氏から選択可[1184]。
南部アフリカ
- 南アフリカ共和国
- 別氏または夫の氏からの選択可[1185]。1997年からは複合氏も可能となった[1186]。子の氏は、父氏、母氏、複合氏のいずれも可能[1149]。
- ナミビア
- 同氏、別氏ともに可能。子は両親のいずれかの氏とする。2013年現在、子の氏に選択肢を広げる議論がある[1149]。
- ボツワナ
- 婚姻時に女性は、別氏、同氏、複合氏、夫の氏名に「Mrs.」を追加したものを用いる、の内から選択可。伝統的には女性が夫の氏にならう[1187]。
- ジンバブエ
- 結婚時の氏に関する法はなく、婚前の氏を用いることも、夫の氏に変更することも可能[1188]。
- マラウイ
- 婚姻時に改氏する法的な必要は無い。とくに北部では伝統的に改氏しない[1189]。
脚注
注釈
- ^ 戸籍実務では「戸籍上の氏」と「民法上の氏」は区別して運用され、それらが異なる場合は戸籍上の氏が法的な氏(本名)として扱われる。
- ^ 野田聖子は、2004年に、党内で選択的夫婦別氏が推進されない背景に神社庁(神社本庁)の反対があると述べている[101]。
- ^ 大脇雅子は、法案が提出されなかった原因として、20名の賛同者が必要で、自社さ政権では「3、2、1の法則」があり自民党側でうち10名の提案者が必要だったが揃わず、自民党のバックの宗教団体の反対署名も多かったことを挙げている[103]。
- ^ 稲田朋美は2015年の時点で、導入に否定的な発言を行った[117]が、2018年には選択的夫婦別姓へ賛成に転じている[118]。一方、この「婚前氏続称制度」案の発表の後、この案は選択的夫婦別姓制度とは異なるもので、選択的夫婦別姓制度へは反対である、とも主張している[119]。
- ^ 例えば、蘇我大臣馬子の場合、蘇我が氏名、大臣が姓。
- ^ 筑前国島郡川辺里戸籍(702年)では、夫婦はすべて別氏[134]。
- ^ 大宝2年(702年)御野国加毛郡半布里戸籍、同年豊前国仲津郡丁里戸籍、養老5年(721年)下総国葛飾郡大嶋郷戸籍、延喜2年(902年)阿波国板野郡田上郷戸籍などでは夫婦同氏と別氏が見られる[135]。
- ^ 寛弘元年(1004年)讃岐国入野郷戸籍・同年国郡未詳戸籍では19夫婦の全てが同氏だった[135]。
- ^ 例えば、九条尚経の娘、二条尹房正妻経子=二条北政所、伏見宮貞敦親王の娘、二条晴良正妻位子女王=二条北政所。
- ^ 坂田聡によれば、1471年(文明3年)や1528年(大永8年)、1545年(天文14年)の丹波国山国荘の資料で同苗字の夫婦の記載が見られる[140]。
- ^ 熊谷開作は、天明3(1783)年・文化13(1816)年の長野県東筑摩郡坂北村の寺院再建奉加帳や同県南安郡33箇所の講中名簿でほとんどの農民の氏が記載されていた例を紹介している。これらの例では、妻は「同人妻」と表記されている[147]。
- ^ 「○左右衛門」や「○兵衛」など
- ^ 高柳真三は、当時の夫婦別氏は慣習法によるもの、としている[151][152][153]
- ^ 芦東山の妻からの夫の幽閉赦免願書に「飯塚妱【女へんに召】」(いいづかちょう)と生家の氏での署名がある。
- ^ 松尾家に嫁いだ妻多勢(たせ)が平田国学に入門した際の誓詞帳に「松尾佐治右衛門妻 竹村多勢子」と実家の氏での署名がある。
- ^ 梁川紅蘭は夫の梁川星巌(稲津長澄)の苗字を名乗った、としている。
- ^ これについて奥富孝之は、この氏使用は浸透しなかった、としている[161]。
- ^ 例えば、西郷吉之助は西郷隆盛となった。
- ^ 奥富孝之は、古くからの苗字を変更するケースや、同居の父・兄・弟が別々の氏を届け出るケース、また、妻が実家の氏で届け出て受理されるケースもあった、とする[164]。
- ^ 原文は旧字体カタカナ、以下同じ。
- ^ 妻が戸主として夫の家から分家した場合も同様[168]。
- ^ この理由について、井戸田博史は、近世の夫婦別氏は正室と側室が同居する一夫多妻制において妻の「出所」を明らかにする趣旨であり[175][176]、嫁入りしても妻がよそ者扱いされる「男尊女卑」的な夫婦別氏には違和感があったため、と主張している[177]。一方、柴桂子は、江戸時代の武家の母は息子に対して権威を持っており男尊女卑とはいえない、と主張している[178]。
- ^ 第40条「凡姓は暦世更改すべからず。名は終身更改すべからず。」
- ^ 起草者は箕作麟祥・牟田口通照、実質は箕作の単独起草とも言われ、全編完成は翌年である[181]。
- ^ 第188条「婦は其夫の姓を用ふ可し」
- ^ 明治11年頃までは用語が確定せず、法令では姓・苗字・氏が混用されていた[182]。
- ^ 星野通は、同草案は概してフランス民法典の直訳としている[183]。ただし久武綾子は、夫婦の氏の規定は本条の独自規定であり[184]、参照した外国法があったとしてもそれはイタリア民法か、としている[185]。
- ^ 前年の太政官指令と異なり夫婦同氏と規定したことについて久武綾子は、「氏」に対する明治政府の自信の無さの表れ、としている[186]一方、井戸田博史は、不平等条約改正を意識してキリスト教系の夫婦一体論を参考にしたものの[187]、当時の庶民慣習の「夫家の氏への夫婦同氏」と軌を一にするもの、としている[188]。
- ^ 人事編38条1「婚姻に二種あり普通婚姻及び特例婚姻とす」2「婦其夫の氏を称し其身に従ふときは之を普通婚姻と云ふ/反対の場合に於ては之を特例婚姻と云ふ」3「特例婚姻は双方の明瞭なる意思に出つるを要す/其意思に疑ひあるときは普通婚姻と看做す」
- ^ 熊谷開作によれば、外国法では主としてフランス・イタリア民法、ほかにベルギー民法草案も参照したとされる[189]。
- ^ 同条の婚姻を二種に区別していることについては起草者の熊野は慣習に基づくもの[190]とし、熊谷開作は(熊野の)主観的には慣習に立脚していた、としている[191]。一方、熊谷は、当時そのような慣習が既に確立していたとは言えない、としている[192]。井上操は、草案について慣習に従った、としている[193][194]。井戸田博史は、当時の庶民意識は夫婦同氏に近かったとしている[195][196]。
- ^ 再調査案人事編342条1「戸主とは一家の長を謂ひ家族とは戸主の配偶者及ひ其家に在る親族を謂ふ」2「戸主及ひ家族は其家の氏を称す」23条1「婚姻に二種あり普通婚姻及び特例婚姻是なり」2「婦か夫の氏を称し其身分に従ふときは之を普通婚姻と謂ひ夫か戸主たる婦の氏を称し其身分に従ふときは之を入夫婚姻と謂ふ」3「入夫婚姻は双方の明示の意思に出つることを要す若し其の意思を明示せさるときは普通婚姻と看做す」
- ^ 熊谷開作は地方の判事・検事から特例婚姻を廃すべきとの批判があったとするとともに、「夫の氏」が「家の氏」となり草案が保守化した、と評している[199][200]。青山道夫は、女性が例外的に家長たりえるのは日本法独自の特徴、としている[201]。
- ^ 人事編第243条1「戸主とは一家の長を謂ひ家族とは戸主の配偶者及ひ其家に在る親族、姻族を謂ふ」2「戸主及ひ家族は其家の氏を称す」同258条「入夫婚姻の場合に於ては婚姻中入夫は戸主を代表して其権を行ふ」
- ^ ただし、星野は、当時進歩的と評された1888年のドイツ民法草案を旧民法が参照しなかったことに批判があった、としている[206]。岩田新は、当時ほとんどドイツ法の情報は入っておらず、同年に中江兆民がザクセン相続法を訳出した程度であった、としている[207]。星野通は、獨逸学協会学校が設立されたのは1883年(明治16年)だが、民法への影響力は無かったとしている[208]。
- ^ 明治民法746条についての1898年の民法修正案理由書で旧民法人事編243条2項と同一法文だと説明されている[210]。
- ^ 起草委員の梅謙次郎は、日本の慣習に従った、とし[211]、同委員の奥田義人は、妻が生家の氏を称する慣習はなくなったため夫婦同氏を規定した、としている[212][213]。
- ^ これについて、法典調査会委員の穂積八束、富井政章、横田国臣が支持している(第127回法典調査会)[215]。
- ^ 1802年に若干緩和
- ^ フランス民法1970年改正前第213条で夫を家族の首長と規定[217]。同311条1(現300条)で「別居を宣告する判決若は後の判決は妻に夫の氏を称することを禁じ、又は之を称せざることを許せざることを許可することを得。夫が自己の氏に妻の氏を付加したる場合に於ては、妻は夫に之を称することを禁止すべき旨請求することを得」[218]、同299条2で「離婚の効果に因り各配偶者は自己の氏を回復す」としている[219]。なお、「夫が自己の氏に妻の氏を付加したる場合」というのは、シャンパーニュなど一部地方の慣習の追認[220]。
- ^ 久武綾子は、フランスでも氏不変の原則は学者や一部の知識人に知られていたに過ぎなかった、としている[221]。
- ^ 滝沢聿代は、婚姻中妻が夫の氏を称するのが一般的だったため、1893年改正法は慣習を追認しており、婚姻中妻に夫の氏の使用権を認めたもの、と解している[222]。
- ^ オランダ民法旧63条で「何人に限らず王の允許を受くるに非ざれば自己の姓を変更し又は自己の姓に他の姓を添加することを得ず」とされた[224]。
- ^ イタリア民法1975年改正前第144条で、「夫は家族の長である。妻は夫の市民上の地位に従い、夫の家名を採りそして夫がその住所を定めるにつき便宜であると信ずるところにはどこへでも夫に随伴すべき義務を負う」としている[226]。
- ^ 2013年改正前オーストリア民法第93条1で、「夫婦は同一の氏を称しなければならない。この氏は夫の氏である。ただし、妻の氏を共通の氏と定めることも可能」同条2で「夫の氏が共通の氏であるとき、妻は旧姓を後置できる」としている[228]。
- ^ 滝沢は、明治民法では離婚すると「実家に復籍」するため旧氏に復する(739・746条)のに対し、ドイツ法では離婚しても当然には復氏しない、という差異があるとしている[234]。
- ^ スイス民法改正前第161条1で、「妻は夫の姓及び身分権を取得す」としている[235]
- ^ ドイツ民法1976年改正前第1355条で、「妻は夫の氏を称するものとす」としている[236]。
- ^ 入夫婚姻の対象となる女戸主については、一部のフランス法派委員から認めない修正説も出たが退けられ、両当事者の意思表示があるときに継続が認められる規定(736条)が採られた[240][241]。
- ^ 起草当事者の小澤文雄によれば、当初は夫氏婚とする案にも反対はなかった。また、起草当事者の奥野健一によれば、日本人の意見を聴取する中で、三代戸籍は廃止し、夫婦の氏の自由化すべき、となった。起草当事者の中川善之助によれば、米国女性中尉より夫氏婚は日本国憲法第24条違反との指摘があり現行案となったが、日本側でも同様の修正は決まっていた[243]。中川は、新法は家族生活の保障を基本的人権の尊重に連なるものとして保護しようとした妥当な妥協的態度だったと評している[244][245]。
- ^ 熊谷開作はこれについて、女性の社会進出が進むに伴い妻の事情も考慮すべき必要が生じたため、としている[250]。
- ^ 中心となったのは佐々木静子参議院議員。吉田信一によれば、本来の目標は選択的夫婦別氏の導入だったとされる[30]。
- ^ 1993年敗訴、1998年東京高裁で和解。
- ^ 後に和解
- ^ 大橋正春(弁護士出身)、池上政幸・小貫芳信(以上検察官出身)、山本庸幸(行政官出身)、 寺田逸郎、千葉勝美、大谷剛彦、山崎敏充、大谷直人、小池裕の10名[354]。
- ^ 女性裁判官の3名は鬼丸かおる(弁護士出身)、岡部喜代子(民法学者)、桜井龍子(労働省出身)。男性裁判官2名は山浦善樹、木内道祥(以上弁護士出身)[354]。
- ^ 大谷直人、池上政幸、小池裕、木澤克之、菅野博之、山口厚、戸倉三郎、深山卓也、林道晴、岡村和美、長嶺安政の11人。
- ^ 宮崎裕子、三浦守、草野耕一、宇賀克也の4人。
- ^ 選択肢「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」
- ^ 選択肢「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」
- ^ 選択肢「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」
- ^ なお、回答数を年齢ごとの人口分布に重み付けし直し回答結果を人口構成に補正すると、選択的夫婦別姓制度導入への賛成は36.6%、法改正反対は34.6%と逆転することが、参議院法務委員会で報告されている[473][474]。
- ^ 同時期の大手メディアの調査との乖離について、総理府調査の設問の問い方が「他人がそうしたいなら認めてよい」という意識ではなく、「自分の問題」として受け止めてしまうようなものとなっていた、と朝日新聞や高橋菊江は主張している[134][482]。
- ^ 幹事長の井上義久[529]、参議院会長の魚住裕一郎が2015年に[530]、代表の山口那津男は、2016年[531][532]や2020年に[533][534]、公明党の女性委員会(委員長:公明党副代表の古屋範子)は2020年に[388]、選択的夫婦別姓制度導入に肯定的な発言を行っている。そのほか、公明党機関局の発行する公明新聞は、2019年[535]や2021年[536]に選択的夫婦別姓制度導入に積極的な記事を掲載している。
- ^ 2019年には、党代議士会長の小宮山泰子[546]、代表の玉木雄一郎[113]、党男女共同参画推進本部長の徳永エリ[547]が選択的夫婦別姓制度導入に積極的な発言を行っている。
- ^ 委員長の志位和夫は「本当の意味での両性の平等、個人の尊厳、基本的人権の観点から認めるべきだ」と訴えている[96]。
- ^ 代表(当時)の糸数慶子は2013年[556][557]、2014年[558]に選択的夫婦別氏導入に積極的な発言を行っている。また、2021年2月10日には、同党の高良鉄美、伊波洋一が選択的夫婦別氏制度早期実現を求めた法曹関係者の共同声明を受け取っている[559]。
- ^ 2019年にも、mネットによるアンケート調査に対し、選択的夫婦別氏導入に「賛成する」と回答[560]。代表の山本太郎は選択的夫婦別氏導入に「賛成」としている[561][562]ほか、第189回国会法務委員会では「選択的夫婦別姓の導入など民法等の改正を求めることに関する請願」の紹介議員となっている[563]。また、朝日新聞による2019年参議院選挙候補者アンケート調査では、同党の回答のあった全候補者が選択的夫婦別姓に「賛成」と回答した[562][564]。
- ^ 首相(当時)の小泉純一郎は2004年、石井郁子の質問に対し、夫婦同氏は男女平等に反しないと答弁している[565]。
- ^ 2014年に森まさこ男女共同参画担当大臣は、自民党の野党時代の2010年の公約における選択的夫婦別姓制度反対は、「民主党が当時提出した法案への反対」であった、と説明した[568][569]。
- ^ 2017年や2019年の朝日新聞調査では、議員単位では賛成議員も反対議員もみられる[572][562][564]。また、2018年3月、法務大臣(当時)の上川陽子は、政府見解として、選択的夫婦別姓制度制度の導入には慎重な姿勢を示している[573]。また、2018年に、外務大臣(当時)の河野太郎は、選択的夫婦別姓問題について、政府に特定の立場はないが社会の一部の関心が高い問題、と述べている[574]。
- ^ 同年のmネットのアンケートに対しては「反対する」と回答した[560]。
- ^ 創生「日本」(会長・安倍晋三・当時)は、2010年に運動方針のひとつとして選択的夫婦別氏法案への反対を掲げた[576][577][307]。安倍晋三は2010年に、「夫婦別姓は家族の解体を意味する。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという左翼的かつ共産主義のドグマだ」と述べた[578]。2016年2月29日に衆議院予算委員会で岡田克也からこの発言の真意を質問され、「(民法750条を合憲とした)最高裁判決における指摘や国民的議論の動向を踏まえながら慎重に対応する必要がある」と回答した[579][580]。2019年7月2日には、野党との党首討論において選択的夫婦別姓の是非について聞かれ、「いわば経済成長とは関わりがないというふうに考えています」などと答えた[581][582]。また、同月3日の党首討論においても、「選択的夫婦別姓に賛成の方は挙手を」との質問に対し、出席した党首の中で唯一挙手しなかった[583]。
- ^ 首相の菅義偉は、2020年11月6日、以前に選択的夫婦別氏を推進する立場で議員活動をしていたことを認めるとともに、そのように主張してきたことに「責任がある」と述べている[392]。
- ^ 一方、同党発足時の暫定代表だった橋下徹は選択的夫婦別姓制度導入に賛成[585]であるが、橋下は2017年に、日本維新の会が選択的夫婦別姓を認めない政党だとして批判している[585]。2019年のmネットによる選択的夫婦別姓への賛否についての各党へのアンケートでは、日本維新の会は「どちらとも言えない」と回答[560]。
- ^ 共同代表小沢一郎は、2014年の調査では「どちらとも言えない」[587]としていたが、2017年の調査では「どちらかといえば賛成」としている[572]。小沢は新進党時代から「賛成」としていた[588]。
- ^ 2015年には、代表(当時)の岡田克也や、代表代行(当時)の蓮舫が、2016年の民進党への党名変更後も政調会長(当時)の山尾志桜里が、選択的夫婦別姓推進論を表明している[597][530][589]。
- ^ 議員単位では賛否が分かれた[587]。代表(当時)の松野頼久は「どちらかといえば賛成」[587]。
- ^ 自民党会派が提案[299]。
- ^ 東京都議会では、2019年6月の定例都議会で意見書を求める請願が採択されたものの、当初は、実際の意見書提出は同文教委員会理事会で審議し全会一致で決定する慣例となっており、見送られた[373][273]。2021年6月に再度審議され、自民党を含む全会派一致で可決され、意見書が提出された[274]。
- ^ 参加者・関係者は、西川京子、高市早苗、長谷川三千子、市田ひろみ[656]、小野田町枝、桂由美[657]など。
- ^ 亀井静香、吉田公一、長尾敬、下村博文、平沼赳夫、衛藤晟一、山谷えり子、有村治子ら。
- ^ 塚田穂高は、神道政治連盟と日本会議の密接な関係があるとしている[660][659]。
- ^ 鈴木エイトは、日本会議の前身の日本を守る国民会議の発起人に多数の統一教会関係者が入っており、統一教会の上層部に日本会議の会員も多く、世日クラブ(統一教会を母体とする宗教紙「世界日報」の読者向けクラブ)にも日本会議関係者が多数いる、としている[692]。
- ^ 新生佛教教団は、日本会議の構成団体であり[662]、現教団代表の秋本和徳は日本会議の代表委員に名を連ねている[697]。
- ^ 2015年の報道では96%[861]
- ^ 東アジア地域において夫婦別姓を原則とした国が多い理由については諸説ある。青山道夫らは儒教的な文化が強いためと主張している[972]。大村敦志らは、血縁意識が強いため、と主張している[973][974]。
- ^ このヒンズー教徒における夫婦同氏に関連して、2001年時点で、インドは「同氏制」とする報告が見られる(男女共同参画会議基本問題専門調査会)[979]
- ^ なお、変更の必要はこの発言の前よりなかった[1026]。
- ^ その後、2013年に同性婚も法制化された[1062]。
出典
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参考文献
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- 栗田路子ほか『夫婦別姓-家族と多様性の各国事情』、ちくま新書、2021年
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- 二宮周平『多様化する家族と法I 個人の尊重から考える』朝陽会、2019年
- 日本弁護士連合会編『今こそ変えよう!家族法 婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える』日本加除出版、2011年
- 福島瑞穂ほか『楽しくやろう夫婦別姓 これからの結婚必携』明石書店、1989年
- 増本敏子・久武綾子・井戸田博史『氏と家族』大蔵省印刷局、1999年
- 民法改正を考える会『よくわかる民法改正 選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて』朝陽会、2010年
- 八木秀次・宮崎哲弥編 『夫婦別姓大論破!』洋泉社、1996年
- 事実婚論
- 阪井裕一郎『事実婚と夫婦別姓の社会学』白澤社、2021年
- 二宮周平『事実婚を考える もう一つの選択』日本評論社、1991年
- 民法典編纂史・立法資料
- 梅謙次郎『民法要義 巻之四親族法』和佛法律學校、1902年
- 手塚豊『明治民法史の研究(下) 手塚豊著作集第八巻』慶應通信株式会社、1991年
- 星野通『明治民法編纂研究史』ダイヤモンド社、1943年
- 我妻榮編『戦後における民法改正の経過』日本評論新社、1956年
- 歴史論
- 井戸田博史『「家」に探る苗字となまえ』雄山閣出版、1986年
- 大藤修『日本人の姓・苗字・名前 人名に刻まれた歴史』吉川弘文館、2012年
- 奥富孝之『名字の歴史学』角川書店、2004年
- 熊谷開作『婚姻法成立史序説』酒井書店、1970年
- 坂田聡『苗字と名前の歴史』吉川弘文館、2006年
- 久武綾子『夫婦別姓 その歴史と背景』世界思想社、2003年
関連項目
- 家族法 - 民法 (日本)、戸籍法、戸籍、住民票、養子、婚外子、法制審議会
- 結婚 - 事実婚、国際結婚、同性結婚、離婚、親権、共同親権
- 人名 - 通称、旧姓、国立大学夫婦別姓通称使用事件
- 人権 - 個人の尊厳、アイデンティティー、プライバシー
- 差別 - ジェンダー、間接差別、男女共同参画、家父長制
- 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約 - 女子差別撤廃委員会
- 例外的に夫婦の別姓を実現させる会
- 国民識別番号 - 個人番号
- Surname - Maiden and married names