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「アルカロイド」の版間の差分

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[[ファイル:Papaver somniferum 01.jpg|thumb|250px|初めての単一のアルカロイドである[[モルヒネ]]は1804年に[[ケシ]](''Papaver somniferum'')から単離された<ref>{{cite book|url=http://books.google.com/?id=MtOiLVWBn8cC&pg=PA20|page=20|title=Molecular, clinical and environmental toxicology|author=Andreas Luch|publisher=Springer|year=2009|isbn=3-7643-8335-6}}</ref>。]]
'''アルカロイド''' (alkaloid) は[[窒素]]原子を含み、[[塩基性]]を示す天然由来の有機化合物の総称。かつては植物塩基(英語 plant base)という訳語も用いられた。この訳語が提唱されたのは1818年である。現在、近似種を含め約数千種があるといわれている。その元祖と言われているのは、ドイツの薬剤師ゼルチュネル (Sertürner) が1804年(1805年という記述もある)に[[アヘン]]から分離抽出したモルフィン、つまり[[モルヒネ]]であるとされている<!-- らしい -->。
'''アルカロイド''' (alkaloid) は[[窒素]]原子を含み、ほとんどの場合[[塩基性]]を示す天然由来の有機化合物の総称である。一部のアルカロイドには中性<ref name="goldbook.iupac.org">[http://goldbook.iupac.org/A00220.html IUPAC. Compendium of Chemical Terminology], 2nd ed. (The "Gold Book"). Compiled by A. D. McNaught and A. Wilkinson. Blackwell Scientific Publications, Oxford (1997) ISBN 0-9678550-9-8 {{doi|10.1351/goldbook}}</ref>や弱[[酸性]]<ref>R. H. F. Manske. ''The Alkaloids. Chemistry and Physiology''. Volume VIII. – New York: Academic Press, 1965, p. 673</ref>を示すものもある。また、似た構造を有する一部の合成化合物もアルカロイドと呼ばれる<ref>Robert Alan Lewis. [http://books.google.com/books?id=caTqdbD7j4AC&pg=PA51 ''Lewis' dictionary of toxicology'']. CRC Press, 1998, p. 51 ISBN 1-56670-223-2</ref>。[[炭素]]、[[水素]]、[[窒素]]に加えて、アルカロイドは[[酸素]]や[[硫黄]]、その他稀に[[塩素]]、[[臭素]]、[[リン]]といった元素を含む<ref name="XimE: alkaloidy">[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/119.html Chemical Encyclopedia: alkaloids]</ref>。


かつては植物塩基(英語: plant base)という訳語も用いられた。この訳語が提唱されたのは1818年である。現在、近似種を含め約数千種があるといわれている。その元祖と言われているのは、ドイツの薬剤師[[フリードリッヒ・ゼルチュルネル|ゼルチュネル]]が1804年(1805年という記述もある)に[[アヘン]]から分離抽出したモルフィン、つまり[[モルヒネ]]であるとされている<!-- らしい -->。
==構造==
大半は[[アミノ基]]や[[イミノ基]]を持つ。窒素源が[[アミノ酸]]に由来する場合が多いが、アンモニア性窒素に由来するものも存在し、そのようなものを'''偽アルカロイド''' (擬アルカロイド, プソイドアルカロイド, pseudo-alkaloid) と呼ぶ。また、窒素源をアミノ酸由来とするものは[[脱炭酸]]反応を伴うものとそうでないものが存在し、それぞれ'''真正アルカロイド''' (true alkaloid)、'''不完全アルカロイド''' (proto-alkaloid) と呼ぶ。


アルカロイドは、[[微生物]]、[[真菌]]、[[植物]]、[[動物]]を含む非常に様々な生物によって生産され、[[天然物]]([[二次代謝産物]]とも呼ばれる)の中の一群を成している。多くのアルカロイドは{{仮リンク|酸塩基抽出|en|Acid-base extraction}}によって粗抽出物から精製できる。多くのアルカロイドは他の生物に対して有[[毒]]である。しばしば[[薬理学|薬理]]作用を示し、[[医薬品|医薬]]や娯楽のための麻薬としてや、{{仮リンク|幻覚剤|en|Entheogen|label= 幻覚}}儀式において使用される。
==存在と性質==

多くは植物から発見されているが、動物由来の[[アミン]]もアルカロイドとしての性質を有するものがある。[[生理学]]的に共通した性質はあまりなく、多彩な効果を発揮する。[[化学]]的には塩基性を持つため、酸と反応しやすいという性質を持つ。そのため、[[塩 (化学)|塩]]として存在する場合も多い。
アルカロイドとその他の窒素を含む天然化合物との境界は明確ではない<ref name="Meyers">Robert A. Meyers ''Encyclopedia of Physical Science and Technology'' – Alkaloids, 3rd edition. ISBN 0-12-227411-3</ref>。[[アミノ酸]]、[[ペプチド]]、[[タンパク質]]、[[ヌクレオチド]]、[[核酸]]、[[アミン]]、[[抗生物質]]のような化合物は通常アルカロイドとは呼ばれない<ref name="goldbook.iupac.org"/>。[[脂環式化合物|環外]]の位置に窒素を含む天然化合物([[メスカリン]]、[[セロトニン]]、[[ドパミン]]等)は、通常アルカロイドよりも[[アミン]]と呼ばれる<ref>Leland J. Cseke [http://books.google.com/books?id=wV2T41nGFc4C&pg=PA30 Natural Products from Plants] Second Edition. – CRC, 2006, p. 30 ISBN 0-8493-2976-0</ref> しかしながら、一部の著者らはアルカロイドをアミンの特別な場合であると考えている<ref>A. William Johnson [http://books.google.com/books?id=0X4cQus2gz8C&pg=PA433 Invitation to Organic Chemistry], Jones and Bartlett, 1999, p. 433 ISBN 0-7637-0432-6</ref><ref>Raj K Bansal [http://books.google.com/books?id=1B6ijcTkD5EC&pg=PA644 A Text Book of Organic Chemistry]. 4th Edition, New Age International, 2004, p. 644 ISBN 81-224-1459-1</ref><ref name="Aniszewski 110">Aniszewski, p. 110</ref>。

==名称==
[[ファイル:Meissner alkalod definition article 1819.png|thumb|160px|「アルカロイド」の概念を導入した文献。]]

「アルカロイド」({{lang-de|Alkaloide}})という名称は、ドイツ人化学者Carl F.W. Meissnerによって1819年に導入された。この単語は後期ラテン語の語幹''{{lang-la|alkali}}''(同じく、「植物の灰」を意味するアラビア語 ''al-qalwī'' から来ている)と「~のような」を意味するギリシャ語の接尾辞''{{lang|el|-οειδής}}''に由来する<ref>In the penultimate sentence of his article [W. Meissner (1819) "Über Pflanzenalkalien: II. Über ein neues Pflanzenalkali (Alkaloid)" (On plant alkalis: II. On a new plant alkali (alkaloid)), ''Journal für Chemie und Physik'', vol. 25, pp. 377–381] Meissner wrote "Überhaupt scheint es mir auch angemessen, die bis jetzt bekannten Pflanzenstoffe nicht mit dem Namen Alkalien, sondern Alkaloide zu belegen, da sie doch in manchen Eigenschaften von den Alkalien sehr abweichen, sie würden daher in dem Abschnitt der Pflanzenchemie vor den Pflanzensäuren ihre Stelle finden." (In general, it seems appropriate to me to impose on the known plant substances not the name "alkalis" but "alkaloids", since they differ greatly in some properties from the alkalis; among the chapters of plant chemistry, they would therefore find their place before plant acids [since "Alkaloid" would precede "Säure" (acid)].)</ref>。しかしながら、この用語は1880年代の{{仮リンク|アルベルト・ラーデンブルク|en|Albert Ladenburg}}の化学辞典に収録されたO. Jacobsenによる総説記事の出版後になって広く使用されるようになった<ref>Hesse, pp. 1–3</ref>。

アルカロイドを命名する固有の方法は存在しない<ref name="Hesse 5">Hesse, p. 5</ref>。多くの個別の名称は、化合物が単離された種あるいは属名に接尾辞 "ine" を付加して作られている<ref>接尾辞 "ine" はギリシャ語の女性父称を作る接尾辞であり、「~の娘」を意味する。すなわち、[[アトロピン]]は「Atropa(ベラドンナ)の娘」を意味する。[https://webspace.yale.edu/chem125/125/history99/5Valence/Nomenclature/alkanenames.html]</ref>。例えば、[[アトロピン]]は[[オオカミナスビ]](ベラドンナ、学名: ''Atropa belladonna'')から単離され、[[ストリキニーネ]]は[[マチン]](学名: ''Strychnos nux-vomica'' [[L.]])の種子から得られる<ref name="XimE: alkaloidy"/>。もし複数のアルカロイドが一つの植物から抽出された場合は、接尾辞の"idine"、"anine"、"aline"、"inine"等がしばしば使われる。また、語幹 "vin" ({{仮リンク|ニチニチソウ属|en|Vinca}} (''Vinca'') 植物から抽出されたことを示す)を含むアルカロイドは少なくとも86種類が存在する<ref>Hesse, p. 7</ref>。

== 歴史 ==
[[ファイル:Friedrich Wilhelm Adam Sertuerner.jpg|thumb|left|ドイツ人化学者[[フリードリッヒ・ゼルチュルネル]]は[[アヘン]]から[[モルヒネ]]を初めて単離した。]]
アルカロイド含有植物は医療ならびに娯楽目的で古代からヒトによって使用されてきた。例えば、少くとも紀元前2000年頃の[[メソポタミア]]では薬用植物が知られていた<ref name="Aniszewski 182">Aniszewski, p. 182</ref>。[[ホメーロス]]の『[[オデュッセイア]]』では、エジプト女王から[[ヘレネー]]に与えられた贈り物、『無意識の状態へと導く薬剤』({{lang-la|''principium somniferum''}})について記されている<ref>Hesse, p. 338</ref>。紀元前1世紀から紀元前3世紀に書かれた室内用植物に関する中国の書物には[[マオウ属|シナマオウ]]および[[ケシ]]の医学的用途について述べられている<ref>Hesse, p. 304</ref>。また、[[コカ]]の葉も古代から[[南米]]のインディアンによって使用されていた<ref>Hesse, p. 350</ref>。

[[アコニチン]]や[[ツボクラリン]]といった毒性アルカロイドを含む植物の抽出物は古代から[[毒矢]]に使用されていた<ref name="Aniszewski 182"/>。

アルカロイドの研究は19世紀に始まった。1804年に、ドイツ人化学者[[フリードリッヒ・ゼルチュルネル]]は[[アヘン]]から「催眠素」({{lang-la|principium somniferum}})を単離し、この物質を[[ギリシア神話]]の夢の神[[モルペウス]]に敬意を表して「morphium」と呼んだ。ドイツ語やその他の中央ヨーロッパ言語では今でもこれがこの薬の名称である。英語やフランス語で使われる「morphine」という用語は、フランス人物理学者[[ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサック]]によって命名された。

初期の発展におけるアルカロイドの化学に対して多大な貢献をしたのは、[[キニーネ]](1820年)および[[ストリキニーネ]](1818年)を発見したフランス人研究者[[ピエール=ジョセフ・ペルティエ]]および{{仮リンク|ジョゼフ・ビヤンネメ・カヴェントゥ|en|Joseph Bienaimé Caventou}}である。この頃に、[[キサンチン]](1817年)、[[アトロピン]](1819年)、[[カフェイン]](1820年)、[[コニイン]](1827年)、[[ニコチン]](1828年)、[[コルヒチン]](1833年)、{{仮リンク|スパルテイン|en|Sparteine}}(1851年)、[[コカイン]](1860年)を含むその他いくつかのアルカロイドが発見された<ref>Hesse, pp. 313–316</ref>。

初のアルカロイドの完全合成はドイツ人化学者{{仮リンク|アルベルト・ラーデンブルク|en|Albert Ladenburg}}によって1886年に初めて達成された。ラーデンブルクは、2-メチルピリジンと[[アセトアルデヒド]]を反応させ、得られた2-プロペニルピリジンを[[ナトリウム]]で還元することによってコニインを作り出した<ref name="BSE: koniin">[http://slovari.yandex.ru/dict/bse/article/00036/77600.htm TSB: Coniine]</ref><ref>Hesse, p. 204</ref>。アルカロイドの化学の発展は20世紀の[[分光法]]および[[クロマトグラフィー]]法の出現によって加速され、2008年までに12,000種類を越えるアルカロイドが同定されている<ref>Begley, Natural Products in Plants</ref>。

[[ファイル:Bufotenin.svg|thumb|160px|ある種のカエルから単離されるアルカロイドである[[ブフォテニン]]は[[インドール]]核を含んでおり、生物内でアミノ酸の[[トリプトファン]]から作られる。]]

== 分類 ==
[[File:Nicotine.svg|thumb|160px|[[ニコチン]]分子は[[ピリジン]]環(左)と[[ピロリジン]]環(右)を含む。]]

アルカロイドの大半は[[アミノ基]]や[[イミノ基]]を持つ。

その他のほとんどの天然化合物の分類群と比較して、アルカロイドは大きな構造的多様性によって特徴付けられ、アルカロイドに関する統一的な分類は存在しない<ref name="ref15">Hesse, p. 11</ref>。最初の分類法は歴史的にアルカロイドを共通の天然資源(例えば植物種)によって組み合わせてきた。この分類はアルカロイドの化学構造に関する知識の欠如によって正当化されていたが、現在は時代遅れと考えられている<ref name="XimE: alkaloidy"/><ref>Orekhov, p. 6</ref>。より最近の分類は炭素骨格の類似性(例えば[[インドール]]様、[[イソキノリン]]様、[[ピリジン]]様)あるいは生成前駆体([[オルニチン]]、[[リジン]]、[[チロシン]]、[[トリプトファン]]等)に基づいている<ref name="XimE: alkaloidy"/>。しかしながら、これらはどちらとも決めにくい場合には妥協を必要とする<ref name="ref15" />。例えば、[[ニコチン]]の[[ピリジン]]断片は[[ニコチンアミド]]に、[[ピロリジン]]部位はオルニチンに由来し<ref>Aniszewski, p. 109</ref>、ゆえにどちらの分類群にも割り当てることができる<ref name="ref19">Dewick, p. 307</ref>。

アルカロイドはしばしば以下の主要な群に分類される<ref>Hesse, p. 12</ref>。
;真正アルカロイド
:真正アルカロイド (true alkaloid) は、[[複素環]]に[[窒素]]を含み、[[アミノ酸]]に起源を持つ<ref name="ref21">Plemenkov, p. 223</ref>。代表例は[[アトロピン]]、[[ニコチン]]、[[モルヒネ]]である。この分類群には、窒素複素環に加えて[[テルペン]](例: エボニン<ref>Aniszewski, p. 108</ref>)や[[ペプチド]](例: {{仮リンク|エルゴタミン|en|Ergotamine}}<ref name="ref23">Hesse, p. 84</ref>)断片を含むアルカロイドもある。また、アミノ酸起源でないにもかかわらず<ref name="ref25">Dewick, p. 381</ref>、ピペリジンアルカロイドである[[コニイン]]やコニセインもこの分類群に含まれる<ref name="ref24">Hesse, p. 31</ref>。
;不完全アルカロイド
:不完全アルカロイド (protoalkaloid) は、真正アルカロイドと同様に窒素を含み、アミノ酸に起源を持つが<ref name="ref21" />、複素環を持たない。例としては[[メスカリン]]、[[アドレナリン]]、[[エフェドリン]]がある。
;ポリアミンアルカロイド
:[[プトレシン]]、[[スペルミジン]]、[[スペルミン]]の誘導体。
;ペプチドおよび環状ペプチドアルカロイド<ref name="ref27">{{cite journal|author = Dimitris C. Gournelif, Gregory G. Laskarisb and Robert Verpoorte|title = Cyclopeptide alkaloids|doi = 10.1039/NP9971400075|journal = Nat. Prod. Rep.|year = 1997|volume = 14|pages = 75–82|pmid = 9121730|issue = 1}}</ref>
;偽アルカロイド
:偽アルカロイド(擬アルカロイド, プソイドアルカロイド, pseudo-alkaloid)は、窒素源が[[アミノ酸]]に由来するのではなく、アンモニア性窒素に由来するアルカロイド様化合物である<ref>Aniszewski, p. 11</ref>。この分類群は、テルペン様アルカロイドや[[ステロイド]]様アルカロイド<ref>Plemenkov, p. 246</ref>、[[カフェイン]]、[[テオブロミン]]、[[テオフィリン]]といった[[プリン]]様アルカロイドを含む<ref name="ref30">Aniszewski, p. 12</ref>。一部の著者らは[[エフェドリン]]や{{仮リンク|カチノン|en|Cathinone}}といった化合物を偽アルカロイドに分類している。これらはアミノ酸である[[フェニルアラニン]]に起源を持つが、窒素原子はアミノ酸からではなく[[アミノ基転移]]によって獲得している<ref name="ref30" /><ref name="ref31">Dewick, p. 382</ref>。

一部のアルカロイドは分類群に典型的な炭素骨格を有していない。例えば[[ガランタミン]]およびホモアポルフィン類は[[イソキノリン]]断片を含んでいないが、一般的にイソキノリンアルカロイドとされる<ref>Hesse, pp. 44, 53</ref>。

単量体アルカロイドの主要な分類を以下の表に示す。
<!--the table is translated from the ru.wiki article. Please fix translation glitches -->
{| Class = "wikitable"
|-
! 分類
!主要な群
!主要合成段階
!例
|-
| Colspan = "4" align = "center" bgcolor = "# DADADA" |窒素複素環を含むアルカロイド(真正アルカロイド)
|-
| [[ピロリジン]]誘導体<ref name="ref34">Plemenkov, p. 224</ref>
[[File:Pyrrolidine structure.svg|50px|center]]
|
| [[オルニチン]]あるいは[[アルギニン]] → [[プトレシン]] → ''N''-メチルプトレシン → ''N''-メチル-Δ<sup>1</sup>-ピロリン<ref name="ref35">Aniszewski, p. 75</ref>
| {{仮リンク|クスコヒグリン|en|Cuscohygrine}}、[[ヒグリン]]、ヒグロリン、スタキドリン<ref name="ref34" /><ref>Orekhov, p. 33</ref>
|-
| Rowspan = "2"|[[トロパン]]誘導体<ref name="ref38">[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/2/4609.html Chemical Encyclopedia: Tropan alkaloids]</ref>
[[File:Tropane numbered.svg|100px|center]]
| アトロピン類<br /><small>3、6、7位に置換</small>
| Rowspan = "2"|[[オルニチン]]あるいは[[アルギニン]] → [[プトレシン]] → ''N''-メチルプトレシン → ''N''-メチル-Δ<sup>1</sup>-ピロリン<ref name = "ref35 "/>
| [[アトロピン]]、[[スコポラミン]]、{{仮リンク|ヒオスシアミン|en|hyoscyamine}}<ref name="ref34" /><ref name="ref38" /><ref>Hesse, p. 34</ref>
|-
| コカイン類<br /> <small>2位および3位に置換</small>
| [[コカイン]]、[[エルゴニン]]<ref name="ref38" /><ref>Aniszewski, p. 27</ref>
|-
| Rowspan = "4"|[[ピロリジジン]]誘導体<ref name="ref45">[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/2/3370.html Chemical Encyclopedia: Pyrrolizidine alkaloids]</ref>
[[File:Pyrrolizidine.svg|80px|center]]
| 非エステル
| Rowspan = "3"|植物: [[オルニチン]]あるいは[[アルギニン]] → [[プトレシン]] → ホモスペルミジン → レトロネシン<ref name="ref35" />
| レトロネシン、ヘリオトリジン、ラブルニン<ref name="ref45" /><ref>Plemenkov, p. 229</ref>
|-
| モノカルボン酸エステル
| インジシン、リンデロフィン、サラシン<ref name="ref45" />
|-
| 大環状ジエステル
| プラチフィリン、トリコデスミン<ref name="ref45" />
|-
| 1-アミノピロリジジン類({{仮リンク|ロリンアルカロイド|en|Loline alkaloid|label=ロリン類}})
| {{仮リンク|ネオティフォディウム属|en|Neotyphodium|label=真菌}}: [[プロリン|<small>L</small>-プロリン]] + [[ホモセリン|<small>L</small>-ホモセリン]] → ''N''-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プロリン → ノルロリン<ref name="Blankenship">{{cite journal|author=Blankenship JD, Houseknecht JB, Pal S, Bush LP, Grossman RB, Schardl CL|year= 2005|title=Biosynthetic precursors of fungal pyrrolizidines, the loline alkaloids|journal=Chembiochem|volume=6|pages=1016–1022|pmid=15861432|doi=10.1002/cbic.200400327|issue=6}}</ref><ref name="Faulkner et al 2006">{{cite journal|author=Faulkner JR, Hussaini SR, Blankenship JD, Pal S, Branan BM, Grossman RB, Schardl CL|year= 2006|title=On the sequence of bond formation in loline alkaloid biosynthesis|journal=Chembiochem|volume=7|pages=1078–1088|pmid=16755627|doi=10.1002/cbic.200600066|issue=7}}</ref>
|ロリン、''N''-ホルミルロリン、''N''-アセチルロリン<ref name="Schardl et al 2007">{{cite journal|author=Schardl CL, Grossman RB, Nagabhyru P, Faulkner JR, Mallik UP|year=2007|title=Loline alkaloids: currencies of mutualism|journal = Phytochemistry|volume=68|pages=980–996|doi=10.1016/j.phytochem.2007.01.010|pmid=17346759|issue=7}}</ref>
|-
| Rowspan = "2"|[[ピペリジン]]誘導体<ref>Plemenkov, p. 225</ref>
[[File:Piperidin.svg|50px|center]]
|
| [[リジン]] → [[カダベリン]] → Δ<sup>1</sup>-ピペリデイン<ref>Aniszewski, p. 95</ref>
| セダミン、ロベリン、アナフェリン、[[ピペリン]]<ref name="ref24" /><ref>Orekhov, p. 80</ref>
|-
|
| [[オクタン酸]] → コニセイン → [[コニイン]] <ref name="ref25" />
| [[コニイン]]、コニセイン<ref name="ref25" />
|-
| Rowspan = "5"|{{仮リンク|キノリジジン|en|Quinolizidine}}誘導体<ref name="ref57">[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/2/5011.html Chemical Encyclopedia: Quinolizidine alkaloids]</ref><ref>J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 1. – London: The Chemical Society, 1971, p. 93</ref>
[[File:Quinolizidine.svg|80px|center]]
| {{仮リンク|ルピニン|en|Lupinine}}類
| Rowspan = "5"|[[リジン]] → [[カダベリン]] → Δ<sup>1</sup>-ピペリデイン<ref>Aniszewski, p. 98</ref>
| [[ルピニン]]、ヌファリジン<ref name="ref57" />
|-
| {{仮リンク|シチシン|en|Cytisine}}類
| [[シチシン]]<ref name="ref57" />
|-
| [[スパルテイン]]類
| [[スパルテイン]]、ルパニン、アナヒグリン<ref name="ref57" />
|-
| {{仮リンク|マトリン|en|Matrine}}類
| マトリン、オキシマトリン、アロマトリジン<ref name="ref57" /><ref>J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 1. – London: The Chemical Society, 1971, p. 91</ref><ref>{{cite journal|author = Joseph P. Michael|title = Indolizidine and quinolizidine alkaloids|doi = 10.1039/b208137g|journal=Nat. Prod. Rep|year = 2002|volume = 19|pages = 458–475}}</ref>
|-
| オルサニン類
| オルモサニン、ピプタンチン<ref name="ref57" /><ref>J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 1. – London: The Chemical Society, 1971, p. 92</ref>
|-
| インドリジジン誘導体<ref>Dewick, p. 310</ref>
[[File:Indolizidine.svg|80px|center]]
|
| [[リジン]] → [[α-アミノアジピン酸]]のδ-セミアルデヒド → [[ピペコリン酸]] → 1-インドリジジノン<ref>Aniszewski, p. 96</ref>
| [[スワインソニン]]、[[カスタノスペルミン]]<ref>Aniszewski, p. 97</ref>
|-
| Rowspan = "4"|[[ピリジン]]誘導体<ref name="ref72">Plemenkov, p. 227</ref><ref name="ref73">[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/2/3336.html Chemical Encyclopedia: pyridine alkaloids]</ref>
[[File:Pyridine.svg|50px|center]]
| ピリジンの単純な誘導体
| Rowspan = "3"|[[ニコチン酸]] → ジヒドロニコチン酸 → 1,2-ジヒドロピリジン<ref name="ref74">Aniszewski, p. 107</ref>
| [[トリゴネリン]]、リシニン、[[アレコリン]]<ref name="ref72" /><ref name="ref76">Aniszewski, p. 85</ref>
|-
| 多環式非縮合ピリジン誘導体
| [[ニコチン]]、{{仮リンク|ノルニコチン|en|nornicotine}}、[[アナバシン]]、アナタビン<ref name="ref72" /><ref name="ref76" />
|-
| 多環式縮合ピリジン誘導体
| [[アクチニジン]]、ゲンチアニン、ペジクリニン<ref>Plemenkov, p. 228</ref>
|-
| [[セスキテルペン]]ピリジン誘導体
| [[ニコチン酸]]、[[イソロイシン]]<ref name="Aniszewski 110"/>
| エボニン、ヒッポクラテイン、トリプトニン<ref name="ref73" /><ref name="ref74" />
|-
| Rowspan = "26"|[[イソキノリン]]誘導体および類縁アルカロイド<ref name="Hesse 36">Hesse, p. 36</ref>
[[File:Isoquinoline numbered.svg|90px|center]]
| イソキノリンの単純な誘導体<ref name="XimE: izoxinolin">[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/1642.html Chemical Encyclopedia: isoquinoline alkaloids]</ref>
| Rowspan = "26"|[[チロシン]]あるいは[[フェニルアラニン]] → [[ドーパミン]]あるいは[[チラミン]](アマリリスアルカロイドの場合)<ref>Aniszewski, pp. 77–78</ref><ref name="Begley">Begley, Alkaloid Biosynthesis</ref>
| サルソリン、ロホセリン<ref name="Hesse 36"/><ref name="XimE: izoxinolin"/>
|-
| 1- ならびに3-イソキノリンの誘導体<ref name="Saxton 122">J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 3. – London: The Chemical Society, 1973, p. 122</ref>
| ''N''-メチルコリダルジン、ノルオキシヒドラスチニン<ref name="Saxton 122"/>
|-
| 1- ならびに4-フェニルテトラヒドロイソキノリンの誘導体<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| クリプトスチリン<ref name="XimE: izoxinolin"/><ref name="Hesse 54">Hesse, p. 54</ref>
|-
| 5-ナフチル-イソキノリンの誘導体<ref name="ref83">Hesse, p. 37</ref>
| アンシストロクラジン<ref name="ref83" />
|-
| 1- ならびに2-ベンジル-イソキノリンの誘導体<ref>Hesse, p. 38</ref>
| [[パパベリン]]、{{仮リンク|ラウダノシン|en|laudanosine}}、センダベリン
|-
| クラリン類<ref name="ref86">Hesse, p. 46</ref>
| クラリン、ヤゴニン<ref name="ref86" />
|-
| パビン類およびイソパビン類<ref name="ref88">Hesse, p. 50</ref>
| アルゲモニン<ref name="ref88" />
|-
| ベンゾピロコリン類<ref name="ref90">{{cite journal|author = Kenneth W. Bentley|title = β-Phenylethylamines and the isoquinoline alkaloids|doi = 10.1039/NP9971400387|journal=Nat. Prod. Rep|year = 1997|volume = 14|pages = 387–411|pmid = 9281839|issue = 4}}</ref>
| クリプタウストリン<ref name="XimE: izoxinolin"/>
|-
| プロトベルベリン類<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| [[ベルベリン]]、[[カナジン]]、オフィオカルピン、メカンブリジン、コリダリン<ref name="ref91">Hesse, p. 47</ref>
|-
| フタリドイソキノリン類<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| {{仮リンク|ヒドラスチン|en|Hydrastine}}、[[ナルコチン]]([[ノスカルピン]])<ref>Hesse, p. 39</ref>
|-
| スピロベンジルイソキノリン類<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| フマリシン<ref name="ref88" />
|-
| [[トコン|イペカクアンハ]]アルカロイド<ref name="ref94">Hesse, p. 41</ref>
| エメチン、プロトエメチン、イペコシド<ref name="ref94" />
|-
| ベンゾフェナントリジン類<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| サングイナリン、オキシニチジン、コリノロキシン<ref name="ref96">Hesse, p. 49</ref>
|-
| {{仮リンク|アポルフィン|en|Aporphine}}類<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| [[グラウシン]]、コリジン、リロイデニン<ref>Hesse, p. 44</ref>
|-
| プロアポルフィン類<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| プロヌシフェリン、グラジオビン<ref name="XimE: izoxinolin"/><ref name="ref90" />
|-
| ホモアポルフィン類<ref name="ref99">J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 3. – London: The Chemical Society, 1973, p. 164</ref>
| クレイシギニン、ムルチフロラミン<ref name="ref99" />
|-
| ホモプロアポルフィン類<ref name="ref99" />
| ブルボコジン<ref name="ref86" />
|-
| [[モルヒネ]]類<ref name="ref103">Hesse, p. 51</ref>
| [[モルヒネ]]、[[コデイン]]、[[テバイン]]、{{仮リンク|シノメニン|en|sinomenine}}<ref name="ref104">Plemenkov, p. 236</ref>
|-
| ホモモルヒネ類<ref>J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 3. – London: The Chemical Society, 1973, p. 163</ref>
| クレイシギニン、アンドロシンビン<ref name="ref103" />
|-
| トロポロイソキノリン類<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| イメルブリン<ref name="XimE: izoxinolin"/>
|-
| アゾフルオランテン類<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| ルフェシン、イメルテイン<ref>J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 3. – London: The Chemical Society, 1973, p. 168</ref>
|-
| [[アマリリス]]アルカロイド<ref>Hesse, p. 52</ref>
| [[リコリン]]、アンベリン、タゼッチン、[[ガランタミン]]、モンタニン<ref>Hesse, p. 53</ref>
|-
| {{仮リンク|デイゴ属|en|Erythrina|label=エリスリナ}}アルカロイド<ref name="Hesse 54"/>
| エリソジン、エリトロイジン<ref name="Hesse 54"/>
|-
| [[フェナントレン]]誘導体<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| アテロスペルミニン<ref name="XimE: izoxinolin"/><ref name="ref91" />
|-
| プロトピン類<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| プロトピン、オキソムラミン、コリカビジン<ref name="ref96" />
|-
| アリストラクタム<ref name="XimE: izoxinolin"/>
| ドリフラビン<ref name="XimE: izoxinolin"/>
|-
| [[オキサゾール]]誘導体<ref name="Plemenkov 241">Plemenkov, p. 241</ref>
[[File:Oxazole structure.svg|80px|center]]
|
| [[チロシン]] → [[チラミン]]<ref>Arnold Brossi ''The Alkaloids: Chemistry and Pharmacology'', Volume 35. – Academic Press, 1989, p. 261</ref>
| アンヌロリン、ハルホルジノール、テキサリン、テキサミン<ref>Arnold Brossi ''The Alkaloids: Chemistry and Pharmacology'', Volume 35. – Academic Press, 1989, pp. 260–263</ref>
|-
| [[イソオキサゾール]]誘導体
[[Image:isoxazole structure.png|80px|center]]
|
|[[イボテン酸]] → [[ムッシモール]]
|イボテン酸、ムッシモール
|-
| [[チアゾール]]誘導体<ref name="ref114">Plemenkov, p. 242</ref>
[[File:Thiazole structure.svg|80px|center]]
|
| [[1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸]] (DOXP)、[[チロシン]]、[[システイン]]<ref>Begley, Cofactor Biosynthesis</ref>
| ノストシクラミド、チオストレプトン<ref name="ref114" /><ref>{{cite journal|author = John R. Lewis|title = Amaryllidaceae, muscarine, imidazole, oxazole, thiazole and peptide alkaloids, and other miscellaneous alkaloids|url = http://www.rsc.org/publishing/journals/NP/article.asp?doi=a809403i|journal = Nat. Prod. Rep|year = 2000|volume = 17|pages = 57–84|pmid = 10714899|issue = 1|doi = 10.1039/a809403i}}</ref>
|-
| Rowspan = "3"|[[キナゾリン]]誘導体<ref>[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/2/5003.html Chemical Encyclopedia: Quinazoline alkaloids]</ref>
[[File:Quinazoline numbered.svg|90px|center]]
| 3,4-ジヒドロ-4-キナゾロン誘導体
| Rowspan = "3"|[[アントラニル酸]]あるいは[[フェニルアラニン]]あるいは[[オルニチン]]<ref>Aniszewski, p. 106</ref>
| {{仮リンク|フェブリフギン|en|Febrifugine}}<ref name="ref120">Aniszewski, p. 105</ref>
|-
| 1,4-ジヒドロ-4-キナゾリン誘導体
| グリコリン、アルボリン、グリコスミニン<ref name="ref120" />
|-
| ピロリジンおよびピペリジンキナゾリン誘導体
| バジシン(ペガニン)<ref name="Plemenkov 241"/>
|-
| [[アクリジン]]誘導体<ref name="Plemenkov 241"/>
[[File:Acridine.svg|100px|center]]
|
| [[アントラニル酸]]<ref>{{cite journal|author = Richard B. Herbert|title = The biosynthesis of plant alkaloids and nitrogenous microbial metabolites|url = http://www.rsc.org/publishing/journals/NP/article.asp?doi=a705734b|journal=Nat. Prod. Rep|year = 1999|volume = 16|pages = 199–208|doi = 10.1039/a705734b|last2 = Herbert|first2 = Richard B.|last3 = Herbert|first3 = Richard B.}}</ref>
| ルタクリドン、アクロニシン<ref>Plemenkov, pp. 231, 246</ref><ref>Hesse, p. 58</ref>
|-
| Rowspan = "4"|[[キノリン]]誘導体<ref>Plemenkov, p. 231</ref><ref name="ref126">[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/2/5014.html Chemical Encyclopedia: Quinoline alkaloids]</ref>
[[File:Quinoline numbered.svg|90px|center]]
| 2-[[キノロン]]および4-キノロンのキノリン誘導体の単純な誘導体
| Rowspan = "3"|[[アントラニル酸]] → 3-カルボキシキノリン<ref name="ref127">Aniszewski, p. 114</ref>
| クスパリン、エキノプシン、エボカルピン<ref name="ref126" /><ref>Orekhov, p. 205</ref><ref>Hesse, p. 55</ref>
|-
| 三環性テルペノイド
| フリンデルシンe<ref name="ref126" /><ref name="ref131">Plemenkov, p. 232</ref>
|-
| フラノキノリン誘導体
| ジクタムニン、ファガリン、スキンミアニン<ref name="ref126" /><ref>Orekhov, p. 212</ref><ref>Aniszewski, p. 118</ref>
|-
| [[キニーネ]]類
| [[トリプトファン]] → [[トリプタミン]] → ストリクトシジン(with {{仮リンク|セコロガニン|en|Secologanin}}) → コリナンテアール → シンホニノン <ref name="Begley"/><ref name = " ref127 "/>
| [[キニーネ]]、[[キニジン]]、{{仮リンク|シンコニン|en|cinchonine}}、シンホニジン<ref name="ref131" />
|-
| Rowspan = "10"|[[インドール]]誘導体<ref name="ref104" />
[[File:Indole numbered.svg|100px|center]]
{{See also|インドールアルカロイド}}
| Colspan = "3" align = "center" |非イソプレンインドールアルカロイド
|-
| 単純なインドール誘導体<ref name="ref140">Aniszewski, p. 112</ref>
| Rowspan = "3"|[[トリプトファン]] → [[トリプタミン]]あるいは5-ヒドロキシトリプトファン<ref name="ref141">Aniszewski, p. 113</ref>
| [[セロトニン]]、[[シロシビン]]、[[ジメチルトリプタミン]] (DMT)、[[ブフォテニン]]<ref>Hesse, p. 15</ref><ref>J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 1. – London: The Chemical Society, 1971, p. 467</ref>
|-
| [[β-カルボリン]]の単純な誘導体<ref>Dewick, p. 349-350</ref>
| ハルマン、[[ハルミン]]、[[ハルマリン]]、エレアグニン<ref name="ref140" />
|-
| ピロロインドールアルカロイド<ref name="ref152">Aniszewski, p. 119</ref>
| [[フィゾスチグミン]](エセリン)、エテラミン、フィソベニン、エプタスチミン<ref name="ref152" />
|-
| Colspan = "3" align = "center" |セミテルペノイドインドールアルカロイド
|-
| {{仮リンク|エルゴリン|en|Ergoline|label=麦角アルカロイド}}<ref name="ref104" />
| [[トリプトファン]] → カノクラビン → アグロクラビン → エリモクラビン → パスパル酸 → {{仮リンク|リゼルグ酸|en|lysergic acid}}<ref name="ref152" />
| {{仮リンク|エルゴタミン|en|Ergotamine}}、エルゴバシン、エルゴシン<ref>Hesse, p. 29</ref>
|-
| Colspan = "3" align = "center" |モノテルペノイドインドールアルカロイド
|-
| {{仮リンク|パウシニスタリア属|en|Pausinystalia|label=コリナンセ}}型アルカロイド<ref name="ref141" />
| Rowspan = "3"|[[トリプトファン]] → [[トリプタミン]] → ストリクトシジン(with {{仮リンク|セコロガニン|en|Secologanin}})<ref name="ref141" />
| {{仮リンク|アジマリシン|en|Ajmalicine}}、サルパギン、ボバシン、{{仮リンク|アジュマリン|en|Ajmaline}}、[[ヨヒンビン]]、[[レセルピン]]、{{仮リンク| ミトラギニン|en|Mitragynine}}<ref>Hesse, pp. 23–26</ref><ref>J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 1. – London: The Chemical Society, 1971, p. 169</ref>、[[ストリキニーネ]]類([[ストリキニーネ]]、[[ブルシン]]、アクアミシン、ボミシン)<ref>J. E. Saxton ''The Alkaloids. A Specialist Periodical Report''. Volume 5. – London: The Chemical Society, 1975, p. 210</ref>
|-
| {{仮リンク|イボガ|en|Tabernanthe iboga}}型アルカロイド<ref name="ref141" />
| {{仮リンク|イボガミン|en|Ibogamine}} 、[[イボガイン]]、{{仮リンク|ボアカンギン|en|voacangine}}<ref name="ref141" />
|-
| {{仮リンク|アスピドスペルマ属|en|Aspidosperma|label=アスピドスペルマ}}型アルカロイド<ref name="ref141" />
| {{仮リンク|ビンカミン|en|Vincamine}}、{{仮リンク|ビンカアルカロイド|en|Vinca alkaloid}}、ビンコチン、アスピドスペルミン<ref>Hesse, pp. 17–18</ref><ref>Dewick, p. 357</ref>
|-
| [[イミダゾール]]誘導体<ref name="Plemenkov 241"/>
[[File:Imidazole structure.svg|50px|center]]
|
| [[ヒスチジン]]から直接<ref name="Aniszewski 104">Aniszewski, p. 104</ref>
| [[ヒスタミン]]、ピロカルピン、ピロシン、ステベンシン<ref name="Plemenkov 241"/><ref name="Aniszewski 104"/>
|-
| [[プリン (化学)|プリン]]誘導体<ref>Hesse, p. 72</ref>
[[File:Purin2.svg|90px|center]]
|
| {{仮リンク|キサントシン|en|Xanthosine}}(プリン生合成において形成)→ 7-メチルキサントシン → 7-メチル[[キサンチン]] → [[テオブロミン]] → [[カフェイン]]<ref name="Begley"/>
| [[カフェイン]]、[[テオブロミン]]、[[テオフィリン]]、[[サキシトキシン]]<ref>Hesse, p. 73</ref><ref>Dewick, p. 396</ref>
|-
| Colspan = "4" align = "center" bgcolor = "# DADADA" |側鎖に窒素を有するアルカロイド(不完全アルカロイド)
|-
| β-[[フェネチルアミン]]誘導体<ref name="ref90" />
[[File:Phenylethylamine numbered.svg|110px|center]]
|
| [[チロシン]]あるいは[[フェニルアラニン]] → ジオキシフェニルアラニン → [[ドーパミン]] → [[アドレナリン]]および[[メスカリン]] → [[チラミン]] → 1-フェニルプロパン-1,2-ジオン → {{仮リンク|カチノン|en|cathinone}} → [[エフェドリン]]および[[プソイドエフェドリン]]<ref name="Aniszewski 110"/><ref name="ref31" /><ref>[http://www.plantcyc.org:1555/PLANT/NEW-IMAGE?type=NIL&object=PWY-5883 PlantCyc Pathway: ephedrine biosynthesis]</ref>
| [[チラミン]]、[[エフェドリン]]、[[プソイドエフェドリン]]、[[メスカリン]]、[[カチノン]]、[[カテコールアミン]]類([[アドレナリン]]、[[ノルアドレナリン]]、[[ドーパミン]])<ref name="Aniszewski 110"/><ref>Hesse, p. 76</ref>
|-
| [[コルヒチン]]アルカロイド<ref name="ref179">[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/2069.html Chemical Encyclopedia: colchicine alkaloids]</ref>
[[File:Colchicine.svg|120px|center]]
|
| [[チロシン]]あるいは[[フェニルアラニン]] → [[ドーパミン]] → アウツムナリン → [[コルヒチン]] <ref>Aniszewski, p. 77</ref>
| [[コルヒチン]]、コルカミン<ref name="ref179" />
|-
| [[ムスカリン]]<ref name="ref182">Hesse, p. 81</ref>
[[File:Muscarine.svg|100px|center]]
|
| [[グルタミン酸]] → 3-ケトグルタミン酸 → ムスカリン(with [[ピルビン酸]])<ref>Arnold Brossi ''The Alkaloids: Chemistry and Pharmacology'', Volume 23. – Academic Press, 1984, p. 376</ref>
| [[ムスカリン]]、アロムスカリン、エピムスカリン、エピアロムスカリン<ref name="ref182" />
|-
| ベンジルアミン<ref name="ref185">Hesse, p. 77</ref>
[[File:Benzylamine.svg|90px|center]]
|
| [[フェニルアラニン]]と[[バリン]]、[[ロイシン]]あるいは[[イソロイシン]]<ref>Arnold Brossi ''The Alkaloids: Chemistry and Pharmacology'', Volume 23. – Academic Press, 1984, p. 268</ref>
| [[カプサイシン]]、{{仮リンク|ジヒドロカプサイシン|en|dihydrocapsaicin}}、ノルジヒドロカプサイシン<ref name="ref185" /><ref>Arnold Brossi ''The Alkaloids: Chemistry and Pharmacology'', Volume 23. – Academic Press, 1984, p. 231</ref>
|-
| Colspan = "4" align = "center" bgcolor = "# DADADA" |ポリアミンアルカロイド
|-
| [[プトレシン]]誘導体<ref name="ref189">Hesse, p. 82</ref>
[[File:Putrescine.svg|90px|center]]
|
| Rowspan = "3"|[[オルニチン]] → [[プトレシン]] → [[スペルミジン]] → [[スペルミン]]<ref>[http://www.chem.qmul.ac.uk/iubmb/enzyme/reaction/misc/spermine.html Spermine Biosynthesis]</ref>
| パウシン<ref name="ref189" />
|-
| [[スペルミジン]]誘導体<ref name="ref189" />
[[File:Spermidine.svg|110px|center]]
|
| ルナリン、コドノカルピン<ref name="ref189" />
|-
| [[スペルミン]]誘導体<ref name="ref189" />
[[File:Spermine.svg|130px|center]]
|
| ベルバセニン、アフェランドリン<ref name="ref189" />
|-
| Colspan = "4" align = "center" bgcolor = "# DADADA" |ペプチド(環状ペプチド)アルカロイド
|-
| Rowspan = "2"|13員環ペプチドアルカロイド<ref name="ref27" /><ref name="ref196">Plemenkov, p. 243</ref>
| ヌンムラリンC型
| Rowspan = "8"|異なるアミノ酸から<ref name="ref27" />
| ヌンムラリンC、ヌンムラリンS<ref name="ref27" />
|-
| ジジフィン型
| ジジフィンA、サチバニンH<ref name="ref27" />
|-
| Rowspan = "5"|14員環ペプチドアルカロイド<ref name="ref27" /><ref name="ref196" />
| フラグラニン型
| フラグラニン、スクチアニンJ<ref name="ref196" />
|-
| スクチアニンA型
| スクチアニンA<ref name="ref27" />
|-
| インテゲリン型
| インテゲリン、ジスカリンD<ref name="ref196" />
|-
| アンフィビンF型
| アンフィビンF、スピナニンA<ref name="ref27" />
|-
| アンフィビンB型
| アンフィビンB、ロツシンC<ref name="ref27" />
|-
| 15員環ペプチドアルカロイド<ref name="ref196" />
| ムクロニンA型
| ムクロニンA <ref name="ref23" /><ref name="ref196" />
|-
| Colspan = "4" align = "center" bgcolor = "# DADADA" |疑アルカロイド([[テルペン]]および[[ステロイド]])
|-
| ジテルペン <ref name="ref23" />
[[File:Isoprene.svg|80px|center]]
| リコクトニン型
| [[メバロン酸]] → [[イソペンテニル二リン酸]] → [[ゲラニル二リン酸]]<ref>[http://www.xumuk.ru/encyklopedia/2/4392.html Chemical Encyclopedia: Terpenes]</ref><ref>Begley, Natural Products: An Overview</ref>
| [[アコニチン]]、{{仮リンク|デルフィニン|en|Delphinine}}<ref name="ref23" /><ref>{{cite journal|author = Atta-ur-Rahman and M. Iqbal Choudhary|title = Diterpenoid and steroidal alkaloids|url = http://www.rsc.org/publishing/journals/NP/article.asp?doi=NP9971400191|journal=Nat. Prod. Rep|year = 1997|volume = 14|pages = 191–203|pmid = 9149410|issue = 2|doi = 10.1039/np9971400191}}</ref>
|-
| [[ステロイド]]<ref>Hesse, p. 88</ref>
[[File:Cyclopentenophenanthrene.svg|100px|center]]
|
| [[コレステロール]]、[[アルギニン]]<ref>Dewick, p. 388</ref>
| ソラソジン、{{仮リンク|ソラニジン|en|Solanidine}}、ベラルカミン、[[バトラコトキシン]]<ref>Plemenkov, p. 247</ref>
|}

== 性質 ==
[[ファイル:Cyclopelamb2.jpg|thumb|{{仮リンク|カリフォルニア・コーン・リリー|en|Veratrum californicum}}の葉を食べた羊から生まれた子羊の頭部。この[[単眼症]]は植物に存在するアルカロイドである[[シクロパミン]]によって引き起こされる。]]

ほとんどのアルカロイドは分子構造中に酸素を含んでいる。これらの化合物は穏和な条件においては大抵無色の結晶である。[[ニコチン]]]<ref>[http://slovari.yandex.ru/dict/bse/article/00052/84600.htm TSB: Nicotine]</ref>あるいは[[コニイン]]<ref name="BSE: koniin"/> といった酸素を含まないアルカロイドは通常揮発性、無色、油状液体である<ref name="ref222">Grinkevich, p. 131</ref>。[[ベルベリン]](黄色)や{{仮リンク|サングイナリン|en|Sanguinarine}}(橙色)のように一部のアルカロイドは着色している<ref name="ref222" />。

ほとんどのアルカロイドは弱い塩基であるが、一部のアルカロイド、例えば[[テオブロミン]]および[[テオフィリン]]は[[両性 (化学)|両性]]である<ref name="ref225">G. A. Spiller [http://books.google.com/books?id=Rgs_rVOceZwC&pg=PA140 ''Caffeine''], CRC Press, 1997 ISBN 0-8493-2647-8</ref>。ほとんどのアルカロイドは水に対する溶解性が低いが、[[ジエチルエーテル]]、[[クロロホルム]]、[[1,2-ジクロロエタン]]といった[[有機溶媒]]には容易に溶解する。しかしながら、[[カフェイン]]は沸騰水によく溶ける<ref name="ref225" />。[[酸]]とは、様々な強さで塩を形成する。これらの塩は通常水および[[アルコール]]に可溶でありほとんどの有機溶媒に対する溶解性は低い。例外としては有機溶媒に溶解する[[スコポラミン]]臭化水素酸塩や水溶性のキニーネ硫酸塩がある<ref name="ref222" />。


アルカロイドは植物体内の各種[[アミノ酸]]から[[生合成]]され、[[シュウ酸]]・[[リンゴ酸]]・[[クエン酸]]・[[酢酸]]・[[酒石酸]]などの[[有機酸]]の[[塩]]の状態で各々の体内に保持されている(例えばクエン酸塩、リンゴ酸塩など)。それが何らかの要因で分解、分離、もしくは抽出されればアルカロイドと呼べる物質になり、摂取した動物の体内に諸影響を及ぼす。
アルカロイドは植物体内の各種[[アミノ酸]]から[[生合成]]され、[[シュウ酸]]・[[リンゴ酸]]・[[クエン酸]]・[[酢酸]]・[[酒石酸]]などの[[有機酸]]の[[塩]]の状態で各々の体内に保持されている(例えばクエン酸塩、リンゴ酸塩など)。それが何らかの要因で分解、分離、もしくは抽出されればアルカロイドと呼べる物質になり、摂取した動物の体内に諸影響を及ぼす。


ほとんどのアルカロイドは[[苦味]]を有している。植物は、動物から自身を防御するためにこれらの苦味物質(多くは有毒)を生産する能力を進化により獲得したと考えられている。しかし、動物も同じくアルカロイドを解毒する能力を発達させた<ref>Fattorusso, p. 53</ref>。一部のアルカロイドは、アルカロイドを摂取したものの解毒できない動物の子孫に発育障害を起こす。特徴的な例は[[カリフォルニア・コーン・リリー]] (''Veratrum californicum'') の葉に存在する[[シクロパミン]]である。1950年代の間、コーン・リリーを食べた羊から産まれた子羊の最大25%が重篤な顔面障害を被った。これらの障害は顎の奇形から[[単眼症]]に及んだ。数十年の研究の後、1980年代に、奇形の原因となる物質がアルカロイドである11-デオキシジェルビンと同定され、単眼症 (cyclopia) からシクロパミン (cyloapmine, cyclopia + amine) と命名された<ref>{{cite book|page=362|url=http://books.google.com/?id=nixyqfGIGHcC&pg=PA362|title=Poisonous plants and related toxins, Volume 2001|author=Thomas Acamovic, Colin S. Stewart, T. W. Pennycott|publisher=CABI|year= 2004|isbn=0-85199-614-0}}</ref>。
基本的に植物は、体の中に何種類ものアルカロイドを保持している。例えばケシの実から作られる[[アヘン]]には[[モルヒネ]]、[[コデイン]]などをはじめとして約20種が含まれる。同一の植物に含まれるアルカロイドは化学的に近い性質を持つものであることが多い。植物がその体内に保持しているアルカロイドの中で、比較的含有量が多いものは主アルカロイド、それに伴う幾種ものアルカロイドが副アルカロイドと呼ばれる。


==自然界での分布==
アルカロイドは主に顕花植物、殊に双子葉類の植物に見出される。体内にアルカロイドを含有する植物としては主に、[[キンポウゲ科]]、[[ケシ科]]、[[ナス科]]、[[ヒガンバナ科]]、[[マメ科]]、[[メギ科]]、[[ユリ科]]、[[トウダイグサ科]]、[[ウマノスズクサ科]]など。
[[ファイル:Strychnos nux-vomica - Köhler–s Medizinal-Pflanzen-266.jpg|thumb|[[マチン]]の木。種子には[[ストリキニーネ]]および[[ブルシン]]が豊富に含まれている。]]


アルカロイドは様々な生物によって[[同化 (生物学)|作り出される]]。特に[[維管束植物|高等植物]]はおよそ10から25%の種がアルカロイドを含んでいる<ref>Aniszewski, p. 13</ref><ref>Orekhov, p. 11</ref>。それゆえに、昔は「アルカロイド」という用語は植物を連想させた<ref name="Hesse 4">Hesse, p.4</ref>。基本的に植物は、体の中に何種類ものアルカロイドを保持している。例えばケシの実から作られる[[アヘン]]には[[モルヒネ]]、[[コデイン]]などをはじめとして約20種が含まれる。同一の植物に含まれるアルカロイドは化学的に近い性質を持つものであることが多い。植物がその体内に保持しているアルカロイドの中で、比較的含有量が多いものは主アルカロイド、それに伴う幾種ものアルカロイドが副アルカロイドと呼ばれる。アルカロイドは主に顕花植物、殊に双子葉類の植物に見出される。体内にアルカロイドを含有する植物としては主に、[[キンポウゲ科]]、[[ケシ科]]、[[ナス科]]、[[ヒガンバナ科]]、[[マメ科]]、[[メギ科]]、[[ユリ科]]、[[トウダイグサ科]]、[[ウマノスズクサ科]]など。
アルカロイドは強い生物活性をもつものが多く、[[自然毒|植物毒]]の多くはアルカロイドである。また、薬用植物の主成分もアルカロイドであることが多く、[[医薬品]]の原料として用いられる。

植物のアルカロイド含量は通常数パーセント以内で、植物組織に不均一に分布している。植物の種類に応じて、葉([[ヒヨス]])、[[果実]]あるいは[[種子]]([[マチン]])、根([[インドジャボク]])、樹皮({{仮リンク|キナ属|en|Cinchona}})においてそれぞれ最大濃度が見られる<ref>Grinkevich, pp. 122–123</ref>。その上、植物の異なる組織がそれぞれ異なるアルカロイドを含んでいる場合もある<ref>Orekhov, p. 12</ref>。

植物以外では、アルカロイドはある種の[[真菌]]([[シビレタケ属]] ''Psilocybe''における[[シロシビン]])や動物(ある種のカエルの皮膚における[[ブフォテニン]])でも見出される<ref name="Hesse 5" />。多くの海洋生物もまたアルカロイドを含んでいる<ref>Fattorusso, p. XVII</ref>。高等動物において受容な役割を果たす[[アドレンリン]]および[[セロトニン]]といった一部の[[アミン]]はアルカロイドと構造や生合成が類似しており、アルカロイドと呼ばれることがある<ref>Aniszewski, pp. 110–111</ref>。

==抽出==
[[ファイル:Piperine crystals.jpg|thumb|[[コショウ]]から抽出された[[ピペリン]]の結晶。]]

アルカロイドの構造的多様性のため、天然素材からアルカロイドを抽出する単一の手法は存在しない<ref name="Hesse 116">Hesse, p. 116</ref>。ほとんどの手法はほとんどのアルカロイドが有機溶媒に溶解するが水には不溶であるが、それらの塩は逆の傾向を示す特性を利用する。

ほとんどの植物は複数のアルカロイドを含んでいる。それらの混合物が最初に抽出され、次に個別のアルカロイドが分離される<ref name="ref236">Grinkevich, p. 132</ref>。植物は抽出前に徹底的に挽く<ref name="Hesse 116"/><ref>Grinkevich, p. 5</ref>。ほとんどのアルカロイドは生植物内で有機酸との塩の形で存在している<ref name="Hesse 116"/>。抽出されたアルカロイドは塩のままか塩基へと変化している<ref name="ref236" />。塩基抽出は植物材料をアルカリ溶液で処理し、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ベンゼンといった有機溶媒にアルカロイド塩基を抽出することで達成される。次に、不純物を弱酸に溶解させる。これによってアルカロイド塩基は塩へと変換され、水によって洗い流される。もし必要ならば、アルカロイド塩の水溶液を再びアルカリ性にし、有機溶媒で処理する。この過程を望む純度が得られるまで繰り返す。

酸抽出では、植物材料は弱酸性溶液(例: [[酢酸]]の水溶液、エタノール溶液、メタノール溶液)で処理される。次にアルカロイドを有機溶媒で抽出できる塩基性型へと変換するために塩基が加えられる(もし抽出をアルコールを使って行う場合は、まずアルコールを除去し残渣を水に溶解する)。この溶液を上記のように精製する<ref name="Hesse 116"/><ref>Grinkevich, pp. 132–134</ref>。

アルカロイドは、特定の溶媒に対する溶解性の差異や特定の試薬に対する反応性の差異、[[蒸留]]を用いて混合物から分離される<ref>Grinkevich, pp. 134–136</ref>。

==生合成==
ほとんどのアルカロイドの生物学的前駆体は[[オルニチン]]、[[リジン]]、[[フェニルアラニン]]、[[チロシン]]、[[トリプトファン]]、[[ヒスチジン]]、[[アスパラギン酸]]、[[アントラニル酸]]といった[[アミノ酸]]である<ref name="Plemenkov 253">Plemenkov, p. 253</ref>。[[ニコチン酸]]はトリプトファンあるいはアスパラギン酸から合成できる。アルカロイド生合成の経路は数え切れない程あるため、容易に分類することは不可能である<ref name="Begley"/>。しかしながら、[[シッフ塩基]]の合成や[[マンニッヒ反応]]を含む様々なアルカロイドの生合成に関与する典型的な反応がいくつかある<ref name="Plemenkov 253"/>。

===シッフ塩基の合成===
{{Main|シッフ塩基}}

シッフ塩基は、アミンとケトンあるいはアルデヒドを反応させることで得ることができる<ref>Plemenkov, p. 254</ref>。これらの反応はC=N結合を作る一般的な方法である<ref name="Dewick 19">Dewick, p. 19</ref>。

[[ファイル:Schiff base formation.svg|center]]

アルカロイドの生合成において、こういった反応はピペリジンの合成<ref name="ref19"/>のように分子内でも起こる<ref name="Plemenkov 253"/>。

[[ファイル:Schiff base formation intramolecular.svg|center]]

===マンニッヒ反応===
{{Main|マンニッヒ反応}}

マンニッヒ反応の不可欠な構成要素は、アミンと[[カルボニル]]化合物に加えて、アミンとカルボニル化合物との反応で形成されるイオンに対する[[求核付加反応]]において求核剤としての役割を果たす[[カルバニオン]]である<ref name = "Dewick 19" />。

[[ファイル:Mannich.png|center]]

マンニッヒ反応は分子間、分子内いずれの場合でも進行する<ref>Plemenkov, p. 255</ref><ref>Dewick, p. 305</ref>。

[[ファイル:Mannich reaction intramolecular.svg|center]]

==二量体アルカロイド==
上述の単量体アルカロイドに加えて、単量体アルカロイドの縮合によって形成される[[二量体]]、[[三量体]]、{{仮リンク|四量体|en|Tetramer}}アルカロイドも存在する。二量体アルカロイドは通常同じ種類の単量体から以下の機構によって形成される<ref>Hesse, pp. 91–105</ref>。

* [[マンニッヒ反応]](ボアカミン)
* [[マイケル付加]](ビラルストニン)
* アルデヒトとアミンの縮合(トキシフェリン)
* フェノールの酸化的付加(ダウリシン、ツボクラリン)
* [[ラクトン|ラクトン化]](カルパイン)

<center>
<gallery widths="220px" perrow="3">
File:Voacamine chemical structure.png|{{仮リンク|ボアカミン|en|Voacamine}}
File:Villalstonine.svg|ビラルストニン
File:Toxiferine I.png|{{仮リンク|トキシフェリン|en|Toxiferine}}
File:Dauricine.svg|{{仮リンク|ダウリシン|en|Dauricine}}
File:Tubocurarine.svg|[[d-ツボクラリン|ツボクラリン]]
File:Carpaine.png|{{仮リンク|カルパイン|en|Carpaine}}
</gallery>
</center>

==生物学的役割==
アルカロイドを作る生物におけるアルカロイドの役割は未だ不明な点が多い<ref>Aniszewski, p. 142</ref>。当初は、アルカロイドは、動物における[[尿素]]のように植物における[[窒素]][[代謝]]の最終産物であると推測されていた。後に、アルカロイドの濃度が時間とともに変動することが明らかとなり、この仮説は反証された<ref name="Meyers"/>。

アルカロイドの既知の機能のほとんどは防御と関連している。例えば、[[ユリノキ]]が生産する[[アポルフィン]]アルカロイドのリリオデニンは寄生性キノコから木を防御している。加えて、植物におけるアルカロイドの存在は昆虫や[[脊索動物]]から食べられるのを妨げている。しかしながら、一部の動物はアルカロイドに適応し、自身の代謝系で利用できるものさえある<ref>Hesse, pp. 283–291</ref>。[[セロトニン]]、[[ドーパミン]]、[[ヒスタミン]]といったアルカロイド関連物質は動物において重要な[[神経伝達物質]]である。アルカロイドはまた植物の生長を制御することが知られている<ref>Aniszewski, pp. 142–143</ref>。

== 応用 ==
===医学分野===
アルカロイド含有植物の医学的使用には長い歴史があり、ゆえに、19世紀に最初のアルカロイドが単離された時、ただちに臨床診療における応用が見出された<ref>Hesse, p. 303</ref>。多くのアルカロイドはいまだに医薬品として(大抵塩の形で)利用されている。以下に例を示す<ref name="Meyers"/><ref>Hesse, pp. 303–309</ref>。

{| Class = "wikitable"
! アルカロイド
! 作用
|-
| [[アジュマリン]]
| [[抗不整脈薬|抗不整脈]]
|-
| [[アトロピン]]、[[スコポラミン]]、[[ヒオスシアミン]]
| [[抗コリン薬|抗コリン]]
|-
| [[ビンブラスチン]]、[[ビンクリスチン]]
| [[化学療法|抗腫瘍]]
|-
| [[ビンカミン]]
| [[血管拡張薬|血管拡張]]、[[高血圧治療薬|高血圧治療]]
|-
| [[コデイン]]
| [[鎮咳去痰薬]]
|-
| [[コカイン]]
| {{仮リンク|麻酔薬|en|anesthetic}}
|-
| [[コルヒチン]]
| [[痛風]]の治療薬
|-
| [[モルヒネ]]
| [[鎮痛剤|鎮痛]]
|-
| [[レセルピン]]
| [[高血圧治療薬|高血圧治療]]
|-
| [[ツボクラリン]]
| 筋弛緩
|-
| [[フィゾスチグミン]]
| [[アセチルコリンエステラーゼ]]阻害剤
|-
| [[キニジン]]
| 抗不整脈
|-
| [[キニーネ]]
| 解熱、抗マラリア
|-
| [[エメチン]]
| [[抗原虫薬]]
|-
| [[エルゴリン|麦角アルカロイド]]
| [[アドレナリン作動薬]]、血管拡張、高血圧治療
|}

多くの合成および半合成薬は、薬の主要な作用を増強あるいは変化させ、不要な副作用を低減するよう設計されたアルカロイドの構造修飾体である<ref>Hesse, p. 309</ref>。例えば、[[オピオイド受容体]][[アンタゴニスト]]である[[ナロキソン]]は[[ケシ]]に存在する[[テバイン]]の誘導体である<ref>Dewick, p. 335</ref>。

<center>
<gallery widths="200px" perrow="2">
File:Thebaine skeletal.svg|[[テバイン]]
File:Naloxone.svg|[[ナロキソン]]
</gallery>
</center>

=== 農業 ===
様々な比較的低毒性の合成[[農薬]]が開発される前は、ニコチンおよび[[アナバシン]]の塩といった一部のアルカロイドが[[殺虫剤]]として使用されていた。これらの使用はヒトに対する高い毒性によって制限されていた<ref>György Matolcsy, Miklós Nádasy, Viktor Andriska [http://books.google.com/books?id=fPiRSsUOpLEC&pg=PA21 ''Pesticide chemistry''], Elsevier, 2002, pp. 21–22 ISBN 0-444-98903-X</ref>。

=== 向精神薬としての使用 ===
アルカロイドを含む植物の生薬やそれらの抽出物、後には純粋なアルカロイドは長い間[[向精神薬|向精神物質]]として使用されている。[[コカイン]]および[[カチノン]]は[[中枢神経系]]の[[覚醒剤]]である<ref>Veselovskaya, p. 75</ref><ref>Hesse, p. 79</ref>。[[メスカリン]]および([[シロシビン]]、[[ジメチルトリプタミン]]、[[イボガイン]]といった)インドールアルカロイドの多くは[[幻覚剤|幻覚]]作用を有する<ref>Veselovskaya, p. 136</ref><ref>Geoffrey A. Cordell ''The Alkaloids: Chemistry and Biology''. Volume 56, Elsevier, 2001, p. 8</ref>。[[モルヒネ]]および[[コデイン]]は強力な麻薬性鎮痛薬である<ref>Veselovskaya, p. 6</ref>。

それ自身は強力な向精神作用を持たないが、半合成向精神薬の[[前駆体]]であるアルカロイドも存在する。例えば、[[エフェドリン]]および[[プソイドエフェドリン]]は[[メトカチノン]]および[[メタンフェタミン]]の製造に用いられる<ref>Veselovskaya, pp. 51–52</ref>。


== アルカロイドの例 ==
== アルカロイドの例 ==
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* [[リコリン]]([[ヒガンバナ]]科の植物に含まれる毒・ヒガンバナ自身はガランタミンも含有)
* [[リコリン]]([[ヒガンバナ]]科の植物に含まれる毒・ヒガンバナ自身はガランタミンも含有)
* [[サマンダリン]](主に[[ファイアサラマンダー]](''Salamandra salamandra'')の皮脂腺に含まれる)
* [[サマンダリン]](主に[[ファイアサラマンダー]](''Salamandra salamandra'')の皮脂腺に含まれる)

== 脚注 ==
{{reflist|2}}

== 参考文献 ==
{{Commons|Alkaloid}}
* {{cite book|author = Aniszewski, Tadeusz |title = Alkaloids – secrets of life|location = Amsterdam|publisher = [[Elsevier]]|year = 2007|isbn = 978-0-444-52736-3}}
* {{cite book|author = Begley, Tadhg P. |title = Encyclopedia of Chemical Biology|year = 2009|publisher = Wiley|isbn = 978-0-471-75477-0|doi=10.1002/cbic.200900262}}
* {{cite book|author = Dewick, Paul M |title = Medicinal Natural Products. A Biosynthetic Approach. Second Edition|year = 2002|publisher = Wiley|isbn = 0-471-49640-5}}
* {{cite book|author = Fattorusso, E. and Taglialatela-Scafati, O. |title = Modern Alkaloids: Structure, Isolation, Synthesis and Biology|year = 2008|publisher = Wiley-VCH|isbn = 978-3-527-31521-5}}
* {{cite book|author = Grinkevich NI Safronich LN|title = The chemical analysis of medicinal plants: Proc. allowance for pharmaceutical universities|location = M|year = 1983}}
* {{cite book|author = Hesse, Manfred |title = Alkaloids: Nature's Curse or Blessing?|year = 2002|publisher = Wiley-VCH|isbn = 978-3-906390-24-6}}
* {{cite book|author = Knunyants, IL|title = Chemical Encyclopedia|url = http://www.cnshb.ru/AKDiL/0048/base/RA/140004.shtm|publisher = Soviet Encyclopedia|year = 1988}}
* {{cite book|author = Orekhov, AP|title = Chemistry alkaloids|edition = Acad. 2|location = M.|publisher = USSR|year = 1955}}
* {{cite book|author = Plemenkov, VV|title = Introduction to the Chemistry of Natural Compounds|location = Kazan|year = 2001}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2012年7月4日 (水) 06:41時点における版

初めての単一のアルカロイドであるモルヒネは1804年にケシPapaver somniferum)から単離された[1]

アルカロイド (alkaloid) は窒素原子を含み、ほとんどの場合塩基性を示す天然由来の有機化合物の総称である。一部のアルカロイドには中性[2]や弱酸性[3]を示すものもある。また、似た構造を有する一部の合成化合物もアルカロイドと呼ばれる[4]炭素水素窒素に加えて、アルカロイドは酸素硫黄、その他稀に塩素臭素リンといった元素を含む[5]

かつては植物塩基(英語: plant base)という訳語も用いられた。この訳語が提唱されたのは1818年である。現在、近似種を含め約数千種があるといわれている。その元祖と言われているのは、ドイツの薬剤師ゼルチュネルが1804年(1805年という記述もある)にアヘンから分離抽出したモルフィン、つまりモルヒネであるとされている。

アルカロイドは、微生物真菌植物動物を含む非常に様々な生物によって生産され、天然物二次代謝産物とも呼ばれる)の中の一群を成している。多くのアルカロイドは酸塩基抽出によって粗抽出物から精製できる。多くのアルカロイドは他の生物に対して有である。しばしば薬理作用を示し、医薬や娯楽のための麻薬としてや、幻覚儀式において使用される。

アルカロイドとその他の窒素を含む天然化合物との境界は明確ではない[6]アミノ酸ペプチドタンパク質ヌクレオチド核酸アミン抗生物質のような化合物は通常アルカロイドとは呼ばれない[2]環外の位置に窒素を含む天然化合物(メスカリンセロトニンドパミン等)は、通常アルカロイドよりもアミンと呼ばれる[7] しかしながら、一部の著者らはアルカロイドをアミンの特別な場合であると考えている[8][9][10]

名称

「アルカロイド」の概念を導入した文献。

「アルカロイド」(ドイツ語: Alkaloide)という名称は、ドイツ人化学者Carl F.W. Meissnerによって1819年に導入された。この単語は後期ラテン語の語幹ラテン語: alkali(同じく、「植物の灰」を意味するアラビア語 al-qalwī から来ている)と「~のような」を意味するギリシャ語の接尾辞-οειδήςに由来する[11]。しかしながら、この用語は1880年代のアルベルト・ラーデンブルクの化学辞典に収録されたO. Jacobsenによる総説記事の出版後になって広く使用されるようになった[12]

アルカロイドを命名する固有の方法は存在しない[13]。多くの個別の名称は、化合物が単離された種あるいは属名に接尾辞 "ine" を付加して作られている[14]。例えば、アトロピンオオカミナスビ(ベラドンナ、学名: Atropa belladonna)から単離され、ストリキニーネマチン(学名: Strychnos nux-vomica L.)の種子から得られる[5]。もし複数のアルカロイドが一つの植物から抽出された場合は、接尾辞の"idine"、"anine"、"aline"、"inine"等がしばしば使われる。また、語幹 "vin" (ニチニチソウ属 (Vinca) 植物から抽出されたことを示す)を含むアルカロイドは少なくとも86種類が存在する[15]

歴史

ドイツ人化学者フリードリッヒ・ゼルチュルネルアヘンからモルヒネを初めて単離した。

アルカロイド含有植物は医療ならびに娯楽目的で古代からヒトによって使用されてきた。例えば、少くとも紀元前2000年頃のメソポタミアでは薬用植物が知られていた[16]ホメーロスの『オデュッセイア』では、エジプト女王からヘレネーに与えられた贈り物、『無意識の状態へと導く薬剤』(ラテン語: principium somniferum)について記されている[17]。紀元前1世紀から紀元前3世紀に書かれた室内用植物に関する中国の書物にはシナマオウおよびケシの医学的用途について述べられている[18]。また、コカの葉も古代から南米のインディアンによって使用されていた[19]

アコニチンツボクラリンといった毒性アルカロイドを含む植物の抽出物は古代から毒矢に使用されていた[16]

アルカロイドの研究は19世紀に始まった。1804年に、ドイツ人化学者フリードリッヒ・ゼルチュルネルアヘンから「催眠素」(ラテン語: principium somniferum)を単離し、この物質をギリシア神話の夢の神モルペウスに敬意を表して「morphium」と呼んだ。ドイツ語やその他の中央ヨーロッパ言語では今でもこれがこの薬の名称である。英語やフランス語で使われる「morphine」という用語は、フランス人物理学者ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサックによって命名された。

初期の発展におけるアルカロイドの化学に対して多大な貢献をしたのは、キニーネ(1820年)およびストリキニーネ(1818年)を発見したフランス人研究者ピエール=ジョセフ・ペルティエおよびジョゼフ・ビヤンネメ・カヴェントゥである。この頃に、キサンチン(1817年)、アトロピン(1819年)、カフェイン(1820年)、コニイン(1827年)、ニコチン(1828年)、コルヒチン(1833年)、スパルテイン(1851年)、コカイン(1860年)を含むその他いくつかのアルカロイドが発見された[20]

初のアルカロイドの完全合成はドイツ人化学者アルベルト・ラーデンブルクによって1886年に初めて達成された。ラーデンブルクは、2-メチルピリジンとアセトアルデヒドを反応させ、得られた2-プロペニルピリジンをナトリウムで還元することによってコニインを作り出した[21][22]。アルカロイドの化学の発展は20世紀の分光法およびクロマトグラフィー法の出現によって加速され、2008年までに12,000種類を越えるアルカロイドが同定されている[23]

ある種のカエルから単離されるアルカロイドであるブフォテニンインドール核を含んでおり、生物内でアミノ酸のトリプトファンから作られる。

分類

ニコチン分子はピリジン環(左)とピロリジン環(右)を含む。

アルカロイドの大半はアミノ基イミノ基を持つ。

その他のほとんどの天然化合物の分類群と比較して、アルカロイドは大きな構造的多様性によって特徴付けられ、アルカロイドに関する統一的な分類は存在しない[24]。最初の分類法は歴史的にアルカロイドを共通の天然資源(例えば植物種)によって組み合わせてきた。この分類はアルカロイドの化学構造に関する知識の欠如によって正当化されていたが、現在は時代遅れと考えられている[5][25]。より最近の分類は炭素骨格の類似性(例えばインドール様、イソキノリン様、ピリジン様)あるいは生成前駆体(オルニチンリジンチロシントリプトファン等)に基づいている[5]。しかしながら、これらはどちらとも決めにくい場合には妥協を必要とする[24]。例えば、ニコチンピリジン断片はニコチンアミドに、ピロリジン部位はオルニチンに由来し[26]、ゆえにどちらの分類群にも割り当てることができる[27]

アルカロイドはしばしば以下の主要な群に分類される[28]

真正アルカロイド
真正アルカロイド (true alkaloid) は、複素環窒素を含み、アミノ酸に起源を持つ[29]。代表例はアトロピンニコチンモルヒネである。この分類群には、窒素複素環に加えてテルペン(例: エボニン[30])やペプチド(例: エルゴタミン[31])断片を含むアルカロイドもある。また、アミノ酸起源でないにもかかわらず[32]、ピペリジンアルカロイドであるコニインやコニセインもこの分類群に含まれる[33]
不完全アルカロイド
不完全アルカロイド (protoalkaloid) は、真正アルカロイドと同様に窒素を含み、アミノ酸に起源を持つが[29]、複素環を持たない。例としてはメスカリンアドレナリンエフェドリンがある。
ポリアミンアルカロイド
プトレシンスペルミジンスペルミンの誘導体。
ペプチドおよび環状ペプチドアルカロイド[34]
偽アルカロイド
偽アルカロイド(擬アルカロイド, プソイドアルカロイド, pseudo-alkaloid)は、窒素源がアミノ酸に由来するのではなく、アンモニア性窒素に由来するアルカロイド様化合物である[35]。この分類群は、テルペン様アルカロイドやステロイド様アルカロイド[36]カフェインテオブロミンテオフィリンといったプリン様アルカロイドを含む[37]。一部の著者らはエフェドリンカチノンといった化合物を偽アルカロイドに分類している。これらはアミノ酸であるフェニルアラニンに起源を持つが、窒素原子はアミノ酸からではなくアミノ基転移によって獲得している[37][38]

一部のアルカロイドは分類群に典型的な炭素骨格を有していない。例えばガランタミンおよびホモアポルフィン類はイソキノリン断片を含んでいないが、一般的にイソキノリンアルカロイドとされる[39]

単量体アルカロイドの主要な分類を以下の表に示す。

分類 主要な群 主要合成段階
窒素複素環を含むアルカロイド(真正アルカロイド)
ピロリジン誘導体[40]
オルニチンあるいはアルギニンプトレシンN-メチルプトレシン → N-メチル-Δ1-ピロリン[41] クスコヒグリンヒグリン、ヒグロリン、スタキドリン[40][42]
トロパン誘導体[43]
アトロピン類
3、6、7位に置換
オルニチンあるいはアルギニンプトレシンN-メチルプトレシン → N-メチル-Δ1-ピロリン[41] アトロピンスコポラミンヒオスシアミン[40][43][44]
コカイン類
2位および3位に置換
コカインエルゴニン[43][45]
ピロリジジン誘導体[46]
非エステル 植物: オルニチンあるいはアルギニンプトレシン → ホモスペルミジン → レトロネシン[41] レトロネシン、ヘリオトリジン、ラブルニン[46][47]
モノカルボン酸エステル インジシン、リンデロフィン、サラシン[46]
大環状ジエステル プラチフィリン、トリコデスミン[46]
1-アミノピロリジジン類(ロリン類英語版 真菌: L-プロリン + L-ホモセリンN-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プロリン → ノルロリン[48][49] ロリン、N-ホルミルロリン、N-アセチルロリン[50]
ピペリジン誘導体[51]
リジンカダベリン → Δ1-ピペリデイン[52] セダミン、ロベリン、アナフェリン、ピペリン[33][53]
オクタン酸 → コニセイン → コニイン [32] コニイン、コニセイン[32]
キノリジジン誘導体[54][55]
ルピニン リジンカダベリン → Δ1-ピペリデイン[56] ルピニン、ヌファリジン[54]
シチシン シチシン[54]
スパルテイン スパルテイン、ルパニン、アナヒグリン[54]
マトリン マトリン、オキシマトリン、アロマトリジン[54][57][58]
オルサニン類 オルモサニン、ピプタンチン[54][59]
インドリジジン誘導体[60]
リジンα-アミノアジピン酸のδ-セミアルデヒド → ピペコリン酸 → 1-インドリジジノン[61] スワインソニンカスタノスペルミン[62]
ピリジン誘導体[63][64]
ピリジンの単純な誘導体 ニコチン酸 → ジヒドロニコチン酸 → 1,2-ジヒドロピリジン[65] トリゴネリン、リシニン、アレコリン[63][66]
多環式非縮合ピリジン誘導体 ニコチンノルニコチンアナバシン、アナタビン[63][66]
多環式縮合ピリジン誘導体 アクチニジン、ゲンチアニン、ペジクリニン[67]
セスキテルペンピリジン誘導体 ニコチン酸イソロイシン[10] エボニン、ヒッポクラテイン、トリプトニン[64][65]
イソキノリン誘導体および類縁アルカロイド[68]
イソキノリンの単純な誘導体[69] チロシンあるいはフェニルアラニンドーパミンあるいはチラミン(アマリリスアルカロイドの場合)[70][71] サルソリン、ロホセリン[68][69]
1- ならびに3-イソキノリンの誘導体[72] N-メチルコリダルジン、ノルオキシヒドラスチニン[72]
1- ならびに4-フェニルテトラヒドロイソキノリンの誘導体[69] クリプトスチリン[69][73]
5-ナフチル-イソキノリンの誘導体[74] アンシストロクラジン[74]
1- ならびに2-ベンジル-イソキノリンの誘導体[75] パパベリンラウダノシン英語版、センダベリン
クラリン類[76] クラリン、ヤゴニン[76]
パビン類およびイソパビン類[77] アルゲモニン[77]
ベンゾピロコリン類[78] クリプタウストリン[69]
プロトベルベリン類[69] ベルベリンカナジン、オフィオカルピン、メカンブリジン、コリダリン[79]
フタリドイソキノリン類[69] ヒドラスチンナルコチンノスカルピン[80]
スピロベンジルイソキノリン類[69] フマリシン[77]
イペカクアンハアルカロイド[81] エメチン、プロトエメチン、イペコシド[81]
ベンゾフェナントリジン類[69] サングイナリン、オキシニチジン、コリノロキシン[82]
アポルフィン[69] グラウシン、コリジン、リロイデニン[83]
プロアポルフィン類[69] プロヌシフェリン、グラジオビン[69][78]
ホモアポルフィン類[84] クレイシギニン、ムルチフロラミン[84]
ホモプロアポルフィン類[84] ブルボコジン[76]
モルヒネ[85] モルヒネコデインテバインシノメニン[86]
ホモモルヒネ類[87] クレイシギニン、アンドロシンビン[85]
トロポロイソキノリン類[69] イメルブリン[69]
アゾフルオランテン類[69] ルフェシン、イメルテイン[88]
アマリリスアルカロイド[89] リコリン、アンベリン、タゼッチン、ガランタミン、モンタニン[90]
エリスリナ英語版アルカロイド[73] エリソジン、エリトロイジン[73]
フェナントレン誘導体[69] アテロスペルミニン[69][79]
プロトピン類[69] プロトピン、オキソムラミン、コリカビジン[82]
アリストラクタム[69] ドリフラビン[69]
オキサゾール誘導体[91]
チロシンチラミン[92] アンヌロリン、ハルホルジノール、テキサリン、テキサミン[93]
イソオキサゾール誘導体
イボテン酸ムッシモール イボテン酸、ムッシモール
チアゾール誘導体[94]
1-デオキシ-D-キシルロース-5-リン酸 (DOXP)、チロシンシステイン[95] ノストシクラミド、チオストレプトン[94][96]
キナゾリン誘導体[97]
3,4-ジヒドロ-4-キナゾロン誘導体 アントラニル酸あるいはフェニルアラニンあるいはオルニチン[98] フェブリフギン[99]
1,4-ジヒドロ-4-キナゾリン誘導体 グリコリン、アルボリン、グリコスミニン[99]
ピロリジンおよびピペリジンキナゾリン誘導体 バジシン(ペガニン)[91]
アクリジン誘導体[91]
アントラニル酸[100] ルタクリドン、アクロニシン[101][102]
キノリン誘導体[103][104]
2-キノロンおよび4-キノロンのキノリン誘導体の単純な誘導体 アントラニル酸 → 3-カルボキシキノリン[105] クスパリン、エキノプシン、エボカルピン[104][106][107]
三環性テルペノイド フリンデルシンe[104][108]
フラノキノリン誘導体 ジクタムニン、ファガリン、スキンミアニン[104][109][110]
キニーネ トリプトファントリプタミン → ストリクトシジン(with セコロガニン) → コリナンテアール → シンホニノン [71][105] キニーネキニジンシンコニン、シンホニジン[108]
インドール誘導体[86]
非イソプレンインドールアルカロイド
単純なインドール誘導体[111] トリプトファントリプタミンあるいは5-ヒドロキシトリプトファン[112] セロトニンシロシビンジメチルトリプタミン (DMT)、ブフォテニン[113][114]
β-カルボリンの単純な誘導体[115] ハルマン、ハルミンハルマリン、エレアグニン[111]
ピロロインドールアルカロイド[116] フィゾスチグミン(エセリン)、エテラミン、フィソベニン、エプタスチミン[116]
セミテルペノイドインドールアルカロイド
麦角アルカロイド[86] トリプトファン → カノクラビン → アグロクラビン → エリモクラビン → パスパル酸 → リゼルグ酸[116] エルゴタミン、エルゴバシン、エルゴシン[117]
モノテルペノイドインドールアルカロイド
コリナンセ英語版型アルカロイド[112] トリプトファントリプタミン → ストリクトシジン(with セコロガニン[112] アジマリシン、サルパギン、ボバシン、アジュマリンヨヒンビンレセルピンミトラギニン英語版[118][119]ストリキニーネ類(ストリキニーネブルシン、アクアミシン、ボミシン)[120]
イボガ型アルカロイド[112] イボガミンイボガインボアカンギン[112]
アスピドスペルマ英語版型アルカロイド[112] ビンカミンビンカアルカロイド、ビンコチン、アスピドスペルミン[121][122]
イミダゾール誘導体[91]
ヒスチジンから直接[123] ヒスタミン、ピロカルピン、ピロシン、ステベンシン[91][123]
プリン誘導体[124]
キサントシン(プリン生合成において形成)→ 7-メチルキサントシン → 7-メチルキサンチンテオブロミンカフェイン[71] カフェインテオブロミンテオフィリンサキシトキシン[125][126]
側鎖に窒素を有するアルカロイド(不完全アルカロイド)
β-フェネチルアミン誘導体[78]
チロシンあるいはフェニルアラニン → ジオキシフェニルアラニン → ドーパミンアドレナリンおよびメスカリンチラミン → 1-フェニルプロパン-1,2-ジオン → カチノンエフェドリンおよびプソイドエフェドリン[10][38][127] チラミンエフェドリンプソイドエフェドリンメスカリンカチノンカテコールアミン類(アドレナリンノルアドレナリンドーパミン[10][128]
コルヒチンアルカロイド[129]
チロシンあるいはフェニルアラニンドーパミン → アウツムナリン → コルヒチン [130] コルヒチン、コルカミン[129]
ムスカリン[131]
グルタミン酸 → 3-ケトグルタミン酸 → ムスカリン(with ピルビン酸[132] ムスカリン、アロムスカリン、エピムスカリン、エピアロムスカリン[131]
ベンジルアミン[133]
フェニルアラニンバリンロイシンあるいはイソロイシン[134] カプサイシンジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン[133][135]
ポリアミンアルカロイド
プトレシン誘導体[136]
オルニチンプトレシンスペルミジンスペルミン[137] パウシン[136]
スペルミジン誘導体[136]
ルナリン、コドノカルピン[136]
スペルミン誘導体[136]
ベルバセニン、アフェランドリン[136]
ペプチド(環状ペプチド)アルカロイド
13員環ペプチドアルカロイド[34][138] ヌンムラリンC型 異なるアミノ酸から[34] ヌンムラリンC、ヌンムラリンS[34]
ジジフィン型 ジジフィンA、サチバニンH[34]
14員環ペプチドアルカロイド[34][138] フラグラニン型 フラグラニン、スクチアニンJ[138]
スクチアニンA型 スクチアニンA[34]
インテゲリン型 インテゲリン、ジスカリンD[138]
アンフィビンF型 アンフィビンF、スピナニンA[34]
アンフィビンB型 アンフィビンB、ロツシンC[34]
15員環ペプチドアルカロイド[138] ムクロニンA型 ムクロニンA [31][138]
疑アルカロイド(テルペンおよびステロイド
ジテルペン [31]
リコクトニン型 メバロン酸イソペンテニル二リン酸ゲラニル二リン酸[139][140] アコニチンデルフィニン英語版[31][141]
ステロイド[142]
コレステロールアルギニン[143] ソラソジン、ソラニジン、ベラルカミン、バトラコトキシン[144]

性質

カリフォルニア・コーン・リリー英語版の葉を食べた羊から生まれた子羊の頭部。この単眼症は植物に存在するアルカロイドであるシクロパミンによって引き起こされる。

ほとんどのアルカロイドは分子構造中に酸素を含んでいる。これらの化合物は穏和な条件においては大抵無色の結晶である。ニコチン][145]あるいはコニイン[21] といった酸素を含まないアルカロイドは通常揮発性、無色、油状液体である[146]ベルベリン(黄色)やサングイナリン(橙色)のように一部のアルカロイドは着色している[146]

ほとんどのアルカロイドは弱い塩基であるが、一部のアルカロイド、例えばテオブロミンおよびテオフィリン両性である[147]。ほとんどのアルカロイドは水に対する溶解性が低いが、ジエチルエーテルクロロホルム1,2-ジクロロエタンといった有機溶媒には容易に溶解する。しかしながら、カフェインは沸騰水によく溶ける[147]とは、様々な強さで塩を形成する。これらの塩は通常水およびアルコールに可溶でありほとんどの有機溶媒に対する溶解性は低い。例外としては有機溶媒に溶解するスコポラミン臭化水素酸塩や水溶性のキニーネ硫酸塩がある[146]

アルカロイドは植物体内の各種アミノ酸から生合成され、シュウ酸リンゴ酸クエン酸酢酸酒石酸などの有機酸の状態で各々の体内に保持されている(例えばクエン酸塩、リンゴ酸塩など)。それが何らかの要因で分解、分離、もしくは抽出されればアルカロイドと呼べる物質になり、摂取した動物の体内に諸影響を及ぼす。

ほとんどのアルカロイドは苦味を有している。植物は、動物から自身を防御するためにこれらの苦味物質(多くは有毒)を生産する能力を進化により獲得したと考えられている。しかし、動物も同じくアルカロイドを解毒する能力を発達させた[148]。一部のアルカロイドは、アルカロイドを摂取したものの解毒できない動物の子孫に発育障害を起こす。特徴的な例はカリフォルニア・コーン・リリー (Veratrum californicum) の葉に存在するシクロパミンである。1950年代の間、コーン・リリーを食べた羊から産まれた子羊の最大25%が重篤な顔面障害を被った。これらの障害は顎の奇形から単眼症に及んだ。数十年の研究の後、1980年代に、奇形の原因となる物質がアルカロイドである11-デオキシジェルビンと同定され、単眼症 (cyclopia) からシクロパミン (cyloapmine, cyclopia + amine) と命名された[149]

自然界での分布

マチンの木。種子にはストリキニーネおよびブルシンが豊富に含まれている。

アルカロイドは様々な生物によって作り出される。特に高等植物はおよそ10から25%の種がアルカロイドを含んでいる[150][151]。それゆえに、昔は「アルカロイド」という用語は植物を連想させた[152]。基本的に植物は、体の中に何種類ものアルカロイドを保持している。例えばケシの実から作られるアヘンにはモルヒネコデインなどをはじめとして約20種が含まれる。同一の植物に含まれるアルカロイドは化学的に近い性質を持つものであることが多い。植物がその体内に保持しているアルカロイドの中で、比較的含有量が多いものは主アルカロイド、それに伴う幾種ものアルカロイドが副アルカロイドと呼ばれる。アルカロイドは主に顕花植物、殊に双子葉類の植物に見出される。体内にアルカロイドを含有する植物としては主に、キンポウゲ科ケシ科ナス科ヒガンバナ科マメ科メギ科ユリ科トウダイグサ科ウマノスズクサ科など。

植物のアルカロイド含量は通常数パーセント以内で、植物組織に不均一に分布している。植物の種類に応じて、葉(ヒヨス)、果実あるいは種子マチン)、根(インドジャボク)、樹皮(キナ属)においてそれぞれ最大濃度が見られる[153]。その上、植物の異なる組織がそれぞれ異なるアルカロイドを含んでいる場合もある[154]

植物以外では、アルカロイドはある種の真菌シビレタケ属 Psilocybeにおけるシロシビン)や動物(ある種のカエルの皮膚におけるブフォテニン)でも見出される[13]。多くの海洋生物もまたアルカロイドを含んでいる[155]。高等動物において受容な役割を果たすアドレンリンおよびセロトニンといった一部のアミンはアルカロイドと構造や生合成が類似しており、アルカロイドと呼ばれることがある[156]

抽出

コショウから抽出されたピペリンの結晶。

アルカロイドの構造的多様性のため、天然素材からアルカロイドを抽出する単一の手法は存在しない[157]。ほとんどの手法はほとんどのアルカロイドが有機溶媒に溶解するが水には不溶であるが、それらの塩は逆の傾向を示す特性を利用する。

ほとんどの植物は複数のアルカロイドを含んでいる。それらの混合物が最初に抽出され、次に個別のアルカロイドが分離される[158]。植物は抽出前に徹底的に挽く[157][159]。ほとんどのアルカロイドは生植物内で有機酸との塩の形で存在している[157]。抽出されたアルカロイドは塩のままか塩基へと変化している[158]。塩基抽出は植物材料をアルカリ溶液で処理し、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ベンゼンといった有機溶媒にアルカロイド塩基を抽出することで達成される。次に、不純物を弱酸に溶解させる。これによってアルカロイド塩基は塩へと変換され、水によって洗い流される。もし必要ならば、アルカロイド塩の水溶液を再びアルカリ性にし、有機溶媒で処理する。この過程を望む純度が得られるまで繰り返す。

酸抽出では、植物材料は弱酸性溶液(例: 酢酸の水溶液、エタノール溶液、メタノール溶液)で処理される。次にアルカロイドを有機溶媒で抽出できる塩基性型へと変換するために塩基が加えられる(もし抽出をアルコールを使って行う場合は、まずアルコールを除去し残渣を水に溶解する)。この溶液を上記のように精製する[157][160]

アルカロイドは、特定の溶媒に対する溶解性の差異や特定の試薬に対する反応性の差異、蒸留を用いて混合物から分離される[161]

生合成

ほとんどのアルカロイドの生物学的前駆体はオルニチンリジンフェニルアラニンチロシントリプトファンヒスチジンアスパラギン酸アントラニル酸といったアミノ酸である[162]ニコチン酸はトリプトファンあるいはアスパラギン酸から合成できる。アルカロイド生合成の経路は数え切れない程あるため、容易に分類することは不可能である[71]。しかしながら、シッフ塩基の合成やマンニッヒ反応を含む様々なアルカロイドの生合成に関与する典型的な反応がいくつかある[162]

シッフ塩基の合成

シッフ塩基は、アミンとケトンあるいはアルデヒドを反応させることで得ることができる[163]。これらの反応はC=N結合を作る一般的な方法である[164]

アルカロイドの生合成において、こういった反応はピペリジンの合成[27]のように分子内でも起こる[162]

マンニッヒ反応

マンニッヒ反応の不可欠な構成要素は、アミンとカルボニル化合物に加えて、アミンとカルボニル化合物との反応で形成されるイオンに対する求核付加反応において求核剤としての役割を果たすカルバニオンである[164]

マンニッヒ反応は分子間、分子内いずれの場合でも進行する[165][166]

二量体アルカロイド

上述の単量体アルカロイドに加えて、単量体アルカロイドの縮合によって形成される二量体三量体四量体アルカロイドも存在する。二量体アルカロイドは通常同じ種類の単量体から以下の機構によって形成される[167]

生物学的役割

アルカロイドを作る生物におけるアルカロイドの役割は未だ不明な点が多い[168]。当初は、アルカロイドは、動物における尿素のように植物における窒素代謝の最終産物であると推測されていた。後に、アルカロイドの濃度が時間とともに変動することが明らかとなり、この仮説は反証された[6]

アルカロイドの既知の機能のほとんどは防御と関連している。例えば、ユリノキが生産するアポルフィンアルカロイドのリリオデニンは寄生性キノコから木を防御している。加えて、植物におけるアルカロイドの存在は昆虫や脊索動物から食べられるのを妨げている。しかしながら、一部の動物はアルカロイドに適応し、自身の代謝系で利用できるものさえある[169]セロトニンドーパミンヒスタミンといったアルカロイド関連物質は動物において重要な神経伝達物質である。アルカロイドはまた植物の生長を制御することが知られている[170]

応用

医学分野

アルカロイド含有植物の医学的使用には長い歴史があり、ゆえに、19世紀に最初のアルカロイドが単離された時、ただちに臨床診療における応用が見出された[171]。多くのアルカロイドはいまだに医薬品として(大抵塩の形で)利用されている。以下に例を示す[6][172]

アルカロイド 作用
アジュマリン 抗不整脈
アトロピンスコポラミンヒオスシアミン 抗コリン
ビンブラスチンビンクリスチン 抗腫瘍
ビンカミン 血管拡張高血圧治療
コデイン 鎮咳去痰薬
コカイン 麻酔薬
コルヒチン 痛風の治療薬
モルヒネ 鎮痛
レセルピン 高血圧治療
ツボクラリン 筋弛緩
フィゾスチグミン アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
キニジン 抗不整脈
キニーネ 解熱、抗マラリア
エメチン 抗原虫薬
麦角アルカロイド アドレナリン作動薬、血管拡張、高血圧治療

多くの合成および半合成薬は、薬の主要な作用を増強あるいは変化させ、不要な副作用を低減するよう設計されたアルカロイドの構造修飾体である[173]。例えば、オピオイド受容体アンタゴニストであるナロキソンケシに存在するテバインの誘導体である[174]

農業

様々な比較的低毒性の合成農薬が開発される前は、ニコチンおよびアナバシンの塩といった一部のアルカロイドが殺虫剤として使用されていた。これらの使用はヒトに対する高い毒性によって制限されていた[175]

向精神薬としての使用

アルカロイドを含む植物の生薬やそれらの抽出物、後には純粋なアルカロイドは長い間向精神物質として使用されている。コカインおよびカチノン中枢神経系覚醒剤である[176][177]メスカリンおよび(シロシビンジメチルトリプタミンイボガインといった)インドールアルカロイドの多くは幻覚作用を有する[178][179]モルヒネおよびコデインは強力な麻薬性鎮痛薬である[180]

それ自身は強力な向精神作用を持たないが、半合成向精神薬の前駆体であるアルカロイドも存在する。例えば、エフェドリンおよびプソイドエフェドリンメトカチノンおよびメタンフェタミンの製造に用いられる[181]

アルカロイドの例

脚注

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  10. ^ a b c d Aniszewski, p. 110
  11. ^ In the penultimate sentence of his article [W. Meissner (1819) "Über Pflanzenalkalien: II. Über ein neues Pflanzenalkali (Alkaloid)" (On plant alkalis: II. On a new plant alkali (alkaloid)), Journal für Chemie und Physik, vol. 25, pp. 377–381] Meissner wrote "Überhaupt scheint es mir auch angemessen, die bis jetzt bekannten Pflanzenstoffe nicht mit dem Namen Alkalien, sondern Alkaloide zu belegen, da sie doch in manchen Eigenschaften von den Alkalien sehr abweichen, sie würden daher in dem Abschnitt der Pflanzenchemie vor den Pflanzensäuren ihre Stelle finden." (In general, it seems appropriate to me to impose on the known plant substances not the name "alkalis" but "alkaloids", since they differ greatly in some properties from the alkalis; among the chapters of plant chemistry, they would therefore find their place before plant acids [since "Alkaloid" would precede "Säure" (acid)].)
  12. ^ Hesse, pp. 1–3
  13. ^ a b Hesse, p. 5
  14. ^ 接尾辞 "ine" はギリシャ語の女性父称を作る接尾辞であり、「~の娘」を意味する。すなわち、アトロピンは「Atropa(ベラドンナ)の娘」を意味する。[1]
  15. ^ Hesse, p. 7
  16. ^ a b Aniszewski, p. 182
  17. ^ Hesse, p. 338
  18. ^ Hesse, p. 304
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参考文献

関連項目

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