コンテンツにスキップ

西郷札 (松本清張)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
西郷札 (小説)から転送)
西郷札
作者 松本清張
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 短編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出 『週刊朝日別冊・春季増刊号』(1951年3月
出版元 朝日新聞社
挿絵 岩田専太郎
刊本情報
収録 『西郷札』
出版元 東京高山書院
出版年月日 1955年11月
装幀 向淳三
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
テンプレートを表示

西郷札』(さいごうさつ)は、松本清張の短編歴史小説。『週刊朝日』が主催した新人コンクール「百万人の小説」の第三席に入選した作品で、松本清張の処女作と位置づけられている。第25回直木賞の候補作となった。

1951年3月『週刊朝日別冊・春季増刊号』に掲載され(掲載時の挿絵は岩田専太郎)、1955年11月に短編集『西郷札』の表題作として、東京高山書院から刊行された。

佐藤慶による朗読CDが、2003年新潮社より発売された。

あらすじ

[編集]

わたしの勤める新聞社が企画した展覧会への出品資料として、宮崎支局から西郷札とその「覚書」が送られてきた。興味を抱いたわたしは覚書を筆写した。内容は以下のように始まる。

日向国佐土原生まれの士族・樋村雄吾の家は、明治廃藩置県を受けて世禄を失った。父は後妻とその連れ子・季乃を迎える。季乃は雄吾を兄さまと言って慕ったが、雄吾は素直に感情を出せず、何となく拗ねた態度に出ていた。雄吾は西南戦争に参加したが、その間に父は死去、家は戦火で焼かれ、継母と季乃は行方知れずとなっていた。雄吾は悄然と故郷を去り、東京へ向かう。無為のうちに過ごす雄吾だったが、やがて俥(くるま)を曳く車夫として収入を得るようになる。ある夜、エリート官吏・塚村圭太郎を深川清住まで送った雄吾は、屋敷の近くで季乃の顔を発見し、動揺する…。

エピソード

[編集]
  • 『週刊朝日』が「百万人の小説」募集を発表した際、著者は応募する気持ちはなかったと述べている。しかし、冨山房の百科事典を広げた時、「さいごうさつ」の項目の解説が目に入り、それがヒントになって原稿を書いてみる気持ちになった、という。それからは(当時勤務していた朝日新聞西部本社の)仕事の合間に資料室に行き、『明治編年史』などを立ち読みしていた。当時著者は、住居から新聞社まで田川線(現:平成筑豊鉄道田川線)の鉄道線路上を歩いて通っていたが、行きも帰りも筋立ての思案に耽り、背後から来る汽車の汽笛も耳に入らなかったと回想している[1]
  • 原稿の清書は締切日に間に合わなかった。この時著者は、原稿を入れた風呂敷包みが盗まれたということにして、詫び状を『週刊朝日』に送っている。これに対して、「とんだ災難でお気の毒でした」「なるべく早くお送り下さい」と書かれた、『週刊朝日』側の返信が残されている[2]
  • 応募作品としての評価は第一席に相当するものであったが、著者が主催誌の親会社である朝日新聞に勤めていたことから配慮がなされ、第三席におさまった[3]
  • 本作が直木賞候補作となったのを受け、著者は尊敬する推理作家・木々高太郎など3人に掲載誌を送ったが、このうち木々からは「大そう立派なものです。本格もの矢つぎ早に書くことをおすすめいたします」との激励を受け、著者はまず、木々の編集していた雑誌『三田文学』に、短編小説(「或る「小倉日記」伝」を含む)を投稿することとなった[4]

テレビドラマ

[編集]

1964年版

[編集]

1964年8月27日NHKのオムニバス歴史ドラマ「風雪」(21:40-22:30)の第21話として放映。

キャスト
スタッフ

1991年版

[編集]
松本清張作家活動40周年記念
西郷札
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『西郷札』
脚本 金子成人
監督 大岡進
出演者 緒形直人
仙道敦子ほか
製作
プロデューサー 堀川とんこう
制作 TBS
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1991年4月8日
放送時間21:00 - 23:24
放送枠月曜ドラマスペシャル
テンプレートを表示

松本清張作家活動40周年記念ドラマスペシャル・西郷札」。1991年4月8日TBS系列の「月曜ドラマスペシャル」枠(21:00-23:24)にて放映。視聴率18.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。主演の緒形と仙道は、本ドラマでの共演を契機として結婚に至った。

キャスト
スタッフ
TBS系列 月曜ドラマスペシャル
前番組 番組名 次番組
山岳救助犬ララ2
(1991.4.1)
松本清張作家活動40周年記念
西郷札
(1991.4.8)
イラク人質の妻たち
(脚本:重森孝子
(1991.4.15)

脚注・出典

[編集]
  1. ^ 著者によるエッセイ「『西郷札』のころ」(『週刊朝日』1971年4月5日増刊号掲載)参照。
  2. ^ 「新潮日本文学アルバム 松本清張」(1994年、新潮社)21頁参照。
  3. ^ 阿刀田高「解説」『松本清張小説セレクション 35』中央公論社、1996年。
  4. ^ 「『西郷札』のころ」参照。

外部リンク

[編集]