ヨーロッパの “order” は中世の騎士団に由来、あるいはその制度に倣った栄典制度であり、騎士団へ入団することが栄誉とされていた。しかし、やがて騎士団の団員証である徽章(勲章)も意味するようになり、その授与が栄典とみなされるようになった。decoration などの他の勲章と区別するために「騎士団勲章」とも呼ばれる。現在でもイギリスの order は騎士団への加入という意味が強く、団体として記述されることも多いが、日本では慣例的に騎士団の徽章だけでなく、これら栄典全体を「勲章」と称し、名称を「~勲章」としている。そのため、本項ではこの栄典の名称を「聖パトリック勲章」と記すが、その制度等の説明では「騎士団」として扱う。
聖パトリック勲章は1783年にジョージ3世により創立され、1921年にアイルランドの大部分がアイルランド自由国として独立するまで、聖パトリックの騎士(Knight of St. Patrick, 勲爵士)への叙任は頻繁に行われていたが、1936年以降は1人も叙任されていない。最後の保持者であったグロスター公ヘンリーも1974年に死去している。