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|画像キャプション = 各画像説明 |
|画像キャプション = 各画像説明{{refn|group="注釈"|左上から順に、1段目:[[ヒトデ]]の一種([[棘皮動物門]][[星形動物亜門]][[ヒトデ綱]])、[[クダカイメン]] {{snamei||Aplysina fistularis}}([[海綿動物門]])、[[セイヨウダンゴイカ]] {{snamei||Sepiola atlantica}}([[軟体動物門]][[頭足綱]])、<br />2段目:[[ミズクラゲ]] {{snamei||Aurelia aurita}}([[刺胞動物門]][[鉢虫綱]])、[[ガ]]の一種 {{snamei||Hypercompe scribonia}}([[節足動物門]][[六脚亜門]][[昆虫綱]])、[[ゴカイ]]の一種 {{snamei||Nereis succinea}}([[環形動物門]][[多毛綱]])、<br />3段目:[[ヒレジャコ]] {{snamei||Tridacna squamosa}}([[軟体動物門]][[二枚貝綱]])、[[シベリアトラ]]([[脊索動物門]][[脊椎動物亜門]][[哺乳綱]])、[[ホヤ]]の一種{{snamei||Polycarpa aurata}}([[脊索動物門]][[尾索動物亜門]][[ホヤ綱]])、<br />4段目:[[クマムシ]]の一種([[緩歩動物門]][[異クマムシ綱]])、淡水産[[コケムシ]]の一種([[外肛動物門]][[掩喉綱]])、[[ウツボ]]の一種 {{snamei||Enchelycore anatina}}([[脊索動物門]][[脊椎動物亜門]][[条鰭綱]])、<br />5段目:[[カニ]]の一種 {{snamei||Liocarcinus vernalis}}([[節足動物門]][[甲殻亜門]][[軟甲綱]])、[[鉤頭動物]]の一種 {{snamei||Corynosoma wegeneri}}([[輪形動物門]][[古鉤頭虫綱]])、[[アオカケス]]([[脊索動物門]][[脊椎動物亜門]][[鳥綱]])、<br />6段目:[[ハエトリグモ]]の一種([[節足動物門]][[鋏角亜門]][[蛛形綱]])、[[ヒラムシ]]の一種 {{snamei||Pseudoceros dimidiatus}}([[扁形動物門]][[渦虫綱]])、[[ホウキムシ]]類のアクチノトロカ幼生([[箒虫動物門]])}} |
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|ドメイン = [[真核生物]] |
|ドメイン = [[真核生物]] {{sname||Eukaryota}} |
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|ドメイン階級なし ={{生物分類表/階級なし複数 |
|ドメイン階級なし ={{生物分類表/階級なし複数 |
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|[[オピストコンタ]] {{sname||Opisthokonta}} |
|[[オピストコンタ]] {{sname||Opisthokonta}} |
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|[[ホロゾア]] {{sname||Holozoa}}<!-- |
|[[ホロゾア]] {{sname||Holozoa}}<!-- |
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|[[フィロゾア]] {{sname||Filozoa}}<br/><small>{{AUY|Shalchian-Tabrizi et al.|2008}}</small> |
|[[フィロゾア]] {{sname||Filozoa}}<br/><small>{{AUY|Shalchian-Tabrizi ''et al.''|2008}}</small> |
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|[[コアノゾア]] {{sname||Choanozoa}} |
|[[コアノゾア]] {{sname||Choanozoa}} |
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以上2つは真核生物の2019年最新の分類である下記の論文に載っていないので削除:Adl, Sina M.; Bass, David; Lane, Christopher E.; Lukeš, Julius; Schoch, Conrad L.; Smirnov, Alexey; Agatha, Sabine; Berney, Cedric et al. (2018-09-26). “Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes” |
以上2つは真核生物の2019年最新の分類である下記の論文に載っていないので削除:Adl, Sina M.; Bass, David; Lane, Christopher E.; Lukeš, Julius; Schoch, Conrad L.; Smirnov, Alexey; Agatha, Sabine; Berney, Cedric et al. (2018-09-26). “Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes” |
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|界 = '''動物界''' {{Sname|Animalia}}<br />{{AUY|Linnaeus|1758}} |
|界 = '''動物界''' {{Sname|Animalia}}<br />{{small|{{AUY|Linnaeus|1758}}}} |
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|シノニム= |
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|下位分類名 = 門 |
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* {{sname||Metazoa}} {{small|{{AUY|Haeckel|1874}} [[emend.]] {{AUY|Adl ''et al.''|2005}}}}([[後生動物]]) |
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|下位分類 = [[#現生の動物の系統|本文参照]] |
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<!-- * {{sname||Eumetazoa}} {{small|{{AUY|Bütschli|1910}}}}([[真正後生動物]]) --> |
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|下位分類名 = [[門 (分類学)|門]] |
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|下位分類 = <center>[[#現生の動物の系統|本文参照]]</center> |
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'''動物'''(どうぶつ、{{lang-la-short|animalia}}<ref group="注釈">[[古典ラテン語]]の中性第三活用(i音幹)名詞 {{lang|la|[[:wikt:animal#ラテン語|animal]], [[:wikt:animalis|is]]}}, ''[[中性名詞|n]]''の[[数 (文法)|複数]]形[[主格]]。</ref>、{{lang-en-short|animal}})とは、 |
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# [[生物学]]にお |
# [[生物学]]における[[生物]]の分類群の一つ。かつて生物は、感覚と運動能力によって植物と動物に大別されていたが{{refn|group="注釈"|[[明治]]以前の日本では、中国[[本草学]]の影響により生物各群を草・虫・魚・獣などと並列的に扱うことが一般的であり、生物を動物と植物に大別することは西欧の学問の流入以降に普及した考えである{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=994}}。}}、動物は[[エルンスト・ヘッケル|ヘッケル]]により多細胞性の[[後生動物]]と単細胞性の[[原生動物]]<ref group="注釈">原生動物は[[進化|進化的]]に異なる雑多な生物をまとめたグループ([[多系統群]])であり、[[ミニステリア]]などの一部の生物を除き後生動物とは系統的に遠縁である。</ref> に分けられた{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=994}}。[[ロバート・ホイタッカー|ホイッタカー]]による[[五界説]]ではこの後生動物のみを'''動物界''' {{sname||Animalia}}として扱い、これを「動物」として扱うことが一般的である{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=994}}。 |
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# 日常語において、動物とは1.の意味の動物のうち、[[ヒト]]以外のもの<ref name="kotobank">{{Cite web|url=https://kotobank.jp/word/%E5%8B%95%E7%89%A9-104095|title=動物(どうぶつ)とは|accessdate=2018-07-18|publisher=[[コトバンク]]}}より『デジタル大辞泉』の解説。</ref>。特に[[哺乳類]]に属する生物を指す事が多い<ref name="kotobank" />。 |
# 日常語において、動物とは1. の意味の動物のうち、[[ヒト]]以外のもの<ref name="kotobank">{{Cite web|url=https://kotobank.jp/word/%E5%8B%95%E7%89%A9-104095|title=動物(どうぶつ)とは|accessdate=2018-07-18|publisher=[[コトバンク]]}}より『デジタル大辞泉』の解説。</ref>。特に[[哺乳類]]に属する生物を指す事が多い<ref name="kotobank" />。 |
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本項では1の意味を解説する。 |
本項では1. の意味を解説し、特に断りのない限り、後生動物を指すものとする。 |
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動物を扱う学問を[[動物学]]といい、動物の生物学的側面に加え、動物と人とのかかわりが対象とされる<ref>{{cite |author=八杉貞夫|chapter=動物学の歴史 {{small|―2000年の動物学史のエッセンス}}|date=2018|page=2}} in [[動物#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。動物の研究史についてはこの「[[動物学]]」も参照。 |
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== 概要 == |
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== 分類 == |
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[[File:Eukaryote Tree of Life 2020.svg|thumb|450px|2020年現在判明している真核生物の系統樹。<br />図中青字の<span style="color:blue">{{Sname|OPISTHOKONTA}}([[オピストコンタ]])</span>に含まれる <span style="color:blue">{{sname|Metazoa}}</span> が後生動物(本項の示す'''動物''')で、 <span style="color:blue">{{sname|Fungi}}</span> が[[菌類]]。<span style="color:blue">{{sname||Ichthyosporea}}</span> と動物をまとめた枝が[[ホロゾア]]で、菌類と <span style="color:blue">{{sname|Nucleariida}}</span> をまとめた枝が[[ホロマイコータ]]である。]] |
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動物は、[[哺乳類]]、[[爬虫類]]、[[鳥類]]、[[両生類]]、[[魚類]]といった[[脊椎動物]]はもちろん、[[貝類]]、[[昆虫]]、[[サナダムシ]]、[[海綿動物|カイメン]]など、幅広い種類の生物を含んだ[[系統群]]である。 |
動物は、[[哺乳類]]、[[爬虫類]]、[[鳥類]]、[[両生類]]、[[魚類]]といった[[脊椎動物]]はもちろん、[[貝類]]、[[昆虫]]、[[サナダムシ]]、[[海綿動物|カイメン]]など、幅広い種類の生物を含んだ[[系統群]]である。 |
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=== 分類 === |
=== 上位分類 === |
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[[20世紀]]末の[[分子遺伝学]]の知見を踏まえると、生物は[[真正細菌]]、[[古細菌]]、[[真核生物]]の3つに分かれるが([[生物の分類|3ドメイン説]])<ref>[[#藤田 |
[[20世紀]]末の[[分子遺伝学]]の知見を踏まえると、生物は[[真正細菌]]、[[古細菌]]、[[真核生物]]の3つに分かれるが([[生物の分類|3ドメイン説]])<ref>[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.91</ref><ref>{{Cite book|author=Lisa A. Urry|title=キャンベル生物学 原書11版|date=2018-3-20|publisher=丸善出版|isbn=978-4621302767|page=655|translator=池内昌彦、[[伊藤元己]]、箸本春樹 、道上達男|author2=Michael L. Cain|author3=Steven A. Wasserman|author4=Peter V. Minorsky|author5=Jane B. Reece}}</ref><ref>{{Cite book|author=P. レーヴン|title=レーヴン ジョンソン 生物学〈下〉(原書第7版)|date=2007-05-01|publisher=培風館|page=518|author2=J. ロソス|author3=S. シンガー|author4=G. ジョンソン}}</ref>、そのうち動物は[[植物]]、[[菌類]](キノコやカビ)、[[原生生物]]とともに[[真核生物]]に属する。なお、[[原生生物]]の一部である[[原生動物]]([[ゾウリムシ]]、[[ミドリムシ]]、[[アメーバ]]など)は本項で言う動物([[後生動物]])とは系統上の位置が異なり、それ自身も多系統である事が判明している。 |
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なお、初等教育では3ドメイン説以前の[[生物の分類|二界説]](2011年まで)ないし[[生物の分類|五界説]](2012年以降)に基づいて生物の分類を説明している<ref>{{Cite web|url=https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/j-scie/q_a/life1_06.html|title=中学校理科教科書「未来へ広がるサイエンス」|accessdate=2018-07-11|publisher=[[啓林館]]}}</ref>。二界説 |
なお、初等教育では3ドメイン説以前の[[生物の分類|二界説]](2011年まで)ないし[[生物の分類|五界説]](2012年以降)に基づいて生物の分類を説明している<ref>{{Cite web|url=https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/j-scie/q_a/life1_06.html|title=中学校理科教科書「未来へ広がるサイエンス」|accessdate=2018-07-11|publisher=[[啓林館]]}}</ref>。二界説での「動物」は原生動物を含み、3ドメイン説での知見を反映しない。一方、五界説での動物は3ドメイン説のものと基本的に同じであり、原生動物は原生生物として動物とは区別されている。 |
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動物は真核生物の中で |
動物は、真核生物の中でも[[オピストコンタ]](後方鞭毛生物、{{sname||Opisthokonta}})という[[単系統]]性が強く支持される系統群に属し、ここには動物以外に[[菌類]]や一部の真核生物が属する。オピストコンタに属する生物は、後ろ側にある1本の鞭毛で進むという共有形質を持ち、動物の[[精子]]や[[ツボカビ]]の[[胞子]]が持つ[[鞭毛]]がこれにあたる。オピストコンタは[[アメボゾア]] {{sname||Amoebozoa}}とともに[[アモルフェア]] {{Sname||Amorphea}} という[[クレード]]にまとめられる<ref name="adl2019">{{cite journal|last1=Adl|first1=Sina M.|last2=Bass|first2=David|last3=Lane|first3=Christopher E.|last4=Lukeš|first4=Julius|last5=Schoch|first5=Conrad L.|last6=Smirnov|first6=Alexey|last7=Agatha|first7=Sabine|last8=Berney|first8=Cedric ''et al.''|date=2019|title=Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes|journal=Journal of Eukaryotic Microbiology|volume=66|pages=4-119}}</ref><ref name="shimano">{{cite journal|author=矢﨑裕規・島野智之|date=2020|title=真核生物の高次分類体系の改訂 ―Adl ''et al.'' (2019)について―|journal=タクサ|volume=48|pages=71-83}}</ref>。 |
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さらにオピストコンタには[[ホロゾア]] {{sname||Holozoa}} というクレードと、[[ホロマイコータ]] {{sname||Holomycota}} というクレードがあり、動物は前者、菌類は後者に属する<ref name="adl2019"/>。なお動物の起源とされる(後述)[[襟鞭毛虫]]もホロゾアに属する<ref name="adl2019"/><ref name="Kakui">{{cite|author=角井敬知|chapter=動物界の分類群・系統 {{small|―いまだに解けない古い関係}}|date=2018|pages=54-57}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。前述の通り後生動物を動物界として扱うこと<ref>[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.99</ref><ref>{{cite journal|first1=Michael A. |last1=Ruggiero|first2= Dennis P. |last2=Gordon|first3= Thomas M. |last3=Orrell|first4= Nicolas |last4=Bailly|first5=Thierry |last5=Bourgoin|first6= Richard C. |last6=Brusca|first7= Thomas |last7=Cavalier-Smith|author-link7=トーマス・キャバリエ=スミス|first8= Michael D. |last8=Guiry|first9= Paul M. |last9=Kirk|title=A Higher Level Classification of All Living Organisms|journal=PLoS ONE |volume=10|issue=4|pages=1-60|doi=10.1371/journal.pone.0119248}}</ref><ref name="Tedersoo">{{cite journal|first1=Leho |last1=Tedersoo|first2=Santiago |last2=Sánchez-Ramírez|first3=Urmas |last3=Kõljalg|first4=Mohammad |last4=Bahram|first5=Markus |last5=DÖring|first6=Dmitry |last6=Schigel|first7=Tom |last7=May|first8= Martin |last8=Ryberg|first9=Kessy |last9=Abarenkov|title=High-level classification of the Fungi and a tool for evolutionary ecological analyses|journal=Fungal Diversity|date=2018|volume=90|pages=135-159|doi=10.1007/s13225-018-0401-0}}</ref> が多いが、このホロゾアを動物界と見なす試み{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1552}}もある。 |
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さらにオピストコンタには[[ホロゾア]]という系統群と、[[Holomycota]]という系統群があり、動物は前者、菌類は後者に属する。なお動物の起源とされる(後述)[[襟鞭毛虫]]もホロゾアに属する。 |
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また、Adl ''et al.'' (2019)では、後生動物 {{sname||Metazoa}} {{AUY|Haeckel|1874}} [[emend.]] {{AUY|Adl ''et al.''|2005}}を正規のランク{{refn|group="注釈"|この「ランク」は流動的な分類群の実情に合わせ、[[階級 (生物学)|リンネ式階層分類]]のように絶対的な階層をもたない<ref name="shimano"/>。}}とし、動物 {{sname||Animalia}} {{AUY|Linnaeus|1758}} および[[真正後生動物]] {{sname||Eumetazoa}} {{AUY|Bütschli|1910}}と同義(後生動物の[[シノニム]]<!-- 同義の分類群を示す用語 -->)として海綿動物、平板動物、刺胞動物、有櫛動物を含めながらもそれらを除いた[[左右相称動物]]を[[界 (分類学)|界]]に相当する階級とした<ref name="adl2019"/>。 |
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=== 特徴 === |
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=== 学名と命名法 === |
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動物の学名は[[国際動物命名規約]]にて運用される{{Sfn|動物命名法国際審議会|2005|loc=条1}}。現行の規約は[[2000年]][[1月1日]]に発効した第4版である{{Sfn|動物命名法国際審議会|2005|loc=表紙}}。この命名規約では「動物」という語は本項で示す[[後生動物]]を指すが、[[原生生物]]であっても研究者によって動物([[原生動物]])として扱われる場合は命名法上は「動物」として扱われ、この命名規約が適用される{{Sfn|動物命名法国際審議会|2005|loc=条1.1.1}}{{Sfn|動物命名法国際審議会|2005|loc=用語集}}。(真核生物の命名規約には、[[国際動物命名規約]]と[[国際藻類・菌類・植物命名規約]]があり、このどちらかに則らなければ学名と見なされない。) |
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動物命名法の起点は[[カール・フォン・リンネ]] (1758)の ''{{lang|la|[[:en:Systema Naturae|Systema Naturae]]}}'' 『自然の体系 第10版』および[[カール・アレクサンダー・クラーク]] {{small|([[:en:Carl Alexander Clerck|Carl Alexander Clerck]])}} (1757)の ''[[:en:Aranei Svecici|Aranei Svecici]]'' であり、ともに1758年1月1日に出版されたとみなされる<ref>{{cite |author=中野隆文|chapter=種と学名,高次分類群 {{small|―動物の名称と名称に関するルール}}|date=2018|pages=46-47}} in [[動物#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。 |
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== 特徴 == |
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動物は一般的に以下のような共通する形質を持つ。 |
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* [[多細胞生物|多細胞]]の[[真核生物]]である<ref name="Avila1995">{{cite book|author=Avila, Vernon L.|title=Biology: Investigating Life on Earth|url=https://books.google.com/books?id=B_OOazzGefEC&pg=PA767|year=1995|publisher=Jones & Bartlett Learning|isbn=978-0-86720-942-6|pages=767–}}</ref><ref name="palaeos">{{cite web|url=http://palaeos.com/metazoa/metazoa.html|title=Palaeos:Metazoa|accessdate=25 February 2018|website=Palaeos}}</ref>。 |
* [[多細胞生物|多細胞]]の[[真核生物]]である<ref name="Avila1995">{{cite book|author=Avila, Vernon L.|title=Biology: Investigating Life on Earth|url=https://books.google.com/books?id=B_OOazzGefEC&pg=PA767|year=1995|publisher=Jones & Bartlett Learning|isbn=978-0-86720-942-6|pages=767–}}</ref><ref name="palaeos">{{cite web|url=http://palaeos.com/metazoa/metazoa.html|title=Palaeos:Metazoa|accessdate=25 February 2018|website=Palaeos}}</ref>。 |
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* [[従属栄養生物]]である<ref name="palaeos" /><ref name="Windows">{{cite web|url=http://www.windows.ucar.edu/tour/link=/earth/Life/heterotrophs.html&edu=high|title=Heterotrophs|accessdate=30 September 2007|last=Bergman|first=Jennifer|archiveurl=https://web.archive.org/web/20070829051950/http://www.windows.ucar.edu/tour/link%3D/earth/Life/heterotrophs.html%26edu%3Dhigh|archivedate=29 August 2007|deadurl=no}}</ref>。すなわち[[植物]]のような[[独立栄養生物]]と違い、無機物から自力で栄養源を得る事はできない。 |
* [[従属栄養生物]]である<ref name="palaeos" /><ref name="Windows">{{cite web|url=http://www.windows.ucar.edu/tour/link=/earth/Life/heterotrophs.html&edu=high|title=Heterotrophs|accessdate=30 September 2007|last=Bergman|first=Jennifer|archiveurl=https://web.archive.org/web/20070829051950/http://www.windows.ucar.edu/tour/link%3D/earth/Life/heterotrophs.html%26edu%3Dhigh|archivedate=29 August 2007|deadurl=no}}</ref>。すなわち[[植物]]のような[[独立栄養生物]]と違い、無機物から自力で栄養源を得る事はできない。 |
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* [[運動性]]がある<ref name="Concepts">{{cite web|url=http://employees.csbsju.edu/SSAUPE/biol116/Zoology/digestion.htm|title=Concepts of Biology|accessdate=30 September 2007|last=Saupe|first=S. G.}}</ref>。すなわち、自発的に体を動かす事ができる。ただし生涯の途中で[[付着生物]]と化すなど、運動性がない時期がある動物もいる。 |
* [[運動性]]がある<ref name="Concepts">{{cite web|url=http://employees.csbsju.edu/SSAUPE/biol116/Zoology/digestion.htm|title=Concepts of Biology|accessdate=30 September 2007|last=Saupe|first=S. G.}}</ref>。すなわち、自発的に体を動かす事ができる。ただし生涯の途中で[[付着生物]]と化すなど、運動性がない時期がある動物もいる。 |
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* ほとんどの動物には、[[胚発生]]の初期に[[胞胚]]という段階がある<ref>{{cite book|last=Minkoff|first=Eli C.|title=Barron's EZ-101 Study Keys Series: Biology|edition=2nd, revised|year=2008|publisher=Barron's Educational Series|isbn=978-0-7641-3920-8|page=48}}</ref>。 |
* ほとんどの動物には、[[胚発生]]の初期に[[胞胚]]という段階がある<ref>{{cite book|last=Minkoff|first=Eli C.|title=Barron's EZ-101 Study Keys Series: Biology|edition=2nd, revised|year=2008|publisher=Barron's Educational Series|isbn=978-0-7641-3920-8|page=48}}</ref>。 |
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また、動物の'''[[ボディプラン|体制]]'''(ボディプラン、{{lang|en|bodyplan}}、{{lang|de|Bauplan}})を比較する上で、細胞の単複(多細胞化)、[[組織]]や[[器官]]の有無(器官分化)、そして'''体軸'''の対称性、'''[[胚葉]]性'''と'''[[体腔]]'''が重視されてきた<ref name="shirayama-1-3-2">{{cite |author=白山義久|chapter=総合的観点から見た無脊椎動物の多様性と系統{{small|(1-3-2 動物界の門レベルの多様性)}}|date=2000|pages=14-25}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref><ref name="bodyplan">[[#藤田 2010|藤田 2010]], pp.102-106</ref>。 |
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=== 体軸 === |
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{{See also|体軸}} |
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胚が形成される過程で、'''体軸'''という体の向きが決定がなされ、その向きには前後軸(頭尾軸)、背腹軸、左右軸の3つの基本的な軸がある<ref>[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], p.49</ref><ref name="hamada">{{cite |author=濱田博司|chapter=左右軸形成 {{small|―なぜ心臓や胃は左に?}}|date=2018|pages=308-309}} in [[動物#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。動物のパターン形成において、体軸の決定など細胞に位置情報を与える機能をもつ物質を[[モルフォゲン]]と呼ぶ{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1401}}。 |
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'''前後軸'''({{lang|en|antero-posterior axis}}、頭尾軸、一次軸、吻尾軸)は動物の体制の基本となる軸で、明瞭な背腹軸のない刺胞動物にも見られ、頭部([[口]])から尾部([[肛門]])を貫いている<ref name="matsuo">{{cite |author=松尾勲|chapter=頭尾軸・背腹軸形成 {{small|―動物界に共通する普遍的な体制}}|date=2018|pages=304-307}} in [[動物#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。前後軸の形成にはほとんどの動物(例えば、脊椎動物や[[コオロギ]]{{small|([[節足動物]])}}や[[プラナリア]]{{small|([[扁形動物]])}}から[[刺胞動物]]まで)で Wnt[[リガンド]](細胞外分泌性因子)が関わっており、尾部側で Wnt、頭部側で Wnt 拮抗因子が発現している<ref name="matsuo"/>。ただし、[[ショウジョウバエ]](節足動物)では、初期胚において細胞膜の存在しない合胞体として発生する(表割)ため、Wnt のような分泌性因子の濃度勾配ではなく[[ビコイド]] ({{lang|en|bicoid}})というホメオドメインを持つ[[転写因子]]が蛋白質レベルで頭尾軸に沿って濃度勾配を形成し、形態形成が行われる<ref name="matsuo"/>{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1401}}。また、前後軸に沿った分節の形成にも[[ホメオドメイン]]と呼ばれる[[DNA結合ドメイン]]を共通に持っている [[ホメオティック遺伝子|''Hox'' クラスター遺伝子]]が働いており、胚発生が進むにつれ、遺伝子座の 3'-側から順に前後軸に沿って分節的に発現することで前後軸に沿ったそれぞれの位置に固有な形態が形成される<ref name="matsuo"/><ref name="Sato30">[[#佐藤ほか 2004|佐藤ほか 2004]], pp.30-37</ref>。''Hox'' 遺伝子群は海綿動物をのぞくほぼすべての後生動物が持っている<ref name="Sato30"/>。 |
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'''背腹軸'''({{lang|en|dorso-ventral axis}})も同様に左右相称動物で認められる動物の体制の基本となる体軸である<ref name="matsuo"/>。扁形動物、節足動物、棘皮動物、脊椎動物など多くの動物で、細胞外に放出される [[骨形成タンパク質|BMP]](骨形成因子<ref name="Sato38">[[#佐藤ほか 2004|佐藤ほか 2004]], pp.38-41</ref>)というリガンドと Chordin などの BMP拮抗因子によってつくられるBMP活性の濃度勾配によって背腹軸が形成される<ref name="matsuo"/>。外胚葉はBMP活性が高いと表皮に、低いと神経に分化するが、[[19世紀]]前半から脊椎動物と他の動物では背腹軸に沿った器官配置が反転していることが指摘されており、実際に脊椎動物でBMP が腹側で発現し、背側で Chordin などが発現するのに対し、節足動物(ショウジョウバエ)では背側で BMP に相同な分子 (Dpp, {{lang|en|Decapentaplegic}}) が、腹側で BMP拮抗因子(同、Sog)が発現していることが分かっている<ref name="matsuo"/><ref name="Sato38"/>。逆にショウジョウバエにおける腹側を決めるのは ''dorsal'' 遺伝子で、細胞性胞胚期において腹側に転写因子[[ドーサル蛋白質]] ({{lang|en|Dorsal}})が多く分布し、背側への分化を抑制する<ref name="Sato38"/>。胚発生時から背腹軸が決まっている節足動物とは異なり、両生類(脊椎動物)では、受精の際に精子の侵入と反対側に[[灰色三日月環]]が形成され、そこから原腸陥入が起こって Wnt [[シグナル伝達]]系のディシェベルド (Dsh, {{lang|en|Dishevelled}}) が活性化して他の因子を活性化し、反応の下流で[[オーガナイザー]]を誘導することで背側となる<ref name="Sato38"/>。 |
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さらに、脊椎動物の神経管の背腹軸は、胚の背腹軸形成の完成後に進行するが、神経管の腹側領域(フロアプレート)や脊索で Shh ({{lang|en|sonic hedgehog}}) 蛋白質、Wnt 拮抗因子、BMP拮抗因子が発現し、これらの濃度勾配によって神経管内で下流標的因子の発現活性が活性化または抑制されることで種々の神経細胞が分化する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1401}}<ref name="matsuo"/>。これらの発現パターンは左右相称動物の[[中枢神経系]]で広く保存されている<ref name="matsuo"/>。 |
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'''左右軸'''は動物の3体軸のうち最後に決まる軸で、左右非対称性が生じるメカニズムは進化的に多様である<ref name="hamada"/>。脊椎動物ではまず胚の中央部(ノード)で繊毛の回転により左右対称性が破られ、左側の中胚葉で Nodal および Leftyといったシグナル分子が活性化し、腹腔内で臓器が非対称な形と位置で形成される<ref name="hamada"/>。それに対し、ショウジョウバエ(節足動物)では、細胞の形態のゆがみに起因して消化管が非対称な形態をとる<ref name="hamada"/>。腹足類(軟体動物)では殻の巻く方向が発生初期の卵割様式に依存して Nodal や Pitx2 などの因子の制御により左巻きか右巻きかが変化する<ref name="hamada"/>。 |
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=== 胚葉性 === |
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{{Seealso|#発生}} |
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受精卵が卵割を繰り返し形成される細胞の層を[[胚葉]](はいよう、{{lang|en|germ layer}})と呼ぶ<ref name="derm">{{cite |author=白山義久|chapter=総合的観点から見た無脊椎動物の多様性と系統{{small|(1-3-2 動物界の門レベルの多様性)}}|date=2000|pages=16-17}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref>。[[個体発生]]の過程では、上皮細胞の層に囲まれ体内と体外の区別がつく[[胞胚]]の状態から、[[原腸陥入]]によって'''[[内胚葉]]'''(ないはいよう、{{lang|en|endoderm}})と'''外胚葉'''(がいはいよう、{{lang|en|ectoderm}})が形成され、'''二胚葉性'''の[[嚢胚]](原腸胚)となる<ref name="bodyplan"/><ref name="derm"/>。そこからさらに内外両胚葉の何れかから中に細胞が零れ落ち、'''中胚葉'''(ちゅうはいよう、{{lang|en|mesoderm}})が形成される<ref name="bodyplan"/><ref name="derm"/>。外胚葉由来の中胚葉を'''外中胚葉'''(がいちゅうはいよう、{{lang|en|ectomesoderm}}{{refn|group="注釈"|幼生中胚葉 ({{lang|en|larval mesoderm}})または中外胚葉 ({{lang|en|mesectoderm}})とも呼ばれる<ref name="mesoderm">{{cite|author=久米・團|date=1957|title=総説|pages=35-37}} [[#久米・團 1957|久米・團 1957]]</ref>。}})、内胚葉由来の中胚葉を'''内中胚葉'''(ないちゅうはいよう、{{lang|en|entomesoderm}}{{refn|group="注釈"|真の中胚葉 ({{lang|en|true mesoderm}})または中内胚葉 ({{lang|en|mesendoderm}})とも呼ばれる<ref name="mesoderm"/>}})と呼ぶこともある<ref name="derm"/><ref name="mesoderm"/>。外中胚葉からなる細胞は全て[[間充織細胞]] ({{lang|en|mesenchyme}})としてできるが、[[棘皮動物]]や[[箒虫動物]]など、内中胚葉でも間充織細胞として形成されるものもある<ref name="mesoderm"/>。 |
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[[系統進化]]の仮説において、[[多細胞]]化して細胞同士の密着により体内と外界を隔離するようになった動物が、口と[[消化管]]を生じ、[[内胚葉]]と[[外胚葉]]の区別がなされるようになった二胚葉動物(ディプロブラスティカ<ref name="sato-11">[[#佐藤ほか 2004|佐藤ほか 2004]], p.11</ref>、{{lang|la|Diploblastica}})となり、それが更に[[中胚葉]]ができて三胚葉動物(トリプロブラスティカ<ref name="sato-11"/>、{{lang|la|Triploblastica}})となったと考えられている<ref name="bodyplan"/>。[[海綿動物]]以外の動物は(二次的に喪失したものを除き)胚葉の分化がみられ、[[真正後生動物]]と呼ばれる<ref name="komazaki">{{cite|author=駒崎伸二・浅島誠|chapter=胚葉形成 {{small|―動物の体をつくる基本作業}}|date=2018|pages=296-299}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。[[刺胞動物]]および[[有櫛動物]]は内中胚葉を持たないため、かつては二胚葉動物と見なされてきたが、内胚葉と外胚葉の間に外中胚葉による間充織細胞を持つため、[[結合組織]]に細胞がみられない[[ヒドロ虫]]類を除き、三胚葉性であるとみなされることが多い(それぞれの動物門については[[#現生の動物の系統]]も参照)<ref name="derm"/><ref name="mesoderm"/>。[[平板動物]]も中胚葉を欠くとされるが、前者には[[上皮]]の下に細胞がみられる<ref name="derm"/>。[[二胚動物]]および[[直泳動物]]にも中胚葉がなく、後生動物ですらない[[中生動物]]とされていたが、現在では退化的に単純な体制になったと解釈されている<ref name="derm"/>。 |
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=== 体腔 === |
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[[File:Figure 27 02 05.jpg|thumb|400px|左から無体腔、真体腔、偽体腔の断面の模式図。]] |
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外胚葉と内胚葉の間隙に中胚葉が筒状の細胞層を形成したものを[[体腔]](たいこう、{{lang|en|coelom}})と呼ぶ<ref name="coelom">{{cite |author=白山義久|chapter=総合的観点から見た無脊椎動物の多様性と系統{{small|(1-3-2 動物界の門レベルの多様性)}}|date=2000|pages=19-20}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref>。 |
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三胚葉性動物は体腔の構造により、体腔のない'''無体腔動物'''(むたいこうどうぶつ、{{lang|en|acoelomates}})、体腔が上皮性の細胞で裏打ちされていない'''偽体腔動物'''(ぎたいこうどうぶつ、{{lang|en|pseudocoelomates}})、上皮性の細胞で裏打ちされた体腔をもつ'''真体腔動物'''(しんたいこうどうぶつ、{{lang|en|coelomates, eucoelomates}})に大別されてきた<ref name="coelom"/>{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=848}}。偽体腔は[[胞胚腔]]('''原体腔'''、{{lang|en|primary body cavity}})が体腔として残ったもので大きな体腔を作ることができないのに対し、真体腔はしっかりとした大きな体腔を作ることができる<ref name="bodyplan"/><ref name="mesoderm"/>。偽体腔動物は従来、[[袋形動物]]という一つの動物門に含められていた<ref name="coelom"/>。また、真体腔はでき方により'''腸体腔'''(ちょうたいこう、{{lang|en|enterocoel}})および'''裂体腔'''(れったいこう、{{lang|en|schizocoel}})に分けられる<ref name="bodyplan"/><ref name="coelom"/>。前者は腸体腔嚢と呼ばれる腸管にできる膨らみが括れて切れて形成されるのに対し、後者は中胚葉性の細胞塊の内部に空所が形成される<ref name="bodyplan"/><ref name="coelom"/>。主に[[前口動物]](担輪動物 + 脱皮動物)では裂体腔、[[後口動物]](新口動物)では腸体腔となる([[#現生の動物の系統]]も参照)<ref name="bodyplan"/>。かつて後口動物として扱われていた毛顎動物や腕足動物も腸体腔を持つ<ref name="mesoderm"/>。 |
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古くは無体腔動物から偽体腔動物、そして偽体腔動物が真体腔動物に進化してきたと解釈されていたが、ロレンツェン (1985)は間隙生活などで不必要になった真体腔が偽体腔に退化した可能性を示唆しており、さらに分子系統解析の結果でもこれが支持され、無体腔や偽体腔は真体腔が退化的に変化したものである考えがなされている<ref name="bodyplan"/><ref name="komazaki"/><ref name="coelom"/>。 |
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また、[[軟体動物]]、[[節足動物]]、[[尾索動物]]などでは、[[血液]]([[血リンパ]])に満たされた'''血体腔'''(けったいこう、{{lang|en|hemocoel}})と呼ばれる腔所(原体腔)を持つ<ref name="Kozloff-7">[[#Kozloff 1990|Kozloff 1990]], pp.7-8</ref>{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=405}}。血体腔を持つ動物は[[開放血管系]]を持つ<ref name="Kozloff-7"/>{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=405}}。 |
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== 動物の細胞 == |
== 動物の細胞 == |
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動物の[[細胞]]は、全ての真核生物の細胞に共通した以下の構造を持つ。 |
動物の[[細胞]]は、全ての真核生物の細胞に共通した以下の構造を持つ。 |
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* [[細胞膜]]:細胞を包んでいる膜<ref name="Matsu47">{{Cite book|和書|ref=松本ら |
* [[細胞膜]]:細胞を包んでいる膜<ref name="Matsu47">{{Cite book|和書|ref=松本ら 1993|author=松本信二、船越浩海、玉野井逸朗|editor=|title=細胞の増殖と生体システム|edition=初版|year=1993|publisher=[[学会出版センター]]|isbn=4-7622-6737-6|page=}} pp.47-50、3.細胞の微細構造とその機能、3.1.細胞と膜</ref>。内部は生体物質を含む[[水溶液]]があり[[代謝]]の場となっている。[[リボソーム]]、[[細胞質]]([[原形質]])といった共通の構成要素を持っている。 |
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* [[DNA]]:[[塩基配列]]または遺伝暗号 (genetic code)と言うヌクレオチドの塩基部分が並ぶ構造を持ち<ref name="Take14">{{Cite book|和書|ref=武村 |
* [[DNA]]:[[塩基配列]]または遺伝暗号 (genetic code)と言うヌクレオチドの塩基部分が並ぶ構造を持ち<ref name="Take14">{{Cite book|和書|ref=武村 2012|author=武村政春|editor=|title=DNAを操る分子たち|edition=初版第1刷|year=2012|publisher=[[技術評論社]]|isbn=978-4-7741-4998-1|page=}} pp.14-24、第1章 エピジェネティクスを理解するための基礎知識、1-1 DNAとセントラルドグマ</ref>、遺伝情報の継承と発現を担う。真核細胞のDNAは、一本または複数本の分子から構成される直線状で原核生物よりも多く<ref name="Matsu53">{{Cite book|和書|ref=松本ら 1993|author=松本信二、船越浩海、玉野井逸朗|editor=|title=細胞の増殖と生体システム|edition=初版|year=1993|publisher=[[学会出版センター]]|isbn=4-7622-6737-6|page=}}、pp.53-56、3.細胞の微細構造とその機能、3.3.真核生物、3.3.1真核生物の構造と機能概説</ref>、[[染色体]]と呼ばれる<ref name="Ide65">{{Cite book|和書|ref=井出 2006|author=井出利憲|editor=|title=細胞の運命Ⅳ細胞の老化|edition=初版|year=2006|publisher=[[サイエンス社]]|isbn=4-7819-1127-7|page=}} pp.65-75、第6章 テロメアとは何か</ref>。 |
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* [[細胞質]]:細胞の細胞膜で囲まれた部分である原形質のうち、細胞核以外の領域のこと。真核細胞の細胞質には[[細胞骨格]](サイトスケルトン)と呼ばれる微小な管やフィラメント状がつくる網目もしくは束状をした3次元構造<ref name="SeikagakuDic534-8">{{Cite book|和書|author = |title = 生化学辞典第2版|edition = 第2版第6刷|year = 1995|publisher = [[東京化学同人]]|isbn = 4-8079-0340-3|page = |ref = 生化学辞典(2版)}}、p.534 【細胞骨格タンパク質】</ref>がある。これが特に発達した動物の細胞では、細胞骨格が各細胞の形を決定づける。 |
* [[細胞質]]:細胞の細胞膜で囲まれた部分である原形質のうち、細胞核以外の領域のこと。真核細胞の細胞質には[[細胞骨格]](サイトスケルトン)と呼ばれる微小な管やフィラメント状がつくる網目もしくは束状をした3次元構造<ref name="SeikagakuDic534-8">{{Cite book|和書|author = |title = 生化学辞典第2版|edition = 第2版第6刷|year = 1995|publisher = [[東京化学同人]]|isbn = 4-8079-0340-3|page = |ref = 生化学辞典 (2版)}}、p.534 【細胞骨格タンパク質】</ref> がある。これが特に発達した動物の細胞では、細胞骨格が各細胞の形を決定づける。 |
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=== 細胞小器官 === |
=== 細胞小器官 === |
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# [[粗面小胞体]]:[[リボソーム]]が付着している[[小胞体]]の総称。 |
# [[粗面小胞体]]:[[リボソーム]]が付着している[[小胞体]]の総称。 |
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# [[ゴルジ体]]:へん平な袋状の膜構造が重なっており、細胞外へ[[分泌]]される[[蛋白質|タンパク質]]の糖鎖修飾や、[[リボソーム]]を構成するタンパク質のプロセシングに機能する。 |
# [[ゴルジ体]]:へん平な袋状の膜構造が重なっており、細胞外へ[[分泌]]される[[蛋白質|タンパク質]]の糖鎖修飾や、[[リボソーム]]を構成するタンパク質のプロセシングに機能する。 |
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# [[微小管]]:[[細胞]]中に見いだされる直径約 25 |
# [[微小管]]:[[細胞]]中に見いだされる直径約 25 nm の[[管]]状の[[構造]]であり、主に[[チューブリン]]と呼ばれる[[タンパク質]]からなる。[[細胞骨格]]の一種。細胞分裂の際に形成される分裂装置([[星状体]]・[[紡錘体]]・[[染色体]]をまとめてこう呼ぶ)の主体。 |
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# [[滑面小胞体]]:[[リボソーム]]が付着していない[[小胞体]]の総称。通常細管上の網目構造をとる。[[粗面小胞体]]と[[ゴルジ体|ゴルジ複合体]]シス網との移行領域、粗面小胞体との連続部位に存在する。[[トリグリセリド]]、[[コレステロール]]、[[ステロイドホルモン]]など[[脂質]]成分の合成やCa<sup>2+</sup>の貯蔵などを行う。 |
# [[滑面小胞体]]:[[リボソーム]]が付着していない[[小胞体]]の総称。通常細管上の網目構造をとる。[[粗面小胞体]]と[[ゴルジ体|ゴルジ複合体]]シス網との移行領域、粗面小胞体との連続部位に存在する。[[トリグリセリド]]、[[コレステロール]]、[[ステロイドホルモン]]など[[脂質]]成分の合成やCa<sup>2+</sup>の貯蔵などを行う。 |
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# [[ミトコンドリア]]:二重の[[生体膜]]からなり、独自の[[DNA]]([[ミトコンドリアDNA]]=mtDNA)を持ち、分裂、増殖する。mtDNAは[[アデノシン三リン酸|ATP]]合成以外の生命現象にも関与する。[[酸素呼吸]]([[好気呼吸]])の場として知られている。また、細胞の[[アポトーシス]]においても重要な役割を担っている。mtDNAとその[[遺伝子]]産物は一部が細胞表面にも局在し突然変異は自然免疫系が特異的に排除<ref>林純一「ミトコンドリアDNAに突然変異をもつ細胞は自然免疫により排除されることを発見」筑波大学生命科学研究科発表 「Journal of Experimental Medicine」電子版 2011.Oct.12 |
# [[ミトコンドリア]]:二重の[[生体膜]]からなり、独自の[[DNA]]([[ミトコンドリアDNA]]=mtDNA)を持ち、分裂、増殖する。mtDNAは[[アデノシン三リン酸|ATP]]合成以外の生命現象にも関与する。[[酸素呼吸]]([[好気呼吸]])の場として知られている。また、細胞の[[アポトーシス]]においても重要な役割を担っている。mtDNAとその[[遺伝子]]産物は一部が細胞表面にも局在し突然変異は自然免疫系が特異的に排除<ref>林純一「ミトコンドリアDNAに突然変異をもつ細胞は自然免疫により排除されることを発見」筑波大学生命科学研究科発表 「Journal of Experimental Medicine」電子版 2011.Oct.12</ref> する。ミトコンドリアは好気性細菌で[[リケッチア]]に近いα[[プロテオバクテリア]]が[[真核細胞]]に[[共生]]することによって獲得されたと考えられている<ref name="ミトコンドリアはどこからきたか">黒岩常祥『ミトコンドリアはどこからきたか』日本放送出版、2000年6月30日第1刷発行。ISBN 4140018879。</ref>。 |
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# [[液胞]]:電子顕微鏡で観察したときのみ、動物細胞内にもみられる。主な役割として、ブドウ糖のような代謝産物の貯蔵、無機塩類のようなイオンを用いた[[浸透圧]]の調節・[[リゾチーム]]を初めとした分解酵素が入っており不用物の細胞内消化、不用物の貯蔵がある。 |
# [[液胞]]:電子顕微鏡で観察したときのみ、動物細胞内にもみられる。主な役割として、ブドウ糖のような代謝産物の貯蔵、無機塩類のようなイオンを用いた[[浸透圧]]の調節・[[リゾチーム]]を初めとした分解酵素が入っており不用物の細胞内消化、不用物の貯蔵がある。 |
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# [[細胞質基質]]:[[細胞質]]から[[細胞内小器官]]を除いた部分のこと。[[真核生物]]では細胞質基質はどちらかと言えば細胞の基礎的な代謝機能の場となっている。 |
# [[細胞質基質]]:[[細胞質]]から[[細胞内小器官]]を除いた部分のこと。[[真核生物]]では細胞質基質はどちらかと言えば細胞の基礎的な代謝機能の場となっている。 |
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[[海綿動物]]や[[平板動物]]のような少数の例外を除き、動物の体は[[組織 (生物学)|組織]]に分化しており<ref name="Starr-362,365">{{cite book|last=Starr|first=Cecie|title=Biology: Concepts and Applications without Physiology|url=https://books.google.com/?id=EXNFwB-O-WUC&pg=PA362|date=2007-09-25|publisher=Cengage Learning|isbn=0495381500|pages=362, 365}}</ref>、組織としては例えば[[筋肉]]や[[神経]]がある。 |
[[海綿動物]]や[[平板動物]]のような少数の例外を除き、動物の体は[[組織 (生物学)|組織]]に分化しており<ref name="Starr-362,365">{{cite book|last=Starr|first=Cecie|title=Biology: Concepts and Applications without Physiology|url=https://books.google.com/?id=EXNFwB-O-WUC&pg=PA362|date=2007-09-25|publisher=Cengage Learning|isbn=0495381500|pages=362, 365}}</ref>、組織としては例えば[[筋肉]]や[[神経]]がある。 |
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== 生殖 |
== 生殖 == |
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=== 生殖 === |
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[[ファイル:Odonata_copulation.jpg|thumb|[[トンボ]]の交尾]] |
[[ファイル:Odonata_copulation.jpg|thumb|[[トンボ]]の交尾]] |
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=== 有性生殖 === |
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ほぼ全ての動物は何らかの形で[[有性生殖]]を行い<ref>{{cite book|last=Knobil|first=Ernst|title=Encyclopedia of reproduction, Volume 1|year=1998|publisher=Academic Press|isbn=978-0-12-227020-8|page=315}}</ref>、その際[[減数分裂]]により[[倍数性|一倍体]]の[[配偶子]]を作る。2つの配偶子が融合する事で新しい個体が生まれるが、この場合小さくて運動性がある配偶子を[[精子]]、大きくて運動性を持たない配偶子を[[卵子]]といい<ref>{{cite book|last=Schwartz|first=Jill|title=Master the GED 2011|year=2010|publisher=Peterson's|isbn=978-0-7689-2885-3|page=371}}</ref>、配偶子が融合する過程を[[受精]]、受精の結果できあがった細胞を[[受精卵]]という<ref name="Hamilton-55">{{cite book|last=Hamilton|first=Matthew B.|title=Population genetics|year=2009|publisher=Wiley-Blackwell|isbn=978-1-4051-3277-0|page=55}}</ref>。また精子を作る個体をオス、卵子を作る個体をメスという。一つの個体が精子と卵子を両方作れる場合は[[雌雄同体]]であるという。 |
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一部の例外を除き動物は何らかの形で[[有性生殖]]を行う<ref>{{cite book|last=Knobil|first=Ernst|title=Encyclopedia of reproduction, Volume 1|year=1998|publisher=Academic Press|isbn=978-0-12-227020-8|page=315}}</ref><ref name="Kobayashi">{{cite|author=小林一也|chapter=有性生殖と無性生殖 {{small|―生殖戦略の多様性}}|date=2018|pages=274-275}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。有性生殖では、[[減数分裂]]により[[倍数性|一倍体]]の大小2種類の[[配偶子]]が作られる<ref name="Kobayashi"/>。2つの配偶子が融合する事で新しい個体が生まれるが、この場合小さくて運動性がある配偶子を[[精子]]、大きくて運動性を持たない配偶子を[[卵細胞|卵]](卵子)といい、配偶子が融合する過程を[[受精]] ({{lang|ena|fertilization}})、受精の結果できあがった細胞を[[受精卵]] ({{lang|ena|fertilized egg}})という<ref name="Hamilton-55">{{cite book|last=Hamilton|first=Matthew B.|title=Population genetics|year=2009|publisher=Wiley-Blackwell|isbn=978-1-4051-3277-0|page=55}}</ref>{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=638}}{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=744}}。また精子を作る性機能を[[雄]]、卵を作る性機能を[[雌]]という{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=744}}。雌雄の性機能を別々の個体が担うことを雌雄異体、1つの個体が両方の性機能をもつ場合は[[雌雄同体]]であるという{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=744}}。 |
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=== 無性生殖 === |
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有性生殖に対し、[[無性生殖]]も哺乳類を除いたほとんどの分類群で行われている<ref name="Kobayashi"/>。無性生殖は生殖コストが低く、短期間で増殖するメリットはあるが、多様性が作りづらく有害遺伝子の排除が困難であり、後戻りできない糸車に喩え[[マラーのラチェット仮説]]でそのデメリットが説明される<ref name="Kobayashi"/>。そのようなデメリットがありながらもほとんどの動物群で無性生殖が行われることは無性生殖のパラドクスと呼ばれている<ref name="Kobayashi"/>。配偶子を必要としない[[栄養生殖]]型の'''無性生殖'''では、[[出芽]]や[[横分裂]]、断片化などの[[自切]]現象ののち、失った部分を[[再生]]することによって新しい個体を生み出す<ref name="Kobayashi"/>。この型の無性生殖は[[海綿動物]]、[[刺胞動物]]、[[扁形動物]]、[[環形動物]]、[[苔虫動物]]、[[内肛動物]]、[[棘皮動物]]、[[半索動物]]、[[脊索動物]]などほとんどの分類群で行われる<ref name="Kobayashi"/>。特に[[ヒドラ]](刺胞動物)や[[プラナリア]](扁形動物)は[[分化多能性]][[幹細胞]]をもち、自切後の再生に関与している<ref name="Kobayashi"/>。群体ホヤ(尾索動物)では、上皮組織から多能性を持った細胞が脱分化して再生を行う<ref name="Kobayashi"/>。 |
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一倍体である精子と卵子が受精する事で、二倍体の受精卵が形成される。この際精子由来の[[ミトコンドリア]]は酵素により分解されるので<ref name="Asa-Koma-33">[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.33.</ref>、ミトコンドリアは卵子からしか受精卵に伝わらない。 |
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配偶子を必要とする'''[[単為生殖]]'''型の無性生殖を行う動物も存在し、[[ミツバチ]]・[[アブラムシ]]([[節足動物]])や[[ワムシ]]([[輪形動物]])、[[魚類]]・[[両生類]]・[[爬虫類]]([[脊椎動物]])でみられる<ref name="Kobayashi"/>。卵の形成過程により、体細胞分裂で卵が形成される[[アポミクシス]]([[クローン]]による生殖)、減数分裂前に染色体が倍加する[[エンドミクシス]]、減数分裂後に染色体が倍加する[[オートミクシス]]に分けられる<ref name="Kobayashi"/>。また、精子が介在する「偽の受精 {{lang|en|pseudogamy}}」によっておこる単為生殖では、精子によって賦活され発生が開始されるが雄性前核が受精卵から除去される[[雌性生殖]]や、淡水生の[[シジミ]](軟体動物)で見られるように精子による賦活後雄性前核が除去され精子由来のゲノム情報で発生が行われる[[雄性生殖]]がある<ref name="Kobayashi"/>。[[ヒルガタワムシ類]](輪形動物)では数千万年間アポミクシスのみで繁殖しており、DNAの変異の蓄積で新規遺伝子が獲得されるという考え([[メセルソン効果]])が提唱されている<ref name="Kobayashi"/>。哺乳類では、[[ゲノムインプリンティング]]という[[エピジェネティック]]な単為生殖防御機構が働いている<ref name="Kobayashi"/>。 |
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[[ファイル:Blastulation.png|thumb|300x300px|{{仮リンク|胞胚形成|en|Blastulation}}: '''1''' [[桑実胚]]、'''2''' - 胞胚]] |
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== 発生 == |
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受精卵は[[卵割]]という細胞増殖を繰り返す事で多細胞の胚を形成する<ref name="Asa-Koma-33" />。一般的に卵割の際は核は複製されるが細胞質は卵細胞のものを分割して使うという特徴がある<ref name="Asa-Koma-33" />。一般的に、卵割が進むと胚の内部に隙間が形成され、この隙間が広くなったものを[[胞胚腔]]といい、大きな胞胚腔が形成される時期の胚は[[胞胚]]と呼ばれる<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.45.</ref>。なお、[[昆虫]]や[[両生類]]など多くの動物では、卵割期の細胞増殖を急激に行うために通常の細胞分裂で行われる一部の過程(G<sub href="運動">1</sub>期とG<sub href="感覚">2</sub>期の過程)が省略され<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.39.</ref>、胞胚中期になるとこの省略が終わる(中期胞胚転移)<ref name="Asa-Koma-42">[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.42.</ref>。それに対し胎生の[[哺乳類]]ではこういった省略は起こらない<ref name="Asa-Koma-42" />。 |
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[[File:Animal growth and development (1960) (17575567213).jpg|thumb|400px|脊索動物の初期発生。1: 受精卵、2: 2細胞期、3: 4細胞期、4: 8細胞期、5: [[桑実胚期]]、6: 胞胚期<br />A(左):頭索動物の卵割(等黄卵)<br />B(中):両生類の卵割(中黄卵)<br />C(右):鳥類の卵割(盤割)<br />]] |
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受精卵や無性生殖におけるなんらかの細胞塊が成体に到達する過程のことを'''[[胚発生|発生]]''' ({{lang|en|development}})と呼ぶ{{Sfn|巌佐ほか|2013|pp=1105-1106}}。有性生殖では、一倍体である精子と卵(未受精卵)が受精する事で、二倍体の受精卵が形成され、発生が開始する{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=638}}。精子由来の[[ミトコンドリア]]は酵素により分解されるので<ref name="Asa-Koma-33">[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], p.33</ref>、ミトコンドリアなどの[[細胞小器官]]や母性因子と呼ばれる[[mRNA]]、[[機能タンパク質]]は卵細胞のみから受精卵に伝わり<ref name="asashima">{{cite|author=浅島誠・駒崎伸二|chapter=さまざまな動物の発生 {{small|―卵から形づくりの始まり}}|date=2018|pages=270-273}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>、子の表現型は母親の影響を受ける[[母性効果]] ({{lang|en|materal effect}})が現れる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1313}}。胚発生以前から卵には極性(軸性、{{lang|en|polarity}})があり、卵前核に近い方の極を[[動物極]] ({{lang|en|animal pole}})、そうでない極を[[植物極]] ({{lang|en|vegetal pole}})と呼ぶ<ref name="polarity">{{cite|author=久米・團|date=1957|title=総説|page=371}} [[#久米・團 1957|久米・團 1957]]</ref>。前者は幼生の中でも運動や感覚に関する部分、後者は消化器系となり、これらがかつてそれぞれ動物的機能と植物的機能と呼ばれていたためこれらの名がある<ref name="polarity"/>。 |
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発生が進行すると、胚のそれぞれの部分は特定の組織になるが、その決められた先を'''予定運命''' ({{lang|en|presumptive fate}})と呼ぶ{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1430}}。ある動物において、初期の発生(2細胞期や4細胞期)では等しい分化能力([[全能性]])を持ち、すべての組織や器官を形成し得る<ref name="komazaki"/><ref name="Kozloff-4"/>。ウニの2細胞期の各割球を分けると、それぞれ受精卵と同様に発生が進行する<ref name="Kozloff-4"/>。逆に、4細胞期の環形動物や軟体動物の割球は完全な胚にならない<ref name="Kozloff-4"/>。発生運命が不可逆的に決まることを'''決定''' ({{lang|en|determination}})といい、前者のような状態を「未決定である」({{lang|en|indeterminate}}, [[形容詞|adj.]])、後者のような状態を「決定している」({{lang|en|determinate}}, [[形容詞|adj.]])と表現する<ref name="Kozloff-4"/>{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=406}}<ref name="forming">{{cite|author=久米・團|date=1957|title=総説|pages=39-40}} [[#久米・團 1957|久米・團 1957]]</ref>。胚発生における発生運命の限定には可逆的に限定された'''指定''' ({{lang|en|specification}})と不可逆的な決定があり、普通は指定ののちに決定が起こる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=406}}。Conklin は胚発生の初期において、予定運命の決定が早い段階で起こるものを'''モザイク卵''' ({{lang|en|mosaic egg}})、発生運命が未決定で、各部が影響を及ぼしあいながら順次決まっていくものを'''調整卵''' ({{lang|en|regulative egg}})と呼んだ<ref name="forming"/>。前者には[[有櫛動物]]、[[紐形動物]]、[[線形動物]]、[[環形動物]]、[[節足動物]]、[[軟体動物]]、[[尾索動物]]が{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1397}}、後者には[[刺胞動物]]、[[紐形動物]]、[[棘皮動物]]、[[腸鰓類]]([[半索動物]])、[[脊椎動物]]などが挙げられる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=923}}。 |
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胚が形成される過程で、[[体軸]]という体の向きが決定がなされ、その向きには前後軸、背腹軸、左右軸などがある<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.49.</ref>。例えば両生類では精子が受精した位置により背腹軸が決まり、受精した側が腹側、その反対側が背側になる。 |
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=== 卵割 === |
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一部の原始的な動物(前左右相称動物<ref group="注釈" name="Fujita10-zen">「前左右相称動物」というのは左右相称動物以外の動物門について述べるための便宜的な名称で、「前左右相称動物」という系統群があるわけではない([[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.113.)</ref>)以外は胞胚後期になると[[胚葉]]が形成される([[形態形成運動]])<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.61.</ref><ref>[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.122.</ref>。胚葉には将来消化管になる[[内胚葉]]、将来[[表皮]]や[[神経系]]などになる[[外胚葉]]、そして体のそれ以外の所(例えば[[体腔]]、[[循環系]]、[[内骨格]]、[[筋肉]]、[[真皮]])になる[[中胚葉]]の3種類がある。典型的にはこの際内胚葉の部分が陥没し、[[原腸]]が構成される。この時期の胚を原腸胚という<ref group="注釈">両生類では内胚葉の形成と原腸の形成が同時に起こるが、鳥類や哺乳類では、内胚葉の形成がのみが原腸胚期に行われ、原腸の形成は神経胚期になってから行われる([[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.126.)</ref>。 |
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{{see also|卵割}} |
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受精卵は'''卵割''' ({{lang|en|cleavage}})という体細胞分裂を繰り返す事で多細胞からなる胚を形成する<ref name="Asa-Koma-33" /><ref name="cleavage">{{cite|author=久米・團|date=1957|title=総説|pages=28-31}} [[#久米・團 1957|久米・團 1957]]</ref>{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1443}}。一般的た体細胞分裂とは異なり、卵割の際は核は複製されるが細胞質は卵細胞のものを分割して使うという特徴がある<ref name="Asa-Koma-33" />。卵割は分裂溝 ({{lang|en|cleavage furrow}})により細胞が2つの[[割球]] ({{lang|en|blastomere}})と呼ばれる細胞に分割されておこる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1443}}。卵割という用語は受精卵の最初の数回の分割に対して使われる<ref name="Kozloff-3">[[#Kozloff 1990|Kozloff 1990]], p.3</ref>。 |
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卵割様式は[[卵黄]]の蓄積部位の影響を受ける<ref name="cleavage"/><ref name="lecithal">{{cite|author=久米・團|date=1957|title=総説|page=5}} [[#久米・團 1957|久米・團 1957]]</ref>。[[棘皮動物]]・[[毛顎動物]]のように卵黄が等しく分布する等黄卵 ({{lang|en|homolecithal egg}}{{refn|group="注釈"|[[哺乳類]]のように卵黄が僅かな場合は無黄卵 {{lang|en|alecithal egg}}と呼ばれる<ref name="lecithal"/>。}})の場合は、ウニのように[[等割]] ({{lang|en|equal cleavage}})を行うか、[[環形動物]]や多くの[[軟体動物]]のように[[不等割]] ({{lang|en|unequal cleavage}})となる<ref name="cleavage"/><ref name="lecithal"/>。これらは卵割面が割球同士を完全に仕切るため'''全割'''と呼ばれる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1443}}。それに対し、[[端黄卵]] ({{lang|en|telolecithal egg}})では分裂溝が卵黄の少ない動物極から現れるため、ハート形分裂(クラゲ型分裂;[[刺胞動物]])の時期を経る<ref name="cleavage"/><ref name="lecithal"/>。クラゲ型分裂がより極端になると、[[頭足類]]([[軟体動物]])のように最初の分裂溝が植物極に達しないまま次の分裂溝が動物極に現れる[[盤割]] ({{lang|en|discoidal cleavage}})を行う<ref name="cleavage"/>。[[節足動物]]や[[イソギンチャク]](のように多量の卵が中央にたまっている[[心黄卵]]{{refn|group="注釈"|中黄卵と呼ぶこともあるが、この語は中位の卵黄量を持つ {{lang|en|mesolecithal}} にも用いられる<ref name="lecithal"/>。}} ({{lang|en|centrolecithal egg}})では、[[表割]] ({{lang|en|superficial cleavage}})が行われる<ref name="cleavage"/><ref name="lecithal"/>{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1443}}。第3分裂(4細胞期から8細胞期)では、不等割を行うものでは[[動物極]]側のものは小さく、[[植物極]]側のものは大きいため、それぞれ'''小割球''' ({{lang|en|micromere}})と'''大割球''' ({{lang|en|macromere}})と呼ばれる<ref name="Kozloff-3"/><ref name="pattern"/>。 |
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なお、前左右相称動物の場合は、[[海綿動物]]のように胚葉が形成されないもの<ref>[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.115.</ref>(無胚葉性の動物と呼ばれる)や、[[内胚葉]]と[[外胚葉]]の2つのみしか形成されない動物(二胚葉性の動物)もいる<ref group="注釈">[[刺胞動物]]と[[有櫛動物]]が二胚葉性であるとされるが、細胞性である間充織を中胚葉とみなし、[[ヒドロ虫綱]]以外の[[刺胞動物]]と全ての[[有櫛動物]]を三胚葉性とみなす事も多い([[#藤田(2010)|藤田(2010)]] p122)</ref>。これに対し胚葉が3つとも形成されるものを三胚葉性の動物という。 |
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また、卵割では分裂ごとに紡錘体のとる位置や方向が定まっているためそれぞれの分裂方向が一定しており、大きく分けて'''放射卵割''' ({{lang|en|radial cleavage}})と'''螺旋卵割''' ({{lang|en|spiral cleavage}})の2つの卵割配置 ({{lang|en|cleavage pattern}})がある<ref name="Kozloff-3"/><ref name="pattern">{{cite|author=久米・團|date=1957|title=総説|pages=31-33}} [[#久米・團 1957|久米・團 1957]]</ref>。放射卵割では、各分裂の分裂面がその前の分裂に対して直角に起こり、分裂面は卵軸に対して平行か直角に規則正しく起こる<ref name="pattern"/>。8細胞期以降は不規則な分裂が混ざってくるものが多い<ref name="pattern"/>。分類群としては、[[刺胞動物]]<ref name="Kozloff-3"/>、[[有櫛動物]]<ref name="Kozloff-3"/>、[[箒虫動物]]<ref name="Kozloff-3"/>、[[ウニ類]]([[棘皮動物]])<ref name="Kozloff-3"/>、[[毛顎動物]]<ref name="spiral"/>、[[腕足動物]]<ref name="spiral"/> が挙げられる。螺旋卵割では4細胞期から8細胞期(第3分裂)に紡錘体が卵軸に対し45°の角度をなして斜めに位置する<ref name="Kozloff-3"/><ref name="spiral">{{cite journal|first1=José M.|last1=Martín-Durán|first2=Ferdinand|last2=Marlétaz|title=Unravelling spiral cleavage|journal=Development|date=2020|volume=147|pages=1-7|doi=10.1242/dev.181081}}</ref>。その後の各分裂はだいたい互いに直角に行われるが、初めの分裂面が卵軸に対し傾いているため、以降の分裂面もすべて卵軸に対して角度をなして交わり<ref name="pattern"/>、螺旋状に並ぶ<ref name="Kozloff-3"/>。分類群としては、[[扁形動物]]<ref name="Kozloff-3"/><ref name="spiral"/>、[[環形動物]]<ref name="Kozloff-3"/><ref name="spiral"/>、[[軟体動物]]<ref name="Kozloff-3"/><ref name="spiral"/> に代表され、[[紐形動物]]<ref name="spiral"/>、[[内肛動物]]<ref name="spiral"/> など少なくとも8つの門が螺旋卵割を行う<ref name="spiral"/>。なお、環形動物および軟体動物の一部では極体放出および卵割と同期して植物極の細胞質が縊り出され、無核の極葉形成 ({{lang|en|polar lobe formation}})が起こる<ref name="cleavage"/>。極葉は一方の割球と合併され、その細胞質は将来の中胚葉となる<ref name="cleavage"/>。8細胞期で大割球から縊り出された4個一組の小割球は'''第一クオテット'''(第一四つ組、{{lang|en|1st quartette}})と呼ばれる<ref name="pattern"/>。また、4細胞期の各細胞からつながる細胞系譜を持つそれぞれの系統を'''クアドラント'''(四分区、{{lang|en|quadrant}})と呼ぶ<ref name="pattern"/>。なお、[[節足動物]]などではこのどちらにも当てはまらない<ref name="Ueno">{{cite|author=上野秀一|chapter=卵割 {{small|―大きな卵はなぜ速く分裂するのか}}|date=2018|pages=294-295}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。 |
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脊椎動物などではこの後[[神経管]]が形成される[[神経胚]]期へと進む。例えば[[ニワトリ]]では、外胚葉に[[神経板]]という領域ができ、それが胚の内側に丸まる事で[[神経管]]ができ、さらに直下に[[脊索]]が形成される<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], pp.72-73.</ref>。神経管の前方には[[前脳]]、[[中脳]]、[[後脳]]という3つの膨らみが形成され、これらが将来[[脳]]になる<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], pp72-73.</ref>。 |
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=== 胞胚期 === |
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卵割が進み、細胞が小さくなって胚表面が上皮的に滑らかになると卵割期から胞胚期に移行したとみなされる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1443}}。この時期の胚は1層の細胞層で囲まれた球形で、'''[[胞胚]]''' ({{lang|en|blastula}})と呼ばれる<ref name="blastula">{{cite|author=久米・團|date=1957|title=総説|pages=33-35}} [[#久米・團 1957|久米・團 1957]]</ref>。初期胚の内部には卵割腔が形成されるが、細胞数が増加することで細胞同士が[[密着結合]]を形成すると、卵割腔内にNa<sup>+</sup>やCl<sup>-</sup>といったイオンが能動輸送され、浸透圧が上昇して内部から水が浸入し胞胚腔液で満たされる大きな[[胞胚腔]] ({{lang|en|blastocoel}}{{refn|group="注釈"|卵割腔も {{lang|en|blastocoel}}と呼ばれ、区別されない<ref name="blastula"/>。}})が形成される<ref name="asashima"/>。卵割腔(胞胚腔)をもつ胞胚を特に中空胞胚 ({{lang|en|coeloblastula}})と呼び、不等割を行う胚では胞胚の内部は卵黄を含んだ植物極側の大きな細胞で満たされるため中実胞胚 ({{lang|en|stereoblastula}})と呼ばれる<ref name="blastula"/>。卵黄量の多い盤割をするものでは細胞は動物極側に偏った胚盤 ({{lang|en|blatodisc}})を形成し、そのような胞胚を盤胞胚 ({{lang|en|discoblastula}})と呼ぶ<ref name="blastula"/>。また表割を行う胞胚では細胞形成は胚の外周でのみ行われるため、囲胞胚 ({{lang|en|periblastula}})と呼ばれる<ref name="blastula"/>。 |
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脊椎動物などでは、組織や器官を形成するため、胚細胞が特定の機能を持った細胞に変化する([[細胞分化]])<ref name="Asa-Koma-108">[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.108.</ref>。この際、基本的な細胞機能の維持に必要な遺伝子([[ハウスキーピング遺伝子]])の機能は残しつつ、特定の機能に必要な遺伝子を新たに発現し、逆に分化後には不必要になる遺伝子を[[DNAメチル化]]により不活性化する<ref name="Asa-Koma-108" />。 |
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なお、[[昆虫]]や[[両生類]]など多くの動物では、卵割期の細胞増殖を急激に行うために通常の細胞分裂で行われる一部の過程([[G1期|G<sub>1</sub>期]]と[[G2期|G<sub>2</sub>期]]の過程)が省略され早い細胞分裂が続くが<ref name="Ueno"/><ref>[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], p.39</ref>、胞胚中期になるとこの省略が終わり、形態形成に必要な転写、細胞の移動や誘導が始まる'''中期胞胚遷移'''(中期胞胚転移、中期胞胚変移)が起こる<ref name="Ueno"/><ref name="Asa-Koma-42">[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], p.42</ref>。それに対し[[哺乳類]]では分裂速度が遅く、2細胞期から既に転写が始まる<ref name="Ueno"/>。 |
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脊索の両側の沿軸中胚葉から[[体節]]が形成され、体節と隣接した外側の中間中胚葉からは[[腎節]]が形成される<ref name="Asa-Koma-115">[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.115.</ref>。 |
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=== 嚢胚形成 === |
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体節はやがて[[皮節]]、[[筋節]]、[[硬節]]に分かれ、これらはそれぞれ皮膚の[[真皮層]]、[[骨格筋]]、[[椎骨]]などが形成され<ref name="Asa-Koma-115" />、腎節からは腎臓や生殖腺が形成される<ref name="Asa-Koma-115" />。 |
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[[File:БСЭ1. Гаструла 3.jpg|thumb|被いかぶせによる嚢胚形成。<br/>1, 4: 外胚葉、2, 5: 内胚葉、3: 胞胚腔、6: 原口]] |
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胞胚は[[内胚葉]]が[[外胚葉]]から分画される'''嚢胚形成'''(原腸胚形成<ref name="asashima"/>、{{lang|en|gastrulation}})を経て'''嚢胚'''([[原腸胚]]<ref name="asashima"/>、{{lang|en|gastrula}})期に至る<ref name="Kozloff-4">[[#Kozloff 1990|Kozloff 1990]], pp.4-5</ref><ref name="blastula"/>。嚢胚は内外二重の細胞層からなり、胚葉の区別が現れる<ref name="blastula"/>。嚢胚を形成する方法は分類群により異なり、最も一般的なものは'''陥入'''({{lang|en|invagination}}、まくれこみ {{lang|en|emboly}})である<ref name="Kozloff-4"/><ref name="blastula"/>。陥入では植物極側の細胞層が胞胚腔に向かって折れ曲がり、内胚葉となる<ref name="blastula"/>。内胚葉のつくられた盲管状の部分を'''原腸''' ({{lang|en|archenteron}})、その入口を'''原口''' ({{lang|en|blastopore}})と呼ぶ<ref name="Kozloff-4"/><ref name="blastula"/>。この嚢胚形成の方法は[[棘皮動物]]などに典型的で<ref name="Kozloff-4"/>、棘皮動物では原腸の両壁には広い胞胚腔が残されているが、箒虫動物では原腸の壁に外肺葉が密着し、胞胚腔を残さない<ref name="blastula"/>。以降に示す被いかぶせや内展も陥入の変形とみられている<ref name="blastula"/>。環形動物や軟体動物では'''被いかぶせ''' ({{lang|en|epiboly}})という方法で嚢胚形成が行われる<ref name="Kozloff-4"/><ref name="blastula"/>。胞胚における動物極側の小割球の分裂が先に進行して、卵黄に富んだ植物極側の大割球を包囲することによって嚢胚ができる<ref name="Kozloff-4"/><ref name="blastula"/>。小割球由来の外側の細胞が外胚葉層となり、内側の大割球群が内胚葉となる<ref name="blastula"/>。被いかぶせでは、胞胚腔はかなり縮小している<ref name="Kozloff-4"/>。また、内胚葉細胞塊ははじめ原腸を形成しないため、外胚葉に覆われていない部分を原口と呼んでいるが、発生の進行に伴って原腸を形成し、原口と連絡する<ref name="blastula"/>。この場合、原口から落ち込んだ外胚葉の細胞層を、口陥 ({{lang|en|[[:en:stomodeum|stomodaeum]]}})と呼ぶ<ref name="blastula"/>。盤胞胚を形成する頭足類では、胚盤葉の一端がその下に折れ込んで前方に延長する'''内展''' ({{lang|en|involution}})によって内胚葉が形成される<ref name="blastula"/>。 |
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もう一方の嚢胚形成の方法は'''葉裂法''' ({{lang|en|delamination}})と呼ばれ、主に刺胞動物にみられる<ref name="Kozloff-4"/><ref name="blastula"/>。狭義の葉裂法は[[カラカサクラゲ]]類 {{sname||Geryoniidae}} にのみ見られ、中空胞胚において外壁を作る細胞が一様に胞胚腔に向かって分裂すると、胞胚腔内に出た細胞は規則正しく配列して内胚葉の嚢を作る<ref name="blastula"/>。[[ヒドラ]]などが行う方法は'''多極法''' ({{lang|en|multiopolar proliferation}})と呼ばれ、胞胚法を形成している細胞が各所で胞胚腔内にすべり落ち、それが内胚葉の嚢を形成する<ref name="blastula"/>。それに対し、[[ウミコップ属]] {{snamei|en|Clytia (hydrozoan)|Clytia}}では植物極のみから細胞がすべり落ちるため、'''単極法''' ({{lang|en|uniopolar proliferation}})と呼ばれ、多極法と併せて'''極増法''' ({{lang|en|polarization}})と呼ばれる<ref name="blastula"/>。葉裂法を行う嚢胚の多くは'''中実嚢胚''' ({{lang|en|stereogastrula}})で、発生が進行するまで原腸も原口も持たない<ref name="Kozloff-4"/><ref name="blastula"/>。 |
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中間中胚葉のさらに外側には予定心臓中胚葉という、将来[[心臓]]関連の組織になる部分があり、これは壁側中胚葉と臓側中胚葉に転移する<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.110.</ref>。前者からは体腔を覆う[[胸膜]]や[[腹膜]]が形成され、後者からは[[心筋]]、[[平滑筋]]、[[血管]]、[[血球]]などが形成される<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], pp.115-117.</ref>。 |
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=== 中胚葉形成 === |
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心臓は生命の維持に不可欠なので、発生の早い段階で中胚葉から形成される<ref name="Asa-Koma-110">[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.110.</ref>。なお、予定心臓中胚葉は中胚葉の[[正中線]]を隔てた両側に2つ存在するが、これら2つは移動して胚の前方で合流して心臓を形成する<ref name="Asa-Koma-110" />。 |
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{{see also|#胚葉性|#体腔}} |
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左右相称動物では、内胚葉および外胚葉とは別に、[[体腔]]と関連して中胚葉の形成が起こる<ref name="Kozloff-5">[[#Kozloff 1990|Kozloff 1990]], pp.5-7</ref>。刺胞動物や有櫛動物では外肺葉から細胞が零れ落ち、外中胚葉性の間充織細胞を作る<ref name="mesoderm"/>。[[棘皮動物]]や[[箒虫動物]]など、内中胚葉でも間充織細胞として形成されるものはあるが、内中胚葉は普通表皮の形をとる<ref name="mesoderm"/>。 |
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[[螺旋動物]]では、まず第二クオテットまたは第三クオテットから[[外中胚葉]]性の間充織細胞が形成される<ref name="blastula"/>。その後、D四分区の ''4d''細胞(中胚葉帯端細胞、{{lang|en|mesoblastic teloblast}})から内胚葉由来の中胚葉が生まれる<ref name="mesoderm"/>。第四クオテットの他の細胞(''4a, 4b, 4c'')は内胚葉となる<ref name="mesoderm"/>。かつては ''4d''細胞の系統にある子孫細胞は全て中胚葉になると考えられていたが、内胚葉も含んでいる<ref name="mesoderm"/>。''4d''細胞は胞胚腔内に落ちると左右に分裂し、胚の分化に伴い肛門になる部分の左右前方に位置しながら前方に細胞を送り、'''中胚葉帯''' ({{lang|en|mesoderm band}})を作る<ref name="mesoderm"/>。これを「端細胞による中胚葉形成法 {{lang|en|telobblstic method}}」と呼ぶ<ref name="mesoderm"/>。環形動物などでは、この中胚葉帯内に体腔が形成され、これが裂体腔と呼ばれる<ref name="mesoderm"/>。 |
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脊椎動物では外胚葉と中胚葉の相互作用で四肢が形成される<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.119.</ref>。[[ヒト]]の手足は水鳥と違い、指の間に水かきがないが、これは[[アポトーシス]]の作用で水かき部分の[[プログラム細胞死|細胞を「自殺」]]させている為である<ref>[[#浅島・駒崎(2011)|浅島・駒崎(2011)]], p.126.</ref>。 |
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節足動物でも、中胚葉は1対の細胞帯として出現する。しかし螺旋動物のように特定の細胞ではなく、原口の周囲の細胞群に由来している<ref name="mesoderm"/>。 |
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腸体腔をもつ後口動物および毛顎動物、腕足動物などでは、原腸壁の一部が胞胚腔に向かって膨出 ({{lang|en|evagination}}<ref name="Kozloff-5"/>)し、そこから分離して胞胚腔内で独立した体腔嚢 ({{lang|en|coelomic vesicle}})を形成する<ref name="mesoderm"/>。こうしてできた体腔は腸体腔であり、それを囲む壁が中胚葉である<ref name="mesoderm"/>。脊椎動物においては、両生類([[無羊膜類]])では中胚葉の形成と原腸の形成が同時に起こるが、[[羊膜類]](鳥類や哺乳類)では、中胚葉の形成が先に行われ、その後卵黄嚢と連続する内胚葉の一部が中胚葉に包み込まれるようにしてくびれ、原腸の形成が行われる<ref name="asashima"/><ref name="浅島・駒崎 2011, p.126">[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], p.126</ref>。 |
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=== 細胞分化と器官形成 === |
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脊椎動物などでは、組織や器官を形成するため、胚細胞が特定の機能を持った細胞に変化する([[細胞分化]])<ref name="Asa-Koma-108">[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], p.108</ref>。この際、基本的な細胞機能の維持に必要な遺伝子([[ハウスキーピング遺伝子]])の機能は残しつつ、特定の機能に必要な遺伝子を新たに発現し、逆に分化後には不必要になる遺伝子を[[DNAメチル化]]により不活性化する<ref name="Asa-Koma-108" />。 |
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脊椎動物などでは原腸胚期の後、[[神経管]]が形成される[[神経胚]]期へと進む。例えば[[ニワトリ]]では、外胚葉に[[神経板]]という領域ができ、それが胚の内側に丸まる事で[[神経管]]ができ、さらに直下に[[脊索]]が形成される<ref name="ReferenceA">[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], pp.72-73</ref>。神経管の前方には[[前脳]]、[[中脳]]、[[後脳]]という3つの膨らみが形成され、これらが将来[[脳]]になる<ref name="ReferenceA"/>。脊索の両側の沿軸中胚葉から[[体節]]が形成され、体節と隣接した外側の中間中胚葉からは[[腎節]]が形成される<ref name="Asa-Koma-115">[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], p.115</ref>。体節はやがて[[皮節]]、[[筋節]]、[[硬節]]に分かれ、これらはそれぞれ皮膚の[[真皮層]]、[[骨格筋]]、[[椎骨]]などが形成され<ref name="Asa-Koma-115" />、腎節からは腎臓や生殖腺が形成される<ref name="Asa-Koma-115" />。中間中胚葉のさらに外側には予定心臓中胚葉という、将来[[心臓]]関連の組織になる部分があり、これは壁側中胚葉と臓側中胚葉に転移する<ref name="Asa-Koma-110">[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], p.110</ref>。前者からは体腔を覆う[[胸膜]]や[[腹膜]]が形成され、後者からは[[心筋]]、[[平滑筋]]、[[血管]]、[[血球]]などが形成される<ref>[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], pp.115-117</ref>。心臓は生命の維持に不可欠なので、発生の早い段階で中胚葉から形成される<ref name="Asa-Koma-110" />。なお、予定心臓中胚葉は中胚葉の[[正中線]]を隔てた両側に2つ存在するが、これら2つは移動して胚の前方で合流して心臓を形成する<ref name="Asa-Koma-110" />。脊椎動物では外胚葉と中胚葉の相互作用で四肢が形成される<ref>[[#浅島・駒崎 2011|浅島・駒崎 2011]], p.119</ref>。[[ヒト]]の手足は水鳥と違い、指の間に水かきがないが、これは[[アポトーシス]]の作用で水かき部分の[[プログラム細胞死|細胞を「自殺」]]させている為である<ref name="浅島・駒崎 2011, p.126"/>。 |
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== 起源と進化 == |
== 起源と進化 == |
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=== 起源 === |
=== 起源 === |
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動物の起源については、単細胞生物の[[襟鞭毛虫]]が集まって多細胞化する事で[[海綿動物]]のような動物になっていったと考えられる<ref name=" |
動物の起源については、単細胞生物の[[襟鞭毛虫]]が集まって多細胞化する事で[[海綿動物]]のような動物になっていったと考えられる{{Sfn|藤田|2010|pp=99-101}}。これを'''ガストレア説'''(群体繊毛虫仮説)と呼ぶ{{Sfn|藤田|2010|pp=99-101}}。ヘッケルは動物の初期発生に基づき、襟鞭毛虫のような原生動物から、胞胚に相当する1層の細胞層を持つ中空の祖先型動物ブラステア ({{lang|en|Blastea}})が生じ、次に嚢胚に相当する二重の細胞層からなる袋状のガストレア(腸祖動物、{{lang|en|Gastraea}})が生じたと想定した<ref name="gastraea">{{cite |author=[[古屋秀隆]]|chapter=後生動物の起源|date=2000|pages=106-107}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref>。 |
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なお従来は、上述した[[襟鞭毛虫]]類から進化したとするヘッケルの説と[[繊毛虫]]類から進化したとするハッジの説が対立していたが、分子遺伝学の成果によれば、18SrDNAに基づいた解析などにより、動物は[[襟鞭毛虫]]類を姉妹群に持つ[[単系統]]な群であることが示されており、ヘッケルの説が有力とされている<ref name=" |
なお従来は、上述した[[襟鞭毛虫]]類から進化したとする[[エルンスト・ヘッケル|ヘッケル]]の説と[[繊毛虫]]類から進化したとするハッジの説(多核体繊毛虫仮説、合胞体繊毛虫仮説)が対立していたが、分子遺伝学の成果によれば、18SrDNAに基づいた解析などにより、動物は[[襟鞭毛虫]]類を姉妹群に持つ[[単系統]]な群であることが示されており、ヘッケルの説が有力とされている{{Sfn|藤田|2010|pp=99-101}}<ref name="gastraea"/>。ハッジの説は生態学的な視野のもと、多核繊毛虫から無腸動物のような原始的な左右相称動物が生じたと考え、後生動物の起源を左右相称動物に求めた<ref name="gastraea"/>。 |
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この多細胞化が起こった仮説として、現在までに様々なものが提案されてきた{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}。複雑な多細胞生物の出現は、[[生物圏]]の[[酸化]]が進むまで妨げられたという説が広く受け入れられてきた{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}。ほかにも動物が多様化するきっかけとしてとして、クライオジェニアンやエディアカラ期の全球凍結の環境的制約から後生動物の祖先が解放されたこと、宇宙放射線の影響、極移動、大陸の分断、[[硫化水素]]の毒性、塩分、微量金属の栄養塩の不足、海に栄養塩をもたらす大陸風化の周期、地球温暖化、または活発になった捕食者と捕食者の軍拡競争などが考えられるが、必ずしも相互に排他的なものではない{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}。なおこれらの仮説は、多少なりとも、後生動物の多様化との因果関係につながるが、結局推定される時間的な一致に依存しており、地球規模の海の大酸化は後生動物が進化した原因ではなく、後生動物の出現による結果であると主張されている{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}。 |
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=== 古生物 === |
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=== 古生物 === |
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==== 先カンブリア時代 ==== |
==== 先カンブリア時代 ==== |
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{{先カンブリア時代}} |
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30億年以上前に地球上初めての生物が誕生したと考えられており、真核生物の最古の化石は21億年前の地層から発見されている<ref>[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.92.</ref>。 |
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[[File:Otavia antiqua.jpg|thumb|left|250px|オタヴィアの化石]] |
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30億年以上前に地球上初めての生物が誕生したと考えられており、真核生物の最古の化石([[グリパニア]] {{snamei||Grypania}})は21億年前の地層から発見されている{{Sfn|藤田|2010|p=92}}{{Sfn|土屋|2013|pp=11-12}}。 |
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確実な化石記録により較正した[[分子時計]]から、[[クラウングループ]]としての後生動物は[[新原生代]][[クライオジェニアン]](8億3300万年前-6億5000万年前)に誕生したと推定されている{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}。 |
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動物の起源は10~12億年前まで遡れると分子系統解析と古生物学的証拠から推定されている<ref>[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.92.</ref>。 |
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最古の化石記録に関しては議論があり、異論の余地がない確実な動物化石の証拠は[[顕生代]]に入ってからに限られている{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}<ref>{{cite journal|last1=Erwin |first1=D.H. |last2=Laflamme |first2=M. |last3=Tweedt |first3=S.M. |last4=Sperling |first4=E.A. |last5=Pisani |first5=D. |last6=Peterson |first6=K.J. |date=2011 |title=The Cambrian conundrum: early divergence and later ecological success in the early history of animals |journal=Science |volume=334|pages=1091-1097}}</ref>。また左右相称動物の動物門の確固たる証拠はカンブリア紀になるまでない<ref>{{cite journal|last=Budd |first=G.E. |date=2008 |title=The earliest fossil record of the animals and its significance|journal=Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci. |volume=363 |pages=1425-1434}}</ref><ref name="Maloof">{{cite journal|last1=Maloof |first1=A.C. |last2=Porter |first2=S.M. |last3=Moore |first3=J.L. |last4=Dudas |first4=F.O. |last5=Bowring |first5=S.A. |last6=Higgins |first6=J.A. |last7=Fike |first7=D.A. |last8=Eddy |first8=M.P. |date=2010 |title=The earliest Cambrian record of animals and ocean geochemical change |journal=Geol. Soc. Am. Bull.|volume=122 |issue=11–12 |pages=1731–1774 |doi=10.1130/B30346.1 |bibcode=2010GSAB..122.1731M}}</ref>。とはいえ、動物の進化は先カンブリア時代からの歴史があるという見方が一般的になってきている{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}。 |
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2012年現在、動物のものかもしれない最古の化石は[[2012年]]に[[ナミビア]]の7億6000万年前の[[地層]]で発見されたオタヴィア(Otavia)という0.3~5 mm程度の[[かりんとう]]のような形をした小さな殻で、[[海綿動物]]だとすると表面に空いている多数の細孔から微小な[[プランクトン]]を[[濾過摂食]]したものと考えられる<ref>[[#松本(2015)|松本(2015)]] p.3.</ref>。また[[オーストラリア]]の[[南オーストラリア州]]からは6億6500万年の[[:en:Trezona Formation|Trezona Formation]]という化石が発見されており、これも初期の[[海綿動物]]ではないかと考えられている<ref name="roseMaloof">{{cite journal |title=Possible animal-body fossils in pre-Marinoan limestones from South Australia |journal=Nature Geoscience |volume=3 |pages=653–659 |date=17 August 2010 |url=http://www.nature.com/ngeo/journal/v3/n9/full/ngeo934.html |doi=10.1038/ngeo934 |issue=9 |bibcode=2010NatGe...3..653M |last1=Maloof |first1=Adam C. |last2=Rose |first2=Catherine V. |last3=Beach |first3=Robert |last4=Samuels |first4=Bradley M. |last5=Calmet |first5=Claire C. |last6=Erwin |first6=Douglas H. |last7=Poirier |first7=Gerald R. |last8=Yao |first8=Nan |last9=Simons |first9=Frederik J.}}</ref>。 |
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[[ファイル:DickinsoniaCostata.jpg|サムネイル|[[エディアカラ生物群]]の一つである[[ディッキンソニア]]]] |
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次に古いと思われる多細胞生物の化石は6億2千万年~5億4千2百万年前の[[エディアカラ生物群]]である<ref name="Fujita10-92">[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.92.</ref>。これらは[[刺胞動物]]、[[環形動物]]、[[棘皮動物]]の仲間であるという解釈もあれば、一部には現生動物とは全く違う動物群とする解釈もあるなど見解が定まっていない<ref name="Fujita10-92" />。エディアカラ生物群は[[新原生代]][[クライオジェニアン]]紀の[[スノーボールアース|全地球凍結(スノーボールアース)]]の後に進化的に拡散{{訳語疑問点|date=2018年7月}}([[:en:Evolutionary radiation|Evolutionary radiation]])したと考えられ([[:en:Avalon explosion|Avalon explosion]]、5億7500万年前)<ref>[https://www.sciencedaily.com/releases/2008/01/080103144451.htm Two Explosive Evolutionary Events Shaped Early History Of Multicellular Life]</ref><ref>{{cite journal | last1=Shen | first1=Bing | last2=Dong | first2=Lin | last3=Xiao | first3=Shuhai | last4=Kowalewski | first4=Michał | year=2008 | title=The Avalon Explosion: Evolution of Ediacara Morphospace | url=http://www.sciencemag.org/content/319/5859/81.short | journal=Science | volume=319 | issue=5859| pages=81–84 | doi=10.1126/science.1150279 | pmid=18174439|bibcode=2008Sci...319...81S }}</ref>、[[カンブリア爆発]]の頃にその多くは姿を消した(カンブリア中期の5億1000万年前~5億年前まで生き残っていたものはまれである)。 |
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動物のものかもしれない最古の化石は[[2012年]]に[[ナミビア]]の7億6000万年前、[[クライオジェニアン]]の[[地層]] ({{lang|en|Okakuyu Formation}}) で発見された[[オタヴィア]] {{snamei|Otavia antiqua}})である{{Sfn|土屋|2013|pp=12-13}}<ref name="brain">{{cite journal|first1=C.K. |last1=Brain|first2=Anthony R. |last2=Prave|first3=Karl-Heinz |last3=Hoffmann|first4=Anthony E. |last4=Fallick |first5=Andre |last5=Botha|first6=Donald A. |last6=Herd|first7=Craig |last7=Sturrock|first8=Iain |last8=Young|first9=Daniel J. |last9=Condon|first10=Stuart G. |last10=Allison|title=The first animals: ca. 760-million-year-old sponge-like fossils from Namibia|journal=S Afr J Sci. |date=2012|volume=108|issue=1/2|pages=1-8|doi=10.4102/sajs.v108i1/2.658}}</ref>。これは0.3–5 mm{{small|([[ミリメートル]])}}程度の[[かりんとう]]のように細長い歪な卵形をした[[リン酸カルシウム]]からなる化石で、[[海綿動物]]だと考えられている{{Sfn|土屋|2013|pp=12-13}}<ref name="brain"/>。海綿動物だとすると表面に空いている多数の細孔から微小な[[プランクトン]]を[[濾過摂食]]したものと考えられる{{Sfn|土屋|2013|pp=12-13}}<ref>[[#松本 2015|松本 2015]], p.3</ref>。なお、オタヴィアは7億6000万年前だけでなく、6億3500万年前、5億4800万年前(エディアカラ紀)の地層からも見つかっている{{Sfn|土屋|2013|pp=12-13}}<ref name="brain"/>。また[[オーストラリア]]の[[南オーストラリア州]]からは6億6500万年の[[:en:Trezona Formation|Trezona Formation]]という地層からも、初期の[[海綿動物]]ではないかと考えられている化石も見つかっている<ref name="roseMaloof">{{cite journal |title=Possible animal-body fossils in pre-Marinoan limestones from South Australia |journal=Nature Geoscience |volume=3 |pages=653–659 |date=17 August 2010 |url=http://www.nature.com/ngeo/journal/v3/n9/full/ngeo934.html |doi=10.1038/ngeo934 |issue=9 |bibcode=2010NatGe...3..653M |last1=Maloof |first1=Adam C. |last2=Rose |first2=Catherine V. |last3=Beach |first3=Robert |last4=Samuels |first4=Bradley M. |last5=Calmet |first5=Claire C. |last6=Erwin |first6=Douglas H. |last7=Poirier |first7=Gerald R. |last8=Yao |first8=Nan |last9=Simons |first9=Frederik J.}}</ref>。クライオジェニアン(約6億3500万年前)からカンブリア紀初期までの約100年にわたり連続して[[普通海綿]]の存在を示しているとされた[[バイオマーカー]]は<ref>{{cite journal|last1=Love |first1=G.D. |last2=Grosjean |first2=E. |last3=Stalvies |first3=C. |last4=Fike |first4=D.A. |last5=Grotzinger |first5=J.P. |last6=Bradley |first6=A.S. |last7=Kelly |first7=A.E. |last8=Bhatia |first8=M. |last9=Meredith |first9=W. ''et al.'' |date=2009 |title= Fossil steroids record the appearance of Demospongiae during the Cryogenian period |journal=Nature |volume=457 |pages=718-721|doi=10.1038/nature0767}}</ref>、現在では共生細菌に由来するものだろうとされている<ref>{{cite journal |last1=Siegl|first1=A. |last2=Kamke |first2=J. |last3=Hochmuth |first3=T. |last4=Piel |first4=J. |last5=Richter |first5=M. |last6=Liang |first6=C. |last7=Dandekar |first7=T. |last8=Hentschel|first8=U. |date=2011|title=Single-cell genomics reveals the lifestyle of ''Poribacteria, a candidate phylum symbiotically associated with marine sponges|journal=ISME J. |volume=5|pages=61-70}}</ref>。 [[全球凍結]]直後、約6億3000万年前の{{lang|zh|陡山沱}}の動物の胚化石(ドウシャントゥオの胚化石、{{lang|en|Doushantuo embryos}})とされていたものは{{Sfn|土屋|2013|pp=13-18}}<ref>{{cite journal|last1=Xiao|first1= S.|last2= Zhang|first2= Y.|last3= Knol|date=1998|title=Three-dimensional preservation of algae and animal embryos in a Neoproterozoic phosphorite|journal=Nature |volume=391|pages= 553-558|doi=10.1038/35318}}</ref>、現在では[[原生生物]]や[[硫黄細菌]]ではないかと解釈されている<ref>{{cite journal|last=Butterfield|first= N.J. |Date=2011|title=Paleontology. Terminal developments in Ediacaran embryology|journal=Science |volume=334|pages=1655-1656}}</ref><ref>{{cite journal|last1=Huldtgren|first1= T.|last2= Cunningham|first2= J.A.|last3= Yin|first3= C.|last4= Stampanoni|first4= M.|last5= Marone|first5= F.|last6= Donoghue|first6= P.C.J.|last7= Bengtson|first7= S. |date=2011|title=Fossilized nuclei and germination structures identify Ediacaran "animal embryos" as encysting protists|journal=Science |volume=334|pages=1696-1699}}</ref><ref>{{cite journal|last1=Zhang|first1=X.-G.|last2=Pratt|first2=B.R.|date=2014|title=Possible algal origin and life cycle of Ediacaran Doushantuo microfossils with dextral spiral structure|journal= J. Paleontol.|volume=88|pages=92-98}}</ref>。 |
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==== 古生代 ==== |
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[[ファイル:20191203_Anomalocaris_canadensis.png|サムネイル|[[カンブリア紀]]の生物[[アノマロカリス]]の復元図]] |
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[[古生代]]の[[カンブリア紀]]になると、化石に残る硬い骨格を動物達が獲得し、短期間で多くのボディプランを持つ動物群が登場し<ref name="fujita9298">[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], pp.92-98.</ref>、[[海綿動物]]、[[軟体動物]]、[[腕足動物]]、[[節足動物]]、[[棘皮動物]]、[[環形動物]]、[[脊索動物]]など、現在の動物門のほとんどをしめる30余りの動物門が生じたとされる([[カンブリア爆発]])<ref name="fujita9298" />。 |
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[[File:DickinsoniaCostata.jpg|thumb|300px|[[エディアカラ生物群]]の一つである[[ディッキンソニア]]]] |
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ただし分子系統解析によればこれらの動物門は最古の化石より10億年以上遡ると推定されている<ref name="fujita9298" />。カンブリア紀に突然生物が増えたように見えるのは、この時期に化石に残りやすい生物種が増えたからに過ぎない<ref>{{cite journal |last1=Maloof |first1=A. C. |last2=Porter |first2=S. M. |last3=Moore |first3=J. L. |last4=Dudas |first4=F. O. |last5=Bowring |first5=S. A. |last6=Higgins |first6=J. A. |last7=Fike |first7=D. A. |last8=Eddy |first8=M. P. |title=The earliest Cambrian record of animals and ocean geochemical change |journal=Geological Society of America Bulletin |year=2010 |volume=122 |issue=11–12 |pages=1731–1774 |doi=10.1130/B30346.1 |url=http://gsabulletin.gsapubs.org/content/122/11-12/1731 |bibcode=2010GSAB..122.1731M}}</ref><ref>{{cite web |title=New Timeline for Appearances of Skeletal Animals in Fossil Record Developed by UCSB Researchers |url=http://www.ia.ucsb.edu/pa/display.aspx?pkey=2364 |publisher=The Regents of the University of California |access-date=1 September 2014 |date=10 November 2010}}</ref><ref>{{cite journal |last=Conway-Morris |first=S. |authorlink=Simon Conway Morris |title=The Cambrian "explosion" of metazoans and molecular biology: would Darwin be satisfied? |journal=The International journal of developmental biology |year=2003 |volume=47 |issue=7–8 |pages=505–15 |pmid=14756326 |url=http://www.ijdb.ehu.es/web/paper.php?doi=14756326}}</ref><ref name="Royal Ontario Museum">{{cite web|title=The Tree of Life|url=http://burgess-shale.rom.on.ca/en/science/origin/01-life-tree.php|website=The Burgess Shale|publisher=Royal Ontario Museum|accessdate=28 February 2018}}</ref>。 |
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分子時計によれば、続く[[エディアカラ紀]](エディアカラン)に[[左右相称動物]]のほとんどの門が多様化したと考えられている{{Sfn|土屋|2013|p=164}}{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}。また、エディアカラ紀の5億7500万年前から5億4100万年前にかけては'''[[エディアカラ生物群]]'''と呼ばれる生物群が多く見つかっている<ref name="Dunn-Ediacaran">{{cite journal|first1=Frances S. |last1=Dunn|first2=Alexander G. |last2=Liu |first3=Philip C. J. |last3=Donoghue|title=Ediacaran developmental biology|journal=Biol. Rev. |date=2018 |volume=93 |pages=914-932 |doi= 10.1111/brv.12379}}</ref>{{Sfn|土屋|2013|pp=21-40}}。エディアカラ生物群とカンブリア紀以降の動物との類縁関係は未だはっきりしていないが{{Sfn|藤田|2010|p=92}}{{Sfn|土屋|2013|pp=21-40}}、その形態から[[ランゲオモルフ]]{{Sfn|土屋|2013|p=28}} {{sname||Rangeomorpha}}、{{sname||Dickinsoniomorpha}}、{{sname||Erniettomorpha}}に分けられる<ref name="Dunn-Ediacaran"/>。エディアカラ生物群は[[新原生代]][[クライオジェニアン]]紀の[[スノーボールアース|全球凍結]](スノーボールアース、全地球凍結)の後、5億7500万年前から5億6500万年前の間に放散({{lang|en|[[:en:Evolutionary radiation|Evolutionary radiation]]}})したと考えられ、それを「[[アヴァロンの爆発]] {{lang|en|[[:en:Avalon explosion|Avalon explosion]]}}」と呼ぶ<ref>[https://www.sciencedaily.com/releases/2008/01/080103144451.htm Two Explosive Evolutionary Events Shaped Early History Of Multicellular Life]</ref><ref>{{cite journal | last1=Shen | first1=Bing | last2=Dong | first2=Lin | last3=Xiao | first3=Shuhai | last4=Kowalewski | first4=Michał | year=2008 | title=The Avalon Explosion: Evolution of Ediacara Morphospace | url=http://www.sciencemag.org/content/319/5859/81.short | journal=Science | volume=319 | issue=5859| pages=81–84 | doi=10.1126/science.1150279 | pmid=18174439|bibcode=2008Sci...319...81S }}</ref>{{Sfn|土屋|2013|pp=21-40}}。エディアカラ生物群のうち、[[ディッキンソニア]] {{snamei||Dickinsonia}}、{{snamei||Andiva}}、[[ヨルギア]] {{snamei||Yorgia}}とランゲオモルフは左右相称動物であったとする研究もある<ref name="Dunn-Ediacaran"/> ほか、[[海綿動物]]({{snamei||Eocyathispongia qiania}})<ref>{{Cite journal|last1=Yin |first1=Z. |last2=Zhu |first2=M. |last3=Davidson |first3=E.H. |last4=Bottjer |first4=D.J. |last5=Zhao |first5=F. |last6=Tafforeau |first6=P.|date=2015|title=Sponge grade body fossil with cellular resolution dating 60 Myrbefore the Cambrian |journal=Proc. Natl. Acad. Sci. USA |volume=112 |pages=E1453-E1460|doi=10.1073/pnas.1414577112}}</ref><ref>{{cite journal|last1=Antcliffe |first1=J.B. |last2=Callow |first2=R.H. |last3=Brasier |first3=M.D. |date=2014 |title=Giving the early fossil record of sponges a squeeze |journal=Biol. Rev. Camb. Philos. Soc. |volume=89 |pages=972-1004}}</ref>、[[軟体動物]]([[キンベレラ]] {{snamei||Kimberella quadrata}})<ref>{{cite journal|last1=Fedonkin |first1=M.A. |last2=Simonetta |first2=A. |last3=Ivantsov |first3=A.Y. |date=2007 |title=New data on ''Kimberella'', the Vendian mollusc-like organism (White Sea region, Russia): palaeoecological and evolutionary implications |journal= Geol. Soc. Lond. Spec. Publ.|volume= 286 |pages=157–179}}</ref>、そして無数の[[刺胞動物]]({{snamei||Haootia quadriformis}})<ref>{{cite journal|last1=Liu |first1=A.G. |last2=Matthews |first2=J.J. |last3=Menon |first3=L.R. |last4=McIlroy |first4=D. |last5=Brasier |first5=M.D. |date=2014 |title=''Haootia quadriformis'' n. gen., n. sp., interpreted as a muscular cnidarian impression from the Late Ediacaran period (approx. 560 Ma)|journal=Proc. Biol. Sci. |volume=281, 20141202|doi=10.1098/rspb.2014.1202}}</ref>{{Sfn|土屋|2013|pp=33-35}}、[[節足動物]]([[パルヴァンコリナ]] {{snamei||Parvancorina}}){{Sfn|土屋|2013|pp=35-36}}とみられるものもあり、[[真正後生動物]]や左右相称動物のグレード<!-- grade -->にあると推定されている動物の痕跡も見つかっている<ref>{{cite journal|last1=Carbone |first1=C. |last2=Narbonne |first2=G.M. |date=2014 |title=When life got smart: the evolution of behavioral complexity through the Ediacaran and Early Cambrian of NW Canada |journal=J. Paleontol. |volume=88 |pages=309-330}}</ref><ref>{{cite journal|last1=Mángano |first1=M.G. |last2=Buatois |first2=L.A. |date=2014 |title=Decoupling of body-plan diversification and ecological structuring during the Ediacaran-Cambrian transition: evolutionary and geobiological feedbacks |journal=Proc. Biol. Sci. |volume=281, 20140038}}</ref><ref>{{cite journal|last1=Liu |first1=A.G. |last2=Mcllroy |first2=D. |last3=Brasier |first3=M.D. |date=2010 |title=First evidence for locomotion in the Ediacara biota from the 565 Ma Mistaken Point Formation, Newfoundland |journal=Geology |volume=38 |pages123-126}}</ref><ref>{{cite journal|last1=Rogov |first1=V.I. |last2=Marusin |first2=V. |last3=Bykova |first3=N. |last4=Goy |first4=Y. |last5=Nagovitsin |first5=K.E. |last6=Kochnev |first6=B.B. |last7=Karlova |first7=G.A. |last8=Grazhdankin |first8=D. |date=2012 |title=The oldest evidence of bioturbation on Earth |journal=Geology |volume=40 |pages=395-398}}</ref><ref>{{cite journal|last1=Pecoits |first1=E. |last2=Konhauser |first2=K.O. |last3=Aubet |first3=N.R. |last4=Heaman |first4=L.M. |last5=Veroslavsky |first5=G. |last6=Stern |first6=R.A. |last7=Gingras |first7=M.K. |date=2012 |title=Bilaterian burrows and grazing behavior at >585 million years ago |journal=Science |volume=336 |pages=1693-1696}}</ref>。 |
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エディアカラ紀末期の5億4900万年前ごろには、硬組織を獲得していた[[クロウディナ]] {{snamei||Cloudina}} と呼ばれる化石が発見されており、現生の動物との類縁関係が分からず、[[古杯動物]]と呼ばれる{{Sfn|土屋|2013|pp=165-166}}。この少し前の約5億6000万年前から約5億5000億年前のエディアカラ生物群の中にも硬組織を持つ[[コロナコリナ]] {{snamei||Coronacollina acula}}が見つかっている{{Sfn|土屋|2013|pp=166-167}}。 |
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カンブリア爆発は2000万年<ref name="dev.biologists.org">{{cite journal|last1=Valentine |first1=JW |last2=Jablonski|first2=D |last3=Erwin |first3=DH|title=Fossils, molecules and embryos: new perspectives on the Cambrian explosion |journal=Development|year=1999 |volume=126 |issue=5 |pages=851–9 |pmid=9927587 |url=http://dev.biologists.org/content/126/5/851.long}}</ref><ref>{{cite journal |last1=Budd |first1=Graham|title=At the origin of animals: the revolutionary cambrian fossil record |journal=Current Genomics |year=2013 |volume=14 |issue=6 |pages=344–354 |doi=10.2174/13892029113149990011|pmid=24396267|pmc=3861885}}</ref>から2500万年<ref>{{cite journal | last1=Erwin | first1=D. H. | last2=Laflamme | first2=M. | last3=Tweedt | first3=S. M. | last4=Sperling | first4=E. A. | last5=Pisani | first5=D. | last6=Peterson | first6=K. J. | year=2011 | title=The Cambrian conundrum: early divergence and later ecological success in the early history of animals | journal=Science | volume=334 | issue=6059| pages=1091–1097 | doi=10.1126/science.1206375 | pmid=22116879|bibcode=2011Sci...334.1091E }}</ref><ref>{{cite journal | last1=Kouchinsky | first1=A. | last2=Bengtson | first2=S. | last3=Runnegar | first3=B. N. | last4=Skovsted | first4=C. B. | last5=Steiner | first5=M. | last6=Vendrasco | first6=M. J. | year=2012 | title=Chronology of early Cambrian biomineralization | journal=Geological Magazine | volume=149 | issue=2| pages=221–251 | doi=10.1017/s0016756811000720| bibcode=2012GeoM..149..221K }}</ref>続いた。[[オルドビス紀]]にはカンブリア紀までに登場した動物門が大きく[[適応放散]]している<ref name="fujita9298" />。 |
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==== 古生代 ==== |
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[[File:20191203_Anomalocaris_canadensis.png|thumb|300px|[[カンブリア紀]]の生物[[アノマロカリス]]の復元図]] |
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[[古生代]][[カンブリア紀]]初期 ({{lang|en|Nemakyt-Daldynian}})、約5億4200万年前には[[珪酸]]塩や[[炭酸]]塩、[[リン酸]]塩からなる[[骨片]](硬組織)をもつ[[微小有殻化石群]] (SSFs, {{lang|en|Small Shelly Fossils}}) が見られる{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}{{Sfn|土屋|2013|pp=169-171}}<ref name="Maloof"/><ref name="UCSB">{{cite web |title=New Timeline for Appearances of Skeletal Animals in Fossil Record Developed by UCSB Researchers |url=http://www.ia.ucsb.edu/pa/display.aspx?pkey=2364 |publisher=The Regents of the University of California |accessdate=2021-08-28 |date=2010-11-10}}</ref>。化石に残る硬組織を獲得し、急速に多様な動物が出現したため、「'''[[カンブリア爆発]]'''」(カンブリア大爆発)と呼ばれる{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}{{Sfn|土屋|2013|pp=164-165}}{{Sfn|土屋|2013|pp=171-174}}<ref name="UCSB"/>。[[海綿動物]]、[[軟体動物]]、[[腕足動物]]、[[節足動物]]、[[棘皮動物]]、[[環形動物]]、[[脊索動物]]など、現在の動物門のほとんどをしめる30余りの動物門{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}が化石記録に残っている。かつては現在とは無縁で現生動物よりも多数の動物群が突然出現したと考えられていたが、カンブリア紀以前の動物化石が発見されたり、カンブリア紀の生物群と現生の動物との類縁関係が判明してきたため、現在ではカンブリア爆発は複雑な器官(眼、触手、脚)を獲得したことよる活発な行動様式の発達および硬組織の発達による左右相称動物の多様化であると捉えられている{{Sfn|土屋|2013|pp=171-174}}{{Sfn|Conway-Morris|2003|pp=505-515}}。5億3200万年前には {{snamei||Aldanella yanjiahensis}} と呼ばれる軟体動物の化石が見つかっている{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}。約5億2100万年前([[カンブリア紀第二期|トモティアン]])になると、動物は眼を獲得し、それまで意味を持たなかった硬組織が防御や捕食に有利になり、それが軍拡競争として働いて多様な姿を持つ動物群が現れたと考えられている([[光スイッチ説]]){{Sfn|土屋|2013|pp=171-174}}。また分子時計の解析から遺伝子レベルの生物の爆発的多様化はこれより数億年早いと考えられる{{Sfn|dos Reis ''et al.''|2015|pp=2939-2950}}{{Sfn|土屋|2013|pp=171-174}}{{refn|group="注釈"|藤田 (2010)では、分子系統解析によればこれらの動物門は最古の化石より10億年以上遡ると推測されている{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}とあるが、これは正しくない。}}。カンブリア紀からオルドビス紀初頭にみられる大[[不整合]]の研究から、カンブリア爆発の原因は海洋中の化学成分(Mg<sup>2+</sup>、Na<sup>+</sup>、K<sup>+</sup>、Ca<sup>2+</sup>、Fe<sup>2+</sup>などの[[イオン]])が増加した影響が指摘されている{{Sfn|土屋|2013|pp=179-181}}。カンブリア爆発は2000万年<ref name="dev.biologists.org">{{cite journal|last1=Valentine |first1=JW |last2=Jablonski|first2=D |last3=Erwin |first3=DH|title=Fossils, molecules and embryos: new perspectives on the Cambrian explosion |journal=Development|year=1999 |volume=126 |issue=5 |pages=851–9 |pmid=9927587 |url=http://dev.biologists.org/content/126/5/851.long}}</ref><ref>{{cite journal |last1=Budd |first1=Graham|title=At the origin of animals: the revolutionary cambrian fossil record |journal=Current Genomics |year=2013 |volume=14 |issue=6 |pages=344–354 |doi=10.2174/13892029113149990011|pmid=24396267|pmc=3861885}}</ref> から2500万年<ref>{{cite journal | last1=Erwin | first1=D. H. | last2=Laflamme | first2=M. | last3=Tweedt | first3=S. M. | last4=Sperling | first4=E. A. | last5=Pisani | first5=D. | last6=Peterson | first6=K. J. | year=2011 | title=The Cambrian conundrum: early divergence and later ecological success in the early history of animals | journal=Science | volume=334 | issue=6059| pages=1091–1097 | doi=10.1126/science.1206375 | pmid=22116879|bibcode=2011Sci...334.1091E }}</ref><ref>{{cite journal | last1=Kouchinsky | first1=A. | last2=Bengtson | first2=S. | last3=Runnegar | first3=B. N. | last4=Skovsted | first4=C. B. | last5=Steiner | first5=M. | last6=Vendrasco | first6=M. J. | year=2012 | title=Chronology of early Cambrian biomineralization | journal=Geological Magazine | volume=149 | issue=2| pages=221–251 | doi=10.1017/s0016756811000720| bibcode=2012GeoM..149..221K }}</ref> 続いた。 |
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前期[[オルドビス紀]]にはカンブリア紀までに登場した動物門が大きく[[適応放散]]し{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}、これは'''[[GOBE]]''' ({{lang|en|The Great Ordovician Biodiversification Event}})と呼ばれる<ref>{{cite journal|last1=Servais|first1=T.|last2=Harper|first2=D.A.T.|date=2018|title=The Great Ordovician Biodiversification Event (GOBE): definition, concept and duration|journal=Lethaia|volume=51|pages=151-164}}</ref>。 |
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オルドビス紀末に[[大量絶滅]]([[O-S境界]])があったが<ref name="fujita9298" />、[[無顎類]](顎の無い[[脊椎動物]])は生き残り、[[シルル紀]]に多様化し、顎のある脊椎動物も登場した<ref name="fujita9298" />。[[デボン紀]]には[[硬骨魚類]]が多様化し、[[石炭紀]]には[[両生類]]が繁栄、[[ペルム紀]]には[[爬虫類]]が繁栄した<ref name="fujita9298" />。 |
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オルドビス紀末に[[大量絶滅]]([[O-S境界]])があったが、[[無顎類]](顎の無い[[脊椎動物]])は生き残り、[[シルル紀]]に多様化し、顎のある脊椎動物も登場した{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。[[デボン紀]]には[[硬骨魚類]]が多様化し、[[石炭紀]]には[[両生類]]が繁栄、[[ペルム紀]]には[[爬虫類]]が繁栄した{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。 |
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シルル紀には最古の陸上動物の化石である節足動物[[多足類]]が登場し、[[デボン紀]]に節足動物が多様化、[[石炭紀]]には翅を持つ[[昆虫類]]が登場した{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。 |
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==== 中生代 ==== |
==== 中生代 ==== |
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[[ファイル:LA-Triceratops_mount-2.jpg|サムネイル|[[トリケラトプス]]の骨格[[化石]]]] |
[[ファイル:LA-Triceratops_mount-2.jpg|サムネイル|[[トリケラトプス]]の骨格[[化石]]]] |
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ペルム紀末には地球史上最大の大量絶滅([[P-T境界]])が起こり、[[中生代]][[三畳紀]]には海洋生物が大量に絶滅 |
ペルム紀末には地球史上最大の大量絶滅([[P-T境界]])が起こり、[[中生代]][[三畳紀]]には海洋生物が大量に絶滅{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。[[哺乳類]]が登場した{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。 |
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[[ジュラ紀]]には[[恐竜]]が繁栄し、[[鳥類]]も登場した |
[[ジュラ紀]]には[[恐竜]]が繁栄し、[[鳥類]]も登場した{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。また、軟体動物の殻を破る[[カニ|カニ類]]や[[硬骨魚類]]が進化し、これに対抗して厚い殻をもつ軟体動物が進化した(中生代の海洋変革){{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。[[白亜紀]]までには現生の昆虫類のほとんどが登場{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。 |
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白亜紀末には巨大[[隕石]]の衝突による大量絶滅がおこる([[K-Pg境界]]) |
白亜紀末には巨大[[隕石]]の衝突による大量絶滅がおこる([[K-Pg境界]]){{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。 |
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==== 新生代 ==== |
==== 新生代 ==== |
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[[新生代]]は哺乳類が優勢になり、鳥類、昆虫類、[[真骨魚類]]も[[適応放散]]し、現在と同様の動物相が形成される |
[[新生代]]は哺乳類が優勢になり、鳥類、昆虫類、[[真骨魚類]]も[[適応放散]]し、現在と同様の動物相が形成される{{Sfn|藤田|2010|pp=92-98}}。新生代の後半にあたる[[第四紀]]には人類も出現した。 |
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=== 化石動物についての動物門 === |
=== 化石動物についての動物門 === |
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化石動物について、上記の分類される現存動物門のいずれにも属さないとして、新たな動物門が提唱されることがある。 |
化石動物について、上記の分類される現存動物門のいずれにも属さないとして、新たな動物門が提唱されることがある。以下に主要なもののみ挙げる。 |
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* †三裂動物門 {{sname||Trilobozoa}} {{AUY|Fedonkin|1985}} |
* †三裂動物門 {{sname||Trilobozoa}} {{AUY|Fedonkin|1985}} |
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*: [[トリブラキディウム]]などが属する。三放射 |
*: [[トリブラキディウム]]などが属する。三放射相称の体制をもつ。 |
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* †盾状動物門 {{sname||Proarticulata}} {{AUY|Fedonkin|1985}} |
* †盾状動物門 {{sname||Proarticulata}} {{AUY|Fedonkin|1985}} |
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*: [[ディッキンソニア]]、[[ヨルギア]]などのヴェンド生物が属する。左右相互に対称する体制をもつ。 |
*: [[ディッキンソニア]]、[[ヨルギア]]などのヴェンド生物が属する。左右相互に対称する体制をもつ。 |
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*:[[ウェツリコラ]]などが属する。その後は[[脊索動物]]とされ、その1亜門(古虫動物亜門)になる<ref name="Paterson2014">{{cite journal|last1=García-Bellido|first1=Diego C|last2=Paterson|first2=John R|year=2014|title=A new vetulicolian from Australia and its bearing on the chordate affinities of an enigmatic Cambrian group|url=http://www.biomedcentral.com/1471-2148/14/214/abstract#|journal=BMC Evolutionary Biology|volume=14|page=214|doi=10.1186/s12862-014-0214-z|pmid=25273382|pmc=4203957}}</ref>。 |
*:[[ウェツリコラ]]などが属する。その後は[[脊索動物]]とされ、その1亜門(古虫動物亜門)になる<ref name="Paterson2014">{{cite journal|last1=García-Bellido|first1=Diego C|last2=Paterson|first2=John R|year=2014|title=A new vetulicolian from Australia and its bearing on the chordate affinities of an enigmatic Cambrian group|url=http://www.biomedcentral.com/1471-2148/14/214/abstract#|journal=BMC Evolutionary Biology|volume=14|page=214|doi=10.1186/s12862-014-0214-z|pmid=25273382|pmc=4203957}}</ref>。 |
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* †[[葉足動物]]門 {{sname||Lobopodia}} {{AUY|Snodgrass|1938}} |
* †[[葉足動物]]門 {{sname||Lobopodia}} {{AUY|Snodgrass|1938}} |
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*:[[アイシュアイア]]、[[ハルキゲニア]]などが属する。[[汎節足動物]]であり、 |
*:[[アイシュアイア]]、[[ハルキゲニア]]などが属する。[[汎節足動物]]であり、汎節足動物に属する動物門<ref group="注釈">[[有爪動物]]、[[緩歩動物]]、[[節足動物]]</ref> のそれぞれの[[ステムグループ]]を含んだ[[側系統群]]であると考えられる<ref name=":0">{{Cite journal|last=Smith|first=Martin R.|last2=Ortega-Hernández|first2=Javier|date=2014-08-17|title=Hallucigenia’s onychophoran-like claws and the case for Tactopoda|url=https://doi.org/10.1038/nature13576|journal=Nature|volume=514|issue=7522|pages=363–366|language=En|doi=10.1038/nature13576|issn=0028-0836}}</ref><ref name=":1">{{Cite journal|last=Hernández|first=Javier Ortega|title=Lobopodians|url=http://www.academia.edu/16933971/Lobopodians|language=en}}</ref>。 |
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=== 絶滅した動物 === |
=== 絶滅した動物 === |
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== 現生の動物の系統 == |
== 現生の動物の系統 == |
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=== 下位分類 === |
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| content ={{image array|perrow = 3 |
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| image1 = Aplysina fistularis (Yellow tube sponge).jpg | caption1 =[[カイメン]]<ref group="種名">[[クダカイメン]] {{snamei||Aplysina fistularis}}</ref><br />(海綿動物門) |
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| image2 = Venus_Flower_Basket.jpg | caption2 = [[カイロウドウケツ]]<ref group="種名">[[カイロウドウケツ]] {{snamei||Euplectella aspergillum}}</ref><br />(海綿動物門) |
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| image3 = Ctenophore_-_Bolinopsis_infundibulum.jpg | caption3 = [[クシクラゲ]]<ref group="種名">[[キタカブトクラゲ]] {{snamei||Bolinopsis infundibulum}}</ref><br />(有櫛動物門) |
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| image4 = Jelly_Monterey.jpg | caption4 =[[クラゲ]]<ref group="種名">[[アトランティックシーネットル]] {{snamei||Chrysaora quinquecirrha}}</ref><br />(刺胞動物門) |
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| image5 = Coral_Outcrop_Flynn_Reef.jpg | caption5 = [[サンゴ]]<ref group="種名">複数種([[イシサンゴ目]])</ref><br />(刺胞動物門) |
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| image6 = Trichoplax_mic.jpg | caption6 = [[センモウヒラムシ]]<ref group="種名">[[センモウヒラムシ]] {{snamei||Trichoplax adherens}}</ref><br /> (平板動物門) |
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| image7 = Waminoa_on_Plerogyra.jpg | caption7 = [[無腸類]]<ref group="種名">{{snamei||Waminoa}} sp.</ref><br />(珍無腸動物門) |
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| image8 = Xenoturbella_japonica.jpg | caption8 = [[チンウズムシ]]<ref group="種名">[[ニッポンチンウズムシ]] {{snamei||Xenoturbella japonica}}</ref><br />(珍無腸動物門) |
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| image9 = Certonardoa_semiregularis_ja01.jpg | caption9 =[[ヒトデ]]<ref group="種名">[[アカヒトデ]] {{snamei||Certonardoa semiregularis}}</ref><br />(棘皮動物門) |
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| image10 = Holothuria leucospilota Réunion.jpg | caption10 = [[ナマコ]]<ref group="種名">[[ニセクロナマコ]] {{snamei||Holothuria leucospilota}}</ref><br />(棘皮動物門) |
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| image11 = Echinometra_mathaei_MHNT_Philippines.jpg | caption11 =[[ウニ]]<ref group="種名">[[ナガウニ]] {{snamei||Echinometra mathaei}}</ref><br />(棘皮動物門) |
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| image12 = Eichelwurm.jpg | caption12 = [[ギボシムシ]]<ref group="種名">[[腸鰓綱]]の一種(未同定)</ref><br />(半索動物門) |
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| image13 = Branchiostoma_lanceolatum.jpg | caption13 =[[ナメクジウオ]]<ref group="種名">[[ナメクジウオ]] {{snamei||Branchiostoma lanceolatum}}</ref><br />(頭索動物門) |
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| image14 = Symplegma_rubra.jpg | caption14 =[[ホヤ]]<ref group="種名">{{snamei||Symplegma rubra}}</ref><br />(尾索動物門) |
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| image15 = Koe_zijaanzicht_2.JPG | caption15 =[[哺乳類]]<ref group="種名">[[ウシ]] {{snamei||Bos taurus}}</ref><br />(脊椎動物門) |
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| image16 = Chaetoblack.png | caption16 =[[ヤムシ]]<ref group="種名">[[イソヤムシ]] {{snamei||Spadella cephaloptera}}</ref><br />(毛顎動物門) |
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| image17 = Echinoderes hwiizaa.jpg | caption17 =[[トゲカワ]]<ref group="種名">[[ヤギツノトゲカワ]] {{snamei||Echinoderes hwiizaa}}</ref><br />(動吻動物門) |
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| image18 = Priapulus_caudatus.jpg | caption18 =[[エラヒキムシ]]<ref group="種名">[[エラヒキムシ]] {{snamei||Priapulus caudatus}}</ref><br />(鰓曳動物門) |
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| image19 = Pliciloricus_enigmatus.jpg | caption19 =[[コウラムシ]]<ref group="種名">{{snamei||Pliciloricus enigmatus}}</ref><br />(胴甲動物門) |
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| image20 = Ascaris_lumbricoides.jpeg | caption20 =[[回虫]]<ref group="種名">[[ヒトカイチュウ]] {{snamei||Ascaris_lumbricoides}}</ref><br />(線形動物門) |
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| image21 = Paragordius_tricuspidatus.jpeg | caption21 =[[ハリガネムシ]]<ref group="種名">{{snamei||Paragordius tricuspidatus}}</ref><br />(類線形動物門) |
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| image22 = Waterbear.jpg | caption22 =[[クマムシ]]<ref group="種名">{{snamei||Hypsibius dujardini}}</ref><br />(緩歩動物門) |
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| image23 = Peripatoides indigo.jpg | caption23 = [[カギムシ]]<ref group="種名">{{snamei||Peripatoides indigo}}</ref><br />(有爪動物門) |
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| image24 = European_wasp_white_bg02.jpg | caption24 = [[昆虫類]]<ref group="種名">[[ヨーロッパクロスズメバチ]] {{snamei||Vespula germanica}}</ref><br />(節足動物門) |
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| image25 = Chionoecetes_bairdi.jpg | caption25 = [[甲殻類]]<ref group="種名">[[オオズワイガニ]] {{snamei||Chionoecetes bairdi}}</ref><br />(節足動物門) |
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| image26 = EB1911 Mesozoa - Rhopalura giardii.jpg | caption26 =[[チョクエイチュウ]]<ref group="種名">{{snamei||Rhopalura ophiocomae}}</ref><br />(直泳動物門) |
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| image27 = Dicyema japonicum.png | caption27 = [[ニハイチュウ]]<ref group="種名">[[ヤマトニハイチュウ]] {{snamei||Dicyema japonicum}}</ref><br />(二胚動物門) |
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| image28 = Feeding stage and attached Prometheus larva of Symbion pandora.jpg | caption28 =[[シンビオン|パンドラムシ]]<ref group="種名">[[シンビオン|パンドラムシ]] {{snamei||Symbion pandora}}</ref><br />(有輪動物門) |
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| image29 = Gnathostomula_paradoxa_Sylt.tif | caption29 =<div style="white-space:nowrap;">[[グナトストムラ]]{{refn|group="注釈"|[[ガッコウチュウ]]と呼ばれることもあるが<ref name="NEO"/>、[[顎口虫]]は線形動物の[[寄生虫]] {{snamei||Gnathostoma}} にも用いられる{{Sfn|藤田|2010|p=127}}。}}<ref group="種名">{{snamei||Gnathostomula paradoxa}}</ref><br /></div>(顎口動物門) |
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| image30 = Limnonathia,_drawing.tif | caption30 =[[リムノグナシア]]{{refn|group="種名"|[[コアゴムシ]]<ref name="NEO"/> {{snamei||Limnognathia maerski}} }}<br />(微顎動物門) |
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| image31 = Mikrofoto.de-Brachionus quadridentatus 6.jpg | caption31 = [[ワムシ]]<ref group="種名">[[カドツボワムシ]] {{snamei||Brachionus quadridentatus}}</ref><br />(輪形動物門) |
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| image32 = Lepidodermella squamatum (cropped).jpg | caption32 = [[イタチムシ目|イタチムシ]]<ref group="種名">{{snamei||Lepidodermella squamata}}</ref><br />(腹毛動物門) |
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| image33 = Smed.jpg | caption33 = [[プラナリア]]<ref group="種名">{{snamei||Schmidtea mediterranea}}</ref><br />(扁形動物門) |
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| image35 = Taenia_saginata_adult_5260_lores.jpg | caption35 = [[条虫]]<ref group="種名">[[無鉤条虫]] {{snamei||Taenia saginata}}</ref><br />(扁形動物門) |
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| image36 = Japan_sea_animal,_Ezo_giant_scallop_(Mizuhopecten_yessoensis)_(15152229484).jpg | caption36 = [[二枚貝]]<ref group="種名">[[ホタテガイ]] {{snamei||Mizuhopecten yessoensis}}</ref><br />(軟体動物門) |
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| image37 = Loligo_vulgaris.jpg | caption37 = [[頭足類]]<ref group="種名">[[ヨーロッパヤリイカ]] {{snamei||Loligo vulgaris}}</ref><br />(軟体動物門) |
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| image38 = Lumbricus terrestris (26559560801).jpg | caption38 = [[ミミズ]]<ref group="種名">[[オウシュウツリミミズ]] {{snamei||Lumbricus terrestris}}</ref><br />(環形動物門) |
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| image39 = Hediste diversicolor (YPM IZ 080469) 001.jpeg | caption39 = [[ゴカイ]]<ref group="種名">[[セイヨウカワゴカイ]] {{snamei||Hediste diversicolor}}</ref><br />(環形動物門) |
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| image40 = Echiura_in_Korea1.jpg | caption40 = [[ユムシ]]<ref group="種名">[[ユムシ]] {{snamei||Urechis unicinctus}}</ref><br />(環形動物門) |
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| image41 = Sipunculus nudus.jpeg | caption41 = [[ホシムシ]]<ref group="種名">[[スジホシムシ]]{{snamei||Sipunculus nudus}}</ref><br />(環形動物門) |
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| image42 = Lineus_geniculatus_misakihmms01.JPG | caption42 = [[ヒモムシ]]<ref group="種名">[[ミサキヒモムシ]] {{snamei||Notospermus geniculatus}}</ref><br />(紐形動物門) |
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| image43 = Lingula anatina.jpg | caption43 = [[シャミセンガイ]]<ref group="種名">[[ミドリシャミセンガイ]] {{snamei||Lingula anatina}}</ref><br />(腕足動物門) |
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| image44 = Phoronis hippocrepia Wright, 1856 1.jpg | caption44 = [[ホウキムシ]]<ref group="種名">[[ホウキムシ]] {{snamei||Phoronis hippocrepia}}</ref><br />(箒虫動物門) |
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| image45 = Pectinatella magnifica 8568.jpg | caption45 = [[コケムシ]]<ref group="種名">[[オオマリコケムシ]] {{snamei||Pectinatella magnifica}}</ref><br />(苔虫動物門) |
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| image46 =Barentsa_discreta_suzukokemusi01.JPG | caption46 = [[スズコケムシ]]<ref group="種名">[[スズコケムシ]] {{snamei||Barentsia discreta}}</ref><br />(内肛動物門) |
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|thumb|caption=各動物門に含まれる代表的な動物の例(和名は総称、詳細は「種名」を参照)}} |
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以下に[[#日本動物学会 2018|『動物学の百科事典』(2018)]]で認められている分類体系における動物の門を示す。[[著者名の引用 (動物学)|著者名]]は{{Harvtxt|巌佐ほか|2013}}による。各動物門どうしの系統関係などの詳細については異説もあるため、ここでは省略し、次節以降を参照。研究の進展により廃止された門については[[#かつて存在した動物門]]を参照。また、門の詳細に関しては各項を参照。 |
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# [[海綿動物門]] {{sname|Porifera}} {{AUY|[[:en:Robert Edmond Grant|Grant]]|1836}} |
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# [[有櫛動物門]] {{sname|Ctenophora}} {{AUY|Eschscholtz|1829}}{{refn|name="shihou"|group="注釈"|[[刺胞動物]]と[[有櫛動物]]は外見が類似しているので[[腔腸動物|腔腸動物門]]としてまとめられていたが、有櫛動物は刺胞がなく、上皮細胞が多繊毛性であり、決定性卵割であるといった刺胞動物との決定的違いがあり、しかも分子系統解析により腔腸動物が単系統とならないことがわかったので両者は別の門として分けられている<ref name="藤田 2010, p.119">[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.119</ref>}} |
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# [[刺胞動物門]] {{sname|Cnidaria}} {{AUY|Verrill|1865}}<ref name="shihou" group="注釈"/> |
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# [[平板動物門]] {{sname|Placozoa}} {{AUY|K.G. Grell|1971}}(板形動物) |
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# [[珍無腸動物門]] {{sname||Xenacoelomorpha}} {{AUY|Philippe ''et al.''|2011}}{{refn|group="注釈"|かつて扁形動物門に分類されていた[[珍渦虫]]と[[無腸動物]]を新たな門として立てたもの<ref name="Xen"/>。その系統的位置に関しては、左右相称動物の最も初期に分岐したとする説<ref name="Cannon"/><ref name="Rouse"/> と後口動物の一員であるとする説<ref name="Philippe2011"/><ref name="Philippe2019"/> がある。}} |
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# [[棘皮動物門]] {{sname||Echinodermata}} {{AUY|Leuckart|1854}} |
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# [[半索動物門]] {{sname||Hemichordata}} {{AUY|Bateson|1885}} |
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# [[頭索動物門]] {{sname||Cephalochordata}} {{AUY|Lankester|1877}}{{refn|name="chordata"|group="注釈"|脊椎動物・頭索動物・尾索動物の3門を亜門とし、まとめて脊索動物門とすることも多い。詳しくは[[#脊索動物]]を参照}} |
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# [[尾索動物門]] {{sname||Urochordata}} {{AUY|Lankester|1877}}<ref name="chordata" group="注釈"/> |
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# [[脊椎動物門]] {{sname||Vertebrata}} {{AUY|[[ジャン=バティスト・ラマルク|J-B. Lamarck]]|1801}}([[有頭動物]] {{sname||Craniata}} {{AUY|Lankester|1877}})<ref name="chordata" group="注釈"/> |
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# [[毛顎動物門]] {{sname||Chaetognatha}} {{AUY|Leuckart|1854}} |
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# [[胴甲動物門]] {{sname||Loricifera}} {{AUY|Kristensen|1983}} |
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# [[動吻動物門]] {{sname||Kinorhyncha}} {{AUY|Reinhard|1887}} |
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# [[鰓曳動物門]] {{sname||Priapulida}} {{AUY|Théel|1906}} |
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# [[線形動物門]] {{sname||Nematoda}} {{AUY|Diesing|1861}}({{Sname||Nemata}} {{AUY|Cobb|1919}}) |
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# [[類線形動物門]] {{sname||Nematomorpha}} {{AUY|Vejedovsky|1886}}({{sname||Gordiacea}} {{AUY|von Siebold|1843}}) |
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# [[緩歩動物門]] {{sname||Tardigrada}} {{AUY|Spallanzani|1777}} |
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# [[節足動物門]] {{sname||Arthropoda}} {{AUY|Siebold & Stannius|1845}} |
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# [[有爪動物門]] {{sname||Onychophora}} {{AUY|Grube|1853}} |
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# [[直泳動物門]] {{sname||Orthonectida}} {{AUY|Giard|1877}}<ref name="chuusei" group="注釈"/> |
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# [[二胚動物門]] {{sname||Dicyemida}} {{AUY|van Beneden|1876}}(菱形動物<ref>[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.124</ref> {{sname||Rhombozoa}} {{AUY|van Beneden|1882}}){{refn|name="chuusei"|group="注釈"|直泳動物門と二胚動物門はかつて[[中生動物|中生動物門]]とされており{{Sfn|藤田|2010|p=113}}、[[原生動物]]から後生動物に進化する過程であると過去には見られていたが、2010年現在では[[寄生]]生活により退化した後生動物(螺旋動物)であると見られている{{Sfn|藤田|2010|p=122}}}} |
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# [[有輪動物門]] {{Sname||Cycliophora}} {{AUY|Funch & Kristensen|1995}} |
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# [[顎口動物門]] {{sname||Gnathostomulida}} {{AUY|Ax|1956}} |
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# [[微顎動物門]] {{sname||Micrognathozoa}} {{AUY|Kristensen & Funch|2000}} |
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# [[輪形動物門]] {{sname||Rotifera}} {{AUY|Cuvier|1798}}{{refn|group="注釈"|[[鉤頭動物]] {{sname||Acanthocephala}}は輪形動物に内包され、狭義の輪形動物は側系統となる。狭義の輪形動物および鉤頭動物を門として残し、広義の輪形動物を共皮類 {{sname||Syndermata}} とすることもある<ref name="Kajihara">{{cite|author=柁原宏|chapter=腹毛動物・扁形動物・顎口動物・微顎動物・輪形動物・紐形動物 {{small|―人目に触れないマイナー分類群}}|date=2018|pages=62-63}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。}} |
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# [[腹毛動物門]] {{sname||Gastrotricha}} {{AUY|Metschnikoff|1864}} |
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# [[扁形動物門]] {{sname||Platyhelminthes}} {{AUY|Hyman|1951}}({{sname||Plathelminthes}} {{AUY|Schneider|1873}}) |
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# [[外肛動物|苔虫動物門]] {{sname||Bryozoa}} {{AUY||}}(外肛動物 {{sname||Ectoprocta}} {{AUY|Nitche|1870}}) |
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# [[内肛動物門]] {{sname||Entoprocta}} {{AUY|Nitche|1869}}(曲形動物 {{Sname||Kamptozoa}} {{AUY|Cori|1921}}) |
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# [[箒虫動物門]] {{sname||Phoronida}} {{AUY|Hatschek|1888}} |
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# [[腕足動物門]] {{sname||Brachiopoda}} {{AUY|[[アンドレ・マリー・コンスタン・デュメリル|A.M.C. Duméril]]|1806}} |
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# [[紐形動物門]] {{sname||Nemertea}} {{AUY|Quatrefages|1846}}({{sname||Rhynchocoela}} {{AUY|Schultze|1851}}) |
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# [[軟体動物門]] {{sname||Mollusca}} {{AUY|Cuvier|1797}} |
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# [[環形動物門]] {{sname||Annelida}} {{AUY|[[ジャン=バティスト・ラマルク|J-B. Lamarck]]|1809}}{{refn|group="注釈"|[[星口動物]]・[[ユムシ|ユムシ動物]]・[[有鬚動物]]は過去には門として立てられていた事もあるが、2018年現在は環形動物門の一部とみなされている<ref>{{cite|author=田中正敦|chapter=環形動物(有鬚動物・ユムシ・星口動物を含む) {{small|―誤解されていた系統関係}}|date=2018|pages=70-71}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。}} |
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=== 系統樹 === |
=== 系統樹 === |
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1990年代以前は左右相称動物は[[原腸]]が口になるか否かで[[前口動物]]、後口動物に分類され、さらに[[体腔]]が無体腔、偽体腔、真体腔のいずれであるかにより分類されていた。しかし1990年代の18S rRNA遺伝子の解析により、体腔の違いは進化とは関係ない事が判明し、上述の意味での後口動物は単系統でない事が示されたので、いくつかの動物門を新口動物から外し([[#後口動物|後述]])、前口動物に移した<ref>[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.106</ref>。このような変更を施した後の前口動物が[[単系統]]であることが支持されている<ref name="Cannon" /><ref>{{Cite journal|last=Dunn|first=Casey W.|last2=Hejnol|first2=Andreas|last3=Matus|first3=David Q.|last4=Pang|first4=Kevin|last5=Browne|first5=William E.|last6=Smith|first6=Stephen A.|last7=Seaver|first7=Elaine|last8=Rouse|first8=Greg W.|last9=Obst|first9=Matthias|date=2008-03-05|title=Broad phylogenomic sampling improves resolution of the animal tree of life|url=http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nature06614|journal=Nature|volume=452|issue=7188|pages=745–749|language=En|doi=10.1038/nature06614|issn=0028-0836}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Egger|first=Bernhard|last2=Steinke|first2=Dirk|last3=Tarui|first3=Hiroshi|last4=Mulder|first4=Katrien De|last5=Arendt|first5=Detlev|last6=Borgonie|first6=Gaëtan|last7=Funayama|first7=Noriko|last8=Gschwentner|first8=Robert|last9=Hartenstein|first9=Volker|date=2009-05-11|title=To Be or Not to Be a Flatworm: The Acoel Controversy|url=http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0005502|journal=PLOS ONE|volume=4|issue=5|pages=e5502|language=en|doi=10.1371/journal.pone.0005502|issn=1932-6203|pmid=19430533|pmc=PMC2676513}}</ref>。 |
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下記は動物界の系統樹を門レベルまで描いたものである<ref name="hyakka">[[動物#日本動物学会2018|日本動物学会2018]] pp.55-56, 70-71, 78-79</ref>。ただし、2018年現在、分子系統解析が進展中ということもあり、下表は今後も若干の修正が加えられていくものと思われる。 |
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下記は主に [[#Giribet 2016|ギリベ (2016)]]の系統仮説に基づく系統樹に、[[#Laumer et al. 2019|ラーマーら (2019)]]による分子系統解析の結果を加えて、動物界の系統樹を門レベルまで描いたものである<ref name="Kakui"/><ref name="Giribet">[[#Giribet 2016|Giribet 2016]], pp.14-21</ref><ref name="laumer"/>{{refn|group="注釈"|[[#Giribet 2016|ギリベ (2016)]]における系統仮説では有輪動物の系統位置が不明であり前口動物内に曖昧さをもって置かれるが、[[#Laumer et al. 2019|ラーマーら (2019)]]でははっきりと内肛動物との単系統性を示すため、これを反映した。また、ギリベ (2016)における系統仮説では苔虫動物と内肛動物が姉妹群をなすが、ラーマーら (2019)では苔虫動物と箒虫動物が姉妹群となり、それに腕足動物を加えた単系統群({{lang|en|lophophorate clade}}<ref name="laumer"/>、触手冠動物<ref name="Kakui"/>)が強く支持され、内肛動物はそれと姉妹群をなす結果はあるもののそうでない結果もあることから、ラーマーら (2019)の系統樹を優先して変更した。}}。ただし、2018年現在、分子系統解析が進展中ということもあり、完全に合意がなされたものではない。本項はこの系統樹に基づき以下の小節にて解説を行う。 |
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{{clade |
{{clade |
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|label1=後生動物 |
|label1=[[後生動物]] |
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|sublabel1={{sname||Metazoa}} |
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{{clade |
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|1={{clade |
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|label1=[[海綿動物]]門|1=[[ファイル:A_Guantanamo_sponge_-a.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] カイメン、[[ファイル:Venus_Flower_Basket.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[カイロウドウケツ]] |
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|1= [[海綿動物]]門 {{sname||Porifera}} |
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|label2=[[平板動物]]門|2=[[ファイル:Trichoplax_mic.jpg|代替文=wasp|50x50ピクセル]] [[センモウヒラムシ]] |
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|2= [[有櫛動物]]門 {{sname||Ctenophora}} |
|||
|label3=[[刺胞動物]]門{{refn|name="shihou"|group="注釈"|[[刺胞動物]]と[[有櫛動物]]は外形的に類似しているので[[腔腸動物|腔腸動物門]]としてまとめられていたが、有櫛動物は刺胞がなく、上皮細胞が多繊毛性であり、決定性卵割であるといった刺胞動物との決定的違いがあり、しかも分子系統解析により腔腸動物が単系統とならないがわかったので両者は別の門として分けられている<ref>[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.119.</ref>}}|3=[[ファイル:Jelly_Monterey.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[クラゲ]]、[[ファイル:Coral_Outcrop_Flynn_Reef.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[サンゴ]] |
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|label3= |
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|label4=[[有櫛動物]]門<ref name="shihou" group="注釈"/>|4=[[ファイル:Ctenophore_-_Bolinopsis_infundibulum.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[クシクラゲ]] |
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|sublabel3={{sname||ParaHoxozoa}} |
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|label5=[[左右相称動物]]|5= |
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|3={{clade |
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|1= [[刺胞動物]]門 {{sname||Cnidaria}} |
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|label1=[[有腎動物]]<ref name="Narakyo">[http://mail2.nara-edu.ac.jp/~masaki/CBL-SITE/Other_files/7%28配付%29.pdf 珍無腸動物:所属が大きく揺れ動いた謎の動物 - 宮﨑 勝己(奈良教集中講義)]</ref><br/>{{Sname||Nephrozoa}}|1= |
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|2= [[平板動物]]門 {{sname||Placozoa}} |
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{{clade |
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|label3=[[左右相称動物]] |
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|sublabel3={{sname||Bilateria}} |
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{{clade |
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|3={{clade |
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|label1=[[毛顎動物]]門<ref name="humei" group="注釈">2018年現在、情報不足により前口動物内での位置が不明([[#日本動物学会2018|日本動物学会2018]] pp.55-56)</ref>|1=[[ファイル:Chaetoblack.png|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ヤムシ]] |
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|1=[[珍無腸動物]]門 {{sname||Xenacoelomorpha}}{{refn|group="注釈"|後口動物の水腔動物と姉妹群をなすという結果もある<ref name="Philippe2019"/>。}} |
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|label2=[[有輪動物]]門<ref name="humei" group="注釈"/>|2=[[シンビオン]] |
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|label2=[[有腎動物]] |
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|label3=[[二胚動物]]門<ref name="humei" group="注釈"/>{{refn|name="chuusei"|group="注釈"|[[中生動物|中生動物門]]は直泳動物門と二胚動物門に分けられている<ref name="Fujita10-113">[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.113.</ref>。なお中生動物門は[[原生動物]]から後生動物に進化する過程であると過去には見られていたが、2010年現在では[[寄生]]生活により退化した後生動物であると見られている<ref name="Fujita10-122">[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.122.</ref>。}}<br/>(菱形動物門とも<ref>[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.124.</ref>)|3=[[ファイル:Dicyema_macrocephalum.png|代替文=wasp|103x103ピクセル]] [[ニハイチュウ]] |
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|sublabel2={{Sname||Nephrozoa}} |
|||
|label4=[[直泳動物]]門<ref name="humei" group="注釈"/><ref name="chuusei" group="注釈"/>|4=[[ファイル:Orthonetida_dict_flat_and_cylinder.png|代替文=wasp|66x66ピクセル]] [[直泳動物|キリオキンクタ]] |
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|2={{clade |
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|label1=[[後口動物]] |
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|sublabel1={{sname||Deuterostomia}} |
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|label1=[[有棘動物]]として<br/>纏められるという<br/>仮説あり|1= |
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|1={{clade |
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|label1=[[水腔動物]] |
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|sublabel1={{sname||Coelomopora}} |
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|label2=[[鰓曳動物]]門|2=[[ファイル:Priapulus_caudatus.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[エラヒキムシ]] |
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|1={{clade |
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|label3=[[胴甲動物]]門|3=[[ファイル:Pliciloricus_enigmatus.jpg|代替文=wasp|85x85ピクセル]] [[胴甲動物|コウラムシ]] |
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|1=[[棘皮動物]]門 {{sname||Echinodermata}} |
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|2=[[半索動物]]門 {{sname||Hemichordata}} |
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|label2=[[脊索動物]] |
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|label2=<small>広義の</small>線形動物 {{sname||Nematozoa}} <ref name="taxonomy">[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.150</ref><br/><small>または</small><!--[[糸型動物]]--> {{sname||Nematoida}}|2= |
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|sublabel2={{sname||Chordata}} |
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|2={{clade |
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|label1=[[線形動物]]門|1=[[ファイル:Ascaris_lumbricoides.jpeg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[回虫]] |
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|1=[[頭索動物]]門 {{sname||Cephalochordata}} |
|||
|label2=[[類線形動物]]門|2=[[ファイル:Paragordius_tricuspidatus.jpeg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ハリガネムシ]] |
|||
|2={{clade |
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|1=[[尾索動物]]門 {{sname||Urochordata}} |
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|2=[[脊椎動物]]門 {{sname||Vertebrata}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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|label2=[[前口動物]] |
|||
|sublabel2={{Sname||Protostomia}} |
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|2={{clade |
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|1=[[毛顎動物]]門 {{sname||Chaetognatha}}{{refn|group="注釈"|前口動物内での位置は未確定<ref name="Kakui"/><ref name="Giribet"/> だが、担顎動物に近縁という結果がある<ref name="laumer"/>。}} |
|||
|label2=[[脱皮動物]] |
|||
|sublabel2={{sname||Ecdysozoa}} |
|||
|2={{clade |
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|grouplabel1=? [[有棘動物]] {{sname||Scalidophora}} |
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|barbegin1=black |
|||
|1=[[動吻動物]]門 {{sname||Kinorhyncha}} |
|||
|bar2=black |
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|2=[[鰓曳動物]]門 {{sname||Priapulida}} |
|||
|3=[[胴甲動物]]門 {{sname||Loricifera}} |
|||
|barend3=black |
|||
|label4=[[糸形動物]] |
|||
|sublabel4={{sname||Nematoida}} |
|||
|4={{clade |
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|1=[[線形動物]]門 {{sname||Nematoda}} |
|||
|2=[[類線形動物]]門 {{sname||Nematomorpha}} |
|||
}} |
}} |
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| |
|label5=[[汎節足動物]] |
||
|sublabel5={{sname||Panarthropoda}} |
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|5={{clade |
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|label1=[[緩歩動物]]門|1=[[ファイル:Waterbear.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[クマムシ]] |
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| |
|1=[[緩歩動物]]門 {{sname||Tardigrada}} |
||
|2={{clade |
|||
|label3=[[節足動物]]門|3=[[ファイル:European_wasp_white_bg02.jpg|代替文=wasp|100x100ピクセル]] [[昆虫類]]、[[ファイル:Chionoecetes_bairdi.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[甲殻類]] |
|||
|1=[[有爪動物]]門 {{sname||Onychophora}} |
|||
|2=[[節足動物]]門 {{sname||Arthropoda}} |
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}} |
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}} |
}} |
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}} |
}} |
||
|3=[[直泳動物]]門 {{sname||Orthonectida}}{{refn|group="注釈"|前口動物内での位置は未確定<ref name="Kakui"/><ref name="Giribet"/> だが、吸啜動物に近縁<ref name="dicyemid-spiralia"/> または環形動物に内包される<ref name="orthonectid"/> という結果がある。}} |
|||
|label6=[[冠輪動物|螺旋動物]]<ref name="kanrin" group="注釈">螺旋動物は冠輪動物と呼ばれる事もある。その場合本稿の系統樹に登場する冠輪動物は担輪動物と呼び変える事で用語の混乱を防ぐ([[#日本動物学会2018|日本動物学会2018]] pp.55-56)</ref>|6= |
|||
|4=[[二胚動物]]門 {{sname||Dicyemida}}{{refn|group="注釈"|前口動物内での位置は未確定<ref name="Kakui"/><ref name="Giribet"/> だが、吸啜動物に近縁という結果がある<ref name="dicyemid-spiralia"/>。}} |
|||
{{clade |
|||
|label5=[[冠輪動物|螺旋動物]]{{refn|name="kanrin"|group="注釈"|螺旋動物は冠輪動物と呼ばれる事もある<ref name="Kakui"/>。その場合本項の系統樹に登場する冠輪動物は担輪動物と呼び変えられる<ref name="Kakui"/>}} |
|||
|label1=[[担顎動物]]<ref name="encyclopedia"/>|1= |
|||
|sublabel5={{sname||Spiralia}} |
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|5={{clade |
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|label1=[[顎口動物]]門|1=[[ファイル:Gnathostomula_paradoxa_Sylt.tif|代替文=wasp|80x80ピクセル]] |
|||
|label1=[[担顎動物]] |
|||
|sublabel1={{sname||Gnathifera}} |
|||
|1={{clade |
|||
|label1=[[微顎動物]]門|1=[[ファイル:Limnonathia,_drawing.tif|代替文=wasp|57x57ピクセル]] [[リムノグナシア]] |
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| |
|1=[[顎口動物]]門 {{sname||Gnathostomulida}} |
||
|2= |
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{{clade |
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|1=[[微顎動物]]門 {{sname||Micrognathozoa}} |
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|2=[[輪形動物]]門 {{sname||Rotifera}} |
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}} |
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}} |
}} |
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|label2=[[吸啜動物]] |
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|sublabel2={{sname||Rouphozoa}} |
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|2={{clade |
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|1=[[腹毛動物]]門 {{sname||Gastrotricha}} |
|||
|2=[[扁形動物]]門 {{sname||Platyhelminthes}} |
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}} |
}} |
||
|label3=[[担輪動物|冠輪動物]]<ref name="kanrin" group="注釈" /> |
|||
|label2=[[吸啜動物]]<ref name="encyclopedia">{{cite|author=柁原宏|title=腹毛動物・扁形動物・顎口動物・微顎動物・輪形動物・紐形動物―人目に触れないマイナー分類群|date=2018}} in {{cite book|title=『動物学の百科事典』|author=日本動物学会|publisher=丸善出版|pages=62-63|isbn=978-4-621-30309-2|date=2018}}</ref><br/>{{sname||Rouphozoa}}|2= |
|||
|sublabel3={{sname||Lophotrochozoa}} |
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|3={{clade |
|||
|label1=[[腹毛動物]]門|1=[[ファイル:Gastrotrich.jpg|代替文=wasp|62x62ピクセル]] [[イタチムシ目|イタチムシ]]、[[オビムシ]] |
|||
|1=[[軟体動物]]門 {{sname||Mollusca}} |
|||
|label2=[[扁形動物]]門|2=[[ファイル:Smed.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[プラナリア]]、[[ファイル:Botulus_microporus.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[吸虫]]、[[ファイル:Taenia_saginata_adult_5260_lores.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[サナダムシ]] |
|||
}} |
|2=[[環形動物]]門 {{sname||Annelida}} |
||
| |
|3=[[紐形動物]]門 {{sname||Nemertea}} |
||
{{clade |
|4={{clade |
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| |
|1=[[内肛動物]]門 {{sname||Entoprocta}} |
||
|2=[[有輪動物]]門 {{sname||Cycliophora}} |
|||
|label2=[[内肛動物]]門|2=[[ファイル:Barentsa_discreta_suzukokemusi01.JPG|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[スズコケムシ]] |
|||
}} |
|||
|label3=[[箒虫動物]]門|3=[[ファイル:Phoronis hippocrepia Wright, 1856 1.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[箒虫動物|ホウキムシ]] |
|||
|label5=[[触手冠動物]] |
|||
|label4=[[腕足動物]]門|4=[[ファイル:Lingula anatina.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] シャミセンガイ、ホオズキガイ |
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|sublabel5={{sname||Lophophorata}} |
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|label5=[[紐形動物]]門|5=[[ファイル:Lineus_geniculatus_misakihmms01.JPG|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ヒモムシ]] |
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|5={{clade |
|||
|label6=[[軟体動物]]門|6=[[ファイル:Japan_sea_animal,_Ezo_giant_scallop_(Mizuhopecten_yessoensis)_(15152229484).jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[貝類]]、[[ファイル:Loligo_vulgaris.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[イカ]]、[[ファイル:Octopus_vulgaris2.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[タコ]] |
|||
|1=[[腕足動物]]門 {{sname||Brachiopoda}} |
|||
|label7=[[環形動物]]門<ref group="注釈">[[星口動物]]。[[ユムシ|ユムシ動物]]は過去には門として立てられていた事もあるが、2018年現在は環形動物門の一部とみなされている([[#日本動物学会2018|日本動物学会2018]] pp.70-71)</ref>|7=[[ファイル:Regenwurm1.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ミミズ]]、[[ファイル:Nereis_diversicolor_1.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ゴカイ]]、[[ファイル:Echiura_in_Korea1.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ユムシ]]、[[ファイル:Golfingia.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ホシムシ]] |
|||
|2={{clade |
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|1=[[箒虫動物]]門 {{sname||Phoronida}} |
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|2=[[外肛動物|苔虫動物]]門 {{sname||Bryozoa}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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|label2=[[後口動物]]|2= |
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}}}} |
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|label1=[[水腔動物]](歩帯動物とも)|1= |
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}} |
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{{clade |
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|label1=[[棘皮動物]]門|1=[[ファイル:Certonardoa_semiregularis_ja01.jpg|代替文=wasp|70x70ピクセル]] [[ヒトデ]]、[[ファイル:Sea_cucumber.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ナマコ]]、[[ファイル:Echinometra_mathaei_MHNT_Philippines.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ウニ]] |
|||
=== 前左右相称動物 === |
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|label2=[[半索動物]]門|2=[[ファイル:Eichelwurm.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] ギボシムシ、フサカツギ |
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{{cladogram |
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}} |
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|title= |
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|label2=[[脊索動物]]門|2=[[ファイル:Branchiostoma_lanceolatum.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[頭索動物|ナメクジウオ]]、[[ファイル:Symplegma_rubra.jpg|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[ホヤ]]、[[ファイル:Koe_zijaanzicht_2.JPG|代替文=wasp|80x80ピクセル]] [[脊椎動物]] |
|||
|align= right |
|||
|caption=海綿動物を最も基部とする分子系統樹の例<ref name="laumer"/> |
|||
|cladogram= |
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{{clade| style=width:30em;font-size:100%;line-height:100% |
|||
|label1=動物界 |
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|1=海綿動物 |
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|1=有櫛動物 |
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|label2= |
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|2={{clade |
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|1={{clade |
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|1=刺胞動物 |
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|2=平板動物 |
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}} |
}} |
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|2=左右相称動物 |
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}} |
}} |
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|label2=[[珍無腸動物]]門{{refn|group="注釈"|かつて扁形動物門に分類されていた[[珍渦虫]]と[[無腸動物]]を新たな門として立てたもの。2016年の2つの分子系統解析は珍無腸動物門は左右相称動物ではあるものの、既知の3つの左右相称動物(新口動物、旧口動物)のいずれにも属さず、これら3つの姉妹群となることを支持した<ref>{{Cite journal|last=Rouse|first=Greg W.|last2=Wilson|first2=Nerida G.|last3=Carvajal|first3=Jose I.|last4=Vrijenhoek|first4=Robert C.|date=2016-02|title=New deep-sea species of Xenoturbella and the position of Xenacoelomorpha|url=http://www.nature.com/articles/nature16545|journal=Nature|volume=530|issue=7588|pages=94–97|language=En|doi=10.1038/nature16545|issn=0028-0836}}</ref><ref name=":Cannon2016">{{Cite journal|last=Cannon|first=Johanna Taylor|last2=Vellutini|first2=Bruno Cossermelli|last3=Smith|first3=Julian|last4=Ronquist|first4=Fredrik|last5=Jondelius|first5=Ulf|last6=Hejnol|first6=Andreas|date=2016-02|title=Xenacoelomorpha is the sister group to Nephrozoa|url=http://www.nature.com/articles/nature16520|journal=Nature|volume=530|issue=7588|pages=89–93|language=En|doi=10.1038/nature16520|issn=0028-0836}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/530/7588/nature16520/%E7%8F%8D%E7%84%A1%E8%85%B8%E5%8B%95%E7%89%A9%E9%96%80%E3%81%AFNephrozoa%E3%81%AE%E5%A7%89%E5%A6%B9%E7%BE%A4%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B|title=分類学:珍無腸動物門はNephrozoaの姉妹群である|accessdate=2018-07-20|date=2016/2/4|publisher=[[ネイチャー]]}}</ref>}}|2=[[ファイル:Waminoa_on_Plerogyra.jpg|代替文=wasp|50x50ピクセル]][[無腸動物]]、[[ファイル:Xenoturbella_japonica.jpg|代替文=wasp|50x50ピクセル]][[珍渦虫]] |
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}} |
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}} |
}} |
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}} }} |
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{{cladogram |
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|title= |
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|align= right |
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|caption=有櫛動物を最も基部とする分子系統樹の例<ref name="laumer"/> |
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|cladogram= |
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{{clade| style=width:30em;font-size:100%;line-height:100% |
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|label1=動物界 |
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|1={{clade |
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|1=有櫛動物 |
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|label2= |
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|2={{clade |
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|1=海綿動物 |
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|label2= |
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|2={{clade |
|||
|1=平板動物 |
|||
|2={{clade |
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|1=刺胞動物 |
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|2=左右相称動物 |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} }} |
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海綿動物門、平板動物門、刺胞動物門、有櫛動物門の4つは左右相称動物に含まれない動物門で、体の左右相称性がなく、これらをまとめて便宜的に「前左右相称動物」と呼ぶこともある{{Sfn|藤田|2010|p=114}}。分子系統解析から、このうち[[海綿動物]]か[[有櫛動物]]の何れかが後生動物で最も系統の基部に位置すると考えられている<ref name="Kakui"/><ref name="laumer"/>。しかし、海綿動物が系統の最も基部に位置するか<ref name="laumer"/><ref name="Pisani2015">{{cite journal|last=Pisani|first=Davide|last2=Pett|first2=Walker|last3=Dohrmann|first3=Martin|last4=Feuda|first4=Roberto|last5=Rota-Stabelli|first5=Omar|last6=Philippe|first6=Hervé|last7=Lartillot|first7=Nicolas|last8=Wörheide|first8=Gert|date=15 December 2015|title=Genomic data do not support comb jellies as the sister group to all other animals|url=http://www.pnas.org/content/112/50/15402|journal=Proceedings of the National Academy of Sciences|volume=112|issue=50|pages=15402–15407|doi=10.1073/pnas.1518127112|pmid=26621703|pmc=4687580}}</ref><ref name="Simion2017">{{cite journal|last=Simion|first=Paul|last2=Philippe|first2=Hervé|last3=Baurain|first3=Denis|last4=Jager|first4=Muriel|last5=Richter|first5=Daniel J.|last6=Franco|first6=Arnaud Di|last7=Roure|first7=Béatrice|last8=Satoh|first8=Nori|last9=Quéinnec|first9=Éric|date=3 April 2017|title=A Large and Consistent Phylogenomic Dataset Supports Sponges as the Sister Group to All Other Animals|url=https://doi.org/10.1016/j.cub.2017.02.031|journal=Current Biology|volume=27|issue=7|pages=958–967|doi=10.1016/j.cub.2017.02.031|pmid=28318975}}</ref><ref name="Feuda2017">{{cite journal|last=Feuda|first=Roberto|last2=Dohrmann|first2=Martin|last3=Pett|first3=Walker|last4=Philippe|first4=Hervé|last5=Rota-Stabelli|first5=Omar|last6=Lartillot|first6=Nicolas|last7=Wörheide|first7=Gert|last8=Pisani|first8=Davide |year=2017|title=Improved Modeling of Compositional Heterogeneity Supports Sponges as Sister to All Other Animals|url=http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960982217314537|journal=Current Biology|volume=27|issue=24|pages=3864|doi=10.1016/j.cub.2017.11.008|pmid=29199080}}</ref><ref name="Laumer2018">{{cite journal|last=Laumer|first=Christopher E.|last2=Gruber-Vodicka|first2=Harald|last3=Hadfield|first3=Michael G.|last4=Pearse|first4=Vicki B.|last5=Riesgo|first5=Ana|last6=Marioni|first6=John C.|last7=Giribet|first7=Gonzalo|year=2018|title=Support for a clade of Placozoa and Cnidaria in genes with minimal compositional bias|doi=10.7554/eLife.36278|journal=eLIFE|date=2018|volume=7:e36278|pages=1-19}}</ref>、有櫛動物が系統の最も基部に位置するか<ref name="Dunn"/><ref name="Henjol"/><ref name="Whelan2015">{{cite journal|first1=Nathan V.|last1=Whelan|first2=Kevin M. |last2=Kocot|first3=Leonid L. |last3=Moroz|first4=Kenneth M. |last4=Halanych|title=Error, signal, and the placement of Ctenophora sister to all other animals|journal=PNAS|date=2015|volume=112|issue=18|pages=5773-5778|doi=10.1073/pnas.1503453112}}</ref><ref name="Whelan2017">{{cite journal|last=Whelan|first=Nathan V.|last2=Kocot|first2=Kevin M.|last3=Moroz|first3=Tatiana P.|last4=Mukherjee|first4=Krishanu|last5=Williams|first5=Peter|last6=Paulay|first6=Gustav|last7=Moroz|first7=Leonid L.|last8=Halanych|first8=Kenneth M.|year=2017|title=Ctenophore relationships and their placement as the sister group to all other animals|url=http://www.nature.com/articles/s41559-017-0331-3|journal=Nature Ecology & Evolution|volume=1|issue=11|pages=1737|doi=10.1038/s41559-017-0331-3}}</ref> は分子系統解析においてもデータが分かれている。 |
|||
な |
現在の多様性は単純なものから複雑なものに進化してきたとする考え方のもと、かつては最も単純な平板動物から、細胞の種類がより多い海綿動物、そして神経を持つ刺胞動物、最後に神経系に加え筋系ももつ有櫛動物が進化してきたと考えられた<ref name="Kakui"/><ref name="Giribet"/>。ただし、[[襟鞭毛虫]]との類似から海綿動物のほうがより原始的な姿に近いとする考えもあった<ref name="Giribet"/>。この進化的な仮説は形態に基づく分岐学的解析においても一時は支持された<ref name="Giribet"/>。しかし、分子系統学が導入された初期にはもう平板動物は二次的に退化したより派生的なグループであることが明らかになり、有櫛動物は刺胞動物より系統の基部に位置することが明らかになった<ref name="Giribet"/><ref>{{cite journal|first1=Patricia O. |last1=Wainright|first2=Gregory |last2=Hinkle|first3= Mitchell L. |last3=Sogin|first4=Shawn K. |last4=Stickel|title=Monophyletic Origins of the Metazoa: An Evolutionary Link with Fungi|journal=[[Science]] New Series|volume=260|issue=5106|date=1993|pages=340-342}}</ref>。それだけでなく、有櫛動物はほかのすべての後生動物よりも基部に分岐したとする結果が得られた<ref name="Dunn">{{cite journal|last=Dunn|first=Casey W.|last2=Hejnol|first2=Andreas|last3=Matus|first3=David Q.|last4=Pang|first4=Kevin|last5=Browne|first5=William E.|last6=Smith|first6=Stephen A.|last7=Seaver|first7=Elaine|last8=Rouse|first8=Greg W.|last9=Obst|first9=Matthias|year=2008|title=Broad phylogenomic sampling improves resolution of the animal tree of life|url=http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nature06614|journal=Nature|volume=452|issue=7188|pages=745–749|bibcode=2008Natur.452..745D|doi=10.1038/nature06614|pmid=18322464}}</ref><ref name="Henjol">{{cite journal |last=Henjol|first=Andreas |last2=Matthias|first2=Obst |last3=Stamatakis|first3=Alexandros |last4=Ott|first4=Michael |last5=Rouse|first5=Greg W. |last6=Edgecombe|first6=Gregory D.|last7=Martinez|first7=Pedro|last8=Jaume|first8=Baguñà|last9=Bailly|first9=Xabier ''et al.''|year=2009|title=Assessing the root of bilaterian animals with scalable phylogenomic methods|journal=Proc. R. Soc. B|volume=276|pages=4261-4270|doi=10.1098/rspb.2009.0896}}</ref>。海綿動物は相称性や胚葉がなく体制が単純であるため{{Sfn|藤田|2010|p=114}}、最も初期に分岐した後生動物として直感的に受け入れられやすいのに対し、有櫛動物は放射相称、神経系と筋系をもつため、有櫛動物より後に海綿動物が分岐したと考えると筋系や神経系が有櫛動物と {{sname|Parahoxozoa}}(有櫛動物と海綿動物以外の後生動物)で2回独立に獲得したと考えるか、海綿動物でどちらも1回完全に喪失したと考えなければならないため、大いに議論を呼んだ<ref name="Kakui"/>。系統誤差の影響を軽減することで、再び海綿動物が最も初期に分岐したと考えられる結果が得られている<ref name="laumer"/><ref name="Laumer2018"/>。 |
||
[[海綿動物]] {{sname|Porifera}}は相称性がなく胚葉がないなど最も単純なボディプランを持つ{{Sfn|藤田|2010|p=114}}。海綿動物の細胞は分化するものの、組織を形成することはなく<ref>{{cite book|last=Jessop|first=Nancy Meyer|title=Biosphere; a study of life|year=1970|publisher=Prentice-Hall|page=428}}</ref>、複雑な器官をもたない<ref>{{cite book|last=Sumich|first=James L.|title=Laboratory and Field Investigations in Marine Life|year=2008|publisher=Jones & Bartlett Learning|isbn=978-0-7637-5730-4|page=67}}</ref>。そういったことから海綿動物は[[側生動物]] {{sname||Parazoa}} {{AUY|Sollas|1884}}と呼ばれることもある<ref name="adl2019"/><ref name="sato-11"/>。 |
|||
=== 左右相称動物以外の動物=== |
|||
海綿動物門、平板動物門、刺胞動物門、有櫛動物門の4つは左右相称動物に含まれない動物門である。これらをまとめて便宜的に「前左右相称動物」と呼ぶこともある<ref group="注釈" name="Fujita-zen">[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.113.</ref>。 |
|||
[[刺胞動物]]と[[有櫛動物]]の体は放射相称性を持ち、唯一の腔所である胃腔の開口は口と肛門を兼ねる{{Sfn|藤田|2010|pp=117-120}}。これらの動物門の細胞は組織に分化しているものの、器官を形成していない<ref>{{cite book|last=Safra|first=Jacob E.|title=The New Encyclopædia Britannica, Volume 16|year=2003|publisher=Encyclopædia Britannica|isbn=978-0-85229-961-6|page=523}}</ref>。中胚葉が形成されない二胚葉性の動物であるとされるが、細胞性である間充織を中胚葉とみなし、[[ヒドロ虫綱]]以外の[[刺胞動物]]と全ての[[有櫛動物]]を三胚葉性とみなす事も多い<ref>[[動物#藤田 2010|藤田 2010]], p.122</ref><ref name="nonbilateria">{{cite|author=中野裕昭|chapter=刺胞動物・有櫛動物・平板動物・海綿動物 {{small|―左右相称でない動物たち}}|date=2018|pages=58-59}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。 |
|||
前左右相称動物に属する動物は体の左右相称性(=左右対称性)がない。ここに属する4つの門の間の関係、およびこれら4つの門と左右相称動物との関係は2010年現在、分子系統解析でも定まっていない<ref name="Fujita10-114">[[#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.114.</ref>。 |
|||
刺胞動物は触手に物理的または化学的刺激により毒を含む刺糸を発射する[[刺胞]]と呼ばれる細胞器官を持つ{{Sfn|藤田|2010|pp=117-120}}。漂泳性([[クラゲ|クラゲ型]])と付着性([[ポリプ|ポリプ型]])という生活様式の異なる2つの型を持ち雌雄異体である{{Sfn|藤田|2010|pp=117-120}}。かつては単細胞生物とも考えられていた寄生性の[[ミクソゾア]]は分子系統解析により刺胞動物に内包されている<ref name="nonbilateria"/>。 |
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おそらく動物全体の中で、前左右相称動物である海綿動物が最も祖先的で最初に分化した後生動物であると2017年現在考えられている<ref name="Fujita10-114" /><ref>{{cite book|last1=Bhamrah|first1=H. S.|title=An Introduction to Porifera|year=2003|publisher=Anmol Publications|isbn=978-81-261-0675-2|page=58|last2=Juneja|first2=Kavita}}</ref><ref>{{cite journal|last=Feuda|first=Roberto|last2=Dohrmann|first2=Martin|last3=Pett|first3=Walker|last4=Philippe|first4=Hervé|last5=Rota-Stabelli|first5=Omar|last6=Lartillot|first6=Nicolas|last7=Wörheide|first7=Gert|last8=Pisani|first8=Davide|year=2017|title=Improved Modeling of Compositional Heterogeneity Supports Sponges as Sister to All Other Animals|url=http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960982217314537|journal=Current Biology|volume=27|issue=24|pages=3864|doi=10.1016/j.cub.2017.11.008|pmid=29199080}}</ref><ref>{{cite journal|last=Pisani|first=Davide|last2=Pett|first2=Walker|last3=Dohrmann|first3=Martin|last4=Feuda|first4=Roberto|last5=Rota-Stabelli|first5=Omar|last6=Philippe|first6=Hervé|last7=Lartillot|first7=Nicolas|last8=Wörheide|first8=Gert|date=15 December 2015|title=Genomic data do not support comb jellies as the sister group to all other animals|url=http://www.pnas.org/content/112/50/15402|journal=Proceedings of the National Academy of Sciences|volume=112|issue=50|pages=15402–15407|bibcode=2015PNAS..11215402P|doi=10.1073/pnas.1518127112|pmid=26621703|pmc=4687580}}</ref><ref>{{cite journal|last=Simion|first=Paul|last2=Philippe|first2=Hervé|last3=Baurain|first3=Denis|last4=Jager|first4=Muriel|last5=Richter|first5=Daniel J.|last6=Franco|first6=Arnaud Di|last7=Roure|first7=Béatrice|last8=Satoh|first8=Nori|last9=Quéinnec|first9=Éric|date=3 April 2017|title=A Large and Consistent Phylogenomic Dataset Supports Sponges as the Sister Group to All Other Animals|url=https://doi.org/10.1016/j.cub.2017.02.031|journal=Current Biology|volume=27|issue=7|pages=958–967|doi=10.1016/j.cub.2017.02.031|pmid=28318975}}</ref><ref>{{cite journal|last=Giribet|first=Gonzalo|date=1 October 2016|title=Genomics and the animal tree of life: conflicts and future prospects|url=http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/zsc.12215/abstract|journal=Zoologica Scripta|volume=45|pages=14–21|doi=10.1111/zsc.12215}}</ref><ref>{{cite journal|last=Laumer|first=Christopher E.|last2=Gruber-Vodicka|first2=Harald|last3=Hadfield|first3=Michael G.|last4=Pearse|first4=Vicki B.|last5=Riesgo|first5=Ana|last6=Marioni|first6=John C.|last7=Giribet|first7=Gonzalo|year=2017|title=Placozoans are eumetazoans related to Cnidaria|url=https://www.biorxiv.org/content/early/2017/10/11/200972|journal=BioRxiv|pages=200972|doi=10.1101/200972}}</ref><ref>{{cite journal|last=Eitel|first=Michael|last2=Francis|first2=Warren|last3=Osigus|first3=Hans-Jürgen|last4=Krebs|first4=Stefan|last5=Vargas|first5=Sergio|last6=Blum|first6=Helmut|last7=Williams|first7=Gray Argust|last8=Schierwater|first8=Bernd|last9=Wörheide|first9=Gert|date=2017-10-13|title=A taxogenomics approach uncovers a new genus in the phylum Placozoa|url=https://www.biorxiv.org/content/early/2017/10/13/202119|journal=BioRxiv|pages=202119|doi=10.1101/202119}}</ref> (もう一つの候補は[[有櫛動物]]<ref>{{cite journal|last=Dunn|first=Casey W.|last2=Hejnol|first2=Andreas|last3=Matus|first3=David Q.|last4=Pang|first4=Kevin|last5=Browne|first5=William E.|last6=Smith|first6=Stephen A.|last7=Seaver|first7=Elaine|last8=Rouse|first8=Greg W.|last9=Obst|first9=Matthias|year=2008|title=Broad phylogenomic sampling improves resolution of the animal tree of life|url=http://www.nature.com/doifinder/10.1038/nature06614|journal=Nature|volume=452|issue=7188|pages=745–749|bibcode=2008Natur.452..745D|doi=10.1038/nature06614|pmid=18322464}}</ref><ref>{{cite journal|last=Whelan|first=Nathan V.|last2=Kocot|first2=Kevin M.|last3=Moroz|first3=Tatiana P.|last4=Mukherjee|first4=Krishanu|last5=Williams|first5=Peter|last6=Paulay|first6=Gustav|last7=Moroz|first7=Leonid L.|last8=Halanych|first8=Kenneth M.|year=2017|title=Ctenophore relationships and their placement as the sister group to all other animals|url=http://www.nature.com/articles/s41559-017-0331-3|journal=Nature Ecology & Evolution|volume=1|issue=11|pages=1737|doi=10.1038/s41559-017-0331-3}}</ref><ref>{{cite journal|last=Shen|first=Xing-Xing|last2=Hittinger|first2=Chris Todd|last3=Rokas|first3=Antonis|date=2017-04-10|title=Contentious relationships in phylogenomic studies can be driven by a handful of genes|url=http://www.nature.com/articles/s41559-017-0126|journal=Nature Ecology & Evolution|volume=1|issue=5|pages=0126|doi=10.1038/s41559-017-0126}}</ref><ref>{{cite journal|last=Ryan|first=Joseph F.|last2=Pang|first2=Kevin|last3=Schnitzler|first3=Christine E.|last4=Nguyen|first4=Anh-Dao|last5=Moreland|first5=R. Travis|last6=Simmons|first6=David K.|last7=Koch|first7=Bernard J.|last8=Francis|first8=Warren R.|last9=Havlak|first9=Paul|date=13 December 2013|title=The Genome of the Ctenophore Mnemiopsis leidyi and Its Implications for Cell Type Evolution|url=http://science.sciencemag.org/content/342/6164/1242592|journal=Science|volume=342|issue=6164|pages=1242592|doi=10.1126/science.1242592|pmid=24337300|pmc=3920664}}</ref> )。海綿動物は相称性がなく胚葉がないなど最も単純なボディープランを持つ<ref name="Fujita10-114" />。海綿動物の細胞は化するものの、組織を形成することはなく<ref>{{cite book|last=Jessop|first=Nancy Meyer|title=Biosphere; a study of life|year=1970|publisher=Prentice-Hall|page=428}}</ref>、複雑な器官をもたない<ref>{{cite book|last=Sumich|first=James L.|title=Laboratory and Field Investigations in Marine Life|year=2008|publisher=Jones & Bartlett Learning|isbn=978-0-7637-5730-4|page=67}}</ref>。 |
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それに対し有櫛動物は1個の細胞が変形してできた膠胞を持ち、中胚葉性の真の筋肉細胞を持つほか、全てクラゲ型であり、二放射相称で雌雄同体である{{Sfn|藤田|2010|pp=120-121}}<ref name="kubota"/>。 |
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[[刺胞動物]]と[[有櫛動物]]の体は放射相称性を持ち、唯一の腔所である胃腔の開口は口と肛門を兼ねる<ref name="Fujita10-117-120" />。これらの動物門の細胞は組織に分化しているものの、器官を形成していない<ref>{{cite book|last=Safra|first=Jacob E.|title=The New Encyclopædia Britannica, Volume 16|year=2003|publisher=Encyclopædia Britannica|isbn=978-0-85229-961-6|page=523}}</ref>。中胚葉が形成されない二胚葉性の動物であるとされるが、細胞性である間充織を中胚葉とみなし、[[ヒドロ虫綱]]以外の[[刺胞動物]]と全ての[[有櫛動物]]を三胚葉性とみなす事も多い<ref>[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]] p122</ref>。刺胞動物は手に[[刺胞]]があり、物理的または化学的刺激により毒を含む刺糸を発射する<ref name="Fujita10-117-120">[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]], pp.117-120.</ref>。雌雄異体<ref name="Fujita10-117-120" />。単体と[[群体]]がある<ref name="Fujita10-117-120" />。漂泳性([[クラゲ|クラゲ型]])と付着性([[ポリプ|ポリプ型]])という生活様式の異なる2つの型を持ち<ref name="Fujita10-117-120" />、両者は上下を逆さにした形<ref name="Fujita10-117-120" />。それに対し有櫛動物は全てクラゲ型<ref name="Fujita10-120-121">[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]], pp.120-121.</ref>。二放射相称で透明な脆弱な体を持つ<ref name="Fujita10-120-121" />。雌雄同体<ref name="Fujita10-120-121" />。 |
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[[平板動物]]は神経細胞も筋肉細胞も持たず、体細胞は6種類しかなく器官や前後左右軸をもたない、自由生活を行う動物として最も単純な体制を持つ<ref name="nonbilateria"/>。しかし2008年にセンモウヒラムシ {{snamei|Trichoplax adherens}} のゲノム解読がなされ、[[シグナル伝達]]系、[[神経]]や[[シナプス]]、[[細胞結合]]などに関する多くの遺伝子の存在が報告された<ref name="nonbilateria"/>。 |
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[[平板動物]]は1 mm程度の薄い板上の多細胞動物で、センモウヒラムシ1種のみとされるが、様々な地域から見つかるため複数種である可能性も高い<ref>[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.122.</ref>。 |
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=== 左右相称動物 === |
=== 左右相称動物 === |
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{{see also|左右相称動物}} |
{{see also|左右相称動物}} |
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4つの門を除いた全ての動物門が左右相称動物である。左右相称動物は完全な三胚葉性で |
4つの門を除いた全ての動物門が左右相称動物である。左右相称動物は完全な三胚葉性で{{Sfn|藤田|2010|pp=122-132}}、体が[[左右相称]]である{{Sfn|藤田|2010|pp=122-132}}。外見上は左右対称であるが、内部の臓器は限られた空間の中に各臓器を互いの連結を保ちながら機能的に配置するために、位置や形が[[左右非対称]]となっている<ref name="hamada"/>。 |
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左右相称動物は[[口]]と[[肛門]]、およびこれらをつなぐ消化管をもち、体内に[[体腔]]ないし[[偽体腔]](線形動物、輪形動物など)を持つ。左右相称動物のボディプランは、前方(運動のとき体の進む方向)と後方の区別、腹側と背側の区別がある傾向があり、したがって左側と右側の区別も可能である<ref name="Minelli20092">{{cite book|author=Minelli, Alessandro|title=Perspectives in Animal Phylogeny and Evolution|url=https://books.google.com/books?id=jIASDAAAQBAJ&pg=PA53|year=2009|publisher=Oxford University Press|isbn=978-0-19-856620-5|page=53}}</ref><ref name="Brusca20162">{{Cite book|last=Brusca|first=Richard C.|title=Introduction to the Bilateria and the Phylum Xenacoelomorpha {{!}} Triploblasty and Bilateral Symmetry Provide New Avenues for Animal Radiation|url=http://www.sinauer.com/media/wysiwyg/samples/Brusca3e_Chapter_9.pdf|date=2016|publisher=Sinauer Associates|isbn=978-1605353753|pages=345–372|work=Invertebrates}}</ref>。運動のとき体の前方へと進むので、進行方向にあるものを識別する[[感覚器]]や餌を食べる口が前方に集まる傾向にある([[頭化]]という)。多くの左右相称動物は[[環状筋]]と[[縦走筋]]のペアを持つので<ref name="Brusca20162" />、ミミズのような体が柔らかい動物では |
左右相称動物は[[口]]と[[肛門]]、およびこれらをつなぐ消化管をもち、体内に[[体腔]]ないし[[偽体腔]](線形動物、輪形動物など)を持つ。左右相称動物のボディプランは、前方(運動のとき体の進む方向)と後方の区別、腹側と背側の区別がある傾向があり、したがって左側と右側の区別も可能である<ref name="Minelli20092">{{cite book|author=Minelli, Alessandro|title=Perspectives in Animal Phylogeny and Evolution|url=https://books.google.com/books?id=jIASDAAAQBAJ&pg=PA53|year=2009|publisher=Oxford University Press|isbn=978-0-19-856620-5|page=53}}</ref><ref name="Brusca20162">{{Cite book|last=Brusca|first=Richard C.|title=Introduction to the Bilateria and the Phylum Xenacoelomorpha {{!}} Triploblasty and Bilateral Symmetry Provide New Avenues for Animal Radiation|url=http://www.sinauer.com/media/wysiwyg/samples/Brusca3e_Chapter_9.pdf|date=2016|publisher=Sinauer Associates|isbn=978-1605353753|pages=345–372|work=Invertebrates}}</ref>。運動のとき体の前方へと進むので、進行方向にあるものを識別する[[感覚器]]や餌を食べる口が前方に集まる傾向にある([[頭化]]という)。多くの左右相称動物は[[環状筋]]と[[縦走筋]]のペアを持つので<ref name="Brusca20162" />、ミミズのような体が柔らかい動物では[[水力学的骨格]] {{lang|en|[[:en:Hydrostatic skeleton|Hydrostatic skeleton]]}}の[[蠕動]]により動く事ができる<ref name="Quillin2">{{cite journal|author=Quillin, K. J.|date=May 1998|title=Ontogenetic scaling of hydrostatic skeletons: geometric, static stress and dynamic stress scaling of the earthworm lumbricus terrestris|url=http://jeb.biologists.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=9600869|journal=The Journal of Experimental Biology|volume=201|issue=12|pages=1871–83|pmid=9600869}}</ref>。また多くの左右相称動物には[[繊毛]]で泳ぐことができる[[幼生]]の時期がある。 |
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以上の特徴は例外も多い。例えば[[棘皮動物]]の成体は(幼生とは違い)放射相称であるし、[[寄生虫]]の中には極端に単純化された体の構造をもつものも多い<ref name="Minelli20092" /><ref name="Brusca20162" />。 |
以上の特徴は例外も多い。例えば[[棘皮動物]]の成体は(幼生とは違い)放射相称であるし、[[寄生虫]]の中には極端に単純化された体の構造をもつものも多い<ref name="Minelli20092" /><ref name="Brusca20162" />。 |
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=== 珍無腸動物 === |
=== 珍無腸動物 === |
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{{See also|珍無腸動物}} |
{{See also|珍無腸動物}} |
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[[珍無腸動物]]門(珍無腸形動物門) {{sname|Xenacoelomorpha}} は[[珍渦虫]]と[[無腸動物]]からなる左右相称動物であり、その単系統性は分子系統解析から強く支持されている<ref name="Kakui"/><ref name="Xen">{{cite|author=中野裕昭|chapter=珍無腸形動物 {{small|―左右相称動物の祖先に迫る?}}|date=2018|pages=86-87}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。その系統的位置に関しては、左右相称動物の最も初期に分岐したとする説<ref name="Cannon"/><ref name="Rouse"/> と後口動物の一員であるとする説<ref name="Philippe2011"/><ref name="Philippe2019"/><ref name="Giribet"/> がある。前者の考えを支持する場合、珍無腸動物以外の全ての門を含む左右相称動物は[[有腎動物]] {{sname||Nephrozoa}}と呼ばれる<ref name="Kakui"/><ref name="Cannon"/><ref name="Henjol"/>。 |
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[[珍渦虫]]と[[無腸動物]]からなる[[珍無腸動物]]門はもっとも祖先的な左右相称動物であり<ref name="Philippe20112">{{cite journal|last1=Philippe|first1=H.|last2=Brinkmann|first2=H.|last3=Copley|first3=R. R.|last4=Moroz|first4=L. L.|last5=Nakano|first5=H.|last6=Poustka|first6=A. J.|last7=Wallberg|first7=A.|last8=Peterson|first8=K. J.|last9=Telford|first9=M. J.|year=2011|title=Acoelomorph flatworms are deuterostomes related to ''Xenoturbella''|journal=Nature|volume=470|issue=7333|pages=255–258|bibcode=2011Natur.470..255P|doi=10.1038/nature09676|pmid=21307940|pmc=4025995}}</ref><ref name="Perseke20072">{{cite journal|last1=Perseke|first1=M.|last2=Hankeln|first2=T.|last3=Weich|first3=B.|last4=Fritzsch|first4=G.|last5=Stadler|first5=P.F.|last6=Israelsson|first6=O.|last7=Bernhard|first7=D.|last8=Schlegel|first8=M.|date=August 2007|title=The mitochondrial DNA of Xenoturbella bocki: genomic architecture and phylogenetic analysis|url=http://www.bioinf.uni-leipzig.de/Publications/PREPRINTS/07-009.pdf|journal=Theory Biosci|volume=126|issue=1|pages=35–42|doi=10.1007/s12064-007-0007-7|pmid=18087755}}</ref><ref name="Cannon 20162">{{cite journal|last=Cannon|first=Johanna T.|last2=Vellutini|first2=Bruno C.|last3=Smith III|first3=Julian.|last4=Ronquist|first4=Frederik|last5=Jondelius|first5=Ulf|last6=Hejnol|first6=Andreas|date=3 February 2016|title=Xenacoelomorpha is the sister group to Nephrozoa|url=http://www.nature.com/nature/journal/v530/n7588/full/nature16520.html|journal=Nature|volume=530|issue=7588|pages=89–93|publisher=|bibcode=2016Natur.530...89C|doi=10.1038/nature16520|pmid=26842059|access-date=3 February 2016}}</ref>、珍無腸動物以外の左右相称動物からなる有腎動物(ネフロゾア) {{sname||Nephrozoa}}<ref name="Narakyo"/>と区別される。 |
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[[珍渦虫]] {{Snamei||Xenoturbella}} は[[1878年]]に発見され、[[1949年]]に報告されたが、その分類は長らく謎で、[[渦虫]]の珍しい仲間だと思われていた<ref>{{cite journal|last=Westblad|first=E.|date=1949|title=''Xenoturbella bocki'' n. g., n. sp., a peculiar, primitive Turbellarian type|journal=Arkiv för Zoologi|volume=1|pages=3–29}}</ref>。しかし2006年以降、分子系統解析により、後口動物に入ることが示唆され、独立した[[珍渦虫動物]]門 {{sname|Xenoturbellida}} が設立された<ref>{{cite journal|last1=Bourlat|first1=S. ''et al.''|title=Deuterostome phylogeny reveals monophyletic chordates and the new phylum Xenoturbellida|journal=Nature|volume=444|pages=85-88|date=2006}}</ref><ref name="Perseke20072">{{cite journal |last1=Perseke|first1=M. |last2=Hankeln|first2=T. |last3=Weich|first3=B. |last4=Fritzsch|first4=G. |last5=Stadler|first5=P.F. |last6=Israelsson|first6=O. |last7=Bernhard|first7=D. |last8=Schlegel|first8=M.|date=August 2007|title=The mitochondrial DNA of Xenoturbella bocki: genomic architecture and phylogenetic analysis|url=http://www.bioinf.uni-leipzig.de/Publications/PREPRINTS/07-009.pdf|journal=Theory Biosci|volume=126|issue=1|pages=35–42|doi=10.1007/s12064-007-0007-7|pmid=18087755}}</ref>。 |
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[[珍無腸動物]]の単系統性は分子系統解析から強く支持されている<ref name=":6">[[動物#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8B%95%E7%89%A9%E5%AD%A6%E4%BC%9A2018|日本動物学会2018]] pp.55-56, 86-87.</ref>。 |
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[[無腸動物]] {{sname|Acoelomorpha}}は無腸類と皮中神経類からなり、それぞれ[[扁形動物門]]の無腸目および皮中神経類に分類されていたが、1999年の分子系統解析によって初期に分岐した左右相称動物であることが示唆された<ref name="Xen"/>。Jaume Baguñà と Marta Riutort によって[[左右相称動物]]の新しい門として分離された<ref>{{cite journal|last1=Baguñà|first1=J|last2=Riutort|first2=M|date=2004|title=Molecular phylogeny of the Platyhelminthes|journal=Can J Zool|volume=82|pages=168-193}}</ref>。 |
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珍無腸動物門は当初新口動物に分類されたが<ref>{{Cite journal|last=Philippe|first=Hervé|last2=Brinkmann|first2=Henner|last3=Copley|first3=Richard R.|last4=Moroz|first4=Leonid L.|last5=Nakano|first5=Hiroaki|last6=Poustka|first6=Albert J.|last7=Wallberg|first7=Andreas|last8=Peterson|first8=Kevin J.|last9=Telford|first9=Maximilian J.|date=2011-02|title=Acoelomorph flatworms are deuterostomes related to Xenoturbella|url=http://www.nature.com/articles/nature09676|journal=Nature|volume=470|issue=7333|pages=255–258|language=En|doi=10.1038/nature09676|issn=0028-0836|pmid=21307940|pmc=PMC4025995}}</ref><ref name=":馬渡2013-27-29">[[#馬渡2013|馬渡 (2013)]], p27-p29</ref>、その後の研究により当時知られていた左右相称動物のいずれにも属さず、これら3つの姉妹群となることを支持したため<ref>{{Cite journal|last=Rouse|first=Greg W.|last2=Wilson|first2=Nerida G.|last3=Carvajal|first3=Jose I.|last4=Vrijenhoek|first4=Robert C.|date=2016-02|title=New deep-sea species of Xenoturbella and the position of Xenacoelomorpha|url=http://www.nature.com/articles/nature16545|journal=Nature|volume=530|issue=7588|pages=94–97|language=En|doi=10.1038/nature16545|issn=0028-0836}}</ref><ref name=":Cannon20162">{{Cite journal|last=Cannon|first=Johanna Taylor|last2=Vellutini|first2=Bruno Cossermelli|last3=Smith|first3=Julian|last4=Ronquist|first4=Fredrik|last5=Jondelius|first5=Ulf|last6=Hejnol|first6=Andreas|date=2016-02|title=Xenacoelomorpha is the sister group to Nephrozoa|url=http://www.nature.com/articles/nature16520|journal=Nature|volume=530|issue=7588|pages=89–93|language=En|doi=10.1038/nature16520|issn=0028-0836}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/530/7588/nature16520/%E7%8F%8D%E7%84%A1%E8%85%B8%E5%8B%95%E7%89%A9%E9%96%80%E3%81%AFNephrozoa%E3%81%AE%E5%A7%89%E5%A6%B9%E7%BE%A4%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B|title=分類学:珍無腸動物門はNephrozoaの姉妹群である|accessdate=2018-07-20|date=2016/2/4|publisher=[[ネイチャー]]}}</ref>、現在の位置に落ち着いた。2018年現在珍無腸動物門の位置に関する議論は完全には収まっていないものの<ref name=":6" />、落ち着きつつある状況にある<ref name=":6" />。 |
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2011年、Philippe や[[中野裕昭]]らは分子系統解析により珍渦虫動物と無腸動物をともに珍無腸動物門という動物門を構成することを提唱した<ref name="Philippe2011">{{cite journal|last=Philippe|first=H.|last2=Brinkmann|first2=H.|last3=Copley|first3=R. R.|last4=Moroz|first4=L. L.|last5=Nakano|first5=H.|last6=Poustka|first6=A. J.|last7=Wallberg|first7=A.|last8=Peterson|first8=K. J.|last9=Telford|first9=M. J.|date=2011|title=Acoelomorph flatworms are deuterostomes related to ''Xenoturbella''|journal=[[ネイチャー|Nature]]|volume=470|issue=7333|pages=255–258|doi=10.1038/nature09676|pmid=21307940|pmc=4025995}}</ref>。そして、[[チンウズムシ]]の自然産卵による卵と胚の観察結果を報告し、摂食性の幼生期を経ない直接発生型であるなどの共通点を指摘した<ref name="Nakano2013">{{cite journal|last1=Nakano|first1=H.|last2=Lundin|first2=K.|last3=Bourlat|first3=S.J.|last4=Telford|first4=M.J.|last6=Funch|first6=P.|last7=Nyengaard|first7=J.R.|last8=Obst|first8=M.|last9=Thorndyke|first9=M.C.|date=2013|title=''Xenoturbella bocki'' exhibits direct development with similarities to Acoelomorpha|journal=[[ネイチャー|Nature]] Communications|volume=4|issue=1|pages=1537|doi=10.1038/ncomms2556}}</ref>。珍無腸動物門は設立当初新口動物に分類されたが<ref name="Xen"/><ref name="Philippe2019"/><ref name=":馬渡2013-27-29">[[#馬渡 2013|馬渡 2013]], pp.27-29</ref>、その後の研究により当時知られていた左右相称動物のサブクレード、後口動物・脱皮動物・冠輪動物(螺旋動物)のいずれにも属さず、これら3つ(有腎動物)の姉妹群となる最も初期に分岐した左右相称動物とされた<ref name="Cannon">{{cite journal|last=Cannon|first=Johanna T.|last2=Vellutini|first2=Bruno C.|last3=Smith III|first3=Julian.|last4=Ronquist|first4=Frederik|last5=Jondelius|first5=Ulf|last6=Hejnol|first6=Andreas|date=3 February 2016|title=Xenacoelomorpha is the sister group to Nephrozoa|url=http://www.nature.com/nature/journal/v530/n7588/full/nature16520.html|journal=Nature|volume=530|issue=7588|pages=89–93|publisher=|bibcode=2016Natur.530...89C|doi=10.1038/nature16520|pmid=26842059|access-date=3 February 2016}}</ref><ref name="Rouse">{{Cite journal|last=Rouse|first=Greg W.|last2=Wilson|first2=Nerida G.|last3=Carvajal|first3=Jose I.|last4=Vrijenhoek|first4=Robert C.|date=2016-02|title=New deep-sea species of Xenoturbella and the position of Xenacoelomorpha|url=http://www.nature.com/articles/nature16545|journal=Nature|volume=530|issue=7588|pages=94–97|language=En|doi=10.1038/nature16545|issn=0028-0836}}</ref>。しかし2019年に再び長枝誘因などの系統誤差の影響を軽減することで、珍無腸動物は後口動物の[[水腔動物]]との姉妹群であることが支持された<ref name="Philippe2019">{{cite journal|last=Philippe|first=H.|first2=Albert J.|last2=Poustka|first3=Marta|last3=Chiodin|first4=Katharina|last4=J.Hoff|first5=Christophe|last5=Dessimoz|first6=Bartlomiej|last6=Tomiczek|first7=Philipp H.|last7=Schiffer|first8=Steven|last8=Müller|last9=Domman |first9=Daryl ''et al.''|title=Mitigating Anticipated Effects of Systematic Errors Supports Sister-Group Relationship between Xenacoelomorpha and Ambulacraria|journal=Current Biology|volume=29|issue=11|date=2019|pages=1818-1826|doi=10.1016/j.cub.2019.04.009}}</ref><ref>{{cite press|author=筑波大学|title=珍渦虫はもともと単純か複雑か ―まだ続く珍無腸動物門の系統樹上の放浪―|url=https://www.tsukuba.ac.jp/journal/images/pdf/190527nakano-2.pdf|date=2019-05-27|accessdate=2021-08-20}}</ref>。 |
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=== 毛顎動物 === |
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{{see also|毛顎動物}} |
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[[毛顎動物]]は[[ヤムシ]]と総称される動物で、かつては成体の口が原口に由来しないという発生様式から[[後口動物]]とされてきた<ref>{{cite |author=後藤太一郎|chapter=31. 毛顎動物門 Phylum CHAETOGNATHA|date=2000|pages=235-237}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref><ref name="encyclo-chaeto">{{cite|author=後藤太一郎|chapter=毛顎動物 {{small|―謎に包まれた系統的位置}}|date=2018|pages=84-85}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。しかし、主な中枢神経が腹側にあることや顎毛(餌の捕獲器官)に[[キチン質]]をもつことなど、[[前口動物]]の特徴も持つことは古くから知られてきた<ref name="encyclo-chaeto"/>。分子系統学による解析が始まってから、後口動物ではないことが明らかになった(この頃の解析では後口動物・前口動物のさらに基部の系統に位置した)<ref>{{cite journal|first1=Maximilian J.|last1=Telford|first2=P. W. H. |last2=Holland|date=1993|title=The Phylogenetic Affinities of the Chaetognaths: A Molecular Analysis|journal=Mol. Biol. Evol.|volume=10|issue=3|pages=660-676}}</ref><ref>{{cite journal|last1=Wada|first1=Hiroshi|author-link1=和田洋|last2=Satoh|first2=Noriyuki|author-link2=佐藤矩行|titl=Details of the evolutionary history from invertebrates to vertebrates, as deduced from the sequences of 18S rDNA|journal=Proc. Natl. Acad. Sci. |volume=91|issue=5|pages=1801-1804|doi=10.1073/pnas.91.5.1801}}</ref>。 |
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[[18S rRNA]]、[[ミトコンドリアDNA]]、[[Hox遺伝子]]群および[[発現配列タグ|ESTデータ]]を用いた近年の分子系統解析では、[[前口動物]]であることが明らかになっている<ref name="encyclo-chaeto"/>。例えば、[[#Laumer et al. 2019|Laumer ''et al.'' (2019)]]では、前口動物の[[螺旋動物]]のうち[[担顎動物]]に近縁であるとされる<ref name="laumer">[[#Laumer et al. 2019|Laumer ''et al.'' 2019]], pp.1-10</ref>。これは、発生過程における初期卵割のパターンが[[螺旋卵割]]であることや、頭部の背側にある繊毛環が[[トロコフォア幼生]]の口後繊毛環と共通していることからも支持される<ref name="encyclo-chaeto"/>。しかしその中でもどの系統的位置に来るかはまだ異説が多い<ref name="encyclo-chaeto"/>。この理由として、[[重複遺伝子]]を多く保有することから[[ゲノム重複]]が起こった可能性があることや、集団内での[[遺伝的多型]]が多いことから[[突然変異]]率が高い可能性があることが指摘されている<ref name="encyclo-chaeto"/>。例えば、[[長枝誘引]]による悪影響として脱皮動物中の節足動物の枝の中に"mongrel assemblage"という集合ができてしまった結果がある<ref name="mallatt">{{cite journal|first1=Jon|last1=Mallatt|first2=Catherine Waggoner|Last2=Craig|first3=Matthew J. |last3=Yoder|title=Nearly complete rRNA genes assembled from across the metazoan animals: Effects of more taxa, a structure-based alignment, and paired-sites evolutionary models on phylogeny reconstruction|journal=Molecular Phylogenetics and Evolution |volume=55 |date=2010|pages=1-17|doi=10.1016/j.ympev.2009.09.028}}</ref>。この中には[[多足類]]の[[コムカデ]]類と[[エダヒゲムシ]]類だけでなく、脱皮動物の中でも[[有爪動物]]の {{snamei||Hanseniella}} と {{snamei||Allopuropus}}、[[冠輪動物]]である軟体動物[[頭足類]]の[[コウモリダコ]] {{snamei||Vampyroteuthis}} および[[オウムガイ]] {{snamei||Nautilus}}、そして[[毛顎動物]]の {{snamei||Sagitta}} が含まれていた<ref name="mallatt"/>。また、この集合は[[GC含量|CG-rich]]([[グアニン]]および[[シトシン]]が多い)であった<ref name="mallatt"/>。このように、毛顎動物の系統関係を特定するのは困難である<ref name="encyclo-chaeto"/>。 |
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=== 脱皮動物 === |
=== 脱皮動物 === |
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{{see also|脱皮動物}} |
{{see also|脱皮動物}} |
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[[ファイル:Cercopoidea_moulting.jpg|代替文=|サムネイル|307x307ピクセル|[[アワフキムシ]]の脱皮]] |
[[ファイル:Cercopoidea_moulting.jpg|代替文=|サムネイル|307x307ピクセル|[[アワフキムシ]]の脱皮]] |
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体を覆う[[クチクラ]]の脱皮を行うという共通の特徴を持ち |
体を覆う[[クチクラ]]の脱皮を行うという共通の特徴を持ち{{Sfn|藤田|2010|pp=122-123}}{{Sfn|藤田|2010|p=108}}<ref>{{cite book|last=Dawkins|first=Richard|authorlink=Richard Dawkins|title=The Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Evolution|year=2005|publisher=Houghton Mifflin Harcourt|isbn=978-0-618-61916-0|page=381}}</ref>、[[糸形動物]](広義の線形動物)、[[有棘動物]]、[[汎節足動物]]の3つに分類がなされている{{Sfn|藤田|2010|pp=122-123}}。 |
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広義の線形動物 {{sname||Nematozoa}} <ref name="taxonomy"/>または |
[[糸形動物]]<ref name="Kakui"/>{{small|(広義の線形動物<ref name="taxonomy">[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.150</ref>)}} {{sname||Nematozoa}}<ref name="Kakui"/><ref name="taxonomy"/> {{small|または}} {{sname|Nematoida}}<ref name="Kakui"/> は[[カイチュウ]]、[[ギョウチュウ]]、[[アニサキス]]などからなる[[線形動物門]]と[[ハリガネムシ|ハリガネムシ目]]と[[遊線虫目]](オヨギハリガネムシ類)からなる[[類線形動物門]]により構成される<ref name="shimada">{{cite|author=嶋田大輔|chapter=線形動物・類線形動物 {{small|―昆虫に匹敵する多様性の持ち主?}}|date=2018|pages=72-73}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。例に挙げられた線形動物は[[寄生生物|寄生性]]であるが、自由生活を送る線形動物も存在し、一部の自由生活種のみ[[眼点]]を持つ<ref name="shimada"/><ref>[[#藤田 2010|藤田 2010]], pp.150-152</ref>。糸形動物は硬いクチクラで覆われ、細い体で、循環器や環状筋を欠き、偽体腔で螺旋卵割を行い、鞭毛のない精子を持つなど、多くの形質を共有する<ref name="shimada"/>。線形動物は種数や個体数が非常に多いと考えられており、少なくとも数万の未知種を有すると考えられている<ref name="shimada"/>。線形動物は左右相称であると同時に左右および背側の三放射相称でもある<ref name="shimada"/>。 |
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[[有棘動物]] {{sname||Scalidophora}}(頭吻動物 {{Sname||Cephalorhyncha}})は[[動吻動物]]門、[[鰓曳動物]]門、[[胴甲動物]]門をまとめたグループで、冠棘という主に頭部に数列ある環状に並ぶ棘を持つという形質を共有することから名付けられた<ref name=":2">[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.153</ref><ref name="yamasaki">{{cite|author=山崎博史|chapter=鰓曳動物・胴甲動物・動吻動吻 {{small|―棘に覆われた頭部をもつ動物たち}}|date=2018|pages=74-75}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。冠棘に加え、花状器官という感覚器を持つという形質、頭部が反転可能である形質、偽体腔を持つという形質も共有する<ref name=":2" /><ref>{{cite book|author1=Miller, Stephen A.|title=Zoology|url=https://books.google.com/books?id=BWZFAQAAIAAJ|year=2006|publisher=McGraw-Hill Higher Education|page=173|author2=Harley, John P.}}</ref>。しかし、分子系統解析による検証は十分になされていない<ref name="Kakui"/>。胴甲動物は鰓曳動物のロリケイト幼生と形態が類似していることから近縁であると考えられてきたが、近年の分子系統解析では他の脱皮動物に近縁である可能性が示されている<ref name="yamasaki"/>。 |
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なお[[毛顎動物]]の系統は2010年現在不明だが、節足動物との近縁性が示唆される成果もある<ref name="Fujita10-122-13" />。 |
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====汎節足動物==== |
====汎節足動物==== |
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{{see also|汎節足動物}} |
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[[汎節足動物]]は、動物界最大の門である[[節足動物]]を含む系統群である。汎節足動物は[[体節]]を持つ事を特徴とする<ref name=":3">[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]], pp.155-156</ref>。[[環形動物]]も体節を持つため、歴史的には環形動物も節足動物の近縁であると考えられていたが、分子系統解析により、近縁性が否定されたため、環形動物は汎節足動物ではなく[[冠輪動物]]に分類されている<ref name=":3" />。 |
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[[汎節足動物]] {{sname||Panarthropoda}}は、動物界最大の門である[[節足動物]]を含む系統群である。汎節足動物は[[体節]]を持つ事を特徴とする<ref name=":3">[[#藤田 2010|藤田 2010]], pp.155-156</ref>。[[環形動物]]も体節を持つため、歴史的には環形動物も節足動物に近縁(体節動物)であると考えられていたが、分子系統解析により、近縁性が否定されたため([[収斂進化|収斂]])、環形動物は汎節足動物ではなく[[冠輪動物]]に分類されている<ref name=":3" />。 |
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節足動物の系統樹は以下のようになっている<ref>系統 |
節足動物の系統樹は以下のようになっている<ref name="arthropods">{{cite journal|author=大塚攻・田中隼人|title=顎脚類(甲殻類)の分類と系統に関する研究の最近の動向|journal=タクサ|date=2020|volume=48|pages=49-62}}</ref><ref>{{cite|author=島野智之|chapter=節足動物(多足類・鋏角類) {{small|―いまだ系統が解明されていない2つの大きな分類群}}|date=2018|pages=78-79}} in [[#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>: |
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{{clade |
{{clade |
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|label1=節足動物 |
|label1=節足動物 |
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|sublabel1={{sname||Arthropoda}} |
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{{clade |
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|1={{clade |
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|1=[[三葉虫|三葉虫類]]†(?) |
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|1=†[[三葉虫|三葉虫類]](?) |
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|2=[[鋏角亜門|鋏角類]]:[[ウミグモ]]類、[[カブトガニ類]]、[[クモ綱|クモガタ類]]など |
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|label2=[[鋏角亜門|鋏角類]] |
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|sublabel2={{sname||Chelicerata}} |
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{{clade |
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|2={{clade |
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|1=[[多足亜門|多足類]]:[[ムカデ]]類、[[ヤスデ]]類など |
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|1= [[ウミグモ]]類 {{sname||Pycnogonida}} |
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|label2=[[汎甲殻類]]|2=[[甲殻類]]+[[六脚類]](甲殻類は汎甲殻類から六脚類を除いた側系統群) |
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|2={{clade |
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|1=[[カブトガニ類]] {{sname||Xiphosura}} |
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|2=[[クモ綱|クモガタ類(蛛形類)]] {{sname||Arachnida}} |
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|label3=[[大顎類]] |
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|sublabel3={{sname||Mandibulata}} |
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|3={{clade |
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|1=[[多足亜門|多足類]] {{sname||Myriapoda}}:[[ムカデ]]類、[[ヤスデ]]類・[[エダヒゲムシ]]類・[[コムカデ]]類 |
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|label2=[[汎甲殻類]] |
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|sublabel2={{sname||Pancrustacea}} |
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|2={{clade |
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|barbegin1=red |
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|grouplabel1=「[[甲殻類]]」</span><br />"{{sname||Crustacea}}" |
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|1=[[貧甲殻上綱]] {{sname||Oligostraca}}:[[ウオヤドリエビ綱]]([[鰓尾類|鰓尾亜綱]]・[[舌形動物|舌虫亜綱]])・[[貝形虫綱]]・[[ヒゲエビ綱]] |
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|sublabel2={{sname||Altocrustacea}} |
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|2={{clade |
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|bar1=red |
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|1=[[多甲殻上綱]] {{sname||Multicrustacea}}:[[カイアシ類|カイアシ綱]]・[[鞘甲類|鞘甲綱]]・[[軟甲類|軟甲綱]] |
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|label2=[[異エビ上綱]] |
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|sublabel2={{sname||Allotriocarida}} |
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|2={{clade |
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|bar1=red |
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|1=[[カシラエビ綱]] {{sname||Cephalocarida}} |
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|bar2=red |
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|2=[[鰓脚綱]] {{sname||Branchiopoda}}{{refn|group="注釈"|この系統樹は主に Oakley ''et al.'' (2013)に基づくもので、Regier ''et al.'' (2010)などでは鰓脚綱は多甲殻類とともにとクレードをなし、[[真甲殻上綱]] {{sname||Vericrustacea}}として扱われる<ref name="arthropods"/>。}} |
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|3=[[ムカデエビ綱]] {{sname||Remipedia}} |
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|barend3=red |
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|4=[[六脚類|六脚綱]] {{sname||Hexapoda}}:[[昆虫|昆虫類]]・[[コムシ目]]・[[カマアシムシ目]]・[[トビムシ目]] |
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六脚類は広義の昆虫類で[[内顎類]]([[トビムシ]]、[[カマアシムシ]]、[[コムシ目|コムシ]])と[[昆虫|外顎類]](狭義の昆虫類)に分かれる<ref name=":7">[[動物#藤田 |
六脚類は広義の昆虫類で[[内顎類]]([[トビムシ]]、[[カマアシムシ]]、[[コムシ目|コムシ]]、側系統)と[[昆虫|外顎類]](狭義の昆虫類)に分かれる<ref name=":7">[[動物#藤田 2010|藤田 2010]], p.168</ref>。甲殻類は[[十脚目|エビ・カニ類]]、[[ミジンコ目|ミジンコ類]]など。汎甲殻類における六脚類の系統位置は議論の的となり<ref name=":9">{{Cite journal|last=Giribet|first=Gonzalo|last2=Edgecombe|first2=Gregory D.|date=2019-06-17|title=The Phylogeny and Evolutionary History of Arthropods|url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982219304865|journal=Current Biology|volume=29|issue=12|pages=R592–R602|doi=10.1016/j.cub.2019.04.057|issn=0960-9822}}</ref>、初期の[[分子系統解析]]では[[鰓脚綱]]に近縁とされていたが、後に更なる全面的な解析が行われ、2019年現在に至って脳の構造に共通性を持つ<ref name=":7" />[[ムカデエビ綱]]が六脚類の姉妹群として有力候補と見なされる<ref name=":9" /><ref>{{Cite journal|last=Olesen|first=Jørgen|last2=Pisani|first2=Davide|last3=Iliffe|first3=Thomas M.|last4=Legg|first4=David A.|last5=Palero|first5=Ferran|last6=Glenner|first6=Henrik|last7=Thomsen|first7=Philip Francis|last8=Vinther|first8=Jakob|last9=Chen|first9=Albert|date=2019-08-01|title=Pancrustacean Evolution Illuminated by Taxon-Rich Genomic-Scale Data Sets with an Expanded Remipede Sampling|url=https://academic.oup.com/gbe/article/11/8/2055/5528088|journal=Genome Biology and Evolution|volume=11|issue=8|pages=2055–2070|language=en|doi=10.1093/gbe/evz097}}</ref>。 |
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[[汎節足動物]]は[[節足動物門]]以外には[[緩歩動物門]]と[[有爪動物門]]を含む。絶滅した群まで範囲を広げると[[葉足動物]]と呼ばれる古生物をも含む。[[緩歩動物門]]に属する動物は[[クマムシ]]と呼ばれる動物であり<ref name=":4">[[動物#藤田 |
[[汎節足動物]]は[[節足動物門]]以外には[[緩歩動物門]]と[[有爪動物門]]を含む。絶滅した群まで範囲を広げると[[葉足動物]]と呼ばれる古生物をも含む。[[緩歩動物門]]に属する動物は[[クマムシ]]と呼ばれる動物であり<ref name=":4">[[動物#藤田 2010|藤田 2010]], p.157</ref>、ゆっくり歩く事からその名が名付けられた。陸上に生息する種では、[[クリプトビオシス]]という極限状態に耐えられる休眠状態になる事が知られている<ref name=":4" />。[[有爪動物門]]に属する動物は[[カギムシ]]と呼ばれ、現生種は真有爪目のみ<ref>[[動物#藤田 2010|藤田 2010]], pp.157-158</ref>。 |
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[[カンブリア紀]]に多様化した[[葉足動物]]は、現生の[[汎節足動物]]の3つの動物門、いわゆる[[節足動物]]、[[緩歩動物]]と[[有爪動物]]のそれぞれの最後の共通祖先を含んだ[[側系統]]群であると考えられる<ref name=":0" /><ref name=":1" /><ref name="Thanahita" />。多くの[[葉足動物]]は一見で現生の[[有爪動物]]らしい外見をもち<ref name=":1" />、かつては原始的な[[有爪動物]]として分類された<ref>{{Cite journal|last=Ramsköld|first=L.|last2=Xianguang|first2=Hou|date=1991-05|title=New early Cambrian animal and onychophoran affinities of enigmatic metazoans|url=https://www.nature.com/articles/351225a0|journal=Nature|volume=351|issue=6323|pages=225–228|language=En|doi=10.1038/351225a0|issn=0028-0836}}</ref |
[[カンブリア紀]]に多様化した[[葉足動物]]は、現生の[[汎節足動物]]の3つの動物門、いわゆる[[節足動物]]、[[緩歩動物]]と[[有爪動物]]のそれぞれの最後の共通祖先を含んだ[[側系統]]群であると考えられる<ref name=":0" /><ref name=":1" /><ref name="Thanahita" />。多くの[[葉足動物]]は一見で現生の[[有爪動物]]らしい外見をもち<ref name=":1" />、かつては原始的な[[有爪動物]]として分類された<ref name=":1" /><ref>{{Cite journal|last=Ramsköld|first=L.|last2=Xianguang|first2=Hou|date=1991-05|title=New early Cambrian animal and onychophoran affinities of enigmatic metazoans|url=https://www.nature.com/articles/351225a0|journal=Nature|volume=351|issue=6323|pages=225–228|language=En|doi=10.1038/351225a0|issn=0028-0836}}</ref>。しかしその後、[[節足動物]]と[[緩歩動物]]らしい形質をもつ葉足動物の発見に至り<ref>{{Cite journal|last=Budd|first=Graham|date=1993-08|title=A Cambrian gilled lobopod from Greenland|url=https://doi.org/10.1038/364709a0|journal=Nature|volume=364|issue=6439|pages=709–711|language=En|doi=10.1038/364709a0|issn=0028-0836}}</ref><ref>{{Cite journal|last=BUDD|first=GRAHAM E.|date=1996-03|title=The morphology of Opabinia regalis and the reconstruction of the arthropod stem-group|url=https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1502-3931.1996.tb01831.x|journal=Lethaia|volume=29|issue=1|pages=1–14|language=en|doi=10.1111/j.1502-3931.1996.tb01831.x|issn=0024-1164}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.researchgate.net/publication/293346517_Morpho-anatomy_of_the_lobopod_Magadictyon_cf_haikouensis_from_the_Early_Cambrian_Chengjiang_Lagerstatte_South_China_Acta_Zoologica_2007_DOI_101111j1463-6395200700281x|title=(PDF) Morpho-anatomy of the lobopod Magadictyon cf. haikouensis from the Early Cambrian Chengjiang Lagerstätte, South China (Acta Zoologica (2007) DOI: 10.1111/j.1463-6395.2007.00281.x)|accessdate=2018-10-28|website=ResearchGate|language=en}}</ref><ref name="Siberion">Dzik, Jerzy (2011). [http://www.paleo.pan.pl/people/Dzik/Publications/Siberion.pdf "The xenusian-to-anomalocaridid transition within the lobopodians"]. ''Bollettino della Società Paleontologica Italiana'', '''50'''(1): 65-74.</ref><ref>{{Cite journal|last=Budd|first=Graham E.|date=2001-01|title=Tardigrades as ‘Stem-Group Arthropods’: The Evidence from the Cambrian Fauna|url=https://doi.org/10.1078/0044-5231-00034|journal=Zoologischer Anzeiger - A Journal of Comparative Zoology|volume=240|issue=3-4|pages=265–279|doi=10.1078/0044-5231-00034|issn=0044-5231}}</ref>、葉足動物と有爪動物の多くの共通点は、両者の系統的類縁関係を反映していない、[[汎節足動物]]の[[共有原始形質]]と見なされるようになった<ref name="Thanahita">{{Cite journal|last=Siveter|first=Derek J.|last2=Briggs|first2=Derek E. G.|last3=Siveter|first3=David J.|last4=Sutton|first4=Mark D.|last5=Legg|first5=David|date=2018-08-01|title=A three-dimensionally preserved lobopodian from the Herefordshire (Silurian) Lagerstätte, UK|url=http://rsos.royalsocietypublishing.org/content/5/8/172101|journal=Open Science|volume=5|issue=8|pages=172101|language=en|doi=10.1098/rsos.172101|issn=2054-5703}}</ref>。 |
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=== 螺旋動物 === |
=== 螺旋動物 === |
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{{see also|冠輪動物}} |
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[[ファイル:Spiral_cleavage_in_Trochus.png|left|thumb|巻き貝の胚の[[螺旋卵割]]]] |
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|+ 螺旋動物の系統関係 |
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!ラーマーら (2019)に基づく分子系統樹の例<ref name="spiral"/><ref name="laumer"/> !! Marlétaz ''et al.'' (2019)に基づく分子系統樹の例<ref name="spiral"/> |
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{{clade| style=width:32em;font-size:80%;line-height:100% |
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[[ファイル:Spiral_cleavage_in_Trochus.png|thumb|300px|[[ニシキウズガイ属]](軟体動物[[腹足類]])の胚の[[螺旋卵割]]]] |
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この |
この[[クレード]]に属するほとんどが、胚発生において4細胞期から8細胞期に有糸分裂[[紡錘体]]が動物極-植物極軸と45°ずれる[[螺旋卵割]]を行うという共有派生形質をもつため{{refn|group="注釈"|ただし、螺旋動物のうち、触手冠動物の腕足動物などでは放射卵割を行い<ref name="spiral"/>、脱皮動物でも線形動物のように螺旋卵割を行うものも存在する<ref name="shirayama-1-5-4"/>。かつては前口動物の持つ形質だとみなされていたが、おそらく螺旋動物の持つ共有派生形質である<ref name="spiral"/>。}}、'''螺旋動物'''<ref name="Kakui"/>(らせんどうぶつ)もしくは'''螺旋卵割動物'''<ref name="Kajihara"/>(らせんらんかつどうぶつ) {{sname|Spiralia}}と呼ばれる<ref name="spiral"/><ref name="Struck">{{Cite journal |last=Struck |first=Torsten H. |last2=Wey-Fabrizius |first2=Alexandra R. |last3=Golombek |first3=Anja |last4=Hering |first4=Lars |last5=Weigert |first5=Anne|last6=Bleidorn |first6=Christoph |last7=Klebow |first7=Sabrina |last8=Iakovenko |first8=Nataliia |last9=Hausdorf |first9=Bernhard|date=2014 |title=Platyzoan Paraphyly Based on Phylogenomic Data Supports a Noncoelomate Ancestry of Spiralia |journal=Molecular Biology and Evolution |volume=31 |issue=7 |pages=1833-1849 |doi=10.1093/molbev/msu143 |pmid=24748651}}</ref><ref name="Shankland">{{cite journal|last1=Shankland|first1=M.|last2=Seaver|first2=E. C.|year=2000|title=Evolution of the bilaterian body plan: What have we learned from annelids?|journal=Proceedings of the National Academy of Sciences|volume=97|issue=9|pages=4434–7|bibcode=2000PNAS...97.4434S|doi=10.1073/pnas.97.9.4434|jstor=122407|pmid=10781038|pmc=34316}}</ref>。これを指して冠輪動物 {{sname|Lophotrochozoa}} ''{{lang|la|[[sensu|s.l.]]}}'' と呼ぶ場合もあるが<ref name="spiral"/>、本項を含め、「冠輪動物」の名称を螺旋動物のサブクレードに用いるケースもあるので注意が必要である<ref name="kanrin" group="注釈" />。 |
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螺旋動物は担顎動物、吸啜動物、冠輪動物という3つの系統を含む。前者2つを合わせたものを[[ |
螺旋動物は'''担顎動物'''(たんがくどうぶつ、{{sname||Gnathifera}})、'''吸啜動物'''(きゅうてつどうぶつ、{{sname||Rouphozoa}})、'''冠輪動物'''(かんりんどうぶつ、{{sname||Lophotrochozoa}})という3つの系統を含む<ref name="Kajihara"/>。冠輪動物は上記の螺旋動物を指すこともあるため、'''担輪動物'''(たんりんどうぶつ、{{sname||Trochozoa}})とも呼ぶ<ref name="Kakui"/>。前者2つを合わせたものを[[扁平動物]] {{sname||Platyzoa}} と呼ぶこともあるが{{Sfn|藤田|2010|p=113}}<ref name="Henjol"/>、[[#Giribet 2016|ギリベ (2016)]]などでは採用されていない。逆に他の解析では担顎動物を除く吸啜動物と冠輪動物がクレードをなすことがあり、その場合、それらを合わせて {{sname||Platytrochozoa}} と呼ばれる<ref name="Struck"/>。 |
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冠輪動物は[[トロコフォア]]型の[[幼生]]を持ち<ref>[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]], pp.135</ref>、ミミズやゴカイを含む環形動物門、貝類やタコやイカを含む軟体動物門などからなる。 |
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担顎動物(有顎動物<ref name="NEO">{{cite book|author=白山義久・久保田信・駒井智幸・西川輝昭・月井雄二・加藤哲哉・窪寺恒己・齋藤寛・長谷川和範・藤田敏彦・土田真二|title=水の生物|series=小学館の図鑑 NEO|date=2005-03-20|isbn=4092172079}}</ref>)は微小な体で、クチクラの中に[[オスミウム酸]]親和性のある物質が詰まった棒状構造からなる顎を持つという形質を共有する{{Sfn|藤田|2010|pp=130-131}}<ref name="NEO"/>。[[顎口動物]]は咽頭に複雑な顎を持つ動物で、体表面の単繊毛上皮によって移動する{{Sfn|藤田|2010|pp=127-128}}。[[微顎動物]]は複雑な顎を備え、体の腹面に繊毛を持つ<ref name="NEO"/><ref name="Kajihara"/>。[[輪形動物]]は[[単生殖巣類]]、[[ヒルガタワムシ類]]、[[ウミヒルガタワムシ類]]からなり、ウミヒルガタワムシ類と鉤頭動物が姉妹群をなす<ref name="Kajihara"/>。[[鉤頭動物]]は独立した門とされていたが、そのような系統関係から輪形動物に内包されるか、輪形動物とともに'''共皮類'''(多核皮動物{{Sfn|藤田|2010|pp=130-131}}) {{sname||Syndermata}} としてまとめられる<ref name="Kajihara"/>。微顎動物および鉤頭動物は体内受精ののちに螺旋卵割を行う{{Sfn|藤田|2010|pp=127-128}}{{Sfn|藤田|2010|pp=130-131}}。 |
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====軟体動物==== |
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[[File:Haliotis_asinina_trochophore.jpg|サムネイル|受精から9時間の海洋性の[[腹足類]]''{{仮リンク|Haliotis asinina|en|Haliotis asinina}}''のトロコフォア]] |
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吸啜動物に含まれる扁形動物と腹毛動物はともに[[メイオファウナ]]の重要な構成種で、2つの腺により吸着する ({{lang|en|duo-gland adhesive system}})形質がその共有派生形質ではないかと考えられている<ref>{{cite journal|first1=Maria |last1=Balsamo |first2=Tom |last2=Artois |first3=Julian P. S. |last3=Smith III |first4=M. Antonio |last4=Todaro |first5=Loretta |last5=Guidi |first7=Brian S. |last7=Leander |first8=Niels W. L. |last8=Van Steenkiste|title=The curious and neglected soft-bodied meiofauna: Rouphozoa (Gastrotricha and Platyhelminthes)|journal=Hydrobiologia|date=2020|volume=847|pages=2613-2644}}</ref>。 |
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冠輪動物に属する軟体動物門は節足動物門についで大きい門で、三胚葉性<ref name="Fujita10-136-137">[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]], pp.136-137.</ref>。真体腔を持つ(退化的である事が多い)<ref name="Fujita10-136-137" />。体節がない<ref name="Fujita10-136-137" />。骨格がなく軟体<ref name="Fujita10-136-137" />。一般的には体は頭部、内蔵塊、足からなり<ref name="Fujita10-136-137" />、[[外套膜]]が内蔵塊を覆っている<ref name="Fujita10-136-137" />。外套膜が分泌した石灰質の貝殻を持つ事が多い<ref name="Fujita10-136-137" />。 |
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軟体動物の分類は系統解析により一部修正が施され2018年現在は体全体を覆う大きな殻がある有殻類と石灰質の棘を持つ有棘類に大きく分かれるという仮説が有力視されており<ref name=":5">[[動物#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8B%95%E7%89%A9%E5%AD%A6%E4%BC%9A2018|日本動物学会2018]] pp.68-69</ref>、軟体動物の綱は以下のように分類される<ref>[[動物#日本動物学会2018|日本動物学会2018]] pp.68-69。</ref>: |
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冠輪動物(担輪動物)のうち環形動物と軟体動物は[[トロコフォア]]型の[[幼生]]を持つという共有派生形質を持つ{{Sfn|藤田|2010|pp=135-136}}。[[紐形動物]]は翻出する吻を持ち、かつては無体腔と考えられたが、現在では吻が収納される吻腔が裂体腔であると考えられている{{Sfn|藤田|2010|pp=135-136}}。冠輪動物のうち、箒虫動物・苔虫動物(外肛動物)・腕足動物は何れも触手冠と呼ばれる構造を持つため'''触手冠動物''' {{sname||Lophophorata}}と呼ばれ、分子系統解析でも支持されることがある<ref name="Kakui"/><ref name="laumer"/><ref name="Lophophorata">[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.132</ref>。冠輪動物はもともと担輪動物と触手冠動物の2つの系統を合わせて呼ばれるようになった語である{{Sfn|藤田|2010|pp=122-132}}。分子系統解析の結果、苔虫動物は[[内肛動物]]と姉妹群をなす(広義の苔虫動物)とされ否定されたこともあったが<ref name="Kakui"/><ref name="Lophophorata"/>、[[#Laumer et al. 2019|ラーマーら (2019)]]などでは単系統性が示されている<ref name="laumer"/>。また、[[有輪動物]]は[[内肛動物]]と姉妹群をなすことが示唆されている<ref name="laumer"/><ref name="mallatt"/>。 |
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==== 軟体動物 ==== |
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{{see also|軟体動物}} |
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[[File:Haliotis_asinina_trochophore.jpg|thumb|250px|受精から9時間の海洋性の[[腹足類]] {{snamei||Haliotis asinina}} のトロコフォア]] |
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冠輪動物に属する軟体動物門は節足動物門に次いで既知種の大きい門で、骨格を持たず、体節がない軟体からなる{{Sfn|藤田|2010|pp=136-137}}。体腔は真体腔であるが退化的で、体内の腔所は組織の間隙を血液が流れるだけの血体腔である{{Sfn|藤田|2010|pp=136-137}}。一般的には体は頭部、内臓塊、足からなり、[[外套膜]]が内臓塊を覆っている{{Sfn|藤田|2010|pp=136-137}}。外套膜が分泌した石灰質の貝殻を持つ事が多い{{Sfn|藤田|2010|pp=136-137}}。卵割は普通[[全割]]の螺旋卵割であるが、頭足類では胚盤をもつ[[盤割]]となる{{Sfn|藤田|2010|pp=136-137}}。 |
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軟体動物の分類は系統解析により一部修正が施され2018年現在は体全体を覆う大きな殻がある有殻類と石灰質の棘を持つ有棘類に大きく分かれるという仮説が有力視されている<ref name=":5">{{cite|author=佐々木猛智|chapter=軟体動物 {{small|―900 kgのイカ,0.01 g の巻貝}}|date=2018|pages=68-69}} in [[動物#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。 |
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軟体動物の綱は以下のように分類される<ref name=":5"/>: |
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{{clade |
{{clade |
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|label1=軟体動物|1= |
|label1=軟体動物|1= |
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{{clade |
{{clade |
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|label1=[[有殻類]] |
|label1=[[有殻類]] |
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|sublabel1={{sname|Conchifera}} |
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|1=[[腹足綱]]、[[単板綱]]、[[頭足類]]、[[掘足綱]]、[[二枚貝|二枚貝綱]] |
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|label2=[[有棘類]] |
|label2=[[有棘類]] |
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|sublabel2={{sname|Aculifera}} |
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|2=[[尾腔綱]]、[[溝腹綱]]、[[多板綱]] |
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}} |
}} |
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}} |
}} |
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有殻類は綱レベルの単系統性は多くの場合保証されているが |
有殻類は綱レベルの単系統性は多くの場合保証されているが、各綱の系統関係は2018年現在一致を見ていない<ref name=":5" />。 |
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なお、[[シャミセンガイ]]は「貝」という名称で外套膜もあるものの、[[腕足動物]]門に属している。 |
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==== 環形動物 ==== |
==== 環形動物 ==== |
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{{see also|環形動物}} |
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[[環帯類]]([[ミミズ|貧毛綱(=ミミズ)]]と[[ヒル (動物)|ヒル]][[ミミズ|綱]])、[[多毛類|多毛類(=ゴカイ)]]を含むほか、かつては独立した門だと思われていた[[シボグリヌム科|'''有髭動物''']]、'''[[ユムシ動物]]'''、'''[[星口動物]]'''を含む事が分子系統解析から分かり<ref name=":8">系統樹は[[動物#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8B%95%E7%89%A9%E5%AD%A6%E4%BC%9A2018|日本動物学会2018]] pp.70-71より。</ref>。多毛類が多系統である事もわかった<ref name=":8" />。 |
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環形動物は[[環帯類]]([[ミミズ|貧毛綱(=ミミズ)]]と[[ヒル (動物)|ヒル綱]])、[[多毛類|多毛類(=ゴカイ)]]、[[スイクチムシ類]]を含む門である。かつては独立した門だと思われていた'''有鬚動物'''(ゆうしゅどうぶつ、現[[シボグリヌム科]])、'''[[ユムシ動物]]'''、'''[[星口動物]]'''を含むことが分子系統解析から分かり、多毛類がそれらの分類群をすべて内包し、多系統である事もわかった<ref name="Kakui"/><ref name="annelids"/>。 |
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Rouse and Fauchald (1997)による形態に基づく従来の系統関係は次の通りである<ref name="annelids">{{cite journal|first1=Anne |last1=Weigert|first2=Christoph |last2=Bleidorn|title=Current status of annelid phylogeny|journal=Org Divers Evol|date=2016|volume=16|pages=345-362|doi=10.1007/s13127-016-0265-7}}</ref>{{refn|group="注釈"|和名は『岩波生物学辞典 第5版』(2013)に基づく{{Sfn|巌佐ほか|2013|pp=1584-1586}}。}}: |
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{{clade |
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|1='''[[星口動物]] {{sname||Sipuncula}}''' |
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|2={{clade |
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|1='''[[ユムシ動物]] {{sname||Echiura}}''' |
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|2={{clade |
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|1={{clade |
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|1=[[有爪動物]] {{sname||Onychophora}} |
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|2=[[節足動物]] {{sname||Euarthropoda}} |
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}} |
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|label2=狭義の'''環形動物''' |
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|sublabel2= '''{{sname||Annelida}}''' |
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|2={{clade |
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|1= '''[[環帯類]] {{sname||Clitellata}}''' |
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|label2=[[多毛類]] |
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|sublabel2={{sname||Polychaeta}} |
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|2={{clade |
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|1= [[頭節綱]] {{sname||Scolecida}}:[[ヒトエラゴカイ目]] {{sname||Cossurida}}・[[ホコサキゴカイ目]] {{sname||Orbiniida}}・[[オフェリアゴカイ目]] {{sname||Opheliida}}・[[イトゴカイ目]] {{sname||Capitellida}} |
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|2={{clade |
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|1= [[足刺綱]] {{sname||Aciculata}}:[[イソメ目]] {{sname||Eunicida}}・[[サシバゴカイ目]] {{sname||Phyllodcida}} |
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|2= [[溝副触手綱]] {{sname||Canalipalpata}}:[[ケヤリ目]] {{sname||Sabellida}}('''[[シボグリヌム科]] {{sname||Siboglinidae}}'''を含む)・[[フサゴカイ目]] {{sname||Terebellida}}・[[スピオ目]] {{sname||Spionida}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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}} |
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分子系統解析に基づく系統樹は次の通りである<ref name="annelids"/>{{refn|group="注釈"|多くが科名の列記になっているのはそれらをまとめた高次分類群は未だ命名されていないためである<ref name="annelids"/>。}}: |
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{{clade |
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|label1='''環形動物''' |
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|sublabel1= '''{{sname||Annelida}}''' |
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|1={{clade |
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|1={{sname||Palaeoannelida}}:[[チマキゴカイ科]] {{sname||Oweniidae}}・[[モロテゴカイ科]] {{sname||Magelonidae}} |
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|2={{clade |
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|1=[[ツバサゴカイ科]] {{sname||Chaetopteridae}} |
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|2={{clade |
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|1={{clade |
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|1='''[[星口動物]] {{sname||Sipuncula}}''' |
|||
|2= [[ウミケムシ科]] {{sname||Amphinomidae}} |
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}} |
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|sublabel2={{sname||Pleistoannelida}} |
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|2={{clade |
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|label1=[[遊在類]] |
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|sublabel1={{sname||Errantia}} |
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|1= {{clade |
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|1= '''[[スイクチムシ]]類 {{sname||Myzostomida}}''' |
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|2= [[プロトドリロイデス科]] {{sname||Protodriloidae}}・[[プロトドリルス科]] {{sname||Protodrilidae}}・[[ムカシゴカイ科]] {{sname||Saccocirridae}}・[[イイジマムカシゴカイ科]] {{sname||Polygordiidae}} |
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|3= [[足刺類]] {{sname||Aciculata}}(上図足刺綱に対応) |
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|label2=[[定在類]] |
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|sublabel2={{sname||Sedentaria}} |
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|2={{clade |
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|1={{clade |
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|1= '''[[環帯類]] {{sname||Clitellata}}'''・[[フサゴカイ亜目]] {{sname||Terebelliformia}}・[[タマシキゴカイ科]] {{sname||Arenicolidae}}・[[タケフシゴカイ科]] {{sname||Maldanidae}} |
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|2= '''[[ユムシ動物]] {{sname||Echiura}}'''・[[イトゴカイ科]] {{sname||Capitellidae}}・[[オフェリアゴカイ科]] {{sname||Opheliidae}} |
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}} |
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|2= [[スピオ科]] {{sname||Spionidae}}・[[カンムリゴカイ科]] {{sname||Sabellariidae}}・[[カンザシゴカイ科]] {{sname||Serpulidae}}・{{sname||Fabriciidae}}・[[ケヤリ科]] {{sname||Sabellidae}} |
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|3= '''[[シボグリヌム科]] {{sname||Siboglinidae}}'''(有鬚動物)・[[ミズヒキゴカイ亜目]] {{sname||Cirratuliformia}} |
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|4= [[ホコサキゴカイ科]] {{sname||Orbiniidae}}・[[パレルゴドリルス科]] {{sname||Parergodrilidae}}・[[ディウロドリルス科]] {{sname||Diurodrilidae}}・[[ウジムカシゴカイ科]] {{sname||Dinophilidae}}・[[ホラアナゴカイ科]] {{sname||Nerillidae}} |
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}}}} |
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=== 二胚動物・直泳動物 === |
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{{cladogram |
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|title= |
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|align= right |
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|caption=二胚動物と直泳動物を吸啜動物の姉妹群とする分子系統樹の例<ref name="dicyemid-spiralia"/> |
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|cladogram= |
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{{clade| style=width:30em;font-size:100%;line-height:100% |
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|1={{clade |
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|label1=吸啜動物 |
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|lsubabel1={{sname|Rouphozoa}} |
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|1={{clade |
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|1=腹毛動物 |
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|2=扁形動物 |
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}} |
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|label2=「中生動物」 |
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|sublabel2="{{sname||Mesozoa}}" |
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|2={{clade |
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|1=二胚動物 |
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|2=直泳動物 |
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}} }} |
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分子系統解析から、かつて[[中生動物]]とされていた[[二胚動物]]および[[直泳動物]]はともに螺旋動物に属することが支持されている。ただし、その中でも、二胚動物と直泳動物は姉妹群「中生動物」となり、さらにそれが吸啜動物と姉妹群をなすという結果もあれば<ref name="dicyemid-spiralia">{{cite journal|last1=Lu|first1=Tsai-Ming|last2=Kanda|first2=Miyuki|last3=Satoh|first3=Noriyuki|author-link3=佐藤矩行|last4=Furuya|first4=Hidetaka|author-link4=古屋秀隆|title=The phylogenetic position of dicyemid mesozoans offers insights into spiralian evolution|journal=Zoological Letters|date=2017|volume=3|issue=6||pages=1-9|doi=10.1186/s40851-017-0068-5}}</ref>、直泳動物は環形動物に内包され、環形動物の極端に退化した形と考えられることもあり<ref name="orthonectid">{{cite journal|last1=Schiffer|first1=Philipp H.|last2=Robertson|first2=Helen E.|last3=Telford|first3=Maximilian J.|date=2018|title=Orthonectids Are Highly Degenerate Annelid Worms|journal=Current Biology|volume=28|issue=12|pages=1970-1974|doi=10.1016/j.cub.2018.04.088}}</ref>、まだ決着はついていない。 |
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=== 後口動物 === |
=== 後口動物 === |
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{{see also|後口動物}} |
{{see also|後口動物}} |
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[[ファイル:Protovsdeuterostomes.svg|right|thumb|前口動物(上図、{{lang|en|Protostomes}})と後口動物(下図、{{lang|en|Deuterostomes}})の発生。<br />8細胞期 ({{lang|en|Eight-cell stage}})では前者は螺旋卵割 ({{lang|en|spiral cleavage}})、後者は放射卵割 ({{lang|en|radial cleavage}})を行う。原腸陥入 ({{lang|en|gastrulation}})においても体腔 ({{lang|en|Coelum}})のできる位置が異なることが多く、前者では基本的に裂体腔で後者では基本的に腸体腔である<ref group="注釈">例外も多く、例えば尾索動物では後口動物ながら真体腔は裂体腔的に生じる。</ref>。また、名の由来の通り前者では[[原口]] ({{lang|en|Blastopore}})が口 ({{lang|en|Mouth}})となるのに対し、後者では原口が肛門 ({{lang|en|Anus}})となる。]] |
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[[ファイル:Protovsdeuterostomes.svg|右|サムネイル|原口が口になる動物(上図)と原口が肛門になる動物(下図)。歴史的にはこれが前口動物と後口動物を分ける基準であった。]] |
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[[File:Britannica Echinoderma 6.jpg|thumb|300px|ディプリュールラ幼生。[[トロコフォア幼生]]と対置される。]] |
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後口動物(新口動物)は[[棘皮動物|棘皮動物門]]、[[半索動物|半索動物門]]、[[脊索動物]]を含み、新口動物とも呼ばれる{{Sfn|藤田|2010|p=113}}{{Sfn|藤田|2010|pp=104-105}}。[[エルンスト・ヘッケル|ヘッケル]]は新口動物の共通祖先から脊索動物が進化した過程を論じた際、棘皮動物の幼生<ref group="注釈">[[ドリオラリア幼生]]([[ウミユリ]]、ナマコ)、[[オーリクラリア幼生]]([[ナマコ]])、[[ビピンナリア幼生]]([[ヒトデ]])、[[オフィオプルテウス幼生]]([[クモヒトデ]])、[[プルテウス幼生]](エキノプルテウス、[[ウニ]])などがあり、ドリオラリア型やオーリクラリア型のものが原始的であると考えられている</ref> と半索動物の[[トルナリア幼生]]が共有する形質を合わせて、それらの祖先型として、'''ディプリュールラ幼生''' ({{lang|la|Dipleurula}})という仮想的な幼生を考えた<ref name="dipleurula">[[#佐藤ほか 2004|佐藤ほか 2004]], pp.63-64</ref>。ディプリュールラ幼生はトロコフォア幼生と同様に口から肛門に至る消化管、頂器官に感覚器としての長い繊毛、口を中心とした繊毛帯(または繊毛環)、体後端部の端部繊毛帯を持つが、ディプリュールラ幼生では3部性の体腔(原体腔・中脳腔・後脳腔)を持つことおよび繊毛帯の走り方が異なる<ref name="dipleurula"/><ref>[[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]], p.23</ref><ref name="shirayama-1-3-2-8">{{cite |author=白山義久|chapter=総合的観点から見た無脊椎動物の多様性と系統{{small|(1-3-2 動物界の門レベルの多様性)}}|date=2000|pages=21-23}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref>。 |
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後口動物は[[棘皮動物|棘皮動物門]]、[[半索動物|半索動物門]]、[[脊索動物|脊索動物門]]を含み<ref name="Fujita10-113" />、新口動物とも呼ばれる。 |
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2018年現在、棘皮動物と半索動物が姉妹群をなすという説が大勢を締めており<ref name="hyakka" /><ref name="Fujita10-1692">[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]], p.169.</ref>、これら2つをあわせて水腔動物もしくは歩帯動物という。 |
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2018年現在、棘皮動物と半索動物が姉妹群をなすという説が大勢を締めており<ref name="Kakui"/>{{Sfn|藤田|2010|p=169}}、これら2つをあわせて水腔動物 {{sname||Coelomopora}}という<ref name="Kakui"/>。 |
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後口動物は歴史的には胚にできた原口が口になる[[前口動物]]に対し、原口が口にならず新たに口が開く動物として定義されていたが<ref>[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]] p104</ref>、1990年代に分子系統解析が始まると、この歴史的な意味での後口動物は[[単系統]]にならない事が示されたので、[[毛顎動物]]や[[シボグリヌム科|有鬚動物]]などが後口動物から前口動物へと移され、前述の門のみが後口動物として残された<ref>[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]] p108</ref>。この変更以降も「後口動物」という系統群名を用いるが<ref>{{cite journal|last1=Edgecombe|first1=Gregory D.|last2=Giribet|first2=Gonzalo|last3=Dunn|first3=Casey W.|last4=Hejnol|first4=Andreas|last5=Kristensen|first5=Reinhardt M.|last6=Neves|first6=Ricardo C.|last7=Rouse|first7=Greg W.|last8=Worsaae|first8=Katrine|last9=Sørensen|first9=Martin V.|date=June 2011|title=Higher-level metazoan relationships: recent progress and remaining questions|journal=Organisms, Diversity & Evolution|volume=11|issue=2|pages=151–172|doi=10.1007/s13127-011-0044-4}}</ref><ref name="Fröbius">{{Cite journal|last=Fröbius|first=Andreas C.|last2=Funch|first2=Peter|date=2017-04-04|title=Rotiferan Hox genes give new insights into the evolution of metazoan bodyplans|url=http://www.nature.com/articles/s41467-017-00020-w|journal=Nature Communications|volume=8|issue=1|bibcode=2017NatCo...8....9F|doi=10.1038/s41467-017-00020-w}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Smith|first=Martin R.|last2=Ortega-Hernández|first2=Javier|year=2014|title=Hallucigenia’s onychophoran-like claws and the case for Tactopoda|url=https://doi.org/10.1038/nature13576|journal=Nature|volume=514|issue=7522|pages=363–366|bibcode=2014Natur.514..363S|doi=10.1038/nature13576}}</ref><ref name="Palaeos Metazoa: Ecdysozoa">{{Cite web|url=http://palaeos.com/metazoa/ecdysozoa/ecdysozoa.html|title=Palaeos Metazoa: Ecdysozoa|access-date=2017-09-02|website=palaeos.com}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Yamasaki|first=Hiroshi|last2=Fujimoto|first2=Shinta|last3=Miyazaki|first3=Katsumi|date=June 2015|title=Phylogenetic position of Loricifera inferred from nearly complete 18S and 28S rRNA gene sequences|url=https://doi.org/10.1186/s40851-015-0017-0|journal=Zoological Letters|volume=1|pages=18|doi=10.1186/s40851-015-0017-0}}</ref><ref>{{cite book|last=Nielsen|first=C.|title=Animal Evolution: Interrelationships of the Living Phyla|edition=2nd|year=2002|publisher=Oxford University Press|isbn=0-19-850682-1}}</ref><ref>{{cite web|url=http://tolweb.org/Bilateria/2459|title=Bilateria|accessdate=August 11, 2014|date=2001|website=Tree of Life Web Project}}</ref><ref name="Palaeos Metazoa: Ecdysozoa" /> 、毛顎動物や有鬚動物のような原口が口にならない動物も前口動物に含まれている事になるので注意が必要である。なお、有鬚動物は環形動物の科にする意見が受け入れられている<ref name="Miura2000">[[シボグリヌム科#Miura Biodiversity|三浦「有鬚動物」『無脊椎動物の多様性と系統』(2000)]]</ref><ref name="Kojima_Muira">[[シボグリヌム科#Kojima Phylogeny|小島「ハオリムシ類の進化と系統」(2008)]] および[[シボグリヌム科#Miura Ecology|三浦・藤倉 (2008)]]</ref><ref name="Miura2000Systematics">[[シボグリヌム科#Miura AnimalSystematics|三浦「環形動物」『動物系統分類学追補版』(2000)]]</ref><ref name="Motokawa2001">[[シボグリヌム科#Motokawa Synthesis|「有鬚動物門」『図説 無脊椎動物学』(2009、原書は2001)]]</ref><ref name="Pleijel2009">[[シボグリヌム科#Pleijel et al|Pleijel ''et al''. (2009)]]</ref><ref name="WoRMS_Pogonophora"><cite style="font-style:normal">WoRMS (<span title="">2010年</span>). “[http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=1270 Pogonophora]”. ''World Register of Marine Species''. <span title="">2011年6月18日</span>閲覧。</cite></ref><ref name="EoL_Pogonophora"><cite style="font-style:normal">Shapiro L.. “[http://www.eol.org/pages/2180 Pogonophora: Comprehensive Description]”. ''[[Encyclopedia of Life]]''. <span title="">2011年6月18日</span>閲覧。</cite></ref>。 |
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後口動物は胚発生において陥入によってできた原口が口になる[[前口動物]]に対し、原口が口にならず新たに口が開く動物であり、かつては現在後口動物とされる棘皮動物、半索動物、脊索動物だけでなく、[[触手冠動物]]としてまとめられる[[箒虫動物]]、[[苔虫動物]](外肛動物)、[[腕足動物]]、そして[[毛顎動物]]を含んでいた{{Sfn|藤田|2010|pp=104-105}}<ref name="shirayama-1-3-1">{{cite |author=白山義久|chapter=総合的観点から見た無脊椎動物の多様性と系統(1-3-1 漸進的進化思想と分子系統樹)|date=2000|pages=3-14}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref>。これはブルスカとブルスカ (1990)、メルグリッチとシュラム (1991)などによる形態形質に基づく系統解析でも、原口に由来しない口を持つだけでなく、原腸由来の中胚葉を持つことや腸体腔を持つことなどの形質からも支持されていた<ref name="shirayama-1-3-1"/>。ほかにも、放射卵割を行うなど<ref name="spiral"/>、後口動物としての性質を多く持っている。しかし分子系統解析の進展により、触手冠動物および毛顎動物は前口動物に属すると考えられるようになった<ref name="spiral"/><ref name="shirayama-1-5-4">{{cite |author=白山義久|chapter=総合的観点から見た無脊椎動物の多様性と系統{{small|(1-5-4 分子系統学)}}|date=2000|pages=34-45}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref><ref>[[動物#藤田 2010|藤田 2010]] p.108</ref>。この変更以降も「後口動物」という系統群名を用いるが<ref>{{cite journal|last1=Edgecombe|first1=Gregory D.|last2=Giribet|first2=Gonzalo|last3=Dunn|first3=Casey W.|last4=Hejnol|first4=Andreas|last5=Kristensen|first5=Reinhardt M.|last6=Neves|first6=Ricardo C.|last7=Rouse|first7=Greg W.|last8=Worsaae|first8=Katrine|last9=Sørensen|first9=Martin V.|date=June 2011|title=Higher-level metazoan relationships: recent progress and remaining questions|journal=Organisms, Diversity & Evolution|volume=11|issue=2|pages=151–172|doi=10.1007/s13127-011-0044-4}}</ref><ref name="Fröbius">{{Cite journal|last=Fröbius|first=Andreas C.|last2=Funch|first2=Peter|date=2017-04-04|title=Rotiferan Hox genes give new insights into the evolution of metazoan bodyplans|url=http://www.nature.com/articles/s41467-017-00020-w|journal=Nature Communications|volume=8|issue=1|bibcode=2017NatCo...8....9F|doi=10.1038/s41467-017-00020-w}}</ref><ref>{{Cite journal|last=Smith|first=Martin R.|last2=Ortega-Hernández|first2=Javier|year=2014|title=Hallucigenia’s onychophoran-like claws and the case for Tactopoda|url=https://doi.org/10.1038/nature13576|journal=Nature|volume=514|issue=7522|pages=363–366|bibcode=2014Natur.514..363S|doi=10.1038/nature13576}}</ref><ref name="Palaeos Metazoa: Ecdysozoa">{{Cite web|url=http://palaeos.com/metazoa/ecdysozoa/ecdysozoa.html|title=Palaeos Metazoa: Ecdysozoa|access-date=2017-09-02|website=palaeos.com}}</ref><ref name="Palaeos Metazoa: Ecdysozoa" /><ref>{{Cite journal|last=Yamasaki|first=Hiroshi|last2=Fujimoto|first2=Shinta|last3=Miyazaki|first3=Katsumi|date=June 2015|title=Phylogenetic position of Loricifera inferred from nearly complete 18S and 28S rRNA gene sequences|url=https://doi.org/10.1186/s40851-015-0017-0|journal=Zoological Letters|volume=1|pages=18|doi=10.1186/s40851-015-0017-0}}</ref><ref>{{cite book|last=Nielsen|first=C.|title=Animal Evolution: Interrelationships of the Living Phyla|edition=2nd|year=2002|publisher=Oxford University Press|isbn=0-19-850682-1}}</ref><ref>{{cite web|url=http://tolweb.org/Bilateria/2459|title=Bilateria|accessdate=August 11, 2014|date=2001|website=Tree of Life Web Project}}</ref> 、毛顎動物や腕足動物のような原口が口にならない動物も前口動物に含まれ<ref name="spiral"/>、単純に原口の有無が系統を反映しているわけではない。 |
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====水腔動物==== |
====水腔動物==== |
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'''[[水腔動物]]''' {{sname||Coelomopora}}( '''歩帯動物''' {{sname||Ambulacraria}})は幼生の形態、三体腔性、軸器官などの形質を共有する{{Sfn|藤田|2010|p=169}}<ref name="Kakui"/>。 |
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[[棘皮動物]]は、成体が五放射相称、三胚葉性で、内胚葉由来の中胚葉(内中胚葉)を持つ{{Sfn|藤田|2010|pp=169-173}}。腸体腔性の体腔で、体腔に由来する[[水管系]]と呼ばれる独自の構造をもつ{{Sfn|藤田|2010|pp=169-173}}<ref name="Echino">{{cite|author=藤田敏彦|chapter=棘皮動物 {{small|―星形の体をもつ海のスター}}|date=2018|pages=88-89}} in [[動物#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。神経系は中枢神経を持たず、神経環と放射神経からなるが、ウミユリ綱では神経節を持つ{{Sfn|藤田|2010|pp=169-173}}。[[ウミユリ綱]]、[[ヒトデ綱]]、[[クモヒトデ綱]]、[[ナマコ綱]]、[[ウニ綱]]からなり、分子系統解析によりこれらのうちウミユリ綱が最も祖先的だと考えられている{{Sfn|藤田|2010|pp=169-173}}<ref name="Echino"/>。ウニ綱のうち[[タコノマクラ]]類やブンブク類では五放射相称が歪み左右相称性を示す<ref name="Echino"/>。 |
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現生の[[半索動物]]はギボシムシ綱(腸鰓綱)とフサカツギ綱(翼鰓綱)からなり、化石では[[フデイシ綱]]が置かれる{{Sfn|藤田|2010|p=-173}}<ref name="Nishikawa">{{cite|author=西川輝昭|chapter=頭索動物・尾索動物・半索動物 {{small|―脊椎動物のルーツを探る}}|date=2018|pages=90-91}} in [[動物#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。どちらも体は前体・中体・後体の3つの部分に分かれるという共通した形質を持ち、前者では吻・襟・体幹と呼ばれ、後者では頭盤・頸・体幹と呼ばれる{{Sfn|藤田|2010|p=-173}}。ギボシムシ綱では腸体腔と裂体腔をもつとされるが、体腔形成には不明な点も多い{{Sfn|藤田|2010|p=-173}}。ギボシムシ綱は側系統で、ギボシムシ綱のハリマニア科がフサカツギ綱と姉妹群をなし、フサカツギ綱はギボシムシ綱から小型化によって体が二次的に単純化したと考えられる{{Sfn|藤田|2010|p=-173}}。半索動物は脊索動物と同様に鰓裂を持つ<ref name="Nishikawa"/><ref name="Sato117">[[#佐藤ほか 2004|佐藤ほか 2004]], pp.117</ref>。かつては口盲管という器官が脊索の一種と考えられたこともあったが{{Sfn|藤田|2010|p=-173}}、口盲管と脊索との関係を支持する発生遺伝学的研究結果はなく<ref name="Sato117"/>、現在では脊索を持たないとされる<ref name="Nishikawa"/>。 |
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====脊索動物==== |
====脊索動物==== |
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{{see also|脊索動物}} |
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[[脊索動物]] {{sname||Chordata}} は[[頭索動物]]・[[尾索動物]](被嚢動物)・[[脊椎動物]]を含むクレードで、一生のうち少なくとも一時期に[[鰓裂]]・[[脊索]]およびその背側に背側[[神経管]]を持つという形質を共有する<ref name="Nishikawa"/>{{Sfn|藤田|2010|pp=174-180}}。脊索は膨らませた細長い風船に喩えられる中軸器官で、脊索鞘という繊維質の頑強な膜に脊索細胞が包まれている<ref name="Nishikawa"/>。頭索動物および尾索動物がもつ[[内柱]]は脊椎動物における[[甲状腺]]と相同で、甲状腺は内柱の変化したものと考えられている{{Sfn|藤田|2010|pp=174-180}}。発生はさまざまであるが発生の一時期には肛門の後方に筋肉により運動する尾状部分があり、オタマジャクシ型幼生({{lang|en|tadpole larva}})を経る{{Sfn|藤田|2010|pp=174-180}}。 |
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脊索動物は脊索と背側神経管という共通する二つの特徴をもつことから1つの門に置かれ、その中の3群は亜門に置かれてきたが、[[佐藤矩行]]・[[西川輝昭]] (2014)により、分子系統学的解析および3群がそれぞれ特徴的な形質を持つことに基づいて脊索動物をよ |
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り高次の上門に置き、3群を門に格上げする考えが提唱された<ref name="Nishikawa"/><ref>{{cite press|title=|publisher=[[沖縄科学技術大学院大学]]・[[東邦大学]]|date=2014-09-17|url=https://www.oist.jp/ja/news-center/press-releases/16643|accessdate=2021-08-08}}</ref><ref>{{cite journal|last1=Satoh|first1=Noriyuki|first2=Daniel|last2=Rokhsar|first3=Teruaki|last3=Nishikawa|title=Chordate evolution and the three-phylum system|journal=Proceedings of Royal Society B|date=2014|volume=281|issue= 1794|pages=1-10|doi=10.1098/rspb.2014.1729}}</ref>。 |
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以下の3つに分類される<ref name="Kakui"/>{{Sfn|藤田|2010|pp=174-180}}<ref name="Nishikawa"/>: |
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[[脊索動物]]は我々[[脊椎動物]]を含む動物門で、(一生のうち少なくとも一時期に)[[脊索]]を持つという特徴をもち、以下の3つに分類される<ref name="Fujita10-174-1752">[[動物#藤田(2010)|藤田(2010)]], pp.174-175.</ref><ref>[[動物#%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8B%95%E7%89%A9%E5%AD%A6%E4%BC%9A2018|日本動物学会2018]] pp.68-69, 90-91。</ref>:{{clade|{{clade |
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{{clade|{{clade |
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|1=[[頭索動物]]:一生、全体長に渡って脊索を持つ。ナメクジウオの仲間 |
|1=[[頭索動物]]:一生、全体長に渡って脊索を持つ。ナメクジウオの仲間 |
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|label2=オルファクトレス |
|label2=[[オルファクトレス]] |
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|sublabel2={{sname||Olfactores}}|2={{clade |
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|1=尾索動物:一生ないし一時期に尾部に脊索を持つ。ホヤ綱、オタマボヤ綱、タリア綱(ヒカリボヤ、ウミタル、サルパなど)からなる。 |
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|1=尾索動物:一生(オタマボヤ綱)ないし一時期に尾部に脊索を持つ。[[ホヤ綱]]{{refn|group="注釈"|ただしホヤ綱は残りの両者を内部の別のクレードに含む側系統群<ref name="Nishikawa"/>。}}、[[オタマボヤ綱]]、[[タリア綱]]([[ヒカリボヤ]]、[[ウミタル]]、[[サルパ]]など)からなる。 |
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|2=[[脊椎動物]]:脊索の周囲に脊椎が形成される。魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類からなる |
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|2=[[脊椎動物]]:脊索の周囲に脊椎が形成される。[[無顎類]]{{small|([[ヌタウナギ類]]・[[ヤツメウナギ類]])}}、[[軟骨魚類]]、[[硬骨魚類]]([[条鰭類]]・[[肉鰭類]]{{small|([[シーラカンス目]]・[[ハイギョ目]]・[[四肢動物]])}})からなる。 |
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}} |
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}} |
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}}|label1=[[脊索動物]]}} |
}}|label1=[[脊索動物]]}} |
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尾索動物と頭索動物はかつてまとめて[[原索動物]]と呼ばれていた<ref name="shirayama-1-5-4"/>。ホヤ類と頭索動物はともに囲鰓腔を持ち濾過摂食を行うが、後者は肛門が独立して体外に開くことと雌雄異体であることで異なる<ref name="Nishikawa"/>。 |
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== 人間との関わりによる分類 == |
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脊椎動物から[[四肢動物]]を除いたグループは伝統的に[[魚類]]と呼ばれ、[[分岐分類学]]的には四肢動物は硬骨魚類に含まれるため、[[側系統群]]となる{{Sfn|藤田|2010|pp=174-180}}<ref name="Kai">{{cite|author=甲斐嘉晃|chapter=脊椎動物(魚類) {{small|―水中で多様に進化した分類群}}|date=2018|pages=92-95}} in [[動物#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。同様に四肢動物は[[両生類]]、[[爬虫類]]、[[鳥類]]、[[哺乳類]]からなるが{{Sfn|藤田|2010|pp=174-180}}<ref name="Kai"/>、このうち爬虫類は[[羊膜類]]から鳥類と両生類を除いた側系統群である{{Sfn|藤田|2010|pp=174-180}}<ref>{{cite|author=栗田和紀|chapter=脊椎動物(爬虫類) {{small|―陸に卵を産み始めた脊椎動物}}|date=2018|pages=98-99}} in [[動物#日本動物学会 2018|日本動物学会 2018]]</ref>。 |
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== 分類の歴史 == |
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=== アリストテレスの分類 === |
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伝統的に諸民族で、生物は植物と動物に大別されてきた{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=994}}。古代ギリシアの[[アリストテレス]]は『[[動物誌 (アリストテレス)|動物誌]] {{lang|grc|Περὶ Τὰ Ζῷα Ἱστορίαι}}』などの著作において動物と植物の中間的存在を認めつつこの区分を採用し、感覚と運動の能力は動物にだけ見られるとし、霊魂の質的差異によって理論的に説明しようとした{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=994}}<ref name="sato-aristotle">[[#佐藤ほか 2004|佐藤ほか 2004]], p.196</ref>。さらに動物を赤い血を持つ'''有血動物'''({{lang|grc|ἐναίμος}}、現代の「脊椎動物」に相当)とそうでない'''無血動物'''({{lang|grc|ἀναίμος}}、現代の「[[無脊椎動物]]」に相当)に二分し、発生様式と足の数を主要な基準として体系的に細分した{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=994}}<ref name="suzuki-aristotle">{{cite press|url=https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=29838&item_no=1&attribute_id=17&file_no=1|author=鈴木大地|title=アリストテレス『動物発生論』の現代生物学・科学哲学的検討I|pages=1-23|accessdate=2021-08-15}}</ref>。アリストテレスは[[リンネ式階層分類]]とは異なり、全ての上位分類に「類 {{lang|grc|γένος}}」を用い<ref name="suzuki-aristotle"/>、有血動物を人類・[[胎生]]四足類・[[卵生]]四足類・[[鳥類]]・[[魚類]]に、無血動物を軟体類({{lang|grc|μαλάκια}}、現在の[[頭足類]])・軟殻類(軟甲類、{{lang|grc|μαλακόστρακα}}、現在の[[軟甲類]] {{sname||Malacostraca}}に相当)・有節類({{lang|grc|ἔντομα}}、現在の[[節足動物]]から[[甲殻類]]を除いた概念)・殻皮類({{lang|grc|ὀστρακόδερμα}}、現代の[[貝類]]に加え、[[ウニ]]類、[[ホヤ]]類を含む)に分けた<ref name="sato-aristotle"/><ref name="suzuki-aristotle"/>。 |
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=== リンネの分類 === |
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動物界には、上記のような動物[[門 (分類学)|門]]が置かれるが、これは[[カール・フォン・リンネ]]の『自然の体系 第10版』(1758)において、属より高次の階級として置いた「[[綱 (分類学)|綱]]」に由来するとされる<ref name="Kakui"/>。リンネは『自然の体系 初版』(1735)で動物を四足綱 {{sname||Quadrupedia}}、鳥綱 {{sname||Aves}}、両生綱 {{sname||Amphibia}}、魚綱 {{sname||Pisces}}、昆虫綱 {{sname||Insecta}}、蠕虫綱 {{sname||Vermes}}に分けた<ref name="systema">[[#松浦 2009|松浦 2009]], pp.17-18</ref>。第10版では、初版の魚綱に含まれていた[[クジラ]]を四足綱に加え、哺乳綱 {{sname||Mammalia}}としただけでなく、[[ヤツメウナギ]]や[[サメ]]などが両生綱に含められた<ref name="systema"/>。 |
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{| class="wikitable" |
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!『自然の体系 初版』(1735)<ref name="systema"/> !! 『自然の体系 第10版』(1758)<ref name="systema"/> |
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* [[四足綱]] {{sname||Quadrupedia}} |
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** ヒト形目 {{sname||Anthropomorpha}} |
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** 猛獣目 {{sname||Ferae}} |
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** ヤマネ目 {{sname||Glires}} |
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** 大獣目 {{sname||Jumenta}} |
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** 畜獣目 {{sname||Pecora}} |
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* [[哺乳綱]] {{sname||Mammalia}} |
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** 霊長目 {{sname||Primate}} |
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** 鈍獣目 {{sname||Bruta}} |
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** 猛獣目 {{sname||Ferae}} |
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** 吻獣目 {{sname||Bestiae}} |
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** ヤマネ目 {{sname||Glires}} |
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** 畜獣目 {{sname||Pecora}} |
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** 蹄獣目 {{sname||Belluae}} |
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** 鯨目 {{sname||Cete}} |
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* [[鳥綱]] {{sname||Aves}} |
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** ワシタカ目 {{sname||Accipetres}} |
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** キツツキ目 {{sname||Picae}} |
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** 大嘴目 {{sname||Macrorhynchae}} |
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** ガンカモ目 {{sname||Anseres}} |
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** シギ目 {{sname||Scolopages}} |
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** キジ目 {{sname||Gallinae}} |
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** スズメ目 {{sname||Passers}} |
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* 鳥綱 {{sname||Aves}} |
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** ワシタカ目 {{sname||Accipetres}} |
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** キツツキ目 {{sname||Picae}} |
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** ガンカモ目 {{sname||Anseres}} |
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** コウノトリ目 {{sname||Grallae}} |
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** キジ目 {{sname||Gallinae}} |
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** スズメ目 {{sname||Passers}} |
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* [[両生綱]] {{sname||Amphibia}} |
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** [[ヘビ目]] {{sname||Serpentia}} |
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* 両生綱 {{sname||Amphibia}} |
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** 爬虫目 {{sname||Reptiles}} |
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** ヘビ目 {{sname||Serpentes}} |
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** 遊泳目 {{sname||Nantes}} |
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* [[魚綱]] {{sname||Pisces}} |
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** 平尾目 {{sname||Plagiuri}} |
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** 軟骨鰭目 {{sname||Chondropterygii}} |
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** 鰓条目 {{sname||Branchiostegi}} |
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** 棘鰭目 {{sname||Achanthopterygii}} |
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** 軟鰭目 {{sname||Malacopterygii}} |
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* 魚綱 {{sname||Pisces}} |
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** 無足目 {{sname||Apodes}} |
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** 喉位目 {{sname||Jugulares}} |
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** 胸位目 {{sname||Thoracici}} |
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** 腹位目 {{sname||Abdominales}} |
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** 鰓条目 {{sname||Branchiostegi}} |
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* [[昆虫綱]] {{sname||Insecta}} |
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** 顕翅目 {{sname||Angioptera}} |
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** [[半翅目]] {{sname||Hemiptera}} |
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** [[無翅目]] {{sname||Aptera}} |
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* 昆虫綱 {{sname||Insecta}} |
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** [[鞘翅目]] {{Sname||Coleoptera}} |
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** 半翅目 {{sname||Hemiptera}} |
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** [[鱗翅目]] {{Sname||Lepidoptera}} |
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** [[脈翅目]] {{Sname||Neuroptera}} |
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** [[膜翅目]] {{sname||Hymenoptera}} |
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** [[双翅目]] {{Sname||Diptera}} |
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** 無翅目 {{sname||Aptera}} |
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* 蠕虫綱 {{sname||Vermes}} |
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** 爬行目 {{sname||Reptilia}} |
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** 有殻目 {{sname||Testacea}} |
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** 植虫目 {{Sname||Zoophyta}} |
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* 蠕虫綱 {{sname||Vermes}} |
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** 腸虫目 {{sname||Intestina}} |
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** 軟体目 {{sname||Mollusca}} |
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** 有殻目 {{sname||Testacea}} |
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** 植石目 {{Sname||Lithophyta}} |
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** 植虫目 {{Sname||Zoophyta}} |
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|} |
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=== リンネ以降 === |
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このリンネが動物を分けた綱は[[ジョルジュ・キュヴィエ]] (1812)により "{{lang|fr|embranchement}}" (以下門と訳す)とされ、階級としての綱はその下位の[[階級 (生物学)|階級]]名として残された<ref name="Kakui"/>。キュヴィエの分類体系では動物を大きく[[脊椎動物]]門・[[軟体動物]]門・[[体節動物]]門・[[放射動物]]門の4群に分けた<ref>[[#松浦 2009|松浦 2009]], pp.20-21</ref>。この階級を「門 {{lang|la|Phylum}}」としたのは[[エルンスト・ヘッケル]] (1866)で、脊椎動物門・体節動物門・軟体動物門・棘皮動物門・[[腔腸動物]]門の5門を認めた<ref name="Kakui"/>。 |
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=== かつて存在した動物門 === |
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[[File:Myxobolus spinacurvatura.jpg|thumb|200px|粘液胞子虫の一種 {{Snamei||Myxobolus spinacurvatura}}(ミクソゾア動物)]] |
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[[File:Corynosoma cetaceum.jpg|thumb|200px|[[古鉤頭虫綱]]の一種 {{snamei||Corynosoma cetaceum}}(鉤頭動物)]] |
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[[File:Colony of Lamellibrachia satsuma.png|thumb|300px|[[サツマハオリムシ]] {{snamei||Lamellibrachia satsuma}}(有鬚動物;ハオリムシ動門)]] |
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[[File:Linguatula.jpg|thumb|200px|[[イヌシタムシ]] {{snamei||Linguatula serrata}}(舌形動物)]] |
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研究の進行、特に分子系統解析の台頭により解体または他の動物門の下位に吸収された動物門も多く存在する。詳細は各項を参照。 |
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; [[腔腸動物]]門 {{sname||Coelenterata}} {{AUY|Hatschek|1888}} |
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: 現在は[[刺胞動物]]門および[[有櫛動物]]門に分割されている。かつては胃水管系を[[腔腸]] ({{lang|en|coelenteron}})と呼び、腔腸動物としてまとめられていた<ref name="kubota">{{cite |author=久保田信|title=有櫛動物と刺胞動物の関係|pages=116-117|date=2000}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref>。また[[放射相称動物]] {{sname||Radiata}} と呼ばれることもあった<ref name="sato-11"/>。有櫛動物は、細胞器官である刺胞の代わりに1個の細胞が変形してできた膠胞を持つことや、上皮細胞の各細胞が2本以上の繊毛を備える多繊毛性であること、中胚葉性の真の筋肉細胞を持つこと、卵割は決定性卵割であること、複数の感覚器が放射相称的に配置される刺胞動物とは異なり1個のみを反口側に持つことなど、刺胞動物と大きく異なっており、しかも分子系統解析により腔腸動物が単系統とならないことがわかったので両者は別の門として分けられている<ref name="藤田 2010, p.119">[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.119</ref><ref name="kubota"/>。 |
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; [[ミクソゾア]]門 {{sname||Myxozoa}} {{AUY|Grassé|1970}} |
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: 原生動物の一群として扱われることもあったが、極糸が入った極嚢という構造が刺胞に似ており、分子系統解析の結果、現在では刺胞動物に含められる<ref name="nonbilateria"/><ref>[[#藤田 2010|藤田 2010]], pp.119-120</ref><ref name="Ueshima">{{cite |author=上島励|title=ミクソゾアの系統学的位置|page=93|date=2000}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref>。後生動物特有の細胞間接着構造や動物のみに存在する''Hox'' 型[[ホメオティック遺伝子]]を持ち、寄生性の獲得により二次的に退化した体制となったと考えられている<ref name="Ueshima"/>。 |
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; [[中生動物]]門 {{sname||Mesozoa}} {{AUY|van Beneden|1876}} |
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: 現在は[[二胚動物]]門および[[直泳動物]]門に分割されている。[[:en:Edouard Van Beneden|Édouard van Beneden]] ([[1876年|1876]])により[[原生動物]]と[[後生動物]]の中間に位置をする動物群として、ニハイチュウ(二胚動物)のみを含む群として設立され、のちにvan Beneden (1882)にチョクエイチュウ(直泳動物)がこれに含められた<ref name="furuya">{{cite journal|author=古屋秀隆|title=中生動物研究の現状|date=2004|publisher=[[日本動物分類学会]]|journal=タクサ|number=16|pages=1-9}}</ref>。その後様々な生物が含められたがその正体が[[渦鞭毛藻]]や[[ミクソゾア]]であることがわかり、除かれた<ref name="furuya"/>。Kozloff (1990)は、あるステージのニハイチュウ類はチョクエイチュウ類のそれに表面的には似ているが、それ以外の点においては明確に異なっているとして、これらを独立の門に置いた<ref>[[#Kozloff 1990|Kozloff 1990]], pp.212-216</ref>。 |
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; [[一胚葉動物]]門 {{sname||Monoblastozoa}} {{AUY|R. Blackwelder|1963}} |
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: 1982年にアルゼンチンの岩塩から発見された1層の体皮細胞からなる生物であるが、存在が疑問視されている<ref>[[#藤田 2010|藤田 2010]], p.125</ref>。 |
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; [[袋形動物]]門 {{sname||Aschelminthes}} ''{{lang|la|taxon [[:wikt:en:inquirendum|inquirendum]]}}'' |
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: 偽体腔をもつ動物をまとめた「ごみ箱分類群 wastebasket taxon」で、現在は[[輪形動物]]・[[鉤頭動物]]・[[腹毛動物]]・[[線形動物]]・[[類線形動物]]・[[動吻動物]]・[[胴甲動物]]・[[鰓曳動物]]・[[内肛動物]]に分割されている<ref name="coelom"/>。鉤頭動物・線形動物・類線形動物は[[円形動物]]としてまとめられたこともあった。 |
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; [[前肛動物]]門 {{sname||Prosopygii}} {{AUY|Lang|1888}} |
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: [[箒虫動物]]、[[苔虫動物]]、[[腕足動物]]、ほかにも[[星口動物]]および[[フサカツギ類]]などはかつてまとめて前肛動物と呼ばれ1門に置かれていた<ref>{{cite|author=久米又三・織田秀実|date=1957|title=外肛動物|pages=171-198}} in [[#久米・團 1957|久米・團 1957]]</ref><ref>{{cite journal|date=1970|author=馬渡静夫|title=触手動物の系統|journal=哺乳類科学|volume=20-21|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/10/2/10_2_2_61/_pdf/-char/ja|accessdate=2021-08-21|pages=61-68}}</ref>。箒虫動物・苔虫動物・腕足動物の3分類群は現在でも触手冠動物として門より高次の分類群をなすことがある<ref name="Kakui"/>。 |
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; [[鉤頭動物]]門 {{sname||Acanthocephala}} {{AUY|Kohlreuther|1771}} |
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: 現在は輪形動物に内包され、かつての狭義の輪形動物は側系統となる<ref name="Kajihara"/>。狭義の輪形動物および鉤頭動物を門として残し、現在の広義の輪形動物を[[共皮類]](多核皮動物{{Sfn|藤田|2010|pp=130-131}}) {{sname||Syndermata}} とすることもある<ref name="Kajihara"/>。 |
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; [[有鬚動物]]門 {{sname||Pogonophora}} {{AUY|Johansson|1937}} |
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: 現在は[[環形動物]]門に内包されている<ref name="new"/>。狭義の有鬚動物(ヒゲムシ)と下記のハオリムシは体後端の体節構造および成体での消化管の喪失などの共有派生形質をもち、まとめて有鬚動物とする考えが主流であった<ref name="new"/>。[[溝副触手綱]] {{sname||Canalipalpata}} [[ケヤリ目]] {{sname||Sabellida}}に含まれる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=1585}}1科、[[シボグリヌム科]] {{sname||Siboglinidae}}となっている。 |
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; [[ハオリムシ]]動物門 {{sname||Vestimentifera}} {{AUY|Webb|1969}} |
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: 現在は[[環形動物]]門に内包されている<ref name="new"/>。もともと上記の有鬚動物に含められていたが、ジョーンズ (1985)は体腔の構造の違いを重視し、独立した門に置いた<ref name="new">{{cite |author=白山義久|chapter=総合的観点から見た無脊椎動物の多様性と系統|date=2000|pages=27-30}} in [[#岩槻・馬渡 2000|岩槻・馬渡 2000]]</ref>。しかし、当時よりSouthward (1988)のように反対意見も多く、上記のような共有派生形質を持つことから以降も有鬚動物とされることが多かった<ref name="new"/>。現在は上記のシボグリヌム科に含められる。 |
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; [[星口動物]]門 {{sname||Sipuncula}} {{AUY|Rafinesque|1814}} |
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: 現在は[[環形動物]]門に内包されている{{Sfn|藤田|2010|p=145}}。分子系統解析により[[フサゴカイ目]]と姉妹群をなすことが分かった{{Sfn|藤田|2010|p=145}}。 |
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; [[ユムシ動物]]門 {{sname||Echiura}} {{AUY|Newby|1940}} |
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: 現在は[[環形動物]]門に内包されている{{Sfn|藤田|2010|p=145}}。分子系統解析により[[イトゴカイ目]]に内包されることが分かった{{Sfn|藤田|2010|p=145}}。 |
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; [[舌形動物]]門 {{sname||Pentastomida}} {{AUY|Diesing|1836}} |
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: 現在は[[節足動物]]門に内包されている。魚類の外部[[寄生虫]]である[[鰓尾類]]と近縁であることがわかり{{Sfn|藤田|2010|p=163}}、現在は[[ウオヤドリエビ綱]]の中の1亜綱、[[舌虫亜綱]] {{sname||Pentastomida}} {{AUY|Diesing|1836}} とされる<ref name="arthropods"/>。 |
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; [[単肢動物]]門 {{sname||Uniramia}}<ref name="Barnes">{{cite book|和書|author=R.S.K.バーンズ 他|translator=本川達雄 監訳|title=図説無脊椎動物学|date=2009-06-25|isbn=978-4-254-17132-7}}</ref> |
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: 現在は[[節足動物]]門に内包されている。[[昆虫類]]および[[多足類]]を共通の性質を持つとして合わせ、[[鋏角類]]や[[甲殻類]]とともに独立した門とされることもあった<ref name="Barnes"/>。しかし、現在は昆虫は[[汎甲殻類]]として甲殻類と姉妹群をなすことが明らかになっており、もはや用いられない。 |
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=== 新しい動物門 === |
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1960年以降に提唱され、現在も用いられている動物門を挙げる。詳細は各項を参照。 |
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; [[平板動物]]門 {{Sname|Placozoa}} {{AUY|Grell|1971}} |
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: 1883年にオーストラリアの水族館で発見されたが、採集方法が確立し詳細な形態観察できるまで存在が認められなかった<ref name="new"/>。1971年に平板動物門が設立された{{Sfn|藤田|2010|p=122}}。 |
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; [[顎口動物]]門 {{Sname|Gnathostomulida}} {{AUY|Ax|1956}} |
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: アックス (1956)によって発見され扁形動物の1目として記載されたが、リードゥル (1969)により独立の動物門に移された<ref name="Kajihara"/><ref name="new"/>。 |
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; [[胴甲動物]]門 {{Sname|Loricifera}} {{AUY|Kristensen|1983}} |
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: クリステンセン (1983)により記載された<ref name="new"/>。 |
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; [[有輪動物]]門 {{Sname|Cycliophora}} {{AUY|Funch & Kristensen|1995}} |
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: Funch & Kristensen (1995)により記載された<ref name="new"/>{{Sfn|藤田|2010|p=150}}。 |
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; [[微顎動物]]門 {{Sname|Micrognathozoa}} {{AUY|Kristensen & Funch|2000}} |
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: 2000年にグリーンランドの湧水から発見され、[[担顎動物]]門の一綱として記載された{{Sfn|藤田|2010|p=130}}。 |
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; [[珍無腸動物]]門 {{Sname|Xenacoelomorpha}} {{AUY|Philippe ''et al.''|2011}} |
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: 無腸類と皮中神経類を含む無腸動物とチンウズムシの仲間を合わせたクレードである<ref name="Xen"/>。 |
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== 人間との関わりによる区分 == |
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=== 使役動物 === |
=== 使役動物 === |
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[[ウマ|馬]]など人間が使役に利用する動物を使役動物という<ref name="mat04">{{Cite web |url=https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/arikata/h16_01/mat04.pdf |title=資料4 「動物の愛護管理の歴史的変遷」 |publisher=環境省 |accessdate=2019-12-26}}</ref>。西欧の動物保護法は使役動物の保護から出発した<ref name="mat04" />。 |
[[ウマ|馬]]など人間が使役に利用する動物を使役動物という<ref name="mat04">{{Cite web |url=https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/arikata/h16_01/mat04.pdf |title=資料4 「動物の愛護管理の歴史的変遷」 |publisher=環境省 |accessdate=2019-12-26}}</ref>。西欧の動物保護法は使役動物の保護から出発した<ref name="mat04" />。 |
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=== 畜産動物 === |
=== 畜産動物 === |
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人間が畜産に利用する動物を畜産動物という。イギリスの動物の福祉の考え方はもともと畜産動物を対象として出発した<ref name="mat04" />。 |
人間が畜産に利用する動物を畜産動物という。イギリスの[[動物福祉|動物の福祉]]の考え方はもともと畜産動物を対象として出発した<ref name="mat04" />。 |
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=== 愛玩動物 === |
=== 愛玩動物 === |
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[[実験動物]]とは、[[ラット]]や[[サル]]など実験を目的として飼育されている動物をいう<ref name="Seisakujouhou-10900000" />。 |
[[実験動物]]とは、[[ラット]]や[[サル]]など実験を目的として飼育されている動物をいう<ref name="Seisakujouhou-10900000" />。 |
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== 後生動物以外の学術的な用法 == |
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== 参考文献 == |
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記事冒頭の通り、動物界(後生動物)を「動物」として扱うことが一般的であるが{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=994}}、「動物」の語は学術的な場面でもほかの語義を持つことがある。 |
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* 白山義久編集;岩槻邦男・馬渡峻輔監修『無脊椎動物の多様性と系統』、(2000)、裳華房 |
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; [[原生動物]] ({{lang|en|protozoans}}) |
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* {{Cite book|ref=藤田(2010)|和書|author=藤田敏彦|editor=太田次郎、赤坂甲治、浅島誠、長田敏行|title=動物の系統分類と進化|series=新・生命科学シリーズ|date=2010-4-28|year=|accessdate=|publisher=裳華房|isbn=978-4785358426|author2=|author3=|author4=|author5=|author6=|author7=|author8=|author9=|}} |
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: 捕食や移動など、動物的な特徴を持った単細胞や群体性真核生物(非単系統群)に対する慣用名{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=424f}}。[[二界説]]の時代に動物界における原生動物門(または原生動物亜界 ){{sname||Protozoa}} とされ、[[鞭毛虫]]類、[[肉質虫]]類、[[胞子虫]]類、[[繊毛虫]]類に細分されていた{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=424f}}。 |
|||
* {{Cite book|ref=浅島・駒崎(2011)|和書|author=浅島誠|editor=太田次郎、赤坂甲治、浅島誠、長田敏行|title=動物の発生と分化|series=新・生命科学シリーズ|date=2011-9-21|year=|accessdate=|publisher=裳華房|isbn=978-4785358495|author2=駒崎伸二|author3=|author4=|author5=|author6=|author7=|author8=|author9=|}} |
|||
; [[動物プランクトン]]({{lang|en|zooplankton}}) |
|||
*{{Cite book|ref=松本(2015)|和書|author=松本忠夫|title=動物の生態: 脊椎動物の進化生態を中心に|series=新・生命科学シリーズ|date=2015-2-21|publisher=裳華房|isbn=978-4785358624|author2=||year=|accessdate=|author3=|author4=|author5=|author6=|author7=|author8=|author9=|editor=太田次郎、赤坂甲治、浅島誠、長田敏行|author-link=}} |
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: [[プランクトン]]のうち、[[鞭毛]]などにより運動性と持つもので、[[原生動物]]、[[節足動物]]([[橈脚類]]・[[鰓脚類]])、[[輪形動物]]を主とする{{Sfn|水野|1977|p=266}}。 |
|||
* {{Cite book|ref=馬渡2013|和書|last=馬渡|author=|first=峻輔|title=動物の多様性30講|edition=初版|series=図説生物学30講〔環境編〕3|date=2013年5月25日|year=2013|accessdate=|publisher=朝倉書店|isbn=978-4-254-17723-7}} |
|||
; [[動物性機能]]({{lang|en|animal function}}) |
|||
*{{Cite book|和書|title=動物学の百科事典|date=2018-9-28|year=|publisher=丸善出版|author=公益社団法人日本動物学会|isbn=978-4621303092|ref=日本動物学会2018}} |
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: 生体の持つ機能のうち、[[運動]]・[[感覚]]・[[神経]]相関の3つを指し、この働きに携わる器官を'''動物性器官'''({{lang|en|animal organ}})と呼ぶ{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=995h}}。古くから人体[[生理学]]において、[[栄養]]・[[成長]]・[[生殖]]・[[呼吸]]・[[血液循環]]・[[排出]]などの[[植物性機能]]に対し、生体の対外的・能動的働きかけとしての[[行動]]系を実現することが多いため、「動物」の名を冠し呼ばれる{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=995h}}。植物でも動物性機能は多く見られるが、[[医学]]では現在でも用いられている{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=995h}}。 |
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; [[動物極]]({{lang|en|animal pole}}) |
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: 動物の卵細胞や初期胚において、[[極体]]の生じる極、または重力と平衡な環境において上方に位置する極を指す{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=995a}}。これらは一致しないこともある{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=995a}}。この極の付近から上記の動物性器官(神経系・感覚器官・運動器官)が生じると考えられたためこの名があるが、そうでない場合もある{{Sfn|巌佐ほか|2013|p=995a}}。 |
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== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
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=== 出典 === |
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== 参考文献 == |
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2021年9月30日 (木) 05:31時点における版
動物界 | ||||||||||||
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各画像説明[注釈 1]
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分類 | ||||||||||||
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シノニム | ||||||||||||
門 | ||||||||||||
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動物(どうぶつ、羅: animalia[注釈 2]、英: animal)とは、
- 生物学における生物の分類群の一つ。かつて生物は、感覚と運動能力によって植物と動物に大別されていたが[注釈 3]、動物はヘッケルにより多細胞性の後生動物と単細胞性の原生動物[注釈 4] に分けられた[1]。ホイッタカーによる五界説ではこの後生動物のみを動物界 Animaliaとして扱い、これを「動物」として扱うことが一般的である[1]。
- 日常語において、動物とは1. の意味の動物のうち、ヒト以外のもの[2]。特に哺乳類に属する生物を指す事が多い[2]。
本項では1. の意味を解説し、特に断りのない限り、後生動物を指すものとする。
動物を扱う学問を動物学といい、動物の生物学的側面に加え、動物と人とのかかわりが対象とされる[3]。動物の研究史についてはこの「動物学」も参照。
分類
動物は、哺乳類、爬虫類、鳥類、両生類、魚類といった脊椎動物はもちろん、貝類、昆虫、サナダムシ、カイメンなど、幅広い種類の生物を含んだ系統群である。
上位分類
20世紀末の分子遺伝学の知見を踏まえると、生物は真正細菌、古細菌、真核生物の3つに分かれるが(3ドメイン説)[4][5][6]、そのうち動物は植物、菌類(キノコやカビ)、原生生物とともに真核生物に属する。なお、原生生物の一部である原生動物(ゾウリムシ、ミドリムシ、アメーバなど)は本項で言う動物(後生動物)とは系統上の位置が異なり、それ自身も多系統である事が判明している。
なお、初等教育では3ドメイン説以前の二界説(2011年まで)ないし五界説(2012年以降)に基づいて生物の分類を説明している[7]。二界説での「動物」は原生動物を含み、3ドメイン説での知見を反映しない。一方、五界説での動物は3ドメイン説のものと基本的に同じであり、原生動物は原生生物として動物とは区別されている。
動物は、真核生物の中でもオピストコンタ(後方鞭毛生物、Opisthokonta)という単系統性が強く支持される系統群に属し、ここには動物以外に菌類や一部の真核生物が属する。オピストコンタに属する生物は、後ろ側にある1本の鞭毛で進むという共有形質を持ち、動物の精子やツボカビの胞子が持つ鞭毛がこれにあたる。オピストコンタはアメボゾア Amoebozoaとともにアモルフェア Amorphea というクレードにまとめられる[8][9]。
さらにオピストコンタにはホロゾア Holozoa というクレードと、ホロマイコータ Holomycota というクレードがあり、動物は前者、菌類は後者に属する[8]。なお動物の起源とされる(後述)襟鞭毛虫もホロゾアに属する[8][10]。前述の通り後生動物を動物界として扱うこと[11][12][13] が多いが、このホロゾアを動物界と見なす試み[14]もある。
また、Adl et al. (2019)では、後生動物 Metazoa Haeckel, 1874 emend. Adl et al., 2005を正規のランク[注釈 5]とし、動物 Animalia Linnaeus, 1758 および真正後生動物 Eumetazoa Bütschli, 1910と同義(後生動物のシノニム)として海綿動物、平板動物、刺胞動物、有櫛動物を含めながらもそれらを除いた左右相称動物を界に相当する階級とした[8]。
学名と命名法
動物の学名は国際動物命名規約にて運用される[15]。現行の規約は2000年1月1日に発効した第4版である[16]。この命名規約では「動物」という語は本項で示す後生動物を指すが、原生生物であっても研究者によって動物(原生動物)として扱われる場合は命名法上は「動物」として扱われ、この命名規約が適用される[17][18]。(真核生物の命名規約には、国際動物命名規約と国際藻類・菌類・植物命名規約があり、このどちらかに則らなければ学名と見なされない。)
動物命名法の起点はカール・フォン・リンネ (1758)の Systema Naturae 『自然の体系 第10版』およびカール・アレクサンダー・クラーク (Carl Alexander Clerck) (1757)の Aranei Svecici であり、ともに1758年1月1日に出版されたとみなされる[19]。
特徴
動物は一般的に以下のような共通する形質を持つ。
- 多細胞の真核生物である[20][21]。
- 従属栄養生物である[21][22]。すなわち植物のような独立栄養生物と違い、無機物から自力で栄養源を得る事はできない。
- 非常に少数の例外的な動物を除き、好気呼吸する[23]。すなわち酸素を使った細胞呼吸をする。
- 運動性がある[24]。すなわち、自発的に体を動かす事ができる。ただし生涯の途中で付着生物と化すなど、運動性がない時期がある動物もいる。
- ほとんどの動物には、胚発生の初期に胞胚という段階がある[25]。
また、動物の体制(ボディプラン、bodyplan、Bauplan)を比較する上で、細胞の単複(多細胞化)、組織や器官の有無(器官分化)、そして体軸の対称性、胚葉性と体腔が重視されてきた[26][27]。
体軸
胚が形成される過程で、体軸という体の向きが決定がなされ、その向きには前後軸(頭尾軸)、背腹軸、左右軸の3つの基本的な軸がある[28][29]。動物のパターン形成において、体軸の決定など細胞に位置情報を与える機能をもつ物質をモルフォゲンと呼ぶ[30]。
前後軸(antero-posterior axis、頭尾軸、一次軸、吻尾軸)は動物の体制の基本となる軸で、明瞭な背腹軸のない刺胞動物にも見られ、頭部(口)から尾部(肛門)を貫いている[31]。前後軸の形成にはほとんどの動物(例えば、脊椎動物やコオロギ(節足動物)やプラナリア(扁形動物)から刺胞動物まで)で Wntリガンド(細胞外分泌性因子)が関わっており、尾部側で Wnt、頭部側で Wnt 拮抗因子が発現している[31]。ただし、ショウジョウバエ(節足動物)では、初期胚において細胞膜の存在しない合胞体として発生する(表割)ため、Wnt のような分泌性因子の濃度勾配ではなくビコイド (bicoid)というホメオドメインを持つ転写因子が蛋白質レベルで頭尾軸に沿って濃度勾配を形成し、形態形成が行われる[31][30]。また、前後軸に沿った分節の形成にもホメオドメインと呼ばれるDNA結合ドメインを共通に持っている Hox クラスター遺伝子が働いており、胚発生が進むにつれ、遺伝子座の 3'-側から順に前後軸に沿って分節的に発現することで前後軸に沿ったそれぞれの位置に固有な形態が形成される[31][32]。Hox 遺伝子群は海綿動物をのぞくほぼすべての後生動物が持っている[32]。
背腹軸(dorso-ventral axis)も同様に左右相称動物で認められる動物の体制の基本となる体軸である[31]。扁形動物、節足動物、棘皮動物、脊椎動物など多くの動物で、細胞外に放出される BMP(骨形成因子[33])というリガンドと Chordin などの BMP拮抗因子によってつくられるBMP活性の濃度勾配によって背腹軸が形成される[31]。外胚葉はBMP活性が高いと表皮に、低いと神経に分化するが、19世紀前半から脊椎動物と他の動物では背腹軸に沿った器官配置が反転していることが指摘されており、実際に脊椎動物でBMP が腹側で発現し、背側で Chordin などが発現するのに対し、節足動物(ショウジョウバエ)では背側で BMP に相同な分子 (Dpp, Decapentaplegic) が、腹側で BMP拮抗因子(同、Sog)が発現していることが分かっている[31][33]。逆にショウジョウバエにおける腹側を決めるのは dorsal 遺伝子で、細胞性胞胚期において腹側に転写因子ドーサル蛋白質 (Dorsal)が多く分布し、背側への分化を抑制する[33]。胚発生時から背腹軸が決まっている節足動物とは異なり、両生類(脊椎動物)では、受精の際に精子の侵入と反対側に灰色三日月環が形成され、そこから原腸陥入が起こって Wnt シグナル伝達系のディシェベルド (Dsh, Dishevelled) が活性化して他の因子を活性化し、反応の下流でオーガナイザーを誘導することで背側となる[33]。
さらに、脊椎動物の神経管の背腹軸は、胚の背腹軸形成の完成後に進行するが、神経管の腹側領域(フロアプレート)や脊索で Shh (sonic hedgehog) 蛋白質、Wnt 拮抗因子、BMP拮抗因子が発現し、これらの濃度勾配によって神経管内で下流標的因子の発現活性が活性化または抑制されることで種々の神経細胞が分化する[30][31]。これらの発現パターンは左右相称動物の中枢神経系で広く保存されている[31]。
左右軸は動物の3体軸のうち最後に決まる軸で、左右非対称性が生じるメカニズムは進化的に多様である[29]。脊椎動物ではまず胚の中央部(ノード)で繊毛の回転により左右対称性が破られ、左側の中胚葉で Nodal および Leftyといったシグナル分子が活性化し、腹腔内で臓器が非対称な形と位置で形成される[29]。それに対し、ショウジョウバエ(節足動物)では、細胞の形態のゆがみに起因して消化管が非対称な形態をとる[29]。腹足類(軟体動物)では殻の巻く方向が発生初期の卵割様式に依存して Nodal や Pitx2 などの因子の制御により左巻きか右巻きかが変化する[29]。
胚葉性
受精卵が卵割を繰り返し形成される細胞の層を胚葉(はいよう、germ layer)と呼ぶ[34]。個体発生の過程では、上皮細胞の層に囲まれ体内と体外の区別がつく胞胚の状態から、原腸陥入によって内胚葉(ないはいよう、endoderm)と外胚葉(がいはいよう、ectoderm)が形成され、二胚葉性の嚢胚(原腸胚)となる[27][34]。そこからさらに内外両胚葉の何れかから中に細胞が零れ落ち、中胚葉(ちゅうはいよう、mesoderm)が形成される[27][34]。外胚葉由来の中胚葉を外中胚葉(がいちゅうはいよう、ectomesoderm[注釈 6])、内胚葉由来の中胚葉を内中胚葉(ないちゅうはいよう、entomesoderm[注釈 7])と呼ぶこともある[34][35]。外中胚葉からなる細胞は全て間充織細胞 (mesenchyme)としてできるが、棘皮動物や箒虫動物など、内中胚葉でも間充織細胞として形成されるものもある[35]。
系統進化の仮説において、多細胞化して細胞同士の密着により体内と外界を隔離するようになった動物が、口と消化管を生じ、内胚葉と外胚葉の区別がなされるようになった二胚葉動物(ディプロブラスティカ[36]、Diploblastica)となり、それが更に中胚葉ができて三胚葉動物(トリプロブラスティカ[36]、Triploblastica)となったと考えられている[27]。海綿動物以外の動物は(二次的に喪失したものを除き)胚葉の分化がみられ、真正後生動物と呼ばれる[37]。刺胞動物および有櫛動物は内中胚葉を持たないため、かつては二胚葉動物と見なされてきたが、内胚葉と外胚葉の間に外中胚葉による間充織細胞を持つため、結合組織に細胞がみられないヒドロ虫類を除き、三胚葉性であるとみなされることが多い(それぞれの動物門については#現生の動物の系統も参照)[34][35]。平板動物も中胚葉を欠くとされるが、前者には上皮の下に細胞がみられる[34]。二胚動物および直泳動物にも中胚葉がなく、後生動物ですらない中生動物とされていたが、現在では退化的に単純な体制になったと解釈されている[34]。
体腔
外胚葉と内胚葉の間隙に中胚葉が筒状の細胞層を形成したものを体腔(たいこう、coelom)と呼ぶ[38]。
三胚葉性動物は体腔の構造により、体腔のない無体腔動物(むたいこうどうぶつ、acoelomates)、体腔が上皮性の細胞で裏打ちされていない偽体腔動物(ぎたいこうどうぶつ、pseudocoelomates)、上皮性の細胞で裏打ちされた体腔をもつ真体腔動物(しんたいこうどうぶつ、coelomates, eucoelomates)に大別されてきた[38][39]。偽体腔は胞胚腔(原体腔、primary body cavity)が体腔として残ったもので大きな体腔を作ることができないのに対し、真体腔はしっかりとした大きな体腔を作ることができる[27][35]。偽体腔動物は従来、袋形動物という一つの動物門に含められていた[38]。また、真体腔はでき方により腸体腔(ちょうたいこう、enterocoel)および裂体腔(れったいこう、schizocoel)に分けられる[27][38]。前者は腸体腔嚢と呼ばれる腸管にできる膨らみが括れて切れて形成されるのに対し、後者は中胚葉性の細胞塊の内部に空所が形成される[27][38]。主に前口動物(担輪動物 + 脱皮動物)では裂体腔、後口動物(新口動物)では腸体腔となる(#現生の動物の系統も参照)[27]。かつて後口動物として扱われていた毛顎動物や腕足動物も腸体腔を持つ[35]。
古くは無体腔動物から偽体腔動物、そして偽体腔動物が真体腔動物に進化してきたと解釈されていたが、ロレンツェン (1985)は間隙生活などで不必要になった真体腔が偽体腔に退化した可能性を示唆しており、さらに分子系統解析の結果でもこれが支持され、無体腔や偽体腔は真体腔が退化的に変化したものである考えがなされている[27][37][38]。
また、軟体動物、節足動物、尾索動物などでは、血液(血リンパ)に満たされた血体腔(けったいこう、hemocoel)と呼ばれる腔所(原体腔)を持つ[40][41]。血体腔を持つ動物は開放血管系を持つ[40][41]。
動物の細胞
動物の細胞は、全ての真核生物の細胞に共通した以下の構造を持つ。
- 細胞膜:細胞を包んでいる膜[42]。内部は生体物質を含む水溶液があり代謝の場となっている。リボソーム、細胞質(原形質)といった共通の構成要素を持っている。
- DNA:塩基配列または遺伝暗号 (genetic code)と言うヌクレオチドの塩基部分が並ぶ構造を持ち[43]、遺伝情報の継承と発現を担う。真核細胞のDNAは、一本または複数本の分子から構成される直線状で原核生物よりも多く[44]、染色体と呼ばれる[45]。
- 細胞質:細胞の細胞膜で囲まれた部分である原形質のうち、細胞核以外の領域のこと。真核細胞の細胞質には細胞骨格(サイトスケルトン)と呼ばれる微小な管やフィラメント状がつくる網目もしくは束状をした3次元構造[46] がある。これが特に発達した動物の細胞では、細胞骨格が各細胞の形を決定づける。
細胞小器官
典型的な動物細胞には、以下のような細胞小器官がある(番号は図のものと対応):
- 核小体(仁):細胞核の中に存在する、分子密度の高い領域で、rRNAの転写やリボソームの構築が行われる。
- 細胞核:細胞の遺伝情報の保存と伝達を行う。
- リボソーム:mRNAの遺伝情報を読み取ってタンパク質へと変換する機構である翻訳が行われる。
- 小胞:細胞内にある膜に包まれた袋状の構造で、細胞中に物質を貯蔵したり、細胞内外に物質を輸送するために用いられる。代表的なものに、液胞やリソソームがある。
- 粗面小胞体:リボソームが付着している小胞体の総称。
- ゴルジ体:へん平な袋状の膜構造が重なっており、細胞外へ分泌されるタンパク質の糖鎖修飾や、リボソームを構成するタンパク質のプロセシングに機能する。
- 微小管:細胞中に見いだされる直径約 25 nm の管状の構造であり、主にチューブリンと呼ばれるタンパク質からなる。細胞骨格の一種。細胞分裂の際に形成される分裂装置(星状体・紡錘体・染色体をまとめてこう呼ぶ)の主体。
- 滑面小胞体:リボソームが付着していない小胞体の総称。通常細管上の網目構造をとる。粗面小胞体とゴルジ複合体シス網との移行領域、粗面小胞体との連続部位に存在する。トリグリセリド、コレステロール、ステロイドホルモンなど脂質成分の合成やCa2+の貯蔵などを行う。
- ミトコンドリア:二重の生体膜からなり、独自のDNA(ミトコンドリアDNA=mtDNA)を持ち、分裂、増殖する。mtDNAはATP合成以外の生命現象にも関与する。酸素呼吸(好気呼吸)の場として知られている。また、細胞のアポトーシスにおいても重要な役割を担っている。mtDNAとその遺伝子産物は一部が細胞表面にも局在し突然変異は自然免疫系が特異的に排除[47] する。ミトコンドリアは好気性細菌でリケッチアに近いαプロテオバクテリアが真核細胞に共生することによって獲得されたと考えられている[48]。
- 液胞:電子顕微鏡で観察したときのみ、動物細胞内にもみられる。主な役割として、ブドウ糖のような代謝産物の貯蔵、無機塩類のようなイオンを用いた浸透圧の調節・リゾチームを初めとした分解酵素が入っており不用物の細胞内消化、不用物の貯蔵がある。
- 細胞質基質:細胞質から細胞内小器官を除いた部分のこと。真核生物では細胞質基質はどちらかと言えば細胞の基礎的な代謝機能の場となっている。
- リソソーム:生体膜につつまれた構造体で細胞内消化の場。
- 中心体:細胞分裂の際、中心的な役割を果たす。
細胞外マトリックス
動物の細胞はコラーゲンと伸縮性のある糖タンパク質からなる特徴的な細胞外マトリックスで囲まれている[49]。細胞外マトリックスは細胞外の空間を充填する物質であると同時に、骨格的役割(石灰化による骨、貝殻、海綿骨針といった組織の形成[50] )、細胞接着における足場の役割(例:基底膜やフィブロネクチン)、細胞増殖因子などの保持・提供する役割(例:ヘパラン硫酸に結合する細胞増殖因子FGF)などを担う。また動物細胞は、密着結合、ギャップ結合、接着斑などにより細胞結合・細胞接着している[51]。
海綿動物や平板動物のような少数の例外を除き、動物の体は組織に分化しており[52]、組織としては例えば筋肉や神経がある。
生殖
有性生殖
一部の例外を除き動物は何らかの形で有性生殖を行う[53][54]。有性生殖では、減数分裂により一倍体の大小2種類の配偶子が作られる[54]。2つの配偶子が融合する事で新しい個体が生まれるが、この場合小さくて運動性がある配偶子を精子、大きくて運動性を持たない配偶子を卵(卵子)といい、配偶子が融合する過程を受精 (fertilization)、受精の結果できあがった細胞を受精卵 (fertilized egg)という[55][56][57]。また精子を作る性機能を雄、卵を作る性機能を雌という[57]。雌雄の性機能を別々の個体が担うことを雌雄異体、1つの個体が両方の性機能をもつ場合は雌雄同体であるという[57]。
無性生殖
有性生殖に対し、無性生殖も哺乳類を除いたほとんどの分類群で行われている[54]。無性生殖は生殖コストが低く、短期間で増殖するメリットはあるが、多様性が作りづらく有害遺伝子の排除が困難であり、後戻りできない糸車に喩えマラーのラチェット仮説でそのデメリットが説明される[54]。そのようなデメリットがありながらもほとんどの動物群で無性生殖が行われることは無性生殖のパラドクスと呼ばれている[54]。配偶子を必要としない栄養生殖型の無性生殖では、出芽や横分裂、断片化などの自切現象ののち、失った部分を再生することによって新しい個体を生み出す[54]。この型の無性生殖は海綿動物、刺胞動物、扁形動物、環形動物、苔虫動物、内肛動物、棘皮動物、半索動物、脊索動物などほとんどの分類群で行われる[54]。特にヒドラ(刺胞動物)やプラナリア(扁形動物)は分化多能性幹細胞をもち、自切後の再生に関与している[54]。群体ホヤ(尾索動物)では、上皮組織から多能性を持った細胞が脱分化して再生を行う[54]。
配偶子を必要とする単為生殖型の無性生殖を行う動物も存在し、ミツバチ・アブラムシ(節足動物)やワムシ(輪形動物)、魚類・両生類・爬虫類(脊椎動物)でみられる[54]。卵の形成過程により、体細胞分裂で卵が形成されるアポミクシス(クローンによる生殖)、減数分裂前に染色体が倍加するエンドミクシス、減数分裂後に染色体が倍加するオートミクシスに分けられる[54]。また、精子が介在する「偽の受精 pseudogamy」によっておこる単為生殖では、精子によって賦活され発生が開始されるが雄性前核が受精卵から除去される雌性生殖や、淡水生のシジミ(軟体動物)で見られるように精子による賦活後雄性前核が除去され精子由来のゲノム情報で発生が行われる雄性生殖がある[54]。ヒルガタワムシ類(輪形動物)では数千万年間アポミクシスのみで繁殖しており、DNAの変異の蓄積で新規遺伝子が獲得されるという考え(メセルソン効果)が提唱されている[54]。哺乳類では、ゲノムインプリンティングというエピジェネティックな単為生殖防御機構が働いている[54]。
発生
受精卵や無性生殖におけるなんらかの細胞塊が成体に到達する過程のことを発生 (development)と呼ぶ[58]。有性生殖では、一倍体である精子と卵(未受精卵)が受精する事で、二倍体の受精卵が形成され、発生が開始する[56]。精子由来のミトコンドリアは酵素により分解されるので[59]、ミトコンドリアなどの細胞小器官や母性因子と呼ばれるmRNA、機能タンパク質は卵細胞のみから受精卵に伝わり[60]、子の表現型は母親の影響を受ける母性効果 (materal effect)が現れる[61]。胚発生以前から卵には極性(軸性、polarity)があり、卵前核に近い方の極を動物極 (animal pole)、そうでない極を植物極 (vegetal pole)と呼ぶ[62]。前者は幼生の中でも運動や感覚に関する部分、後者は消化器系となり、これらがかつてそれぞれ動物的機能と植物的機能と呼ばれていたためこれらの名がある[62]。
発生が進行すると、胚のそれぞれの部分は特定の組織になるが、その決められた先を予定運命 (presumptive fate)と呼ぶ[63]。ある動物において、初期の発生(2細胞期や4細胞期)では等しい分化能力(全能性)を持ち、すべての組織や器官を形成し得る[37][64]。ウニの2細胞期の各割球を分けると、それぞれ受精卵と同様に発生が進行する[64]。逆に、4細胞期の環形動物や軟体動物の割球は完全な胚にならない[64]。発生運命が不可逆的に決まることを決定 (determination)といい、前者のような状態を「未決定である」(indeterminate, adj.)、後者のような状態を「決定している」(determinate, adj.)と表現する[64][65][66]。胚発生における発生運命の限定には可逆的に限定された指定 (specification)と不可逆的な決定があり、普通は指定ののちに決定が起こる[65]。Conklin は胚発生の初期において、予定運命の決定が早い段階で起こるものをモザイク卵 (mosaic egg)、発生運命が未決定で、各部が影響を及ぼしあいながら順次決まっていくものを調整卵 (regulative egg)と呼んだ[66]。前者には有櫛動物、紐形動物、線形動物、環形動物、節足動物、軟体動物、尾索動物が[67]、後者には刺胞動物、紐形動物、棘皮動物、腸鰓類(半索動物)、脊椎動物などが挙げられる[68]。
卵割
受精卵は卵割 (cleavage)という体細胞分裂を繰り返す事で多細胞からなる胚を形成する[59][69][70]。一般的た体細胞分裂とは異なり、卵割の際は核は複製されるが細胞質は卵細胞のものを分割して使うという特徴がある[59]。卵割は分裂溝 (cleavage furrow)により細胞が2つの割球 (blastomere)と呼ばれる細胞に分割されておこる[70]。卵割という用語は受精卵の最初の数回の分割に対して使われる[71]。
卵割様式は卵黄の蓄積部位の影響を受ける[69][72]。棘皮動物・毛顎動物のように卵黄が等しく分布する等黄卵 (homolecithal egg[注釈 8])の場合は、ウニのように等割 (equal cleavage)を行うか、環形動物や多くの軟体動物のように不等割 (unequal cleavage)となる[69][72]。これらは卵割面が割球同士を完全に仕切るため全割と呼ばれる[70]。それに対し、端黄卵 (telolecithal egg)では分裂溝が卵黄の少ない動物極から現れるため、ハート形分裂(クラゲ型分裂;刺胞動物)の時期を経る[69][72]。クラゲ型分裂がより極端になると、頭足類(軟体動物)のように最初の分裂溝が植物極に達しないまま次の分裂溝が動物極に現れる盤割 (discoidal cleavage)を行う[69]。節足動物やイソギンチャク(のように多量の卵が中央にたまっている心黄卵[注釈 9] (centrolecithal egg)では、表割 (superficial cleavage)が行われる[69][72][70]。第3分裂(4細胞期から8細胞期)では、不等割を行うものでは動物極側のものは小さく、植物極側のものは大きいため、それぞれ小割球 (micromere)と大割球 (macromere)と呼ばれる[71][73]。
また、卵割では分裂ごとに紡錘体のとる位置や方向が定まっているためそれぞれの分裂方向が一定しており、大きく分けて放射卵割 (radial cleavage)と螺旋卵割 (spiral cleavage)の2つの卵割配置 (cleavage pattern)がある[71][73]。放射卵割では、各分裂の分裂面がその前の分裂に対して直角に起こり、分裂面は卵軸に対して平行か直角に規則正しく起こる[73]。8細胞期以降は不規則な分裂が混ざってくるものが多い[73]。分類群としては、刺胞動物[71]、有櫛動物[71]、箒虫動物[71]、ウニ類(棘皮動物)[71]、毛顎動物[74]、腕足動物[74] が挙げられる。螺旋卵割では4細胞期から8細胞期(第3分裂)に紡錘体が卵軸に対し45°の角度をなして斜めに位置する[71][74]。その後の各分裂はだいたい互いに直角に行われるが、初めの分裂面が卵軸に対し傾いているため、以降の分裂面もすべて卵軸に対して角度をなして交わり[73]、螺旋状に並ぶ[71]。分類群としては、扁形動物[71][74]、環形動物[71][74]、軟体動物[71][74] に代表され、紐形動物[74]、内肛動物[74] など少なくとも8つの門が螺旋卵割を行う[74]。なお、環形動物および軟体動物の一部では極体放出および卵割と同期して植物極の細胞質が縊り出され、無核の極葉形成 (polar lobe formation)が起こる[69]。極葉は一方の割球と合併され、その細胞質は将来の中胚葉となる[69]。8細胞期で大割球から縊り出された4個一組の小割球は第一クオテット(第一四つ組、1st quartette)と呼ばれる[73]。また、4細胞期の各細胞からつながる細胞系譜を持つそれぞれの系統をクアドラント(四分区、quadrant)と呼ぶ[73]。なお、節足動物などではこのどちらにも当てはまらない[75]。
胞胚期
卵割が進み、細胞が小さくなって胚表面が上皮的に滑らかになると卵割期から胞胚期に移行したとみなされる[70]。この時期の胚は1層の細胞層で囲まれた球形で、胞胚 (blastula)と呼ばれる[76]。初期胚の内部には卵割腔が形成されるが、細胞数が増加することで細胞同士が密着結合を形成すると、卵割腔内にNa+やCl-といったイオンが能動輸送され、浸透圧が上昇して内部から水が浸入し胞胚腔液で満たされる大きな胞胚腔 (blastocoel[注釈 10])が形成される[60]。卵割腔(胞胚腔)をもつ胞胚を特に中空胞胚 (coeloblastula)と呼び、不等割を行う胚では胞胚の内部は卵黄を含んだ植物極側の大きな細胞で満たされるため中実胞胚 (stereoblastula)と呼ばれる[76]。卵黄量の多い盤割をするものでは細胞は動物極側に偏った胚盤 (blatodisc)を形成し、そのような胞胚を盤胞胚 (discoblastula)と呼ぶ[76]。また表割を行う胞胚では細胞形成は胚の外周でのみ行われるため、囲胞胚 (periblastula)と呼ばれる[76]。
なお、昆虫や両生類など多くの動物では、卵割期の細胞増殖を急激に行うために通常の細胞分裂で行われる一部の過程(G1期とG2期の過程)が省略され早い細胞分裂が続くが[75][77]、胞胚中期になるとこの省略が終わり、形態形成に必要な転写、細胞の移動や誘導が始まる中期胞胚遷移(中期胞胚転移、中期胞胚変移)が起こる[75][78]。それに対し哺乳類では分裂速度が遅く、2細胞期から既に転写が始まる[75]。
嚢胚形成
胞胚は内胚葉が外胚葉から分画される嚢胚形成(原腸胚形成[60]、gastrulation)を経て嚢胚(原腸胚[60]、gastrula)期に至る[64][76]。嚢胚は内外二重の細胞層からなり、胚葉の区別が現れる[76]。嚢胚を形成する方法は分類群により異なり、最も一般的なものは陥入(invagination、まくれこみ emboly)である[64][76]。陥入では植物極側の細胞層が胞胚腔に向かって折れ曲がり、内胚葉となる[76]。内胚葉のつくられた盲管状の部分を原腸 (archenteron)、その入口を原口 (blastopore)と呼ぶ[64][76]。この嚢胚形成の方法は棘皮動物などに典型的で[64]、棘皮動物では原腸の両壁には広い胞胚腔が残されているが、箒虫動物では原腸の壁に外肺葉が密着し、胞胚腔を残さない[76]。以降に示す被いかぶせや内展も陥入の変形とみられている[76]。環形動物や軟体動物では被いかぶせ (epiboly)という方法で嚢胚形成が行われる[64][76]。胞胚における動物極側の小割球の分裂が先に進行して、卵黄に富んだ植物極側の大割球を包囲することによって嚢胚ができる[64][76]。小割球由来の外側の細胞が外胚葉層となり、内側の大割球群が内胚葉となる[76]。被いかぶせでは、胞胚腔はかなり縮小している[64]。また、内胚葉細胞塊ははじめ原腸を形成しないため、外胚葉に覆われていない部分を原口と呼んでいるが、発生の進行に伴って原腸を形成し、原口と連絡する[76]。この場合、原口から落ち込んだ外胚葉の細胞層を、口陥 (stomodaeum)と呼ぶ[76]。盤胞胚を形成する頭足類では、胚盤葉の一端がその下に折れ込んで前方に延長する内展 (involution)によって内胚葉が形成される[76]。
もう一方の嚢胚形成の方法は葉裂法 (delamination)と呼ばれ、主に刺胞動物にみられる[64][76]。狭義の葉裂法はカラカサクラゲ類 Geryoniidae にのみ見られ、中空胞胚において外壁を作る細胞が一様に胞胚腔に向かって分裂すると、胞胚腔内に出た細胞は規則正しく配列して内胚葉の嚢を作る[76]。ヒドラなどが行う方法は多極法 (multiopolar proliferation)と呼ばれ、胞胚法を形成している細胞が各所で胞胚腔内にすべり落ち、それが内胚葉の嚢を形成する[76]。それに対し、ウミコップ属 Clytiaでは植物極のみから細胞がすべり落ちるため、単極法 (uniopolar proliferation)と呼ばれ、多極法と併せて極増法 (polarization)と呼ばれる[76]。葉裂法を行う嚢胚の多くは中実嚢胚 (stereogastrula)で、発生が進行するまで原腸も原口も持たない[64][76]。
中胚葉形成
左右相称動物では、内胚葉および外胚葉とは別に、体腔と関連して中胚葉の形成が起こる[79]。刺胞動物や有櫛動物では外肺葉から細胞が零れ落ち、外中胚葉性の間充織細胞を作る[35]。棘皮動物や箒虫動物など、内中胚葉でも間充織細胞として形成されるものはあるが、内中胚葉は普通表皮の形をとる[35]。
螺旋動物では、まず第二クオテットまたは第三クオテットから外中胚葉性の間充織細胞が形成される[76]。その後、D四分区の 4d細胞(中胚葉帯端細胞、mesoblastic teloblast)から内胚葉由来の中胚葉が生まれる[35]。第四クオテットの他の細胞(4a, 4b, 4c)は内胚葉となる[35]。かつては 4d細胞の系統にある子孫細胞は全て中胚葉になると考えられていたが、内胚葉も含んでいる[35]。4d細胞は胞胚腔内に落ちると左右に分裂し、胚の分化に伴い肛門になる部分の左右前方に位置しながら前方に細胞を送り、中胚葉帯 (mesoderm band)を作る[35]。これを「端細胞による中胚葉形成法 telobblstic method」と呼ぶ[35]。環形動物などでは、この中胚葉帯内に体腔が形成され、これが裂体腔と呼ばれる[35]。
節足動物でも、中胚葉は1対の細胞帯として出現する。しかし螺旋動物のように特定の細胞ではなく、原口の周囲の細胞群に由来している[35]。
腸体腔をもつ後口動物および毛顎動物、腕足動物などでは、原腸壁の一部が胞胚腔に向かって膨出 (evagination[79])し、そこから分離して胞胚腔内で独立した体腔嚢 (coelomic vesicle)を形成する[35]。こうしてできた体腔は腸体腔であり、それを囲む壁が中胚葉である[35]。脊椎動物においては、両生類(無羊膜類)では中胚葉の形成と原腸の形成が同時に起こるが、羊膜類(鳥類や哺乳類)では、中胚葉の形成が先に行われ、その後卵黄嚢と連続する内胚葉の一部が中胚葉に包み込まれるようにしてくびれ、原腸の形成が行われる[60][80]。
細胞分化と器官形成
脊椎動物などでは、組織や器官を形成するため、胚細胞が特定の機能を持った細胞に変化する(細胞分化)[81]。この際、基本的な細胞機能の維持に必要な遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)の機能は残しつつ、特定の機能に必要な遺伝子を新たに発現し、逆に分化後には不必要になる遺伝子をDNAメチル化により不活性化する[81]。
脊椎動物などでは原腸胚期の後、神経管が形成される神経胚期へと進む。例えばニワトリでは、外胚葉に神経板という領域ができ、それが胚の内側に丸まる事で神経管ができ、さらに直下に脊索が形成される[82]。神経管の前方には前脳、中脳、後脳という3つの膨らみが形成され、これらが将来脳になる[82]。脊索の両側の沿軸中胚葉から体節が形成され、体節と隣接した外側の中間中胚葉からは腎節が形成される[83]。体節はやがて皮節、筋節、硬節に分かれ、これらはそれぞれ皮膚の真皮層、骨格筋、椎骨などが形成され[83]、腎節からは腎臓や生殖腺が形成される[83]。中間中胚葉のさらに外側には予定心臓中胚葉という、将来心臓関連の組織になる部分があり、これは壁側中胚葉と臓側中胚葉に転移する[84]。前者からは体腔を覆う胸膜や腹膜が形成され、後者からは心筋、平滑筋、血管、血球などが形成される[85]。心臓は生命の維持に不可欠なので、発生の早い段階で中胚葉から形成される[84]。なお、予定心臓中胚葉は中胚葉の正中線を隔てた両側に2つ存在するが、これら2つは移動して胚の前方で合流して心臓を形成する[84]。脊椎動物では外胚葉と中胚葉の相互作用で四肢が形成される[86]。ヒトの手足は水鳥と違い、指の間に水かきがないが、これはアポトーシスの作用で水かき部分の細胞を「自殺」させている為である[80]。
起源と進化
起源
動物の起源については、単細胞生物の襟鞭毛虫が集まって多細胞化する事で海綿動物のような動物になっていったと考えられる[87]。これをガストレア説(群体繊毛虫仮説)と呼ぶ[87]。ヘッケルは動物の初期発生に基づき、襟鞭毛虫のような原生動物から、胞胚に相当する1層の細胞層を持つ中空の祖先型動物ブラステア (Blastea)が生じ、次に嚢胚に相当する二重の細胞層からなる袋状のガストレア(腸祖動物、Gastraea)が生じたと想定した[88]。
なお従来は、上述した襟鞭毛虫類から進化したとするヘッケルの説と繊毛虫類から進化したとするハッジの説(多核体繊毛虫仮説、合胞体繊毛虫仮説)が対立していたが、分子遺伝学の成果によれば、18SrDNAに基づいた解析などにより、動物は襟鞭毛虫類を姉妹群に持つ単系統な群であることが示されており、ヘッケルの説が有力とされている[87][88]。ハッジの説は生態学的な視野のもと、多核繊毛虫から無腸動物のような原始的な左右相称動物が生じたと考え、後生動物の起源を左右相称動物に求めた[88]。
この多細胞化が起こった仮説として、現在までに様々なものが提案されてきた[89]。複雑な多細胞生物の出現は、生物圏の酸化が進むまで妨げられたという説が広く受け入れられてきた[89]。ほかにも動物が多様化するきっかけとしてとして、クライオジェニアンやエディアカラ期の全球凍結の環境的制約から後生動物の祖先が解放されたこと、宇宙放射線の影響、極移動、大陸の分断、硫化水素の毒性、塩分、微量金属の栄養塩の不足、海に栄養塩をもたらす大陸風化の周期、地球温暖化、または活発になった捕食者と捕食者の軍拡競争などが考えられるが、必ずしも相互に排他的なものではない[89]。なおこれらの仮説は、多少なりとも、後生動物の多様化との因果関係につながるが、結局推定される時間的な一致に依存しており、地球規模の海の大酸化は後生動物が進化した原因ではなく、後生動物の出現による結果であると主張されている[89]。
古生物
先カンブリア時代
累代 | 代 | 紀 | 基底年代 Mya[* 3] |
---|---|---|---|
顕生代 | 新生代 | 66 | |
中生代 | 251.902 | ||
古生代 | 541 | ||
原生代 | 新原生代 | エディアカラン | 635 |
クライオジェニアン | 720 | ||
トニアン | 1000 | ||
中原生代 | ステニアン | 1200 | |
エクタシアン | 1400 | ||
カリミアン | 1600 | ||
古原生代 | スタテリアン | 1800 | |
オロシリアン | 2050 | ||
リィアキアン | 2300 | ||
シデリアン | 2500 | ||
太古代[* 4] | 新太古代 | 2800 | |
中太古代 | 3200 | ||
古太古代 | 3600 | ||
原太古代 | 4000 | ||
冥王代 | 4600 | ||
30億年以上前に地球上初めての生物が誕生したと考えられており、真核生物の最古の化石(グリパニア Grypania)は21億年前の地層から発見されている[90][91]。
確実な化石記録により較正した分子時計から、クラウングループとしての後生動物は新原生代クライオジェニアン(8億3300万年前-6億5000万年前)に誕生したと推定されている[89]。
最古の化石記録に関しては議論があり、異論の余地がない確実な動物化石の証拠は顕生代に入ってからに限られている[89][92]。また左右相称動物の動物門の確固たる証拠はカンブリア紀になるまでない[93][94]。とはいえ、動物の進化は先カンブリア時代からの歴史があるという見方が一般的になってきている[89]。
動物のものかもしれない最古の化石は2012年にナミビアの7億6000万年前、クライオジェニアンの地層 (Okakuyu Formation) で発見されたオタヴィア Otavia antiqua)である[95][96]。これは0.3–5 mm(ミリメートル)程度のかりんとうのように細長い歪な卵形をしたリン酸カルシウムからなる化石で、海綿動物だと考えられている[95][96]。海綿動物だとすると表面に空いている多数の細孔から微小なプランクトンを濾過摂食したものと考えられる[95][97]。なお、オタヴィアは7億6000万年前だけでなく、6億3500万年前、5億4800万年前(エディアカラ紀)の地層からも見つかっている[95][96]。またオーストラリアの南オーストラリア州からは6億6500万年のTrezona Formationという地層からも、初期の海綿動物ではないかと考えられている化石も見つかっている[98]。クライオジェニアン(約6億3500万年前)からカンブリア紀初期までの約100年にわたり連続して普通海綿の存在を示しているとされたバイオマーカーは[99]、現在では共生細菌に由来するものだろうとされている[100]。 全球凍結直後、約6億3000万年前の陡山沱の動物の胚化石(ドウシャントゥオの胚化石、Doushantuo embryos)とされていたものは[101][102]、現在では原生生物や硫黄細菌ではないかと解釈されている[103][104][105]。
分子時計によれば、続くエディアカラ紀(エディアカラン)に左右相称動物のほとんどの門が多様化したと考えられている[106][89]。また、エディアカラ紀の5億7500万年前から5億4100万年前にかけてはエディアカラ生物群と呼ばれる生物群が多く見つかっている[107][108]。エディアカラ生物群とカンブリア紀以降の動物との類縁関係は未だはっきりしていないが[90][108]、その形態からランゲオモルフ[109] Rangeomorpha、Dickinsoniomorpha、Erniettomorphaに分けられる[107]。エディアカラ生物群は新原生代クライオジェニアン紀の全球凍結(スノーボールアース、全地球凍結)の後、5億7500万年前から5億6500万年前の間に放散(Evolutionary radiation)したと考えられ、それを「アヴァロンの爆発 Avalon explosion」と呼ぶ[110][111][108]。エディアカラ生物群のうち、ディッキンソニア Dickinsonia、Andiva、ヨルギア Yorgiaとランゲオモルフは左右相称動物であったとする研究もある[107] ほか、海綿動物(Eocyathispongia qiania)[112][113]、軟体動物(キンベレラ Kimberella quadrata)[114]、そして無数の刺胞動物(Haootia quadriformis)[115][116]、節足動物(パルヴァンコリナ Parvancorina)[117]とみられるものもあり、真正後生動物や左右相称動物のグレードにあると推定されている動物の痕跡も見つかっている[118][119][120][121][122]。
エディアカラ紀末期の5億4900万年前ごろには、硬組織を獲得していたクロウディナ Cloudina と呼ばれる化石が発見されており、現生の動物との類縁関係が分からず、古杯動物と呼ばれる[123]。この少し前の約5億6000万年前から約5億5000億年前のエディアカラ生物群の中にも硬組織を持つコロナコリナ Coronacollina aculaが見つかっている[124]。
古生代
古生代カンブリア紀初期 (Nemakyt-Daldynian)、約5億4200万年前には珪酸塩や炭酸塩、リン酸塩からなる骨片(硬組織)をもつ微小有殻化石群 (SSFs, Small Shelly Fossils) が見られる[125][126][94][127]。化石に残る硬組織を獲得し、急速に多様な動物が出現したため、「カンブリア爆発」(カンブリア大爆発)と呼ばれる[125][128][129][127]。海綿動物、軟体動物、腕足動物、節足動物、棘皮動物、環形動物、脊索動物など、現在の動物門のほとんどをしめる30余りの動物門[125]が化石記録に残っている。かつては現在とは無縁で現生動物よりも多数の動物群が突然出現したと考えられていたが、カンブリア紀以前の動物化石が発見されたり、カンブリア紀の生物群と現生の動物との類縁関係が判明してきたため、現在ではカンブリア爆発は複雑な器官(眼、触手、脚)を獲得したことよる活発な行動様式の発達および硬組織の発達による左右相称動物の多様化であると捉えられている[129][130]。5億3200万年前には Aldanella yanjiahensis と呼ばれる軟体動物の化石が見つかっている[89]。約5億2100万年前(トモティアン)になると、動物は眼を獲得し、それまで意味を持たなかった硬組織が防御や捕食に有利になり、それが軍拡競争として働いて多様な姿を持つ動物群が現れたと考えられている(光スイッチ説)[129]。また分子時計の解析から遺伝子レベルの生物の爆発的多様化はこれより数億年早いと考えられる[89][129][注釈 11]。カンブリア紀からオルドビス紀初頭にみられる大不整合の研究から、カンブリア爆発の原因は海洋中の化学成分(Mg2+、Na+、K+、Ca2+、Fe2+などのイオン)が増加した影響が指摘されている[131]。カンブリア爆発は2000万年[132][133] から2500万年[134][135] 続いた。
前期オルドビス紀にはカンブリア紀までに登場した動物門が大きく適応放散し[125]、これはGOBE (The Great Ordovician Biodiversification Event)と呼ばれる[136]。
オルドビス紀末に大量絶滅(O-S境界)があったが、無顎類(顎の無い脊椎動物)は生き残り、シルル紀に多様化し、顎のある脊椎動物も登場した[125]。デボン紀には硬骨魚類が多様化し、石炭紀には両生類が繁栄、ペルム紀には爬虫類が繁栄した[125]。
シルル紀には最古の陸上動物の化石である節足動物多足類が登場し、デボン紀に節足動物が多様化、石炭紀には翅を持つ昆虫類が登場した[125]。
中生代
ペルム紀末には地球史上最大の大量絶滅(P-T境界)が起こり、中生代三畳紀には海洋生物が大量に絶滅[125]。哺乳類が登場した[125]。
ジュラ紀には恐竜が繁栄し、鳥類も登場した[125]。また、軟体動物の殻を破るカニ類や硬骨魚類が進化し、これに対抗して厚い殻をもつ軟体動物が進化した(中生代の海洋変革)[125]。白亜紀までには現生の昆虫類のほとんどが登場[125]。
白亜紀末には巨大隕石の衝突による大量絶滅がおこる(K-Pg境界)[125]。
新生代
新生代は哺乳類が優勢になり、鳥類、昆虫類、真骨魚類も適応放散し、現在と同様の動物相が形成される[125]。新生代の後半にあたる第四紀には人類も出現した。
化石動物についての動物門
化石動物について、上記の分類される現存動物門のいずれにも属さないとして、新たな動物門が提唱されることがある。以下に主要なもののみ挙げる。
- †三裂動物門 Trilobozoa Fedonkin, 1985
- トリブラキディウムなどが属する。三放射相称の体制をもつ。
- †盾状動物門 Proarticulata Fedonkin, 1985
- †古虫動物門 Vetulicolia Shu et al., 2001
- †葉足動物門 Lobopodia Snodgrass, 1938
絶滅した動物
現生の動物の系統
下位分類
以下に『動物学の百科事典』(2018)で認められている分類体系における動物の門を示す。著者名は巌佐ほか (2013)による。各動物門どうしの系統関係などの詳細については異説もあるため、ここでは省略し、次節以降を参照。研究の進展により廃止された門については#かつて存在した動物門を参照。また、門の詳細に関しては各項を参照。
- 海綿動物門 Porifera Grant, 1836
- 有櫛動物門 Ctenophora Eschscholtz, 1829[注釈 14]
- 刺胞動物門 Cnidaria Verrill, 1865[注釈 14]
- 平板動物門 Placozoa K.G. Grell, 1971(板形動物)
- 珍無腸動物門 Xenacoelomorpha Philippe et al., 2011[注釈 15]
- 棘皮動物門 Echinodermata Leuckart, 1854
- 半索動物門 Hemichordata Bateson, 1885
- 頭索動物門 Cephalochordata Lankester, 1877[注釈 16]
- 尾索動物門 Urochordata Lankester, 1877[注釈 16]
- 脊椎動物門 Vertebrata J-B. Lamarck, 1801(有頭動物 Craniata Lankester, 1877)[注釈 16]
- 毛顎動物門 Chaetognatha Leuckart, 1854
- 胴甲動物門 Loricifera Kristensen, 1983
- 動吻動物門 Kinorhyncha Reinhard, 1887
- 鰓曳動物門 Priapulida Théel, 1906
- 線形動物門 Nematoda Diesing, 1861(Nemata Cobb, 1919)
- 類線形動物門 Nematomorpha Vejedovsky, 1886(Gordiacea von Siebold, 1843)
- 緩歩動物門 Tardigrada Spallanzani, 1777
- 節足動物門 Arthropoda Siebold & Stannius, 1845
- 有爪動物門 Onychophora Grube, 1853
- 直泳動物門 Orthonectida Giard, 1877[注釈 17]
- 二胚動物門 Dicyemida van Beneden, 1876(菱形動物[148] Rhombozoa van Beneden, 1882)[注釈 17]
- 有輪動物門 Cycliophora Funch & Kristensen, 1995
- 顎口動物門 Gnathostomulida Ax, 1956
- 微顎動物門 Micrognathozoa Kristensen & Funch, 2000
- 輪形動物門 Rotifera Cuvier, 1798[注釈 18]
- 腹毛動物門 Gastrotricha Metschnikoff, 1864
- 扁形動物門 Platyhelminthes Hyman, 1951(Plathelminthes Schneider, 1873)
- 苔虫動物門 Bryozoa (外肛動物 Ectoprocta Nitche, 1870)
- 内肛動物門 Entoprocta Nitche, 1869(曲形動物 Kamptozoa Cori, 1921)
- 箒虫動物門 Phoronida Hatschek, 1888
- 腕足動物門 Brachiopoda A.M.C. Duméril, 1806
- 紐形動物門 Nemertea Quatrefages, 1846(Rhynchocoela Schultze, 1851)
- 軟体動物門 Mollusca Cuvier, 1797
- 環形動物門 Annelida J-B. Lamarck, 1809[注釈 19]
系統樹
1990年代以前は左右相称動物は原腸が口になるか否かで前口動物、後口動物に分類され、さらに体腔が無体腔、偽体腔、真体腔のいずれであるかにより分類されていた。しかし1990年代の18S rRNA遺伝子の解析により、体腔の違いは進化とは関係ない事が判明し、上述の意味での後口動物は単系統でない事が示されたので、いくつかの動物門を新口動物から外し(後述)、前口動物に移した[153]。このような変更を施した後の前口動物が単系統であることが支持されている[144][154][155]。
下記は主に ギリベ (2016)の系統仮説に基づく系統樹に、ラーマーら (2019)による分子系統解析の結果を加えて、動物界の系統樹を門レベルまで描いたものである[10][156][157][注釈 20]。ただし、2018年現在、分子系統解析が進展中ということもあり、完全に合意がなされたものではない。本項はこの系統樹に基づき以下の小節にて解説を行う。
前左右相称動物
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海綿動物を最も基部とする分子系統樹の例[157] |
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有櫛動物を最も基部とする分子系統樹の例[157] |
海綿動物門、平板動物門、刺胞動物門、有櫛動物門の4つは左右相称動物に含まれない動物門で、体の左右相称性がなく、これらをまとめて便宜的に「前左右相称動物」と呼ぶこともある[160]。分子系統解析から、このうち海綿動物か有櫛動物の何れかが後生動物で最も系統の基部に位置すると考えられている[10][157]。しかし、海綿動物が系統の最も基部に位置するか[157][161][162][163][164]、有櫛動物が系統の最も基部に位置するか[165][166][167][168] は分子系統解析においてもデータが分かれている。
現在の多様性は単純なものから複雑なものに進化してきたとする考え方のもと、かつては最も単純な平板動物から、細胞の種類がより多い海綿動物、そして神経を持つ刺胞動物、最後に神経系に加え筋系ももつ有櫛動物が進化してきたと考えられた[10][156]。ただし、襟鞭毛虫との類似から海綿動物のほうがより原始的な姿に近いとする考えもあった[156]。この進化的な仮説は形態に基づく分岐学的解析においても一時は支持された[156]。しかし、分子系統学が導入された初期にはもう平板動物は二次的に退化したより派生的なグループであることが明らかになり、有櫛動物は刺胞動物より系統の基部に位置することが明らかになった[156][169]。それだけでなく、有櫛動物はほかのすべての後生動物よりも基部に分岐したとする結果が得られた[165][166]。海綿動物は相称性や胚葉がなく体制が単純であるため[160]、最も初期に分岐した後生動物として直感的に受け入れられやすいのに対し、有櫛動物は放射相称、神経系と筋系をもつため、有櫛動物より後に海綿動物が分岐したと考えると筋系や神経系が有櫛動物と Parahoxozoa(有櫛動物と海綿動物以外の後生動物)で2回独立に獲得したと考えるか、海綿動物でどちらも1回完全に喪失したと考えなければならないため、大いに議論を呼んだ[10]。系統誤差の影響を軽減することで、再び海綿動物が最も初期に分岐したと考えられる結果が得られている[157][164]。
海綿動物 Poriferaは相称性がなく胚葉がないなど最も単純なボディプランを持つ[160]。海綿動物の細胞は分化するものの、組織を形成することはなく[170]、複雑な器官をもたない[171]。そういったことから海綿動物は側生動物 Parazoa Sollas, 1884と呼ばれることもある[8][36]。
刺胞動物と有櫛動物の体は放射相称性を持ち、唯一の腔所である胃腔の開口は口と肛門を兼ねる[172]。これらの動物門の細胞は組織に分化しているものの、器官を形成していない[173]。中胚葉が形成されない二胚葉性の動物であるとされるが、細胞性である間充織を中胚葉とみなし、ヒドロ虫綱以外の刺胞動物と全ての有櫛動物を三胚葉性とみなす事も多い[174][175]。
刺胞動物は触手に物理的または化学的刺激により毒を含む刺糸を発射する刺胞と呼ばれる細胞器官を持つ[172]。漂泳性(クラゲ型)と付着性(ポリプ型)という生活様式の異なる2つの型を持ち雌雄異体である[172]。かつては単細胞生物とも考えられていた寄生性のミクソゾアは分子系統解析により刺胞動物に内包されている[175]。
それに対し有櫛動物は1個の細胞が変形してできた膠胞を持ち、中胚葉性の真の筋肉細胞を持つほか、全てクラゲ型であり、二放射相称で雌雄同体である[176][177]。
平板動物は神経細胞も筋肉細胞も持たず、体細胞は6種類しかなく器官や前後左右軸をもたない、自由生活を行う動物として最も単純な体制を持つ[175]。しかし2008年にセンモウヒラムシ Trichoplax adherens のゲノム解読がなされ、シグナル伝達系、神経やシナプス、細胞結合などに関する多くの遺伝子の存在が報告された[175]。
左右相称動物
4つの門を除いた全ての動物門が左右相称動物である。左右相称動物は完全な三胚葉性で[178]、体が左右相称である[178]。外見上は左右対称であるが、内部の臓器は限られた空間の中に各臓器を互いの連結を保ちながら機能的に配置するために、位置や形が左右非対称となっている[29]。
左右相称動物は口と肛門、およびこれらをつなぐ消化管をもち、体内に体腔ないし偽体腔(線形動物、輪形動物など)を持つ。左右相称動物のボディプランは、前方(運動のとき体の進む方向)と後方の区別、腹側と背側の区別がある傾向があり、したがって左側と右側の区別も可能である[179][180]。運動のとき体の前方へと進むので、進行方向にあるものを識別する感覚器や餌を食べる口が前方に集まる傾向にある(頭化という)。多くの左右相称動物は環状筋と縦走筋のペアを持つので[180]、ミミズのような体が柔らかい動物では水力学的骨格 Hydrostatic skeletonの蠕動により動く事ができる[181]。また多くの左右相称動物には繊毛で泳ぐことができる幼生の時期がある。
以上の特徴は例外も多い。例えば棘皮動物の成体は(幼生とは違い)放射相称であるし、寄生虫の中には極端に単純化された体の構造をもつものも多い[179][180]。
珍無腸動物
珍無腸動物門(珍無腸形動物門) Xenacoelomorpha は珍渦虫と無腸動物からなる左右相称動物であり、その単系統性は分子系統解析から強く支持されている[10][143]。その系統的位置に関しては、左右相称動物の最も初期に分岐したとする説[144][145] と後口動物の一員であるとする説[146][147][156] がある。前者の考えを支持する場合、珍無腸動物以外の全ての門を含む左右相称動物は有腎動物 Nephrozoaと呼ばれる[10][144][166]。
珍渦虫 Xenoturbella は1878年に発見され、1949年に報告されたが、その分類は長らく謎で、渦虫の珍しい仲間だと思われていた[182]。しかし2006年以降、分子系統解析により、後口動物に入ることが示唆され、独立した珍渦虫動物門 Xenoturbellida が設立された[183][184]。
無腸動物 Acoelomorphaは無腸類と皮中神経類からなり、それぞれ扁形動物門の無腸目および皮中神経類に分類されていたが、1999年の分子系統解析によって初期に分岐した左右相称動物であることが示唆された[143]。Jaume Baguñà と Marta Riutort によって左右相称動物の新しい門として分離された[185]。
2011年、Philippe や中野裕昭らは分子系統解析により珍渦虫動物と無腸動物をともに珍無腸動物門という動物門を構成することを提唱した[146]。そして、チンウズムシの自然産卵による卵と胚の観察結果を報告し、摂食性の幼生期を経ない直接発生型であるなどの共通点を指摘した[186]。珍無腸動物門は設立当初新口動物に分類されたが[143][147][187]、その後の研究により当時知られていた左右相称動物のサブクレード、後口動物・脱皮動物・冠輪動物(螺旋動物)のいずれにも属さず、これら3つ(有腎動物)の姉妹群となる最も初期に分岐した左右相称動物とされた[144][145]。しかし2019年に再び長枝誘因などの系統誤差の影響を軽減することで、珍無腸動物は後口動物の水腔動物との姉妹群であることが支持された[147][188]。
毛顎動物
毛顎動物はヤムシと総称される動物で、かつては成体の口が原口に由来しないという発生様式から後口動物とされてきた[189][190]。しかし、主な中枢神経が腹側にあることや顎毛(餌の捕獲器官)にキチン質をもつことなど、前口動物の特徴も持つことは古くから知られてきた[190]。分子系統学による解析が始まってから、後口動物ではないことが明らかになった(この頃の解析では後口動物・前口動物のさらに基部の系統に位置した)[191][192]。
18S rRNA、ミトコンドリアDNA、Hox遺伝子群およびESTデータを用いた近年の分子系統解析では、前口動物であることが明らかになっている[190]。例えば、Laumer et al. (2019)では、前口動物の螺旋動物のうち担顎動物に近縁であるとされる[157]。これは、発生過程における初期卵割のパターンが螺旋卵割であることや、頭部の背側にある繊毛環がトロコフォア幼生の口後繊毛環と共通していることからも支持される[190]。しかしその中でもどの系統的位置に来るかはまだ異説が多い[190]。この理由として、重複遺伝子を多く保有することからゲノム重複が起こった可能性があることや、集団内での遺伝的多型が多いことから突然変異率が高い可能性があることが指摘されている[190]。例えば、長枝誘引による悪影響として脱皮動物中の節足動物の枝の中に"mongrel assemblage"という集合ができてしまった結果がある[193]。この中には多足類のコムカデ類とエダヒゲムシ類だけでなく、脱皮動物の中でも有爪動物の Hanseniella と Allopuropus、冠輪動物である軟体動物頭足類のコウモリダコ Vampyroteuthis およびオウムガイ Nautilus、そして毛顎動物の Sagitta が含まれていた[193]。また、この集合はCG-rich(グアニンおよびシトシンが多い)であった[193]。このように、毛顎動物の系統関係を特定するのは困難である[190]。
脱皮動物
体を覆うクチクラの脱皮を行うという共通の特徴を持ち[194][195][196]、糸形動物(広義の線形動物)、有棘動物、汎節足動物の3つに分類がなされている[194]。
糸形動物[10](広義の線形動物[197]) Nematozoa[10][197] または Nematoida[10] はカイチュウ、ギョウチュウ、アニサキスなどからなる線形動物門とハリガネムシ目と遊線虫目(オヨギハリガネムシ類)からなる類線形動物門により構成される[198]。例に挙げられた線形動物は寄生性であるが、自由生活を送る線形動物も存在し、一部の自由生活種のみ眼点を持つ[198][199]。糸形動物は硬いクチクラで覆われ、細い体で、循環器や環状筋を欠き、偽体腔で螺旋卵割を行い、鞭毛のない精子を持つなど、多くの形質を共有する[198]。線形動物は種数や個体数が非常に多いと考えられており、少なくとも数万の未知種を有すると考えられている[198]。線形動物は左右相称であると同時に左右および背側の三放射相称でもある[198]。
有棘動物 Scalidophora(頭吻動物 Cephalorhyncha)は動吻動物門、鰓曳動物門、胴甲動物門をまとめたグループで、冠棘という主に頭部に数列ある環状に並ぶ棘を持つという形質を共有することから名付けられた[200][201]。冠棘に加え、花状器官という感覚器を持つという形質、頭部が反転可能である形質、偽体腔を持つという形質も共有する[200][202]。しかし、分子系統解析による検証は十分になされていない[10]。胴甲動物は鰓曳動物のロリケイト幼生と形態が類似していることから近縁であると考えられてきたが、近年の分子系統解析では他の脱皮動物に近縁である可能性が示されている[201]。
汎節足動物
汎節足動物 Panarthropodaは、動物界最大の門である節足動物を含む系統群である。汎節足動物は体節を持つ事を特徴とする[203]。環形動物も体節を持つため、歴史的には環形動物も節足動物に近縁(体節動物)であると考えられていたが、分子系統解析により、近縁性が否定されたため(収斂)、環形動物は汎節足動物ではなく冠輪動物に分類されている[203]。
節足動物の系統樹は以下のようになっている[204][205]:
節足動物 |
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Arthropoda |
六脚類は広義の昆虫類で内顎類(トビムシ、カマアシムシ、コムシ、側系統)と外顎類(狭義の昆虫類)に分かれる[206]。甲殻類はエビ・カニ類、ミジンコ類など。汎甲殻類における六脚類の系統位置は議論の的となり[207]、初期の分子系統解析では鰓脚綱に近縁とされていたが、後に更なる全面的な解析が行われ、2019年現在に至って脳の構造に共通性を持つ[206]ムカデエビ綱が六脚類の姉妹群として有力候補と見なされる[207][208]。
汎節足動物は節足動物門以外には緩歩動物門と有爪動物門を含む。絶滅した群まで範囲を広げると葉足動物と呼ばれる古生物をも含む。緩歩動物門に属する動物はクマムシと呼ばれる動物であり[209]、ゆっくり歩く事からその名が名付けられた。陸上に生息する種では、クリプトビオシスという極限状態に耐えられる休眠状態になる事が知られている[209]。有爪動物門に属する動物はカギムシと呼ばれ、現生種は真有爪目のみ[210]。
カンブリア紀に多様化した葉足動物は、現生の汎節足動物の3つの動物門、いわゆる節足動物、緩歩動物と有爪動物のそれぞれの最後の共通祖先を含んだ側系統群であると考えられる[138][139][211]。多くの葉足動物は一見で現生の有爪動物らしい外見をもち[139]、かつては原始的な有爪動物として分類された[139][212]。しかしその後、節足動物と緩歩動物らしい形質をもつ葉足動物の発見に至り[213][214][215][216][217]、葉足動物と有爪動物の多くの共通点は、両者の系統的類縁関係を反映していない、汎節足動物の共有原始形質と見なされるようになった[211]。
螺旋動物
ラーマーら (2019)に基づく分子系統樹の例[74][157] | Marlétaz et al. (2019)に基づく分子系統樹の例[74] | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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このクレードに属するほとんどが、胚発生において4細胞期から8細胞期に有糸分裂紡錘体が動物極-植物極軸と45°ずれる螺旋卵割を行うという共有派生形質をもつため[注釈 27]、螺旋動物[10](らせんどうぶつ)もしくは螺旋卵割動物[151](らせんらんかつどうぶつ) Spiraliaと呼ばれる[74][219][220]。これを指して冠輪動物 Lophotrochozoa s.l. と呼ぶ場合もあるが[74]、本項を含め、「冠輪動物」の名称を螺旋動物のサブクレードに用いるケースもあるので注意が必要である[注釈 25]。
螺旋動物は担顎動物(たんがくどうぶつ、Gnathifera)、吸啜動物(きゅうてつどうぶつ、Rouphozoa)、冠輪動物(かんりんどうぶつ、Lophotrochozoa)という3つの系統を含む[151]。冠輪動物は上記の螺旋動物を指すこともあるため、担輪動物(たんりんどうぶつ、Trochozoa)とも呼ぶ[10]。前者2つを合わせたものを扁平動物 Platyzoa と呼ぶこともあるが[149][166]、ギリベ (2016)などでは採用されていない。逆に他の解析では担顎動物を除く吸啜動物と冠輪動物がクレードをなすことがあり、その場合、それらを合わせて Platytrochozoa と呼ばれる[219]。
担顎動物(有顎動物[140])は微小な体で、クチクラの中にオスミウム酸親和性のある物質が詰まった棒状構造からなる顎を持つという形質を共有する[221][140]。顎口動物は咽頭に複雑な顎を持つ動物で、体表面の単繊毛上皮によって移動する[222]。微顎動物は複雑な顎を備え、体の腹面に繊毛を持つ[140][151]。輪形動物は単生殖巣類、ヒルガタワムシ類、ウミヒルガタワムシ類からなり、ウミヒルガタワムシ類と鉤頭動物が姉妹群をなす[151]。鉤頭動物は独立した門とされていたが、そのような系統関係から輪形動物に内包されるか、輪形動物とともに共皮類(多核皮動物[221]) Syndermata としてまとめられる[151]。微顎動物および鉤頭動物は体内受精ののちに螺旋卵割を行う[222][221]。
吸啜動物に含まれる扁形動物と腹毛動物はともにメイオファウナの重要な構成種で、2つの腺により吸着する (duo-gland adhesive system)形質がその共有派生形質ではないかと考えられている[223]。
冠輪動物(担輪動物)のうち環形動物と軟体動物はトロコフォア型の幼生を持つという共有派生形質を持つ[224]。紐形動物は翻出する吻を持ち、かつては無体腔と考えられたが、現在では吻が収納される吻腔が裂体腔であると考えられている[224]。冠輪動物のうち、箒虫動物・苔虫動物(外肛動物)・腕足動物は何れも触手冠と呼ばれる構造を持つため触手冠動物 Lophophorataと呼ばれ、分子系統解析でも支持されることがある[10][157][225]。冠輪動物はもともと担輪動物と触手冠動物の2つの系統を合わせて呼ばれるようになった語である[178]。分子系統解析の結果、苔虫動物は内肛動物と姉妹群をなす(広義の苔虫動物)とされ否定されたこともあったが[10][225]、ラーマーら (2019)などでは単系統性が示されている[157]。また、有輪動物は内肛動物と姉妹群をなすことが示唆されている[157][193]。
軟体動物
冠輪動物に属する軟体動物門は節足動物門に次いで既知種の大きい門で、骨格を持たず、体節がない軟体からなる[226]。体腔は真体腔であるが退化的で、体内の腔所は組織の間隙を血液が流れるだけの血体腔である[226]。一般的には体は頭部、内臓塊、足からなり、外套膜が内臓塊を覆っている[226]。外套膜が分泌した石灰質の貝殻を持つ事が多い[226]。卵割は普通全割の螺旋卵割であるが、頭足類では胚盤をもつ盤割となる[226]。
軟体動物の分類は系統解析により一部修正が施され2018年現在は体全体を覆う大きな殻がある有殻類と石灰質の棘を持つ有棘類に大きく分かれるという仮説が有力視されている[227]。
軟体動物の綱は以下のように分類される[227]:
軟体動物 |
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有殻類は綱レベルの単系統性は多くの場合保証されているが、各綱の系統関係は2018年現在一致を見ていない[227]。
環形動物
環形動物は環帯類(貧毛綱(=ミミズ)とヒル綱)、多毛類(=ゴカイ)、スイクチムシ類を含む門である。かつては独立した門だと思われていた有鬚動物(ゆうしゅどうぶつ、現シボグリヌム科)、ユムシ動物、星口動物を含むことが分子系統解析から分かり、多毛類がそれらの分類群をすべて内包し、多系統である事もわかった[10][228]。
Rouse and Fauchald (1997)による形態に基づく従来の系統関係は次の通りである[228][注釈 28]:
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分子系統解析に基づく系統樹は次の通りである[228][注釈 29]:
環形動物 |
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Annelida |
二胚動物・直泳動物
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二胚動物と直泳動物を吸啜動物の姉妹群とする分子系統樹の例[158] |
分子系統解析から、かつて中生動物とされていた二胚動物および直泳動物はともに螺旋動物に属することが支持されている。ただし、その中でも、二胚動物と直泳動物は姉妹群「中生動物」となり、さらにそれが吸啜動物と姉妹群をなすという結果もあれば[158]、直泳動物は環形動物に内包され、環形動物の極端に退化した形と考えられることもあり[159]、まだ決着はついていない。
後口動物
後口動物(新口動物)は棘皮動物門、半索動物門、脊索動物を含み、新口動物とも呼ばれる[149][230]。ヘッケルは新口動物の共通祖先から脊索動物が進化した過程を論じた際、棘皮動物の幼生[注釈 31] と半索動物のトルナリア幼生が共有する形質を合わせて、それらの祖先型として、ディプリュールラ幼生 (Dipleurula)という仮想的な幼生を考えた[231]。ディプリュールラ幼生はトロコフォア幼生と同様に口から肛門に至る消化管、頂器官に感覚器としての長い繊毛、口を中心とした繊毛帯(または繊毛環)、体後端部の端部繊毛帯を持つが、ディプリュールラ幼生では3部性の体腔(原体腔・中脳腔・後脳腔)を持つことおよび繊毛帯の走り方が異なる[231][232][233]。
2018年現在、棘皮動物と半索動物が姉妹群をなすという説が大勢を締めており[10][234]、これら2つをあわせて水腔動物 Coelomoporaという[10]。
後口動物は胚発生において陥入によってできた原口が口になる前口動物に対し、原口が口にならず新たに口が開く動物であり、かつては現在後口動物とされる棘皮動物、半索動物、脊索動物だけでなく、触手冠動物としてまとめられる箒虫動物、苔虫動物(外肛動物)、腕足動物、そして毛顎動物を含んでいた[230][235]。これはブルスカとブルスカ (1990)、メルグリッチとシュラム (1991)などによる形態形質に基づく系統解析でも、原口に由来しない口を持つだけでなく、原腸由来の中胚葉を持つことや腸体腔を持つことなどの形質からも支持されていた[235]。ほかにも、放射卵割を行うなど[74]、後口動物としての性質を多く持っている。しかし分子系統解析の進展により、触手冠動物および毛顎動物は前口動物に属すると考えられるようになった[74][218][236]。この変更以降も「後口動物」という系統群名を用いるが[237][238][239][240][240][241][242][243] 、毛顎動物や腕足動物のような原口が口にならない動物も前口動物に含まれ[74]、単純に原口の有無が系統を反映しているわけではない。
水腔動物
水腔動物 Coelomopora( 歩帯動物 Ambulacraria)は幼生の形態、三体腔性、軸器官などの形質を共有する[234][10]。
棘皮動物は、成体が五放射相称、三胚葉性で、内胚葉由来の中胚葉(内中胚葉)を持つ[244]。腸体腔性の体腔で、体腔に由来する水管系と呼ばれる独自の構造をもつ[244][245]。神経系は中枢神経を持たず、神経環と放射神経からなるが、ウミユリ綱では神経節を持つ[244]。ウミユリ綱、ヒトデ綱、クモヒトデ綱、ナマコ綱、ウニ綱からなり、分子系統解析によりこれらのうちウミユリ綱が最も祖先的だと考えられている[244][245]。ウニ綱のうちタコノマクラ類やブンブク類では五放射相称が歪み左右相称性を示す[245]。
現生の半索動物はギボシムシ綱(腸鰓綱)とフサカツギ綱(翼鰓綱)からなり、化石ではフデイシ綱が置かれる[246][247]。どちらも体は前体・中体・後体の3つの部分に分かれるという共通した形質を持ち、前者では吻・襟・体幹と呼ばれ、後者では頭盤・頸・体幹と呼ばれる[246]。ギボシムシ綱では腸体腔と裂体腔をもつとされるが、体腔形成には不明な点も多い[246]。ギボシムシ綱は側系統で、ギボシムシ綱のハリマニア科がフサカツギ綱と姉妹群をなし、フサカツギ綱はギボシムシ綱から小型化によって体が二次的に単純化したと考えられる[246]。半索動物は脊索動物と同様に鰓裂を持つ[247][248]。かつては口盲管という器官が脊索の一種と考えられたこともあったが[246]、口盲管と脊索との関係を支持する発生遺伝学的研究結果はなく[248]、現在では脊索を持たないとされる[247]。
脊索動物
脊索動物 Chordata は頭索動物・尾索動物(被嚢動物)・脊椎動物を含むクレードで、一生のうち少なくとも一時期に鰓裂・脊索およびその背側に背側神経管を持つという形質を共有する[247][249]。脊索は膨らませた細長い風船に喩えられる中軸器官で、脊索鞘という繊維質の頑強な膜に脊索細胞が包まれている[247]。頭索動物および尾索動物がもつ内柱は脊椎動物における甲状腺と相同で、甲状腺は内柱の変化したものと考えられている[249]。発生はさまざまであるが発生の一時期には肛門の後方に筋肉により運動する尾状部分があり、オタマジャクシ型幼生(tadpole larva)を経る[249]。
脊索動物は脊索と背側神経管という共通する二つの特徴をもつことから1つの門に置かれ、その中の3群は亜門に置かれてきたが、佐藤矩行・西川輝昭 (2014)により、分子系統学的解析および3群がそれぞれ特徴的な形質を持つことに基づいて脊索動物をよ り高次の上門に置き、3群を門に格上げする考えが提唱された[247][250][251]。
脊索動物 |
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尾索動物と頭索動物はかつてまとめて原索動物と呼ばれていた[218]。ホヤ類と頭索動物はともに囲鰓腔を持ち濾過摂食を行うが、後者は肛門が独立して体外に開くことと雌雄異体であることで異なる[247]。
脊椎動物から四肢動物を除いたグループは伝統的に魚類と呼ばれ、分岐分類学的には四肢動物は硬骨魚類に含まれるため、側系統群となる[249][252]。同様に四肢動物は両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類からなるが[249][252]、このうち爬虫類は羊膜類から鳥類と両生類を除いた側系統群である[249][253]。
分類の歴史
アリストテレスの分類
伝統的に諸民族で、生物は植物と動物に大別されてきた[1]。古代ギリシアのアリストテレスは『動物誌 Περὶ Τὰ Ζῷα Ἱστορίαι』などの著作において動物と植物の中間的存在を認めつつこの区分を採用し、感覚と運動の能力は動物にだけ見られるとし、霊魂の質的差異によって理論的に説明しようとした[1][254]。さらに動物を赤い血を持つ有血動物(ἐναίμος、現代の「脊椎動物」に相当)とそうでない無血動物(ἀναίμος、現代の「無脊椎動物」に相当)に二分し、発生様式と足の数を主要な基準として体系的に細分した[1][255]。アリストテレスはリンネ式階層分類とは異なり、全ての上位分類に「類 γένος」を用い[255]、有血動物を人類・胎生四足類・卵生四足類・鳥類・魚類に、無血動物を軟体類(μαλάκια、現在の頭足類)・軟殻類(軟甲類、μαλακόστρακα、現在の軟甲類 Malacostracaに相当)・有節類(ἔντομα、現在の節足動物から甲殻類を除いた概念)・殻皮類(ὀστρακόδερμα、現代の貝類に加え、ウニ類、ホヤ類を含む)に分けた[254][255]。
リンネの分類
動物界には、上記のような動物門が置かれるが、これはカール・フォン・リンネの『自然の体系 第10版』(1758)において、属より高次の階級として置いた「綱」に由来するとされる[10]。リンネは『自然の体系 初版』(1735)で動物を四足綱 Quadrupedia、鳥綱 Aves、両生綱 Amphibia、魚綱 Pisces、昆虫綱 Insecta、蠕虫綱 Vermesに分けた[256]。第10版では、初版の魚綱に含まれていたクジラを四足綱に加え、哺乳綱 Mammaliaとしただけでなく、ヤツメウナギやサメなどが両生綱に含められた[256]。
『自然の体系 初版』(1735)[256] | 『自然の体系 第10版』(1758)[256] |
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リンネ以降
このリンネが動物を分けた綱はジョルジュ・キュヴィエ (1812)により "embranchement" (以下門と訳す)とされ、階級としての綱はその下位の階級名として残された[10]。キュヴィエの分類体系では動物を大きく脊椎動物門・軟体動物門・体節動物門・放射動物門の4群に分けた[257]。この階級を「門 Phylum」としたのはエルンスト・ヘッケル (1866)で、脊椎動物門・体節動物門・軟体動物門・棘皮動物門・腔腸動物門の5門を認めた[10]。
かつて存在した動物門
研究の進行、特に分子系統解析の台頭により解体または他の動物門の下位に吸収された動物門も多く存在する。詳細は各項を参照。
- 腔腸動物門 Coelenterata Hatschek, 1888
- 現在は刺胞動物門および有櫛動物門に分割されている。かつては胃水管系を腔腸 (coelenteron)と呼び、腔腸動物としてまとめられていた[177]。また放射相称動物 Radiata と呼ばれることもあった[36]。有櫛動物は、細胞器官である刺胞の代わりに1個の細胞が変形してできた膠胞を持つことや、上皮細胞の各細胞が2本以上の繊毛を備える多繊毛性であること、中胚葉性の真の筋肉細胞を持つこと、卵割は決定性卵割であること、複数の感覚器が放射相称的に配置される刺胞動物とは異なり1個のみを反口側に持つことなど、刺胞動物と大きく異なっており、しかも分子系統解析により腔腸動物が単系統とならないことがわかったので両者は別の門として分けられている[142][177]。
- ミクソゾア門 Myxozoa Grassé, 1970
- 原生動物の一群として扱われることもあったが、極糸が入った極嚢という構造が刺胞に似ており、分子系統解析の結果、現在では刺胞動物に含められる[175][258][259]。後生動物特有の細胞間接着構造や動物のみに存在するHox 型ホメオティック遺伝子を持ち、寄生性の獲得により二次的に退化した体制となったと考えられている[259]。
- 中生動物門 Mesozoa van Beneden, 1876
- 現在は二胚動物門および直泳動物門に分割されている。Édouard van Beneden (1876)により原生動物と後生動物の中間に位置をする動物群として、ニハイチュウ(二胚動物)のみを含む群として設立され、のちにvan Beneden (1882)にチョクエイチュウ(直泳動物)がこれに含められた[260]。その後様々な生物が含められたがその正体が渦鞭毛藻やミクソゾアであることがわかり、除かれた[260]。Kozloff (1990)は、あるステージのニハイチュウ類はチョクエイチュウ類のそれに表面的には似ているが、それ以外の点においては明確に異なっているとして、これらを独立の門に置いた[261]。
- 一胚葉動物門 Monoblastozoa R. Blackwelder, 1963
- 1982年にアルゼンチンの岩塩から発見された1層の体皮細胞からなる生物であるが、存在が疑問視されている[262]。
- 袋形動物門 Aschelminthes taxon inquirendum
- 偽体腔をもつ動物をまとめた「ごみ箱分類群 wastebasket taxon」で、現在は輪形動物・鉤頭動物・腹毛動物・線形動物・類線形動物・動吻動物・胴甲動物・鰓曳動物・内肛動物に分割されている[38]。鉤頭動物・線形動物・類線形動物は円形動物としてまとめられたこともあった。
- 前肛動物門 Prosopygii Lang, 1888
- 箒虫動物、苔虫動物、腕足動物、ほかにも星口動物およびフサカツギ類などはかつてまとめて前肛動物と呼ばれ1門に置かれていた[263][264]。箒虫動物・苔虫動物・腕足動物の3分類群は現在でも触手冠動物として門より高次の分類群をなすことがある[10]。
- 鉤頭動物門 Acanthocephala Kohlreuther, 1771
- 現在は輪形動物に内包され、かつての狭義の輪形動物は側系統となる[151]。狭義の輪形動物および鉤頭動物を門として残し、現在の広義の輪形動物を共皮類(多核皮動物[221]) Syndermata とすることもある[151]。
- 有鬚動物門 Pogonophora Johansson, 1937
- 現在は環形動物門に内包されている[265]。狭義の有鬚動物(ヒゲムシ)と下記のハオリムシは体後端の体節構造および成体での消化管の喪失などの共有派生形質をもち、まとめて有鬚動物とする考えが主流であった[265]。溝副触手綱 Canalipalpata ケヤリ目 Sabellidaに含まれる[266]1科、シボグリヌム科 Siboglinidaeとなっている。
- ハオリムシ動物門 Vestimentifera Webb, 1969
- 現在は環形動物門に内包されている[265]。もともと上記の有鬚動物に含められていたが、ジョーンズ (1985)は体腔の構造の違いを重視し、独立した門に置いた[265]。しかし、当時よりSouthward (1988)のように反対意見も多く、上記のような共有派生形質を持つことから以降も有鬚動物とされることが多かった[265]。現在は上記のシボグリヌム科に含められる。
- 舌形動物門 Pentastomida Diesing, 1836
- 現在は節足動物門に内包されている。魚類の外部寄生虫である鰓尾類と近縁であることがわかり[268]、現在はウオヤドリエビ綱の中の1亜綱、舌虫亜綱 Pentastomida Diesing, 1836 とされる[204]。
- 単肢動物門 Uniramia[269]
- 現在は節足動物門に内包されている。昆虫類および多足類を共通の性質を持つとして合わせ、鋏角類や甲殻類とともに独立した門とされることもあった[269]。しかし、現在は昆虫は汎甲殻類として甲殻類と姉妹群をなすことが明らかになっており、もはや用いられない。
新しい動物門
1960年以降に提唱され、現在も用いられている動物門を挙げる。詳細は各項を参照。
- 平板動物門 Placozoa Grell, 1971
- 1883年にオーストラリアの水族館で発見されたが、採集方法が確立し詳細な形態観察できるまで存在が認められなかった[265]。1971年に平板動物門が設立された[150]。
- 顎口動物門 Gnathostomulida Ax, 1956
- アックス (1956)によって発見され扁形動物の1目として記載されたが、リードゥル (1969)により独立の動物門に移された[151][265]。
- 胴甲動物門 Loricifera Kristensen, 1983
- クリステンセン (1983)により記載された[265]。
人間との関わりによる区分
使役動物
馬など人間が使役に利用する動物を使役動物という[272]。西欧の動物保護法は使役動物の保護から出発した[272]。
畜産動物
人間が畜産に利用する動物を畜産動物という。イギリスの動物の福祉の考え方はもともと畜産動物を対象として出発した[272]。
愛玩動物
愛玩動物とは、一般に家庭などで愛玩のために飼育されている動物で、特に愛玩飼育を目的として改良・繁殖が行われてきた動物をいう[273]。
展示動物
展示動物とは、動物園で展示されている動物のように展示を目的として飼育されている動物をいう[273]。
実験動物
実験動物とは、ラットやサルなど実験を目的として飼育されている動物をいう[273]。
後生動物以外の学術的な用法
記事冒頭の通り、動物界(後生動物)を「動物」として扱うことが一般的であるが[1]、「動物」の語は学術的な場面でもほかの語義を持つことがある。
- 原生動物 (protozoans)
- 捕食や移動など、動物的な特徴を持った単細胞や群体性真核生物(非単系統群)に対する慣用名[274]。二界説の時代に動物界における原生動物門(または原生動物亜界 )Protozoa とされ、鞭毛虫類、肉質虫類、胞子虫類、繊毛虫類に細分されていた[274]。
- 動物プランクトン(zooplankton)
- プランクトンのうち、鞭毛などにより運動性と持つもので、原生動物、節足動物(橈脚類・鰓脚類)、輪形動物を主とする[275]。
- 動物性機能(animal function)
- 生体の持つ機能のうち、運動・感覚・神経相関の3つを指し、この働きに携わる器官を動物性器官(animal organ)と呼ぶ[276]。古くから人体生理学において、栄養・成長・生殖・呼吸・血液循環・排出などの植物性機能に対し、生体の対外的・能動的働きかけとしての行動系を実現することが多いため、「動物」の名を冠し呼ばれる[276]。植物でも動物性機能は多く見られるが、医学では現在でも用いられている[276]。
- 動物極(animal pole)
- 動物の卵細胞や初期胚において、極体の生じる極、または重力と平衡な環境において上方に位置する極を指す[277]。これらは一致しないこともある[277]。この極の付近から上記の動物性器官(神経系・感覚器官・運動器官)が生じると考えられたためこの名があるが、そうでない場合もある[277]。
脚注
注釈
- ^ 左上から順に、1段目:ヒトデの一種(棘皮動物門星形動物亜門ヒトデ綱)、クダカイメン Aplysina fistularis(海綿動物門)、セイヨウダンゴイカ Sepiola atlantica(軟体動物門頭足綱)、
2段目:ミズクラゲ Aurelia aurita(刺胞動物門鉢虫綱)、ガの一種 Hypercompe scribonia(節足動物門六脚亜門昆虫綱)、ゴカイの一種 Nereis succinea(環形動物門多毛綱)、
3段目:ヒレジャコ Tridacna squamosa(軟体動物門二枚貝綱)、シベリアトラ(脊索動物門脊椎動物亜門哺乳綱)、ホヤの一種Polycarpa aurata(脊索動物門尾索動物亜門ホヤ綱)、
4段目:クマムシの一種(緩歩動物門異クマムシ綱)、淡水産コケムシの一種(外肛動物門掩喉綱)、ウツボの一種 Enchelycore anatina(脊索動物門脊椎動物亜門条鰭綱)、
5段目:カニの一種 Liocarcinus vernalis(節足動物門甲殻亜門軟甲綱)、鉤頭動物の一種 Corynosoma wegeneri(輪形動物門古鉤頭虫綱)、アオカケス(脊索動物門脊椎動物亜門鳥綱)、
6段目:ハエトリグモの一種(節足動物門鋏角亜門蛛形綱)、ヒラムシの一種 Pseudoceros dimidiatus(扁形動物門渦虫綱)、ホウキムシ類のアクチノトロカ幼生(箒虫動物門) - ^ 古典ラテン語の中性第三活用(i音幹)名詞 animal, is, nの複数形主格。
- ^ 明治以前の日本では、中国本草学の影響により生物各群を草・虫・魚・獣などと並列的に扱うことが一般的であり、生物を動物と植物に大別することは西欧の学問の流入以降に普及した考えである[1]。
- ^ 原生動物は進化的に異なる雑多な生物をまとめたグループ(多系統群)であり、ミニステリアなどの一部の生物を除き後生動物とは系統的に遠縁である。
- ^ この「ランク」は流動的な分類群の実情に合わせ、リンネ式階層分類のように絶対的な階層をもたない[9]。
- ^ 幼生中胚葉 (larval mesoderm)または中外胚葉 (mesectoderm)とも呼ばれる[35]。
- ^ 真の中胚葉 (true mesoderm)または中内胚葉 (mesendoderm)とも呼ばれる[35]
- ^ 哺乳類のように卵黄が僅かな場合は無黄卵 alecithal eggと呼ばれる[72]。
- ^ 中黄卵と呼ぶこともあるが、この語は中位の卵黄量を持つ mesolecithal にも用いられる[72]。
- ^ 卵割腔も blastocoelと呼ばれ、区別されない[76]。
- ^ 藤田 (2010)では、分子系統解析によればこれらの動物門は最古の化石より10億年以上遡ると推測されている[125]とあるが、これは正しくない。
- ^ 有爪動物、緩歩動物、節足動物
- ^ ガッコウチュウと呼ばれることもあるが[140]、顎口虫は線形動物の寄生虫 Gnathostoma にも用いられる[141]。
- ^ a b 刺胞動物と有櫛動物は外見が類似しているので腔腸動物門としてまとめられていたが、有櫛動物は刺胞がなく、上皮細胞が多繊毛性であり、決定性卵割であるといった刺胞動物との決定的違いがあり、しかも分子系統解析により腔腸動物が単系統とならないことがわかったので両者は別の門として分けられている[142]
- ^ かつて扁形動物門に分類されていた珍渦虫と無腸動物を新たな門として立てたもの[143]。その系統的位置に関しては、左右相称動物の最も初期に分岐したとする説[144][145] と後口動物の一員であるとする説[146][147] がある。
- ^ a b c 脊椎動物・頭索動物・尾索動物の3門を亜門とし、まとめて脊索動物門とすることも多い。詳しくは#脊索動物を参照
- ^ a b 直泳動物門と二胚動物門はかつて中生動物門とされており[149]、原生動物から後生動物に進化する過程であると過去には見られていたが、2010年現在では寄生生活により退化した後生動物(螺旋動物)であると見られている[150]
- ^ 鉤頭動物 Acanthocephalaは輪形動物に内包され、狭義の輪形動物は側系統となる。狭義の輪形動物および鉤頭動物を門として残し、広義の輪形動物を共皮類 Syndermata とすることもある[151]。
- ^ 星口動物・ユムシ動物・有鬚動物は過去には門として立てられていた事もあるが、2018年現在は環形動物門の一部とみなされている[152]。
- ^ ギリベ (2016)における系統仮説では有輪動物の系統位置が不明であり前口動物内に曖昧さをもって置かれるが、ラーマーら (2019)でははっきりと内肛動物との単系統性を示すため、これを反映した。また、ギリベ (2016)における系統仮説では苔虫動物と内肛動物が姉妹群をなすが、ラーマーら (2019)では苔虫動物と箒虫動物が姉妹群となり、それに腕足動物を加えた単系統群(lophophorate clade[157]、触手冠動物[10])が強く支持され、内肛動物はそれと姉妹群をなす結果はあるもののそうでない結果もあることから、ラーマーら (2019)の系統樹を優先して変更した。
- ^ 後口動物の水腔動物と姉妹群をなすという結果もある[147]。
- ^ 前口動物内での位置は未確定[10][156] だが、担顎動物に近縁という結果がある[157]。
- ^ 前口動物内での位置は未確定[10][156] だが、吸啜動物に近縁[158] または環形動物に内包される[159] という結果がある。
- ^ 前口動物内での位置は未確定[10][156] だが、吸啜動物に近縁という結果がある[158]。
- ^ a b c 螺旋動物は冠輪動物と呼ばれる事もある[10]。その場合本項の系統樹に登場する冠輪動物は担輪動物と呼び変えられる[10]
- ^ この系統樹は主に Oakley et al. (2013)に基づくもので、Regier et al. (2010)などでは鰓脚綱は多甲殻類とともにとクレードをなし、真甲殻上綱 Vericrustaceaとして扱われる[204]。
- ^ ただし、螺旋動物のうち、触手冠動物の腕足動物などでは放射卵割を行い[74]、脱皮動物でも線形動物のように螺旋卵割を行うものも存在する[218]。かつては前口動物の持つ形質だとみなされていたが、おそらく螺旋動物の持つ共有派生形質である[74]。
- ^ 和名は『岩波生物学辞典 第5版』(2013)に基づく[229]。
- ^ 多くが科名の列記になっているのはそれらをまとめた高次分類群は未だ命名されていないためである[228]。
- ^ 例外も多く、例えば尾索動物では後口動物ながら真体腔は裂体腔的に生じる。
- ^ ドリオラリア幼生(ウミユリ、ナマコ)、オーリクラリア幼生(ナマコ)、ビピンナリア幼生(ヒトデ)、オフィオプルテウス幼生(クモヒトデ)、プルテウス幼生(エキノプルテウス、ウニ)などがあり、ドリオラリア型やオーリクラリア型のものが原始的であると考えられている
- ^ ただしホヤ綱は残りの両者を内部の別のクレードに含む側系統群[247]。
種名
- ^ クダカイメン Aplysina fistularis
- ^ カイロウドウケツ Euplectella aspergillum
- ^ キタカブトクラゲ Bolinopsis infundibulum
- ^ アトランティックシーネットル Chrysaora quinquecirrha
- ^ 複数種(イシサンゴ目)
- ^ センモウヒラムシ Trichoplax adherens
- ^ Waminoa sp.
- ^ ニッポンチンウズムシ Xenoturbella japonica
- ^ アカヒトデ Certonardoa semiregularis
- ^ ニセクロナマコ Holothuria leucospilota
- ^ ナガウニ Echinometra mathaei
- ^ 腸鰓綱の一種(未同定)
- ^ ナメクジウオ Branchiostoma lanceolatum
- ^ Symplegma rubra
- ^ ウシ Bos taurus
- ^ イソヤムシ Spadella cephaloptera
- ^ ヤギツノトゲカワ Echinoderes hwiizaa
- ^ エラヒキムシ Priapulus caudatus
- ^ Pliciloricus enigmatus
- ^ ヒトカイチュウ Ascaris_lumbricoides
- ^ Paragordius tricuspidatus
- ^ Hypsibius dujardini
- ^ Peripatoides indigo
- ^ ヨーロッパクロスズメバチ Vespula germanica
- ^ オオズワイガニ Chionoecetes bairdi
- ^ Rhopalura ophiocomae
- ^ ヤマトニハイチュウ Dicyema japonicum
- ^ パンドラムシ Symbion pandora
- ^ Gnathostomula paradoxa
- ^ コアゴムシ[140] Limnognathia maerski
- ^ カドツボワムシ Brachionus quadridentatus
- ^ Lepidodermella squamata
- ^ Schmidtea mediterranea
- ^ 無鉤条虫 Taenia saginata
- ^ ホタテガイ Mizuhopecten yessoensis
- ^ ヨーロッパヤリイカ Loligo vulgaris
- ^ オウシュウツリミミズ Lumbricus terrestris
- ^ セイヨウカワゴカイ Hediste diversicolor
- ^ ユムシ Urechis unicinctus
- ^ スジホシムシSipunculus nudus
- ^ ミサキヒモムシ Notospermus geniculatus
- ^ ミドリシャミセンガイ Lingula anatina
- ^ ホウキムシ Phoronis hippocrepia
- ^ オオマリコケムシ Pectinatella magnifica
- ^ スズコケムシ Barentsia discreta
出典
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