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1968年ベルギーグランプリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ベルギー 1968年ベルギーグランプリ
レース詳細
1968年F1世界選手権全12戦の第4戦
スパ・フランコルシャン (1947-1978)
スパ・フランコルシャン (1947-1978)
日程 1968年6月9日
正式名称 XXVIII Grand Prix de Belgique
開催地 スパ・フランコルシャン
ベルギーの旗 ベルギー スパ
コース 恒久的レース施設
コース長 14.100 km (8.761 mi)
レース距離 28周 394.800 km (245.317 mi)
決勝日天候 曇(ドライ)
ポールポジション
ドライバー フェラーリ
タイム 3:28.6
ファステストラップ
ドライバー イギリスの旗 ジョン・サーティース ホンダ
タイム 3:30.5 (5周目)
決勝順位
優勝 マクラーレン-フォード
2位 BRM
3位 フェラーリ

1968年ベルギーグランプリ (1968 Belgian Grand Prix) は、1968年のF1世界選手権第4戦として、1968年6月9日スパ・フランコルシャンで開催された。

28周で行われたレースは、マクラーレンブルース・マクラーレンが6番手スタートから優勝、BRMペドロ・ロドリゲスが2位、フェラーリジャッキー・イクスが3位となった。

背景

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前戦モナコグランプリロータス・49Bのフロントノーズに初めてウイングが装着されたが、このアイデアはフェラーリブラバムにも採用された。フェラーリはエースのクリス・エイモン312にリアウイングを初めて装着し[1][2]、エイモンのチームメイトであるジャッキー・イクスの312にはウイングが装着されなかった[3]。ブラバムはジャック・ブラバムBT26にリアウイングを装着し、揚力に対抗するためフロントノーズにダイブプレーンを取り付けた[4]。次戦オランダグランプリにはイクスの312にもウイングが装着された(そして他チームもこのアイデアを採用していった)。

インディ500英語版ダン・ガーニーが2位、デニス・ハルムは4位となった[5]

エントリー

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前戦モナコGPを欠場したフェラーリのエイモンとイクスが復帰し、右腕を骨折したジャッキー・スチュワートマトラ・インターナショナルに復帰したが[5]、しばらくは副え木を当てての参戦を強いられた[6]ルシアン・ビアンキクーパーに留まり、ルドビコ・スカルフィオッティの後任となった[5]

エントリーリスト

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チーム No. ドライバー コンストラクター シャシー エンジン タイヤ
イギリスの旗 ゴールドリーフ・チーム・ロータス 1 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス 49B フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
2 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー
イギリスの旗 ロブ・ウォーカー/ジャック・ダーラッシャー・レーシングチーム 3 スイスの旗 ジョー・シフェール ロータス 49 フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
イギリスの旗 ブルース・マクラーレン・モーターレーシング 5 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン マクラーレン M7A フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
6 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム
イギリスの旗 マトラ・インターナショナル 7 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マトラ MS10 フォードコスワース DFV 3.0L V8 D
日本の旗 ホンダ・レーシング 8 イギリスの旗 クリス・アーウィン 1 ホンダ RA300 ホンダ RA273E 3.0L V12 F
20 イギリスの旗 ジョン・サーティース RA301 ホンダ RA301E 3.0L V12
フランスの旗 マトラ・スポール 10 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ MS11 マトラ MS9 3.0L V12 D
イギリスの旗 オーウェン・レーシング・オーガニゼーション 11 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM P133 BRM P142 3.0L V12 G
12 イギリスの旗 リチャード・アトウッド P126
イギリスの旗 レグ・パーネル・レーシング 14 イギリスの旗 ピアス・カレッジ BRM P126 BRM P142 3.0L V12 G
イギリスの旗 クーパー・カー・カンパニー 15 ベルギーの旗 ルシアン・ビアンキ クーパー T86B BRM P142 3.0L V12 F
16 イギリスの旗 ブライアン・レッドマン
スイスの旗 ヨアキム・ボニエ・レーシングチーム 17 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ マクラーレン M5A BRM P142 3.0L V12 G
イギリスの旗 ブラバム・レーシング・オーガニゼーション 18 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム BT26 レプコ 860 3.0L V8 G
19 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント
アメリカ合衆国の旗 アングロ・アメリカン・レーサーズ 21 アメリカ合衆国の旗 ダン・ガーニー 2 イーグル T1G ウェスレイク 58 3.0L V12 G
イタリアの旗 スクーデリア・フェラーリ SpA SEFAC 22 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン フェラーリ 312/67 フェラーリ 242 3.0L V12 F
23 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス
ソース:[7]
追記

予選

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クリス・エイモンがウイングを装着したフェラーリ・312で、2番手のジャッキー・スチュワートマトラ・インターナショナル)に4秒の差を付けてポールポジションを獲得した。ウイングを装着しなかったジャッキー・イクスは3番手で、フェラーリ勢がフロントローの3台のうち2台を占めた[注 1]。2列目はジョン・サーティースホンダ)とデニス・ハルムマクラーレン)、3列目はブルース・マクラーレン(マクラーレン)、ピアス・カレッジレグ・パーネル・レーシング英語版BRM)、ペドロ・ロドリゲス(BRM)が占めた。グラハム・ヒルジャッキー・オリバーロータス勢は金曜日に2台ともマシントラブルを抱え、土曜日が雨となったため、後ろから2列目に沈んだ[5]

その土曜日にルドビコ・スカルフィオッティがロスフェルドで行われたヒルクライムの事故で亡くなったというニュースが流れた。それは4月のジム・クラーク、5月のマイク・スペンス英語版に続く、この年3人目となる現役F1ドライバーの訃報であった[5][10]

結果

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順位 No. ドライバー コンストラクター タイム グリッド
1 22 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン フェラーリ 3:28.6 - 1
2 7 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マトラ-フォード 3:32.3 +3.7 2
3 23 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス フェラーリ 3:34.3 +5.7 3
4 20 イギリスの旗 ジョン・サーティース ホンダ 3:35.0 +6.4 4
5 6 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 3:35.4 +6.8 5
6 5 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン マクラーレン-フォード 3:37.1 +8.5 6
7 14 イギリスの旗 ピアス・カレッジ BRM 3:37.2 +8.6 7
8 11 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM 3:37.8 +9.2 8
9 3 スイスの旗 ジョー・シフェール ロータス-フォード 3:39.0 +10.4 9
10 16 イギリスの旗 ブライアン・レッドマン クーパー-BRM 3:41.4 +12.8 10
11 12 イギリスの旗 リチャード・アトウッド BRM 3:45.2 +16.6 11
12 15 ベルギーの旗 ルシアン・ビアンキ クーパー-BRM 3:45.9 +17.3 12
13 10 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 3:52.9 +24.3 13
14 1 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス-フォード 4:06.1 +37.5 14
15 2 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー ロータス-フォード 4:30.8 +1:02.2 15
16 17 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ マクラーレン-BRM 4:34.3 +1:05.7 16
17 19 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント ブラバム-レプコ 4:46.7 +1:18.1 17
18 18 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム-レプコ No Time - 18
ソース:[11][12]

決勝

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日曜日はくすんだ曇り空で、スタートでクリス・エイモンがリードし、ジャッキー・イクスジョン・サーティースデニス・ハルムがエイモンを追ったが、2周目にサーティースがリードを奪った。グラハム・ヒルリチャード・アトウッドジャック・ブラバムヨッヘン・リントがマシントラブルに巻き込まれ、相次いでリタイアした[5]

ブライアン・レッドマンは7周目にサスペンションが壊れ、コンクリートウォールを超えて駐車されていた車に激突したためリタイアし、そのままサーキットを離れた。マシンは炎上したが、レッドマン自身は右腕の骨折といくつかの軽度の火傷で済んだ[5]

その後まもなく、エイモンはサーティースが撒き散らした小石がオイルラジエーターに当たり、そこからオイルが漏れてリアタイヤが滑り、コースアウトを喫してリタイアとなり[13]、首位のサーティースも12周目に左リアサスペンションのロアアームがモノコックから剥離してしまい、姿を消した[14]。これでハルムがリードを奪ったが、すぐにジャッキー・スチュワートに追い越され[5]、ハルムのドライブシャフトが破損して減速するまで[15]2人は目まぐるしく首位の座を入れ替えた[5]。これでスチュワートはブルース・マクラーレンに30秒の差を付けてリードしたが[5]、残り2周で燃料を使い果たしてピットインしてしまい、マクラーレンが首位に立ってそのままチェッカーフラッグを受けた[15]ペドロ・ロドリゲスが2位、イクスは3位でフィニッシュした[5]

ブルース・マクラーレンは1962年モナコグランプリ以来6年ぶりに通算4勝目を挙げ、ジャック・ブラバムに次ぐ自らの名を冠したマシンでF1世界選手権レースを制した2人目(オーナー兼ドライバーを含めると、前年のベルギーグランプリイーグルダン・ガーニーが勝って以来3人目)のドライバーとなった[16]。また、マクラーレンチームにとっても記念すべきF1世界選手権における初勝利であった[17][注 2]

結果

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順位 No. ドライバー コンストラクター 周回数 タイム/リタイア原因 グリッド ポイント
1 5 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン マクラーレン-フォード 28 1:40:02.1 6 9
2 11 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM 28 +12.1 8 6
3 23 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス フェラーリ 28 +39.6 3 4
4 7 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マトラ-フォード 27 燃料切れ 2 3
5 2 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー ロータス-フォード 26 トランスミッション 15 2
6 15 ベルギーの旗 ルシアン・ビアンキ クーパー-BRM 26 +2 Laps 12 1
7 3 スイスの旗 ジョー・シフェール ロータス-フォード 25 油圧 9
8 10 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 25 +3 Laps 13
Ret 14 イギリスの旗 ピアス・カレッジ BRM 22 エンジン 7
Ret 6 ニュージーランドの旗 デニス・ハルム マクラーレン-フォード 18 ハーフシャフト 5
Ret 20 イギリスの旗 ジョン・サーティース ホンダ 11 サスペンション 4
Ret 22 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン フェラーリ 8 ラジエーター 1
Ret 16 イギリスの旗 ブライアン・レッドマン クーパー-BRM 6 スピンオフ 10
Ret 12 イギリスの旗 リチャード・アトウッド BRM 6 オイルパイプ 11
Ret 18 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム-レプコ 6 スロットル 18
Ret 1 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス-フォード 5 ハーフシャフト 14
Ret 19 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント ブラバム-レプコ 5 エンジン 17
Ret 17 スウェーデンの旗 ヨアキム・ボニエ マクラーレン-BRM 1 ホイール 16
ソース:[18]
ファステストラップ[19]
ラップリーダー[20]

達成された記録

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第4戦終了時点のランキング

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  • : トップ5のみ表示。前半6戦のうちベスト5戦及び後半6戦のうちベスト5戦がカウントされる。

脚注

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注釈

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  1. ^ 本レースのスターティンググリッドは3-2-3。
  2. ^ 本レース以前に行われた非選手権レースを含めると、3月のレース・オブ・チャンピオンズ英語版ブランズ・ハッチ)でブルースが、4月のBRDCインターナショナル・トロフィー英語版シルバーストン)でハルムが勝利を収めている。

出典

[編集]
  1. ^ Legends”. Motor Sport magazine archive. p. 18 (October 1998). 10 August 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。9 August 2016閲覧。
  2. ^ (林信次 1995, p. 58,64)
  3. ^ Lawrence (1999) p.100
  4. ^ Nye (1986) p.72
  5. ^ a b c d e f g h i j k Belgian GP, 1968”. grandprix.com. 2019年8月29日閲覧。
  6. ^ (林信次 1995, p. 59)
  7. ^ Belgium 1968 - Race entrants”. STATS F1. 2019年8月29日閲覧。
  8. ^ Grand Prix Results: Monaco GP, 1968”. grandprix.com. 3 February 2015閲覧。
  9. ^ Belgium 1968 - Result”. STATS F1. 2019年8月29日閲覧。
  10. ^ (林信次 1995, p. 61)
  11. ^ Belgium 1968 - Qualifications”. STATS F1. 2019年8月29日閲覧。
  12. ^ Belgium 1968 - Starting grid”. STATS F1. 2019年8月29日閲覧。
  13. ^ (アラン・ヘンリー 1989, p. 240)
  14. ^ (中村良夫 1998, p. 249)
  15. ^ a b (ダグ・ナイ 1989, p. 198)
  16. ^ (林信次 1995, p. 43,58)
  17. ^ (林信次 1995, p. 58)
  18. ^ 1968 Belgian Grand Prix”. formula1.com. 18 January 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。26 September 2015閲覧。
  19. ^ Belgium 1968 - Best laps”. STATS F1. 2019年9月1日閲覧。
  20. ^ Belgium 1968 - Laps led”. STATS F1. 2019年9月1日閲覧。
  21. ^ 1968 Belgian GP”. ChicaneF1. 2019年8月27日閲覧。
  22. ^ a b Belgium 1968 - Championship”. STATS F1. 12 March 2019閲覧。

参照文献

[編集]
  • Wikipedia英語版 - en:1968 Belgian Grand Prix(2019年3月12日 14:22:49(UTC))
  • Lang, Mike (1982). Grand Prix! Vol 2. Haynes Publishing Group. pp. 66–67. ISBN 0-85429-321-3 
  • Lawrence, Mike (1999). Brabham+Ralt+Honda: The Ron Tauranac story. Motor Racing Publications. ISBN 1-899870-35-0 
  • Nye, Doug (1986). Autocourse history of the Grand Prix car 1966–85. Hazleton publishing. ISBN 0-905138-37-6 
  • 林信次『F1全史 1966-1970 [3リッターF1の開幕/ホンダ挑戦期の終わり]』ニューズ出版、1995年。ISBN 4-938495-06-6 
  • 中村良夫『F-1グランプリ ホンダF-1と共に 1963-1968 (愛蔵版)』三樹書房、1998年。ISBN 4-89522-233-0 
  • アラン・ヘンリー『チーム・フェラーリの全て』早川麻百合+島江政弘(訳)、CBS・ソニー出版、1989年12月。ISBN 4-7897-0491-2 
  • ダグ・ナイ『チーム・マクラーレンの全て』森岡成憲(訳)、CBS・ソニー出版、1989年12月。ISBN 4-7897-0491-2 

外部リンク

[編集]
前戦
1968年モナコグランプリ
FIA F1世界選手権
1968年シーズン
次戦
1968年オランダグランプリ
前回開催
1967年ベルギーグランプリ
ベルギーの旗 ベルギーグランプリ 次回開催
1970年ベルギーグランプリ