馬淵薫
まぶち かおる 馬淵薫 | |
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本名 | 馬淵 薫 |
別名義 | 馬渕 薫[1] |
生年月日 | 1911年2月4日 |
没年月日 | 1987年5月3日(76歳没) |
出生地 | 日本・大阪府 |
職業 | 脚本家 |
ジャンル | 映画 |
活動期間 | 1953年 - 1971年 |
主な作品 | |
経歴
[編集]関西大学を中退し、1930年に日本共産党に入党。その後、約10年間入獄したのち[9]、日本共産党の佐賀県委員長を務める。1950年(昭和25年)に離党し[9]、その後八住利雄に師事し脚本家になる[9][注釈 2]。
1953年(昭和28年)、映画『赤線基地』で脚本家デビュー[4][9]。東宝特撮路線を支えたプロデューサーの田中友幸や常連出演者の志村喬とは関西大学からの演劇仲間だが[9]、上京しての映画界入り後も関西演劇界とはつながりがあり、演劇青年時代の筒井康隆とも親交があり、香村菊雄に紹介している[10]。
特撮映画においては、SF路線を多く手掛け、新機軸を開拓した[出典 4]。怪獣などのキャラクターを社会の異端者として描き、悲劇的な物語としているのが特徴である[11]。書籍では、同時期に東宝特撮で活躍した関沢新一が「ポジ」であるのに対し、木村(馬淵)は「ネガ」であると評している[11][4]。文芸部時代に脚本家と携わることが多かった東宝プロデューサーの田中文雄は、木村(馬淵)は怪奇ものに向いていたと評している[12]。自身の作風について馬淵は、『赤線基地』『柳生武芸帳』『妖星ゴラス』を比較検討してもあまりに違いすぎて呆れるだろうとし、どこに顔があるのか自身でもわからないと述べている[1]。
『ゴジラ対ヘドラ』監督の坂野義光は、馬淵の第1稿をつまらないと感じ馬淵に問いただしたところ、馬淵は自身が脚本を担当した新人監督は皆ダメであったので手を抜いたと述べたという[13]。特技監督の中野昭慶は、田中友幸が馬淵と旧知であったことから低予算の作品でも頼みやすかったのであろうと推測している[14]。
晩年には、「男と女のドラマだけがドラマではない。妖星と地球の葛藤もドラマだ」と語っていた[1][4]。
映画脚本
[編集]- 赤線基地(1953年12月8日)
- さらばラバウル(1954年2月10日)
- ならず者(1956年5月10日)
- リンゴ村から(1956年10月31日)
- 空の大怪獣 ラドン(1956年12月26日)[5][注釈 3]
- 柳生武芸帳(1957年4月14日)[注釈 4]
- 地球防衛軍(1957年12月28日)[5]
- 変身人間シリーズ
- 眠狂四郎無頼控 魔剣地獄(1958年10月21日)
- 潜水艦イ-57降伏せず(1959年7月5日)
- 大坂城物語(1961年1月3日)
- 世界大戦争(1961年10月8日)[注釈 5]
- 妖星ゴラス(1962年3月21日)
- おへその大将(1962年6月20日)
- 大盗賊(1963年10月26日)
- 秘剣(1963年)
- 士魂魔道 大龍巻(1964年1月13日)
- フランケンシュタイン対地底怪獣(1965年8月8日)[5]
- 奇巌城の冒険(1966年4月28日)
- フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ(1966年7月31日)[注釈 6]
- キングコングの逆襲(1967年7月22日)[5]
- ゴジラシリーズ
未使用台本
[編集]- ウルトラQ
- ゴジラ対宇宙怪獣 地球防衛命令 - 『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』の準備稿の1つ[15]。東宝特撮映画の執筆はこれが最後となった[15]。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d 東宝SF特撮映画シリーズ4 1985, pp. 189–192, 馬渕薫「SF映画のドラマ性」
- ^ a b c 決定版ゴジラ入門 1992, p. 162, 「第5章 これがゴジラ映画だ 制作した人たち」
- ^ a b c 東宝特撮映画全史 1983, p. 540, 「特撮映画スタッフ名鑑」
- ^ a b c d e f g h ゴジラ来襲 1998, p. 182, 「第5章 東宝・特撮映画主要スタッフ紳士録」
- ^ a b c d e f g h i j 野村宏平、冬門稔弐「2月3日 / 2月4日」『ゴジラ365日』洋泉社〈映画秘宝COLLECTION〉、2016年11月23日、41頁。ISBN 978-4-8003-1074-3。
- ^ 馬淵薫 SOCKETS人物データベース
- ^ a b ゴジラ大百科 1992, p. 124, 構成 早川優「ゴジラ映画を100倍楽しむ100のカタログ 12 怪獣映画の文豪たち」
- ^ a b ゴジラ大全集 1994, p. 64, 「東宝特撮映画史 ゴジラ誕生 怪獣新シリーズの展開」
- ^ a b c d e f 小林淳 2022, p. 54, 「第一章 東宝空想特撮映画の開幕期を飾る楽音 [1954 - 1956] 四『空の大怪獣 ラドン』」
- ^ 筒井康隆「解説 香村菊雄」『筒井康隆劇場 スイート・ホームズ探偵』新潮社、1993年11月26日、299-300頁。ISBN 4-10-117130-0。
- ^ a b ゴジラ大全集 1994, p. 130, 「図説東宝特撮映画 CHAPT.1 脚本」
- ^ ゴジラ大全集 1994, p. 74, 「ゴジラ復活までの道程 田中文雄」
- ^ 東宝チャンピオンまつりパーフェクション 2014, p. 94, 「東宝チャンピオンまつりスペシャルインタビュー 坂野義光」
- ^ 東宝チャンピオンまつりパーフェクション 2014, p. 98, 「東宝チャンピオンまつりスペシャルインタビュー 中野昭慶」
- ^ a b 東宝チャンピオンまつりパーフェクション 2014, p. 131, 「東宝チャンピオンまつり 未使用シナリオ全文掲載」
出典(リンク)
[編集]参考文献
[編集]- 『東宝特撮映画全史』監修 田中友幸、東宝出版事業室、1983年12月10日。ISBN 4-924609-00-5。
- 『海底軍艦 / 妖星ゴラス / 宇宙大怪獣ドゴラ』東宝出版事業室〈東宝SF特撮映画シリーズ VOL.4〉、1985年8月1日。ISBN 4-924609-13-7。
- 竹内博 編『東宝特撮怪獣映画大鑑』朝日ソノラマ、1989年。ISBN 4-257-03264-2。
- 田中友幸『決定版ゴジラ入門』(第7刷)小学館〈小学館入門百科シリーズ142〉、1992年4月20日(原著1984年7月15日)。ISBN 4-09-220142-7。
- 『ENCYCLOPEDIA OF GODZILLA ゴジラ大百科 新モスラ編』監修 田中友幸、責任編集 川北紘一、Gakken〈Gakken MOOK〉、1992年12月10日。
- 田中文雄『神を放った男 映画製作者田中友幸とその時代』キネマ旬報社、1993年。ISBN 4-87376-070-4。
- 『テレビマガジン特別編集 誕生40周年記念 ゴジラ大全集』構成・執筆:岩畠寿明(エープロダクション)、赤井政尚、講談社、1994年9月1日。ISBN 4-06-178417-X。
- 坂井由人、秋田英夫『ゴジラ来襲!! 東宝特撮映画再入門』KKロングセラーズ〈ムックセレクト635〉、1998年7月25日。ISBN 4-8454-0592-X。
- 電撃ホビーマガジン編集部 編『ゴジラ 東宝チャンピオンまつり パーフェクション』KADOKAWA(アスキー・メディアワークス)〈DENGEKI HOBBY BOOKS〉、2014年11月29日。ISBN 978-4-04-866999-3。
- 小林淳『東宝空想特撮映画 轟く 1954-1984』アルファベータブックス〈叢書・20世紀の芸術と文学〉、2022年5月14日。ISBN 978-4-86598-094-3。