コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「コダマ (競走馬)」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
ぬるぽん (会話 | 投稿記録)
+xl using AWB
参考文献提示漏れの補完ほか
(同じ利用者による、間の1版が非表示)
10行目: 10行目:
|父 = ブッフラー
|父 = ブッフラー
|母 = [[シラオキ]]
|母 = [[シラオキ]]
|母父 = [[プリメロ]]
|産 = 鎌田牧場
|産 = [[鎌田牧場]]
|国 = {{JPN}}([[北海道]][[浦河町]])
|国 = {{JPN}}([[北海道]][[浦河町]])
|主 = 伊藤由五郎
|主 = [[伊藤由五郎]]
|調 = [[武田文吾]]([[京都競馬場|京都]])
|調 = [[武田文吾]]([[京都競馬場|京都]])
|助 = 吉沢彦二
|厩 = 吉沢彦二
|績 = 17戦12勝
|績 = 17戦12勝
|金 = 1816万2300円
|金 = 1816万2300円
}}
}}
'''コダマ'''([[1957年]][[4月15日]] - [[1976年]][[6月28日]])は、[[日本]]の[[競走馬]]、[[種牡馬]]である。
'''コダマ'''は[[日本]]の[[競走馬]]である。[[中央競馬]]で[[皐月賞]]・[[東京優駿]](日本ダービー)に優勝し[[二冠馬]]になった。そのほかにも[[宝塚記念]]や[[阪神ジュベナイルフィリーズ|阪神3歳ステークス]]を制している。1960年度[[JRA賞|啓衆社賞年度代表馬]]。[[1990年]][[9月12日]]に[[顕彰馬]]に選定された。


1959年に[[中央競馬]]でデビューし、翌1960年春までに[[阪神ジュベナイルフィリーズ|阪神3歳ステークス]]、[[皐月賞]]、[[東京優駿]](日本ダービー)を含む7連勝を遂げ、一時は競馬ファン以外の人々にもその名を知られ、その人気ぶりは競馬ブームの端緒となったともいわれる。同年秋の[[菊花賞]]で敗れて史上2頭目の[[中央競馬クラシック三冠|クラシック三冠]]を逃し、以後[[八大競走]]の優勝はないが、1962年に[[宝塚記念]]を制している。1960年度[[JRA賞|啓衆社賞年度代表馬]]および[[JRA賞最優秀3歳牡馬|最優秀4歳牡馬]]。競走馬引退後の1963年より種牡馬となり、[[桜花賞]]優勝馬[[ヒデコトブキ]]などを出した。[[1990年]][[9月12日]]に[[JRA顕彰馬]]に選定。
== 出自 ==
[[1957年]][[4月15日]]に[[北海道]][[浦河町]]の牧場で生まれる。父ブッフラーは現役時代に1戦0勝で、[[ヒンドスタン]]とともに日本へ輸入された。母は[[牡馬]]相手に[[1949年]]の[[東京優駿|優駿競走]]で2着に入った[[シラオキ]](父[[プリメロ]])で、弟に[[皐月賞]]を勝利した[[シンツバメ]](父[[ヒンドスタン]])がいる。入厩先は関西の名[[調教師]][[武田文吾]]厩舎に決まった。


半弟(異父弟)に1961年の皐月賞優勝馬[[シンツバメ]]がいる。
「コダマ」という名前は、[[鉄道ファン]]の[[馬主]]である[[伊藤由五郎]]が[[1958年]]から[[東京]]〜[[大阪]]間を6時間50分で結んだ特急電車「[[こだま (列車)|こだま]]」号にちなみ、速く走れるように願って付けたもの。[[オーナー]]がこの馬のために東京に応援に行く時は、「第1こだま」の先頭車両(当時の[[三等車]]([[1960年]][[7月1日]]より[[二等車]])である12号車)の最前列に席を予約するという入れ込みようであった(弟のシンツバメも1960年[[6月1日]]に[[客車]]から[[電車]][[特別急行列車|特急]]になりスピードアップされた「[[つばめ (列車)|(新)つばめ]]」号から名付けられた)。この馬の戦績は[[競馬ファン]]以外にも鉄道ファンなどによく知られ、コダマという名に相応しい超特急馬であった。


== 歴 ==
== 歴 ==
=== 出自 ===
[[1959年]]に武田厩舎に入厩すると、同年[[9月20日]]に新馬戦でデビュー。当時の競走馬は出られるレースにはすべて出るという使い方が主流だったが、入厩当初から武田のコダマに対する期待は大きく、武田はダービーで勝つことを最重要課題と考えてコダマの出走スケジュールを綿密に計画していた。デビュー戦に勝つと続くレースも連勝し、3歳を3戦3勝で終える。
[[1957年]][[4月15日]]に[[北海道]][[浦河町]]の[[鎌田牧場]]で生まれる。父[[ブッフラー]]は競走馬時代[[イギリス]]で走り1戦0勝、1955年に[[ヒンドスタン]]と共に日本へ輸入されたが、「ヒンドスタンの付け馬(おまけ)」という評判で、さほど注目はされていなかった<ref name="meishobu2">『日本の名馬・名勝負物語』p.211</ref><ref>大川(1997)p.62</ref>。本馬はその初年度産駒である。母[[シラオキ]]は1949年の日本ダービーで牡馬相手に2着に入った実績を持つ。1958年秋、[[京都競馬場]]へ送られ[[武田文吾]]厩舎に入厩。その後、馬主の[[伊藤由五郎]]によりコダマと命名された<ref name="meishoubu">『日本の名馬・名勝負物語』p.207</ref>。名前は1958年に東京~大阪間に開通した在来線特急の「[[こだま (列車)|こだま]]」に由来する<ref name="meishoubu" />。なお、同馬主の[[シーザー (競走馬)|シーザー]]と一緒に京都へ送られ、武田と[[伊藤勝吉]]が検分した結果、武田がコダマを、伊藤がシーザーを選んだという話も伝えられているが<ref name="meiba">『日本の名馬』p.293</ref>、[[調教助手]]を務めた吉沢彦二によれば武田と伊藤は牧場で両馬を見ており、「競馬場へ来たときには、すでに決まってきたはず」だという<ref name="meishobu2" />。吉沢は当時の印象について「後躯に幅があり、肉付きの立派さでは並の馬とは違っていたが、きたときには五[[尺]]二[[寸]]五分(1メートル60)前後、三寸とはなかった小さな馬で、後にあれほど出世するとは思わなかった」と述べている<ref name="meishobu2" />。


=== 戦績 ===
翌[[1960年]]の[[日本の競馬の競走体系|オープン]]戦、[[スプリングステークス]]も勝つと、皐月賞では2着に6馬身差をつけ圧勝。本来の主戦騎手・[[栗田勝]]落馬負傷の代打として騎乗した[[渡辺正人 (競馬)|渡辺正人]]は、史上初の'''同一クラシック3連覇'''を達成した(その後、[[嶋田功]]が[[優駿牝馬|オークス]]で2人目の達成)。この頃には周囲から「トキノミノルの再来」と謳われ、名前やその鮮烈な末足からその人気は絶頂期を迎える。東京優駿では調教途中に[[蹄鉄|落鉄]]するトラブルに見舞われたが、レコードタイム(当時、2分30秒7)で勝利。無敗で皐月賞、日本ダービーの二冠を制したのは他に[[トキノミノル]]、[[シンボリルドルフ]]、[[ミホノブルボン]]、[[トウカイテイオー]]、[[ディープインパクト (競走馬)|ディープインパクト]]の5頭のみである。これにより、前述の「トキノミノルの再来」の期待に応え、「トキノミノルの再現」まで果たしてしまう。また、この年9月の3歳戦より導入された[[競馬場#発馬機|スターティングゲート]]が、日本ダービーについても翌1961年から導入されたため、従来のバリヤー式スタートで行われた日本ダービーの最後の優勝馬となった。
=== デビュー - クラシック二冠 ===
1959年9月20日、京都開催の新馬戦でデビュー。[[栗田勝]]を鞍上に、先行策から直線で鞭を使われることなく2馬身半差で勝利した<ref name="meiba" />。この内容を見た武田は、伊藤由五郎の息子・英夫と協議し、翌年春の日本ダービーを見据えたローテーションを企画した<ref name="meiba" />。2戦目の宝塚3歳ステークスも追われることなく、同じブッフラー産駒の[[ヘリオス (競走馬)|ヘリオス]]以下に5馬身差で勝利<ref name="meiba2">『日本の名馬』p.294</ref>。シーズン最後の出走となった関西の3歳王者戦・阪神3歳ステークスでは圧倒的な1番人気に推されると、先行2番手から直線で他馬を突き放し、2馬身差で優勝した<ref name="meiba2" />。当年3戦3勝の成績を挙げたが、最優秀3歳牡馬には関東の[[朝日杯フューチュリティステークス|朝日盃3歳ステークス]]を含む4戦4勝の成績を挙げた[[マツカゼオー]]が選出された。


休養の後、春のクラシック戦線に備えて東上し、3月19日にオープン競走で復帰。栗田が正月の競馬で落馬骨折していたことから<ref name="meiba3">『日本の名馬』p.295</ref>、鞍上にはコダマを預けていた[[中村広]]の兄で、武田と親しかった[[中村一雄]]の弟子である[[渡辺正人 (競馬)|渡辺正人]]を迎えた<ref>『競馬人』p.36</ref>。この競走も2馬身差で逃げ切ると、続く[[スプリングステークス]]で連勝を6まで伸ばしていたマツカゼオーと対戦。初めて2番人気に落ちたが、最下位に沈んだマツカゼオーを尻目に4馬身差で逃げ切り、名実共にクラシックに向けての本命馬となった<ref name="meiba3" />。4月17日に迎えた三冠初戦・皐月賞では雨後の重馬場のなか向正面で先頭に立つと、そのままマツカゼオーに6馬身差をつけて優勝を果たした<ref name="meiba3" />。なお、騎乗した渡辺は前々年の[[タイセイホープ]]、前年の[[ウイルディール]]に続く、史上初の皐月賞(同一クラシック競走)三連覇を達成した。
しかし[[10月8日]]のオープン戦で2着となり、連勝が止まる。以後[[菊花賞]]5着、[[有馬記念]]6着とふるわず、武田師もコダマの限界を考え、コダマの適性を考えた出走を選ぶようになる。[[1961年]]は中距離で2勝を挙げるものの、[[4月29日]]の[[天皇賞|天皇賞(春)]]には出走取り消し。脚部不安により1年近く休養する。[[1962年]]も天皇賞(春)には出走せず、[[7月1日]]に当時2000メートルだった[[宝塚記念]]に優勝し、[[種牡馬]]になるため引退。


5月29日の日本ダービーに向けてコダマの人気は一層の高まりを見せ、1951年に10戦無敗のまま死んだ[[トキノミノル]]の再来とも謳われ<ref>『アサヒグラフ』1960年5月29日号、p.10</ref><ref name="meiba4">『日本の名馬』p.296</ref>、日ごろ競馬を見ない人々にまでその名が伝えられた<ref name="meiba4" />。しかし人気の高まりとは裏腹に、コダマは5月10日の調教中に[[蹄鉄]]が外れ、左前脚の不安のために予定していた前哨戦を使えず、3日間調教を休むなど順調さを欠いていた<ref>『日本の名馬・名勝負物語』p.208</ref>。ダービー直前の最終調教では左前脚の蹄鉄が再び外れ、伊藤由五郎はありとあらゆる神社に願をかけ、大阪から東京競馬場に応援に赴く英夫に対しては験を担いで「第一こだまの、一号車の一番前に乗るように」と命じたという<ref>藤野(1992)pp.60-61</ref>。
その後武田師が管理する名馬[[シンザン]]と比較して「シンザンはナタの切れ味、コダマはカミソリの切れ味」と同師に評価される。シンザン同様、日本競馬史に残る名馬・トキノミノルの再来と呼ばれることもある同馬ではあるが、「カミソリの切れ味」の方が若干有名である。


日本ダービー当日は約7万人の観客が集まり、4億円以上を売上げ<ref name="meiba4" />、いずれも新記録を大幅に更新した<ref name="meiba4" />。こうしたなか、コダマは怪我から復帰した栗田を背に、単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。レースでは道中3番手を進むと、最後の直線で先頭に立った[[ヤマニンモアー]]を楽に交わし、1馬身3/4差を付けて優勝<ref>『日本の名馬』pp.296-297</ref>。無敗でのクラシック二冠はトキノミノル以来9年ぶり2頭目、また当時、東西所属馬の勢力が東高西低とされていたなか、関西馬のダービー優勝は[[ボストニアン]]以来7年ぶりの出来事であった。しかし快挙を遂げたコダマに対し、武田は競走後の手記で次のような言葉を残した。
== 種牡馬として ==
種牡馬になってからも[[桜花賞]]馬[[ヒデコトブキ]]などを出したが、内国産冷遇時代のために種牡馬成績が次第に尻すぼみになる。やがて[[鹿児島]]に流れていき、そこで種牡馬生活を続けたが、1976年、腰麻痺のために死亡した。公式に死亡が判明したのはその翌年であった。


{{Quotation|「今後コダマにかけられるファンの期待は大きい。実質が名声に相応しければ問題はないが、ややもすればマスコミを通じて名声が実質を上まわる。そしてもし、実質が名声にこたえ得なければその罪は関係者に負わされる。私はそれを恐れる<ref name="meishoubu4">『日本の名馬・名勝負物語』p.209</ref>」}}
=== 代表産駒 ===

*ヒデコトブキ(桜花賞)
=== 秋の不振 - 引退まで ===
*ファインローズ([[鳴尾記念]]、[[松籟ステークス]]など[[重賞]]5勝を含む14勝。1969年 啓衆社賞最優秀5歳以上牝馬)
日本ダービーの後は休養に入り、秋は[[セントライト]]以来2頭目のクラシック三冠が懸かる菊花賞を目標としたが、脚部の不安のため調教が順調に進まず<ref>『日本の名馬』p.301</ref>、オープン競走に出走するも2着と敗れ、デビュー以来の連勝を7で止めた。続く[[阪神大賞典]]もヤマニンモアー、シーザーに後れての3着と敗れたが、三冠に向けてコダマを本命視するマスコミの報道は収まらず、武田は彼らに向けて「コダマはそれほど強い馬ではない。春は仕上がりが順調で好成績を収めてきたが、秋には相手の進境が著しい。春シーズンとは事情が異なっている」と語った<ref name="meishoubu4" />。11月13日の菊花賞は、[[厩務員]][[組合]]が[[ストライキ]]を決行、調教師会長の武田も事態の収拾に当たり、解決したのは競走の2時間前<ref name="yamano">『日本の名馬』p.303</ref>という異様な状況下で行われた。コダマは1番人気に支持されたが、キタノオーザの5着と敗れ、三冠は成らなかった。
*サトヒカル([[毎日杯]]、[[京都杯]]、[[中京記念]])

年末にはグランプリ競走・[[有馬記念]]にファン投票1位で出走したが、当日は5番人気と評価を落とし、結果も牝馬[[スターロッチ]]の6着に終わった。4戦全敗となった秋の成績を、武田は「特急コダマどころか各駅停車にも劣る」と評したが<ref>藤野(1992)p.61</ref>、クラシック二冠が評価され、コダマは当年の年度代表馬と最優秀4歳牡馬に選出された。

5歳となった1961年は、3月の復帰戦[[大阪杯]]、[[天皇賞|天皇賞(春)]]への前哨戦[[スワンステークス]]を連勝し、評価を再び高めた<ref name="meishoubu5">『日本の名馬・名勝負物語』p.210</ref>。しかし天皇賞を前に右前脚に[[屈腱炎]]を発症し、休養を余儀なくされる<ref name="meishoubu5" />。温泉療養の後、秋の天皇賞に備えて9月15日に東京競馬場に入ったが、調教中に屈腱炎が再発し、再度休養に入った<ref name="meishoubu5" />。翌1962年4月、オープン競走で復帰し[[メジロオー]]の2着。天皇賞(春)を回避してオープン競走を2連勝したのち、当時創設3年目の宝塚記念を制した。しかし競走後に肩などを痛め、これを最後に競走生活から退いた<ref name="meishoubu5" />。

=== 種牡馬時代 ===
コダマは種牡馬として浦河町の尾田牧場に繋養された<ref>『日本の名馬』pp.305-306</ref>。伊藤由五郎が自身の持つ優れた牝馬と交配させ、初年度産駒から[[重賞]]3勝のサトヒカル、2年目からは同5勝を含む17勝を挙げ、1969年度の[[JRA賞最優秀4歳以上牝馬|最優秀5歳以上牝馬]]に選出された[[ファインローズ]]、そして3年目の産駒からはクラシック競走の桜花賞を制した[[ヒデコトブキ]]が生まれた。その後は目立った活躍馬が生まれず、1974年に鹿児島県の吉永清人牧場に移ったのち、1976年6月に腰麻痺のため死亡した<ref name="death">『サラブレッド101頭の死に方』p.131</ref>。公式に死亡が判明したのはその翌年であった<ref name="death" />。

== 競走成績 ==
{| style="font-size: 95%; text-align: center; border-collapse: collapse;"
|-
|colspan="3"| 年月日
|
| レース名
| 頭数
| 人気
| 着順
| 距離([[馬場状態|状態]])
| タイム
| 着差
| [[騎手]]
| [[負担重量|斤量]]
| 勝ち馬/(2着馬)
|-
| 1959
| 9.
| 20
| [[京都競馬場|京都]]
| 新馬
| 8
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝1100m(良)
| 1:06.4
| 2 1/2身
| [[栗田勝]]
| 51
| (カツラオー)
|-
|
| 10.
| 25
| [[阪神競馬場|阪神]]
| 宝塚3歳ステークス
| 7
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝1400m(良)
| 1:23.8
|5身
| 栗田勝
| 52
|([[ヘリオス (競走馬)|ヘリオス]])
|-
|
| 12.
| 6
| 阪神
| [[阪神ジュベナイルフィリーズ|阪神3歳ステークス]]
| 8
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝1200m(良)
| 1:12.0
| 2身
| 栗田勝
| 52
| (エルムメイジ)
|-
| 1960
| 3.
| 19
| [[東京競馬場|東京]]
| オープン
| 6
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝1800m(良)
| 1:52.9
| 2身
| [[渡辺正人 (競馬)|渡辺正人]]
| 56
| (ゴウユウ)
|-
|
| 4.
| 3
| [[中山競馬場|中山]]
| [[スプリングステークス]]
| 5
| 2
| {{color|red|1着}}
| 芝1800m(良)
| 1:54.0
| 4身
| 渡辺正人
| 56
| (キゼンチカラ)
|-
|
| 4.
| 17
| 中山
| '''[[皐月賞]]'''
| 21
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝2000m(良)
| 2:05.9
| 6身
| 渡辺正人
| 57
| ([[マツカゼオー]])
|-
|
| 5.
| 29
| 東京
| '''[[東京優駿]]'''
| 26
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝2400m(良)
| {{color|red|R2:30.7}}
| 1 3/4身
| 栗田勝
| 57
| ([[ヤマニンモアー]])
|-
|
| 10.
| 8
| 阪神
| オープン
| 8
| 1
| {{color|blue|2着}}
| 芝1600m(稍)
| 1:39.6
| 0.3秒
| [[鶴留明雄]]
| 61
| フランケル
|-
|
| 10.
| 30
| 阪神
| [[阪神大賞典]]
| 7
| 3
| 3着
| 芝2200m(良)
| 2:16.6
| 0.5秒
| 栗田勝
| 62
| ヤマニンモアー
|-
|
| 11.
| 13
| 京都
| '''[[菊花賞]]'''
| 7
| 1
| 5着
| 芝3000m(稍)
| 3:15.8
| 0.7秒
| 栗田勝
| 57
| [[キタノオーザ]]
|-
|
| 12.
| 18
| 中山
| '''[[有馬記念]]'''
| 12
| 5
| 6着
| 芝2600m(良)
| 2:45.1
| 0.6秒
| 栗田勝
| 54
| [[スターロッチ]]
|-
| 1961
| 3.
| 12
| 阪神
| [[大阪杯]]
| 8
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝1800m(良)
| 1:50.8
| 2 1/2身
| 栗田勝
| 61
| (ズイホウ)
|-
|
| 4.
| 9
| 京都
| [[スワンステークス]]
| 5
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝1800m(稍)
| 1:52.5
| 3/4馬身
| 栗田勝
| 60
| (ヘリオス)
|-
| 1962
| 4.
| 14
| 京都
| オープン
| 7
| 1
| {{color|blue|2着}}
| 芝2000m(良)
| 2:08.8
| 0.1秒
| 鶴留明雄
| 59
| [[メジロオー]]
|-
|
| 5.
| 20
| 京都
| オープン
| 5
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝1800m(稍)
| 1:52.2
| 2 1/2身
| 鶴留明雄
| 59
| (ミスヒヤキオーカン)
|-
|
| 6.
| 3
| 阪神
| オープン
| 5
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝1800m(不)
| 1:53.8
| 3身
| 鶴留明雄
| 59
|(ハリー)
|-
|
| 7.
| 1
| 阪神
| [[宝塚記念]]
| 7
| 1
| {{color|red|1着}}
| 芝2000m(良)
| 2:03.4
| 3/4身
| 栗田勝
| 55
|(リュウライト)
|}
*競走名'''太字'''は[[八大競走]]。
*タイム欄{{color|red|R}}はレコードタイム。

== 主な産駒 ==
*サトヒカル(1964年産 [[毎日杯]]、[[京都新聞杯|京都杯]]、[[中京記念]])
*ファインローズ(1965年産 [[フィリーズレビュー|阪神四歳牝馬特別]]、[[阪神牝馬ステークス|阪神牝馬特別]]、[[京都金杯|スポーツニッポン賞金杯]]、[[鳴尾記念]]、[[中京大賞典|松籟ステークス]])
*ヒデコトブキ(1966年産 '''[[桜花賞]]'''、阪神四歳牝馬特別)
*ニホンピロファイト(1970年産 [[京都大障害|京都大障害・秋]])

== 特徴・評価 ==
日本ダービーを前に計測された身体データは、体高155cm、体重は448kgで、これは当時としても小柄な体格であった<ref>『アサヒグラフ』1960年5月28日号、p.11</ref>(馬体重は5歳以降は460kg前後まで増えたともいう<ref name="meishobu2" />)。武田はその体型について「後躯が素晴らしかった。胴がつまっていてバランスがよく、まるで手で造ったような理想的な身体でした」と述べている<ref>『日本の名馬』pp.297-298</ref>。伊藤由五郎は後躯の発達ぶりを「女のような大きなおいど(尻)」と喩えている<ref name="meishoubu5" />。性格面については、調教助手の吉沢彦二が「とにかくどっしりして貫禄がありましたね。少々のことではおじけない。他の馬が暴れたり突っかかったりしても、悠然と周囲をへいげいする余裕があった。そんな風だから人間にもよかっただけでなく、厩舎で飼っている小犬なんかも相手にして、退屈をしのいでいたようです。そのくせ、勝負になると、なにものにも負けまいとする根性と気迫は見上げたものでした」と評している<ref name="meishobu2" />。

コダマの能力を端的に表したものとしてよく知られたものに「[[カミソリ]]」というものがある。1964年から1965年にかけて五冠を制した[[シンザン]]について、武田文吾が「コダマはカミソリ、シンザンは[[ナタ]]の切れ味。ただしシンザンのナタは髭も剃れるナタである」と語った言葉が有名だが、競馬評論家の[[大川慶次郎]]によれば、コダマが初東上した際に渡辺正人が前年の皐月賞馬[[ウイルディール]]と比較して「コダマは『カミソリの切れ味』で、前の年のウイルディールは『ナタの切れ味』だ」と表現していたともいう<ref>大川(1997)p.62</ref>。

実質的な能力に対しては、菊花賞を前に「それほど強い馬ではない」と述べた武田の評をはじめ、コダマに魅せられて競馬を始めたという[[山野浩一]]は「コダマは天下無敵の大ヒーローではない。早熟で才覚の豊かな馬だったと言うべきだろう<ref name="yamano" />」、大阪読売新聞記者の最上利澄は「皐月賞、ダービーに優勝した馬を弱いとは言えないけれど、シンザンやトキノミノルを別格にしても、[[ハクチカラ]]や[[ハクリヨウ]]、武田厩舎でいえば[[ゼネラル]]、同じ馬主の[[カツフジ]]などよりも強いと断定しきれようか。範囲を戦後の馬だけにとどめても、"強い"ベストテンにランク出来るかどうか、私には疑問に思えるのだ<ref>『日本の名馬・名勝負物語』p.206</ref>」と評するなど、歴代で上位であったかについては疑問視する見方がある。一方でその人気ぶりや影響力については「競馬ブームはコダマの人気から始まったといってよいだろう」(山野浩一<ref name="meiba4" />)、「漸く大衆化の波に乗ろうとした競馬のブームに火を付けたともいえるスター」([[志摩直人]]<ref>『風はその背にたてがみに』p.95</ref>)、「春は祭典のスター。東西のファンを熱狂させた。テレビ、ラジオ、新聞、あらゆるマスメディアを通じて、その名は童児にもなじまれた」(最上利澄<ref name="meishoubu7">『日本の名馬・名勝負物語』p.212</ref>)、「現在の競馬ブームはコダマではじまったといってよいほど、その名声は一世を風靡した」(村上堅三<ref>『日本の名馬・名勝負物語』p.339</ref>)と、高く評価されている。日本中央競馬会が2000年に行った名馬選定企画「[[Dream Horses 2000|20世紀の名馬大投票]]」では、ファン投票によって第82位に選出された。


== 血統表 ==
== 血統表 ==
45行目: 343行目:
|name = コダマ
|name = コダマ
|inf = (プリンスシュヴァリエ系 ([[プリンスローズ系]]) / [[ブランドフォード (競走馬)|Blandford]]4×3=18.75%)
|inf = (プリンスシュヴァリエ系 ([[プリンスローズ系]]) / [[ブランドフォード (競走馬)|Blandford]]4×3=18.75%)
|f = *ブッフラー<br />Bouffleur<br />1952 栗毛
|f = *[[ブッフラー]]<br />Bouffleur<br />1952 栗毛
|m = [[シラオキ]]<br />1946 栗毛
|m = [[シラオキ]]<br />1946 栗毛
|ff = Prince Chevalier<br />1943 鹿毛
|ff = Prince Chevalier<br />1943 鹿毛
76行目: 374行目:
|mmmm = フロリスト [[ファミリーナンバー|F-No.3-l]]
|mmmm = フロリスト [[ファミリーナンバー|F-No.3-l]]
|}}
|}}
ブッフラーは供用わずか3年で病気により死亡したが、コダマの他にもヘリオスなど5頭の重賞勝利馬を輩出した。母シラオキからは「[[シラオキ#系図|シラオキ系]]」と呼ばれる有数の大[[ファミリーライン|牝系]]が築かれている。弟のシンツバメ以外でコダマに比較的近い馬では、甥に阪神3歳ステークスなど重賞3勝の[[ヒデハヤテ]]、その兄で[[札幌記念]]の勝利馬ヒデカブト、姪に[[サファイヤステークス]]の勝利馬マルブツロンリーがいる。

== 脚注 ==
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
*[[白井透]]編『日本の名馬』(サラブレッド血統センター、1971年)
**山野浩一「コダマ」
*[[中央競馬ピーアール・センター]]編『日本の名馬・名勝負物語』(中央競馬ピーアール・センター、1980年)
**最上利澄「カミソリの切れ味 - コダマ」
*志摩直人『風はその背にたてがみに(文庫版)』(廣済堂文庫、1991年)ISBN 978-4331650943
*藤野広一郎『懐かしの名馬たち - ちょっと昔の名馬物語』(1992年、コスモヒルズ)ISBN 978-4-87703-809-0
*『競馬人 - 傑作ノンフィクション集』(有朋社、1997年)ISBN 978-4946376344
**阿部珠樹「ナベ正と呼ばれた男」
*大川慶次郎『大川慶次郎殿堂馬を語る』(ゼスト、1997年)ISBN 978-4916090522
*大川慶次郎ほか『サラブレッド101頭の死に方(文庫版)』(1999年、徳間文庫)ISBN 978-4198911850
*『アサヒグラフ』1960年5月29日号([[朝日新聞社]]、1960年)
*『[[優駿]]』2000年10月号(日本中央競馬会、2000年)


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==

2013年6月24日 (月) 09:59時点における版

コダマ
品種 サラブレッド
性別
毛色 栗毛
生誕 1957年4月15日
死没 1976年6月28日
  (19歳没・旧20歳)
ブッフラー
シラオキ
母の父 プリメロ
生国 日本の旗 日本北海道浦河町
生産者 鎌田牧場
馬主 伊藤由五郎
調教師 武田文吾京都
調教助手 吉沢彦二
厩務員 吉沢彦二
競走成績
生涯成績 17戦12勝
獲得賞金 1816万2300円
テンプレートを表示

コダマ1957年4月15日 - 1976年6月28日)は、日本競走馬種牡馬である。

1959年に中央競馬でデビューし、翌1960年春までに阪神3歳ステークス皐月賞東京優駿(日本ダービー)を含む7連勝を遂げ、一時は競馬ファン以外の人々にもその名を知られ、その人気ぶりは競馬ブームの端緒となったともいわれる。同年秋の菊花賞で敗れて史上2頭目のクラシック三冠を逃し、以後八大競走の優勝はないが、1962年に宝塚記念を制している。1960年度啓衆社賞年度代表馬および最優秀4歳牡馬。競走馬引退後の1963年より種牡馬となり、桜花賞優勝馬ヒデコトブキなどを出した。1990年9月12日JRA顕彰馬に選定。

半弟(異父弟)に1961年の皐月賞優勝馬シンツバメがいる。

経歴

出自

1957年4月15日北海道浦河町鎌田牧場で生まれる。父ブッフラーは競走馬時代イギリスで走り1戦0勝、1955年にヒンドスタンと共に日本へ輸入されたが、「ヒンドスタンの付け馬(おまけ)」という評判で、さほど注目はされていなかった[1][2]。本馬はその初年度産駒である。母シラオキは1949年の日本ダービーで牡馬相手に2着に入った実績を持つ。1958年秋、京都競馬場へ送られ武田文吾厩舎に入厩。その後、馬主の伊藤由五郎によりコダマと命名された[3]。名前は1958年に東京~大阪間に開通した在来線特急の「こだま」に由来する[3]。なお、同馬主のシーザーと一緒に京都へ送られ、武田と伊藤勝吉が検分した結果、武田がコダマを、伊藤がシーザーを選んだという話も伝えられているが[4]調教助手を務めた吉沢彦二によれば武田と伊藤は牧場で両馬を見ており、「競馬場へ来たときには、すでに決まってきたはず」だという[1]。吉沢は当時の印象について「後躯に幅があり、肉付きの立派さでは並の馬とは違っていたが、きたときには五五分(1メートル60)前後、三寸とはなかった小さな馬で、後にあれほど出世するとは思わなかった」と述べている[1]

戦績

デビュー - クラシック二冠

1959年9月20日、京都開催の新馬戦でデビュー。栗田勝を鞍上に、先行策から直線で鞭を使われることなく2馬身半差で勝利した[4]。この内容を見た武田は、伊藤由五郎の息子・英夫と協議し、翌年春の日本ダービーを見据えたローテーションを企画した[4]。2戦目の宝塚3歳ステークスも追われることなく、同じブッフラー産駒のヘリオス以下に5馬身差で勝利[5]。シーズン最後の出走となった関西の3歳王者戦・阪神3歳ステークスでは圧倒的な1番人気に推されると、先行2番手から直線で他馬を突き放し、2馬身差で優勝した[5]。当年3戦3勝の成績を挙げたが、最優秀3歳牡馬には関東の朝日盃3歳ステークスを含む4戦4勝の成績を挙げたマツカゼオーが選出された。

休養の後、春のクラシック戦線に備えて東上し、3月19日にオープン競走で復帰。栗田が正月の競馬で落馬骨折していたことから[6]、鞍上にはコダマを預けていた中村広の兄で、武田と親しかった中村一雄の弟子である渡辺正人を迎えた[7]。この競走も2馬身差で逃げ切ると、続くスプリングステークスで連勝を6まで伸ばしていたマツカゼオーと対戦。初めて2番人気に落ちたが、最下位に沈んだマツカゼオーを尻目に4馬身差で逃げ切り、名実共にクラシックに向けての本命馬となった[6]。4月17日に迎えた三冠初戦・皐月賞では雨後の重馬場のなか向正面で先頭に立つと、そのままマツカゼオーに6馬身差をつけて優勝を果たした[6]。なお、騎乗した渡辺は前々年のタイセイホープ、前年のウイルディールに続く、史上初の皐月賞(同一クラシック競走)三連覇を達成した。

5月29日の日本ダービーに向けてコダマの人気は一層の高まりを見せ、1951年に10戦無敗のまま死んだトキノミノルの再来とも謳われ[8][9]、日ごろ競馬を見ない人々にまでその名が伝えられた[9]。しかし人気の高まりとは裏腹に、コダマは5月10日の調教中に蹄鉄が外れ、左前脚の不安のために予定していた前哨戦を使えず、3日間調教を休むなど順調さを欠いていた[10]。ダービー直前の最終調教では左前脚の蹄鉄が再び外れ、伊藤由五郎はありとあらゆる神社に願をかけ、大阪から東京競馬場に応援に赴く英夫に対しては験を担いで「第一こだまの、一号車の一番前に乗るように」と命じたという[11]

日本ダービー当日は約7万人の観客が集まり、4億円以上を売上げ[9]、いずれも新記録を大幅に更新した[9]。こうしたなか、コダマは怪我から復帰した栗田を背に、単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。レースでは道中3番手を進むと、最後の直線で先頭に立ったヤマニンモアーを楽に交わし、1馬身3/4差を付けて優勝[12]。無敗でのクラシック二冠はトキノミノル以来9年ぶり2頭目、また当時、東西所属馬の勢力が東高西低とされていたなか、関西馬のダービー優勝はボストニアン以来7年ぶりの出来事であった。しかし快挙を遂げたコダマに対し、武田は競走後の手記で次のような言葉を残した。

「今後コダマにかけられるファンの期待は大きい。実質が名声に相応しければ問題はないが、ややもすればマスコミを通じて名声が実質を上まわる。そしてもし、実質が名声にこたえ得なければその罪は関係者に負わされる。私はそれを恐れる[13]

秋の不振 - 引退まで

日本ダービーの後は休養に入り、秋はセントライト以来2頭目のクラシック三冠が懸かる菊花賞を目標としたが、脚部の不安のため調教が順調に進まず[14]、オープン競走に出走するも2着と敗れ、デビュー以来の連勝を7で止めた。続く阪神大賞典もヤマニンモアー、シーザーに後れての3着と敗れたが、三冠に向けてコダマを本命視するマスコミの報道は収まらず、武田は彼らに向けて「コダマはそれほど強い馬ではない。春は仕上がりが順調で好成績を収めてきたが、秋には相手の進境が著しい。春シーズンとは事情が異なっている」と語った[13]。11月13日の菊花賞は、厩務員組合ストライキを決行、調教師会長の武田も事態の収拾に当たり、解決したのは競走の2時間前[15]という異様な状況下で行われた。コダマは1番人気に支持されたが、キタノオーザの5着と敗れ、三冠は成らなかった。

年末にはグランプリ競走・有馬記念にファン投票1位で出走したが、当日は5番人気と評価を落とし、結果も牝馬スターロッチの6着に終わった。4戦全敗となった秋の成績を、武田は「特急コダマどころか各駅停車にも劣る」と評したが[16]、クラシック二冠が評価され、コダマは当年の年度代表馬と最優秀4歳牡馬に選出された。

5歳となった1961年は、3月の復帰戦大阪杯天皇賞(春)への前哨戦スワンステークスを連勝し、評価を再び高めた[17]。しかし天皇賞を前に右前脚に屈腱炎を発症し、休養を余儀なくされる[17]。温泉療養の後、秋の天皇賞に備えて9月15日に東京競馬場に入ったが、調教中に屈腱炎が再発し、再度休養に入った[17]。翌1962年4月、オープン競走で復帰しメジロオーの2着。天皇賞(春)を回避してオープン競走を2連勝したのち、当時創設3年目の宝塚記念を制した。しかし競走後に肩などを痛め、これを最後に競走生活から退いた[17]

種牡馬時代

コダマは種牡馬として浦河町の尾田牧場に繋養された[18]。伊藤由五郎が自身の持つ優れた牝馬と交配させ、初年度産駒から重賞3勝のサトヒカル、2年目からは同5勝を含む17勝を挙げ、1969年度の最優秀5歳以上牝馬に選出されたファインローズ、そして3年目の産駒からはクラシック競走の桜花賞を制したヒデコトブキが生まれた。その後は目立った活躍馬が生まれず、1974年に鹿児島県の吉永清人牧場に移ったのち、1976年6月に腰麻痺のため死亡した[19]。公式に死亡が判明したのはその翌年であった[19]

競走成績

年月日 レース名 頭数 人気 着順 距離(状態 タイム 着差 騎手 斤量 勝ち馬/(2着馬)
1959 9. 20 京都 新馬 8 1 1着 芝1100m(良) 1:06.4 2 1/2身 栗田勝 51 (カツラオー)
10. 25 阪神 宝塚3歳ステークス 7 1 1着 芝1400m(良) 1:23.8 5身 栗田勝 52 ヘリオス
12. 6 阪神 阪神3歳ステークス 8 1 1着 芝1200m(良) 1:12.0 2身 栗田勝 52 (エルムメイジ)
1960 3. 19 東京 オープン 6 1 1着 芝1800m(良) 1:52.9 2身 渡辺正人 56 (ゴウユウ)
4. 3 中山 スプリングステークス 5 2 1着 芝1800m(良) 1:54.0 4身 渡辺正人 56 (キゼンチカラ)
4. 17 中山 皐月賞 21 1 1着 芝2000m(良) 2:05.9 6身 渡辺正人 57 マツカゼオー
5. 29 東京 東京優駿 26 1 1着 芝2400m(良) R2:30.7 1 3/4身 栗田勝 57 ヤマニンモアー
10. 8 阪神 オープン 8 1 2着 芝1600m(稍) 1:39.6 0.3秒 鶴留明雄 61 フランケル
10. 30 阪神 阪神大賞典 7 3 3着 芝2200m(良) 2:16.6 0.5秒 栗田勝 62 ヤマニンモアー
11. 13 京都 菊花賞 7 1 5着 芝3000m(稍) 3:15.8 0.7秒 栗田勝 57 キタノオーザ
12. 18 中山 有馬記念 12 5 6着 芝2600m(良) 2:45.1 0.6秒 栗田勝 54 スターロッチ
1961 3. 12 阪神 大阪杯 8 1 1着 芝1800m(良) 1:50.8 2 1/2身 栗田勝 61 (ズイホウ)
4. 9 京都 スワンステークス 5 1 1着 芝1800m(稍) 1:52.5 3/4馬身 栗田勝 60 (ヘリオス)
1962 4. 14 京都 オープン 7 1 2着 芝2000m(良) 2:08.8 0.1秒 鶴留明雄 59 メジロオー
5. 20 京都 オープン 5 1 1着 芝1800m(稍) 1:52.2 2 1/2身 鶴留明雄 59 (ミスヒヤキオーカン)
6. 3 阪神 オープン 5 1 1着 芝1800m(不) 1:53.8 3身 鶴留明雄 59 (ハリー)
7. 1 阪神 宝塚記念 7 1 1着 芝2000m(良) 2:03.4 3/4身 栗田勝 55 (リュウライト)
  • 競走名太字八大競走
  • タイム欄Rはレコードタイム。

主な産駒

特徴・評価

日本ダービーを前に計測された身体データは、体高155cm、体重は448kgで、これは当時としても小柄な体格であった[20](馬体重は5歳以降は460kg前後まで増えたともいう[1])。武田はその体型について「後躯が素晴らしかった。胴がつまっていてバランスがよく、まるで手で造ったような理想的な身体でした」と述べている[21]。伊藤由五郎は後躯の発達ぶりを「女のような大きなおいど(尻)」と喩えている[17]。性格面については、調教助手の吉沢彦二が「とにかくどっしりして貫禄がありましたね。少々のことではおじけない。他の馬が暴れたり突っかかったりしても、悠然と周囲をへいげいする余裕があった。そんな風だから人間にもよかっただけでなく、厩舎で飼っている小犬なんかも相手にして、退屈をしのいでいたようです。そのくせ、勝負になると、なにものにも負けまいとする根性と気迫は見上げたものでした」と評している[1]

コダマの能力を端的に表したものとしてよく知られたものに「カミソリ」というものがある。1964年から1965年にかけて五冠を制したシンザンについて、武田文吾が「コダマはカミソリ、シンザンはナタの切れ味。ただしシンザンのナタは髭も剃れるナタである」と語った言葉が有名だが、競馬評論家の大川慶次郎によれば、コダマが初東上した際に渡辺正人が前年の皐月賞馬ウイルディールと比較して「コダマは『カミソリの切れ味』で、前の年のウイルディールは『ナタの切れ味』だ」と表現していたともいう[22]

実質的な能力に対しては、菊花賞を前に「それほど強い馬ではない」と述べた武田の評をはじめ、コダマに魅せられて競馬を始めたという山野浩一は「コダマは天下無敵の大ヒーローではない。早熟で才覚の豊かな馬だったと言うべきだろう[15]」、大阪読売新聞記者の最上利澄は「皐月賞、ダービーに優勝した馬を弱いとは言えないけれど、シンザンやトキノミノルを別格にしても、ハクチカラハクリヨウ、武田厩舎でいえばゼネラル、同じ馬主のカツフジなどよりも強いと断定しきれようか。範囲を戦後の馬だけにとどめても、"強い"ベストテンにランク出来るかどうか、私には疑問に思えるのだ[23]」と評するなど、歴代で上位であったかについては疑問視する見方がある。一方でその人気ぶりや影響力については「競馬ブームはコダマの人気から始まったといってよいだろう」(山野浩一[9])、「漸く大衆化の波に乗ろうとした競馬のブームに火を付けたともいえるスター」(志摩直人[24])、「春は祭典のスター。東西のファンを熱狂させた。テレビ、ラジオ、新聞、あらゆるマスメディアを通じて、その名は童児にもなじまれた」(最上利澄[25])、「現在の競馬ブームはコダマではじまったといってよいほど、その名声は一世を風靡した」(村上堅三[26])と、高く評価されている。日本中央競馬会が2000年に行った名馬選定企画「20世紀の名馬大投票」では、ファン投票によって第82位に選出された。

血統表

コダマ血統(プリンスシュヴァリエ系 (プリンスローズ系) / Blandford4×3=18.75%) (血統表の出典)

*ブッフラー
Bouffleur
1952 栗毛
父の父
Prince Chevalier
1943 鹿毛
Prince Rose Rose Prince
Indolence
Chevalerie Abbot's Speed
Kassala
父の母
Monsoon
1941 鹿毛
Umidwar Blandford
Uganda
Heavenly Wind Tai Yang
Goodetia

シラオキ
1946 栗毛
*プリメロ
Primero
1931 鹿毛
Blandford Swynford
Blanche
Athasi Farasi
Athgreany
母の母
第弐スターカツプ
1937 栗毛
*ダイオライト
Diolite
Diophon
Needle Rock
スターカツプ *シアンモア
フロリスト F-No.3-l

ブッフラーは供用わずか3年で病気により死亡したが、コダマの他にもヘリオスなど5頭の重賞勝利馬を輩出した。母シラオキからは「シラオキ系」と呼ばれる有数の大牝系が築かれている。弟のシンツバメ以外でコダマに比較的近い馬では、甥に阪神3歳ステークスなど重賞3勝のヒデハヤテ、その兄で札幌記念の勝利馬ヒデカブト、姪にサファイヤステークスの勝利馬マルブツロンリーがいる。

脚注

  1. ^ a b c d e 『日本の名馬・名勝負物語』p.211
  2. ^ 大川(1997)p.62
  3. ^ a b 『日本の名馬・名勝負物語』p.207
  4. ^ a b c 『日本の名馬』p.293
  5. ^ a b 『日本の名馬』p.294
  6. ^ a b c 『日本の名馬』p.295
  7. ^ 『競馬人』p.36
  8. ^ 『アサヒグラフ』1960年5月29日号、p.10
  9. ^ a b c d e 『日本の名馬』p.296
  10. ^ 『日本の名馬・名勝負物語』p.208
  11. ^ 藤野(1992)pp.60-61
  12. ^ 『日本の名馬』pp.296-297
  13. ^ a b 『日本の名馬・名勝負物語』p.209
  14. ^ 『日本の名馬』p.301
  15. ^ a b 『日本の名馬』p.303
  16. ^ 藤野(1992)p.61
  17. ^ a b c d e 『日本の名馬・名勝負物語』p.210
  18. ^ 『日本の名馬』pp.305-306
  19. ^ a b 『サラブレッド101頭の死に方』p.131
  20. ^ 『アサヒグラフ』1960年5月28日号、p.11
  21. ^ 『日本の名馬』pp.297-298
  22. ^ 大川(1997)p.62
  23. ^ 『日本の名馬・名勝負物語』p.206
  24. ^ 『風はその背にたてがみに』p.95
  25. ^ 『日本の名馬・名勝負物語』p.212
  26. ^ 『日本の名馬・名勝負物語』p.339

参考文献

  • 白井透編『日本の名馬』(サラブレッド血統センター、1971年)
    • 山野浩一「コダマ」
  • 中央競馬ピーアール・センター編『日本の名馬・名勝負物語』(中央競馬ピーアール・センター、1980年)
    • 最上利澄「カミソリの切れ味 - コダマ」
  • 志摩直人『風はその背にたてがみに(文庫版)』(廣済堂文庫、1991年)ISBN 978-4331650943
  • 藤野広一郎『懐かしの名馬たち - ちょっと昔の名馬物語』(1992年、コスモヒルズ)ISBN 978-4-87703-809-0
  • 『競馬人 - 傑作ノンフィクション集』(有朋社、1997年)ISBN 978-4946376344
    • 阿部珠樹「ナベ正と呼ばれた男」
  • 大川慶次郎『大川慶次郎殿堂馬を語る』(ゼスト、1997年)ISBN 978-4916090522
  • 大川慶次郎ほか『サラブレッド101頭の死に方(文庫版)』(1999年、徳間文庫)ISBN 978-4198911850
  • 『アサヒグラフ』1960年5月29日号(朝日新聞社、1960年)
  • 優駿』2000年10月号(日本中央競馬会、2000年)

外部リンク