このマンガがすごい!
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『このマンガがすごい!』は、宝島社が発行するマンガ紹介ムック。
概要
[編集]もともとは「別冊宝島 いきなり最終回」などの流れをくむ別冊宝島シリーズとして、1996年と2004年に刊行された(1997年には、1996年度版と同一スタッフによる、ほぼ同じ構成の『別冊宝島 このマンガがえらい!』も発売されている)。
2005年より「この映画がすごい!」の初代編集長・天野由衣子が同誌執筆者で別冊宝島でマンガ系のムックを手掛けてきた伊熊恒介(奈良崎コロスケ)とタッグを組んで陣頭指揮をとり、「このミステリーがすごい!」「このライトノベルがすごい!」などと同様のスタイルで年度版化(毎年12月に刊行)。なお初年度に編集でクレジットされていたスタジオHARD DXは2006年以降は外れている。
大学の漫画研究会、書店員、ライター、イラストレーター、編集者、評論家、俳優、声優、放送作家、お笑い芸人、ミュージシャン、スポーツ選手、アイドル、小中学生、マンガ系の専門学校生など、有名無名問わず、70〜200名前後のアンケート参加者が、前年10月1日から発行年9月30日までに単行本が発売されたタイトルの中から、最もお薦めしたい5作品をランク付けし、1位10点、2位9点、3位8点、4位7点、5位6点として計算し、総合順位を決定する(2009年版までは6作品を選び、6位作品を5点としていたが、2010年版より5位作品までに変更)。
ただし、小中学生やマンガ系の専門学校生に関しては、1票1点もしくは0.5点で集計。なお、アンケート参加者が選んだ作品タイトルは、それらの作品に対するコメントとともに、誌面に掲載されている。
アンケート部分以外の誌面は、トップ50までの作品レビュー(トップ20までは作中のカットなどもレビューと一緒に掲載される)と、ランキングの総評、漫画家インタビュー、その他の注目マンガ作品の紹介記事などで構成されている。
2006年度版、2007年度版はオトコ版、オンナ版に分割して刊行されていたが、2008年度版(2007年12月5日発売)より1冊にまとまった。また、2008年8月には、漫画家インタビューをメインに据えた別冊『このマンガがすごい! SIDE-B』も刊行した。
2009年9月、「このミステリーがすごい!」大賞 、日本ラブストーリー大賞に続く「このマンガがすごい!」大賞を設立。同時に「このライトノベルがすごい!」大賞も設立され、宝島社4大大賞となった。
2014年6月、編集部の運営によるマンガ情報サイト「このマンガがすごい!WEB」がオープン[1]。1日に3〜5本、マンガ作品のレビューをアップしているほか、漫画家インタビューや、識者や書店員のお薦めマンガの紹介などを掲載。また、月に一度、ムックと同様にアンケートを元にしたランキングを発表。編集長の薗部真一は「スピードの早いマンガ業界で、リアルタイムに情報発信することで、マンガ業界をはじめ、出版業界をより盛り上げることができればと考えています」とコメントを出している[2]。
2019年12月11日、2020年度版が発売されたが、インタビューページに不備があったとして、宝島社は翌12日に当ムックを回収することを発表[3][4]。その後、 2020年1月24日に訂正版を2020年2月上旬に発売する事が告知された[5][6]。
選定における問題点
[編集]オトコ編、オンナ編と分けてはいるが、ホラー系などボーダーレスな掲載誌も多く、両方に票が分散してしまうタイトルが出てくる弊害がある。そもそも分け隔てすることに疑問を持つ声もあるが、一方で少年漫画や青年漫画に比べてビッグタイトルの少ない少女漫画やヤング・レディース系の作品を紹介しやすいというメリットもある。
また、アンケートでのランキング作成というスタイル上、編集者・漫画原作者の竹熊健太郎(第1回「このマンガがすごい!」大賞の選考委員)が自身のブログなどで述べているように[7]、現在大量に消費されているマンガ作品の全てから未知の名作を拾い上げることは難しい。売上の上位作品・すでに人気を博している作品がランキング上位を占めることもあり、漫画研究家の小田真琴は、『このマンガがすごい!』で「誰にでもわかりやすいフックのある作品」が推される理由として、アンケートに参加している書店員の影響を上げている[8]。
影響
[編集]『宇宙兄弟』(2009年度版オトコ編2位)を担当する講談社の編集者は、ダイヤモンド社と角川書店の社員との鼎談で、『このマンガがすごい!』へのランク入りは「マンガの部数に影響する」と語っている[9]。『デトロイト・メタル・シティ』など受賞を機に増刷、帯にその旨がアナウンスされる例もあり、『ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜』のようにランク入りがブレイクのきっかけとなることもある。
また、マンガやアニメなど、サブカルチャー関係の特集を組むことが多い『サイゾー』は、「同社の『このミステリーがすごい!』の実績があるから信用度が高く、まだまだ十分売れるきっかけになる」というマンガ編集者の発言や、「特設棚を作ると、上位から下位まで全部売れる」「(2011年度版オトコ編1位の『進撃の巨人』は)受賞前からプッシュしていたが、1位になってからは桁違いの売れ行き」という書店員のコメントなどを取り上げている[10]。
スタッフ
[編集]2005年・創刊時の編集長は天野由衣子。翌2006年(2007年版)より担当が小泉絵美里に引き継がれ、2009年より2018年まで薗部真一[11]が編集長を務めた。2019年からは宇城卓秀が編集長を務める。スタジオHARD DXが編集に入ったのは初年度のみで、2006年以降は宝島社の担当編集+外部スタッフという形で作られている。
アンケート部以外の記事執筆は多数。かつては、奈良崎コロスケ(2006・2007・2008の年度版やSIDE-Bに本名の伊熊恒介名義で編集に参加)、粟生こずえ(SIDE-Bに編集で参加)、渡辺水央(SIDE-Bには編集で参加)の3人が主に執筆していた。
他に漫画評論家の大西祥平(不定期刊行時代から参加)、元『みこすり半劇場』(ぶんか社)編集長の山脇麻生、ライターの井口啓子、大黒秀一、小田真琴、加山竜司、横井周子、和智永妙(2010年度版には編集に参加)、ミニコミ誌『野宿野郎』編集長のかとうちあき、『オトナアニメ』(洋泉社)のスーパーバイザーを担当する多根清史など。
2006年度版から連続で回答しているアンケート参加者は、漫画評論家の伊藤剛、小野耕世、藤本由香里、南信長、ブロガーの紙屋高雪、『ぴあ』編集者の小林美姫など(記事執筆者を除く)。ライターの芝田隆広は2007年度版から、ミステリマンガ評論家の廣澤吉泰は2008年度版から連続で参加。
不定期刊行時代は、南信長が新保信長名義で編集や構成を務めていたほか、コラムや記事を木原浩勝や呉智英、吉田豪、編集者の斎藤宣彦、とり・みき作品にキャラクターとして登場する書店員の田北鑑生らが担当していた。
受賞作一覧(第10位まで)
[編集]オトコ版
[編集]オンナ版
[編集]既刊一覧
[編集]書名 | 発売日 | ISBN |
---|---|---|
別冊宝島 このマンガがすごい! | 1996年4月16日[12] | 4-7966-9257-6 |
このマンガがえらい! | 1996年12月18日[13] | 4-7966-1169-X |
別冊宝島 決定版!! このマンガがすごい! マンガナビ厳選1328作品 |
2004年1月26日[14] | 4-7966-5017-2 |
このマンガがすごい! 2006・オトコ版 | 2005年12月1日[15] | 4-7966-5017-2 |
このマンガがすごい! 2006・オンナ版 | 2005年12月1日[16] | 4-7966-5019-9 |
このマンガがすごい! 2007・オトコ版 | 2006年12月8日[17] | 4-7966-5567-0 |
このマンガがすごい! 2007・オンナ版 | 2006年12月8日[18] | 4-7966-5569-7 |
このマンガがすごい! 2008 | 2007年12月4日[19] | 978-4-7966-6141-6 |
このマンガがすごい! SIDE-B | 2008年8月8日[20] | 978-4-7966-6465-3 |
このマンガがすごい! 2009 | 2008年12月5日[21] | 978-4-7966-6717-3 |
このマンガがすごい! 2010 | 2009年12月10日[22] | 978-4-7966-7515-4 |
このマンガがすごい! 2011 | 2010年12月10日[23] | 978-4-7966-7960-2 |
このマンガがすごい! 2012 | 2011年12月10日[24] | 978-4-7966-8832-1 |
このマンガがすごい! 2013 | 2012年12月10日[25] | 978-4-8002-0451-6 |
このマンガがすごい! 2014 | 2013年12月9日[26] | 978-4-8002-1981-7 |
このマンガがすごい! 2015 | 2014年12月10日[27] | 978-4-8002-3582-4 |
このマンガがすごい! 2016 | 2015年12月10日[28] | 978-4-8002-4731-5 |
このマンガがすごい! 2017 | 2016年12月10日[29] | 978-4-8002-6449-7 |
このマンガがすごい! 2018 | 2017年12月9日[30] | 978-4-8002-7831-9 |
このマンガがすごい! 2019 | 2018年12月11日[31] | 978-4-8002-9001-4 |
このマンガがすごい! 2020 | 2019年12月11日[32] | 978-4-299-00089-7 |
このマンガがすごい! 2021 | 2020年12月14日[33] | 978-4-299-01202-9 |
このマンガがすごい! 2022 | 2021年12月9日[34] | 978-4-299-02389-6 |
このマンガがすごい! 2023 | 2022年12月14日[35] | 978-4-299-03737-4 |
このマンガがすごい! 2024 | 2023年12月13日[36] | 978-4-299-04939-1 |
脚注
[編集]- ^ “「このマンガがすごい!WEB」毎月の新刊ランキングを紹介”. コミックナタリー (ナターシャ). (2014年6月2日) 2020年1月28日閲覧。
- ^ “マンガレビューサイト「このマンガがすごい!WEB」6月オープン”. ITmedia eBook USER (アイティメディア). (2014年5月29日) 2020年1月28日閲覧。
- ^ “『このマンガがすごい!2020』回収のお知らせ”. 宝島CHANNEL. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “宝島社、「このマンガがすごい!」を回収ページに不備”. 朝日新聞DIGITAL. 朝日新聞 (2019年12月13日). 2019年12月15日閲覧。
- ^ 「このマンガがすごい!」編集部 2020年1月24日のツイート、2020年2月4日閲覧。
- ^ “『このマンガがすごい!2020』訂正版について”. 宝島CHANNEL. 宝島社. 2020年2月4日閲覧。
- ^ 竹熊健太郎 (2007年11月12日). “【業務連絡】「マンガ評論家」を辞めます”. たけくまメモ. 2020年1月28日閲覧。
- ^ “代表的マンガランキング『このマンガがすごい!2015』、順位より大事な“読み解き方””. サイゾーウーマン (株式会社サイゾー). (2015年1月10日) 2020年1月28日閲覧。
- ^ “書籍・マンガ編集者が語るベストセラーの舞台裏”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2011年10月24日). オリジナルの2011年10月24日時点におけるアーカイブ。 2020年1月28日閲覧。
- ^ サイゾー 2011年12月号 特集「本当に過激で面白いマンガ」
- ^ “『このマンガがすごい!』編集長が選ぶ2作品とは”. J-WAVE NEWS. (2015年1月18日) 2020年1月28日閲覧。
- ^ “別冊宝島257 このマンガがすごい!|別冊宝島|雑誌|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがえらい!|えらいマンガ選定委員会+別冊宝島編集部編|雑誌|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “別冊宝島963 このマンガがすごい!マンガナビ厳選1328作品|別冊宝島|雑誌|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2006・オトコ版||書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2006・オンナ版||書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2007・オトコ版||書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2007・オンナ版||書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2008|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! SIDE-B|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2009|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2010|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2011|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
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- ^ “このマンガがすごい! 2013|このマンガがすごい!編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
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- ^ “このマンガがすごい! 2019|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2020|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2019年12月15日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2021|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2023年12月17日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2022|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2023年12月17日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2023|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2023年12月17日閲覧。
- ^ “このマンガがすごい! 2024|『このマンガがすごい!』編集部 編|書籍|宝島CHANNEL”. 宝島社. 2023年12月17日閲覧。
関連項目
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