緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置
緊急事態宣言(きんきゅうじたいせんげん)及びまん延防止等重点措置(まんえんぼうしとうじゅうてんそち)とは、日本において新型インフルエンザ感染症などといった国民の生活や、社会・経済活動においての重大な影響を及ぼす感染症の感染拡大(パンデミック・オーバーシュート)[1]を防ぐため、新型インフルエンザ等対策特別措置法(コロナ特措法、特措法などともいう)[1]に基づいて政府から発出させられる内容の異なった法的拘束力を伴う措置のことである[2]。
同法の制定時点では、急速な感染拡大を封じ込めるための新型インフルエンザ等緊急事態宣言のみ規定がされていたが[1]、2021年2月3日に行われた法改正[1]により新型インフルエンザ等緊急事態宣言に至る前に全国的かつ急速なまん延を防ぐことを目的として[3]、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置が設けられた[1]。ただし、新型インフルエンザ等緊急事態宣言及び新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置ともにこれまで適用されているのは、全世界で感染が拡大している新型コロナウイルス(COVID-19)に対する措置[4]のみである[1]。
緊急事態宣言
制定の経緯
全国的かつ急速なまん延により、国民の生活および経済に甚大な影響を及ぼし、またはそのおそれがあるものとして政令で定める要件[5]に該当する事態となった場合、内閣総理大臣は新型インフルエンザ等緊急事態宣言(しんがたインフルエンザとうきんきゅうじたいせんげん)を発令する[1]。
呼称
単に緊急事態宣言と呼称する場合が多い(以下、緊急事態宣言と呼称)[1]。緊急事態措置や緊急事態、非常事態宣言と呼称したりもする[6]。厚生労働省ホームページなどでは、「新型コロナウイルス感染症対策に関する新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言等」(しんがたコロナウイルスかんせんしょうたいさくにかんするしんがたコロナウイルスかんせんしょうきんきゅうじたいせんげんとう)に蔓延防止等重点措置も集約した名称で呼称されていた。[7]
都道府県による独自の宣言
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言は、国(政府対策本部長[注釈 1])が発令を行うが[1]、各都道府県(地方行政)が、感染対策(感染管理)のため、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくものではない独自の宣言を行うことがある[8]。
独自に宣言を行う要因としては、一部の指標が基準に達しておらず、政府の緊急事態宣言の対象地域に含むことは見送られたり、感染が急拡大していることなどが一因であるが、他の要因もある[8]。また、緊急事態宣言の対象地域に加わる隣接県と歩調を合わせて対策を強化する必要があるとして、発令することもある。また、医療従事者や保健所の職員の心身の疲弊による医療崩壊を防ぐために発令した例もあったりと、感染をふさぎ込むため、足並みをそろえるため、エッセンシャルワーカー(社会経済維持に必要な人材)の負担軽減のためなどと様々な要因で発出している。これらの宣言は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言ではないため、新型インフルエンザ等対策特別措置法第45条に規定するような措置は行うことができないが[1]、第24条第9項に基づく協力要請は可能である[1]。この場合、独自の宣言は必要事項ではないが協力要請の理由付けとして宣言が使われることがある。
また、2021年7月に神奈川県が、国に対して宣言の発出要請をするべく調整していたが、折り合いがつかなかったため、[9][10]「神奈川版緊急事態宣言」(かながわばんきんきゅうじたいせんげん)を出している。[11][12][13][14][15][10][16]
ただ、都道府県ごとの独自宣言の場合は名称が異なることがあり、三重県では「緊急警戒宣言」(きんきゅうけいかいせんげん)と呼称された[8]。
民間団体が独自で宣言することもあり、栃木県では「栃木県医療緊急事態宣言」(とちぎげんいりょうきんきゅうじたいせんげん)が栃木県医師会独自で宣言されている[8]。
しかし、これら民間団体の独自の宣言は、当然ながら強制力を伴わない。[17]
拘束力を持つ措置
新型インフルエンザ等緊急事態において、以下の措置が可能になる[18]。これらは、俗にいう強制力を伴う措置(命令)である[19][1]。ただし下記の措置のなかでも過料の制裁がある命令が可能なものは一部である[1]。
住民に対する措置
- 外出制限要請、興行場、催物等の制限等の要請・指示(潜伏期間、治癒するまでの期間等を考慮)[1]。
- 住民に対する予防接種(ワクチン接種/※「COVID-19ワクチン」も参照)の実施(国による必要な財政負担)[1]。
施設に対する措置
- 多数の者が利用する施設(学校、社会福祉施設、建築物の床面積の合計が1,000平方メートルを超える劇場、映画館、体育館、ショッピングセンター、飲食店、喫茶店等[注釈 2]などにより)の使用制限・停止または催物の開催の制限・停止を要請することができる(45条2項)[1]。
- 正当な理由がないのに要請に応じないときは、特に必要があると認めるときに限り、要請に係る措置を講ずべきことを命令できる。この命令に違反した場合は、30万円以下の過料に処される(第79条)[注釈 3][1]。
学校の一斉休校に関しては、多くの子どもたちや教員が日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備えるためとして、全国すべての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について2020年3月2日から6月7日まで臨時休業を行っており、これは措置法に基づく初めての措置であった[22]。
休業要請等は事例が極めて多く、詳細は「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく休業」で扱っている。
外出に対する措置
- 外出制限や使用制限の期間は、新型インフルエンザ等対策特別措置法の新型インフルエンザ発生後の制定当時は、最初の1-2週間が目安とされていた[23]。しかし2020年に、新型コロナウイルス感染症に対して発動された際は、これを超える最大50日近い期間が対象になった。
過料対応
- 休業命令違反に対して過料の制裁が2021年の改正で新設された。ただし、休業命令に対して補償を行う旨の規定は設けられず、「影響を受けた事業者を支援するために必要な財政上の措置その他の必要な措置を効果的に講ずるものとする。」(第63条の2)と規定されたのみである[1]。
医療に対する措置
物資輸送に対する措置
- 緊急物資の運送の要請・指示[1]。
- 医薬品、食品その他の政令で定める物資[注釈 5]の売渡しの要請・収用)[1]。
- 都道府県知事等は、新型インフルエンザ等の対応に必要な物資の売り渡しを業者に要請することができ、不当に応じない場合は強制収用[注釈 6]することも可能である(55条)[1]。
- また、不当に売り渡しに応じなかった業者に対して、罰則を適用することができる(76条)[1]。
- 49条に基づく使用、55条に基づく収用の場合は「通常生ずべき損失を補償」が必要になる(62条1項))[1]。
葬儀に対する措置
- 埋葬・火葬の特例(墓地、埋葬等に関する法律による、市町村長の火葬許可証のない状態での火葬の許容)[注釈 7][1]。
その他の行政上の措置
- 生活関連物資等の価格の安定(国民生活安定緊急措置法等の的確な運用)[1]。
- 行政上の申請期限の延長等[1]。
- 政府関係金融機関等による融資 等[1]。
ただし、個人の自由や権利の制限[1]につながるおそれもあることから、法の制定の時点で、日本弁護士連合会や日本ペンクラブが2012年3月に本法への反対声明を出すなど、慎重な運用を求める声もあった[23][24]。なお、第5条において、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものでなければならないと定められている[1]。また、法の制定の時に、野党であった自民党の要求で緊急事態宣言を恣意的に行わないことなどを求める附帯決議(衆議院11項目[25][1]、参議院19項目[26][1])が[27]、衆参の内閣委員会にて付けられている[1]。
まん延防止等重点措置
制定の経緯
不明瞭で具体的な対策が見えないとされていた政府の新型コロナウイルス感染拡大防止対策の実効性の向上と新型インフルエンザ等緊急事態宣言(単に緊急事態宣言とも)に至らない段階での感染拡大を抑止することとともに[1]、「緊急事態宣言などといった、厳しすぎる内容では経済が止まってしまう」という意見が相次いだことから、経済への影響を最小限にしつつも感染拡大を防止すること目的とした新型インフルエンザ等対策特別措置法、感染症の予防及び感染者の患者に対する医療に関する法律(感染症法)、検疫法を改正する、新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律が、2021年2月3日の参議院本会議で自由民主党、公明党の与党両党と立憲民主党など野党の賛成多数で可決、成立し[1]、令和3年2月3日法律第5号として公布された(施行は2月13日)[1]。この改正により、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置(しんがたインフルエンザとうまんえんぼうしとうじゅうてんそち)が新設された[28]。
法令上の表記・呼称など
法文上の正式名称は、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置だが[29]、2021年4月1日に初めて出された際には、新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置(しんがたコロナウイルスかんせんしょうまんえんぼうしとうじゅうてんそち)の名称で公示された[30][1]。
単にまん延防止等重点措置と呼称する場合が多い(以下、まん延防止等重点措置と呼称)。交ぜ書きを避け、法文には使われない常用漢字外の漢字「蔓」(まん)を用いて「蔓延防止等重点措置」と書かれることもある。[31]また、「等」(とう)においては、一般的には「など」と読むこともできるが、この名称においては「など」と読まない[32][1]。「等」は「医療提供体制の整備」の意味合いを含んでいるとされている[33][1]。
ただし、英語での表記となると、造語のような形になることから、様々な翻訳のされ方があり、決定的な翻訳はない。そのため、様々な言い方・書き方がある。詳細については、後述する。
日本語での略称は当初一部で「マンボウ」(まん防[34])が使われていたが[35]、後述の問題もあり、政府が「マンボウ(まん防)という名称は使わないでほしい」と報道各社に働きかけたことから、4月中旬以降は「まん延防止措置」[36][37]、「まん延防止」[38]、「重点措置」、「まん延防止等」[39]などとマスコミなどで略されている。また、英語での略称についても、日常会話などにおいて存在しているとされる。しかし、いずれにしても略称は人それぞれで、各都道府県知事や、専門家ごとを始めとし、人によって異なりこれ以外にも略称が多数存在[40]するとみられている[41]。
まん延防止等重点措置の英語表記問題
前述の通り、まん延防止等重点措置には決定的な英語表記はなく、様々な翻訳解釈がされている[42][43]。特に、日本にある英語メディアと海外に存在する英語メディアでの翻訳の違いが特に明確である[43]。例えば、japantimes(ジャパンタイムス)や、Googleが公開している機械翻訳サービスのGoogle翻訳での『コロナウイルスの拡散を防ぐためのより厳格な措置 / 対策』を意味する、「Stricter measures to prevent the spread of the virus」[44]や、海外向け放送であるNHKworldでの、『より厳格なCOVID-19(新型コロナウイルス)措置 / 対策』を意味した、「Stricter COVID-19 measures」[45]「Tighter Covid measures」[46]が基本の綺麗な翻訳とされ、そのように表されることが多い[43][42]。その一方で、海外に拠点を置くメディアでは、翻訳が異なり[42]、大手メディアのAP通信では、『緊急で部分的な措置』と直訳で意味する(造語の為、正しい翻訳することが難しく直訳表記)「semi-emergency coronavirus measures」[42]や、『緊急事態手前の措置』と直訳で意味する「pre-emergency measures」[47]と表記されることもある。ロイター通信では、『緊急事態宣言前』(暫定翻訳)を意味する「emergency measures」[42]であったり、『集中的な措置』を意味する「measures focused on specific areas to prevent the spread of the coronavirus」[42]「intensive measures for preventing COVID-19 infection」[42][48]という翻訳もすることがあるが、長文であり、意味が捉えづらいためあまり使われない[49]。
さらに、造語で英語の基本構文(主語+動詞+名詞)を崩したような「Stronger COVID-19 Measures in 〇〇 / Request for an announcement of stronger measures to stop the spread of Novel Influenza, etc 」[50]と訳されることもあるが序列は崩していないため、言葉の意味は理解することが可能である[51]。
首相官邸サイトでは、「疾病の蔓延防止などの優先措置の実施」を意味する「priority measures to prevent the spread of disease」と訳されている[52]。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策サイトでは「防止のための優先措置」を意味する「Priority Preventative Measures」と訳されている[53]。政府の日本法令外国語訳データベースシステムの「新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律の概要」の英訳では、「地域に特化したまん延防止措置」を意味する「Area-Focused Intensive Measures for Prevention of the Spread of Infection」と訳されている[54]。
これが、日常会話や略称で表記する際は更に様々な翻訳をすることができる[55]。
略称「まん防」をめぐる問題
前述の通り、2021年4月にまん延防止等重点措置が初適用となることから、マスコミ報道などでは「まん防」「マンボウ」などと略されて記事に記載されることもあった。この略称は内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室や厚生労働省など政府内で同年1月頃に略称を検討した結果、「まん防」となったとされる。検討当初では、「まん重(まんじゅう)」も浮上していたという[56]。この略語がにわかに注目され出したのは、同年3月18日の記者会見で新型コロナウイルス対策分科会長の尾身茂が「まん防」とたびたび発言(平坦なイントネーションではなく魚のマンボウと同じイントネーション)したこととされる[56]。このことから、「公の場において専門家の“お墨付き”を得て、人口に膾炙(かいしゃ)していくかに見えた。」と話す専門家もいるほどである[57]。なお、「蔓防」の表記は「蔓」の字が常用漢字外であるため、原則として使用することができない。
しかし、この略称について、イントネーションの関係もあり、魚の「マンボウ」を連想させ、「危機感や緊迫感にかける」と言った批判的な意見もあり、4月1日の参議院議員運営委員会で西村康稔新型コロナウイルス対策担当大臣が「『まん防』という言い方は基本的に使わないようにしている。ちょっとふざけたような雰囲気もある」と発言する[58]など、閣僚・自治体首長から批判が出ており、たびたび使用していた尾身も「『まん防』という言葉の使い方が適切ではない。『重点措置』の方が良い」と略語を使わないことを表明している[56]。さらに、「まん延防止等重点措置」について、「まん防」と省略することを控える向きが政府、報道に強まっている。語感がゆらゆら泳ぐ魚のマンボウのような緩いイメージを連想させ、「ふざけたような雰囲気がある」という指摘もあった[59]。これに関連して、魚類のマンボウが道の駅大谷海岸のトレードマークになっている宮城県気仙沼市が「(東日本大震災からの)再起を期す道の駅にとってもマイナスイメージとなりかねない」として、同月3日までに、報道各社に向けて「『まん延防止等重点措置』を『まん防』と略すことに慎重になってほしい」と要望する文書を出している[60]。東京都の小池百合子知事も、「まん防」と発言して質問した記者に対し「あの、『まん防』っていう言葉、東京都では使ってないんです。『重点措置』です」とくぎを刺している。
しかし、「1度も正確な名称を言っていない。重点施策となったり。」と批判を受ける政府幹部もいるほど、一般流用されていないのが「まん延防止等重点措置」という正式名称である[独自研究?][61]。
一方で、「柔らかい表現でようやく定着しつつあったのに、批判されたらすぐ撤回するなんて、政府も国民にきちんと説明する自信がないんだね。アクセントを先頭の『ま』に持ってくると魚を連想してしまうけれども、後ろに持ってくれば響きはだいぶ変わる」と、「まん防」という略称に好意を持つ人もいるなどかなり複雑である[独自研究?][62]。
略称はユーモラスな姿で人気がある魚のマンボウを連想させるなど、国民に事態の深刻さが伝わりにくい上、政府の姿勢も疑われかねないとの配慮があるようで、そういったこともあるからか、当初は、「まん防」と略していた新聞やテレビなどの表現も「重点措置」「まん延防止措置」の略称に集約されてきている[63]。
その一方で、まん延防止等重点措置に乗じて、江戸時代の作品「疫病除けマンボウ」が和歌山市立博物館で展示が行われるなどの反応もある[64]。
緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置に共通する事項
発令基準
緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置ともにあらかじめ学識経験者や専門家の意見を聴いた上で行うこととし[65]、緊急事態宣言は、国が定めた感染拡大の指標[1]である4段階の警戒レベルのうち、上から1番目に当たる「ステージ4」相当で適用[1]し、上から2番目に当たる「ステージ3」相当で適用する[1]。
さらには、まん延防止等重点措置は、宣言発令前の地域のほか緊急事態宣言解除後の地域も対象になりうる。実例として2021年6月21日に緊急事態宣言が解除された北海道、東京都、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府、福岡県の1都1道2府3県がまん延防止等重点措置の対象地域とされている。
また、急速な感染の拡大の兆しがわずかにでも見られるものの、実際に感染が拡大していない場合(ステージ2相当)でもまん延防止等重点措置を適用する可能性があるとしている[4][66]<[1]。
政府は、緊急事態宣言を出す前の予防的な措置、感染拡大を一定程度防ぐための措置としてまん延防止等重点措置適用を目指すとみられている[67][1]。
ただし、都道府県知事からの発令要請を受けた場合は、要請を最大限尊重して[1]、速やかに検討するとともに、要請に応じない場合は、要請を行った都道府県知事に対し、その趣旨と理由を示すことが決められている[68][1]。
警戒レベル | 疫学状況 | 医療提供体制 | 措置の目安 | 措置解除の目安 |
---|---|---|---|---|
ステージIV(感染爆発) | 感染者が爆発的に増加 | 医療崩壊・破綻・医療的措置継続不能 | 緊急事態宣言相当 | 解除は不可能 |
ステージIII(感染急増) | 感染者が急激に増加 | 医療体制の逼迫(地方での崩壊・破綻) | まん延防止等重点措置相当 | 緊急事態宣言解除検討・解除相当 |
ステージII(感染漸増) | 感染者が徐々に増加 | 医療体制への負担増加(地方での逼迫) | 緊急事態宣言解除相当 | |
ステージI(感染散発) | 感染者が散発的に発生 | 通常医療体制(地方での負担増加) | その他 | まん延防止等重点措置解除相当 |
ステージ0(感染収束) | 感染者が収束傾向に向かっている | 通常医療体制 | 参考として記載 |
発令エリア
緊急事態宣言は、都道府県単位で発令される[1]ものの、まん延防止等重点措置は、政府が対象とした都道府県の知事が、市区町村など特定の地域を限定することができ、[1]政府が目指している、より限定的・集中的な措置となる[66]。ただし、まん延防止等重点措置も、都道府県の全自治体を対象に発令することができるので、実質まん延防止等重点措置も都道府県単位で発令することは可能である。[70]
また、期間・区域、業態を絞った措置を機動的に実施できる[71]と、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室は説明している。[72]ただし新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定[1]では、緊急事態宣言は都道府県単位で発令しなければいけないという規定はなく[1]、かえって第38条第1項は「その区域の全部又は一部が第三十二条第一項第二号に掲げる区域内(編注 緊急事態措置を適用する区域のこと)にある市町村」と規定し[1]市町村の一部について発令されることを想定した規定をおいており[1]、都道府県単位で発令したのがあくまで運用の話である[1]。また実際の適用においても2021年の緊急事態宣言の対象になった北海道は、「全道を緊急事態措置の対象とし、特定措置区域については、より一層の強い対策を行う。」とし、法第45条による酒類を提供する飲食店の休業[1]は、特定措置区域(札幌市、江別市、千歳市、恵庭市、北広島市、石狩市、当別町、新篠津村、小樽市、旭川市)にとどめるなど道内で一律でない適用をしている[73]。
公示方法
新型インフルエンザ等緊急事態宣言は、政府対策本部長が新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間(2年以内、1年以内の延長可能)、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域等を公示し、国会に報告しなくてはならないものの[74][75][76][1]。
これに対し、まん延防止等重点措置では、政府対策本部長は、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき期間(6月以内、延長は回数無制限で可能)新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき区域を公示するが[1]、国会への報告は法定されていない[77][1]。ただし、新型インフルエンザ等対策特別措置法を審議した衆議院内閣委員会(2021年(令和3年)2月1日)及び参議院内閣委員会(同月4日)それぞれの附帯決議において国会への速やかな報告が求められており、決議後、担当大臣は「その趣旨を十分尊重してまいりたい」と発言している[78]。ただし、附帯決議に基づく報告は法的拘束力があるわけではなく、それぞれの俗にいう任意のものとなっている[79]。しかし、今までの発令の実例から見ると、全て付帯決議に基づく国会への報告がなされている。
発令期間
緊急事態宣言は2年以内の発令が可能だが、まん延防止等重点措置では、6カ月以内での発令が可能である[75]。また、緊急事態宣言では、合計1年を超えない範囲で複数回延長することができるが、まん延防止等重点措置は、何回でも延長することが可能となっていて、実質上、緊急事態宣言よりも強い措置ともいえるという見解がある[80]。
発令事例
緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置は、相互に切り替えがされることもあり、統一的に時系列で記述する。
2020年4月 - 5月
2020年4月7日17時45分、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の全国的かつ急速なまん延による国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断したとして、本法32条1項に基づく緊急事態宣言を発令。19時より国民向け記者会見(NHK(日本放送協会)・民放各局によるテレビ・ラジオ放送及びYouTube Live・ニコニコ生放送によるライブストリーミング配信にて生中継)を行った後、同日付官報特別号外第44号[81]において、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示」として公示された。
4月7日時点での緊急事態措置を実施すべき期間は、2020年4月7日から同5月6日まで。緊急事態措置を実施すべき区域は、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・大阪府・兵庫県及び福岡県の区域とされた。 4月7日より後、対象外とされた愛知県や京都府など、自治体独自で緊急事態宣言[82]を行う自治体が見られた事と、各地で感染者の急増が止まらない状況を鑑み、同年4月16日、緊急事態措置を実施すべき区域が全都道府県の区域に拡大された。緊急事態措置を実施すべき期間については、既指定の7都府県を除いては、2020年4月16日から同5月6日までとされた(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年4月16日付官報特別号外第50号)[83][84]。
4月7日より後、対象外とされた愛知県や京都府など、自治体独自で緊急事態宣言[注釈 8]を行う自治体が見られた事と、各地で感染者の急増が止まらない状況を鑑み、同年4月16日、緊急事態措置を実施すべき区域が全都道府県の区域に拡大された。緊急事態措置を実施すべき期間については、既指定の7都府県を除いては、2020年4月16日から同5月6日までとされた(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年4月16日付官報特別号外第50号)[85][86]。
政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針によると、4月16日の全都道府県の区域に拡大について、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府については、4月7日に指定された7都府県と同程度にまん延が進んでいるとして緊急事態措置を実施すべき区域に加えるとし、それ以外の県については「全都道府県が足並みをそろえて感染拡大防止の取組が行われることが必要である」との理由としている[87]。
政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針は、当初の7都府県及び同程度にまん延が進んでいるとした北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府の13都道府県を総称して、以下「特定警戒都道府県」とし、緊急事態措置として外出自粛等を求めるものとしている[87]。
2020年5月4日、「当面、新規感染者を減少させる取組を継続する必要があるほか、地域や全国で再度感染が拡大すれば、医療提供体制への更なる負荷が生じるおそれもある」[88]として、緊急事態措置を実施すべき期間が、全都道府県を対象に、2020年5月31日まで延長された(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月4日付官報特別号外第58号)[89][90]。
2020年5月14日、「感染状況の変化等について分析・評価を行い、後述する考え方を踏まえて総合的に判断」[91]として、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府及び兵庫県は宣言を継続し、他の39県については緊急事態措置を解除した(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月14日付官報特別号外第63号)[92]。
続いて5月21日、京都府、大阪府、兵庫県の緊急事態措置を解除(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月21日付官報特別号外第66号)[93][94]。
最後に残された関東1都3県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)及び北海道も、5月25日、「改めて感染状況の変化等について分析・評価を行い、「区域判断にあたっての考え方」を踏まえて総合的に判断」[95]として、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認め、緊急事態が終了した旨を宣言した(「新型コロナウイルス感染症緊急事態解除宣言に関する公示」同年5月25日付官報特別号外第68号)[96]。
対象 | 期間 | 発令事由 | 解除事由 | 備考 |
---|---|---|---|---|
千葉県 | 2020年4月7日-2020年5月25日 | 急速な感染拡大 | 緊急事態宣言の目安下回る | 特定警戒都道府県 |
神奈川県 | ||||
埼玉県 | ||||
東京都 | ||||
大阪府 | 2020年4月7日-2020年5月21日 | 感染者の減少・重症者の減少 | ||
兵庫県 | ||||
福岡県 | 2020年4月7日-2020年5月14日 | 感染者の減少 | ||
北海道 | 2020年4月16日-2020年5月25日 | 全国的な感染の急速な拡大 | 緊急事態宣言の目安下回る | |
京都府 | 2020年4月16日-2020年5月21日 | 感染者の減少・医療体制の確保 | ||
茨城県 | 2020年4月16日-2020年5月14日 | 感染者数の減少 | ||
石川県 | ||||
岐阜県 | ||||
愛知県 | ||||
宮城県 | ||||
山形県 | ||||
福島県 | ||||
青森県 | ||||
群馬県 | ||||
栃木県 | ||||
長野県 | ||||
新潟県 | ||||
山梨県 | ||||
静岡県 | ||||
秋田県 | ||||
富山県 | ||||
福井県 | ||||
岩手県 | ||||
滋賀県 | ||||
三重県 | ||||
奈良県 | ||||
和歌山県 | ||||
鳥取県 | ||||
島根県 | ||||
岡山県 | ||||
広島県 | ||||
山口県 | ||||
香川県 | ||||
徳島県 | ||||
愛媛県 | ||||
高知県 | ||||
佐賀県 | ||||
長崎県 | ||||
大分県 | ||||
鹿児島県 | ||||
熊本県 | ||||
宮崎県 | ||||
沖縄県 |
2021年1月 - 3月
2021年1月7日17時30分、再び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の全国的かつ急速なまん延による国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断したとして、本法32条1項に基づく緊急事態宣言を発令。前年の発令時同様18時より国民向け記者会見を行った後、同日付官報特別号外第1号[97]において、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示」として公示された。
1月7日時点での緊急事態措置を実施すべき期間は、2021年1月8日[注釈 9]から同2月7日まで。緊急事態措置を実施すべき区域は、埼玉県・千葉県・東京都及び神奈川県の区域とされた。
同年1月13日、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県および福岡県を対象区域に追加した。緊急事態措置を実施すべき期間については、既指定の一都三県を除いては、2021年1月14日から同2月7日までとされた(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年1月13日付官報特別号外第4号)[98]。
同年2月2日、2月8日から栃木県のみを解除し[注釈 10]、残りの10都府県は3月7日までの延長を決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年2月2日付官報特別号外第7号[101]、訂正:2021年2月5日官報第427号[102]。合わせて状況が改善されれば期限前でも解除する事を表明。
同年2月26日、3月1日から[注釈 11]岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県の緊急事態措置を解除することを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年2月26日付官報特別号外第19号)[104]。これにより、緊急事態宣言の対象区域は、埼玉県・千葉県・東京都および神奈川県の区域となった。
同年3月5日、3月8日から緊急事態措置を実施すべき期間を3月21日まで延長することを決定。「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年3月5日付官報特別号外第21号)[105]
同年3月18日、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認め[注釈 12]、緊急事態措置を実施すべき期間とされている3月21日をもって[注釈 13]の緊急事態が終了する旨を公示した。(「新型コロナウイルス感染症緊急事態の終了に関する公示」同年3月18日付官報特別号外第24号)[106]。
対象 | 期間 | 発令事由 | 解除事由 | 備考 |
---|---|---|---|---|
千葉県 | 2021年1月8日 - 2021年3月21日 | 感染者の爆発的な増加(オーバーシュートの発生) | 感染者の大幅な減少 | |
神奈川県 | ||||
埼玉県 | ||||
東京都 | ||||
栃木県 | 2021年1月14日 - 2021年2月7日 | 感染の収束 | ||
愛知県 | 2021年1月14日 - 2021年2月28日 | 病床数の改善・感染者の大幅な減少 | ||
岐阜県 | ||||
京都府 | ||||
大阪府 | ||||
兵庫県 | ||||
福岡県 |
2021年4月以降
2021年4月1日、初めてまん延防止等重点措置を発令した。まん延防止等重点措置を実施すべき期間は、2020年4月5日から5月5日まで、まん延防止等重点措置を実施すべき区域は、宮城県、大阪府、兵庫県の区域とされた(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示」同年4月1日付官報特別号外第32号)。
2021年4月9日、これら3府県以外でも感染者数が拡大している状況がみられることから東京都、京都府、沖縄県の3都府県を対象区域に追加した。まん延防止等重点措置を実施すべき期間については、4月12日から5月5日まで(東京都は5月11日まで)とされた(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年4月9日付官報特別号外第35号)。
2021年4月16日、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県の4県を対象区域に追加した。まん延防止等重点措置を実施すべき期間については、4月20日から5月11日までとされた(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年4月16日付官報特別号外第36号)。
2021年4月23日、再び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の全国的かつ急速なまん延による国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断したとして、本法32条1項に基づく緊急事態宣言を発令。同日付官報特別号外第38号[107]において、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示」として公示された。 4月23日時点での緊急事態措置を実施すべき期間は、4月25日から5月11日まで。緊急事態措置を実施すべき区域は、東京都・京都府・大阪府及び兵庫県の区域とされた。
まん延防止等重点措置については、愛媛県を対象区域に追加し、実施すべき期間については、4月25日から5月11日までとされた。東京都、京都府、大阪府、兵庫県については、4月25日から緊急事態宣言への移行に伴い、4月24日限りでまん延防止等重点措置が解除とし、残りの宮城県、沖縄県については、実施すべき期間を5月11日まで延長することとされた。(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年4月23日付官報特別号外第38号)。
2021年5月7日、5月12日から愛知県および福岡県を緊急事態措置の対象区域に追加し、期限を5月31日までとし、東京都、京都府、大阪府、兵庫県についての適用期限も5月31日まで延長することを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月7日付官報特別号外第41号)[108]。
まん延防止等重点措置については、北海道、岐阜県、三重県を対象区域に追加し、実施すべき期間については、5月9日から5月31日までとされた。また宮城県については、適用期間終了に伴い5月11日限りで解除、愛知県については、5月12日から緊急事態宣言への移行に伴い5月11日限りで解除とし、残りの埼玉県、千葉県、神奈川県、愛媛県、沖縄県については、実施すべき期間を5月31日まで延長することとされた(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年5月7日付官報特別号外第41号)。
2021年5月14日、5月16日から北海道・岡山県および広島県を緊急事態措置の対象区域に追加し、期限を5月31日までとすることを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月14日付官報特別号外第42号)[109]。このとき、岡山県および広島県についてはまん延等防止重点措置の対象とすることとして、14日の基本的対処方針分科会に諮ったが、その席上、専門家からの異論が相次いだことを受けて、北海道(それまでまん延等防止重点措置の対象)、岡山県、広島県に緊急事態宣言を適用する方針に変更し、改めて基本的対処方針分科会に諮り、了承された[110]。
まん延防止等重点措置については、群馬県、石川県、熊本県を対象区域に追加し、実施すべき期間については、5月16日から6月13日までとされた。また北海道については、5月16日に緊急事態宣言への移行に伴い5月15日限りで解除とされた(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年5月14日付官報特別号外第42号)。
2021年5月21日、5月23日から沖縄県を緊急事態措置の対象区域に追加し、期限を6月20日までとすることを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月21日付官報特別号外第45号)[111]。この時点で他の緊急事態措置の対象区域の適用期限は、5月31日までであり、変更されていない。
まん延防止等重点措置については、愛媛県については、感染者・医療状況改善に伴い、当初の適用期限の5月31日を待たずに、5月22日限りで解除、沖縄県については、5月23日に緊急事態宣言への移行に伴い5月22日限りで解除とされた(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年5月21日付官報特別号外第45号)。
2021年5月28日、沖縄県以外の9都道府県の緊急事態措置の適用期限を当初の6月20日5月31日から6月20日まで延長することを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月28日付官報特別号外第46号)[112]。
まん延防止等重点措置については、埼玉県、千葉県、神奈川県、岐阜県、三重県については、実施すべき期間を5月31日から6月20日まで延長することとされた(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年5月28日付官報特別号外第46号)。
2021年6月10日、群馬県、石川県、熊本県については、まん延防止等重点措置の適用期間終了に伴い6月13日限りで解除とした(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年6月10日付官報特別号外第47号)。
2021年6月17日、沖縄県の緊急事態措置の適用期限を当初の6月20日から7月11日まで延長し、沖縄県以外の1都1道2府5県(北海道、東京都、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府、岡山県、広島県、福岡県)については適用期間終了に伴い6月20日限りで解除することを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年6月17日付官報特別号外第46号)[113]。
まん延防止等重点措置については、岐阜県、三重県の2県については適用期間終了に伴い6月20日限りで解除し、埼玉県、千葉県、神奈川県の3県について、まん延防止等重点措置を実施すべき期間を当初の6月20日から7月11日まで延長し、緊急事態宣言から移行する形で北海道、東京都、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府、福岡県の1都1道2府3県をまん延防止等重点措置の対象区域に追加し、実施すべき期間を6月21日から7月11日として追加することを決定した(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年6月17日付官報特別号外第50号)。まん延防止等重点措置の実施地域と期間は、北海道、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府、福岡県の1都1道2府6県で7月11日までの予定となる。なお、北海道、東京都、愛知県、大阪府、兵庫県、京都府の1都1道2府2県は、緊急事態宣言への移行前にもまん延防止等重点措置が適用されており、緊急事態宣言の解除に伴い再度まん延防止等重点措置の対象地域となる。
2021年7月8日、沖縄県の緊急事態措置の適用期限を7月11日までであったものを8月22日までに延長し、東京都については、7月12日から8月22日まで適用期間することを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年7月8日付官報特別号外第59号)[114]。
まん延防止等重点措置については、北海道、愛知県、兵庫県、京都府、福岡県の1道4県については適用期間終了に伴い、東京都については緊急事態措置への移行によりそれぞれ7月11日限りで解除し、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府の1府3県については、まん延防止等重点措置を実施すべき期限を7月11日までであったものを8月22日までに延長することを決定した(「新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置に関する公示の全部を変更する公示」同年7月8日付官報特別号外第59号)。
※現在、発令されている地域は赤色背景で示している。
対象 | 期間 | 発令事由 | 解除事由 | 備考①※発令前対応 | 備考②※解除後対応 |
---|---|---|---|---|---|
東京都(3回目) | 2021年4月25日 - 2021年6月20日 | 急速な感染拡大 | 感染者数の減少 | まん延防止等重点措置から移行 | まん延防止等重点措置へ移行(リバウンドの可能性が高いため) |
大阪府 | |||||
京都府 | |||||
兵庫県 | |||||
愛知県 | 2021年5月12日 - 2021年6月20日 | 爆発的な感染拡大の寸前 | |||
福岡県 | まん延防止等重点措置を経ずに緊急事態宣言 | ||||
北海道 | 2021年5月16日 - 2021年6月20日 | まん延防止等重点措置の基準越え | まん延防止等重点措置から移行 | ||
岡山県 | まん延防止等重点措置を経ずに緊急事態宣言 | まん延防止等重点措置に移行しないで終了 | |||
広島県 | |||||
沖縄県 | 2021年5月23日 - 2021年8月22日 | 病床の逼迫(医療崩壊寸前)・感染拡大 | まん延防止等重点措置から移行 | ||
東京都(4回目) | 2021年7月12日 - 2021年8月22日 | 急速な感染拡大 |
まん延防止等重点措置地域別の適用状況
まん延防止等重点措置が適用されている都道府県において各知事がまん延防止等重点措置による措置の対象とした自治体は下記の通りである[115][116][117][118][119][120][121][122][123][124][125][126][127][128][129][130][131][132][133][134]。
これらの市町村別の適用は、まん延防止等重点措置の公示によって定められているのではなく各知事の判断によるものである。[135]また、期間の途中で兵庫県[136]などでは適用市町村の追加を、三重県などでは適用市町村の一部解除を行っている。特に2021年6月17日に公示されたまん延防止等重点措置の延長にあたり、神奈川県、千葉県、埼玉県で全体的に対象地域を見直した。
※現在、発令されている地域は黄色背景で示している。
都道府県 | 区市町村 | 期間 | 解除事由 | 備考 |
---|---|---|---|---|
北海道(1回目) | 札幌市 | 2021年5月9日 - 2021年5月15日 | 緊急事態宣言へ移行 | |
北海道(2回目) | 札幌市 | 2021年6月21日 - 2021年7月11日 | 適用期間終了 | 緊急事態宣言から移行 |
宮城県 | 仙台市 | 2021年4月5日 - 2021年5月11日 | 適用期間終了 | |
群馬県 | 前橋市 | 2021年5月16日 - 2021年6月13日 | 適用期間終了 | |
高崎市 | ||||
伊勢崎市 | ||||
太田市 | ||||
沼田市 | ||||
渋川市 | ||||
藤岡市 | ||||
富岡市 | ||||
安中市 | ||||
佐波郡玉村町 | ||||
埼玉県 | さいたま市 | 2021年4月20日 - 2021年8月22日 | ||
川口市 | ||||
川越市 | 2021年4月28日 - 2021年6月20日 | 新規陽性者数の減少傾向がみられるため範囲の縮小 | 追加適用 | |
所沢市 | ||||
草加市 | ||||
越谷市 | ||||
蕨市 | ||||
戸田市 | ||||
朝霞市 | ||||
志木市 | ||||
和光市 | ||||
新座市 | ||||
富士見市 | ||||
ふじみ野市 | ||||
入間郡三芳町 | ||||
川越市 | 2021年7月20日 - 2021年8月22日 | 追加適用(2回目)、再適用 | ||
所沢市 | ||||
草加市 | ||||
越谷市 | ||||
蕨市 | ||||
戸田市 | ||||
朝霞市 | ||||
志木市 | ||||
和光市 | ||||
新座市 | ||||
富士見市 | ||||
ふじみ野市 | ||||
入間郡三芳町 | ||||
春日部市 | 追加適用(2回目) | |||
八潮市 | ||||
三郷市 | ||||
鶴ヶ島市 | ||||
北足立郡伊奈町 | ||||
千葉県 | 市川市 | 2021年4月20日 - 2021年8月22日 | ||
浦安市 | ||||
船橋市 | ||||
松戸市 | ||||
柏市 | 2021年4月20日 - 2021年6月20日 | 感染状況等を踏まえ、措置区域の見直し | ||
千葉市 | 2021年4月28日 - 2021年8月22日 | 追加適用 | ||
習志野市 | ||||
野田市 | 2021年4月28日 - 2021年6月20日 | 感染状況等を踏まえ、措置区域の見直し | 追加適用 | |
流山市 | ||||
八千代市 | ||||
鎌ケ谷市 | ||||
我孫子市 | ||||
市原市 | 2021年6月21日 - 2021年8月22日 | 追加適用(2回目) | ||
木更津市 | 2021年6月21日 - 2021年7月11日 | 感染状況等を踏まえ、措置区域の見直し | 追加適用(2回目) | |
君津市 | ||||
富津市 | ||||
袖ケ浦市 | ||||
成田市 | 2021年7月2日 - 2021年8月22日 | 追加適用(3回目) | ||
柏市 | 2021年7月12日 - 2021年8月22日 | 追加適用(4回目)、再適用 | ||
八千代市 | 2021年7月19日 - 2021年8月22日 | 追加適用(5回目)、再適用 | ||
鎌ケ谷市 | ||||
東京都(1回目) | 東京23区 | 2021年4月12日 - 2021年4月24日 | 緊急事態宣言へ移行 | |
武蔵野市 | ||||
調布市 | ||||
府中市 | ||||
立川市 | ||||
八王子市 | ||||
町田市 | ||||
東京都(2回目) | 東京23区 | 2021年6月21日 - 2021年7月11日 | 緊急事態宣言へ移行 | 緊急事態宣言から移行 |
檜原村、奥多摩町を除く多摩地域の市町 | ||||
神奈川県 | 横浜市[注釈 14] | 2021年4月20日 - 2021年8月22日 | ||
川崎市]][注釈 14] | ||||
相模原市[注釈 14] | ||||
厚木市[注釈 14] | 2021年4月28日 - 2021年8月22日 | 追加適用(1回目) | ||
座間市 | 2021年4月28日 - 2021年7月11日 | 感染状況等を踏まえ、措置区域の見直し | 追加適用(1回目) | |
大和市 | 2021年4月28日 - 2021年6月20日 | 感染状況等を踏まえ、措置区域の見直し | 追加適用(1回目) | |
海老名市 | ||||
綾瀬市 | ||||
鎌倉市 | ||||
藤沢市 | 2021年5月12日 - 2021年6月20日 | 感染状況等を踏まえ、措置区域の見直し | 追加適用(2回目) | |
横須賀市 | ||||
茅ヶ崎市 | ||||
伊勢原市 | ||||
逗子市 | ||||
三浦市 | ||||
高座郡寒川町 | ||||
三浦郡葉山町 | ||||
小田原市 | 2021年6月1日 - 2021年7月11日 | 感染状況等を踏まえ、措置区域の見直し | 追加適用(3回目) | |
平塚市 | 2021年6月1日 - 2021年6月20日 | 感染状況等を踏まえ、措置区域の見直し | 追加適用(3回目) | |
秦野市 | ||||
神奈川県内のすべての市町 | 2021年7月22日 - 2021年8月22日 | 追加適用(3回目) | ||
石川県 | 金沢市 | 2021年5月16日 - 2021年6月13日 | 適用期間終了 | |
愛知県(1回目) | 名古屋市 | 2021年4月20日 - 2021年5月11日 | 緊急事態宣言へ移行 | |
愛知県(2回目) | 名古屋市 | 2021年6月21日 - 2021年7月11日 | 適用期間終了 | 緊急事態宣言から移行 |
豊橋市 | ||||
小牧市 | ||||
岡崎市 | 2021年6月21日 - 2021年7月2日 | 新規陽性者数の状況を踏まえ、措置区域の見直し | 緊急事態宣言から移行 | |
半田市 | ||||
春日井市 | ||||
津島市 | ||||
刈谷市 | ||||
犬山市 | ||||
高浜市 | ||||
清須市 | ||||
西春日井郡豊山町 | ||||
丹羽郡大口町 | ||||
海部郡大治町 | ||||
蒲郡市 | 2021年7月3日 - 2021年7月11日 | 適用期間終了 | 追加適用 | |
岐阜県 | 岐阜市 | 2021年5月9日 - 2021年6月20日 | 適用期間終了 | |
大垣市 | ||||
多治見市 | ||||
関市 | ||||
中津川市 | ||||
羽島市 | ||||
美濃加茂市 | ||||
土岐市 | ||||
各務原市 | ||||
可児市 | ||||
瑞穂市 | ||||
本巣市 | ||||
羽島郡岐南町 | ||||
羽島郡笠松町 | ||||
養老郡養老町 | ||||
本巣郡北方町 | ||||
高山市 | 2021年5月16日 - 2021年6月20日 | 適用期間終了 | 追加適用 | |
瑞浪市 | ||||
恵那市 | ||||
山県市 | ||||
下呂市 | ||||
可児郡御嵩町 | ||||
三重県 | 桑名市 | 2021年5月9日 - 2021年6月13日 | 感染状況をとらえ、地域ごとの状況に応じた対策とするため | 当初は、6月20日までのところ、6月13日限りで解除。 |
いなべ市 | ||||
四日市市 | 2021年5月9日 - 2021年6月20日 | 適用期間終了 | ||
鈴鹿市 | 2021年5月9日 - 2021年6月13日 | 感染状況をとらえ、地域ごとの状況に応じた対策とするため | 当初は、6月20日までのところ、6月13日限りで解除。 | |
亀山市 | ||||
名張市 | ||||
伊賀市 | ||||
桑名郡木曽岬町 | ||||
員弁郡東員町 | ||||
三重郡菰野町 | ||||
三重郡朝日町 | ||||
三重郡川越町 | ||||
京都府(1回目) | 京都市 | 2021年4月12日 - 2021年4月24日 | 緊急事態宣言へ移行 | |
京都府(2回目) | 京都市 | 2021年6月21日 - 2021年7月11日 | 適用期間終了 | 緊急事態宣言から移行 |
大阪府(1回目) | 大阪市 | 2021年4月5日 - 2021年4月24日 | 緊急事態宣言へ移行 | |
大阪府(2回目) | 大阪府内のすべての市 | 2021年6月21日 - 2021年8月22日 | 緊急事態宣言から移行 | |
兵庫県(1回目) | 尼崎市 | 2021年4月5日 - 2021年4月24日 | 緊急事態宣言へ移行 | |
西宮市 | ||||
芦屋市 | ||||
神戸市 | ||||
伊丹市 | 2021年4月22日 - 2021年4月24日 | 追加適用 | ||
宝塚市 | ||||
川西市 | ||||
三田市 | ||||
明石市 | ||||
川辺郡猪名川町 | ||||
兵庫県(2回目) | 神戸市 | 2021年6月21日 - 2021年7月11日 | 適用期間終了 | 緊急事態宣言から移行 |
阪神南地域(尼崎市、西宮市、芦屋市) | ||||
阪神北地域(伊丹市、宝塚市、川西市、三田市、川辺郡猪名川町) | ||||
東播磨地域(明石市、加古川市、高砂市、加古郡稲美町、加古郡播磨町) | ||||
姫路市 | ||||
愛媛県 | 松山市 | 2021年4月25日 - 2021年5月22日 | 感染者・医療状況改善 | |
福岡県 | 福岡市 | 2021年6月21日 - 2021年7月11日 | 適用期間終了 | 緊急事態宣言から移行 |
北九州市 | ||||
久留米市 | ||||
熊本県 | 熊本市 | 2021年5月16日 - 2021年6月13日 | 適用期間終了 | |
沖縄県 | 那覇市 | 2021年4月12日 - 2021年5月22日 | 緊急事態宣言へ移行 | |
名護市 | ||||
うるま市 | ||||
沖縄市 | ||||
宜野湾市 | ||||
南城市 | ||||
浦添市 | ||||
豊見城市 | ||||
糸満市 | ||||
島尻郡南風原町 | 2021年5月1日 - 2021年5月22日 | 追加適用(1回目) | ||
島尻郡八重瀬町 | ||||
島尻郡与那原町 | ||||
中頭郡西原町 | ||||
中頭郡北谷町 | ||||
石垣市 | 2021年5月12日 - 2021年5月22日 | 追加適用(2回目) |
営業時間短縮
営業時短要請
緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置ともに、営業時間の短縮要請に従わない場合、宣言又は措置の対象である都道府県の知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があると認めるときに限り、飲食店などに営業時間の短縮命令を出すことが可能である[1]。主に午後8時までの時短要請を想定している[4]が、各都道府県知事によって異なっている。[137]
営業時短命令
緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置ともに、営業時間の短縮要請に従わない場合、宣言又は措置の対象である都道府県の知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があると認めるときに限り、飲食店などに営業時間の短縮命令を出すことが可能である[1]。主に午後8時までの時短命令を想定している[4]。また、命令に際して立ち入り検査も可能としていて、それを拒んだ場合は過料も科される。(罰則規定参照)[138]
東京都では、新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく営業時間の短縮命令に違反し「度重なる要請や命令に応じてもらえなかったことから、過料事件として通知すべきだと判断した」として、2021年3月29日に飲食店4店舗を対象に、過料を科すべきだとする通知を裁判所に出した[139]。同年7月6日までに、裁判所が各店舗に25万円の過料を決定したことが確認された[140]。
まん延防止等重点措置においては、宮城県仙台市の正当な理由なく時短要請に応じなかった15の店舗に対し、5月7日に命令を出していたが、11店舗が命令に違反して、午後8時以降の営業を続けていたということなどから、宮城県は「行政秩序上看過できない」と判断し、同月14日に行政罰として20万円以下の過料を科すよう裁判所に求める通知を全国で初めて提出している。
岡山県でも6月22日に、飲食店など13店が文書や口頭による5回以上の時短要請に応じなかったため、過料を求める通知を裁判所に送ったことを発表した。[141]
休業要請
緊急事態宣言では、飲食店などでの感染リスクを抑えるため、宣言の措置の対象である都道府県の知事は飲食店などに休業の要請を行うことが可能であるが[1]、まん延防止等重点措置では、休業の要請を行うことは現在の法律では、出来ない[142]とされているが、まん延防止等重点措置と関係なしに各都道府県知事が要請することは可能である[1]。
休業命令
休業要請と同様で、緊急事態宣言では、飲食店などでの感染リスクを抑えるため、指定された都道府県の知事は飲食店などに休業の命令を行うことが可能だったが、まん延防止等重点措置では、休業の命令を行うことはできない[142]。ただし後述のように酒類の提供の終日停止要請はまん延防止等重点措置でも可能とされる。
酒類等の提供時間制限
発令中の都道府県ごとに異なる[143]が、人が集まることを避けること[144]や、主に飲酒による酔った際に、マスクを外したり、大声で話したりしたことによる感染リスクを回避するため[145]に19時から21時前後で酒類の提供時間を制限することが可能である[1]。専門家の間では、無いとされていて、[独自研究?][146][147][148][149][150][1]。
店舗名公表
時短営業要請に応じない店舗では、店名の公表が可能である(第31条の6第5項、第45条第5項)[151]。この規定は2021年の改正前には、緊急事態宣言による時短営業要請に応じない場合に「公表する」となっていたものが、店舗名を公表することで、「開いている店舗」を公表し、人を集めるという弊害が生じたため改正されたものである[152][153]。
施設使用
施設使用停止要請・命令
緊急事態宣言では、イベントなどで使用する施設の使用を停止する要請が可能で、従わない場合は命令を発することもできるが、まん延防止等重点措置では要請・命令は出来ない[154][1]。
外出規制
外出自粛要請
緊急事態宣言下においては法第45条第1項に基づく「生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないこと」の要請が可能だが、[1]まん延防止等重点措置の場合は、法第36条の6第2項の「新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力」として外出自粛要請を行うことになるそのため報道では、まん延防止等重点措置では、「緊急事態宣言のような大規模な外出自粛を要請することは出来ず、普段から行っている都道府県知事や各自治体の市区町村長の外出の自粛を要請できるような小規模な大きな影響力を持たない要請のみに限られる[155]」[1]としているものもあるが法的に必ずしも明示されていない[1]。
外出禁止要請・命令
緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置ともに、外出を禁止する法的拘束力があるようなことを行うことは法律上でも出来ない[155]。
発令区域においての行動
- 時短要請がされている時間帯に飲食店にむやみに出入りしないこと
- 不要不急の外出・移動の自粛
- 混雑している場所や時間を避けて行動すること
が求められている[156]。
発令中の行政及び施設においての基本感染対策ガイドライン
政府は、発令中の区域においての感染防止対策についての、ガイドラインをまとめていて、主に
- 飲食店における20時までの営業時間短縮要請(酒類の提供は、まん延防止等重点措置の場合19時まで、緊急事態宣言は終日停止)[1]
- 各都道府県全体でのイベントの人数制限[1]
- アクリル板の設置を含めたガイドラインの遵守の徹底[1]
- 感染拡大地域におけるモニタリング検査の拡充[1]
- 高齢者施設等の従業者等に対する検査の頻回実施[1]など、普段の基本的な感染対策よりも一層踏み込んだ感染対策を行うことが求められている[157]。これらの正式名称は、感染拡大防止ガイドライン(かんせんかくだいぼうしガイドライン)という。[158][1]
発令中の感染対策
飲食店での対応
- まん延防止等重点措置の場合、各都道府県知事が定める期間や措置区域においては、飲食店などでは20時まで営業時間の短縮をし、酒類の提供は11時から19時までとすること[1]。緊急事態宣言の場合、飲食店などでは20時まで営業時間の短縮をし、酒類の提供は終日停止[1]。
- 昼カラオケ(日中にカラオケを行うこと)なでクラスター(感染者の集団/集団での感染)が多発している状況などから、昼営業のスナック、カラオケ喫茶など、飲食を主として営業としている店舗において、カラオケを行う設備を提供している場合、カラオケ設備の利用は自粛すること[1]。
- 各都道府県から飲食店に対して、「入場をする者の整理など」「入場をする者に対するマスクの着用の周知」「感染防止措置を実施しない者の入場の禁止」「会話等の飛沫による感染の防止に効果のある措置(飛沫を遮ることができる板(アクリル板やパーティション(パーテーションとも))などの設置または、利用者の適切な距離の確保(ソーシャルディスタンス)」などの措置の要請があった場合は、協力すること[1]
大規模施設での対応
- 大規模な集客施設において、各都道府県から営業時間や入場整理などについて働きかけがあった場合は、協力すること[1]
- 業種別ガイドラインの遵守し、原則として措置区域内の全ての飲食店等に対して実地で働きかけを行い、ガイドラインを遵守していない飲食店等については、個別に要請を行うこともある[1]
住民の対応
- 住民は、時短要請がされている時間帯に、飲食店にみだりに出入りしたり、日中も含めた不要不急の外出・移動の自粛や混雑している場所や時間を避けて行動し、感染対策が徹底されていない飲食店の利用は自粛する[1]
イベントでの対応
- 知事が定める期間及び区域で行われる催物)については、主催は、が定した規模要件に沿って開催する[1]
会社・勤務先での対応
- 事業者は、職場への出勤等について、「出勤者数の7割削減」最大8割削減)」目指すことも含め接触機会の低減に向け、在宅勤務(テレワーク)や、出勤が必要となる職場でもローテーション勤務等を徹底すること[1]など、様々な緊急事態宣言下と同じような厳しい感染対策が求められている[159]。これらをまとめて、基本的対処方針(きほんてきたいしょほうしん)という。[160][1]
罰則(過料)規定
緊急事態宣言では、都道府県の知事の命令に正当な理由がなく応じなかった場合30万円以下の過料(行政罰)が科される[1]。まん延防止等重点措置では、20万円以下の過料が科される[142][1]。具体的には、飲食店などの事業者が、都道府県知事から出る時短命令に「正当な理由なく」応じなかった場合に科されることがある[1]。ただし、過料の適用に当たっては、国民の自由と権利が侵害されることのないよう、慎重に運用することと、不服の申立てや、その他の救済の権利を保障することも定められている[161][1]。
協力金
緊急事態宣言の時に営業時間の短縮要請に応じた飲食店には1日最大6万円の協力金が都道府県から支払われるが[1]、まん延防止等重点措置発令時においては当初、1日最大6万円の協力金を当初は支払う方針だったものの、一日最大4万円の協力金に減額となった[4][162]。都道府県によって異なることもある。[163]また、大企業、中小企業など企業業態によって異なることもある[1]。
感染者の入院
宣言又は措置の発令時に限らず、その他の場合でも適用されるが、入院を拒否したり、入院先から逃げたりした場合、その感染者に50万円以下の過料を科すことができるように、<[1]、感染症法が合わせて改正された[164]。付帯決議では、医療現場で円滑に運用がなされるように、その手順などを分かりやすく示すとともに、適用についての具体的な例など、適用の適否を判断する材料をできる限り明確に示し、宿泊施設や感染者の自宅などの状況も含め、本人や、その子供や高齢者などの生活維持に配慮するとともに、必要な対応を行うべきとされた[165][1]。
臨時医療施設の設置
緊急事態宣言中は、臨時の医療施設を設置できるとされていたが、2021年の法改正で、政府対策本部が設置された時[注釈 15]から設置可能になり、まん延防止等重点措置発令中でも設置が可能になった[166]。
臨時の医療施設は、都道府県知事が臨時に開設するものであり(第31条の2第1項)、民間に設置を求めるものではない。現在まで設置の実例はない。
疫学調査
宣言又は措置の発令時に限らず、その他の場合の場合でも科されるが、保健所が感染経路を調べ、濃厚接触者の特定や感染源を調べたりする「積極的疫学調査」を拒んだ場合は30万円以下の過料とした[167]。ただし、PCR検査などの検査拒否につながるおそれや保健所の対応能力も踏まえ、慎重に行うこととし、現場で円滑に運用がなされるよう、その手順などを分かりやすく示すとともに、適用についての具体例など、適用の適否の判断材料をできる限り明確に示すことも求めている[168]。
病床確保
宣言又は措置の発令時に限らず、その他の場合でも適用されるが、新型コロナウイルス入院患者病床の確保のために厚生労働大臣などが医療機関に勧告したり、それに応じない機関名を公表したりできるようにした[169]。
その他
政府は、宣言又は措置の対象地域では、施設従業員の検査受診を勧め、マスク着用など感染防止に必要な措置をとらない人は入場を禁止する措置をとると発表した[4]。ただし、原則として立入先の同意を得て行うこととして、同意が得られない場合も物理力の行使などは行わないことが求められている[170]。
人流移動に関する問題
まん延防止等重点措置をめぐり、隣接する対象の武蔵野市と対象外の三鷹市は、JR中央線三鷹駅を境に南北で分かれ、対象外の南側では人出が目立つなど、対象区域の線引きの難しさが浮き彫りとなっている[171]。同様の問題はJR総武線津田沼駅(船橋市・習志野市)やJR横浜線町田駅(町田市・相模原市)などでも発生し[172][173]、特に町田駅のケースは、東京都と神奈川県に分かれるため、緊急事態宣言においても発生している。県境をまたぐような施設に対する法的要請の対応の難しさは浮き彫りとなっている。[174]
一方で、措置発令直後は人出が大幅に減少するものの、延長などが繰り返されて期間が延びてくると、人出が増加するという課題もあり、措置の長さなどの対応も大きな課題となっている。[175]これらの事象は、特に緊急事態宣言の際に見られ、宣言発令数週間ほどたつと、人流が増加し始めて一カ月以上たってくると人出が宣言前の人出の数に戻っていたりしていたということもあった。[176]。また、措置解除後の人出の大幅な上昇も危惧すべき面があるとされている。[177][178]さらに、人出が大幅に上昇し始める地域は特に大都市を中心にみられ、大阪市の中心部や、東京23区の新宿区などと繁華街や、商業地区などではこれらの事が顕著にみられる[179][180]。一方で、大都市から離れた郊外や地方などでは、人出は減少傾向が続くことが多く、これらの差をどう埋めるかという課題もある[181][独自研究?]
まん延防止等重点措置の効果
宣言又は措置の効果をめぐり、効果の有無について議論が分かれている[182]。真っ先に発令された大阪府では、発令当初の感染者は600人前後だったものの、効果が出るとされていた2週間後には、1000人を超えるような感染者を招いたことなどから、国会などでは効果を疑問視する意見が出た[182]。ただ、一方でまん延防止等重点措置の効果があったことから、1000人程度の感染で抑えることができたという意見もある[183][要文献特定詳細情報]。
憲法違反の可能性
憲法学者の高見勝利は、まん延防止等重点措置による時短営業命令が違憲である可能性を指摘している。高見は、十分な支援措置で時短命令に応じるよう事業者を誘導できるなら、過料による制裁は過剰規制として日本国憲法第22条の職業選択の自由の『営業の自由』を侵害し、違憲と判断される可能性があるとしている[184]。
また、小林よしのりなども、本措置法が違憲であると主張している[185]。
脚注
注釈
- ^ 新型インフルエンザ等対策特別措置法第32条第1項。政府対策本部長(内閣総理大臣)の権限であるため閣議を要しない。
- ^ 新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令の一部を改正する政令(令和3年政令第3号)[20]による新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令の改正により「飲食店、喫茶店その他設備を設けて客に飲食をさせる営業が行われる施設」が対象に追加された。
- ^ 緊急事態宣言時には30万円以下の過料、「まん延防止等重点措置」では20万円以下の過料を科す[21]。感染症法の改正で、感染者が入院を拒んだ場合に「50万円以下の過料」、保健所の調査を拒否した人へ「30万円以下の過料」(いずれも行政罰)にする[21]。
- ^ 土地や建物については、所有権を移転する「収用」はできず、後に返還を前提とする「使用」のみが可能である。
- ^ 新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令第6条第2項で医薬品、食品のほか、医療機器、燃料が指定されているほか、「必要な物資として内閣総理大臣が定めて公示するもの」という規定で随時追加が可能となっている。
- ^ 物資は消費されるため、所有権を移転する「収用」となっている。
- ^ 死後(または死産後)24時間以内の埋葬禁止の除外は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくものではなく、感染症予防法第30条第3項(一類感染症、二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体は、二十四時間以内に火葬し、又は埋葬することができる。)に基づくものである。
- ^ 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくものではない。
- ^ 2020年の緊急事態宣言では、公示の日から実施(解除の場合も)とされており、公示当日のどの時点で有効になるか不明確であった。これに対し、2021年の緊急事態宣言では、実施すべき期間を公示の翌日からとすることで、その日の午前0時から適用されることが明確化された。また解除の場合も、改正の公示に適用開始日を明記して解除の前日まで有効であることを明確化した。
- ^ 2月2日に改正された新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針[99]には、「2月8日以降については、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置を実施すべき区域を埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県の 10 都府県に変更する」と明記され、国会への報告[100]においても「緊急事態措置を実施すべき期間を延長するとともに区域を変更することとし、令和3年2月8日から適用する」と記載されている。しかし2月2日付の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示)[101]には、適用日の記載がなく、したがって法的には2月2日の公示以後、解除が発効している状態であったが、2021年2月5日官報第427号[102]において、原稿誤りとして「令和三年二月八日から適用する」との文言を含む形に訂正された。
- ^ 内閣総理大臣会見において「2月28日をもって解除[103]」と表明しているが、公示との整合性からこの「もって」は「限り」の意味と解されるので、「2月28日に解除」とすると不正確になるので、公示にあわせ「3月1日から」と記載する。
- ^ 終了の公示自体にはこの文言はないが、同日公示された対処方針にはその旨がある。
- ^ 2020年の緊急事態宣言では、公示の日から解除したが、2021年の時は、期限満了で終了とされた。
- ^ a b c d 7月22日以降は、神奈川県内のすべての市町に含まれる
- ^ 緊急事態宣言にしても延防止等重点措置にしても、政府対策本部が設置されてから発令が可能になる
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- ^ 明日の「ゴー宣道場」のために
関連項目
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく休業
- 緊急事態
- 非常事態宣言
- CОVIⅮ-19ワクチン
- 日本における2019年コロナウイルス感染症の流行状況
- 日本における2019年コロナウイルス感染症による社会・経済的影響
- 2019年コロナウイルス感染症の流行に対する日本の行政の対応
外部リンク
- 新型コロナウイルス感染症 緊急事態宣言・まん延防止等重点措置 - 内閣官房
- 緊急事態措置及びまん延防止等重点措置に係る雇用調整助成金のお知らせ - 厚生労働省
- 第三章の二 新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置 - 新型インフルエンザ等対策特別措置法 | e-Gov法令検索