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半島振興法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
半島振興法
日本国政府国章(準)
日本の法令
法令番号 昭和60年6月14日法律第63号
種類 法律
効力 現行法
成立 1985年6月7日
公布 1985年6月14日
施行 1985年6月14日
主な内容 半島の地域振興
条文リンク e-Gov法令検索
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半島振興法(はんとうしんこうほう)とは、半島の振興を目的とする日本の法律。

概要

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この法律は、三方を海に囲まれ、平地に恵まれず、水資源が乏しい等、国土資源の利用の面における制約から産業基盤及び生活環境の整備等について他の地域に比較して低位にある半島地域(架橋等により本土との陸上交通が確保された島を含む)について、広域的かつ総合的な対策を実施するために必要な特別の措置を講ずることにより、これらの地域の振興を図り、もつて地域住民の生活の向上と国土の均衡ある発展に資することを目的とする(1条)。 もともと同法は1983年(昭和58年)の第37回衆議院議員総選挙和歌山2区から立候補した玉置和郎(自由民主党)が公約に掲げたものであり、それまで参議院全国区選出であり、中選挙区制の選挙を経験していたなかった玉置にとっては、選挙対策の上でアピールした面も含まれていた。ただし、それまでの地域振興に関する法律が自治体単位にとどまっていたのに対し、玉置の構想は半島全体の振興と地域活性化を包括的に捉え、国土開発の視点に結びつけようとしてた点で相違がある。当時の中曽根内閣は行財政改革を旗印に掲げていたことから、中央からの積極的な予算配分を伴う法案を議員提出法案として成立させることは困難を極め、官邸サイドからは廃案に向けた圧力も加えられていた。しかし、自民党半島振興委員会事務総長にして、衆議院建設委員長である浜田幸一が力添えしたことにより、1985年(昭和60年)に成立した[1]

内容

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地域指定

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都道府県知事の申請により、国土交通大臣総務大臣農林水産大臣は、関係行政機関の長に協議し、かつ、国土審議会の議を経て、次の3要件に該当する半島地域を半島振興対策実施地域に指定する。

  1. 二以上の市町村の区域からなり、一定の社会的経済的規模を有する地域であること。
  2. 高速自動車国道空港等の高速輸送に係る施設その他の公共的施設の整備について他の地域に比較して低位にある地域であること。
  3. 産業の開発の程度が低く、雇用の増大を図るため企業の立地の促進等の措置を講ずる必要がある地域であること。

また、都道府県知事は申請に当たって関係市町村長と協議しなければならない。3大臣は、指定した半島振興対策実施地域の名称及び区域を官報で公示しなければならない。

半島振興計画の作成

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都道府県知事は、関係市町村長と協議して、次の8項目からなる半島振興計画を作成しなければならない。

  1. 振興の基本的方針に関する事項
  2. 基幹的な道路港湾空港等の交通施設及び通信施設の整備に関する事項
  3. 農林水産業、商工業その他の産業の振興及び観光の開発に関する事項
  4. 水資源の開発及び利用に関する事項
  5. 生活環境の整備に関する事項
  6. 高齢者の福祉その他の福祉の増進に関する事項
  7. 教育及び文化の振興に関する事項
  8. 前各号に掲げるもののほか、半島振興に関し必要な事項

この計画作成に際して、あらかじめ、国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣に協議して、その同意を得なければならず、3大臣は同意に際して、関係行政機関の長に協議するとともに、国土審議会の意見を聴かなければならない。 また、この半島振興計画は、国土総合開発計画首都圏整備計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、北海道総合開発計画、沖縄振興計画その他法令の規定による地域振興に関する計画と調和したものでなければならない。なお、半島振興計画を変更する場合についても、この手続は準用される。

計画に基づく事業の実施

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半島振興計画は、国・地方公共団体・その他の者が実施しなければならない。実施に当たっては、次の11項目の留意配慮事項が定められている。

  1. 国の施策について
    国は、必要な財政金融上の措置を講ずるよう配慮しなければならない。国は、事業の実施に要する経費について、毎年度、国の財政の許す範囲内において、その事業の円滑な実施を促進することに努めなければならない。
  2. 地方債についての配慮
    地方公共団体が半島振興計画を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
  3. 資金の確保
    国及び地方公共団体は、半島振興計画の達成に資すると認められる製造事業、運輸事業等の事業を営む者が、半島振興対策実施地域の区域内において行う工場、事業場その他の施設の新設若しくは増設又はこれらの施設の用に供する土地の取得若しくは造成に要する経費に充てるために必要な資金の確保に努めなければならない。
  4. 半島循環道路等の整備
  5. 基幹的な市町村道等の整備
  6. 小型航空機用飛行場等の整備
  7. 情報の流通の円滑化及び通信体系の充実
  8. 高齢者の福祉の増進
  9. 地域文化の振興等
  10. 税制上の措置
  11. 地方税の不均一課税に伴う措置

半島振興対策実施地域対象市町村の一覧

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下表は2022年4月1日時点での半島振興対策実施地域対象市町村の一覧である。合計23地域の80市94町18村が指定される[2][3][4]。うち県全体が単一の半島の一部並びにその至近の島嶼で構成される和歌山県においては、和歌山市を除く全市町村が対策実施地域とされている。

指定地域名 道府県名 現市町村名 指定時の市町村名 指定日
渡島 北海道 函館市(一部)、北斗市松前町福島町知内町木古内町七飯町鹿部町森町長万部町江差町上ノ国町厚沢部町乙部町せたな町今金町八雲町 戸井町恵山町椴法華村南茅部町上磯町大野町、松前町、福島町、知内町、木古内町、七飯町、鹿部町、森町、砂原町、長万部町、江差町、上ノ国町、厚沢部町、乙部町、大成町瀬棚町北檜山町、今金町、八雲町、熊石町 1986年3月31日
積丹 共和町岩内町泊村神恵内村積丹町古平町仁木町余市町 共和町、岩内町、泊村、神恵内村、積丹町、古平町、仁木町、余市町 1988年12月23日
津軽 青森県 五所川原市つがる市今別町蓬田村外ヶ浜町板柳町鶴田町中泊町 五所川原市、金木町市浦村木造町森田村柏村稲垣村車力村、今別町、蓬田村、蟹田町平舘村三厩村、板柳町、鶴田町、中里町小泊村 1986年3月31日
下北 むつ市野辺地町横浜町東北町(一部)、六ヶ所村大間町風間浦村佐井村東通村 むつ市、川内町大畑町脇野沢村、野辺地町、横浜町、東北町、六ヶ所村、大間町、風間浦村、佐井村、東通村 1986年3月31日
男鹿 秋田県 男鹿市潟上市(一部)、三種町(一部)、大潟村 男鹿市、若美町天王町八竜町、大潟村 1988年12月23日
南房総 千葉県 館山市勝浦市鴨川市富津市いすみ市南房総市大多喜町御宿町鋸南町 館山市、勝浦市、鴨川市、天津小湊町、富津市、夷隅町大原町岬町富浦町富山町白浜町千倉町丸山町和田町三芳村、大多喜町、御宿町、鋸南町 1986年3月31日
能登 富山県 氷見市 氷見市 1986年3月31日
石川県 七尾市輪島市珠洲市羽咋市かほく市津幡町内灘町志賀町宝達志水町中能登町穴水町能登町 七尾市、田鶴浜町中島町能登島町、輪島市、門前町、珠洲市、羽咋市、高松町七塚町宇ノ気町、津幡町、内灘町、志賀町、富来町志雄町押水町鳥屋町鹿島町鹿西町、穴水町、能都町柳田村内浦町
伊豆中南部 静岡県 下田市沼津市(一部)、伊豆市東伊豆町河津町南伊豆町松崎町西伊豆町 下田市、戸田村修善寺町土肥町天城湯ケ島町中伊豆町、東伊豆町、河津町、南伊豆町、松崎町、西伊豆町、賀茂村 1986年3月31日
紀伊 三重県 伊勢市松阪市(一部)、尾鷲市鳥羽市熊野市志摩市多気町明和町大台町玉城町度会町大紀町南伊勢町紀北町御浜町紀宝町 伊勢市、二見町小俣町御薗村、松阪市、飯高町飯南町、尾鷲市、鳥羽市、熊野市、紀和町浜島町大王町志摩町阿児町磯部町、多気町、勢和村、明和町、大台町、宮川村、玉城町、度会町、大宮町紀勢町大内山村南勢町南島町紀伊長島町海山町、御浜町、紀宝町、鵜殿村 1986年3月31日
奈良県 五條市吉野町大淀町下市町黒滝村天川村野迫川村十津川村下北山村上北山村川上村東吉野村 五條市、西吉野村大塔村、吉野町、大淀町、下市町、黒滝村、天川村、野迫川村、十津川村、下北山村、上北山村、川上村、東吉野村
和歌山県 海南市橋本市有田市御坊市田辺市新宮市岩出市紀の川市紀美野町かつらぎ町九度山町高野町湯浅町広川町有田川町美浜町日高町由良町印南町みなべ町日高川町白浜町上富田町すさみ町那智勝浦町太地町古座川町北山村串本町 海南市、下津町、橋本市、高野口町、有田市、御坊市、田辺市、龍神村中辺路町大塔村本宮町、新宮市、熊野川町岩出町打田町粉河町那賀町桃山町貴志川町野上町美里町、かつらぎ町、花園村、九度山町、高野町、湯浅町、広川町、吉備町金屋町清水町、美浜町、日高町、由良町、印南町、南部川村南部町川辺町中津村美山村、白浜町、日置川町、上富田町、すさみ町、那智勝浦町、太地町、古座川町、北山村、串本町、古座町
丹後 京都府 宮津市京丹後市伊根町与謝野町 宮津市、峰山町大宮町網野町丹後町弥栄町久美浜町、伊根町、加悦町岩滝町野田川町 1986年3月31日
島根 島根県 出雲市(一部)、松江市(一部) 平田市大社町鹿島町島根町美保関町八束町 1986年3月31日
倉橋島 広島県 江田島市呉市(一部) 江田島町能美町沖美町大柿町音戸町倉橋町 1986年3月31日
室津大島 山口県 柳井市周防大島町上関町平生町 柳井市、大畠町久賀町大島町東和町橘町、上関町、平生町 1986年3月31日
佐田岬 愛媛県 八幡浜市西予市(一部)、伊方町 八幡浜市、保内町三瓶町、伊方町、瀬戸町三崎町 1986年3月31日
幡多 高知県 宿毛市土佐清水市四万十市(一部)、大月町黒潮町(一部)、三原村 宿毛市、土佐清水市、中村市、大月町、大方町、三原村 1988年12月23日
東松浦 佐賀県 唐津市(一部)、玄海町 唐津市、肥前町鎮西町呼子町、玄海町 1988年12月23日
長崎県 松浦市(一部) 松浦市(鷹島町 2011年3月2日
北松浦 佐賀県 伊万里市 伊万里市 1988年12月23日
長崎県 佐世保市(一部)、平戸市(一部)、松浦市(一部)、佐々町 吉井町世知原町小佐々町江迎町鹿町町、平戸市、田平町、松浦市、佐々町 1986年3月31日
佐世保市(一部)、松浦市(一部) 佐世保市(浅子町)、福島町 1988年12月23日
平戸市(一部) 生月町 1992年12月11日
島原 島原市諫早市(一部)、雲仙市南島原市 島原市、有明町森山町国見町瑞穂町吾妻町愛野町千々石町小浜町南串山町加津佐町口之津町南有馬町北有馬町西有家町有家町布津町深江町 1986年3月31日
西彼杵 長崎市(一部)、西海市(一部) 野母崎町三和町外海町琴海町西彼町西海町大瀬戸町 1986年3月31日
西海市(一部) 大島町崎戸町 2000年12月20日
宇土天草 熊本県 宇土市宇城市(一部)、上天草市天草市(一部)、苓北町 宇土市、三角町不知火町大矢野町松島町姫戸町龍ヶ岳町本渡市牛深市有明町倉岳町栖本町新和町五和町天草町河浦町、苓北町 1986年3月31日
国東 大分県 豊後高田市杵築市国東市日出町 豊後高田市、真玉町香々地町、杵築市、山香町大田村国見町国東町武蔵町安岐町、日出町 1986年3月31日
大隅 宮崎県 串間市日南市(一部) 串間市、南郷町 1986年3月31日
鹿児島県 鹿児島市(一部)、鹿屋市垂水市曽於市志布志市大崎町東串良町南大隅町錦江町肝付町 桜島町、鹿屋市、輝北町串良町吾平町、垂水市、大隅町財部町末吉町松山町志布志町有明町、大崎町、東串良町、根占町佐多町大根占町田代町内之浦町高山町 1986年3月31日
鹿児島市(一部) 鹿児島市(東桜島地区野尻町持木町東桜島町古里町有村町黒神町高免町 1988年12月23日
薩摩 鹿児島市(一部)、枕崎市指宿市日置市いちき串木野市南さつま市南九州市 喜入町松元町郡山町、枕崎市、指宿市、山川町開聞町東市来町伊集院町日吉町吹上町串木野市市来町加世田市笠沙町大浦町坊津町金峰町頴娃町知覧町川辺町 1986年3月31日

脚注

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  1. ^ 菅谷幸浩「戦後日本の国土開発構想と自民党政治についての覚書─『日本列島改造論』と青嵐会の比較から─」(『高崎商科大学紀要』第36号、2021年)186頁。
  2. ^ 半島振興対策実施地域名一覧” (pdf). 半島振興対策の推進. 国土交通省. 2024年5月14日閲覧。
  3. ^ 半島振興対策実施地域対象市町村一覧” (pdf). 半島振興対策の推進. 国土交通省. 2024年5月14日閲覧。
  4. ^ 半島振興対策実施地域(地図)” (pdf). 半島振興対策の推進. 国土交通省. 2024年5月14日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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